特許第6185358号(P6185358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6185358シャッター装置の構造及び巻取シャフトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185358
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】シャッター装置の構造及び巻取シャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/56 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   E06B9/56 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-212933(P2013-212933)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-74943(P2015-74943A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】井上 晋一
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴洋
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235964(JP,A)
【文献】 特開2010−121353(JP,A)
【文献】 特開2002−364609(JP,A)
【文献】 特開平10−220147(JP,A)
【文献】 特開2006−200144(JP,A)
【文献】 特開平05−125873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0205224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/56−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口の一側に設けられ、シャッターカーテンを外周に巻装する巻取シャフトを備えるシャッター装置の構造であって、
前記巻取シャフトを構成し、前記シャッターカーテンの一側縁が固定され該シャッターカーテンが巻回される筒状の本体部と、
前記本体部の軸線に沿う方向の両端に前記軸線を中心に取り付けられ少なくとも一方が前記本体部に対して前記軸線に沿う方向に移動自在となる一対の軸首と、
前記軸首の外周から突出するキーと、
前記本体部に形成され前記軸首を支持する軸穴の内周が半径方向外側に切り欠かれて前記キーが係合することで前記軸首と前記本体部との相対回転を規制する本体側キー溝と、
を具備することを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項2】
請求項1記載のシャッターの構造であって、
前記軸首の外周に前記軸線に沿う方向で軸首側キー溝が凹設され、
前記キーが、前記軸首側キー溝より短く形成され、前記軸首側キー溝に沿う方向に移動自在となって前記軸首側キー溝に挿入され、前記軸首の外周から突出することを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のシャッター装置の構造であって、
前記本体部が開口部を有する筒状に形成され、
前記開口部に前記軸穴を有した中子が固定され、
前記中子の前記本体側キー溝に前記キーが固定されることを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項4】
請求項1または2または3記載のシャッター装置の構造であって、
それぞれの前記軸首を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体に固定される一対のブラケットと、
一対の前記ブラケットに長手方向両端が支持されて架設され少なくとも長手方向の一端側が長手方向に沿って長い長穴を介して前記ブラケットに締結固定される補強部材と、
を具備することを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項5】
請求項1または2または3記載のシャッター装置の構造であって、
それぞれの前記軸首を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体に固定される一対のブラケットと、
一対の前記ブラケットに長手方向両端が締結固定される補強部材と、
一対の前記ブラケットの少なくとも一方に形成され前記建物躯体に締結固定される前記軸線に沿う方向に長い躯体固定用長穴と、
を具備することを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項6】
請求項1または2または3記載のシャッター装置の構造であって、
