(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリマー成分はポリエステルを主成分とする。本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。また、具体的な脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコール,ペンタメチレングリコール,ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、本発明においてはアルキレンテレフタレートやアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをはじめとして、例えば全ジカルボン酸成分の80mol%以上がテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80mol%以上がエチレングリコールであるホモポリマーや共重合体が好ましい。
かかるポリエステルはポリエステルフィルムを構成するポリマー成分を基準として80重量%以上であることが好ましく、さらに90重量%以上であることが好ましい。
【0016】
エチレンテレフタレートやエチレンナフタレンジカルボキシレートが主たる繰り返し単位である場合、表面平坦性、乾熱劣化性を損なわない程度であれば、全酸成分の20mol%以下の範囲内で、主たるジカルボン酸以外のジカルボン酸成分、あるいはエチレングリコール以外のグリコール成分を用いることができ、例えば先に例示した他の芳香族ジカルボン酸成分やアルキレングリコール成分、またアジピン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シクロヘキサングリコールなどの脂環族ジオール成分、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールが例示される。
【0017】
また本発明におけるポリエステルには、本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸,ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20mol%以下、さらには10mol%以下の範囲で共重合したものであってもよい。
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量であり、かつ本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2mol%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエルスリトール等を共重合してもよい。
【0018】
本発明におけるポリエステルポリマー原料は、前述のジカルボン酸成分およびグリコール成分を反応させてポリエステル前躯体とし、さらに重縮合反応によって所望の固有粘度を有するポリエステルポリマーを製造することができる。
【0019】
ポリエステルポリマーの重縮合に際し、その他の部分は公知のポリエステル重縮合方法を用いることができる。具体的には、重縮合反応を行う前にエステル化反応もしくはエステル交換反応を行う。エステル交換反応を経由する場合に用いるエステル交換反応触媒としては、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、チタン化合物などが好適に挙げられる。
このようにしてエステル化反応もしくはエステル交換反応を経由して得られた前駆体を溶融状態で重縮合反応させればよい。重縮合反応触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などが好適に挙げられる。
【0020】
また、本発明のポリエステルポリマーの製造にあたり、重縮合反応の初期段階までに、好ましくはエステル化反応もしくはエステル交換反応終了後から固有粘度0.3dl/gになるまでの重縮合反応中にリン化合物を添加することが好ましい。リン化合物としては特に限定はされないが、フェニルホスホン酸、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0021】
[単官能エポキシ化合物]
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解剤として(A)単官能エポキシ化合物(以下、エポキシ化合物(A)、成分(A)と称することがある)を、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および成分(B)を含む組成物100重量部に対して、0.15〜5重量部含有する。本発明において、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および成分(B)を含む組成物とは、上記(A)単官能エポキシ化合物以外の成分で構成される組成物を指しており、さらに白色顔料など他の添加剤を含む場合にはそれらの成分も含めた組成物を指す。
上記単官能エポキシ化合物(A)は、フィルム中ではその一部あるいは全てがポリエステル末端基と反応した状態で存在している。
【0022】
該エポキシ化合物(A)の含有量は好ましくは0.15〜3.0重量部であり、より好ましくは0.2〜2.5重量部、さらに好ましくは0.5〜1.0重量部である。該エポキシ化合物(A)の含有量はポリエステルを主成分とするポリマー成分および成分(B)を含む組成物を100重量部として求められ、積層フィルムの場合は層を構成する組成物に対して求められる。
【0023】
上述の通り、製造プロセスで生成するポリエステルのカルボキシル末端基の封止を目的としてカルボキシル末端封止剤や鎖延長剤といった剤を添加する手法が知られているが、本発明における特徴として、単官能エポキシ化合物(A)を特定量用い、その反応触媒として後述する特定の種類のものを特定量用いることにより、エポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応を促進しつつ同時に副反応の抑制効果が高いため、ポリエステル末端封止効果と異物抑制効果の双方に優れ、ポリエステルの耐久性、特に耐湿熱性を大幅に向上させつつ優れたフィルム外観性が得られる。
【0024】
エポキシ化合物の構造は一般的に多官能剤と単官能剤に分類できるが、本発明ではポリエステル末端封止機能を有する化合物として単官能エポキシ化合物が用いられる。単官能エポキシ化合物を本発明の含有量の範囲内で用いることにより、局所的な反応度増大に伴うゲル化や反応触媒自体の異物化を抑制できる。一方、多官能エポキシ化合物は分子量増大効果を有し、継時的に低下するポリエステルの機械特性を再生できるものの、その構造上、局所的な反応度増大に伴うゲル化の制御が困難である。
【0025】
かかる単官能エポキシ化合物としてグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどが例示され、これらの中でも特に脂肪酸グリシジルエステル化合物が好ましい。さらに好ましくは耐熱性のより良好な分枝脂肪酸グリシジルエステル化合物である。
