特許第6185340号(P6185340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185340
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】警光灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 9/00 20060101AFI20170814BHJP
   H04R 1/30 20060101ALI20170814BHJP
   G08B 5/00 20060101ALI20170814BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20170814BHJP
   G08B 7/00 20060101ALI20170814BHJP
   B60Q 5/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B60Q9/00 P
   H04R1/30 A
   G08B5/00 S
   G08B5/00 R
   H04R1/02 103F
   G08B7/00 Z
   B60Q5/00 680E
   B60Q5/00 610B
   B60Q5/00 620D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-181761(P2013-181761)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-47993(P2015-47993A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智
(72)【発明者】
【氏名】西垣 誠
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−141079(JP,A)
【文献】 特開2001−307504(JP,A)
【文献】 実開昭59−014479(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0146390(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 9/00
B60Q 5/00
G08B 5/00
G08B 7/00
H04R 1/02
H04R 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に光を出力する発光部とスピーカドライバとを備える本体と、
前記本体に取り付けられる2個のスピーカホーンと、を備え、
前記本体は、
前記発光部と前記スピーカドライバと前記2個のスピーカホーンとを支持する支持部を備えており、
前記支持部には、
前記スピーカドライバにおける音の出力口と前記2個のスピーカホーンにおける音の入力口とを空洞によって連結する音伝導部であって、
前記出力口に連結される第1の開口部と、
前記入力口に連結される第2の開口部と、
前記第1の開口部から前記第2の開口部まで延びる音道と、によって構成された前記音伝導部が形成されている、
警光灯。
【請求項2】
前記第2の開口部は、前記2個のスピーカホーンの移動方向に長い穴であり、
前記支持部は、前記2個のスピーカホーンを前記移動方向に移動可能に支持する、
請求項1に記載の警光灯。
【請求項3】
前記音道が延びる方向に垂直な方向における当該音道の断面形状は一定の形状であり、
前記第2の開口部と前記入力口との間には、前記第2の開口部と前記入力口との間の空洞の形状を前記一定の形状と同一にする空洞形状調整部材が取り付けられる、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の警光灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警光灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電球やLED等の発光素子の光を外部に出力可能な、車両の上部に取り付けられる警光灯が知られている。例えば、特許文献1においては、車両の上部に対して車両の左右方向に長い警光灯を取り付ける構成において、左右方向の中央にスピーカドライバが配置され、当該スピーカドライバに取り付けられたスピーカホーンによってスピーカドライバからの出力音を増幅させる構成が開示されている。また、特許文献2においては、車両の上部に対して車両の左右方向に長い警光灯を取り付ける構成において、ドライブ部とスピーカとが一体となったユニットが左右方向の両端側に取り付けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3613128号公報
