(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185372
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/736 20060101AFI20170814BHJP
A61K 36/76 20060101ALI20170814BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20170814BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170814BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20170814BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20170814BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
A61K36/736
A61K36/76
A61K47/34
A61P17/00
A61K8/97
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-240544(P2013-240544)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-101539(P2015-101539A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倉沢 真澄
【審査官】
新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−234828(JP,A)
【文献】
特開2011−032195(JP,A)
【文献】
特表2012−519164(JP,A)
【文献】
特開2013−071901(JP,A)
【文献】
特開2012−056857(JP,A)
【文献】
特表2005−514346(JP,A)
【文献】
特表2002−516263(JP,A)
【文献】
特開2005−053834(JP,A)
【文献】
特開2012−012318(JP,A)
【文献】
特開2007−186457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
A61K 50/00−51/12
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 35/00−35/768
A61K 36/00−36/9068
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モモ葉エキス及び/又はセイヨウシロヤナギ葉エキスと、重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤
【請求項2】
実質的に油剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤
【請求項3】
前記皮膚外用剤が改善する肌状態が、肌の明るさ、毛穴の目立ち、しわ、および肌の凹凸からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚外用剤
【請求項4】
化粧料であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌状態を改善する効果を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の角層中には、様々な酵素が存在し、これらの酵素は皮膚の状態と関連することが報告がされている。例えば、特許文献1では、角層中のトリプシン様酵素活性とキモトリプシン様酵素活性が、肌荒れと関係を有することが示唆されている。
その他、角層形成、NMF産生に関与する酵素として、カスパーゼ−14(例えば、非特許文献1、2参照)、過酸化水素の分解に関わり老化に伴い減少する酵素としてカタラーゼ(例えば、非特許文献2、3参照)、エネルギー産生に関わる酵素としてNADHデヒドロゲナーゼ(例えば、非特許文献4参照)、角層細胞の皮膚での接着に関わり、角層剥離に関与する酵素としてカリクレイン−5(例えば、非特許文献5参照)が知られている。
【0003】
一方、ヒートショックプロテインは、細胞が熱や紫外線等のストレスにさらされた時に発現し、細胞を保護するタンパク質の一群であり、その分子量によりそれぞれの分子の名前がつけられており、例えばHSP60、70、90はそれぞれ分子量60、70、90kDaのタンパク質を指す。ヒートショックプロテインに関しては、ヒートショックプロテインおよびヒートショックプロテイン因子を産生させる酵母抽出液を含む皮膚外用剤により、紫外線、熱などの外的刺激から皮膚を保護し、損傷を受けた皮膚を修復し、改善することが報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術を用いてヒートショックプロテイン因子を産生する成分のみを含有した皮膚外用剤で肌状態が改善しない場合が存し、更に損傷を受けた皮膚を修復、改善する技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−68791号公報
【特許文献2】特開2004−331602号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NatureCell Biology 2007(6) p666-674
【非特許文献2】機能性化粧品素材開発のための実験プロトコール集(シーエムシー出版)
【非特許文献3】Experimental Gerontology 2007(42) p924-929
【非特許文献4】J Cosmet Dermatol.2012 (11)No.1 p3-8
【非特許文献5】Biol.Chem.2008(389)No.6p669-680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下なされたものであり、肌状態に関連する酵素活性を向上させ、肌状態を改善する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、肌状態を改善可能な皮膚外用剤を提供すべく研究を進め、意外にも、ヒートショックプロテイン産生促進成分と、重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールとを含む皮膚外用剤が、紫外線等による酵素の変性を抑制、修復し、酵素活性の低下を低減し、肌状態を改善することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>
モモ葉エキス及び/又はセイヨウシロヤナギ葉エキスと、重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤
<2>実質的に油剤を含有しないことを特徴とする<1>記載の皮膚外用剤
<3>前記皮膚外用剤が改善する肌状態が、肌の明るさ、毛穴の目立ち、しわ、および肌の凹凸からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする<1>または<2>記載の皮膚外用剤
<4>化粧料であることを特徴とする<1>〜<3>
の何れか一項に記載の皮膚外用剤
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】カリクレイン−5活性と肌の明るさの関係を示すグラフである。
【
図2】カリクレイン−5活性と毛穴スコアの関係を示すグラフである。
【
図3】カリクレイン−5活性としわの数の関係を示すグラフである。
【
図4】カリクレイン−5活性と肌の凹凸の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の皮膚外用剤について説明する。
【0010】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるヒートショックプロテイン産生促進成分
本発明の皮膚外用剤は、その必須成分としてