(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼筒の周壁に形成された空気孔から希釈用の空気を内部に導入することにより、前記空気孔よりも上方の領域では相対的に高い当量比で燃焼を行い、前記空気孔よりも下方の領域では相対的に低い当量比で燃焼を行なうガスタービン燃焼器であって、
前記空気孔として相対的に径の大きい大空気孔と相対的に径の小さい小空気孔を互いに軸線が一致するように向かい合わせた組を前記燃焼筒の中心軸線に直交する平面内において複数備えており、前記大空気孔と前記小空気孔の前記軸線が前記平面の中心を通過しないように前記各組を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器。
前記メイン燃料供給手段は、所定の間隔をおいて同心円状に配置された内側の環状部材及び外側の環状部材からなるフィルマーを有し、前記内側の環状部材と前記外側の環状部材の間にメイン燃料を供給するように構成されており、
前記旋回流生成部は、前記外側の環状部材の外側と前記予混合管の内面との間に設けられた外側のスワラーと、前記内側の環状部材の内側に設けられた内側のスワラーとによって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【背景技術】
【0002】
燃焼ガスで駆動されるタービンと、空気を圧縮するコンプレッサとが共通の駆動軸に連結されており、コンプレッサからの圧縮空気と燃料を燃焼器に導いて燃焼させ、生成した燃焼ガスをタービンに供給して駆動軸を回転させるガスタービン装置が知られている。このようなガスタービン装置は、例えば定置形の発電装置の動力源等として広く用いられている。この種のガスタービン装置の燃焼器としては、例えば下記特許文献1及び特許文献2に開示されているような構造のものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたガスタービン用燃料・空気プレミキサーによれば、同文献の
図5を示す本願の
図8に示すように、筒状の予混合管16の入口部に、気流微粒化ノズル10が配設されている。気流微粒化ノズル10の液膜形成体11の内側に、断面環状の偏流筒体17が同軸に配設されている。偏流筒体17は、先端部を除く気流微粒化ノズル10の略全長に渡って、内径及び外径がそれぞれ一定の内周面と外周面を持つ筒体であり、先端部において、その外周面17cを定める外径は流路の先端に向かって増大し、液膜形成体11の先端からの燃料微粒化を促進する。また、内周面17dを定める内径は第2空気旋回器14cの下流端よりも流路下流において一旦なだらかに縮径して極小となり、喉部17aを形成した後、先端に向かって増大する壁面17bを呈する形状を有しており、径方向外側への広がる気流によって燃料と空気の混合を促進する。同心状の流路の上流側には、気流旋回の形成のために、偏流筒体17の外周面17cと液膜形成体11の液膜形成面11aとの間の第1環状流路28bの上流部に第1空気旋回器14bが配設されており、偏流筒体17の内周面17dを壁面とする第2環状流路28cの上流部に第2空気旋回器14cが配設されている。
気流微粒化ノズル10の液膜形成体11の外周に同軸に外筒18が配設され、液膜形成体11の外周面と外筒18の内周面とで定義される環状流路28eが形成されている。外筒18は環状流路28eの上流において、周方向に配列した複数のストラット、あるいは旋回羽根14eによって液膜形成体11の外周面に繋がっている。この外筒よりも内側に配設されている気流微粒化ノズル10、第2燃料ノズルとしての圧力スワールノズル19で構成される燃料ノズルアセンブリは一体となって、予混合管16の内壁面に保持された第3空気旋回器14aに挿入するようにし、燃料ノズルアセンブリを予混合管16と分離できるようにしてある。
係る構造によれば、旋回する気流の作用によって液膜形成体の先端から燃料が微粒化する際に、液膜形成体の内側を流れる旋回する気流に半径方向外側へ向かうような流れを作ることで、燃料の微粒化性能と混合性能を向上することができるものとされている。
