特許第6185370号(P6185370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185370
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】試料作製装置及び試料作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20170814BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01J37/305 A
   H01J37/22 502H
   H01J37/22 502J
   G01N1/28 G
   G01N1/28 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235786(P2013-235786)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-95425(P2015-95425A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】関戸 拓也
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−097934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00−1/30
1/32−1/38
H01J37/20
37/22
37/30−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を加工して試料の断面を作製する試料作製装置であって、
前記試料を撮像して画像を出力する撮像部と、
イオンビームを発生するイオンビーム発生部と、
前記試料の一部を覆うように配置され、前記試料を前記イオンビームから遮蔽するための遮蔽材と、
前記遮蔽材の位置を調整する遮蔽材位置調整機構と、
前記試料が前記遮蔽材に覆われていない状態で前記撮像部によって撮像された前記試料の画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部と同一の撮像部からリアルタイムに出力される前記試料の一部が前記遮蔽材に覆われている状態で撮像された画像と前記記憶部に記憶された画像とを半透明合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力する画像処理部とを含むことを特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
試料の一部を覆うように配置され前記試料をイオンビームから遮蔽するための遮蔽材を用いて前記試料を加工して、前記試料の断面を作製する試料作製方法であって、
前記試料が前記遮蔽材に覆われていない状態で撮像部によって撮像された前記試料の画像を記憶部に記憶させるステップと、
前記遮蔽材の位置調整を行う際に、前記撮像部と同一の撮像部からリアルタイムに出力される前記試料の一部が前記遮蔽材に覆われている状態で撮像された画像と前記記憶部に記憶された画像とを半透明合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力するステップと、
位置調整が行われた前記遮蔽材と前記試料に対してイオンビームを照射して前記試料の断面を作製するステップとを含むことを特徴とする試料作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を加工して試料の断面を作製する試料作製装置及び試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学顕微鏡で試料像を観察しながら遮蔽材の位置を調節し、この遮蔽材越しに試料に対してイオンビームを照射することによって所望の断面を有する試料を作製する試料作製装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−37164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の試料作製装置では、試料像を観察しながら遮蔽材の位置調整を行う場合に、試料の遮蔽材に覆われている部分が視認できないため、遮蔽材の位置調整が行いづらいといった問題点があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、遮蔽材の位置調整を行い易くすることが可能な試料作製装置及び試料作製方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、試料を加工して試料の断面を作製する試料作製装置であって、
前記試料を撮像して画像を出力する撮像部と、
イオンビームを発生するイオンビーム発生部と、
前記試料の一部を覆うように配置され、前記試料を前記イオンビームから遮蔽するための遮蔽材と、
前記遮蔽材の位置を調整する遮蔽材位置調整機構と、
前記試料が前記遮蔽材に覆われていない状態で前記撮像部によって撮像された前記試料の画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部からリアルタイムに出力された画像と前記記憶部に記憶された画像とを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力する画像処理部とを含むことを特徴とする試料作製装置に関する。
【0007】
本発明によれば、試料が遮蔽材に覆われていない状態で撮像部によって撮像された試料の画像を記憶しておき、撮像部からリアルタイムに出力された画像と記憶部に記憶された画像とを合成して合成画像を生成して表示部に表示することで、試料像を観察しながら遮蔽材の位置調整を行う場合に、試料の遮蔽材に覆われている部分についても視認できるようになり、遮蔽材の位置調整を容易に行うことが可能となる。
【0008】