【特許文献2】特許第4515376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、少ない装置構成において大きい音を出力する警光灯を提供することができなかった。すなわち、従来の技術においては、スピーカドライバとスピーカホーンとが一体となっており、スピーカドライバとスピーカホーンとの組が1組である特許文献1よりも大きい音を出力するためには、特許文献2のようにスピーカドライバとスピーカホーンとの組の数を増加させる必要があった。このように、スピーカドライバとスピーカホーンとの組の数を増加させると重量およびコストが増加してしまう。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、少ない装置構成において大きい音を出力する警光灯を提供することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、外部に光を出力する発光部とスピーカドライバとを備える本体と、本体に取り付けられる2個のスピーカホーンと、を備え、本体が、スピーカドライバにおける音の出力口と2個のスピーカホーンにおける音の入力口とを空洞によって連結する音伝導部を備えている、警光灯を構成する。すなわち、スピーカドライバの出力音の指向性や共鳴の状態をスピーカホーンによって調整する構成において、スピーカドライバの出力音を音伝導部でスピーカホーンに伝達することにより、スピーカドライバ1個に対して少なくとも2個のスピーカホーンが組となるように構成する。以上の構成によれば、1個のスピーカドライバによって2個以上のスピーカホーンから指向性や共鳴の状態が調整された音を出力することが可能であり、少ない装置構成において大きい音を出力する警光灯を提供することができる。
【0006】
ここで、本体は、少なくとも発光部とスピーカドライバと音伝導部とを備えており、発光部は、緊急時であることや作業中であることなど、所定の意味を表す光を警光灯の周囲に対して出力することができればよい。発光部の光源は特に限定されず、LED等の発光素子やハロゲンランプ等の電球などによって光源を構成可能である。むろん、発光部は光源のからの光の出力方向を回転させる回転灯として構成されていても良いし、光源からの出力光の強度を変化させることで出力光を調整する構成であっても良い。
【0007】
スピーカドライバは、スピーカドライバの出力口からサイレン等の音を出力するための装置であり、例えば、電源、アンプ、振動板(ダイヤフラム)、磁石、ボイスコイル、出力音データの蓄積部などから構成された装置等を想定可能である。
【0008】
スピーカホーンは、入力口から入力した音の指向性や共鳴の状態を調整し、所望の周波数の音(例えば、サイレン音等)が所望の位置で充分な大きさとなるように音を調整することができればよい。従って、例えば、レフレックスホーンスピーカのように入力口から入力した音の進行方向が複数回変化するとともに音の進行とともに断面積が徐々に大きくなるような音の伝達路を備える構成等を想定可能である。
【0009】
音伝導部は、スピーカドライバにおける音の出力口と2個のスピーカホーンにおける音の入力口とを空洞によって連結する部位であればよい。すなわち、スピーカドライバの出力口とスピーカホーンの入力口とが任意の形状の中空の管体によって接続されることにより、スピーカドライバの出力口から出力された音が当該管体の内部の空洞を伝達してスピーカホーンの入力口に達するように構成されていれば良い。音伝導部においては、スピーカドライバの出力口と2個のスピーカホーンの入力口とを一連の空洞で結びつけていてもよいし、スピーカドライバの出力口と1個のスピーカホーンの入力口とを一連の空洞で結びつける管体が複数個構成されてもよい。
【0010】
音伝導部は、本体の一部であれば良く、音伝導部を構成する管体が他の機能を有する部材と一体で構成されても良いし別体で構成されても良い。前者の例としては、例えば、本体が、発光部とスピーカドライバと2個のスピーカホーンとを支持する支持部を備え、当該支持部と音伝導部とが一体として構成されている例を想定可能である。
【0011】
