(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
旋回及び起伏を含む動作を行う作業用移動体に設置され、投光手段を有し、前記作業用移動体に対する姿勢変位が可能な本体部と、該本体部の前記作業用移動体に対する姿勢を制御する制御部とを備えた作業用移動体の照明装置であって、
前記制御部は、前記作業用移動体を所定位置に位置させ、前記本体部の投光手段から発せられる照明光を静止体の照明対象位置に照射した状態で、前記照明対象位置に対応する目標位置に対して、前記本体部に設定された基準位置から前記目標位置を指向して延びる基準線上に仮想目標位置を設定する仮想目標設定機能部と、前記仮想目標位置を設定した状態からの前記作業用移動体の動作に追随して、前記本体部の前記基準位置から前記照明光の照射方向に対応して延びる照射基準線が常に前記仮想目標位置を指向するように前記本体部の姿勢を制御する姿勢制御機能部とを備えていることを特徴とする作業用移動体の照明装置。
前記本体部には、ジャイロセンサと加速度センサとを含む慣性センサが設けられており、前記仮想目標設定機能部は、前記仮想目標位置を設定した状態における前記本体部の姿勢情報を記憶し、前記姿勢制御機能部は、前記作業用移動体の動作時に、前記仮想目標設定機能部で記憶された前記本体部の姿勢情報と、前記慣性センサで逐次検知される角度情報に基づいて、前記本体部の姿勢情報を逐次演算算出して、前記本体部の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の作業用移動体の照明装置。
前記本体部は、前記作業用移動体に対して、該作業用移動体の旋回方向に回動可能な第1作動部と、該第1作動部に対して、前記作業用移動体の起伏方向に回動可能で、前記投光手段が設けられた第2作動部とを備え、前記制御部の姿勢制御機能部は、前記第1作動部の回動と、前記第2作動部の回動とを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業用移動体の照明装置。
前記本体部は、前記作業用移動体に対して、該作業用移動体の起伏方向に回動可能な第1作動部と、該第1作動部に対して、前記作業用移動体の旋回方向に回動可能で、前記投光手段が設けられた第2作動部とを備え、前記制御部の姿勢制御機能部は、前記第1作動部の回動と、前記第2作動部の回動とを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業用移動体の照明装置。
前記本体部の前記作業用移動体に対する姿勢変位が所定範囲内に制限されており、前記姿勢制御機能部は、前記本体部の姿勢変位が規制される前記作業用移動体の動作範囲では、前記作業用移動体の動作に係らず、前記本体部の姿勢制御を停止し、前記作業用移動体が前記動作範囲を脱した位置で、前記本体部の姿勢制御を再開することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の作業用移動体の照明装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、梯子付消防自動車は、高層ビル火災などの高所での火災現場で消火活動や救助活動を行うために活躍している。梯子付消防自動車には、作業用移動体として伸縮式の梯子(先端屈折式のものも含む)が搭載されており、梯子の先端に装着されたバスケットや、梯子の上面(背面)にスライド移動自在に設置されたリフタに消防士等が搭乗して消火活動や救助活動を行う。
【0003】
梯子付消防自動車を火災現場の近くに停車させた後、梯子を旋回、起伏及び伸縮移動させて、梯子の先端部を消火活動や救助活動に適した位置に安全かつ速やかに移動させるが、夜間などでは、梯子の先端部を移動させる対象位置であるビルの火災区画が見難いため、梯子に設置した照明装置で火災区画を照射して、梯子の安全かつ速やかな移動と、火災区画での円滑な消火活動や救助活動が行えるようにしている。