(2)本発明は、試料の一部を覆うように配置され前記試料をイオンビームから遮蔽するための遮蔽材を用いて前記試料を加工して、前記試料の断面を作製する試料作製方法であって、
前記試料が前記遮蔽材に覆われていない状態で撮像部によって撮像された前記試料の画像を記憶部に記憶させるステップと、
前記遮蔽材の位置調整を行う際に、前記撮像部からリアルタイムに出力された画像と前記記憶部に記憶された画像とを合成して合成画像を生成し、生成した合成画像を表示部に出力するステップと、
位置調整が行われた前記遮蔽材と前記試料に対してイオンビームを照射して前記試料の断面を作製するステップとを含むことを特徴とする試料作製方法に関する。
【0009】
本発明によれば、試料が遮蔽材に覆われていない状態で撮像部によって撮像された試料の画像を記憶しておき、遮蔽材の位置調整を行う際に、撮像部からリアルタイムに出力された画像と記憶部に記憶された画像とを合成して合成画像を生成して表示部に表示することで、試料像を観察しながら遮蔽材の位置調整を行う場合に試料の遮蔽材に覆われている部分についても視認できるようになり、遮蔽材の位置調整を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る試料作製装置の構成の一例を示す図である。
図2】従来の試料作製装置において、遮蔽材の位置調整時に表示部に表示される画像を示す図である。
図3】本実施形態の手法について説明するための図である。
図4】本実施形態に係る試料作製装置の処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1.構成
図1は、本実施形態に係る試料作製装置の構成の一例を示す図である。なお本実施形態の試料作製装置は図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0013】
図1に示すように、試料作製装置は、試料作製装置本体1、処理部50、操作部60、表示部62、記憶部64を含む。
【0014】
試料作製装置本体1は、撮像部10、イオン銃20(イオン源)、ステージ30、試料位置調整機構32、試料ホルダ34、遮蔽材40、遮蔽材位置調整機構42、遮蔽材保持機構44を含む。撮像部10及びイオン銃20は、真空チャンバ2に取り付けられている。
【0015】
撮像部10は、試料Sを撮像して観察画像の画像情報を処理部50に出力するものであり、その機能は、CCD/CMOSイメージセンサを備えた光学顕微鏡や、SEM(走査透過型電子顕微鏡)などのハードウェアにより実現することができる。イオン銃20(イオンビーム発生部)は、真空チャンバ2内にイオンビームを放出する。
【0016】
真空チャンバ2内には、ステージ30が配置されている。ステージ30は図中左右方向(矢印Dで示す方向)に移動可能に構成され、遮蔽材40の位置調整を行う際には撮像部10の下方に位置し、試料Sの加工を行う際にはイオン銃20の下方に位置する。なお、図1は、ステージ30が撮像部10の下方に位置している状態を示している。
【0017】
ステージ30には、試料Sの位置を調整する試料位置調整機構32が配置されている。試料位置調整機構32は、図中左右方向及び奥行き方向に移動可能に構成されている。試
料位置調整機構32には、試料Sを保持する試料ホルダ34が取り付けられている。
【0018】
また、ステージ30には、遮蔽材40の位置を調整する遮蔽材位置調整機構42が配置されている。遮蔽材位置調整機構42は、図中左右方向に移動可能に構成されている。遮蔽材位置調整機構42には、遮蔽材40を保持する遮蔽材保持機構44が取り付けられている。遮蔽材40は、試料Sの一部を覆うように配置され、試料Sの当該部分をイオンビームから遮蔽するための部材である。遮蔽材40は、直線状の端面(エッジ部)を有しており、この端面は図中奥行き方向に平行である。
【0019】
操作部60は、ユーザが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部50に出力する。ユーザは、操作部60を操作して、ステージ30を移動させたり、試料Sの位置調整を行ったり、遮蔽材40の位置調整を行ったりすることができる。操作部60の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。
【0020】
表示部62は、処理部50によって生成された画像(合成画像)を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0021】
記憶部64は、処理部50の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部50のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0022】
処理部50は、試料位置調整機構32や遮蔽材位置調整機構42を制御する処理や、撮像部10で撮像された画像の画像処理などの処理を行う。処理部50の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部50は、制御部52、画像処理部54を含む。
【0023】
制御部52は、操作部60からの操作情報に基づき制御信号を生成し、生成した制御信号を試料位置調整機構32や遮蔽材位置調整機構42、ステージ30の駆動機構等に出力して、試料位置調整機構32や遮蔽材位置調整機構42、ステージ30の動作(移動)を制御する。
【0024】
画像処理部54は、試料Sが遮蔽材40に覆われていない状態で撮像部10によって撮像された画像を記憶部64に記憶させる処理を行う。また、画像処理部54は、撮像部10からリアルタイムに出力された画像(試料Sの一部が遮蔽材40に覆われている状態で撮像された画像)と、記憶部64に記憶された画像(試料Sが遮蔽材40に覆われていない状態で撮像された画像)とを合成して合成画像を生成する処理を行う。合成画像は、例えば、2つの画像を係数(α値)により半透明合成するアルファブレンド等の手法を用いて生成することができる。画像処理部54で生成された合成画像は表示部62に出力される。ユーザは、表示部62に出力される合成画像を確認しながら、操作部60を操作することで遮蔽材40を移動させて、遮蔽材40の位置調整を行うことができる。