具体的には、支持部に形成された、出力口に連結される第1の開口部と、入力口に連結される第2の開口部と、第1の開口部から第2開口部まで延びる音道と、によって音伝導部が構成される例を想定可能である。すなわち、発光部とスピーカドライバと2個のスピーカホーンとを支持する支持部に、第1の開口部および第2の開口部で開口した中空の音道を形成し、第1の開口部にスピーカドライバの出力口を連結し、第2の開口部にスピーカホーンの入力口を連結する構成とする。この構成によれば、スピーカドライバの出力口から出力された音が音道を介してスピーカホーンの入力口に伝達される。そして、支持部と音伝導部とが一体的に構成されることにより、少ない装置構成において大きい音を出力する警光灯を提供することができる。
【0012】
さらに、2個のスピーカホーンを本体に対して取り付ける位置が調整可能に構成されていても良い。例えば、第2の開口部は、2個のスピーカホーンの移動方向に長い穴であり、支持部は、2個のスピーカホーンを前記移動方向に移動可能に支持する構成としても良い。すなわち、2個のスピーカホーンの入力口は、支持部に形成された音道の開口部としての第2の開口部と接続される。従って、スピーカホーンが移動されると、スピーカホーンの入力口と第2の開口部との相対位置関係が変化する。このように相対位置関係が変化する状況においてスピーカドライバからスピーカホーンまで音を伝達するためには、どのように移動されたとしてもスピーカドライバからスピーカホーンまでの一連の空洞を形成しているように構成されている必要がある。
【0013】
そこで、第2の開口部を2個のスピーカホーンの移動方向に長い穴として構成すれば、スピーカホーンの入力口を第2の開口部の複数の位置に連結可能であるとともに、どの位置に連結されているとしてもスピーカドライバからスピーカホーンまでの一連の空洞が形成されているように構成することが可能になる。なお、支持部がスピーカホーンを移動可能に支持するための構成としては、種々の構成を採用可能であり、スピーカホーンを支持部に対してスライド移動させることができるように構成するとともに、複数の位置や任意の位置でスピーカホーンと支持部とを連結できるように構成すれば良い。以上の構成によれば、2個のスピーカホーンの位置を調整することが可能である。なお、2個のスピーカホーンの移動方向を平行または同一線上とすれば、2個のスピーカホーンの間隔を調整可能になる。
【0014】
さらに、音伝導部は、空洞を音の伝達路としてスピーカドライバからの出力音をスピーカホーンに伝達する構造であるため、音の無用な反射や共鳴等を防止して効率的に音を伝達できるように空洞の形状が規定されていることが好ましい。そこで、音道が延びる方向に垂直な方向における当該音道の断面形状が一定の形状となるように構成しても良い。すなわち、音道が延びる方向に沿って音道の内径の大きさおよび形状が維持されるように構成しても良い。この構成によれば、音道内における音の無用な反射や共鳴等を防止して効率的に音を伝達することができる。
【0015】
また、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との相対位置関係はスピーカホーンの移動に伴って変化する。そこで、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との間に、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との間の空洞の形状を一定の形状(音道の断面形状)と同一にする空洞形状調整部材が取り付ける構成としても良い。すなわち、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との間の空洞の形状も、音道の内側の空洞の形状と同一になるように構成する。この構成によれば、支持部に形成された第1の開口部よりスピーカホーン側において、スピーカホーンの入力口に至るまでの空洞の形状を一定の形状とすることができる。従って、音道内における音の無用な反射や共鳴等を防止して効率的に音を伝達することができる。なお、音道内の空洞の形状としての一定の形状(音道の断面形状)は、多角形でも良いし円形でも良く、特に限定されない。
【0016】
なお、空洞形状調整部材としては種々の態様を想定可能であり、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との間に介在するとともに、支持部に形成された第2の開口部からスピーカホーンの入力口へつながる空間の形状を一定の形状にした状態を維持した状態でスピーカホーンを移動させることが可能な部材等を想定可能である。また、音道に挿入されることで、支持部に形成された第2の開口部とスピーカホーンの入力口との間の空間の形状を調整できる部材を構成しても良く、種々の構成を想定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(1A)は本発明の一実施形態にかかる警光灯の斜視図、(1B)は警光灯の分解斜視図である。