かかる単官能の脂肪酸グリシジルエステル化合物は、脂肪酸残基を構成する炭素数が5〜50個であることが好ましく、より好ましくは5〜25個、さらに好ましくは5〜15個である。また脂肪酸残基は飽和脂肪酸残基であることが好ましい。
また、単官能の分枝脂肪酸グリシジルエステル化合物は、カルボン酸基に隣接する炭素原子が第三級炭素原子であることが好ましく、第三級炭素原子と結合する3個の基をR1、R2、R3とする場合、R1、R2およびR3の炭素数の合計が前述した5〜50個であることが好ましく、より好ましい範囲についても前記範囲であることが好ましい。R1およびR2は前記炭素数を満たす範囲内でアルキル基の中からそれぞれ独立して選択でき、R1およびR2の少なくとも一方はメチル基であることが好ましい。R3は水素および前記炭素数を満たす範囲内のアルキル基から選択でき、前記炭素数を満たす範囲内のアルキル基であることが好ましい。
【0026】
前記成分(A)の含有量が下限に満たない場合、末端封止効果が不十分となり、耐湿熱性が十分に得られない。一方、前記成分(A)の含有量が上限を超える場合、単官能エポキシ化合物であっても局所的な反応に伴う溶融系の不均一化が起こり、ゲル欠点などが発生しやすく、さらに成分(A)自体の熱分解および加水分解が起こることでかえってポリエステルの分解を促進し、分子量低下やカルボキシル末端基の増大を招き、耐加水分解性が低下することがある。
【0027】
本発明において、前記成分(A)は従来公知の方法を用いてポリエステル樹脂に含有させることができ、例えば以下のような手法で添加することができる。前記成分(A)をポリエステル樹脂に添加する際、剤単体を添加してもよいし、粉末などの担体に担持させ、スラリー状にして添加してもよい。また、水やジオール成分の溶液状態として添加することもできる。
(ア)ポリエステルのエステル化またはエステル交換工程〜重縮合工程において前記成分(A)を添加する。
(イ)ポリエステルチップを溶融し、前記成分(A)を添加することで成分(A)の高濃度マスターバッチを予め作成し、製膜直前に成分(A)を含まない樹脂と混合して使用する。
(ウ)ポリエステルチップを溶融し、前記成分(A)を添加することで希望の濃度の成分(A)含有ペレットを予め作成し、そのまま使用する。
(エ)製膜直前に溶融する押出機のフィードポケットもしくはバレルにおいて、直接、前記成分(A)を添加する。
【0028】
これらの手法の中でも特に、添加量を工程状況に応じて制御できる(イ)または(エ)の手法が好ましい。さらに、ポリエステルおよび前記成分(A)が熱履歴を受ける回数を最小限にでき、反応終了後のカルボキシル基の生成が少ない手法(エ)が好ましい。
【0029】
[エポキシ化合物の反応触媒]
本発明のポリエステルフィルムは、上述の単官能エポキシ化合物(A)の反応触媒として、(B)有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩(以下、成分(B)と称することがある)を、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および該成分(B)を含む組成物を基準(100重量%)として0.0015〜0.045重量%含有し、かつ前記成分(B)に含まれる炭素原子数Cの金属イオン数Mに対する比(C/M)が15以下であり、前記成分(B)を構成するアニオン成分の式量が750以下であることを要する。
ここで、成分(B)の含有量の基準となる上記組成物とは、エポキシ化合物(A)における説明と同じく、上記単官能エポキシ化合物以外の成分で構成される組成物と同義であり、さらに白色顔料など他の添加剤を含む場合にはそれらの成分も含めた組成物を指す。また積層フィルムの場合は層を構成する組成物に対して求められる。
一般的に、塩基触媒が存在するとエポキシ化合物のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応が促進されることは知られているが、本発明者は単官能エポキシ化合物(A)のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応触媒として作用する塩基化合物として、前記成分(B)で表される特定の成分、すなわち有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩(B)であって、C/Mが15以下、かつアニオン成分の式量が750以下である化合物を用いることで、単官能エポキシ化合物(A)のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応性が高く、同時に副反応が生じにくいという選択性に優れ、高い末端封止効果と優れたフィルム外観性とを発現できることを見出した。
【0030】
該成分(B)の含有量は好ましくは0.005〜0.040重量%、さらに好ましくは0.005〜0.010重量%である。該成分(B)の含有量が下限に満たないと触媒効果が不十分となり、十分な耐加水分解性が得られない。一方、該成分(B)の含有量が上限を超えるとケン化触媒として作用し、耐加水分解性が大幅に低下するだけでなく、異物化の原因となる。該成分(B)の含有量を所定の範囲内とすることで、ケン化や異物化を最小限に抑えつつ、成分(A)による末端封止効果を最大限に引き出すことが可能となる。
【0031】
なお、無触媒または酸触媒下でもエポキシ化合物のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応は進行するものの、ポリエステルのヒドロキシル基末端や、反応で生成する新たなヒドロキシル基との反応、水分による失活をはじめとした副反応が競合となり、十分な速度での反応ないし十分な末端封止効果が得られ難い。
【0032】
該成分(B)を構成する金属イオンとしてアルカリ金属類もしくはアルカリ土類金属類が挙げられ、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Baのイオンのうち少なくとも1種を選択することができる。これらの中でもLi、Na、K、Mg、Caが好ましく、さらにこれらの中でもアルカリ金属が好ましく、特に好ましくはNaまたはKである。
【0033】
該成分(B)を構成するカウンターアニオンとしての有機酸由来成分は、該成分(B)に含まれる炭素原子数Cの金属イオン数Mに対する比C/M(CPM)が15以下となるように選択され、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。CPMがかかる範囲内であることにより、該成分(B)による触媒効果が向上する。CPMがかかる範囲にあれば、有機酸成分は複数種選択しても構わない。また原料となる有機酸成分として高分子ポリカルボン酸を選択することもできる。CPMが15を超える範囲(炭素数の多い有機酸系)では金属カチオンの比率が少ないため、重量あたりの触媒効果が低下したり、炭化水素ユニットの耐熱性が低いため異物化しやすくなる。CPMの下限は1以上が好ましく、さらに2以上が好ましい。
【0034】
また、該成分(B)を構成するアニオン成分の式量が750を超えて大きい場合は、CPMを満たしていてもそれ自身の異物化が避けられない。かかるアニオン成分の式量は750以下、好ましくは500以下、より好ましくは250以下、特に好ましくは100以下である。該成分(B)を構成するアニオン成分の式量の下限については45以上が好ましく、さらに59以上が好ましい。
【0035】
該成分(B)のアニオン成分を構成する有機酸成分として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸をはじめとした直鎖脂肪族カルボン酸、これらの構造異性体としての分枝脂肪族カルボン酸、かかる式量の範囲内の不飽和カルボン酸,芳香族カルボン酸,脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも該成分(B)として有機酸アルカリ金属塩が好ましく、特に酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウムなどが好ましく例示される。
【0036】
本発明において、成分(B)は成分(A)と同様、従来公知の方法によりポリエステルに含有させることができ、例えば上述した(ア)〜(エ)の選択肢からその添加方法を選ぶことができ、用いる化合物の化学的性質に応じて適宜選択すればよい。ハンドリングの観点からは重合工程で添加する(ア)の方法か、予めマスターバッチを作成する(イ)の方法が好ましい。
【0037】
[白色顔料]
本発明のポリエステルフィルムはさらに(C)白色顔料を含有することができ、エポキシ化合物(A)ないし成分(B)で定義した組成物の重量を基準(100重量%)として3〜18重量%含有することが好ましい。該白色顔料の含有量は3〜15重量%であることがより好ましく、3〜12重量%であることがさらに好ましい。
フィルム中の白色顔料の含有量がかかる範囲にあることにより隠蔽性に優れ、太陽電池の裏面保護膜として用いる場合には受光面側への反射によって太陽電池の発電効率が向上する。(C)白色顔料の含有量が下限に満たないと、隠蔽性やフィルムの紫外線劣化を抑制する効果が十分に発現しないことがある。また(C)白色顔料の含有量が上限値を超えると、フィルム強度が低下したり、フィルムにデラミネーションを生じることがあり、それに伴いフィルムの耐熱性や耐加水分解性が低下することがある。
【0038】
該白色顔料として、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど公知のものを用いることができるが、太陽電池の裏面保護膜などの太陽電池部材として用いる場合には酸化チタンが好ましく、特にルチル型酸化チタンが好ましい。ルチル型酸化チタンを用いることで、隠蔽効果に加え、さらにフィルムの紫外線劣化を抑制でき、光線を長時間照射したときのフィルム変色や機械的強度の低下を少なくすることができる。
【0039】
また、ポリエステルフィルムが積層構成の場合、そのうちの少なくとも1層に白色顔料を含有することが好ましく、白色顔料を含有する層を構成する組成物(エポキシ化合物(A)を含む場合はエポキシ化合物(A)以外の成分で構成される組成物)に対して白色顔料が5〜25重量%されることが好ましい。少なくとも1層がかかる量の白色顔料を含有していることにより、フィルム全体としての隠蔽効果が高まり、例えば太陽電池の裏面保護膜の外面用に好適に用いることができる。
【0040】
また、高い隠蔽性が求められない用途で乳白色フィルムを得る場合は、前記組成物の重量を基準(100重量%)として3重量%未満の範囲で白色顔料を含有してもよく、例えば太陽電池の裏面保護膜の内面用に用いることができる。
該白色顔料(C)の平均粒径は、好ましくは0.1〜5.0μm、特に好ましくは0.1〜3.0μmである。この範囲の平均粒径の白色顔料を用いることで、良好な分散状態で白色顔料をポリエステルフィルム中に分散させることができ、白色顔料の凝集を低減することができるとともに、良好な延伸性でフィルムを製膜することができる。
【0041】
本発明において、白色顔料(C)は成分(A)や成分(B)と同様、従来公知の方法によりポリエステルに含有させることができる。例えば上述した(ア)〜(エ)の選択肢から添加方法を選ぶことができ、分散性やハンドリングの観点から、予めマスターバッチを作成する(イ)の方法が特に好ましい。
【0042】
[末端カルボキシル基濃度]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基濃度は、好ましくは20eq/T、さらに好ましくは17eq/T、特に好ましくは14eq/Tの範囲である。末端カルボキシル基濃度がかかる範囲であることで、耐熱性および耐加水分解性に優れ、高温・多湿の条件において長時間使用した場合においても機械的性質の低下の少ないフィルムを得ることができる。
なお、本発明のポリエステルフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムを構成するポリエステル全体での末端カルボキシル基濃度がかかる範囲であることが好ましく、さらに積層フィルムの各層を構成するポリエステルそれぞれについて上記末端カルボキシル基濃度の範囲であることが好ましい。
【0043】
[ポリエステルの極限粘度数]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、用途により好ましい極限粘度数の範囲が異なるが、極限粘度数が0.55〜0.85dl/gであることが好ましく、さらに0.56〜0.79dl/gであることが好ましい。極限粘度数がこの範囲にあることで、良好な耐熱性、耐加水分解性のフィルムを高い生産性で得ることができる。極限粘度数が下限に満たない場合は劣化に伴う重合度減少により脆化が生じやすくなる。一方、極限粘度数が上限を超える範囲にするために、重合〜溶融工程で樹脂温度を低く保つことがあり、高溶融粘度であるがゆえに生産性が低下することがある。
なお、本発明のポリエステルフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムを構成するポリエステル全体での極限粘度数がかかる範囲であることが好ましく、さらに積層フィルムの各層を構成するポリエスエルそれぞれについて上記極限粘度数の範囲であることが好ましい。
【0044】
[耐加水分解性]
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールの前面および裏面の最外層用フィルムとして用いる場合、温度121℃、湿度100%RHでエージングしたときのフィルムの伸度半減期が70時間以上であることが好ましい。温度121℃、湿度100%RHの環境における70時間のエージングは、太陽電池モジュールの前面および裏面の最外層用フィルム用途に対し、概ね25年間の屋外暴露状態に相当する耐加水分解性を検査する加速試験の一つであり、上記伸度半減期が70時間に満たない場合は太陽電池の表面保護膜あるいは裏面保護膜として求められる耐加水分解性が十分でなく、屋外での長期使用において劣化を引き起こし、機械的性質が低下する可能性がある。かかる伸度半減期は好ましくは90時間、さらに好ましくは110時間以上である。かかる耐加水分解特性はポリエステルをポリマーの主成分とするポリエステルフィルムにおいて、上記成分(A)および上記成分(B)を所定量ずつ用いることにより得ることができる。
【0045】
[フィルム厚み、層構成]
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム全体の厚みとしてはハンドリング性の観点から、例えば25〜300μm、好ましくは40〜275μm、特に好ましくは50〜250μmである。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの特性を損なわない範囲で少なくとも2層の積層フィルムとしてもよい。積層フィルムの場合は積層フィルム全体でかかる厚みを有することが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムが白色の積層フィルムである場合、後述するように白色顔料の含有量が相対的に多いポリエステル層の厚みが5μm以上あることが好ましい。かかる層厚みを有することにより、白色顔料による隠蔽性が得られ、また、ルチル型酸化チタンを用いる場合にはフィルムの紫外線劣化の抑制効果が高まる。
【0047】
積層フィルムが層(X)および層(Y)の少なくとも2層からなる構成において、前記エポキシ化合物(A)、前記成分(B)はそれぞれ少なくとも1つの層に含有される。また、積層フィルムにおいてさらに白色顔料(C)も用いる場合、前記白色顔料(C)は少なくとも1つの層に含有されることが好ましく、前記エポキシ化合物(A)、前記成分(B)と同じ層であっても異なる層であってもよいが、前記エポキシ化合物(A)等が含まれない層に含有されるか、前記エポキシ化合物(A)、前記成分(B)が複数層に含有される場合はエポキシ化合物(A)等の含有量が相対的に少ない層に含有されることが好ましい。
【0048】
さらに、隠蔽性に優れる白色積層ポリエステルフィルムとして用いる場合、前記エポキシ化合物(A)および前記成分(B)が層(X)に含有され、前記層(X)における白色顔料濃度が0〜10重量%であり、前記層(Y)における白色顔料濃度が5〜25重量%であり、かつY層における白色顔料濃度がX層における白色顔料濃度より高いことが好ましく、同時に各層を構成する前記組成物に対する白色顔料の含有量をそれぞれの層厚み比で換算した、積層フィルム全体での白色顔料の含有量が3〜18重量%であることが好ましい。少なくとも1つの層の白色顔料の含有量を5重量%以上とすることにより優れた隠蔽性が得られ、かつ白色顔料が相対的に少ない層にエポキシ化合物(A)と成分(B)を相対的に多く用いることにより、より優れた外観性が発現する。
該白色積層ポリエステルフィルムにおいて、前記層(X)と前記層(Y)の厚み比(X:Y)は70:30〜97:3であることが好ましい。
【0049】
積層フィルムとする場合には、生産性の観点から共押出による積層フィルムとすることが好ましく、さらに太陽電池の保護膜として用いる場合、白色顔料が相対的に多い層(Y)を光のあたる層に配置することが好ましく、該層(Y)が外面となるように配置することが好ましい。
【0050】
[その他添加剤]
必要に応じてさらに性能を上げるために、本発明のポリエステルフィルムには、成分(A)、成分(B)、白色顔料(C)以外にも従来公知の各種添加剤をその作用を阻害しない範囲内で用いてもよく、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などを添加することができる。
【0051】
滑剤としては有機物、無機物いずれの滑剤を用いてもよく、無機物の滑剤としては、例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、アルミナの粒子を挙げることができる。分散性と滑り性の観点から、滑剤として好ましくは平均粒径0.1〜5.0μm、さらに好ましくは0.2〜4.0μmの粒子を用いる。粒子の形状は板状、球状いずれであってもよいが、滑剤の中には水分を吸着し易いものや配位し易いものがあり、滑剤により持ち込まれた水分がフィルムの分子量を低下させ、耐熱性、耐加水分解性に影響することがあるため、吸着水や配位水の少ない構造、組成のものが好ましい。滑剤として特に好ましいものは真球状シリカである。
【0052】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物を、紫外線吸収剤としては例えばベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物を例示することができる。これらの添加剤は、本発明の作用を阻害しない範囲内であればフィルムに含有させてもよく、フィルムに塗布する方法で機能を付与してもよく、あるいはポリエステルフィルムを積層構成とし、その少なくとも1層にこれらの剤を添加する方法でもよい。
【0053】
[太陽電池部材]
本発明のポリエステルフィルムは太陽電池部材として用いることができ、さらに太陽電池モジュールの表面あるいは裏面を保護する太陽電池保護膜として用いることができる。かかる保護膜は太陽電池表面保護膜、太陽電池裏面保護膜と称することがある。
太陽電池保護膜として用いる場合、本発明のポリエステルフィルム1枚で太陽電池表面保護膜として使用してもよく、他のシートと積層した積層体を太陽電池表面保護膜として使用してもよい。また、本発明のポリエステルフィルム1枚で太陽電池裏面保護膜として使用してもよく、他のシートと積層した積層体を太陽電池裏面保護膜として使用してもよい。ここで太陽電池表面とは太陽電池モジュール受光面側、即ちフロントシート側を指し、太陽電池裏面とは太陽電池セルの裏面側、即ちバックシート側を指す。積層体の例として、絶縁特性を向上させる目的で別のポリエステルフィルムと貼り合わせた積層体、さらに耐久性を向上させる目的でポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどの高耐候性樹脂からなるフィルムと貼り合わせた積層体を例示することができる。
【0054】
太陽電池裏面保護膜として用いる際には、水蒸気バリア性を付与する目的で水蒸気バリア層を積層することが好ましい。この構成の太陽電池裏面保護膜は、JIS Z0208−73に従い測定される水蒸気の透過率が5g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。かかる水蒸気バリア層としては、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔を用いることができ、フィルムとしてポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、箔としてはアルミニウム箔、銅箔を例示することができる。また、本発明のポリエステルフィルムに直接水蒸気バリア層をコート、あるいは蒸着しても構わない。これらの水蒸気バリア層は、一例として本発明のポリエステルフィルムがEVA層と接着して用いられる際にはEVA接着面の反対側に積層したり、またさらにその外側に別のフィルムを積層して複数のフィルムで挟みこむ構造をとる形態で用いることもできる。
【0055】
[製造方法]
本発明のポリエステルフィルムを製膜する際に用いるポリエステルの製造方法について、ポリエチレンテレフタレートを例に説明する。なお、ポリマーのガラス転移温度をTg、融点をTmと表記することがある。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの製造方法として、テレフタル酸ジメチルに代表される芳香族ジカルボン酸エステルとエチレングリコールをエステル交換反応により反応させた後に重縮合反応を行う方法、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールをエステル化反応させた後に重縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0056】
