特許第6185345号(P6185345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185345
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】回転子の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20170814BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20170814BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02K15/02 K
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501H
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-192044(P2013-192044)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-61344(P2015-61344A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博之
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−159361(JP,A)
【文献】 特開2013−031805(JP,A)
【文献】 特許第4616182(JP,B2)
【文献】 特開2003−053250(JP,A)
【文献】 特開平04−365580(JP,A)
【文献】 特開昭62−255093(JP,A)
【文献】 特許第2734283(JP,B2)
【文献】 実開平07−000684(JP,U)
【文献】 特公平01−051317(JP,B2)
【文献】 特開2006−025552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心を横軸状に保持し、前記鉄心の中心軸を中心として前記複数の磁石挿入孔のうち接着剤の塗布対象となる前記磁石挿入孔の塗布対象面が上側となるように前記回転子鉄心を回転させる回転割出機構と、
3自由度以上の自由度を有するロボットと、
前記ロボットのアーム部の先端部に設けられ板状であって前記磁石挿入孔に差し抜き可能なヘラと、
前記ヘラの上面に接着剤を滴下する接着剤滴下機構と、を備えるとともに、
前記ロボットを2台備え、
前記2台のロボットのうち一方のロボットは、前記回転子鉄心の中心軸に直交する垂線を中心として一方側にある磁石挿入孔の塗布対象面に対して接着剤を塗布し、他方のロボットは、前記垂線を中心として他方側にある磁石挿入孔の塗布対象面に対して接着剤を塗布する回転子の製造装置。
【請求項2】
前記ヘラは弾性を有する材料で構成された請求項1に記載の回転子の製造装置。
【請求項3】
前記ロボットは、
設置面に固定されるベース部と、
前記ベース部に対して垂直方向へ延びる第一軸を中心に回転可能に設けられた第一アーム部と、
前記第一アーム部の先端部にあって垂直方向へ延びる第二軸を中心に回転可能に設けられた第二アーム部と、
前記第二アーム部の先端部にあって垂直方向へ延びる第三軸を中心に回転可能でかつ前記第三軸の軸方向へ移動可能に設けられた第三アーム部と、
前記第三アーム部に設けられ前記ヘラを着脱可能に把持する把持部と、を有する請求項1又は2に記載の回転子の製造装置。
【請求項4】
前記ヘラを載置するヘラ載置部を有して前記ヘラとともに前記ヘラに滴下された接着剤の質量を計測する計量機構を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の回転子の製造装置。
【請求項5】
前記ヘラの上面に滴下された接着剤の有無を検出するセンサ部を更に備える請求項1から4のいずれか一項に記載の回転子の製造装置。
【請求項6】
前記ヘラを前記ロボットの先端部から外した状態で当該ヘラを前記ロボットの可動域の内側と外側との間で移動させるヘラ移動機構を更に備える請求項1から5のいずれか一項に記載の回転子の製造装置。
【請求項7】
前記一方のロボットと他方のロボットとの間で前記ヘラの受け渡しをするための仮置台を更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子の製造装置。
【請求項8】
永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心について複数の前記磁石挿入孔のうち接着剤塗布の対象となる磁石挿入孔の塗布対象面を上側に位置させる回転工程と、
板状のヘラの上面に接着剤を滴下する滴下工程と、
前記複数の磁石挿入孔のうち前記塗布対象面が上側に位置した磁石挿入孔に対して前記ヘラを水平姿勢に維持しながら前記ヘラの上面に滴下された接着剤が前記磁石挿入孔の周囲に付着しないように前記ヘラを前記磁石挿入孔の奥方まで挿入し、その後、前記ヘラを前記塗布対象面に対して押し付けながら引き戻すように移動させることで前記接着剤を前記塗布対象面に塗布し、その後、前記ヘラの先端部が前記磁石挿入口の開口部から出る前に前記ヘラを下方へ移動させた後に前記ヘラを前記磁石挿入孔から抜き出す塗布工程と、
を備える回転子の製造方法。
【請求項9】
前記接着剤滴下機構により前記ヘラの上面に接着剤が滴下された後、前記接着剤を前記塗布対象面に塗布する前に、前記計量機構に前記ヘラを載置した状態で前記ヘラの把持を解除して前記接着剤と共に前記ヘラの質量を計測する第一計量工程を更に備える請求項8に記載の回転子の製造方法。
【請求項10】
前記ヘラの上面に滴下された接着剤を前記塗布対象面に塗布した後、次の接着剤が前記ヘラに滴下される前に、前記計量機構に前記ヘラを載置した状態で前記ヘラの把持を解除して前記ヘラの質量を計測する第二計量工程を更に備える請求項9に記載の回転子の製造方法。
【請求項11】
