特許第6185312号(P6185312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6185312-燃料電池 図000002
  • 特許6185312-燃料電池 図000003
  • 特許6185312-燃料電池 図000004
  • 特許6185312-燃料電池 図000005
  • 特許6185312-燃料電池 図000006
  • 特許6185312-燃料電池 図000007
  • 特許6185312-燃料電池 図000008
  • 特許6185312-燃料電池 図000009
  • 特許6185312-燃料電池 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185312
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20170814BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20170814BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20170814BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20170814BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170814BHJP
【FI】
   H01M8/04 T
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 X
   !H01M8/12
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-148915(P2013-148915)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-22852(P2015-22852A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小林 法之
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 正吾
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−087672(JP,A)
【文献】 特開2012−225620(JP,A)
【文献】 特開2011−170983(JP,A)
【文献】 特開2010−160929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/04−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなり、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
前記発電のための補助的な処理を行う発電補助部と、
断熱部材を用いて構成され、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を収容する断熱容器と、
前記断熱容器内に設けられ、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を上下方向に挟み込むように配置される2つ以上の電気ヒータと、
前記燃料電池スタックの温度を検出するための温度検出手段と、
前記電気ヒータ及び前記温度検出手段に電気的に接続され、燃料電池の起動、発電及び停止に必要な制御を実行する燃料電池制御手段と
を備え、
前記燃料電池制御手段は、前記温度検出手段が検出した前記温度に基づいて燃料電池の運転状態を判定し、前記燃料電池の起動時と発電時とでヒータ出力が異なるように、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータと、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータとを別々に制御する
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記発電補助部は、前記燃料電池スタックにおける前記燃料ガスの前記燃料電池スタック通過後に前記燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器を含んで構成され、前記燃料電池スタックとその下側に位置する前記電気ヒータとの間に、前記燃焼器が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータは、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータよりも加熱可能な部分であるヒータ実効面積が小さいことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータは、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータよりもヒータ最大出力が小さいことを特徴とする請求項2または3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料電池の発電時において、前記燃料電池制御手段は、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータの駆動を停止するとともに、前記温度検出手段が検出した前記温度に基づいて、前記燃料電池スタックにおけるセル積層方向の温度分布が均一となるように、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータを制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記温度検出手段は、前記燃料電池スタックにおける前記燃料電池セルの積層方向における上位、中位及び下位の各位置の温度を検出する検出部を有し、前記燃料電池の起動時及び発電時において、前記燃料電池制御手段は、各位置の温度が等しくなるように、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータ及び前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータを制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記燃料電池スタックのセルスタック電圧を検出する電圧検出手段と、
前記燃料電池スタックに電気的に接続され、前記燃料電池スタックの電力を変換して出力する電力出力手段と
をさらに備え、
前記燃料電池制御手段は、前記温度検出手段が検出した前記温度と前記電圧検出手段が検出した前記セルスタック電圧とに基づいて、前記燃料電池の発電可能状態と判断した場合、前記電力出力手段から前記電力の出力を開始させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記電気ヒータに対して前記発電補助部が空隙を隔てて配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、発電のための補助的な処理を行う発電補助部とを備える燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電装置の一種である燃料電池として、例えば固体電解質層(固体酸化物)を備えた固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell ;SOFC)が知られている。固体酸化物形燃料電池は、エネルギー変換効率が50%以上と非常に高く、かつ、小型化が可能であるため、家庭用コジェネレーションシステムや自動車の動力源として開発が行われている。
【0003】
具体的には、固体酸化物形燃料電池は、燃料ガスに接する燃料極と酸化剤ガスに接する空気極とが固体電解質層の両側に配置された燃料電池セルを備えている。なお、燃料ガスは水素を生成するためのものであり、酸化剤ガスは酸素を生成するためのものである。そして、水素と酸素とが固体電解質層を介して反応(発電反応)することにより、空気極を正極、燃料極を負極とする直流の電力が発生するようになっている。
【0004】
一般に、固体酸化物形燃料電池は、平板形の発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックの形態で使用される。固体酸化物形燃料電池は、高温タイプのもので1000℃、中温タイプのもので700℃〜800℃で運転されるため、燃料電池スタックを断熱容器内に収納して保温する必要がある。また、燃料電池の起動時には、燃料電池スタックを発電可能な温度まで昇温する必要があるため、断熱容器内には、電気ヒータや燃焼器等が収納される(特許文献1〜3参照)。
【0005】
特許文献1の燃料電池では、燃料電池スタックの上端及び下端に電気ヒータを配置し、各ヒータによって燃料電池スタックを昇温することで電池の起動時間が短縮されている。また、特許文献2の燃料電池では、燃料電池スタックの内部に電気ヒータを配置し、その電気ヒータによって燃料電池スタックを昇温することで燃料電池が迅速に起動される。さらに、特許文献3の燃料電池では、燃料電池スタックの積層方向の端部に、可燃ガスの燃焼によって発熱する燃焼器を設け、燃焼器によって燃料電池スタックを昇温している。この構成によって、燃料電池スタックにおける温度分布が小さく抑えられることで、燃料電池の発電効率が向上される。
【0006】
さらに、上記固体酸化物形燃料電池において、断熱容器内には、燃料ガスを発電に適した組成に改質反応させるための改質器等が収容される。一般に、改質器における改質反応は、触媒を用いて行われるが、その場合でも反応を十分に進行させるために高温環境(例えば、700℃程度)が必要となる。従って、燃焼器(ガスバーナーなど)等を用いて改質器が昇温されるように構成されている(特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−89900号公報
【特許文献2】特開2007−103031号公報
【特許文献3】特開2009−93923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献3の燃料電池では、ガスバーナなどの燃焼器を用いて改質器や燃料電池スタックを昇温させているため、燃料電池スタックにおける温度分布が均一となるよう温度を調節することは困難である。具体的には、特許文献3の燃料電池は、燃料スタックの上側及び下側に燃焼器が配置されている。燃焼器(ガスバーナー)は、上側に配置される部材を効率よく暖めることができるが、下側に配置される部材は暖めることはできない。従って、燃料スタックの上側及び下側に燃焼器を配置したとしても、燃料電池スタックにおける温度分布を改善することは困難である。
【0009】
また、特許文献2の燃料電池では、燃料電池スタックの内部に電気ヒータが配置されているので、スタック中央部とスタック端部とで温度差が大きくなり、発電効率が低下してしまう。
【0010】
一方、特許文献1の燃料電池では、燃料電池スタックの上端及び下端に電気ヒータが配置されているため、燃料電池スタックにおける温度差は改善することができる。しかしながら、燃料電池の起動時には、改質器などの発電補助部を所定温度まで昇温させる必要があるが、特許文献1の電気ヒータは燃料電池スタックの上端及び下端に配置されているため、電気ヒータでは発電補助部を効率よく昇温することができない。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池の起動時及び発電時において燃料電池スタック及び発電補助部を効率よく昇温することができる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなり、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、前記発電のための補助的な処理を行う発電補助部と、断熱部材を用いて構成され、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を収容する断熱容器と、前記断熱容器内に設けられ、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を上下方向に挟み込むように配置される2つ以上の電気ヒータと、前記燃料電池スタックの温度を検出するための温度検出手段と、前記電気ヒータ及び前記温度検出手段に電気的に接続され、燃料電池の起動、発電及び停止に必要な制御を実行する燃料電池制御手段とを備え、前記燃料電池制御手段は、前記温度検出手段が検出した前記温度に基づいて燃料電池の運転状態を判定し、前記燃料電池の起動時と発電時とでヒータ出力が異なるように、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータと、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータとを別々に制御することを特徴とする燃料電池がある。
【0013】
従って、手段1に記載の発明によると、燃料電池スタック及び発電補助部を上下方向に挟み込むように2つ以上の電気ヒータが配置されている。そして、燃料電池制御手段により、温度検出手段が検出した温度に基づいて燃料電池の運転状態が判定され、燃料電池の起動時と発電時とでヒータ出力が異なるように各電気ヒータが制御される。具体的には、燃料電池の起動時には、各電気ヒータが駆動されて発電補助部が迅速に暖められる。また、発電時には、発電補助部における吸熱や発熱を考慮して、燃料電池スタックにおける温度分布を均一に保つように各電気ヒータの出力が制御される。この結果、燃料電池の起動時や発電時に無駄な電力を使用することなく、効率よく発電することができる。
【0014】
発電補助部は、燃料電池スタックにおける燃料ガスの燃料電池スタック通過後に燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器を含んで構成され、燃料電池スタックとその下側に位置する電気ヒータとの間に、燃焼器が配置されていてもよい。この場合、燃焼器において排ガスを燃焼させる際に熱が発生し、その燃焼器における燃焼熱によって燃料電池スタックの下側から効率よく暖めることができる。そして、その燃焼器による加熱を考慮して、燃料電池制御手段により、各電気ヒータが制御されることによって、無駄な電力を使用することなく、燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0015】
燃料電池スタックの下側に燃焼器が配置される場合には、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータは、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータよりも加熱可能な部分であるヒータ実効面積が小さくてもよい。またこの場合、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータは、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータよりもヒータ最大出力が小さくてもよい。このようにしても、燃料電池スタックの下側は、燃焼器と電気ヒータとによって十分に加熱することができる。
【0016】
燃料電池の発電時において、燃料電池制御手段は、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータの駆動を停止するとともに、温度検出手段が検出した温度に基づいて、燃料電池スタックにおけるセル積層方向の温度分布が均一となるように、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータを制御してもよい。燃料電池の発電時には、燃焼器によって燃料電池スタックの下側を暖めることができる。このため、下側の電気ヒータの駆動を停止して上側の電気ヒータを制御することにより、電気ヒータの消費電力を抑えつつ、燃料電池スタックにおけるセル積層方向の温度分布を均一にすることができ、燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0017】
温度検出手段は、燃料電池スタックにおける燃料電池セルの積層方向における上位、中位及び下位の各位置の温度を検出する検出部を有し、燃料電池の起動時及び発電時において、燃料電池制御手段は、各位置の温度が等しくなるように、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータ及び燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータを制御してもよい。このようにすると、燃料電池スタックにおけるセル積層方向の温度分布を均一にすることができ、燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0018】
燃料電池は、燃料電池スタックのセルスタック電圧を検出する電圧検出手段と、燃料電池スタックに電気的に接続され、燃料電池スタックの電力を変換して出力する電力出力手段とをさらに備えていてもよい。この場合、燃料電池制御手段は、温度検出手段が検出した温度と電圧検出手段が検出したセルスタック電圧とに基づいて、燃料電池の発電可能状態と判断した場合、電力出力手段から電力の出力を開始させる。このようにすると、燃料電池からの電圧の出力を適切なタイミングで行うことができる。
【0019】
燃料電池スタックとその下側に位置する電気ヒータとの間に配置される発電補助部としては、燃焼器に加えて燃料ガスを改質する改質器を含んでいてもよい。また、発電補助部を構成する機器のうちの改質器が、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータに最も近接させた位置に配置されていてもよい。このようにすると、下側の電気ヒータによって改質器を早く暖めることができるため、燃料ガスを迅速に改質することが可能となる。
【0020】
燃料電池において、燃料電池スタックとその下側に位置する電気ヒータとの間に配置される発電補助部として、液体燃料を気化する気化器と、気化器で気化された燃料ガスを改質する改質器とをさらに含んでいてもよい。このようにすると、下側の電気ヒータによって気化器や改質器を迅速に暖めることができ、燃料電池の起動時から発電時までにかかる時間を短くし、発電効率を高めることができる。
【0021】
発電補助部を構成する機器として、下側から気化器、燃焼器及び改質器の順に配置されていてもよい。ここで、気化器及び改質器は吸熱する部位であり、燃焼器は発熱する部位である。このように発電補助部において、吸熱する部位と発熱する部位とを交互に配置することにより、発電補助部における温度差を抑えることができ、発電効率を高めることができる。
【0022】
また、電気ヒータに対して発電補助部が空隙を隔てて配置されていてもよい。このように発電補助部を配置すると、電気ヒータによって発電補助部全体を暖めることができる。さらに、局所的な加熱による発電補助部の損傷を防ぐことができる。
【0023】
燃料電池スタックが発電補助部の上方に積層配置されるとともに、燃料電池スタックと発電補助部とでは、それらの積層方向から見たときの投影面積が異なっていてもよい。例えば、発電補助部の投影面積を燃料電池スタックよりも小さくして燃料電池スタックの下方に発電補助部を配置する場合、発電補助部における燃焼器の加熱によって、燃料電池スタック内の燃料電池セルを効果的に暖めることができる。また、発電補助部の投影面積を燃料電池スタックよりも大きくして燃料電池スタックの下方に発電補助部を配置する場合、発電補助部における燃焼器の加熱によって、燃料電池スタック全体を均一に暖めることができる。
【0024】
燃焼器は、ガスバーナ及び燃焼触媒のうちの少なくともいずれかを用いて構成されている。なお、本発明において、燃焼器は、燃焼触媒を利用して排ガスを燃焼させて浄化する燃焼器に加え、ガスバーナを利用して排ガスを燃焼させる加熱器を含むものとする。ここで、燃焼器がガスバーナを用いて構成される場合、そのガスバーナの着火源として電気ヒータを用いてもよい。このようにすると、ガスバーナの着火源を別途用意する必要がなくなるため、燃料電池の部品コストを抑えることができる。
【0025】
気化器は、液体燃料と、燃料ガスの改質に必要な水とを気化して混合させる気化混合器である。この場合、気化混合器には、液体燃料の供給に先立ち水が供給される。このようにすると、気化混合器において、液体燃料の熱分解によるカーボンの析出を回避しつつ、燃料ガスと水蒸気とを確実に混合させることができる。
【0026】
燃料電池制御手段は、温度検出手段が検出した温度に基づいて気化混合器内の温度を推定し、その気化混合器内の温度が液体燃料の気化温度に達していると判定したとき、気化混合器から発電補助部への燃料ガスの供給を開始させてもよい。このようにすると、気化混合器に温度検出手段を設けなくても、気化混合器内で気化させた燃料ガスを的確なタイミングで発電補助部の改質器に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図2】燃料電池スタックを示す拡大断面図。
図3】上側の電気ヒータ及び下側の電気ヒータが同じヒータ実効面積を有する別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図4】発電補助部が電気ヒータに直接接触した状態で配置される別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図5】積層方向から見たときの投影面積が燃料電池スタックと等しい発電補助部を設けた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図6】積層方向から見たときの投影面積が燃料電池スタックよりも大きい発電補助部を備えた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図7】発電補助部が燃料電池スタックの上下に分割して配置された別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図8】ガスバーナからなる燃焼器を備えた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図9】燃料電池スタックと電気ヒータとの間に気化混合器が設けられた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施の形態の燃料電池10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。図1に示されるように、燃料電池10は、平板形の燃料電池セル11を複数積層してなる燃料電池スタック12と、発電のための補助的な処理を行う発電補助部13と、燃料電池スタック12及び発電補助部13を収容する断熱容器14と、断熱容器14内の上側と下側に設けられる2つの電気ヒータ15,16とを備える。
【0029】
図2に示されるように、燃料電池スタック12を構成する燃料電池セル11は、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有して構成され、発電反応により電力を発生する。なお、本実施の形態において、燃料電池スタック12における燃料電池セル11の積層数は20枚程度となっている。また、燃料電池スタック12には、燃料電池セル11に加えて、コネクタプレート24、セパレータ25、空気極側集電体27及び燃料極側集電体28等が設けられ、それらが複数個ずつ積層されている。
【0030】
より詳しくは、コネクタプレート24は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、燃料電池セル11の厚み方向の両側に一対配置される。各コネクタプレート24により板厚方向での燃料電池セル11間の導通が確保される。隣り合う燃料電池セル11の間に配置されるコネクタプレート24は、インターコネクタとなり、隣り合う燃料電池セル11を区分する。
【0031】
セパレータ25は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、矩形状の開口部29を中央部に有する略矩形枠状をなしている。セパレータ25は、燃料電池セル11間の仕切り板として機能する。
【0032】
固体電解質層23は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。固体電解質層23は、セパレータ25の下面に固定されるとともに、セパレータ25の開口部29を塞ぐように配置されている。固体電解質層23は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。
【0033】
また、固体電解質層23の上面には、燃料電池スタック12に供給された酸化剤ガスに接する空気極21が貼付され、固体電解質層23の下面には、同じく燃料電池スタック12に供給された燃料ガスに接する燃料極22が貼付されている。即ち、空気極21及び燃料極22は、固体電解質層23の両側に配置されている。また、空気極21は、セパレータ25の開口部29内に配置され、セパレータ25と接触しないようになっている。なお、本実施の形態の燃料電池セル11では、セパレータ25の下方に燃料室31が形成されるとともに、セパレータ25の上方に空気室32が形成されている。
【0034】
本実施の形態の燃料電池セル11において、空気極21は、金属の複合酸化物であるLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)によって矩形板状に形成されている。また、燃料極22は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって矩形板状に形成されている。燃料電池セル11において、空気極21はカソード層として機能し、燃料極22はアノード層として機能する。空気極21は、空気極側集電体27によってコネクタプレート24に電気的に接続され、燃料極22は、燃料極側集電体28によってコネクタプレート24に電気的に接続されている。空気極側集電体27は、例えばSUS430系フェライト合金等の緻密な金属板からなる。一方、燃料極側集電体28は、燃料ガスの通過が可能なように、例えばニッケル製の多孔体からなる。
【0035】
図1に示されるように、本実施の形態の発電補助部13は、気化混合器35と改質器36と燃焼器37とを含んで構成されている。気化混合器35は、液体燃料(例えば、軽油など)と改質水とを気化して混合し、混合された燃料ガス及び水蒸気を改質器36に供給する。なお、液体燃料としては、軽油などの石油系液体燃料以外に、メタノールやエタノールなどのアルコール燃料を用いてもよい。
【0036】
改質器36は、気化混合器35で気化された燃料ガスと水蒸気とを改質反応させて水素濃度の高い燃料ガスに改質し、その燃料ガスを燃料電池スタック12に供給する。この燃料ガスは、燃料電池スタック12において、各燃料電池セル11の燃料室31に供給されて、燃料極22に接することで発電反応に使用される。
【0037】
燃焼器37は、燃焼触媒を有し、燃料電池スタック12(各燃料電池セル11の燃料室31)から排出される排ガスをその触媒を用いて燃焼させて浄化する。燃焼器37で浄化された排ガスは、排気管38を通じて断熱容器14の外部に排出される。
【0038】
燃料電池10には、その電池10の起動、発電及び停止に必要な制御を実行するための燃料電池制御装置41(燃焼電池制御手段)が設けられている。燃料電池制御装置41は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等からなる周知のコンピュータによって構成される。さらに、燃料電池10には、燃料電池スタック12(各燃料電池セル11の空気室32)に酸化剤ガス(具体的には空気)を供給する空気ポンプ42、気化混合器35に液体燃料を供給する燃料ポンプ43、気化混合器35に改質水を供給する給水ポンプ44等が設けられている。これらポンプ42〜44は、燃料電池制御装置41と電気的に接続されている。その制御装置41から出力される制御信号に基づいて、ポンプ42〜44が駆動され、空気、液体燃料及び改質水の供給タイミングや供給量が制御される。
【0039】
本実施の形態の燃料電池10では、断熱容器14内において、2つの電気ヒータ15,16が燃料電池スタック12を上下方向に挟み込むように配置される。また、下側の電気ヒータ16と燃料電池スタック12との間には、発電補助部13を構成する機器のうちの改質器36及び燃焼器37が配設されている。改質器36及び燃焼器37は、燃料電池スタック12と一体的に設けられている。これら燃料電池スタック12、改質器36及び燃焼器37によって発電モジュール39が構成されており、その発電モジュール39が2つの電気ヒータ15,16によって挟み込まれている。