まずエステル交換反応を用いた製造過程を説明すると、エステル交換触媒の存在下発生するアルコールを除去させつつエステル交換反応を実施した後、リン酸化合物を添加して実質的にエステル交換反応を完了させ、次いで得られた反応生成物にアンチモン化合物および/またはチタン化合物を添加し、重縮合反応を行う。エステル化反応を用いた製造工程については、除去するのがアルコールでなく水であること、エステル交換触媒を添加しないこと以外はエステル交換法と同様の手法にて樹脂を得ることができる。
より高い耐加水分解性のポリエステルフィルムを得るためには、上記手法で得られたポリエステル原料の高極限粘度数および低末端カルボキシル基濃度化が重要であり、固相重合を加えることが好ましい。
【0057】
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製膜法に準拠して製造することができる。以下にその一例を示す。まず、原料のポリエステルをスリットダイよりフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとする。積層構成の場合は、各層の原料を必要に応じて乾燥させた後、各々を別々の押出機で溶融混合し、フィードブロックを用いて積層した後、スリットダイに展開して未延伸フィルムを得る。ここまでのいずれかの工程内で、成分(A)および成分(B)、好ましくは白色顔料(C)が添加・混合される。溶融工程において添加する場合は、押出機のフィードポケットからポリエステル原料と所定の配合比となるよう剤を投入することができる。また、押出機のバレルの上部または側部より添加することもできる。
【0058】
次いで、得られた未延伸シートを少なくとも1軸方向、好ましくは2軸方向に延伸する。延伸は同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でもかまわない。まず逐次二軸延伸を説明すると、未延伸フィルムを加熱されたロールの速度差により走行方向にまず延伸する。つぎにフィルムを延伸機に導き、両端をクリップで把持して走行させながら両端のクリップ幅を連続的に広げることで幅方向に延伸する。延伸工程における温度はポリエステルのTg以上の温度、さらにはTg〜(Tg+70℃)の範囲の温度とするのが好ましい。ポリエステルがホモポリエチレンテレフタレートの場合は延伸温度は78〜158℃である。また延伸倍率は2.8〜4.2の範囲内で行うことが好ましく、さらに好ましくは3.0〜3.9倍である。延伸倍率が下限に満たないと厚み斑が低下したり、耐熱性や耐加水分解性が低下することがある。一方、上限を超える延伸倍率の場合はフィルム切断が発生しやすくなることがある他、得られたフィルムの面方向の強度が低下しやすく、デラミネーションやクラックを引き起こす原因となる。ここで延伸倍率については、縦延伸倍率は(延伸後のフィルム走行速度)÷(延伸前のフィルム走行速度)と定義し、横延伸倍率は延伸工程完了直後でのフィルム幅と延伸工程直前でのフィルム幅の比と定義する。
【0059】
本発明において、延伸工程に引き続き、さらに熱固定処理を行うことが好ましく、横延伸後のフィルムの両端を把持したまま(Tm−70)℃〜(Tm−20)℃の範囲内で熱処理を行うことが好ましい。ポリエステルがホモポリエチレンテレフタレートである場合は、188℃〜238℃の温度範囲が好ましい。この温度範囲内とすることで耐加水分解性に優れたフィルムを得ることができる。またかかる温度で、定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させると寸法安定性がよくなる。
【0060】
さらに弛緩処理を行う場合、公知の弛緩処理方法を用いることができ、例えば熱固定後にフィルム温度を常温に戻す過程で、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させる方法(特開昭57−57628号公報)が挙げられる。その際の弛緩させる割合(弛緩率)として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは1.0〜4.0%、さらに好ましくは1.2〜3.5%の割合で弛緩させることが好ましい。かかる縦弛緩処理により、縦方向の熱収縮率をより小さくすることができる。また横方向の寸法安定性をより高める方法としては、フィルム両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0061】
次に同時二軸延伸を説明すると、未延伸フィルムを直接テンターに導き、クリップに連続的に把持させる。その後、予熱を経て加熱しながら、クリップの速度およびクリップ間の幅を増大させることで、走行方向と幅方向を同時に延伸する。延伸工程における延伸温度、延伸倍率、および熱固定処理は前述の逐次二軸延伸法と同様にして行うことが好ましい。なお、弛緩処理については逐次二軸延伸法と同様、把持しているフィルムの両端を切り落として引き取りロールの速度を減少させることで弛緩させることもできるが、両端を切り落とすかわりにクリップの走行速度とクリップ間の幅を同時に減少させ、弛緩させる手法も有効である。
【0062】
本発明のポリエステルフィルムを太陽電池の保護膜として用いる場合、接着剤を介して他シートと積層して保護膜を構成するか、直接上に太陽電池素子の封止樹脂が設けられる。該ポリエステルフィルムと接着剤や封止樹脂との接着性を向上させる目的で、本発明のポリエステルフィルムの片面に易接着性のコーティングを施してもよい。接着剤としては例えばエポキシ系やウレタン系接着剤が多く用いられ、封止剤はほとんどがEVA(エチレンビニルアセテート)である。易接着性コーティング層の構成材としては、ポリエステルフィルムと接着剤あるいはEVAの双方に優れた接着性を示す材であることが好ましく、例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂を例示することができ、さらに架橋成分を含有することが好ましい。コーティングは一般的な既知のコーティング方法を用いることができる。好ましくは、延伸可能なポリエステルフィルムに、前述のコーティング層の構成成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理するインラインコーティング法で行う。このとき、フィルムの上に形成された塗膜の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。評価方法を以下に示す。
(1)単官能エポキシ化合物成分(A)の組成および含有量
単層フィルムの場合、フィルムサンプル約10mgを重トリフルオロ酢酸と重クロロホルムの1:1混合溶媒約0.6mlに溶解し、
1H−NMR法で解析した。アルキル基と帰属されるδ=0.6〜2.0ppmのピーク群の積分値からフィルム中の存在量を計算した。