【0004】
例えば、梯子を火災区画まで移動させる際に、建築物、電柱、樹木といった周辺の障害物との干渉を回避しなければならない場合があり、この梯子の回避動作によって、照明装置の照射範囲が火災区画から外れてしまうことがある。このような場合、作業者が外部入力手段を操作して、照明装置に操作信号を出力し、照明装置の姿勢を適宜に修正して、照明装置が火災区画を常に照射できるようにしているが、作業者の負担が大きい。
【0005】
移動体を自動追尾して照明する装置については、多くの提案がなされているが(例えば、下記の特許文献1、2)、移動体の位置検出をセンサや画像処理等によって行う必要があり、しかも、自動追尾制御に複雑な演算処理が必要である。そのため、この種の自動追尾照明装置は高価であり、ビルの火災区画のような、静止体の対象位置を照明するために設置される作業用移動体の照明装置には適さない。また、建設機械に自動追従型の照明装置を設置したものもあるが(例えば、下記の特許文献3、4)、これらは旋回及び起伏移動する作業機の先端部分(バケットの部分)を照射するものであり、静止体の対象位置を照明するために設置される作業用移動体の照明装置には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、静止体の照明対象位置を、作業用移動体の動作に追随して、常に照明することができ、しかも、構成や制御が比較的簡素な作業用移動体の照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、旋回及び起伏を含む動作を行う作業用移動体に設置され、投光手段を有し、作業用移動体に対する姿勢変位が可能な本体部と、本体部の作業用移動体に対する姿勢を制御する制御部とを備えた作業用移動体の照明装置であって、制御部は、作業用移動体を所定位置に位置させ、本体部の投光手段から発せられる照明光を静止体の照明対象位置に照射した状態で、該照明対象位置に対応する目標位置に対して、本体部に設定された基準位置から上記目標位置を指向して延びる基準線上に仮想目標位置を設定する仮想目標設定機能部と、上記仮想目標位置を設定した状態からの作業用移動体の動作に追随して、本体部の上記基準位置から照明光の照射方向に対応して延びる照射基準線が常に上記仮想目標位置を指向するように本体部の姿勢を制御する姿勢制御機能部とを備えた構成を提供する。
【0009】
上記構成において、本体部には、ジャイロセンサと加速度センサとを含む慣性センサが設けられており、仮想目標設定機能部は、上記仮想目標位置を設定した状態における本体部の姿勢情報を記憶し、姿勢制御機能部は、作業用移動体の動作時に、仮想目標設定機能部で記憶された本体部の姿勢情報と、慣性センサで逐次検知される角度情報に基づいて、本体部の姿勢情報を逐次演算算出して、本体部の姿勢を制御する構成とすることができる。
【0010】
また、上記構成において、本体部は、作業用移動体に対して、作業用移動体の旋回方向面内で回動可能な第1作動部と、第1作動部に対して、作業用移動体の起伏方向面内で回動可能で、投光手段が設けられた第2作動部とを備え、制御部の姿勢制御機能部は、第1作動部の回動と、第2作動部の回動とを制御する構成とすることができる。
【0011】
あるいは、上記構成において、本体部は、作業用移動体に対して、作業用移動体の起伏方向に回動可能な第1作動部と、第1作動部に対して、作業用移動体の旋回方向に回動可能で、投光手段が設けられた第2作動部とを備え、制御部の姿勢制御機能部は、第1作動部の回動と、第2作動部の回動とを制御する構成とすることができる。
【0012】
また、上記構成において、本体部の作業用移動体に対する姿勢変位が所定範囲内に制限されており、姿勢制御機能部は、本体部の姿勢変位が規制される作業用移動体の動作範囲では、作業用移動体の動作に係らず、本体部の姿勢制御を停止し、作業用移動体が上記動作範囲を脱した位置で、本体部の姿勢制御を再開する構成とすることができる。