前記ヘラを前記磁石挿入孔に挿入する速度に対して、接着剤を前記塗布対象面に塗布する際に前記ヘラを引き戻す速度の方が遅い請求項8から10のいずれか一項に記載の回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転子の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石型の回転電機の回転子は、例えば次のようにして製造されている。すなわち、回転子鉄心には、回転軸の軸方向へ貫く複数の磁石挿入孔が設けられ、永久磁石は、その磁石挿入孔に挿入される。永久磁石は、磁石挿入孔に挿入される前に予め永久磁石の表面に接着剤が塗布され、その後、磁石挿入孔内部へ挿入される。そして、接着剤を硬化させることで、永久磁石が磁石挿入孔内部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−339919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、永久磁石の表面に接着剤を塗布した状態で永久磁石を磁石挿入孔へ挿入する構成においては、永久磁石の表面に塗布された接着剤が磁石挿入孔の入口部分で剥がされ易く、接着剤が磁石挿入孔の奥方まで行き渡らない。そのため、接着剤が永久磁石の表面全体に均一に広がらず、接着強度にばらつきが生じ易いという事情があった。
【0005】
そこで、接着剤によって、永久磁石が磁石挿入孔の内部に接着される回転子を備えるものにおいて、その永久磁石の接着強度のばらつきを低減することができる回転子の製造装置及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の回転子の製造装置は、永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心を横軸状に保持し、前記鉄心の中心軸を中心として前記複数の磁石挿入孔のうち接着剤の塗布対象となる前記磁石挿入孔の塗布対象面が上側となるように前記回転子鉄心を回転させる回転割出機構と、3自由度以上の自由度を有するロボットと、前記ロボットのアーム部の先端部に設けられ板状であって前記磁石挿入孔に差し抜き可能なヘラと、前記ヘラの上面に接着剤を滴下する接着剤滴下機構と、を備えるとともに、前記ロボットを2台備える。前記2台のロボットのうち一方のロボットは、前記回転子鉄心の中心軸に直交する垂線を中心として一方側にある磁石挿入孔の塗布対象面に対して接着剤を塗布し、他方のロボットは、前記垂線を中心として他方側にある磁石挿入孔の塗布対象面に対して接着剤を塗布する。
【0007】
また、本実施形態の回転子の製造方法は、永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心について複数の前記磁石挿入孔のうち接着剤塗布の対象となる磁石挿入孔の塗布対象面を上側に位置させる回転工程と、板状のヘラの上面に接着剤を滴下する滴下工程と、前記複数の磁石挿入孔のうち前記塗布対象面が上側に位置した磁石挿入孔に対して前記ヘラを水平姿勢に維持しながら前記ヘラの上面に滴下された接着剤が前記磁石挿入孔の周囲に付着しないように前記ヘラを前記磁石挿入孔の奥方まで挿入し、その後、前記ヘラを前記塗布対象面に対して押し付けながら引き戻すように移動させることで前記接着剤を前記塗布対象面に塗布し、その後、前記ヘラの先端部が前記磁石挿入口の開口部から出る前に前記ヘラを下方へ移動させた後に前記ヘラを前記磁石挿入孔から抜き出す塗布工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による製造装置の全体の構成を示す斜視図
図2】製造装置の各構成の配置を示す平面図
図3】(a)は回転子鉄心の従断面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図
図4】製造装置の電気的構成を示すブロック図
図5】回転割出機構の構成を示す斜視図
図6】接着剤滴下機構のディスペンサ及びセンサ部の構成を示す斜視図
図7】計量機構の構成を示す斜視図
図8】ヘラ移動機構の構成を示す斜視図
図9】(a)はヘラの平面図、(b)はヘラの側面図
図10】塗布工程を(a)〜(f)の順に経時的に示す図
図11】塗布工程の際における回転子鉄心の姿勢を示す図で、(a)は反時計回り側の磁石挿入孔を塗布対象としている場合、(b)は時計回り側の磁石挿入孔を塗布対象としている場合の図
図12】磁石挿入孔に対するヘラの挿入時の様子を示す斜視図
図13】C1〜C12において塗布工程を行う際の1サイクルを示す製造装置のタイムチャート
図14】第一ロボット側のヘラを交換する際の制御内容を示すフローチャート
図15】滴下量計測処理の制御内容を示すフローチャート
図16】塗布量計測処理の制御内容を示すフローチャート
図17】第二ロボット側のヘラを交換する際の制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本実施形態による回転子の製造装置10を示している。製造装置10は、例えば図3に示すような回転電機の回転子を構成する回転子鉄心90を対象としている。回転子鉄心90は、例えば電磁鋼板を所定の形状に打ち抜き、その打ち抜いた電磁鋼板91を複数枚積層して構成されている。回転子鉄心90には、図3に示すように、複数の磁石挿入孔92、93が形成されている。この場合、回転子鉄心90には、磁石挿入孔92、93が各8個ずつ形成されている。この場合、各磁石挿入孔92、93のうち、反時計回り側を磁石挿入孔92とし、時計回り側を磁石挿入孔93とする。
【0010】
磁石挿入孔92、93は、略矩形状の穴であって、回転子鉄心90の径方向の外側寄り部分に設けられている。各磁石挿入孔92、93は、それぞれ各1個の磁石挿入孔92、93によって一対の磁石挿入孔を構成している。各対の磁石挿入孔92、93は、回転子鉄心90の径方向の外側へ向かって互いに開くように配置されている。各磁石挿入孔92、93の内部には、製造装置10によって接着剤が塗布された後、永久磁石が挿入される。
【0011】