積層フィルムの場合は予め断面観察でその層構成を大まかに把握したうえで、フィルムサンプルからフェザー刃で表層から層境界手前まで削り取り、10mgサンプリングした。各層、および積層フィルム全体についてそれぞれサンプリングし、上記の方法に従って、各層について成分(A)の組成および含有量を求めた。
【0064】
(2)成分(B)の組成、CPM、式量および含有量
イオンクロマト法により成分(B)の組成、CPM、式量を同定し、含有量を特定した。積層フィルムの場合は(1)と同様の手法で各層、および積層フィルム全体についてそれぞれサンプリングを行い、イオンクロマト法により測定した。
【0065】
(3)白色顔料(C)の組成、含有量
組成については、(2)と同様のICP−MS分析によりその組成を定性・半定量分析した。含有量については、フィルムサンプル約10mgをアルミニウム製パンに積載して熱重量分析計(SII社製TG/DTA200)に装着し、大気雰囲気下25℃から20℃/分の速度で550℃まで昇温させ、重量残存率を読み取り、白色顔料の含有量を求めた。
積層フィルムの場合は各層、および積層フィルム全体についてそれぞれ(1)と同様にサンプリングし、上記の方法に従って、各層について白色顔料(C)の組成および含有量を求めた。
【0066】
(4)フィルム厚み、各層厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
各層厚みについては、フィルムから試料を三角形に切り出し包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂で包埋し、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0067】
(5)極限粘度数(η)
サンプルを重量比6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]
2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)
−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。なおポリエステル以外に、白色顔料など上記溶媒に不溶な成分を含む際は、予めそのポリエステル成分の重量比率を測定しておき、η値を重量比率で割ることでポリマー自体の極限粘度数を得た。
【0068】
(6)末端カルボキシル基濃度
サンプル10mgをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):重クロロホルム=1:3の混合溶媒0.5mlに溶解してイソプロピルアミンを数滴添加し、
1H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
【0069】
(7)耐加水分解性
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、温度121℃、湿度100%RHに設定した環境試験機内に所定時間放置する。その後試料片を取り出し、試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いておこない、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minにて実施した。同様に上記処理を行わない試験片について試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。
処理後の縦方向の破断伸度平均値を処理前の縦方向の破断伸度平均値で割った値をその処理時間についての破断伸度保持率[%]とした。
上記環境試験機内での処理時間は10時間きざみで行い、それぞれの時間について破断伸度保持率をそれぞれ算出し、破断伸度保持率が50%をまたぐ隣接する2データのうち処理の短いほうの時間を破断伸度半減期と定義する。耐加水分解性を破断伸度半減期に応じて以下の通りランク付けした。
S: 110時間 ≦ 破断伸度半減期
A: 90時間 ≦ 破断伸度半減期 < 110時間
B: 70時間 ≦ 破断伸度半減期 < 90時間
C: 50時間 ≦ 破断伸度半減期 < 70時間
D: 破断伸度半減期 < 50時間
【0070】
(8)異物欠点(表面外観性)
フィルムサンプルについて、暗室内でLED光反射検査を行い、長辺0.1mmを超える内部異物の数をカウントした。フィルム1m
2あたりの評価結果を下記の基準で評価した。積層構成のフィルムの場合、測定方法(1)をもとに成分(A)の含有量が相対的に多い層から観察を行った。また透明性の高いフィルムなど反射法で観察しにくい場合は、反射検査に代えて透過検査を用いてもよい。
A: 異物個数/1m
2 < 3個
B: 3個 ≦ 異物個数/1m
2 < 15個
C: 15個 ≦ 異物個数/1m
2
【0071】
(参考例1) ポリエステルの製造(PEs−a)
エステル交換反応容器にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを60重量部、酢酸マンガン四水和物を仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらフェニルホスホン酸を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後反応物を重縮合装置に移行し、酸化アンチモンおよび酢酸チタンの両方を添加した。
次いで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。得られたポリマーの極限粘度数は0.64dl/g、末端カルボキシル基濃度は17当量/トン、触媒、リン化合物の濃度は、Mnが30mmol%、Sbが20mmol%、Tiが3mmol%、フェニルホスホン酸が15mmol%であった。これをPEs−aと称する。
【0072】
(参考例2) ポリエステルの製造(PEs−b)
参考例1で得られたポリマー(PEs−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で7時間固相重合を行った。固相重合後の極限粘度数は0.77dl/g、末端カルボキシル基濃度は10当量/トンであった。これをPEs−bと称する。
【0073】
(参考例3) ポリエステルの製造(PEs−c)
参考例2で得られたポリマー(PEs−b)60重量%と堺化学株式会社製ルチル型酸化チタン粒子TCR−52(平均粒径0.2μm)40重量%とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPEs−cと称する。
【0074】
(参考例4) ポリエステルの製造(PEs−d)
反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は約5〜7であった。このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、テトラブトキシチタネート0.018重量部を投入した。引き続き系内の反応温度を255℃から280℃、また、反応圧力を常圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は110分間であり、得られたポリエチレンテレフタレートペレットの固有粘度は0.52dl/gであった。これをPEs−dと称する。
【0075】
(参考例5) ポリエステルの製造(PEs−e)