【0025】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。
【0026】
図2は、従来の試料作製装置において、遮蔽材の位置調整時に表示部に表示される画像(試料の観察画像)を示す図である。
【0027】
図2に示すように、従来の試料作製装置で表示される観察画像OIでは、遮蔽材を試料の加工位置へと移動させると、試料像SIの一部が遮蔽材の像CIによって覆われて(隠
されて)しまうため、当該部分を視認することができず、遮蔽材の位置調整が困難なものとなっていた。例えば、試料上の任意の加工位置に遮蔽材の端面を合わせようとする場合には、試料像SIの視認できる部分と視認できない部分との位置関係が把握しづらくなり、また、試料上のエッジ構造に遮蔽材の端面を合わせようとする場合には、遮蔽材の端面が当該エッジ構造上に位置しているのか否かを把握しづらくなっていた。
【0028】
そこで、本実施形態の試料作製装置では、以下に述べる手法によって、表示部62に表示する画像を生成する。すなわち、図3に示すように、まず、試料Sが遮蔽材40に覆われていない状態で撮像部10によって撮像された画像MI(試料像SIのみを含む観察画像)を記憶部64に記憶しておく。そして、遮蔽材40の位置調整時に、撮像部10からリアルタイムで出力される画像RI(試料像SIと遮蔽材の像CIとを含む観察画像)と、記憶部64に記憶された画像MIを合成して合成画像BIを生成し、生成した合成画像BIを観察画像として表示部62に出力する。
【0029】
画像MIと画像RIの合成は、画像処理の処理単位時間(例えば、1/60秒)ごとに行われる。また、画像MIと画像RIは、画像MIにおける試料像SIの位置と画像RIにおける試料像SIの位置が一致するように合成される。なお、画像MIの全領域を画像RIに合成してもよいし、画像MIの一部の領域(例えば、試料像SIの領域)を画像RIに合成してもよい。
【0030】
図3に示す合成画像BIを見ると、試料像SIのうち、遮蔽材の像CIと重なっている部分についても視認することができ、あたかも試料Sの遮蔽材40に覆われた部分が遮蔽材40を透過しているように観察することができる。
【0031】
すなわち、本実施形態によれば、ユーザは、遮蔽材40を移動させて遮蔽材40の位置調整を行うときに、表示部62に表示される合成画像BIを確認することで、試料Sの遮蔽材40に覆われている部分についても視認することができ、容易に遮蔽材40の位置調整を行うことができる。例えば、試料S上の任意の加工位置に遮蔽材40の端面を合わせようとする場合に、試料Sの遮蔽材40で覆われていない部分と覆われている部分との位置関係を把握することが容易となり、また、試料S上のエッジ構造に遮蔽材40の端面を合わせようとする場合に、遮蔽材40の端面が当該エッジ構造上に位置しているか否かを把握することが容易となる。
【0032】
3.処理
次に、本実施形態の試料作製装置の処理の一例について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、制御部52は、ステージ30の駆動機構を制御して、ステージ30を撮像部10の下方に移動させる制御を行う(ステップS10)。次に、制御部52は、遮蔽材位置調整機構42を制御して、遮蔽材40を試料Sと重ならない位置に移動させる制御を行う(ステップS12)。次に、制御部52は、操作部60からの操作情報に基づき試料位置調整機構32を制御して、試料Sを移動させる(試料Sの位置を調整する)制御を行う(ステップS14)。
【0034】
次に、画像処理部54は、撮像部10から出力された画像(試料Sが遮蔽材40に覆われていない状態で撮像された画像MI)を記憶部64に記憶させる処理を行う(ステップS16)。
【0035】
次に、制御部52は、操作部60からの操作情報に基づき遮蔽材位置調整機構42を制御して、遮蔽材40を移動させる(遮蔽材40の位置を調整する)制御を行う(ステップ
S18)。
【0036】
次に、画像処理部54は、撮像部10から出力された画像(撮像部10からリアルタイムに出力された画像RI)と、記憶部64に記憶された画像とを合成して合成画像を生成する処理を行う(ステップS20)。生成された合成画像は表示部62に出力される。
【0037】
次に、処理部50は、遮蔽材40の位置調整が完了したか否かを判断する(ステップS22)。ここで、遮蔽材40の位置調整が完了したか否かの判断は、操作部60からの操作情報に基づき行ってもよい。遮蔽材40の位置調整が完了していない場合(ステップS22の「N」)には、ステップS18に移行し、遮蔽材40の位置調整が完了するまで、ステップS18、S20の処理を繰り返す。
【0038】
遮蔽材40の位置調整が完了した場合(ステップS22の「Y」)には、制御部52は、ステージ30の駆動機構を制御して、ステージ30をイオン銃20の下方に移動させる制御を行う(ステップS24)。次に、制御部52は、イオン銃20を制御して、位置調整が行われた遮蔽材40と試料Sに対してイオンビームを照射させる制御を行う。これにより、位置決めされた遮蔽材40の端面を境界とした加工位置にイオンビームが照射されて試料Sが切削され、所望の断面を有する試料が作製される。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0040】
1 試料作製装置本体、2 真空チャンバ、10 撮像部、20 イオン銃(イオンビーム発生部)、30 ステージ、32 試料位置調整機構、34 試料ホルダ、40 遮蔽材、42 遮蔽材位置調整機構、44 遮蔽材保持部、50 処理部、52 制御部、54 画像処理部、60 操作部、62 表示部、64 記憶部、S 試料
図1
図2
図3
図4