【0013】
上記の慣性センサは、所定の基準以下の上記角度情報は姿勢制御機能部に出力しない不感機能を有していてもよい。
【0014】
本発明の照明装置は、梯子付消防自動車等の高所作業車に搭載される作業体に好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静止体の照明対象位置を、作業用移動体の動作に追随して、常に照明することができ、しかも、構成や制御が比較的簡素な作業用移動体の照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び
図2は、この実施形態に係る高所作業車としての梯子付消防自動車を示している。この梯子付消防自動車は、車両本体1と、車両本体1に搭載された作業用移動体としての伸縮式(複数段)の梯子2と、梯子2の基端部(第1段)2aに設置された照明装置3と、梯子2の先端部に装着されたバスケット4とを備えている。照明装置3は、基端部2aの側部の構造材に適宜の取付部材2a1(
図3参照)を介して装着され、この実施形態において、照明装置3は、基端部2aの両側部にそれぞれ設置されている。周知のように、車両本体1の後部に縦軸の旋回軸(旋回中心X)回りに旋回可能な旋回テーブル5が配設され、旋回テーブル5に支持フレーム6が取り付けられる。梯子2の基端部2aは支持フレーム6に横軸の起伏軸(起伏中心Y)を介して起伏移動自在に取り付けられる。梯子2は、複数段の梯子部材(図示省略)を入れ子式に組み合わせて構成され、伸縮駆動手段(図示省略)により伸縮作動され、起伏駆動手段(図示省略)により起伏作動され、旋回テーブル5により旋回作動される。なお、車両本体1にはアウトリガー・ジャッキ装置7が装備されており、梯子付消防自動車が火災現場の近傍に到着すると、アウトリガー・ジャッキ装置7が作動され、車両本体1が地上に安定的に支持される。
【0019】
図3は、
図1及び
図2における梯子2のV−V部分断面図、
図4は、照明装置3を、梯子2の基端部2aに対して平面視となる方向(
図3のW方向)から見た図である。照明装置3は、本体部3Aと制御部3Bとで構成され、この実施形態において、本体部3Aは、基端部2aの側部の構造材に適宜の取付部材2a1を介して装着され、取付部材2a1に対して基端部2aの平面方向と直交する方向の軸(回動中心Z1)回りに回動可能な第1作動部3aと、第1作動部3aに対して基端部2aの平面方向と平行な方向の軸(回動中心Z2)回りに回動可能な第2作動部3bとを備えている。第1作動部3aが基端部2aに対して回動中心Z1回りに回動し、換言すれば、基端部2aの旋回方向に回動し、及び/又は、第2作動部3bが第1作動部3aに対して回動中心Z2回りに回動し、換言すれば、基端部2aの起伏方向に回動し、これらの回動動作によって、基端部2aに対する本体部3Aの姿勢が変位する。本体部3Aの基端部2aに対する初期姿勢は、
図4において、第2作動部3bの回動中心Z2が基端部2aの幅方向と一致し、回動中心Z2と直交する第1作動部3aの方向が基端部2aの長手方向と一致し、かつ、第2作動部3bの照射面3b1が基端部2aの平面方向と平行に基端部2aの先端側を向いた状態である(以下、この状態を「原点状態」という。)。例えば、第1作動部3aは、回動中心Z1回りに180°(
図4に示す原点状態から左右方向にそれぞれ90°)の範囲で回動可能であり、第2作動部3bは、
図4に示す原点状態から回動中心Z2回りに正逆両方向にそれぞれ360°の範囲で回動可能である。ただし、第2作動部3bは、
図4に示す原点状態から回動中心Z2回りに正方向及び/又は逆方向にエンドレスで回動可能であってもよい。
【0020】