参考例4で得られたポリマー(PEs−d)を220℃、15時間真空下で固相重合して得られたペレット( 固有粘度0.78dl/g、カルボキシル末端基濃度9.0当量/トン)を、25℃、0.5重量%の酢酸カリウム塩水溶液を入れた容器に入れて4時間接触処理させ、引き続き、酢酸カリウム塩水溶液を除いた後160℃にて5時間、窒素気流下で乾燥させた。これをPEs−eと称する。
【0076】
(参考例6) ポリエステルの製造(PEs−f)
参考例5で得られたポリマー(PEs−e)60重量%と堺化学株式会社製ルチル型酸化チタン粒子TCR−52(平均粒径0.2μm)40重量%とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPEs−fと称する。
【0077】
(参考例7) ポリエステルの製造(PEs−g)
エステル交換反応後に成分(B)として酢酸カリウム(以下、B1と表記する)を0.26重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−gと称する。
【0078】
(参考例8) ポリエステルの製造(PEs−h)
エステル交換反応後に平均分子量約1000のポリアクリル酸ナトリウム(以下、B2と表記する)を0.24重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−hと称する。
【0079】
(参考例9) ポリエステルの製造(PEs−i)
エステル交換反応後にステアリン酸カルシウム/ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸リチウム(50/25/25重量比)複合物(以下、B3と表記する)を1.04重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−iと称する。
【0080】
(参考例10) ポリエステルの製造(PEs−j)
エステル交換反応後に成分(B)として酢酸ナトリウム(以下、B4と表記する)を0.22重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−jと称する。
【0081】
[実施例1]
表1に示した配合比で層(X)のポリエステル原料をそれぞれ混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機1のフィードポケットに供給し、285℃で溶融押出しした。同時にエポキシ化合物(A)として商品名「カーデュラE10P」(ネオデカン酸グリシジルエステル、モメンティブスペシャリティケミカルズ(株)製、以下「A1」と表記する)を表2に記載の配合量となるよう、チューブポンプを用いてフィードポケット側部から添加した。層(Y)についても層(X)と同様に表1に示した配合比で混合・乾燥を行い、押出機2に供給し285℃で溶融押出しした。
それぞれの押出機で溶融した樹脂組成物を2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。各樹脂の供給量は、層(X)と層(Y)の厚み比率が80%:20%となるように調整し、冷却ドラムに接触する側の面は層(X)とした。以上の条件における成分(A)、成分(B)、白色顔料(C)の含有量を表2に示している。さらにこのシートを静電密着法により表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.2倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.5倍延伸した。その後、テンター内で222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、横方向に3%幅入れを行い、続いて両端を切り落として長手方向に2%熱弛緩した後、室温まで冷やして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの極限粘度数は0.582g/dl、カルボキシル末端基数は8.4当量/トン、特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0082】
[実施例2−4]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0083】
[比較例1]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1による耐加水分解性効果が不十分であり、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
【0084】
[比較例2]
表2の通り、エポキシ化合物A1、成分B1を添加しないよう変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの極限粘度数は0.598g/dl、カルボキシル末端基数は22.5当量/トン、特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1、成分B1とも含まないため、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
【0085】
[比較例3]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。過剰量のエポキシ化合物に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。またエポキシ化合物A1の未反応分の分解を起点としてポリエステル樹脂の分解も促進され、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。
【0086】
[実施例5,6]
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0087】
[比較例4]
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B1の配合量が不足していたためエポキシ化合物A1の反応性が乏しく、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
【0088】
[比較例5]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例4と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B1の配合量が不足しているためエポキシ化合物A1の供給量を増やしてもエポキシ化合物A1の反応性が乏しく、Aランクレベルの耐加水分解性は得られなかった。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
【0089】
[比較例6]
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。過剰量の成分B1に由来する異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0090】