それぞれの前記軸首を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体に固定される一対のブラケットと、
一対の前記ブラケットに長手方向両端が支持されて架設され少なくとも長手方向の一端側が長手方向に沿って長い長穴を介して前記ブラケットに締結固定される補強部材と、
一対の前記ブラケットの少なくとも一方に形成され前記建物躯体に締結固定される前記軸線に沿う方向に長い躯体固定用長穴と、
を具備することを特徴とするシャッター装置の構造。
【請求項7】
軸首の外周に軸線に沿う方向で凹設された軸首側キー溝に、前記軸首側キー溝より短く形成されて前記軸首側キー溝に沿う方向に移動自在となって前記軸首の外周から突出するキーを挿入する工程と、
前記軸首を支持する軸穴の内周に半径方向外側に切り欠かれて前記キーが係合する本体側キー溝を有する中子を、前記キーに前記本体側キー溝を係合させて前記軸首の外周に外挿する工程と、
前記キーに前記中子を固定する工程と、
前記軸首とともに前記中子を巻取シャフトの筒状の本体部の開口部に挿入して前記中子と前記本体部を固定する工程と、
を含むことを特徴とする巻取シャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にシャッター装置は、建物躯体に形成された開口の上部に、巻取シャフトを回転自在に支持し、この巻取シャフトの外周に、開閉体であるシャッターカーテンを巻き取りまたは巻き戻すことにより、シャッターカーテンを昇降させて建物開口を開閉可能としている(特許文献1,2,3等参照)。巻取シャフトは、シャッターカーテンを外周に巻きつけるための比較的大径の円筒体を有している。円筒体は、軸線方向の両端に支持板が固定され、この支持板には円筒体の軸線方向に貫通する軸首が固着されている。巻取シャフトは、この両端の軸首が軸受によって回転自在に支持されることになる。巻取シャフトは、軸首の一端部に固定されたスプロケットにチェーンが掛け渡されて回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−200144号公報
【特許文献2】特開2007−46341号公報
【特許文献3】特開2008−267042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シャッター装置が夏期に製造されると40℃になる部材、特に金属部材があり、そのような場所で組み立てたものを例えば庫内温度が−30℃程度となる冷凍庫に設置したとき、製造時と設置時の温度差が70℃となり部材が収縮する。例えば材質がSUS304のステンレスよりなる巻取シャフトの場合、建物開口の間口幅が3000mm、巻取シャフトの長さが2870mmであると、温度差70℃で3.5mm程度縮む計算となる。一般的な素材であるSS400のスチールの場合、上記同様の条件では2.35mm程度縮む計算となる。ステンレスはスチールより線膨張係数が大きく、伸縮量が大きくなるが、防錆対策等から巻取シャフトをステンレス製としたい要請がある。
【0005】
巻取シャフトの両端の軸首は、建物躯体に固定される左右のブラケットに回転自在に支持されるとともに、ブラケットに対して軸線に沿う方向に移動しないように軸受にしっかり固定される。また、巻取シャフトは、軸首の一端部に固定されたスプロケットにチェーンが掛け渡されて回転駆動される。このため、巻取シャフトが収縮すると、どこかに内部応力が発生してしまう。その結果、例えば、ブラケットが変形や破損したり、スプロケットが変位してチェーンの山とびが発生し、最悪の事態にはチェーンがスプロケットから外れたりする虞がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、製造工場内と設置場所との温度差や気候の変化による温度差などによって部材が伸縮することがあっても、シャッター装置に変形や損傷などが起きにくいシャッター装置の構造及び巻取シャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシャッター装置11の構造は、建物開口の一側に設けられ、シャッターカーテン19を外周に巻装する巻取シャフト23を備えるシャッター装置11の構造であって、
前記巻取シャフト23を構成し、前記シャッターカーテン19の一側縁が固定され該シャッターカーテン19が巻回される筒状の本体部25と、
前記本体部25の軸線51に沿う方向の両端に前記軸線51を中心に取り付けられ少なくとも一方が前記本体部25に対して前記軸線51に沿う方向に移動自在となる一対の軸首27と、
前記軸首27の外周から突出するキー55と、
前記本体部25に形成され前記軸首27を支持する軸穴49の内周が半径方向外側に切り欠かれて前記キー55が係合することで前記軸首27と前記本体部25との相対回転を規制する本体側キー溝59と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