なお、この発明は、特許第4065947号として特許されている。
【0004】
特許文献2に開示されたガスタービン燃焼器1は、同文献の
図1を示す本願の
図9に示すように、燃焼筒2と予混合管3と燃料供給手段5を有している。燃料供給手段5において、燃料は接線方向に沿って環状の燃料通路に供給され、環状のノズル部19から均一に噴射され、ノズル部を取り巻く周状の空気通路22からの空気によって微粒化され、燃焼器内に直進流を作る。この燃料供給手段5の下方において、予混合管3の周壁面の接線方向に沿って内部に空気が流入するように構成された横長の楕円形の孔25から内部に流入した空気は、燃焼器内で軸方向流を取り巻く旋回流を作る。火炎は燃焼器の頂部から離れた位置にリフトして保持されるので、遮熱プレート6は過熱せず耐久性が向上するものとされている。
なお、上記燃焼筒2は、冷却孔を有している。
図9中、拡大
図Yに示すように、燃焼筒2の頂部には、予混合管3の周囲に遮熱プレート6が設けられるとともに、所定間隔をおいてその上方に冷却プレート7が設けられ、冷却プレート7に形成された多数の冷却孔8から矢印で示すように内部の空間に空気を流入させて遮熱プレート6に衝突させ、インピンジメント冷却を行うようになっている。
また、
図9中、拡大
図Zに示すように、燃焼筒2の周壁には、内部に空気を流入させるための冷却孔9が形成されるとともに、周壁の内面には冷却孔9に対面してガイド10が設けられ、矢印で示すように冷却孔9から流入した空気を周壁の内面沿いに送り出してフィルム冷却を行うようになっている。
この上述の発明は、特許第4937158号として特許されている。
【0005】
特許文献3に開示されたガスタービン燃焼器1は、同文献の
図1を示す本願の
図10に示すように、外筒体9の内部に、燃焼筒2と、隙間Sに旋回流を生じさせる孔4を備えた上部周壁6及び下部周壁5から構成される予混合管3を備えている。予混合管の上部周壁内には貫通筒状の内壁10がある。内壁10の頂部中央には第1圧力噴射ノズル7があり、下部周壁には5個の第2圧力噴射ノズル8が等角度間隔で配置されている。各第2圧力噴射ノズル8から上部周壁6の中心に向けて噴射された燃料は、隙間Sから下部周壁内で旋回して燃焼筒に向かう空気の流れに乗り、燃焼器の上部領域Z2で半径方向に広く分散し、長い滞留時間により早期に蒸発・着火して完全燃焼する。これによって火炎が安定化し、煤等の未燃焼成分が減少し、NOX の発生が抑制される。
【0006】
なお、
図8乃至
図10は、前記各特許文献中の特定の図面の内容を示しているため、その参照符号が部分的に互いに重複し、また
図1乃至
図7に示す本願実施形態の参照符号とも部分的に互いに重複している。これは、重複した参照符号が指し示す各部分が同一であることを意味するものでない。
図8乃至
図10の各図における参照符号は、当該各図の説明においてのみ意味を有するものであり、本願発明の実施形態を示す他の図面及び明細書の発明の詳細な説明とは関係がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜
図6を参照して本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器1(以下、単に燃焼器1とも称する。)を説明する。
図1は本実施形態のガスタービン燃焼器1の縦断面図である。
図1に示すように、燃焼器1は、その基本的構造として、図示しないコンプレッサから圧縮空気が供給される外筒2と、外筒2の内部に配置された燃焼筒3を備えている。外筒2及び燃焼筒3は、いずれも図において上下方向の中心軸線を備えた筒状構造体であり、両筒の各周壁の間に一定寸法の間隔が生じるように中心軸線を一致させて縦型に配置されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、燃焼筒3の上端には、燃料と空気を混合して燃焼筒3に供給するための予混合管4が取り付けられている。予混合管4の内径及び軸線方向の長さは燃焼筒3に比べて小さく、予混合管4と燃焼筒3の軸線は一致しており、予混合管4の開口した下端(下開口部4aと呼ぶ)は燃焼筒3の上端に連通している。
【0023】
図2に示すように、予混合管4の開口した上端(上開口部4bと呼ぶ)の中央には、該予混合管4の中心軸線と平行に配置されたパイロット燃料供給手段5の先端部が挿入されている。このパイロット燃料供給手段5は、予混合管4の上開口部4bの中央において、パイロット燃料を下向きに噴射して供給することができる。パイロット燃料供給手段5としては、通常の圧力噴射弁を含む各種の燃料噴射手段を採用することができる。
【0024】
図2に示すように、予混合管4の上開口部4bには、中央のパイロット燃料供給手段5を囲むように単一の直進流生成部6が設けられている。この直進流生成部6は、予混合管4の内部中央に空気を導き、空気の下向きの直進流Sを形成する手段である。この直進流生成部6は、前述した上開口部4bに、多数の空気通過孔7aが形成された円形の板体7を設けた構造となっている。この実施形態では、上開口部4bに設けられた板体7は、予混合管4の内径よりも小さい外径の金属製円板である。板体7の中心にはパイロット燃料供給手段5が挿入固定される円形の貫通した取り付け孔7bが設けられ、また多数設けられた空気通過孔7a はパンチ加工等の任意の手法によって格子状等の任意のパターンで形成されている。
【0025】
板体7の空気通過孔7a は空気の導入口として機能するので、その形状、寸法及び配置を任意に定めることにより、空気通過孔7a の面積の総和(以下、開口面積A
S と呼ぶ)を適宜に設定することができる。
図3は、パイロット燃料供給手段5及び取り付け孔7bの図示は省略されているが、直進流生成部6の板体7と、直進流生成部6の周囲に設けられる後述するスワラーとの配置関係等を模式的に示す図であり、直進流生成部6の開口面積A
S が多数の空気通過孔7a の面積の総和であることを示している。なお、板体7の面積(中央部のパイロット燃料供給手段5に相当する部分の面積は除く)をSとし、当該部分の開口率をαとすれば、開口面積A
S =S×αとなる。この直進流生成部6における開口面積A
S は、予混合管4に流入して直進流Sとなる空気の量を決定する因子として把握することができる。
【0026】
図2に示すように、予混合管4の上開口部4bには、中央に配置された直進流生成部6の円形の板体7と、予混合管4の周壁との間にある周状の隙間に、旋回流生成部8及びメイン燃料供給手段9が設けられている。旋回流生成部8は、予混合管4の内部中央に形成された空気の下向きの直進流Sの周囲に空気の旋回流Rを形成する手段であり、メイン燃料供給手段9は、旋回流生成部8が生成した空気の旋回流R中に該旋回流に沿ってメイン燃料を供給して微粒化させるための手段である。
【0027】
図2に示すように、メイン燃料供給手段9は、予混合管4の上開口部4bに設けられた環状の燃料路10と、予混合管4の半径方向について燃料路10の内面側と外面側から予混合管4の下方に向けてそれぞれ延設された内環状部材11及び外環状部材12からなるフィルマー13を備えている。燃料路10には、外筒の外側から導かれた燃料配管14が接続連通されており、その内部にメイン燃料を供給できるようになっている。燃料路10の底部には所定間隔で供給孔15が形成されており、フィルマー13を構成する外環状部材12と内環状部材11の間にメイン燃料を噴射できるようになっている。なお、供給孔15は予混合管4の軸線に平行であるものとしてもよいし、所定の角度傾斜したものとしてもよい。フィルマー13の内環状部材11は全体として直円筒状の部材であって、先端が先鋭なエッジ状となっている。また外環状部材12も全体としては直円筒状の部材であるが、予混合管4の軸方向についての寸法は内環状部材11よりも長く、その先端は内環状部材11よりも下方に突出していて、先鋭なエッジ状とされた先端はやや内方に屈曲している。
【0028】
従って、燃料路10に所定の圧力でメイン燃料を供給すれば、フィルマー13の外環状部材12と内環状部材11の間に噴射されたメイン燃料は、薄いフィルム状の略円錐台形となって下方に噴射される。
【0029】
図2に示すように、旋回流生成部8は、直進流生成部6の板体7の外周と燃料路10の内周との間に配置された内側の第1スワラー16と、燃料路10の外周と予混合管4の内周との間に配置された外側の第2スワラー17を備えている(第1スワラー16と第2スワラー17はそれぞれ単にスワラーとも称する。)。また、内側の第1スワラー16のさらに内側にはスワラー環状部材18が設けられている。このスワラー環状部材18は、フィルマー13の内環状部材11よりも軸方向の寸法がやや短く、従ってその先端は内環状部材11の先端よりも上方にあり、さらにその先端は先鋭なエッジ状とされている。また、予混合管4の内周面であって、外側の第2スワラー17よりも下方の部分には凸部19が設けられている。この凸部19の曲面は、内方に向けて屈曲しているフィルマー13の外環状部材12に沿う形状となっており、従って凸部19と外環状部材12の隙間は、内方に傾斜した周状の空間となっている。
【0030】
従って、内側の第1スワラー16と外側の第2スワラー17から噴射された空気は、それぞれ予混合管4の内周面に沿って移動し、予混合管4の中心にある直進流Sの周りを旋回流Rとなって旋回するが、上述したメイン燃料供給手段9はメイン燃料を両スワラー16,17からの旋回流Rの間に薄い膜状の状態で供給し、その供給方向は、空気に働く旋回力を構成する分力の方向の範囲内に対して並行であるため、旋回流Rによる燃料の微粒化は十分に行われる。従って、予混合管4内の内周面に沿った領域には微粒化されたメイン燃料が分散された状態の旋回流Rが作られ、この旋回流Rは下開口部4aから燃焼筒3に入る。そして予混合管4から供給される旋回流Rと直進流Sの空気の速度と燃焼筒3内に発生する火炎の伝播速度とのバランスにより、燃焼筒3内の火炎は予混合管4の下開口部4aから適当な距離だけ離れた位置にリフトされ、燃料は安定的に完全燃焼することができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、メイン燃料は燃料路10の内外に配置された第1及び第2スワラー16,17が生成した空気の旋回流R中に、該旋回流Rに沿ってメイン燃料を供給することができるので、このメイン燃料は旋回流Rによって速やかにかつ確実に微粒化されて燃焼筒3に送り込まれ、その結果、効率的な燃焼が実現される。なお、上述した「該旋回流Rに沿って」メイン燃料を供給するとの語義であるが、本願においてはこれは最も広義に解釈すべきものとする。すなわち、旋回流Rは周方向の分力と燃焼筒3に向かう軸方向の分力の合成と考えられるので、上記「沿って」とは、これら両分力の方向範囲内において並行にメイン燃料を供給することを意味する。なお、ここで「並行」とは、空間内において直線と直線が交わらない状態を示す「平行」との意味ではなく、より広い範囲の意味を有するものとする。
さらに、本実施形態において、外筒2及び燃焼筒3の中心軸線は、必ずしも鉛直方向でなくてもよく、斜めに傾いていても(外筒2及び燃焼筒3がタービンに対して斜めに取り付けられていても)本実施形態の効果を奏する。
【0032】
また、本実施形態によれば、メイン燃料供給手段9とパイロット燃料供給手段5は、いずれも予混合管4の上開口部4bに下向きに燃料を供給しうるように配置されているので、エンジン停止時においても、燃料が予混合管4の内面に液垂れしてカーボンとなって付着する不都合は発生しない。
【0033】
第1及び第2スワラー16,17は空気を旋回流Rにして予混合管4内に供給する機能を有しており、その構造、寸法等を任意に定めることにより、以下に説明するように、第1及び第2スワラー16,17によって旋回流Rとして供給する空気量を適宜に設定することができる。
図3は、直進流生成部6の板体7の開口面積A