回転子鉄心90には、軸穴94が形成されている。軸穴94は、略円形の穴であって回転子鉄心90を軸方向へ貫いて形成されている。軸穴94の中心と回転子鉄心90の中心とは一致している。磁石挿入孔92内に永久磁石が固定された後、軸穴94には、製造装置10を用いる工程とは別の工程において、回転軸95が挿入され固定される。
【0012】
回転電機の製造装置10は、回転子鉄心90に形成された磁石挿入孔92、93の内面に対して、図示しない永久磁石を固定するための接着剤を塗布するものである。製造装置10は、図1及び図2に示すように、複数この場合2台のロボット20、回転割出機構30、接着剤滴下機構40、計量機構50、複数この場合2台のヘラ移動機構60、及びセンサ部70を備えている。また、製造装置10は、図4に示す制御装置11、及び図1に示す仮置台12を備えている。制御装置11には、これらロボット20、回転割出機構30、接着剤滴下機構40、計量機構50、ヘラ移動機構60、及びセンサ部70が直接又は間接的に接続されている。制御装置11は、これらロボット20、回転割出機構30、接着剤滴下機構40、計量機構50、ヘラ移動機構60、及びセンサ部70を統括して制御する。
【0013】
図1及び図2に示すように、2台のロボット20、回転割出機構30、接着剤滴下機構40、計量機構50、2台のヘラ移動機構60、センサ部70、及び仮置台12は、共通の基台100の設置面上に設置されている。この場合、図2の紙面手前側すなわち回転割出機構30と反対側が作業者側となる。基台100の設置面の領域を、領域Aとして図1及び図2に二点鎖線で示す。なお、以下の説明では、図1の領域Aにおいて、回転割出機構30側を後側とし、回転割出機構30と反対側を前側とする。
【0014】
また、以下の説明において、2台のロボット20を区別する場合、領域Aの前側から回転割出機構30を見たときに領域Aの右側に設けられたロボット20を第一ロボット201とし、領域Aの左側に設けられたロボット20を第二ロボット202とする。同様に、2台のヘラ移動機構60を区別する場合、2台のヘラ移動機構60のうち右側に設けられて第一ロボット201に対応するヘラ移動機構60を第一ヘラ移動機構601とし、左側に設けられて第二ロボット202に対応するヘラ移動機構60を第二ヘラ移動機構602とする。
【0015】
図2にも示すように、回転割出機構30は、設置面の領域Aの最も後側にあって、左右方向の略中央部分に設けられている。第一ロボット201及び第二ロボット202は、領域Aの前後方向のやや後ろ寄りにあって、回転割出機構30を中心として略左右対称に設けられている。この場合、第一ロボット201は、回転割出機構30に対して右側に設けられ、第二ロボット202は、回転割出機構30に対して左側に設けられている。
接着剤滴下機構40は、領域Aの左右及び前後方向の略中央部分に設けられている。センサ部70は、接着剤滴下機構40の前側に設けられている。仮置台12は、回転割出機構30と接着剤滴下機構40との間に設けられている。
【0016】
回転割出機構30、接着剤滴下機構40、センサ部70、及び仮置台12は、第一ロボット201の可動域B1内及び第二ロボット202の可動域B2内に設けられ、前後方向へ延びる直線上に配置されている。この場合、第一ロボット201及び第二ロボット202の配置及び構成は、回転割出機構30と接着剤滴下機構40とセンサ部70と仮置台12とを結ぶ直線に対して線対称となっている。
【0017】
第一ヘラ移動機構601及び第二ヘラ移動機構602は、領域Aの前側にあって左右両端部に設けられている。第一ヘラ移動機構601は、第一ロボット201に対応して、第一ロボット201の可動域B1内にあって領域Aの右前端部に設けられている。第二ヘラ移動機構602は、第二ロボット202に対応して、第二ロボット202の可動域B2内にあって領域Aの左前端部に設けられている。また、計量機構50は、第一ロボット201に対応しており、領域Aの右前部にあって、第一ヘラ交換機構の左側に設けられている。
【0018】
ロボット20は、3自由度以上の自由度を有するロボットである。本実施形態の場合、ロボット20は、4自由度を有している。ロボット20は、ベース部21、第一アーム部22、第二アーム部23、第三アーム部24、及び把持部25を有している。ベース部21は、矩形状の台であって、基台100の上にねじなどで固定されている。各ロボット20は、図4に示すように、ロボットコントローラ26を介して制御装置11に接続されている。
【0019】
第一アーム部22は、ベース部21の上部に設けられて、水平方向へ延びている。ベース部21において、領域Aの中央側には、垂直方向へ延びるように第一軸211が設けられている。第一アーム部22は、第一軸211を中心に回転する。この場合、ベース部21に対する第一アーム部22の回転が、第一自由度となる。
【0020】
第一アーム部22の先端部、すなわち第一軸211と反対側の端部には、垂直方向へ延びる第二軸221が設けられている。第二アーム部23は、第一アーム部22の先端部の上部に設けられ、水平方向へ延びている。第二アーム部23は、第二軸221を中心に回転する。この場合、第一アーム部22に対する第二アーム部23の回転が、第二自由度となる。
【0021】
第三アーム部24は、第二アーム部23の先端部、すなわち第二軸221と反対側の端部に設けられている。第三アーム部24は、垂直方向へ延びる第三軸241を有している。第三アーム部24は、この第三軸241の軸方向つまり垂直方向へ上下移動するとともに、第三アーム部24の軸を中心に回転する。この場合、第三アーム部24の垂直方向への移動が第三自由度となり、第三アーム部24の軸に対する回転が第四自由度となる。
【0022】
把持部25は、第三アーム部24の先端部この場合下端部に設けられている。把持部25は、図6図8に示すように、上下方向に開閉するいわゆる平行開閉チャックにより構成されている。把持部25は、交換可能なヘラ80を着脱可能に把持する。ヘラ80は、図9に示すように、被把持部81とヘラ本体82とを有して構成されている。被把持部81は、例えば金属製のブロックであって、把持部25に把持される。
【0023】