このシャッター装置11の構造では、軸首27が本体部25の軸穴49に挿入されて、軸首27と本体部25の本体側キー溝59に挿入されるキー55が介設状態となる。軸首27が回転駆動されれば、キー55を介して巻取シャフト23の本体部25が回転される。軸首27が回転規制されれば、本体部25にモーメントが作用しても、巻取シャフト23は回転が規制される。
温度差により、長尺の巻取シャフト23が伸縮すると、軸首27と本体部25とが軸線51に沿う方向で固定されておらず、移動自在とされており、巻取シャフト23の伸縮による変位が、キー55を介した本体側キー溝59の移動によって吸収され、一対の軸首間の距離が変動しにくくなる。
【0009】
本発明の請求項2記載のシャッター装置11の構造は、請求項1記載のシャッターの構造であって、
前記軸首27の外周に前記軸線51に沿う方向で軸首側キー溝53が凹設され、
前記キー55が、前記軸首側キー溝53より短く形成され、前記軸首側キー溝53に沿う方向に移動自在となって前記軸首側キー溝53に挿入され、前記軸首27の外周から突出することを特徴とする。
【0010】
このシャッター装置11の構造では、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入され、キー55は、軸首側キー溝53内で軸線51に沿って移動可能となる。軸首27は、キー55を本体側キー溝59に係合し、本体部25の軸穴49に挿入される。軸首27が回転駆動されれば、キー55を介して巻取シャフト23の本体部25が回転される。
温度差により、長尺の巻取シャフト23が伸縮すると、本体部25とともにキー55が軸線51に沿う方向に移動(変位)する。キー55が軸首側キー溝53内で移動することで、軸首27は、キー55によって移動されない。これにより、巻取シャフト23の伸縮による変位が、軸首側キー溝53内でのキー55の移動によって吸収され、一対の軸首間の距離が変動しにくくなる。
【0011】
本発明の請求項3記載のシャッター装置11の構造は、請求項1または2記載のシャッター装置11の構造であって、
前記本体部25が開口部57を有する筒状に形成され、
前記開口部57に前記軸穴49を有した中子29が固定され、
前記中子29の前記本体側キー溝59に前記キー55が固定されることを特徴とする。
【0012】
このシャッター装置11の構造では、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入され、軸首27がキー55ごと中子29の軸穴49に挿入される。キー55が中子29の軸穴49に溶接等によって固定され、中子29が軸首27から脱落規制される。この状態で、中子29が本体部25の開口部57に固定される。これにより、本体部25に対して軸線51に沿う方向で、軸首27が移動自在に取り付けられる。
【0013】
本発明の請求項4記載のシャッター装置11の構造は、請求項1または2または3記載のシャッター装置11の構造であって、
それぞれの前記軸首27を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体13に固定される一対のブラケット31と、
一対の前記ブラケット31に長手方向両端が支持されて架設され少なくとも長手方向の一端側が長手方向に沿って長い長穴63を介して前記ブラケット31に締結固定される補強部材45と、
を具備することを特徴とする。
【0014】
このシャッター装置11の構造では、一対のブラケット31に両端が固定される長尺の補強部材45が伸縮すると、一対のブラケット間の距離と、補強部材45の長さとに差異が生じる。一対のブラケット31は、建物躯体13に固定されるので、ブラケット間の距離の変位は極めて小さい。このため、ブラケット31は、本来、補強部材45からの応力を受け、変形しようとする。この際、本構成では、ブラケット31に対し、補強部材45の固定部が長穴63を移動する。これにより、変位が吸収され、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。
【0015】
本発明の請求項5記載のシャッター装置11の構造は、請求項1または2または3記載のシャッター装置11の構造であって、
それぞれの前記軸首27を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体13に固定される一対のブラケット31と、
一対の前記ブラケット31に長手方向両端が締結固定される補強部材45と、
一対の前記ブラケット31の少なくとも一方に形成され前記建物躯体13に締結固定される前記軸線51に沿う方向に長い躯体固定用長穴61と、
を具備することを特徴とする。
【0016】
このシャッター装置11の構造では、一対のブラケット31に、両端が固定される長尺の補強部材45が伸縮すると、一対のブラケット間の距離と、補強部材45の長さとに差異が生じる。一対のブラケット31は、建物躯体13に固定されるので、ブラケット間の距離の変位は極めて小さい。このため、ブラケット31は、本来、補強部材45からの応力を受け、変形しようとする。この際、本構成では、建物躯体13に対しブラケット31が躯体固定用長穴61を介して移動する。これにより、変位が吸収され、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。