S と、その周囲に設けられた第1及び第2スワラー16,17の開口面積A
R を示す図である。この図では、パイロット燃料供給手段5の図示は省略し、第1及び第2スワラー16,17はまとめて表示している。まず旋回流Rを作る第1及び第2スワラー16,17は、
図4にその一部を示すように、空気の流入方向又は予混合管4の軸線方向に対して所定の角度で傾斜した複数の翼部20を所定間隔で並設した構造を備えている。スワラー16,17を経由して予混合管4に流入し、旋回流Rとなる空気の量を決定する因子としては、開口面積A
R を想定することができる。ここでスワラー16,17における開口面積A
R とは、
図4にRで示すスロート面積の総和である。スロート面積とは、
図4に示すような隣接する翼部20と翼部20の入口にFで示した前面面積ではなく、傾斜した翼部20の内面に垂直な断面で見た空気流路の面積である。従って、スワラーにおける翼部20の形状、寸法を適宜に設定することによってスロート面積を変え、またその総和によって定まる開口面積A
R の値を任意に決めることができる。
【0034】
本実施形態では、第1及び第2スワラー16,17の開口面積A
R と、直進流生成部6の開口面積A
S は、それぞれ旋回流Rの空気の供給量と、直進流Sの空気の供給量を示す指標として互いに対応するものであり、本発明者は長年の研究開発の結果、両値の比の如何に応じて燃焼筒3内の火炎の挙動に大きな差異が生じることを見いだした。
【0035】
すなわち、本実施形態のガスタービン燃焼器1に特有な効果の一つとして、燃焼筒3内において、燃焼筒3の上端部から適正な下方位置において火炎を安定的な状態で維持することができる点が挙げられる。このように火炎を燃焼筒3の上端部から離して維持することを「リフト」と称し、かかる火炎を「リフト火炎」と称する。このような効果は、燃焼筒3の上端に設けられた予混合管4の中央部分に設けた一の直進流生成部6で予混合管4の中心に軸線に平行な空気の
直進流Sを形成し、その周囲に旋回流生成部8で旋回流Rを形成し、旋回流生成部8の開口面積AR と直進流生成部6の開口面積AS の面積比AR /AS を、0.2以上1.0以下の数値範囲に限定することによって得られる。すなわち、火炎を燃焼筒3の上端から適当な距離だけ離れた位置に安定的にリフトさせることができる。
【0036】
安定的なリフト火炎を得る効果は、本発明者の実験によれば次の通りである。
図5は、本実施形態のガスタービン燃焼器1における火炎の
リフト量Lと燃焼筒3の上端部の開口径Dを説明するための図である。また、
図6は、本実施形態において、旋回流生成部8の開口面積AR と直進流生成部6の開口面積AS の面積比AR /AS (横軸)と、火炎30のリフト量Lと燃焼筒3の上端部の開口径Dの比L/D(縦軸)との関係を示すグラフである。ここで、リフト量Lとは、
図5に示すように、燃焼筒3内の火炎30の最上部30a(基部)と予混合管4の下開口部4a(又は燃焼筒3の上端部) の距離であり、燃焼筒3の上端部の開口径Dとは予混合管4の下開口部4aの内径に等しい。
【0037】
本発明者による実験の結果によれば、前記面積比A
R /A
S と前記寸法比L/Dの関係は
図6に示すようになるが、実際の火炎を観察すると、面積比A
R /A
S が1.0を超えると(すなわち寸法比L/Dが0.8を超えると)、火炎は燃焼筒3の上端部から離れすぎて燃焼状態及び位置が安定せず、バタついた状態となる。また積比A
R /A
S が0.2未満(すなわち寸法比L/Dが0.2未満)では、火炎が燃焼筒3の上端部に接触して燃焼筒3を過熱させてしまう恐れがあり、また火炎が予混合管4内に逆流してしまう恐れもある。これに対し、前記面積比A
R /A
S が0.2以上1.0以下の数値範囲であれば、予混合管4の中心に形成された1本の下向きの直進流Sと、2個のスワラー16,17によってその周囲に形成された旋回流Rとのバランスにより、火炎は燃焼筒3の上端部すなわち予混合管4の下開口部4aから適当な距離だけ離れた状態で安定し、燃焼筒3を冷却するために過剰な空気を導入する必要もない。従って、燃焼筒3を過熱させず、冷却が必要ない位置に安定したリフト火炎を保持するための条件としては、前記面積比A