この実施形態において、制御部3Bは、本体部3Aの第1作動部3aの内部に収容されている。また、第1作動部3aの内部には、制御部3Bに加え、第1作動部3aを回動中心Z1回りに回動させる回動機構、例えばサーボモータ(図示省略)と、第2作動部3bを回動中心Z2回りに回動させる回動機構、例えばサーボモータ(図示省略)と、本体部3Aの姿勢情報を検知するセンサ、例えばジャイロセンサと加速度センサとを含む慣性センサ、特に3軸のジャイロセンサと加速度センサとを含む3軸の慣性センサ3cが収容されている。例えば、第1作動部3aの回動中心Z1は、本体部3Aの重心G(第1作動部3aの重心又は本体部3A全体の重心)を通り、この重心Gの位置に慣性センサ3cが配置されている。慣性センサ3cで検知される本体部3Aの姿勢情報、この実施形態では、第1作動部3a及び第2作動部3bの回動に関する角度情報が制御部3Bに入力される。また、第2作動部3bの内部には、LED等の投光手段(図示省略)が収容され、投光手段から発せられる照明光は照射面3b1から所定の広がり角(例えば約100°以上)をもって所定方向に照射される。慣性センサ3cは、所定の基準以下の角度情報は姿勢制御機能部3B2に出力しない不感機能を有しており、例えば車両本体1から梯子2(基端部2a)伝わる振動やその他の外力により、本体部3Aが微小変位しても、この微小変位は制御のファクターとはならない。尚、慣性センサ3cは、本体部3Aの重心Gの位置に限らず、第1作動部3aの回動中心Z1上の任意の位置に配置すればよい。また、第1作動部3aの回動中心Z1は、本体部3Aの重心Gからずれた位置に在ってもよい。
【0021】
図5は、制御部3Bによる本体部3Aの姿勢制御の制御ブロック図である。制御部3Bは、仮想目標設定機能部3B1と姿勢制御機能部3B2とを備え、この実施形態では、さらにマニュアル制御機能部3B3を備えている。慣性センサ3cで検出される上記の角度情報は角度情報信号S1として姿勢制御機能部3B2に逐次入力され、姿勢制御機能部3B2は、本体部3A(第1作動部3aと第2作動部3b)の回動機構3dに制御信号S2を出力する。マニュアル制御機能部3B3には、外部の入力手段10から操作信号S3が入力され、マニュアル制御機能部3B3は、この操作信号S3に基づいて回動機構3dに制御信号S4を出力する。また、制御信号S4に基づく本体部3Aの姿勢情報が姿勢情報信号S5として、マニュアル制御機能部3B3から仮想目標設定機能部3B1に送られる。
【0022】
仮想目標設定機能部3B1は、梯子2(基端部2a)を所定位置(
図1及び
図2に示す梯子2の初期搭載位置を含む。)に位置させ、本体部3Aの第2作動部3bの投光手段から発せられる照明光を静止体の照明対象位置(例えば、火災が発生しているビルの火災区画)に照射した状態で、上記照明対象位置に対応する目標位置(この目標位置は、上記照明対象位置であっても良いし、上記照明対象位置から多少ずれた位置であってもよい。)に対して、本体部3Aに設定された基準位置から上記目標位置を指向して延びる基準線上に仮想目標位置を設定すると共に、この仮想目標位置を設定した状態(仮想目標設定時)における本体部3Aの姿勢情報を記憶する。例えば、仮想目標設定時に、本体部3Aの基端部2aに対する姿勢を
図4に示す原点状態から変位させる場合、この姿勢変位は、マニュアル制御機能部3B3によって制御される。この場合、外部入力手段10から操作信号S3がマニュアル制御機能部3B3に入力され、マニュアル制御機能部3B3は、この操作信号S3に基づいて、制御信号S4を回動機構3dに出力して、本体部3Aを所定の姿勢に変位させる。また、この時の本体部3Aの姿勢情報は、姿勢情報信号S5として、マニュアル制御機能部3B3から仮想目標設定機能部3B1に送られ、仮想目標設定機能部3B1は、この姿勢情報信号S5から得られる本体部3Aの姿勢情報や仮想目標位置に関する既知の情報に基づいて、仮想目標設定時の本体部3Aの姿勢情報を演算算出して記憶する。
【0023】