【0017】
本発明の請求項6記載のシャッター装置11の構造は、請求項1または2または3記載のシャッター装置11の構造であって、
それぞれの前記軸首27を前記軸線方向に移動規制して回転自在に支持し建物躯体13に固定される一対のブラケット31と、
一対の前記ブラケット31に長手方向両端が支持されて架設され少なくとも長手方向の一端側が長手方向に沿って長い長穴63を介して前記ブラケット31に締結固定される補強部材45と、
一対の前記ブラケット31の少なくとも一方に形成され前記建物躯体13に締結固定される前記軸線51に沿う方向に長い躯体固定用長穴61と、
を具備することを特徴とする。
【0018】
このシャッター装置11の構造では、ブラケット31に対し、補強部材45の固定部が長穴63を移動する。これとともに、建物躯体13に対してもブラケット31が躯体固定用長穴61を介して移動する。これにより、変位が確実に吸収され、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。
【0019】
本発明の請求項7記載の巻取シャフト23の製造方法は、軸首27の外周に軸線51に沿う方向で凹設された軸首側キー溝53に、前記軸首側キー溝53より短く形成されて前記軸首側キー溝53に沿う方向に移動自在となって前記軸首27の外周から突出するキー55を挿入する工程と、
前記軸首27を支持する軸穴49の内周に半径方向外側に切り欠かれて前記キー55が係合する本体側キー溝59を有する中子29を、前記キー55に前記本体側キー溝59を係合させて前記軸首27の外周に外挿する工程と、
前記キー55に前記中子29を固定する工程と、
前記軸首27とともに前記中子29を巻取シャフト23の筒状の本体部25の開口部57に挿入して前記中子29と前記本体部25を固定する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
この巻取シャフト23の製造方法では、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入される。軸首27は、キー55ごと中子29の軸穴49に挿入される。軸首27のキー55は、中子29の本体側キー溝59に係合される。軸首27と中子29とは、相対回転が規制される。この状態でキー55を中子29の軸穴49に溶接等によって固定する。中子29に固定されたキー55は、軸首側キー溝53内で軸線51に沿う方向には所定距離で移動可能となるが、軸首側キー溝53からは離脱しない。これにより、中子29は、軸首27に対し軸線51に沿う方向に移動自在となりながら、相対回転が阻止されて、軸首27から脱落が規制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る請求項1記載のシャッター装置の構造によれば、軸首と本体部とに介設されるキーにより、相対回転が規制され回転駆動が伝達されるとともに、軸線の方向には移動可能となり、工場内と設置場所との温度差等によって部材が伸縮することがあっても、シャッター装置の変形や損傷などを防止できる。
【0022】
本発明に係る請求項2記載のシャッター装置の構造によれば、軸首側キー溝内でキーが移動可能となり、相対回転は規制されて軸首の回転は本体部に伝わり、且つ本体部とともにキーが軸線に沿う方向に移動するので、工場内と設置場所との温度差によって部材が伸縮しても、シャッター装置の変形や損傷などを防止できる。
【0023】
本発明に係る請求項3記載のシャッター装置の構造によれば、円筒状の本体部の開口部に、軸線方向に移動自在な軸首を容易に取り付けることができる。
【0024】
本発明に係る請求項4記載のシャッター装置の構造によれば、一対のブラケットに架設した長尺の補強部材が伸縮しても、ブラケットと補強部材が変位可能となって、ブラケットの変形や破損を防止できる。
【0025】
本発明に係る請求項5記載のシャッター装置の構造によれば、一対のブラケットに架設した長尺の補強部材が伸縮しても、ブラケットが建物躯体に対し変位し、ブラケットの変形や破損を防止できる。
【0026】
本発明に係る請求項6記載のシャッター装置の構造によれば、一対のブラケットに架設した長尺の補強部材が伸縮しても、ブラケットと補強部材が変位可能となるとともに、ブラケットも建物躯体に対し変位可能となり、ブラケットの変形や破損をより確実に防止できる。
【0027】
本発明に係る請求項7記載の巻取シャフトの製造方法によれば、軸首を手に持ってぶら下げて歩いても、中子が本体部からはずれを防止できて、製造作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る構造を備えるシャッター装置の正面図である。
図2図1に示したシャッター装置の巻取シャフト近傍の平面図である。
図3図2に示した巻取シャフト端部の要部拡大断面図である。
図4図3の分解斜視図である。