R /A
S が0.2以上1.0以下の数値範囲であることが必要である。
【0038】
さらに、燃焼筒3内の火炎の安定性や燃焼筒3の過熱状態等をより厳しく検討すると、旋回流生成部8の開口面積A
R と直進流生成部6の開口面積A
S の面積比A
R /A
S が0.4以上0.8以下であれば、さらに一層高い効果が得られる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、空気の直進流Sと旋回流Rの絶妙なバランスによって燃焼筒3内の火炎を適切なリフト位置に安定させているので、燃焼筒3の上部に冷却孔を設けて空気を導入し冷却する必要がなくなり、その結果として火炎温度が下がることもなく、火炎温度が低下した場合に発生する未燃成分の排出による排ガス成分の悪化という不都合は回避できる。また、火炎を適当にリフトさせるために必要な2つの空気流の一方である旋回流Rに沿ってメイン燃料を供給することによりメイン燃料を微粒化しているので、メイン燃料を完全燃焼させることができ、その点においても排気エミッションの低公害化が達成される。さらに、エンジン停止時に燃料供給手段(パイロット燃料供給手段5及びメイン燃料供給手段9)から燃料が液垂れして予混合管4の内面にカーボンが付着することもない。
【0040】
以上説明した第1実施形態の説明においては言及しなかったが、第1実施形態のガスタービン燃焼器は次のような特徴も備えている。すなわち、
図1に示すように、燃焼筒3には、その上部にある円錐台形の部分よりも下方の壁面に、複数個のクエンチ空気孔40が形成されている点である。クエンチ空気孔40とは、ガスタービン燃焼器において部分過濃形態燃焼方式(Rich burn-Quick quench-Lean burn 、略してRQL) を行うために燃焼筒に形成され、燃焼時に燃焼筒の内部にクエンチ空気を導くための空気導入孔である。
【0041】
第1実施形態によれば、第1及び第2スワラー16,17による空気の旋回流Rで、燃焼筒3の上部空間には燃焼ガスが上下に再循環する一次燃焼領域が生成される。一次燃焼領域はリッチ燃焼領域であり、当量比(φ、理論空燃
比/実際の混合気の空燃比)が1以上に保持され、火炎温度が相対的に低く抑えられて混合気が燃焼しにくい状態にある。また、クエンチ空気孔40により導入されたクエンチ空気の旋回流で、燃焼筒3の下部空間には燃焼ガスが上下に再循環する二次燃焼領域が生成される。二次燃焼領域はリーン燃焼領域であり、一次燃焼領域を通過した燃焼ガスが、クエンチ空気孔40から供給される多量のクエンチ空気で急速に希釈され、当量比が急速に1以下となり、火炎温度が低く、混合気が燃焼しにくい状態にあり、燃焼ガス中に含まれるNOX の量が可及的に減少する効果が継続する。
【0042】
次に、
図7を参照して本発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器1aを説明する。
第1実施形態のガスタービン燃焼器1では、第1実施形態の説明の最後に言及したように、その燃焼筒3にはクエンチ空気孔40が形成されており、RQL燃焼が行えるようになっていた。しかしながら、第1実施形態のガスタービン燃焼器1では、燃焼筒3の周壁に形成された複数のクエンチ空気孔40は、いずれも燃焼筒3の半径方向に形成されており、すべて燃焼筒3の中心軸に向けられている。このため、クエンチ空気孔40の数や導入されたクエンチ空気の流速等の諸条件にもよるが、クエンチ空気は燃焼筒3の中心軸の位置で衝突して向きを変え、クエンチ空気孔40の上方にあるリッチ燃焼領域にバックフローとして流入してしまうとともに、クエンチ空気孔40の下方にある二次燃焼領域の中心にも集中して流れ込んでしまう場合が考えられる。
【0043】