姿勢制御機能部3B2は、仮想目標設定時の状態からの基端部2aの動作に追随して、本体部3Aの上記基準位置から投光手段の照射方向に対応して延びる照射基準線が常に仮想目標位置を指向するように、本体部3Aの姿勢を制御する。この姿勢制御機能部3B2による制御は、仮想目標設定機能部3B1に記憶された本体部3Aの姿勢情報と、慣性センサ3cから逐次入力される角度情報に基づいて、本体部3Aの姿勢情報を逐次演算算出し、この算出結果を制御信号S2として回動機構3dに出力することによって行われる。
【0024】
図6及び
図7は、本体部3A(第1作動部3a)の旋回方向の姿勢制御の一例を示す作動原理図である。なお、制御開始時、本体部3Aの姿勢は常に
図4に示す原点状態である(制御部3Bによる制御が終了すると、本体部3Aが
図4に示す原点状態に復帰するようになっている。)。また、
図6及び
図7において、Bは、梯子2(基端部2a)の旋回中心Xから、本体部3A(第1作動部3aの重心G)までの距離であり、基端部2aに対する本体部3Aの設置位置によって決まる。
【0025】
図6は、仮想目標設定時の状態を示している。仮想目標位置の設定は、例えば次のような態様で行う。まず、梯子2(基端部2a)を
図1及び
図2に示す初期搭載位置から所定位置まで作動させると共に、外部入力手段10から操作信号S3をマニュアル制御機能部3B3に入力し、マニュアル制御機能部3B3により、本体部3Aを
図4に示す原点状態から所定の姿勢に変位させて、第2作動部3bの投光手段から発せられる照明光を静止体の照明対象位置O1に照射する。この状態で、本体部3Aの基準位置、この例では本体部3Aの重心G(回動中心Z1上に位置する。)から、3次元空間内で上記照明光の照射方向(光軸L1)と平行な方向に延びる基準線L2を設定する。この基準線L2は、平面視で照明光の光軸L1から平行方向に距離δ1だけずれており、この基準線L2上に、照明対象位置O1に対応する目標位置O2が在る。照明装置3は、照明対象位置O1や目標位置O2までの距離は検知しないので、仮想目標設定機能部3B1により、本体部3Aの重心Gから基準線L2に沿って所定距離A
0だけ離れた位置に仮想目標位置O3を設定する。この所定距離A
0は、目標位置O2までの距離よりも小さくなる場合もあるし、大きくなる場合もあるし、同じになる場合もある(目標位置O2までの距離が分からないため)。仮想目標位置O3が目標位置O2に近づくほど照射の精度は良くなる。また、上記の所定距離A
0は、仮想目標設定時に、その都度適宜に設定してもよいし、照明装置3を設置する作業移動体の構造や搭載態様、作業移動体の作業目的や作業態様等に応じて、予め固定値として設定しておいてもよい。
【0026】
上記の態様で仮想目標位置O3を設定すると、仮想目標位置O3と重心Gと基端部2aの旋回中心Xとで、幾何学三角形ができる。重心Gと仮想目標位置O3との間の距離はA
0、旋回中心Xと重心Gとの間の距離はB、旋回中心Xと仮想目標位置O3との間の距離はC、距離A
0の辺と距離Bの辺との間の角度はα
0、距離Bの辺と距離Cの辺との間の角度はβ
0である。距離A
0は、仮想目標位置O3を設定することによって決まり、距離Bは、基端部2aに対する本体部3Aの設置位置によって決まる。また、角度α
0は、マニュアル制御機能部3B3から仮想目標設定機能部3B1に送られる姿勢情報信号S5から算出される。仮想目標設定機能部3B1は、既知の距離A
0と距離Bと角度α
0の値から、余弦定理により距離Cと角度β
0を演算算出し、仮想目標設定時における本体部3Aの姿勢情報として、距離A
0、距離B、距離C、角度α
0及び角度β
0を記憶する。
【0027】
尚、仮想目標位置O3の設定は、照明対象位置O1に応じて、梯子2(基端部2a)のみを初期搭載位置から所定位置まで作動させて、または、梯子2(基端部2a)を初期搭載位置に維持し、本体部3Aのみを
図4に示す原点状態から所定の姿勢に変位させて、あるいは、梯子2(基端部2a)を初期搭載位置に維持し、かつ、本体部3Aを
図4に示す原点状態に維持した状態で行うこともできる。
【0028】