ヘラ本体82は、弾性を有する金属性の薄板、例えばバネ用ステンレス鋼帯で構成されている。ヘラ本体82は、帯状に構成されている。この場合、ヘラ本体82の幅は、磁石挿入孔92、93の幅に対して80%〜90%程度に設定されている。ヘラ本体82の一端部は、ボルト83によって被把持部81に取り外し可能に固定されている。ヘラ80が把持部25に把持された状態において、ヘラ本体82は、水平な姿勢に維持される。ヘラ本体82には、図9に示すように、接着剤が滴下される。この場合、各ロボット201、202が把持するヘラ80を区別するときは、第一ロボット201が把持するヘラ80を第一ヘラ801と称し、第二ロボット202が把持するヘラ80を第二ヘラ802と称する。
【0024】
回転割出機構30は、図5に示すように、回転割出部31及び鉄心把持部32を有している。回転割出部31は、例えば、DCブラシレスモータなどを有するいわゆるインデックステーブルである。回転割出機構30は、図4に示すように制御装置11に接続されている。回転割出部31は、制御装置11からの制御を受けて、一定又は任意の回転角度及び回転速度で回転する。鉄心把持部32は、回転割出部31に設けられており、回転割出部31と一体的に回転する。
【0025】
図5に示すように、鉄心把持部32は、回転子鉄心90を横軸状に保持する。鉄心把持部32は、複数の棒部321を有している。棒部321は、回転子鉄心90の磁石挿入孔92、93に挿入される。そして、複数の棒部321がそれぞれ回転子鉄心90の径方向の外側へ向って開くことにより、回転子鉄心90は、鉄心把持部32に固定される。回転子鉄心90は、鉄心把持部32に把持された状態で回転割出部31によって一定角度で回転される。これにより回転子鉄心90の位置決めが行われる。この場合、回転子鉄心90は、回転割出機構30によって、複数の磁石挿入孔92、93のうちロボット20による接着剤の塗布対象となる塗布対象面が上側となるように回転される。
【0026】
接着剤滴下機構40は、図4に示すように、ディスペンサ41及びディスペンサコントローラ42から構成されている。図1及び図6に示すように、ディスペンサ41は、全体として上下方向へ延びる円筒状に構成されている。ディスペンサ41は、接着剤が充填された図示しないカートリッジ又は接着剤の供給源に接続されている。ディスペンサコントローラ42は、図4に示すように、制御装置11に接続されている。ディスペンサ41は、ディスペンサコントローラ42による制御を受けて、下端部から接着剤を定量吐出する。
【0027】
図7に示す計量機構50は、質量を測定する例えば電子天秤である。計量機構50の上部には、ヘラ載置部51が設けられている。ヘラ載置部51には、ヘラ80が載置される。計量機構50は、図4に示すように、制御装置11に接続されている。計量機構50は、ヘラ載置部51に載置されるヘラ80と共に、ヘラ80に滴下された接着剤の質量を計測する。そして、計量機構50による測定結果は、制御装置11へ送信される。この場合、計量機構50の測定精度は、ディスペンサ41から吐出された接着剤の質量の誤差を計測できる精度であればよい。
【0028】
ヘラ移動機構60は、ヘラ80をロボット20の先端部から外された状態でロボット20の可動域の内側と外側との間で移動させる。ヘラ移動機構60は、図8に示すように、スライド部61及びヘラ載置部62を有している。スライド部61は、本体611及びステージ612を有したいわゆるスライドシリンダで構成されている。スライド部61において、ステージ612は、本体611に対して前後方向へ直線的に移動する。スライド部61は、電動又は空圧等によって駆動される。ヘラ載置部62は、ステージ612の上部前端側に設けられている。ヘラ載置部62は、図7に示すように、二個のヘラ80を並べて載置できるようになっている。
【0029】
この場合、第一ヘラ移動機構601のステージ612が後端部まで移動している状態において、ステージ612のヘラ載置部62は、第一ロボット201の可動域B1の内側にある。一方、第一ヘラ移動機構601のステージ612が前端部まで移動している状態において、ステージ612のヘラ載置部62は、第一ロボット201の可動域B1の外側にある。同様に、第二ヘラ移動機構602のステージ612が後端部まで移動している状態において、ステージ612のヘラ載置部62は、第二ロボット202の可動域B2の内側にある。一方、第二ヘラ移動機構602のステージ612が前端部まで移動している状態において、ステージ612のヘラ載置部62は、第二ロボット202の可動域B2の外側にある。
【0030】
センサ部70は、図6に示すように、ディスペンサ41から吐出されてヘラ80に滴下された接着剤の有無及び形状を、非接触で検出する。センサ部70は、非接触式のセンサであって、例えば透過型又は反射型の光電センサやレーザ変位センサなどである。センサ部70が光電センサである場合、センサ部70は例えば次のようにして配置される。すなわち、ヘラ80がディスペンサ41から接着剤を受ける位置において、センサ部70から出力された光がヘラ80の上空を通過し、かつ、ヘラ80上に適量の接着剤が存在する場合にはその接着剤によってセンサ部70から出力された光が遮られるように、センサ部70を配置する。
【0031】
この構成によれば、ヘラ80に所定量の接着剤が滴下されていない場合、センサ部70から出力された光はヘラ80の上空を通過するため、センサ部70は何も検出せず、したがって、ヘラ80上に接着剤が存在しないと判断できる。一方、ヘラ80に所定量の接着剤が滴下されている場合、センサ部70から出力された光は、その接着剤に遮られ、これによりヘラ80に所定量以上の接着剤が吐出されていることを検出できる。仮置台12は、例えば1個のヘラ80を載置することができる。
【0032】
次に、製造装置10による、回転子鉄心90の磁石挿入孔92、93に対する接着剤の塗布手順について説明する。
回転割出機構30は、鉄心把持部32で保持した回転子鉄心90を適宜回転させて、磁石挿入孔92、93を構成する周囲の面のうち接着剤の塗布対象となる面を、水平であって磁石挿入孔92、93の上面となる姿勢で保持する。ロボット20は、接着剤滴下機構40から滴下された接着剤をヘラ本体82で受け、その接着剤を、磁石挿入孔92、93の塗布対象となる面に塗り付ける。