図5】本体部収縮時の巻取シャフト端部を表す動作説明図である。
図6】巻取シャフト及び本体部の収縮時のシャッター装置要部を表す動作説明図である。
図7】躯体固定用長穴を有したブラケットと建物躯体との固定構造を表す分解斜視図である。
図8】長穴の設けられた補強部材の斜視図である。
図9】補強部材をブラケットに固定する長穴の形成された固定アングルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る構造を備えるシャッター装置の正面図、図2図1に示したシャッター装置の巻取シャフト近傍の平面図、図3図2に示した巻取シャフト端部の要部拡大断面図、図4図3の分解斜視図である。
本実施形態に係る構造を備えるシャッター装置11は、建物躯体13の出入開口15の上部に設けられる収納ケース17と、出入開口15の左右に設けられ収納ケース17から繰り出される開閉体であるシャッターカーテン19の両縁を案内する一対のガイドレール21とを有する。
【0030】
収納ケース17には不図示の駆動機構によって回転される回転体である巻取シャフト23が設けられ、巻取シャフト23にはシャッターカーテン19の一側縁である基端側が固定されており、巻取シャフト23はシャッターカーテン19を基端側から外周に巻き付けることで、シャッターカーテン19を巻き取りながら、出入開口15を開放する。一方、巻取シャフト23が逆回転されれば、巻装されたシャッターカーテン19が収納ケース17から繰り出され、ガイドレール21に案内されながら下降して出入開口15を閉鎖する。
【0031】
巻取シャフト23は、本体部である両端が開放される円筒状の巻胴25、軸首27、中子29を有する。巻取シャフト23は、一対の軸首27が、左右一対のブラケット31を介して建物躯体13に回転自在に支持される。ブラケット31は、建物躯体13に固定されるベース部材33に固定される。ベース部材33にはスタッドボルト35(図7参照)が突設される。ブラケット31は、このスタッドボルト35に、ナット37を用いて締結固定される。ブラケット31は、それぞれの軸首27を軸線方向に移動規制して回転自在に建物躯体13に支持する。
【0032】
左右それぞれのブラケット31にはボールベアリング等の軸受39が固定される。軸首27は、この軸受39によって回転自在にブラケット31に支持される。左右それぞれの軸受39の外側の軸首27には、抜け止めカラー41(図3参照)がイモネジ部43によって固定される。イモネジ部43は、抜け止めカラー41の軸線方向の移動を規制する。一対の抜け止めカラー41は、それぞれの軸受39の側面(外面側)に当接して軸首27に固定されることで、軸首27をブラケット31に対し軸線方向に移動規制している。
【0033】
また、シャッター装置11は、一対のブラケット31に長尺材の補強部材45が架設される。補強部材45は、固定アングル47を介して長手方向両端がブラケット31に締結固定される。固定アングル47には、一片と他片が直角に曲げられたL形アングルが用いられる。固定アングル47は、一片がブラケット31に締結され、他片が補強部材45に固定されることで、ブラケット31と補強部材45とを固定する。
【0034】
シャッターカーテン19を外周に巻装する巻胴25は、筒状の例えば鋼管からなる。巻胴25は、両端に設けられる支持軸としての軸首27によって回動自在に支持される。軸首27には円板状に形成された中子29が軸首27の軸線方向に所定間隔を有して複数枚、本実施の形態では2枚が設けられる。軸首27は、この中子29とともに、巻胴25の端部から挿入され、中子29の外周が巻胴25の内周に固定される。この固定は、溶接にて中子29の表裏両面で行われる。中子29の外径は、巻胴25の内径より若干小さく形成されている。巻胴25の寸法公差を吸収し、常に中子29が巻胴25に容易に挿入可能となっている。
【0035】
それぞれの中子29には軸首取付穴となる軸穴49(図4参照)が同心円で穿設される。軸首27は、巻胴25に挿入される前に、予め中子29が軸首27の外周に外挿となって挿入される。軸首27は、巻胴25の軸線51に沿う方向の両端に軸線51を中心に取り付けられ、少なくとも一方の軸首27が巻胴25に対して軸線51に沿う方向に移動自在となる。
【0036】
軸首27の外周には、軸線51に沿う方向で軸首側キー溝53が凹設される。この軸首側キー溝53にはキー55が挿入される。キー55は、軸首側キー溝53より短く形成されて軸首側キー溝53に沿う方向に移動自在となる。軸首側キー溝53に挿入されたキー55は、軸首27の外周から突条となって形成される。
なお、上記中子29は、1枚で構成されることとしてもよく、この中子29が複数枚で構成され設けられる際には、図3図5に示されているように、少なくとも2枚はキー55と嵌合していることが好ましい。
【0037】