【0040】
具体的には、発電補助部13における改質器36は、燃料電池スタック12の下側に位置する電気ヒータ16に最も近接して配置されている。この改質器36は、電気ヒータ16に対して空隙を隔てて配置されており、改質器36の上方に燃焼器37が設けられている。さらに、気化混合器35は、改質器36を挟み込んでいる下側の電気ヒータ16の加熱可能な範囲であってその電気ヒータ16に近接した位置に配置されている。このように発電補助部13を構成する各機器は、電気ヒータ16に対して空隙を隔てて配置されている。
【0041】
本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12が発電補助部13(改質器36及び燃焼器37)の上方に積層配置されるとともに、燃料電池スタック12と発電補助部13とでは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されている、つまり、燃料電池スタック12の下面の面積は、改質器36や燃焼器37の上面の面積よりも大きくなっている。
【0042】
燃料電池10において、断熱容器14内の各電気ヒータ15,16はヒータ電源46に接続され、ヒータ電源46は燃料電池制御装置41に接続されている。本実施の形態において、燃料電池スタック12の下側に配置する電気ヒータ16は、加熱可能な部分であるヒータ実効面積が上側の電気ヒータ15より小さく、ヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15よりも小さいヒータである。
【0043】
燃料電池スタック12には、熱電対等からなるスタック温度検出器47(温度検出手段)が設けられており、気化混合器35にも、熱電対等からなる気化温度検出器48が設けられている。本実施の形態において、スタック温度検出器47は、燃料電池スタック12の燃料電池セル11の積層方向における上位、中位及び下位の各位置P1,P2,P3の温度を検出する検出部を有している。
【0044】
各温度検出器47,48は、燃料電池制御装置41に接続されている。燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度や気化混合器35の温度に対応した検出信号が各温度検出器47,48から燃料電池制御装置41に入力される。燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、ヒータ電源46に制御信号を出力することにより、ヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への通電タイミングや供給電力(ヒータ出力)を制御する。また、燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35への液体燃料や改質水の供給タイミング(燃料ポンプ43及び給水ポンプ44の駆動タイミング)を制御する。
【0045】
燃料電池スタック12の出力端子51には、セルスタック電圧を検出する電圧検出器52(電圧検出手段)が接続されており、その電圧検出器52が検出したセルスタック電圧が燃料電池制御装置41に取り込まれるようになっている。さらに、燃料電池スタック12の出力端子51には、電力出力手段としての燃料電池出力変換器53が接続されており、その出力変換器53は燃料電池制御装置41に接続されている。そして、燃料電池出力変換器53は、燃料電池制御装置41からの制御信号に基づいて作動し、燃料電池スタック12の出力電圧を所定規格の電圧に変換した後、その電圧を外部装置に出力する。
【0046】
次に、本実施の形態の燃料電池10の動作について説明する。
【0047】
先ず、燃料電池制御装置41は、ヒータ電源46に制御信号を出力し、そのヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への通電を開始させる。この後、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における上中下の各位置P1〜P3の温度を監視する。そして、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、ヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への供給電力を制御する。この結果、各電気ヒータ15,16によって、燃料電池スタック12及び発電補助部13からなる発電モジュール39が均一に昇温される。
【0048】
燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35の温度を判定する。燃料電池制御装置41は、気化混合器35の温度が改質水の気化が十分に可能な温度(本実施の形態では200℃)に達したと判定したとき、給水ポンプ44を駆動させて気化混合器35に改質水を供給する。さらに、燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35の温度が液体燃料の気化が十分に可能な温度(本実施の形態では230℃)に達したと判定したとき、燃料ポンプ43を駆動させて気化混合器35に液体燃料を供給する。このとき、気化混合器35では、液体燃料と改質水とが気化されて混合される。そして、混合された燃料ガスと水蒸気とが改質器36に導入される。改質器36では、燃料ガスと水蒸気とが改質反応され、水素濃度の高い燃料ガスが得られる。その燃料ガスが改質器36から燃料電池スタック12へ導入され、さらにそのスタック12における各燃料電池セル11の燃料室31に燃料ガスが供給される。
【0049】
また、燃料電池制御装置41は、燃料ポンプ43の駆動に同期させたタイミングで空気ポンプ42を駆動させる。この結果、空気ポンプ42から燃料電池スタック12に空気が導入されるとともに、各燃料電池セル11の空気室32に空気が供給される。そして、燃料電池セル11において、水素と酸素とが固体電解質層23を介して反応(発電反応)することにより、空気極21を正極、燃料極22を負極とする直流の電力が発生する。
【0050】
各燃料電池セル11において発電反応に使用されなかった燃料ガスや酸化剤ガスを含む排ガスは、燃料電池スタック12のガス排出経路(図示略)を通って燃焼器37に導入される。燃焼器37では、その排ガスが燃焼触媒により燃焼され浄化された後、排気管38を通じて断熱容器14の外部に排出される。
【0051】
このように燃焼器37において排ガスの燃焼が開始されると、その燃焼熱によって燃料電池スタック12が加熱される。このとき、上下の加熱バランスを保つため、燃料電池制御装置41は、ヒータ電源46に制御信号を出力し、ヒータ電源46から下側の電気ヒータ16への通電を停止させる。一方、上側の電気ヒータ15への通電は継続され、上側の電気ヒータ15と燃焼器37とによって燃料電池スタック12が昇温される。また、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における上中下の各位置P1〜P3の温度を判定し、燃料電池スタック12における積層方向の各位置P1〜P3の温度バランスを保つように、ヒータ電源46から上側の電気ヒータ15への供給電力(ヒータ出力)を調整する。