図2】(2A)は警光灯の分解斜視図、(2B)は支持部の拡大斜視図である。
図3】(3A)〜(3C)は挿入部を示す図、(3D)(3E)はシール部を示す図、(3F)は空洞形状調整部材を取り付けた状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)警光灯の構成:
(2)空洞形状調整部材:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)警光灯の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる警光灯10の斜視図である。警光灯10は、本体20と当該本体に取り付けられる2個のスピーカホーン30とを備えている。同図1Aに示すように、本体20は一方に長いほぼ直方体の外形を有しており、その一面(下面)にスピーカホーン30が2個取り付けられる。警光灯10は、車両の上部に取り付けて使用される。すなわち、本体20の長手方向と車両の左右方向とが平行になるように警光灯10が車両の上部に取り付けられる。なお、本明細書では、図1Aに示すように、車両の左右方向に平行な方向をx軸方向とし、x軸方向に垂直であるとともに車両の前後方向に平行な方向をy軸方向とし、x軸方向およびy軸方向に垂直な鉛直方向をz軸方向として座標軸を定義して説明をする。なお、この座標系において車両から見た上下方向、左右方向、前後方向を図1Aに示す座標系に併記してある。
【0020】
本体20は、外部に光を出力する発光部(図示せず)を備えており、本実施形態において発光部には、複数のLED素子と当該複数のLED素子を所定の発光パターンで発光させるための装置が備えられている。当該装置に対しては、車両からLED素子の発光開始等の指示を行うことが可能であり、LED素子の光が外部に出力されることにより、緊急等の所定の意味を有する光を警光灯10から出力した状態で車両を走行させることができる。
【0021】
図1Bおよび図2Aは、警光灯10の分解斜視図であり、本体20とスピーカホーン30とが分解された状態において、さらに本体20を分解した状態を示している。なお、図1Bは上方から眺めた分解斜視図、図2Aは下方から眺めた分解斜視図である。本体20は、カバー20aと支持部20bとを備えており、一部の部位(発光部等)は省略して示している。カバー20aは、透明な有彩色(黄、黄赤、赤、青等)の樹脂で形成されており、内部に発光部を収容可能であるとともに、発光部から出力される光が外部から視認可能である。
【0022】
支持部20bは、アルミニウム製の薄い板によって構成される中空の部材であり、外形はほぼ直方体である。支持部20bはカバー20aを支持することが可能であり、支持部20bでカバー20aを支持した状態(支持部20bにカバー20aを取り付けた状態)において本体20はほぼ直方体であり、支持部20bはその底面(x−y平面に平行な面のなかの下側の面)を形成する。
【0023】
支持部20bにおいては、y軸方向の中央にx軸方向に平行な方向に延びる中空の音道20cが形成されている。図2Bは、支持部20bのx軸方向の端部を拡大した図であり、同図2Bに示すように、支持部20bにおいては、z−y平面に垂直な方向の断面が長方形である音道20cがx軸方向に平行な方向に延びて支持部20bを貫通している。従って、音道20cはx軸方向の全長にわたってz−y平面に垂直な方向の断面形状が一定の形状であるとともに、x軸方向の全長にわたって断面積が一定である。
【0024】
支持部20bの上面には、図2Bに示すようにx軸方向に平行な方向に2本のレール20eが形成されており、当該レール20eにはナットを挿入するとともにナットの位置を任意の位置に移動させることができる。また、ナットは、ネジ穴をレール20eの開口部に向けた状態(上方に向けた状態)で挿入され、上方側からネジをナットに挿入することにより、任意の位置においてネジをナットに締め付けることができる。
【0025】
支持部20bの上面の中央には図1Bに示すようにスピーカドライバ20dが支持される。すなわち、スピーカドライバ20dは、径が徐々に小さくなる円形の部位を直方体の部位20d1に挿入することによって構成され、当該直方体の部位20d1には複数の箇所にネジ穴が形成されている。そして、当該ネジ穴にネジが挿入されてレール20eに挿入されたナットとネジとを締め付けることによって、スピーカドライバ20dが支持部20bの上面の中央に支持される。