【0033】
具体的には、ロボット20は、図10(a)に示すように、接着剤滴下機構40から滴下された接着剤85をヘラ本体82で受けた後、ヘラ本体82を磁石挿入孔92、93の入口近傍まで移動させる。その後、ロボット20は、図10(b)に示すように、接着剤85が磁石挿入孔92、93の周囲に付着しないようにしながら、ヘラ本体82を磁石挿入孔92、93の奥方まで挿入する。次に、ロボット20は、図10(c)に示すように、ヘラ本体82を上方へ移動させる。ロボット20は、ヘラ本体82が磁石挿入孔92、93の上面に接触する直前で、図10(d)に示すように、手前斜め上方へ向かうようにして、ヘラ本体82を上方へ移動させながら手前へ引き戻す。
【0034】
ヘラ本体82が、磁石挿入孔92、93の上面と同程度又はやや高い位置に達すると、ロボット20は、ヘラ本体82の上方への移動を止めて、ヘラ本体82を手前へ水平に引き戻すように移動させる。このとき、ヘラ本体82は、磁石挿入孔92、93の上面によって上方への移動が規制されているため、弾性変形する。これにより、ロボット20は、ヘラ本体82を弾性変形させながら接着剤85を磁石挿入孔92、93の上面に塗り付ける。この場合、ヘラ80を磁石挿入孔92、93に挿入する速度に対して、接着剤を塗布対象面に塗布する際にヘラ80を引き戻す速度の方が遅い。つまり、図10の(b)におけるヘラ80の移動速度に比べて、図10の(d)におけるヘラ80の移動速度の方が遅い。
【0035】
ロボット20は、ヘラ本体82の先端部が磁石挿入孔92、93の開口部付近に達すると、図10(e)に示すように、ヘラ本体82の先端部が磁石挿入孔92、93の開口部から出る前にヘラ本体82を下方へ移動させる。これは、ヘラ本体82が磁石挿入孔92、93の上面に規制されて弾性変形しているため、磁石挿入孔92、93の上面による規制が解放されると、弾性変形したヘラ本体82が勢いよく復元され、これにより接着剤が周囲に飛び散ることを防ぐためである。
【0036】
次に、ロボット20は、図10(f)に示すように、ヘラ本体82を引き戻して、磁石挿入孔92、93から抜き出す。この場合、図10(a)〜(f)に示す一連の動作中、ヘラ本体82は、略水平姿勢に維持されている。その後、回転割出機構30は、次の磁石挿入孔92、93に接着剤を塗布するため、回転子鉄心90を所定角度回転させる。そして、ロボット20は、接着剤滴下機構40から接着剤85を受け、上記と同様の手順によって、次の磁石挿入孔92、93に対して接着剤85を塗布する。
【0037】
ロボット20は、磁石挿入孔92、93を構成する周囲の面のうち、面積の広い対向する平らな二面に接着剤を塗布する。この場合、回転子鉄心90の中心軸に直交する垂線Dとすると、図11及び図12に示すように、2台のロボット201、202のうち一方のロボット、この場合、第一ロボット201は、垂線Dを中心として一方側この場合右側にある磁石挿入孔92、93の塗布対象面に対して接着剤を塗布する。また、他方のロボット、この場合、第二ロボット202は、垂線Dを中心として他方側この場合左側にある磁石挿入孔92、93の塗布対象面に対して接着剤を塗布する。本実施形態において、製造装置10は、例えば反時計回り側にある8個全ての磁石挿入孔92の塗布対象面に接着剤を塗布した後、時計回り側にある磁石挿入孔93の塗布対象面に接着剤を塗布する。
【0038】
すなわち、本実施形態の場合、図11(a)に示すように、反時計回り側の磁石挿入孔92に接着剤を塗布する際、回転子鉄心90は、対角に位置する2個の磁石挿入孔92について、その各磁石挿入孔92の塗布対象面が同時に水平となる姿勢に維持される。この場合、図12にも示すように、第一ロボット201は、塗布対象面が水平に維持された2個の磁石挿入孔92のうち、第一ロボット201側つまり右側下部に位置する磁石挿入孔92の上面となる面921に対して接着剤を塗布する。第二ロボット202は、塗布対象面が水平に維持された2個の磁石挿入孔92のうち、第二ロボット202側つまり左側上部に位置する磁石挿入孔92の上面となる面922に対して接着剤を塗布する。
【0039】
一方、図11(b)に示すように、時計回り側の磁石挿入孔93に接着剤を塗布する際、回転子鉄心90は、対角に位置する2個の磁石挿入孔93について、その各磁石挿入孔93の塗布対象面が同時に水平となる姿勢に維持される。第一ロボット201は、塗布対象面が水平に維持された2個の磁石挿入孔93のうち、第一ロボット201側つまり右側上部に位置する磁石挿入孔93の上面となる面931に対して接着剤を塗布する。第二ロボット202は、塗布対象面が水平に維持された2個の磁石挿入孔93のうち、第二ロボット202側つまり左側下部に位置する磁石挿入孔93の上面となる面932に対して接着剤を塗布する。
【0040】
製造装置10は、通常の塗布工程においては、図13に示すC1〜C12の動作を1サイクルとして、回転割出機構30に取り付けられた回転子鉄心90の全ての磁石挿入孔92、93に対して接着剤を塗布する。この1サイクルでは、第一ロボット201及び第二ロボット202による接着剤の塗布が交互に行われる。なお、図13に示す曲線矢印は、回転割出機構30、接着剤滴下機構40、第一ロボット201、及び第二ロボット202間について、制御装置11を介した制御信号の授受を示している。すなわち、制御装置11は、ある機器の動作を終えたことを確認すると、矢印の示す先の機器に対して次の動作の許可を与える。
【0041】
図13に示すC1の時点において、第一ロボット201の第一ヘラ801は、接着剤滴下機構40の直下に位置し、第二ロボット202の第二ヘラ802は、回転割出機構30側に位置しているとする。この場合、制御装置11は、まず、C1からC2の期間において滴下工程を行う。滴下工程において、接着剤滴下機構40は、接着剤を定量吐出する。そして、第一ロボット201は、接着剤滴下機構40から吐出された接着剤を第一ヘラ801に受ける。このとき、制御装置11は、センサ部70の検出結果に基づいて、第一ヘラ801に滴下された接着剤が所定の形状となっているか、つまり所定量の接着剤が滴下されているかを判断する。接着剤85の形状が所定の形状でないことが判断された場合、制御装置11は、接着剤滴下機構40の動作が異常であるとして、塗布動作を停止する。一方、接着剤85の形状が所定の形状であると判断された場合、制御装置11は、次の工程を実行する。