【0052】
燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12の温度(例えば上中下の各位置P1〜P3の平均温度)が480℃に達したと判定したとき、空気ポンプ42、燃料ポンプ43及び給水ポンプ44の出力を増大させる。この結果、燃料電池スタック12に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスを増量させる。このとき、燃焼器37による発熱量が増大するため、燃料電池制御装置41は、その発熱量に応じてヒータ電源46を制御することでヒータ電源46から上側の電気ヒータ15に供給される電力を調整する。具体的には、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における各位置P1〜P3の温度バランスを保つように、上側の電気ヒータ15のヒータ出力を調整する。このようにして、発電開始温度である610℃の温度まで燃料電池スタック12の温度を昇温させる。
【0053】
またこのとき、燃料電池制御装置41は、電圧検出器52の検出信号に基づいて、セルスタック電圧を判定する。そして、燃料電池制御装置41は、燃料電池スタック12の温度とセルスタック電圧とに基づいて、燃料電池10の発電可能状態と判断した場合、燃料電池出力変換器53を作動させる。この結果、燃料電池スタック12の出力電圧が所定規格の電圧に変換された後、燃料電池出力変換器53から外部装置に出力される。
【0054】
燃料電池10の発電時には、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度を監視する。そして、燃料電池制御装置41は、燃焼器37による発熱量を考慮して、ヒータ電源46に制御信号を出力し、燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度を均一に保つように、電気ヒータ15のヒータ出力を制御する。
【0055】
この後、燃料電池10の停止時には、燃料電池制御装置41は、各ポンプ42〜44の駆動を停止させた後、ヒータ電源46による電気ヒータ15への通電を停止させる。以上によって燃料電池10の発電処理が終了する。
【0056】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)本実施の形態の燃料電池10では、スタック温度検出器47が検出したスタック温度に基づいて、燃料電池制御装置41により燃料電池10の運転状態(具体的には、起動時または発電時)が判定される。そして、燃料電池制御装置41によって、燃料電池10の起動時と発電時とでヒータ出力が異なるように、燃料電池スタック12の下側に位置する電気ヒータ16と、燃料電池スタック12の上側に位置する電気ヒータ15とが別々に制御される。具体的には、燃料電池10の起動時には、上側の電気ヒータ15及び下側の電気ヒータ16が駆動されて発電補助部13が迅速に暖められる。また、発電時には、発電補助部13における吸熱や発熱を考慮して、燃料電池スタック12における温度分布を均一に保つように各電気ヒータ15,16の出力が制御される。この結果、燃料電池10の起動時や発電時に無駄な電力を使用することなく、効率よく発電することができる。
【0058】
(2)本実施の形態の燃料電池10において、発電補助部13は、排ガスを浄化する燃焼器37を含んで構成されており、燃料電池スタック12と下側の電気ヒータ16との間に燃焼器37が配置されている。この場合、燃焼器37において排ガスを燃焼させる際に熱が発生し、その燃焼器37における燃焼熱によって下側から燃料電池スタック12を効率よく暖めることができる。また、燃焼器37における排ガスの燃焼時には、燃料電池制御装置41によって下側の電気ヒータ16の駆動が停止され、上側の電気ヒータ15のみが駆動される。そして、上側の電気ヒータ15と燃焼器37とによって燃料電池スタック12を効率よく暖めることができる。またこのときには、スタック温度検出器47が検出したスタック温度に基づいて、各燃料電池スタック12におけるセル積層方向の温度分布が均一となるように、上側の電気ヒータ15が制御される。このようにすると、無駄な電力を使用することなく、燃料電池10の発電効率を高めることができる。
【0059】
(3)本実施の形態の燃料電池10において、下側の電気ヒータ16として、加熱可能な部分であるヒータ実効面積及びヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15より小さいものを用いている。燃料電池10では、燃料電池スタック12の下側に配置した燃焼器37によって、燃料電池スタック12を加熱できる。このため、下側の電気ヒータ16としてヒータ実効面積及びヒータ最大出力の小さいヒータを用いた場合でも、燃料電池スタック12及び発電補助部13を効率よく暖めることができる。
【0060】
(4)本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12における燃料電池セル11の積層方向の上位、中位及び下位の各位置P1〜P3の温度がスタック温度検出器47により検出される。そして、各位置P1〜P3の温度が等しくなるように、燃料電池制御装置41によって各電気ヒータ15,16が制御される。このようにすると、燃料電池スタック12におけるセル積層方向の温度分布を均一にすることができ、燃料電池10の発電効率を高めることができる。
【0061】
(5)本実施の形態の燃料電池10では、スタック温度検出器47が検出したスタック温度と電圧検出器52が検出したセルスタック電圧とに基づいて、燃料電池制御装置41により燃料電池10の発電可能状態か否かが判定される。そして、燃料電池制御装置41により、発電可能状態と判断された場合、燃料電池出力変換器53から電力の出力が開始される。このように構成すると、燃料電池10から図示しない外部装置への電力の出力を適切なタイミングで行うことができる。
【0062】
(6)本実施の形態の燃料電池10では、電気ヒータ16に対して発電補助部13が空隙を隔てて配置されている。このように発電補助部13を配置すると、電気ヒータ16の輻射熱によって、発電補助部13全体を効率よく暖めることができる。さらに、局所的な加熱による発電補助部13の損傷を防ぐことができる。
【0063】
(7)本実施の形態の燃料電池10では、発電補助部13を構成する機器のうちの改質器36は、燃料電池スタック12の下側に位置する電気ヒータ16に最も近接して配置されている。このようにすると、改質器36を早く暖めることができるため、燃料ガスを迅速に改質することが可能となる。
【0064】
(8)本実施の形態の燃料電池10において、気化混合器35には、液体燃料の供給に先立ち改質水が供給される。このようにすると、気化混合器35において、液体燃料の熱分解によるカーボンの析出を回避しつつ、燃料ガスと水蒸気とを確実に混合することができる。
【0065】