本実施形態において、巻胴25は、両端に開口部57(図4参照)を有する筒状に形成される。この開口部57には、軸穴49を有した中子29が固定される。巻胴25に固定される中子29には、本体側キー溝59が形成される。本体側キー溝59は、軸穴49の内周が半径方向外側に切り欠かれて形成される。本体側キー溝59とキー55が係合することで、軸首27と巻胴25とは、相対回転が規制される。中子29の本体側キー溝59は、軸首側キー溝53内に挿入されているキー55に、溶接等によって固定される。
【0038】
次に、巻取シャフト23の製造手順を説明する。
巻取シャフト23を製造するには、図4に示すように、軸首27の外周に軸線51に沿う方向で凹設された軸首側キー溝53に、軸首側キー溝53より短く形成されて軸首側キー溝53に沿う方向に移動自在となって軸首27の外周から突出するキー55を挿入する。
軸首27を支持する軸穴49の内周に半径方向外側に切り欠かれてキー55が係合する本体側キー溝59を有する中子29を、キー55に本体側キー溝59を係合させて軸首27の外周に外挿する。
次に、キー55に中子29を溶接等によって固定する。
そして、軸首27とともに中子29を巻取シャフト23の筒状の巻胴25の開口部57に挿入して中子29と巻胴25を溶接等によって固定する。
【0039】
次に、シャッター装置11の構造と巻取シャフト23の製造方法の作用を説明する。
図5は本体部収縮時の巻取シャフト端部を表す動作説明図、図6は巻取シャフト23及び本体部の収縮時のシャッター装置要部を表す動作説明図である。
シャッター装置11の構造では、図5に示すように、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入され、キー55は、軸首側キー溝53内で所定の距離で移動可能となる。所定の距離とは、軸首側キー溝53の長さとキー55の長さの差分の距離dである。軸首27は、キー55を本体側キー溝59に係合し、巻胴25の軸穴49に挿入される。軸首27が回転駆動されれば、キー55を介して巻取シャフト23の巻胴25が回転される。軸首27が回転規制されれば、巻胴25にモーメントが作用しても、巻取シャフト23は回転が規制される。
【0040】
図6に示すように、温度差により、長尺の巻取シャフト23が長手方向に伸縮、例えば収縮すると、巻胴25とともにキー55が軸線51に沿う方向に移動、すなわち変位する。この際、キー55が軸首側キー溝53内で移動することで、軸首27は、キー55によって移動されない。これにより、巻取シャフト23の伸縮による変位が、軸首側キー溝53内でのキー55の移動によって吸収され、一対の軸首27,27間の距離が変動しにくくなる。
【0041】
なお、軸首側キー溝53及びキー55は、巻取シャフト23の両側に設けられてもよいが、好ましくは片側のみがよい。両側に設けた場合の通常使用時での巻取シャフト23の軸線51に沿う方向のガタツキを抑止できるためである。
【0042】
また、シャッター装置11の構造では、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入され、軸首27がキー55ごと中子29の軸穴49に挿入される。キー55が中子29の軸穴49に溶接等によって固定され、中子29が軸首27から脱落規制される。この状態で、中子29が巻胴25の開口部57に固定される。これにより、巻胴25に対して軸線51に沿う方向で、軸首27が移動自在に取り付けられる。その結果、円筒状の巻胴25の開口部57に、軸線方向に移動自在な軸首27を容易に取り付けることができる。
【0043】
また、巻取シャフト23の製造方法では、軸首27の軸首側キー溝53にキー55が挿入される。軸首27は、キー55ごと中子29の軸穴49に挿入される。軸首27のキー55は、中子29の本体側キー溝59に係合される。軸首27と中子29とは、相対回転が規制される。この状態でキー55を中子29の軸穴49に溶接等によって固定する。中子29に固定されたキー55は、軸首側キー溝内で軸線51に沿う方向には所定距離で移動可能となるが、軸首側キー溝53からは離脱しない。これにより、中子29は、軸首27に対し軸線51に沿う方向に移動自在となりながら、相対回転が阻止されて、軸首27から脱落が規制される。
【0044】
次に、シャッター装置11の構造の他の実施形態を説明する。
図7は躯体固定用長穴61を有したブラケット31と建物躯体13との固定構造を表す分解斜視図、図8は長穴63の設けられた補強部材45の斜視図、図9は補強部材45をブラケット31に固定する長穴63の形成された固定アングル47の斜視図である。
シャッター装置11は、長尺部材である巻取シャフト23とともに、補強部材45も温度差によって収縮する。補強部材45は、長手方向両端がブラケット31に固定される。ブラケット31は、建物躯体13に固定される。このため、上記のキー機構を備えていない場合の従来型巻取シャフトや、補強部材45の変位は、建物躯体13に固定されてこの間隔距離が殆ど変化しないブラケット31に、応力となって作用する。シャッター装置11の構造では、この従来型巻取シャフトや補強部材45の変位を吸収するための構成も備える。
【0045】