【0042】
次に、制御装置11は、C3からC4の期間において移動工程を実行する。この移動工程において、第一ロボット201は、第一ヘラ801を回転割出機構30側へ移動させるとともに、第二ロボット202は、第二ヘラ802を接着剤滴下機構40の直下へ移動させる。その後、制御装置11は、C5からC6の期間において、塗布工程及び滴下工程を行う。この塗布工程において、第一ロボット201は、第一ロボット201側に位置する図11(a)に示す磁石挿入孔92又は図11(b)に示す磁石挿入孔93に対し、図10の(a)〜(f)に示す手順に沿って第一ヘラ801に滴下された接着剤を塗布する。
【0043】
また、C5からC6の期間の滴下工程において、接着剤滴下機構40は、接着剤を定量吐出する。そして、そして、第二ロボット202は、接着剤滴下機構40から吐出された接着剤を第二ヘラ802に受ける。このとき、制御装置11は、センサ部70の検出結果に基づいて、第二ヘラ802に滴下された接着剤が所定の形状となっているか、つまり所定量の接着剤が滴下されているかを判断する。接着剤85の形状が所定の形状でないことが判断された場合、制御装置11は、接着剤滴下機構40の動作が異常であるとして、塗布動作を停止する。一方、接着剤85の形状が所定の形状であると判断された場合、制御装置11は、次の工程を実行する。
【0044】
次に、制御装置11は、C7からC8の期間において移動工程を実行する。この移動工程において、第一ロボット201は、第一ヘラ801を接着剤滴下機構40の直下へ移動させるとともに、第二ロボット202は、第二ヘラ802を回転割出機構30側へ移動させる。次に、制御装置11は、C9からC10の期間において、滴下工程及び塗布工程を実行する。この滴下工程において、第一ロボット201は、C1からC2の期間と同様に、接着剤滴下機構40から吐出された接着剤を第一ヘラ801に受ける。また、この塗布工程において、制御装置11は、センサ部70の検出結果に基づいて、第一ヘラ801に滴下された接着剤が所定の形状となっているかを判断する。また、この塗布工程において、第二ロボット202は、第二ロボット202側に位置する図11(a)に示す磁石挿入孔92又は図11(b)に示す磁石挿入孔93に対し、図10の(a)〜(f)に示す手順に沿って第二ヘラ802に滴下された接着剤を塗布する。
【0045】
その後、制御装置11は、C11からC12の期間において、回転工程及び移動工程を実行する。この回転工程において、回転割出機構30は、回転子鉄心90を所定角度回転させて、次の磁石挿入孔92又は磁石挿入孔93を塗布可能な姿勢にする。その後、製造装置10は、上記のサイクルを繰り返して、全ての磁石挿入孔92、93に対して接着剤を塗布する。また、この移動工程において、第一ロボット201は、第一ヘラ801を初期位置すなわちC1の場合と同じ位置に移動させる。同様に、この移動工程において、第二ロボット202は、第二ヘラ802を初期位置すなわちC1の場合と同じ位置に移動させる。
【0046】
制御装置11は、第一ロボット201又は第二ロボット202による接着剤の塗布のサイクルを所定回数繰り返すと、ヘラ80を新しいものと交換するとともに、ヘラ80の交換後、第一計量工程及び第二計量工程を行う。本実施形態の場合、回転子鉄心90を交換する毎にヘラ80を交換し、第一計量工程及び第二計量工程を行う。
【0047】
まず、第一ロボット201側の制御内容について説明する。新たな回転子鉄心90が回転割出機構30に取り付けられると、第一ロボット201は、図14に示すステップS11及びステップS12において、使用済みの第一ヘラ801を新しいものと交換する。ステップS11が実行される際には、前回の工程において新しい第一ヘラ801がヘラ載置部62に置かれている。第一ロボット201は、ステップS11において、現在使用している第一ヘラ801を第一ヘラ移動機構601のヘラ載置部62に載置する。その後、第一ロボット201は、ステップS12において、第一ヘラ移動機構601のヘラ載置部62に置いてある未使用の第一ヘラ801を把持部25で把持する。これにより、第一ロボット201の把持部25に、未使用の第一ヘラ801が取り付けられる。
【0048】
その後、ステップS13に示すように、製造装置10の制御装置11は、第一計量工程として滴下量計測処理を実行する。この滴下量計測処理が実行されると、図15に示すように、第一ロボット201は、まず、ステップS21において、現在把持している未使用の第一ヘラ801を計量機構50のヘラ載置部51に載置し、その第一ヘラ801の把持を解除する。そして、制御装置11は、未使用の第一ヘラ801について、接着剤滴下前の第一ヘラ801の質量aを測定する。その後、第一ロボット201は、ステップS22において、第一ヘラ801を再び把持した後、接着剤滴下機構40の直下に移動させ、接着剤滴下機構40から吐出された接着剤を第一ヘラ801に受ける。
【0049】
次に、第一ロボット201は、ステップS23において、接着剤が滴下された現在把持している第一ヘラ801を、計量機構50のヘラ載置部51に載置し、その第一ヘラ801の把持を解除する。そして、制御装置11は、接着剤滴下後の第一ヘラ801の質量bを測定する。その後、制御装置11は、ステップS24において、第一ヘラ801に滴下された接着剤の量として、滴下量P1=b−aを算出し、図13に示すステップS14へ移行する(リターン)。
【0050】
制御装置11は、ステップS14において、滴下量P1が規格内であるか否かを判断する。制御装置11は、滴下量P1が規格外であれば(ステップS14でNO)、ステップS61へ移行する。ステップS61において、第一ロボット201は、第一ヘラ移動機構601により第一ヘラ801を第一ロボット201の可動域B1外へ移動させる。そして、使用者は、第一ヘラ移動機構601のヘラ載置部62から第一ヘラ801を取り外し、第一ヘラ801から接着剤を拭き取った後、再度、ヘラ載置部62に載置する。一方、ステップS14において、制御装置11は、滴下量P1が規格内であれば(ステップS14でYES)、ステップS15へ移行する。