(10)本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12が発電補助部13(燃焼器37)の上方に積層配置されている。そして、燃料電池スタック12と発電補助部13の改質器36及び燃焼器37とでは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されている。また、改質器36及び燃焼器37が燃料電池スタック12に一体的に設けられている。このように構成すると、燃焼器37の発熱によって、燃料電池スタック12の中央部分に設けられる燃料電池セル11を確実に昇温させることができる。
【0066】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0067】
・上記実施の形態の燃料電池10では、2つの電気ヒータ15,16を備えるものであったが、燃料電池スタック12の上下に挟み込むように各電気ヒータ15,16を配置するものであれば、3つ以上の電気ヒータを備えていてもよい。具体的には、例えば燃料電池スタック12の上側に2つの電気ヒータを配置し、下側に1つの電気ヒータを配置してもよい。
【0068】
・上記実施の形態の燃料電池10では、上側の電気ヒータ15と下側の電気ヒータ16とではヒータ実効面積及びヒータ最大出力が異なるヒータを用いていたが、これに限定されるものではない。図3に示される燃料電池10Aのように、燃料電池スタック12の下側に配置する電気ヒータ16Aとして、ヒータ実効面積及びヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15と同じヒータを用いてもよい。この場合、部品共通化によるコスト削減を図ることが可能となる。
【0069】
また、下側の電気ヒータとしてヒータ実効面積が十分に広いヒータを用いる場合、図4に示される燃料電池10Bのように、電気ヒータ16Aと発電補助部13(改質器36)を直接接触させてもよい。このように、吸熱を伴う改質器36を電気ヒータ16Aに直接接触させると、起動時にいち早く改質器36の温度を上げることができる。このため、燃料電池スタック12への燃料ガスの投入タイミングを早めることができ、起動時間を短縮することができる。
【0070】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A,10Bにおいて、発電補助部13とその上方に積層配置される燃料電池スタック12とは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図5に示される燃料電池10Cのように、燃料電池スタック12と発電補助部13A(改質器36A及び燃焼器37A)とについて、それらの積層方向からみたときの投影面積がほぼ同じ面積となるように形成してもよい。さらに、図6に示される燃料電池10Dのように、改質器36B及び燃焼器37Bのサイズを大きくし、発電補助部13Bと燃料電池スタック12とにおいて、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13Bのほうが大きくなるよう形成してもよい。このようにすると、発電補助部13Bにおける燃焼器37Bの発熱によって、断熱容器14内全体を効率よく昇温させることができる。
【0071】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Dでは、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16,16Aとの間に、発電補助部13,13A,13Bを構成する燃焼器37,37A,37B及び改質器36,36A,36Bを配置するものであったが、これに限定されるものではない。図7に示される燃料電池10Eのように、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16との間に燃焼器37が配置され、燃料電池スタック12とその上側に位置する電気ヒータ15との間に改質器36が配置されていてもよい。つまり、発電補助部13Cを構成する改質器36及び燃焼器37が燃料電池スタック12の上側及び下側に分割して配置されることとなる。またここでは、気化混合器35は、改質器36を挟み込んでいる上側の電気ヒータ15に近接した位置に配置されている。このように、燃料電池10Eを構成した場合でも、上側の電気ヒータ15と下側の電気ヒータ16とを用いて発熱補助部13C及び燃料電池スタック12を効率よく暖めることができる。なお、燃料電池10Eとは逆に、燃料電池スタック12の下側に改質器36を配置し、燃料電池スタック12の上側に燃焼器37を配置して燃料電池を構成してもよい。
【0072】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Eにおいて、燃焼器37,37A,37Bは、燃焼触媒を含むものであったが、これに限定されるものではない。図8に示される燃料電池10Fのように、燃焼触媒に代えてガスバーナを用いて構成される燃焼器37C(加熱器)を備えていてもよい。図8に示す燃焼器37Cを構成するガスバーナは、パイプ状に細長く形成され、その始端が燃料電池スタック12の上面に接続されている。さらに、燃焼器37Cのガスバーナは、上側の電気ヒータ15の近傍を通過するとともに、燃料電池スタック12の側面及び下面の近傍に沿って配設されている。この燃焼器37Cでは、ガスバーナの着火源として上側の電気ヒータ15を用い、排ガスを燃焼させる。またこの場合、燃焼器37Cのガスバーナの着火に伴って電気ヒータ15への通電を停止させてもよい。さらに、燃焼器37Cのガスバーナが失火した場合には、電気ヒータ15を用いてそのガスバーナを再着火させるように構成する。このようにすると、電気ヒータ15を燃焼器37C(ガスバーナ)の着火源として共通使用することにより、燃料電池10Fの部品コストを低く抑えることができる。また、パイプ状のガスバーナによって燃料電池スタック12の周囲を効率よく暖めることが可能となる。
【0073】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Dでは、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16との間に、発電補助部13,13A,13Bを構成する改質器36A,36B及び燃焼器37,37A,37Bが設けられるものであったが、これに限定されるものではない。図9に示される燃料電池10Gのように、発熱補助部13Dを構成する改質器36及び燃焼器37に加えて気化混合器35Aが、燃料電池スタック12と下側の電気ヒータ16との間に配設されていてもよい。燃料電池10Gでは、断熱容器14内において下方側から上方側に向けて電気ヒータ16、気化混合器35A、燃焼器37、改質器36、燃料電池スタック12、電気ヒータ15の順に配置されている。燃料電池10Gの発電時には、燃料電池スタック12及び燃焼器37は発熱する部位であり、気化混合器35A及び改質器36は吸熱する部位である。従って、これら燃料電池スタック12及び燃焼器37を発熱部と定義し、気化混合器35A及び改質器36を吸熱部と定義したとき、断熱容器14内には、発熱部と吸熱部とが交互に配置されている。燃料電池10Gでは、各機器をこのように配置することによって、断熱容器14内における熱分布が所定の箇所に偏らないように構成している。また、燃料電池10Gにおいて、発電補助部13Dを構成する気化混合器35Aは、燃焼器37に対して空隙を隔てて配置されている。なお、発電補助部13における熱分布が偏らない場合には、改質器36や燃焼器37と一体的に気化混合器35Aを設けてもよい。