仮に、このような現象が第1実施形態のガスタービン燃焼器1において発生するとすれば、バックフローとしてリッチ燃焼領域に流れ込んだクエンチ空気は、リッチ燃焼領域を希釈してしまい、本来燃料リッチで酸素不足の状態で燃焼するはずのリッチ燃焼領域において酸素量が増大して当量比が小さくなってしまい、NO
X の量が増大するという不都合が発生してしまう可能性がないとはいえない。また、リーン燃焼領域に流れ込んだクエンチ空気は、燃焼器中心付近に集中して軸線方向の強い流れを生成するため、その影響によって燃焼器の内周面に沿って相対的に低速な領域ができてしまい、これにより燃料の混合が不均一、すなわち燃料が濃いところと薄いところが存在する状態となってしまう可能性がないとはいえない。
【0044】
本願発明の第2実施形態は、上に説明したRQL燃焼方式を用いたガスタービン燃焼器におけるクエンチ空気のリッチ燃焼領域へのバックフローの可能性を低減することを本願発明のさらなる課題として加えたものであって、第1実施形態で具体的に説明した本願発明の効果に加え、さらにリッチ燃焼領域の当量比を高い状態に維持するとともに、クエンチ空気の導入部よりも下流のリーン燃焼領域における空気流速分布を均一化することにより、局所的な燃料の過濃領域を作ることなく希薄状態で均一に燃焼を完結させることができるようにする効果を目指したものである。
【0045】
本願発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器1aは、第1実施形態に係るガスタービン燃焼器1と基本的な構造は同一であり、燃焼筒3に設けられたクエンチ空気孔(以下、空気孔とも称する)の構造とこれに起因する作用効果のみが異なっている。以下、この空気孔の構造と作用効果を
図7を参照して説明する。
【0046】
図7は、燃焼器1aを空気孔の部分で該燃焼器1aの
中心軸線Cに対して垂直な切断線をもって切断した場合の断面図である。この
図7に示すように、燃焼筒3の周壁に形成された空気孔Qは、すべて前記平面内に現れており、縦配置された燃焼筒3の同一高さの位置に形成されている。これら空気孔Qは、相対的に径の大きい1個の大空気孔QLと、相対的に径の小さい1個の小空気孔QSの組によって構成されている。
【0047】
大空気孔QLと小空気孔QSから燃焼筒3の内部に供給されるクエンチ用の空気は、コンプレッサから外筒2の内部に供給される圧縮空気である。従って、孔の内径の大小に関わらず空気を内部に導入する際の圧力は一定であるが、孔の内径の大小によって供給量には大小の差異が生じる。すなわち、大空気孔QLからの空気の導入量は相対的に多く、空気流としての貫通力は相対的に大きい。これに対し、小空気孔QSからの空気の導入量は相対的に少なく、空気流としての貫通力は相対的に小さい。
【0048】
図7に示すように、この空気孔Qの各組では、両空気孔QL、QSは互いに軸線Lが一致するように向かい合わせて燃焼筒3の周壁に形成されている。この空気孔Qの組は、本実施形態では複数設けられるものとなっており、本実施形態では4組の空気孔Q(従って、大小同数で合計8個の空気孔QL、QS)が周壁に形成されている。このように向かい合わせで軸線Lを一致させて配置された大空気孔QLと小空気孔QSから空気を噴射すると、上述した貫通力の差異から、
図7に示すように、大空気孔QLと小空気孔QSからの空気の噴流の衝突位置Pは、軸線L上の両孔QL、QSの中間位置にはならず、貫通力が大きい大空気孔QLから遠い位置、従って小空気孔QSに近い位置となる。
【0049】
図7に示すように、空気孔の各組は、大空気孔QLと小空気孔QSの軸線Lが前記平面の中心(すなわち燃焼筒3の
中心軸線C)を通過しないように配置されている。この実施形態では、前記平面の中心(燃焼筒3の
中心軸線C)を通過する互いに直交した2本の中心線C1、C2を想定し、これを基準とすると、空気孔の各組の軸線Lは各中心線C1、C2から偏芯した位置に配置されている。
【0050】