【0051】
第一ロボット201は、図10(a)〜(f)の手順に従って、磁石挿入孔92又は磁石挿入孔93のいずれか一つの接着剤塗布対象面に接着剤を塗布する。その後、制御装置11は、ステップS16へ移行し、第二計量工程として塗布量計測処理を実行する。この塗布量計測処理では、第一ヘラ801の上面に滴下された接着剤を磁石挿入孔92又は磁石挿入孔93の塗布対象面に塗布した後であって、次の接着剤が第一ヘラ801に滴下される前に、計量機構50により第一ヘラ801の質量を計測することで、接着剤の塗布量を計測する。
【0052】
すなわち、塗布量計測処理が実行されると、第一ロボット201は、図16に示すステップS31において、接着剤を塗布した後の第一ヘラ801を、計量機構50のヘラ載置部51に載置する。そして、接着剤を塗布した後の第一ヘラ801の質量cを測定する。その後、製造装置10は、ステップS32において、第一ヘラ801の塗布後の質量として塗布量P2=b−cを算出し、図13に示すステップS17へ移行する(リターン)。
【0053】
次に、制御装置11は、ステップS17において、塗布量P2が規格内であるか否かを判断する。制御装置11は、塗布量P2が規格外であれば(ステップS17でNO)、ステップS62へ移行する。ステップS62において、第一ロボット201は、ステップS61と同様に、第一ヘラ移動機構601により第一ヘラ801を第一ロボット201の可動域B1外へ移動させる。そして、使用者は、第一ヘラ移動機構601のヘラ載置部62から第一ヘラ801を取り外し、第一ヘラ801から接着剤を拭き取った後、再度、ヘラ載置部62に載置する。その後、ステップS63において、使用者は、回転割出機構30に取り付けられた回転子鉄心90を、新たな回転子鉄心90に交換する。一方、ステップS17において、制御装置11は、塗布量P2が規格内であれば(ステップS17でYES)、ステップS18へ移行し、残りの工程を継続する。これにより、残りの磁石挿入孔92、93の接着剤塗布対象面のうち第一ロボット201が塗布するものに対して接着剤が塗布される。
【0054】
次に、第二ロボット202側の制御内容について説明する。新たな回転子鉄心90が回転割出機構30に取り付けられると、第二ロボット202は、図17に示すステップS41及びステップS42において、図14に示すステップS11、S12の場合と同様に、使用済みの第二ヘラ802を新しいものと交換する。これにより、第二ロボット202の把持部25に、未使用の第二ヘラ802が取り付けられる。
【0055】
その後、図17のステップS43において、第二ロボット202は、第二ヘラ802を第一ロボット201へ受け渡す。この場合、第二ロボット202は、まず、現在把持している第二ヘラ802を、仮置台12に載置する。その後、第一ロボット201は、仮置台12に載置された第二ヘラ802を把持する。これにより、第二ヘラ802は、第二ロボット202から第一ロボット201へ受け渡される。
【0056】
次に、制御装置11は、ステップS44において、図14のステップS13の場合と同様に、第一計量工程として滴下量計測処理を実行する。これにより、第二ヘラ802に滴下された接着剤の滴下量P1が算出される。その後、制御装置11は、ステップS45において、滴下量P1が規格内であるか否かを判断し、滴下量P1が規格外であれば(ステップS45でNO)、ステップS61へ移行する。一方、滴下量P1が規格内であれば(ステップS45でYES)、ステップS46へ移行する。ステップS46において、第二ヘラ802は、ステップS43と逆の手順で、第一ロボット201から第二ロボット202へ受け渡される。
【0057】
その後、第二ロボット202は、ステップS47において、図14に示すステップS15の場合と同様に、図10(a)〜(f)の手順に従って、磁石挿入孔92又は磁石挿入孔93のいずれか一つの接着剤塗布対象面に接着剤を塗布する。その後、第二ヘラ802は、ステップS48において、ステップS43の手順と同様の手順で、第二ロボット202から第一ロボット201へ受け渡される。その後、制御装置11は、ステップS49へ移行し、図13に示すステップS16と同様の手順で、第二計量工程として塗布量計測処理を実行する。これにより、第二ヘラ802の塗布後の質量として塗布量P2が算出される。
【0058】
次に、制御装置11は、ステップS50において、図13のステップS17と同様に、塗布量P2が規格範囲内であるか否かを判断する。制御装置11は、塗布量P2が規格外であれば(ステップS50でNO)、図14の場合と同様に、ステップS62において第二ヘラ802上の接着剤が拭き取られ、ステップS63において回転子鉄心90が交換される。一方、ステップS50において、制御装置11は、塗布量P2が規格内であれば(ステップS50でYES)、ステップS51へ移行する。ステップS51において、第二ヘラ802は、ステップS43と逆の手順で、第一ロボット201から第二ロボット202へ受け渡される。その後、制御装置11は、ステップS52へ移行し、残りの工程を継続する。これにより、残りの磁石挿入孔92、93の接着剤塗布対象面のうち第二ロボット202が塗布するものに対して接着剤が塗布される。
【0059】
これによれば、製造装置10は、板状のヘラ80を回転子鉄心90の磁石挿入孔92、93の奥方まで挿入して接着剤を塗布する。そのため、磁石挿入孔92、93の接着剤塗布対象面に対してまんべんなく接着剤を塗布することができる。したがって、接着剤は、磁石挿入孔92、93に挿入される永久磁石の表面全体に均一に広がり、その結果、接着強度にばらつきが無く、その接着を強固なものにすることができる。
【0060】
また、板状のヘラ80は、薄板状であって弾性を有する材料で構成されている。これによれば、ヘラ80を、ヘラ80の弾性力によって一定の圧力で磁石挿入孔92、93の接着剤塗布対象面に対して押しつけることができる。そのため、接着剤の塗布の精度、すなわち、塗布された接着剤の厚さ等のばらつきを低減することができ、その結果、均一な接着強度を得ることができる
製造装置10は、複数、この場合2台のロボット201、202によって、接着剤を塗布する。これによれば、接着剤滴下機構40による接着剤の滴下と、磁石挿入孔92、93に対する接着剤の塗布とを、2台のロボット201、202によって交互に行うことができる。したがって、1サイクル当たりの時間が短縮され、生産性の向上が図られる。
【0061】
また、製造装置10は、ヘラ80に滴下した接着剤の質量を計測する計量機構50を備えている。これによれば、ヘラ80に滴下された接着剤が、予め定めた規格の範囲内であるか否かを判断することができるため、接着剤の塗布に係る回転子鉄心90の品質の向上が図られる。
【0062】
ここで、計量機構50による接着剤の質量の計測には、ヘラ80をヘラ載置部51に載置したり、第一ロボット201と第二ロボット202との間でヘラ80を受け渡したりしなければならず、比較的時間を要する。そこで、製造装置10は、ヘラ80の上面に滴下した接着剤の有無及びその形状を計測するためのセンサ部70を備えている。これによれば、塗布毎に、センサ部70によってヘラ80の上面に滴下された接着剤の質量及びその形状を簡易的に検出することで、接着剤塗布に関して一定の品質を保つことができる。そのため、塗布毎に、計量機構50による接着剤の質量の計測をする必要が無く、したがって、接着剤の量の管理に伴う生産性の低下を抑制することができる。
【0063】
また、製造装置10は、使用済みのヘラ80と未使用のヘラ80とを交換するためのヘラ移動機構60を備え、使用済みのヘラ80と未使用のヘラ80とを一定の頻度で交換する。これによれば、例えば使用によりヘラ80の上面に蓄積された接着剤によって、磁石挿入孔92、93の塗布対象面に塗布される接着剤の量が変化することが防がれる。その結果、接着剤の塗布に関して高い品質を維持することができる。
【0064】
この場合、ヘラ移動機構60は、ヘラ載置部51に載置されたヘラ80をロボット20の先端部から外した状態でロボット20の可動域の内側と外側との間で移動させる。したがって、使用者は、ロボット20の可動域外で、ヘラ載置部51に対する使用済みのヘラ80と未使用のヘラ80との交換をすることができる。そのため、ロボット20の稼働を停止させなくても安全に使用済みのヘラ80を未使用のヘラ80と交換することができる。したがって、ヘラ80の交換の際の製造装置10の停止に伴う生産性の低下を回避でき、その結果、生産性の低下を抑制しつつ接着剤の塗布に関して高い品質を維持することができる。
【0065】
また、塗布工程において、磁石挿入孔92、93に対するヘラ80の抜き差しの速度は、磁石挿入孔92、93に挿入する際のヘラ80の速度に対し、接着剤を塗布対象面に塗り付ける際のヘラ80を引き戻す速度の方が遅い。これによれば、接着剤塗布の品質に影響を与えない挿入時のヘラ80の速度を早くすることにより、1サイクルの時間を短縮することができる。一方、接着剤塗布の品質に影響を与える、接着剤を塗り付ける際のヘラ80の速度を遅くすることにより、より確実に磁石挿入孔92、93の塗布対象面に塗布できる。これらの結果、接着剤の塗布に関する品質を維持しつつ、生産効率を向上させることができる。
【0066】
なお、上記実施形態において、回転子は、インナーロータ型のものでも良いし、アウターロータ型のものでも良い。
また、製造装置10は、必ずしも2台のロボット20を備えている必要はなく、ロボット20が1台の構成でもよいし、3台以上の構成でもよい。
また、磁石挿入孔92、93の個数も上記実施形態のものに限られない。
【0067】
以上、実施形態の回転子の製造装置は、回転割出機構と、ロボットと、ヘラと、接着剤滴下機構と、を備える。回転割出機構は、永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心を横軸状に保持し、前記鉄心の中心軸を中心として前記複数の磁石挿入孔のうち接着剤の塗布対象となる前記磁石挿入孔の塗布対象面が上側となるように前記回転子鉄心を回転させる。ロボットは、3自由度以上の自由度を有している。ヘラは、前記ロボットのアーム部の先端部に設けられ板状であって前記磁石挿入孔に差し抜き可能である。接着剤滴下機構は、前記ヘラの上面に接着剤を滴下する。
【0068】
また、実施形態の回転子の製造方法は、回転工程と、滴下工程と、塗布工程と、を備える。回転工程は、永久磁石が挿入される複数の磁石挿入孔を有する回転子鉄心について複数の前記磁石挿入孔のうち接着剤塗布の対象となる磁石挿入孔の塗布対象面を上側に位置させる。滴下工程は、板状のヘラの上面に接着剤を滴下する。塗布工程は、前記複数の磁石挿入孔のうち前記塗布対象面が上側に位置した磁石挿入孔に対して前記ヘラを水平姿勢に維持しながら挿入し、前記ヘラの上面に滴下された接着剤を前記磁石挿入孔の上側となる塗布対象面に対して塗布した後前記ヘラを前記磁石挿入孔から抜き出す。
【0069】
これによれば、板状のヘラによって磁石挿入孔の接着剤塗布対象面に接着剤を塗り付けるため、その接着剤塗布対象面に対してまんべんなく接着剤を塗布することができる。したがって、接着剤は、磁石挿入孔に挿入される永久磁石の表面全体に均一に広がり、その結果、接着強度にばらつきが無く、その接着を強固なものにすることができる。
【0070】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
図面中、10は製造装置、12は仮置台、20、201、202はロボット、21はベース部、211は第一軸、22は第一アーム部、221は第二軸、23は第二アーム部、24は第三アーム部(アーム部)、25は把持部、30は回転割出機構、40は接着剤滴下機構、50は計量機構、51はヘラ載置部、60、601、602はヘラ移動機構、70はセンサ部、90は回転子鉄心、92、93は磁石挿入孔、921、922、931、932は塗布対象面、B1、B2は可動域、Dは垂線を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17