【0074】
図9に示される燃料電池10Gでは、発電補助部13を構成する機器として、下側から気化混合器35A、燃焼器37、改質器36の順に配置されていたが、これらの配置は適宜変更してもよい。例えば下側から気化混合器35A、改質器36、燃焼器37の順に配置されていてもよい。気化混合器35A及び改質器36は、吸熱部となる部位であるが、これら機器を電気ヒータ15の近傍に配置させることで、電池起動時において各機器を迅速に昇温させることができる。このため、電池起動後に比較的短時間で液体燃料の気化や燃焼ガスの改質を行うことが可能となり、燃料電池の起動時間を短縮することが可能となる。
【0075】
・上記実施の形態では、電気ヒータ15,16,16Aを断熱容器14とは別部材として作製し、上側の電気ヒータ15を断熱容器14の上面に固定し、下側の電気ヒータ16,16Aを断熱容器14の下面に固定していたが、これに限定されるものではない。電気ヒータ15,16,16Aは、その少なくとも一部が断熱容器14を構成する断熱部材に埋め込むように形成されていてもよい。具体的には、断熱容器14において、天板となる断熱部材内に上側の電気ヒータ15を埋め込み、底板となる断熱部材内に下側の電気ヒータ16,16Aを埋め込むようにして各電気ヒータ15,16,16Aを設けてもよい。つまり、電気ヒータ15,16,16Aの断熱材を断熱容器14の断熱部材と共通化した形で燃料電池を構成する。このようにすると、燃料電池の小型化を図ることができる。また、部品共通化によって燃料電池の製造コストを低く抑えることができる。
【0076】
・上記実施の形態では、燃料電池スタック12の温度を検出するスタック温度検出器47、及び気化混合器35,35Aの温度を検出する気化温度検出器48を備えるものであったが、これに限定されるものではない。予め燃料電池10の運転試験等を行って、燃料電池スタック12の温度変化と気化混合器35,35Aの温度変化との相関性を示すデータを取得しておき、燃料電池スタック12の温度に基づいて気化混合器35,35Aの温度を推定するように構成してもよい。この場合、気化温度検出器48を省略することができ、燃料電池10の部品コストを低減することができる。
【0077】
・上記実施の形態の燃料電池10では、燃焼器37における排ガスの燃焼に伴い、下側の電気ヒータ16,16Aへの通電を停止させていたが、これに限定されるものではない。例えば、燃料電池スタック12を加熱するために燃焼器37の発熱量では不十分となる場合、下側の電気ヒータ16を駆動して燃料電池スタック12を暖めるように構成してもよい。但し、この場合でも燃焼器37における燃焼熱を考慮して電気ヒータ16のヒータ出力を調整することにより、燃料電池スタック12を効率的に昇温させるようにする。
【0078】
・上記実施の形態では、液体燃料を用いて発電する燃料電池10に具体化したが、気体燃料(燃料ガス)を用いる燃料電池に具体化してもよい。この場合には、液体燃料を気化させるための気化混合器35を省略してもよい。
【0079】
・上記実施の形態では、固体酸化物形燃料電池に具体化するものであったが、これ以外に溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)などの他の燃料電池に具体化してもよい。
【0080】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0081】
(1)手段1において、前記燃料電池スタックとその下側に位置する前記電気ヒータとの間に配置される前記発電補助部として、前記燃料ガスを改質する改質器と、前記燃料電池スタックにおける前記燃料ガスの前記燃料電池スタック通過後に前記燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器とを含んで構成され、前記改質器が、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータに最も近接させた位置に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【0082】
(2)手段1において、前記燃料電池スタックとその下側に位置する前記電気ヒータとの間に配置される前記発電補助部として、液体燃料を気化する気化器と、前記気化器で気化された燃料ガスを改質する改質器と、前記燃料電池スタックにおける前記燃料ガスの前記燃料電池スタック通過後に前記燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器とを含むことを特徴とする燃料電池。
【0083】
(3)技術的思想(2)において、前記発電補助部を構成する機器として、下側から前記気化器、前記燃焼器及び前記改質器の順に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【0084】
(4)手段1において、前記電気ヒータに対して前記発電補助部が空隙を隔てて配置されていることを特徴とする燃料電池。
【0085】
(5)手段1において、前記燃料電池スタックが前記発電補助部の上方に積層配置されるとともに、前記燃料電池スタックと前記発電補助部とでは、それらの積層方向から見たときの投影面積が異なることを特徴とする燃料電池。
【0086】
(6)手段1において、前記燃焼器は、ガスバーナ及び燃焼触媒のうちの少なくともいずれかを用いて構成されていることを特徴とする燃料電池。
【0087】
(7)技術的思想(6)において、前記ガスバーナの着火源として前記電気ヒータを用いることを特徴とする燃料電池。
【0088】
(8)手段1において、前記気化器は、液体燃料と、前記燃料ガスの改質に必要な水とを気化して混合させる気化混合器であることを特徴とする燃料電池。
【0089】
(9)技術的思想(8)において、前記気化混合器には、前記液体燃料の供給に先立ち前記水が供給されるとことを特徴とする燃料電池。
【0090】
(10)手段1において、前記燃料電池制御手段は、前記温度検出手段が検出した前記温度に基づいて前記気化混合器内の温度を推定し、その気化混合器内の温度が前記液体燃料の気化温度に達していると判定したとき、前記気化混合器から前記発電補助部への前記燃料ガスの供給を開始させることを特徴とする燃料電池。
【0091】
(11)手段1において、前記電解質層は、固体酸化物からなる固体電解質層であることを特徴とする燃料電池。
【符号の説明】
【0092】
10,10A〜10G…燃料電池
11…燃料電池セル
12…燃料電池スタック
13,13A〜13D…発電補助部
14…断熱容器
15…上側の電気ヒータ
16,16A…下側の電気ヒータ
21…空気極
22…燃料極
23…電解質層としての固体電解質層
35,35A…発電補助部を構成する気化混合器
36,36A,36B…発電補助部を構成する改質器
37,37A〜37C…発電補助部を構成する燃焼器
41…燃料電池制御手段としての燃料電池制御装置
47…温度検出手段としてのスタック温度検出器
52…電圧検出手段としての電圧検出器
53…電力出力手段としての燃料電池出力変換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9