[比較例7]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例6と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例6と同様、過剰量の成分B1に由来する異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0091】
[比較例8]
成分(B)を酢酸カリウム(B1)からポリアクリル酸ナトリウム(B2)に変更し、表1の通りチップ配合比を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B2を構成するアニオン種の平均分子量は777と大きく、成分(B)に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0092】
[比較例9−14]
表1の通りチップ配合比を変更することでエポキシ化合物A1、成分B2の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例8と同様、成分(B)に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0093】
[比較例15]
成分(B)を酢酸カリウム(B1)から参考例9に記載したステアリン酸カルシウム等の複合物(B3)に変更し、表1の通りチップ配合比を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3のCPMが大きいため、重量基準で実施例1と同量配合するには成分B3を多量に配合する必要があり、成分B3に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0094】
[比較例16、17]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例15と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0095】
[比較例18]
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B3の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3のCPMが大きいため、実施例で用いた成分B1で効果が発現する配合量(重量基準)ではエポキシ基の反応性に乏しく、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
【0096】
[比較例19]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例18と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例18と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0097】
[比較例20]
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B3の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0098】
[比較例21]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例20と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例20と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
【0099】
[実施例7−9]
表1の通り層(Y)のチップ配合比を変更し、押出機2のフィードポケットの側部からもエポキシ化合物A1を添加し、表2の通りの配合量とした以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少ないため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0100】
[比較例22]
押出機1、押出機2からのエポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例7と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1の効果が不十分であり、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
【0101】
[実施例10]
表1の通りチップ配合比を変更し、フィルムを構成するポリエステル樹脂の種類を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0102】
[実施例11]
未延伸シートを得るまでの工程は実施例1と同様に操作を行った。未延伸フィルムの両端をクリップで保持しながら同時二軸延伸機に導き、100℃に加熱された雰囲気中で長手方向(縦方向)に3.2倍延伸すると同時に幅方向(横方向)に3.5倍延伸した。その後テンター内でさらに222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、同時に縦方向にクリップ速度差をつけて2%の熱弛緩率とし、また同時に横方向に幅入れ率3%でクリップ幅入れを行い、室温まで冷やしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜用フィルムとして好適に利用できる。
【0103】
[実施例12]
表1に示した通りの配合比でポリエステル原料をそれぞれ混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機1のフィードポケットに供給し、285℃で溶融押出しした。同時に、エポキシ化合物A1を表2に記載の配合量となるよう、チューブポンプを用いてフィードポケット側部から添加した。このようにして得られた溶融樹脂をスリットダイよりシート状に成形した。成分(A)、成分(B)の含有量を表2に示した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.0倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.2倍延伸した。その後テンター内で222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、横方向に3%幅入れを行い、続いて両端を切り落として長手方向に2%熱弛緩した後、室温まで冷やして厚み250μmの単層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜、特に裏面保護膜の内面用フィルムとして好適に利用できる。
【0104】
[実施例13]
成分(B)を酢酸カリウム(B1)から参考例10に記載した酢酸ナトリウム(B4)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少ないため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0105】
[実施例14、15]
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】