【0026】
スピーカドライバ20dは、振動板(ダイヤフラム)、磁石、ボイスコイル等を備えた装置であり、振動板を振動させることによって出力される音を直方体の部位20d1の下面に形成された出力口(図示せず)から出力させることが可能である。支持部20bの上面の中央にはスピーカドライバ20dの出力口に対応した第1の開口部が形成されており(図示せず)、当該第1の開口部は音道20cにつながっている。なお、スピーカドライバ20dは、スピーカドライバ20dの出力口と第1の開口部との間に図示しないシール部材(パッキン)を挟んだ状態で支持部20bに取り付けられる。従って、スピーカドライバ20dの出力口から出力された音は、支持部20bの外部に漏れることなく音道20c内に伝達される。なお、支持部20bのx軸方向の両端には、板状の部材20fが取り付けられ、音道20cを塞ぐように構成されている。
【0027】
スピーカホーン30は、支持部20bの下面に支持される。すなわち、支持部20bの下面には、図2Bに示すようにx軸方向に平行な方向に2本のレール20gが形成されており、当該レール20gにはナットを挿入するとともにナットの位置を任意の位置に移動させることができる。また、ナットは、ネジ穴をレール20gの開口部に向けた状態(下方に向けた状態)で挿入され、下方側からネジをナットに挿入することにより、任意の位置においてネジをナットに締め付けることができる。
【0028】
支持部20bの下面のx軸方向の両端には図1Aに示すようにスピーカホーン30が支持される。すなわち、スピーカホーン30は、入力口から入力した音の指向性や共鳴の状態を調整し、サイレン音が所望の位置で充分な大きさとなるように音を調整する構造が収容されたユニットである。なお、本実施形態においては、2個のスピーカホーン30の双方において調整済みの音が前方に向けて出力するようにスピーカホーン30の内部の音道が形成されている。
【0029】
当該スピーカホーン30の上面には、図1Bにおいてスピーカホーン30の一方に示しているように音の入力口30bが形成されており、当該スピーカホーン30の筐体の上下の外面にはネジを貫通させるための穴30aが4カ所に形成されている。これらの穴30aの内側にはネジを貫通させるための図示しないボスが形成されており、下面の穴30aにネジを挿入して上面の穴30aの上方までネジを貫通させることができる。従って、図2Aに一点鎖線の矢印で示すように、穴30aに対して下方からネジが挿入されてレール20gに挿入されたナットと当該ネジとを締め付けることによって、スピーカホーン30が支持部20bの下面のx軸方向の両端に支持される。
【0030】
本実施形態において、スピーカホーン30を支持部20bに取り付ける位置は、x軸方向に変化させることが可能である。すなわち、支持部20bの下面においては、スピーカホーン30の取付位置に対応する2カ所に第2の開口部20hが形成されている。第2の開口部20hは、x軸方向に長く、長手方向の縁がx軸方向に平行な直線であるとともにx軸方向の両端において縁が半円形である。
【0031】
さらに、スピーカホーン30の上面の中央には上述のように音の入力口30bが形成されており、当該入力口30bには、図1Bにおいてスピーカホーン30の一方に示しているように、空洞形状調整部材40(後に詳述)が挿入されて固定された状態となっている。そして、支持部20bに形成された第2の開口部20h(図2A参照)には、スピーカホーン30の入力口に連結される空洞形状調整部材40を挿入可能であるとともに、第2の開口部20hに空洞形状調整部材40を挿入した状態で空洞形状調整部材40をx軸方向にスライドさせることが可能である。
【0032】
また、ナットの位置は、レール20g内で任意の位置に調整することができる。従って、本実施形態においては、スピーカホーン30の取付位置をx軸方向に変化させつつスピーカホーン30を支持部20bに対して取り付けることができる。以上のように、本実施形態においては、支持部20bに対するスピーカホーン30の取付位置をx軸方向に沿って変化させることができる。従って、警光灯10を構成する2個のスピーカホーン30の間隔を調整することが可能であり、車両の上面の大きさが異なる種々の車両に対して警光灯10を取り付けることが可能である。また、車両の周囲における所望の位置の音圧の大きさを最適化することが可能である。
【0033】