すなわち、補強部材45は、図7に示すように、ベース部材33を介して建物躯体13に固定される。ベース部材33は、建物躯体13に固定される固定板65に、複数のスタッドボルト35が植設される。ブラケット31は、L字形に形成された板で、ブラケット31の一方には軸穴49、複数の軸受固定穴67が穿設される。ブラケット31の他方には巻取シャフト23の軸線51に沿う方向に長い躯体固定用長穴61が、スタッドボルト35に対応して形成される。躯体固定用長穴61は、内方に通されたスタッドボルト35に、カラー69、ナット37が取り付けられて、建物躯体13に締結固定される。
【0046】
一対のブラケット31に、両端が固定される長尺の従来型巻取シャフトや補強部材45が伸縮すると、一対のブラケット31間の距離と、これら部材の長さとに差異が生じる。一対のブラケット31は、建物躯体13に固定されるので、ブラケット間の距離の変位は極めて小さい。このため、ブラケット31は、本来、従来型巻取シャフトや補強部材45からの応力を受け、変形しようとする(図6の破線参照)。この際、本構成では、建物躯体13に対しブラケット31が、躯体固定用長穴61を介して移動する。これにより、変位が吸収され、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。その結果、一対のブラケット31に架設した長尺の補強部材45が伸縮しても、ブラケット31が建物躯体13に対し変位し、ブラケット31の変形や破損を防止できる。
【0047】
また、シャッター装置11の構造では、補強部材45の長手方向両端は、一対のブラケット31に固定される。支持されて架設された補強部材45は、図8に示すように、少なくとも長手方向の一端側が長手方向に沿って長い長穴63を介してブラケット31に締結固定される。
【0048】
一対のブラケット31に両端が固定される長尺の補強部材45は、伸縮すると、一対のブラケット間の距離と、補強部材45の長さとに差異が生じる。一対のブラケット31は、建物躯体13に固定されるので、ブラケット間の距離の変位は極めて小さい。このため、ブラケット31は、本来、補強部材45からの応力を受け、変形しようとする(図6の破線参照)。この際、本構成では、ブラケット31に対し、補強部材45の固定部が長穴63を移動する。これにより、変位が吸収され、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。その結果、一対のブラケット31に架設した長尺の補強部材45が伸縮しても、ブラケット31と補強部材45が変位可能となって、ブラケット31の変形や破損を防止できる。
【0049】
また、図9に示すように、長穴63は、補強部材45とブラケット31を固定するために使用される固定アングル47に形成されていてもよい。この場合、長穴63は、固定アングル47のブラケット固定片71と反対側の補強部材固定片73に、巻取シャフト23の軸線51に沿う方向に長く形成される。
【0050】
さらに、シャッター装置11の構造は、ブラケット31の躯体固定用長穴61と、補強部材45の長穴63との双方を備えるものであってもよい。
躯体固定用長穴61と長穴63の双方を備える構成では、ブラケット31に対し、補強部材45の固定部が長穴63を移動する。これとともに、建物躯体13に対してもブラケット31が躯体固定用長穴61を介して移動する。これにより、変位の吸収がより確実となり、応力が発生せず、ブラケット31が変形しにくい。その結果、一対のブラケット31に架設した従来型巻取シャフトや長尺の補強部材45が伸縮しても、ブラケット31と補強部材45が変位可能となるとともに、ブラケット31も建物躯体13に対し変位可能となり、ブラケット31の変形や破損をより確実に抑制できる。
【0051】
なお、上述した各実施形態において、キー55は、軸首側キー溝53に挿入されて移動自在としても良く、これとは逆に、キー55が軸首側キー溝53に挿入されて固定され、またはキー55が軸首27から凸設状態に軸首27と一体形成されて移動不可とし、中子29の本体側キー溝59が、キー55に移動自在となるように構成してもよい。さらには、キー55も中子29も移動不可とし、或いは移動自在な構成として、上述したブラケット31や補強部材45、固定アングル47の構造を採用したものであってもよい。
【0052】
従って、本実施形態に係るシャッター装置11の構造によれば、工場内と設置場所との温度差によって部材が伸縮しても、シャッター装置11の変形や損傷などを防止できる。
【0053】
また、巻取シャフト23の製造方法によれば、軸首27を手に持ってぶら下げて歩くような場合であっても、中子29が巻胴25からはずれを防止できて、製造作業を容易にできる。
【符号の説明】
【0054】
11…シャッター装置
13…建物躯体
19…シャッターカーテン
23…巻取シャフト
25…本体部(巻胴)
27…軸首
29…中子
31…ブラケット
45…補強部材
49…軸穴
51…軸線
53…軸首側キー溝
55…キー
57…開口部
59…本体側キー溝
61…躯体固定用長穴
63…長穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9