図7は、姿勢制御時の状態を示している。上記の仮想目標設定時の状態から梯子2(基端部2a)が旋回動作を行うと、その旋回動作に伴って、本体部3A(第1作動部3a)に収容された慣性センサ3cが基端部2aの旋回角の角度変位β
1を逐次検出し、その角度変位β
1は角度情報S1として姿勢制御機能部3B2に逐次入力される。姿勢制御機能部3B2は、仮想目標設定機能部3B1に記憶された距離B、距離C及び角度β
0と、慣性センサ3cで逐次検出される角度変位β1に基づいて、基端部2aの旋回角β
2(距離Bの辺と距離Cの辺との間の角度)を算出し、本体部3A(第1作動部3a)の重心Gから照明光の光軸L1と平行な方向に延びる照射基準線L3が常に仮想目標位置O3を指向するように、余弦定理により本体部3A(第1作動部3a)の基端部2aに対する旋回方向の角度α
1を演算算出する。この算出結果は、制御信号S2として、姿勢制御機能部3B2から第1作動部3aの回動機構3dに逐次出力され、これにより、第1作動部3aが角度α
1の位置まで回動する。
【0029】
上記の例では、本体部3Aの基準位置を重心Gに設定したが、本体部3Aの基準位置を、第2作動部3bの回動中心Z2と照明光の光軸L1との交点Mに設定し、仮想目標設定時は、照明光の光軸L1と一致する基準線L2上に仮想目標位置O1を設定し、姿勢制御時は、照明光の光軸L1と一致する照射基準線L3が常に仮想目標位置O1を指向するように制御することも可能である。
【0030】
図8は、本体部3A(第2作動部3b)の起伏方向の姿勢制御の一例を示す作動原理図である。中央の図は、梯子2(基端部2a)が仰角を取っていない状態、上下の図は、梯子2(基端部2a)がそれぞれ仰角γを取った状態を示している。仮想目標位置O3の設定は、照明対象位置O1に応じて、上記のいずれかの状態で行うが、ここでは簡単のため、基端部2aが仰角を取っていない状態(中央の図の状態)で仮想目標位置O3を設定し、この状態から基端部2aが上方向に仰角γを取りながら起伏移動する場合(上の図の状態)を例にとって説明する。なお、
図8において、B’は、梯子2(基端部2a)の起伏中心Yから、本体部3A{第2作動部3bの回動中心Z2と照明光の光軸L1との交点Mから仰角線(仰角γの線)に下した垂線の位置)までの距離であり、基端部2aに対する本体部3Aの設置位置によって決まる。
【0031】
仮想目標位置O3の設定は上述した態様と同様の態様で行う。この例では、本体部3Aの基準位置が、第2作動部3bの回動中心Z2と照明光の光軸L1との交点Mに設定され、仮想目標設定時(この例では中央の図の状態)、本体部3Aの基準位置Mから仮想目標位置O3を指向して延びる基準線L2は照明光の光軸L1と一致する。また、距離A
0は上述した態様で所定距離に設定され、基準位置Mと仰角線(仰角γの線)との間のずれ量δ2は本体部3Aの構造によって決まる。この例では、基端部2aの仰角γは0°である。仮想目標設定機能部3B1は、距離A
0と距離B’と仰角(γ=0)とずれ量δ2を本体部3A(第2作動部3b)の姿勢情報として記憶する。
【0032】
上記の仮想目標設定時の状態から梯子2(基端部2a)が上方向に起伏動作を行うと、その起伏動作に伴って、本体部3A(第1作動部3a)に収容された慣性センサ3cが基端部2aの仰角の角度変位γを逐次検出し、その角度変位γは角度情報S1として姿勢制御機能部3B2に入力される。姿勢制御機能部3B2は、仮想目標設定機能部3B1に記憶された距離A
0、距離B’、仰角(γ=0)、ずれ量δ2と、慣性センサ3cで逐次検出される角度変位γに基づいて、基端部2aの仰角γを算出し、本体部3A(第2作動部3b)の基準位置Mから延びる照射基準線L3(光軸L1と一致)が常に仮想目標位置O3を指向するように、余弦定理により、第2作動部3bの基端部2aに対する起伏方向の角度α
2を演算算出する。この算出結果は、制御信号S2として、姿勢制御機能部3B2から第2作動部3bの回動機構3dに出力され、これにより、第2作動部3bが角度α