さらに、本実施形態においては、スピーカドライバ20dの出力口から出力された音が音道20cの内側を伝達してスピーカホーン30の入力口30bに入力し、スピーカホーン30内で入力口から入力した音の指向性や共鳴の状態が調整されて外部に出力される。この結果、車両の外部において充分に大きな音圧で音を聞くことができ、少ない装置構成において大きい音を出力する警光灯を提供することができる。
【0034】
なお、警光灯10における2個のスピーカホーン30のそれぞれを支持部20bの中央から320mmの位置に配置(スピーカホーン30の中央の距離が640mm)した場合と、2個のスピーカホーン30を支持部20bの中央に配置して両者の距離を0mmとした場合とについて、警光灯10の前方20mの位置にマイクを配置し、スピーカドライバ20dから850Hzのサイレン音を出力して音圧を測定した。この結果、前者においては93dB、後者においては88dBであった。前者は2個のスピーカホーン30の実際の使用状況、後者はスピーカホーンが実質的に中央に1個配置された状況に近い。従って、本実施形態においては、実際の使用状況において、少ない装置構成において大きい音を出力可能であることが確認された。
【0035】
(2)空洞形状調整部材:
次に、空洞形状調整部材40を詳細に説明する。本実施形態において、空洞形状調整部材40は、第2の開口部20hおよび入力口30bに挿入される挿入部40aとシール部材40bとを備えている。図3Aは挿入部40aの上面図、図3Bは挿入部40aの側面図、図3Cは挿入部40aの下面図であり、図3Dはシール部材40bの上面図、図3Eはシール部材40bの側面図である。
【0036】
挿入部40aは、弾性のある樹脂製の部材であり、図3A図3Cに示すように、板状の部位40a1から上方に延びる半円柱部40a2と矩形部40a3とを備え、さらに、板状の部位40a1から下方に延びるフランジ部40a4を備えている。板状の部位40a1には、矩形の穴40a5が形成されており、当該矩形の穴40a5の形状は、図2Bに示す音道20cのz−y平面に垂直な方向の断面の形状と同一である。
【0037】
半円柱部40a2は、半円柱部40a2の軸方向(図3Bにおける高さ方向)と垂直な方向の断面の形状が、長方形の一辺に対して当該一辺の長さと直径が等しい半円を結合して形成される図形の形状となっており、当該半円の直径Dは、図2Aに示す第2の開口部20hのx軸方向の両端に形成される半円の直径と同一である。また、当該半円の直径Dは、第2の開口部20hの幅(第2の開口部20hのx軸方向に平行な縁同士の距離)と同一である。
【0038】
さらに、矩形部40a3は直方体状の部位であり、一辺の長さが半円柱部40a2の半円の直径Dと同一である。従って、本実施形態において、挿入部40aの半円柱部40a2と矩形部40a3とを第2の開口部20hに対して挿入可能であるとともに、挿入部40aを第2の開口部20hに挿入した状態で挿入部40aを第2の開口部20hが延びる方向(図2Aに示すx軸方向)にスライド移動させることが可能である。
【0039】
フランジ部40a4は、穴40a5を内径とする中空の四角柱状の部位であるとともに最下部にフランジ状の部位が形成されている。さらに、フランジ状の部位と板状の部位40a1との間の距離は、スピーカホーン30の上面を構成する部材の厚さとほぼ同一であるとともに、フランジ状の部位と板状の部位40a1との間の部位の外周の形状は、スピーカホーン30の入力口30bの内径の形状とほぼ同一である。従って、フランジ部40a4の最下部に形成されたフランジ状の部位をスピーカホーン30の入力口30bに挿入し、フランジ状の部位と板状の部位40a1との間にスピーカホーン30の上面を構成する部材を挟むことによって、挿入部40aをスピーカホーン30の上面に対して取り付けることができる。このため、本実施形態においては、フランジ部40a4をスピーカホーン30の上面に対して取り付けた状態で、挿入部40aを第2の開口部20hに対して挿入し、スピーカホーン30をx軸方向に移動させることが可能である。
【0040】
ただし、本実施形態においては、挿入部40aの周囲から音が漏れることを防止するため、挿入部40aと支持部20bとの間にシール部材40bを配置した状態でスピーカホーン30を支持部20bに取り付けるように構成されている。シール部材40bは、弾性のある樹脂製の部材であり、矩形板状の部材である。シール部材40bの中央には、図3Aに示す板状の部位40a1の外形よりもわずかに大きい長方形の穴40b1が形成されている。従って、挿入部40aの半円柱部40a2と矩形部40a3を穴40b1に挿入し、さらに、板状の部位40a1の外周と穴40b1の内周とが接するように組み合わせることが可能である。