さらに具体的に配置を説明すれば次の通りである。すなわち、第1の組の軸線L1は、一方の中心線C1に直交するとともに、他方の中心線C2で分割された前記平面の一方に存在する。第1の組の軸線L1に平行な第2の組の軸線L2は、一方の中心線C1に直交するとともに、他方の中心線C2で分割された前記平面の他方に存在する。第1の組の軸線L1に直交する第3の組の軸線L3は、他方の中心線C2に直交するとともに、一方の中心線c1で分割された前記平面の一方に存在する。第3の組の軸線L3に平行なる第4の組の軸線L4は、他方の中心線C2に直交するとともに、一方の中心線C1で分割された前記平面の他方に存在する。
【0051】
このように、燃焼筒3の上部から空気と燃料を内部に供給して燃焼させると共に、該燃焼筒3の周壁に形成された空気孔Qから希釈用の空気を内部に導入することにより、該空気孔Qよりも上方の領域では相対的に高い当量比で燃焼を行い、該空気孔Qよりも下方の領域では相対的に低い当量比で燃焼を行ってガスタービン装置を駆動するための燃焼ガスを生成するガスタービン燃焼器なおいて、該空気孔Qとして径の大きい大空気孔QLと相対的に小さい小空気孔QSを互いに軸線Lが一致するように向い合せた組を該燃焼筒の
中心軸線Cに直交する平面内において複数備え、該大空気孔QLと該小空気孔QSの軸線が該平面の
中心Cを通過しないように、大空気孔QLと該小空気孔QSの組を配置したので、少なくとも各組の大空気孔QLから流入する空気が前記平面内の
中心Cで衝突して上下に向きを変え、リッチ燃焼領域Rとリーン燃焼領域Lの両方に大規模に流れ込む現象が発生することは防止される。
【0052】
図7に示すように、空気孔Qの各組は、上述したように、各軸線Lが前記平面の中心を通過しないように配置されているとともに、さらに、互いに軸線Lが平行な2つの組の間では、大空気孔QLと小空気孔QSの向きが互いに反対となっている。又は、燃焼筒3の周壁には、周方向に沿って大空気孔QLと小空気孔QSが交互に形成された構造となっている。このため、各組において、大空気孔QLと小空気孔QSから流入する空気が衝突する衝突位置Pは、前記平面内では互いに異なる4つの位置に分かれるようになっている。ここでは、4つの組が井桁状に配置されているため、4つの衝突位置Pは略矩形の各頂点位置を占めるような配置となっている。
【0053】
このため、4つの組における空気の衝突位置Pは互いに重なることがなく、クエンチ用の空気が特定箇所に集中して衝突し、リッチ燃焼領域とリーン燃焼領域の両方に流れ込むことも防止される。その結果、リッチ燃焼領域で当量比を十分高い状態に維持し、リーン燃焼領域で空気流速分布を均一化する効果はさらに確実になる。
【0054】
また、
図7に示すように、本実施形態では、空気孔Qの各組の配置を上述のように、該大空気孔QLと該小空気孔QSから流入する空気が衝突する衝突位置が、上記平面内において各組で互いに異なる位置となるように設定したので、その結果として、各組の各衝突位置Pには、他の組の大空気孔QLから流入した空気が通過するようになっている。
【0055】
このため、各組におけるクエンチ用の空気の衝突位置Pに、他の組の大空気孔QLによる貫通力の強い空気流が異なる向きから吹き付けられることになる。その結果、各組において衝突した空気が向きを変えてリッチ燃焼領域Rとリーン燃焼領域Lの両方に流れ込む現象はさらに一層確実に防止される。その結果、上述した効果はさらに一層確実となる。
【0056】
なお、以上説明した第2実施形態においても、燃焼筒3の中心軸線が、必ずしも鉛直方向でなくてもよく、斜めに傾いていても(燃焼筒3がタービンに対して斜めに取り付けられていても)上記効果を奏する上、第1実施形態で説明した本願発明に特有の効果、すなわち燃料を効果的に微粒化して完全燃焼させることができ、また火炎を燃焼筒3の上端から適当な距離だけ離れた位置に安定的にリフトさせることができ、さらにまたエンジン停止時に燃料供給手段から燃料が液垂れして予混合管4の内面にカーボンが付着することがないという効果も同時に達成できていることは言う迄もない。