2の位置まで回動する。
【0033】
姿勢制御機能部3B2は、上述したような第1作動部3aの姿勢制御と、第2作動部3bの姿勢制御とを適宜に併用しながら、梯子2(基端部2a)の動作に追随して、本体部3Aの姿勢を制御し、本体部3A(第2作動部3b)の投光手段から発せられる照明光が常に照明対象位置O1を照射するようにする。厳密には、照明光の光軸L1は照明対象位置O1の中心からずれる場合が多いが、このずれ量は、照明対象位置O1までの距離に比較して小さなものであり、また、照明光は所定の広がり角をもって照射されるので、照明対象位置O1を常に照明光の照射範囲内に収めることができる。
【0034】
上述したように、この実施形態において、本体部3Aの第1作動部3aは、
図4に示す原点状態から回動中心Z1回りに左右方向にそれぞれ90°(合計180°)の範囲で回動可能であり、梯子2(基端部2a)がある動作範囲を超えて移動すると、第1作動部3aが回動可能範囲の限界まで回動して、それ以上は回動できなくなる。姿勢制御機能部3B2は、このような第1作動部3aの回動が規制される基端部2aの動作範囲では、基端部2aの動作に係らず、姿勢制御機能部3B2の回動制御を停止し、基端部2aが上記の動作範囲を脱した位置で、第1作動部3aの回動制御を再開する。例えば、
図9は、基端部2a(
図6及び
図7に示す距離Bの位置が基準)が左回りに旋回移動し、第1作動部3aが
図4に示す原点状態(P
0の位置)から左回りに回動する場合を示している。姿勢制御機能部3B2は、
図6に示す角度α
0、β
0と
図7に示す角度α
1とβ
1、β
2に基づいて、第1作動部3aの回動角度と基端部2aの旋回角を検知することができる。基端部2aの旋回移動に追随して、第1作動部3aは左回りに回動するが、基端部2aがP
1の位置まで旋回移動すると、第1作動部3aは原点状態から左方向に90°回動して、それ以上は回動できなくなる。姿勢制御機能部3B2は、この状態を検知し、P
1の位置で第1作動部3aの回動制御を停止する。そして、姿勢制御機能部3B2は、第1作動部3aの回動が規制される基端部2aの動作範囲(P
1〜P
2〜P
3の範囲)では、この停止状態を維持し、第1作動部3aの回動が再び可能となる位置P
3まで基端部2aが旋回移動した時点で、第1作動部3aの回動制御を再開する。回動制御の再開時、姿勢制御機能部3B2は、第1作動部3aを右回りに180°回動させ、この状態から、基端部2aの旋回移動に追随して、第1作動部3aの回動を制御する。基端部2aが右回りに旋回移動する場合も、同様の態様で制御が行われる。
【0035】
図10は、他の実施形態に係る梯子2と照明装置3を示している(
図1及び
図2のV−V部分断面に対応する部分断面)。この実施形態において、本体部3Aは、基端部2aの側部の構造材に適宜の取付部材2a2を介して装着され、取付部材2a2に対して基端部2aの平面方向と平行な方向の軸(回動中心Z1)回りに回動可能な第1作動部3aと、第1作動部3aに対して基端部2aの平面方向と直交する方向の軸(回動中心Z2)回りに回動可能な第2作動部3bとを備えている。第1作動部3aが基端部2aに対して回動中心Z1回りに回動し、換言すれば、基端部2aの起伏方向に回動し、及び/又は、第2作動部3bが第1作動部3aに対して回動中心Z2回りに回動し、換言すれば、基端部2aの旋回方向に回動し、これらの回動動作によって、基端部2aに対する本体部3Aの姿勢が変位する。第1作動部3aの姿勢制御(回動制御)は、
図8に示す作動原理図に準じて行い、第2作動部3bの姿勢制御(回動制御)は、
図6及び
図7に示す作動原理図に準じて行うことができる。
【0036】
本発明の照明装置は、梯子付消防自動車の伸縮式の梯子の他、屈折梯子付消防自動車の伸縮・屈折式のブーム、その他の高所作業車の伸縮式のブーム、車両や固定設備に搭載されるクレーン等の作業用移動体に設置することもできる。