【0041】
また、シール部材40bの厚さTは、矩形部40a3の高さと板状の部位40a1の高さとを合わせた高さHとほぼ同一である。従って、挿入部40aの半円柱部40a2と矩形部40a3を穴40b1に挿入し、板状の部位40a1の外周と穴40b1の内周とが接触した状態において、矩形部40a3の上面とシール部材40bの上面とはほぼ一致する。
【0042】
以上の構成によれば、挿入部40aと支持部20bとの間にシール部材40bを配置し、ネジによりスピーカホーン30を支持部20bに取り付けると、第2の開口部20hの縁の外周側においては、支持部20bの下面でシール部材40bが押しつぶされるが、第2の開口部20hの縁の内周側において、シール部材40bが押しつぶされることはない。従って、第2の開口部20hの縁の内周側においては、図3Fに示すように、矩形部40a3の上面とシール部材40bの上面と支持部20bの内側の音道20cの内壁Wとがほぼ一致する。
【0043】
そして、上述のように、穴40a5の形状は、図2Bに示す音道20cのz−y平面に垂直な方向の断面の形状と同一である。従って、本実施形態においては、スピーカドライバ20dの出力口よりも音道20c側において、スピーカホーン30の入力口30bに達するまで音が伝達される空洞の形状(音の進行方向に垂直な方向の形状)はほぼ同一であり、断面積もほぼ一定である。従って、音道内における音の無用な反射や共鳴等を防止して効率的に音を伝達することができる。
【0044】
なお、スピーカホーン30の下面は車両の上面に取り付けられる。このため、上述の実施形態においては、スピーカホーン30の下面に車両の上面に取り付けるためのアタッチメント30cが取り付けられている。そして、図2Aに示すように、当該アタッチメント30cは、スピーカホーン30の下面の中央よりもx軸方向の端側に偏った位置に取り付けられている。例えば、図2Aにおいて左側に示すスピーカホーン30においてアタッチメント30cは左側に偏った位置に取り付けられ、図2Aにおいて右側に示すスピーカホーン30においてアタッチメント30cは右側に偏った位置に取り付けられている。
【0045】
従って、図2Aにおいて、スピーカホーン30を入れ替えて取り付ける構成とすれば、入れ替えの前後においてアタッチメント30cのx軸方向の間隔を変化させることができる。この結果、取り付け対象の車両の上面の幅や、取付位置などを柔軟に変化させながら取り付けることが可能である。むろん、アタッチメント30cをスピーカホーン30に対して取り付ける位置を変化させることで、アタッチメント30cのx軸方向の間隔を変化させることができるように構成されていても良い。
【0046】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、1個のスピーカドライバからの出力音を音道によって2個以上のスピーカホーンに導く構成である限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、スピーカホーン30の向きは、図1Aに示すように同一の向きである構成に限定されない。すなわち、スピーカホーン30のいずれか1個を取り付けるに当たり、前後方向を図1Aに示す方向と逆向きにしても良い。また、スピーカホーン30の個数は2個以上であれば良い。
【0047】
さらに、空洞形状調整部材40の構成は上述の構成に限定されず、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、音道20cの両端から第2の開口部20hに達する部材を音道20cに対して挿入できるように構成し、当該部材で音道20cを塞ぎながら当該部材が第2の開口部20hの一部を塞ぐように構成し、塞がれていない部位の形状や面積を調整することによって、第2の開口部20hとスピーカホーン30の入力口30bとの間の空洞の形状を調整するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0048】
10…警光灯、20…本体、20a…カバー、20b…支持部、20c…音道、20d…スピーカドライバ、20e…レール、20f…部材、20g…レール、20h…第2の開口部、30…スピーカホーン、30a…穴、30b…入力口、30c…アタッチメント、40…空洞形状調整部材、40a…挿入部、40a1…部位、40a2…半円柱部、40a3…矩形部、40a4…フランジ部、40a5…穴、40b…シール部材
図1
図2
図3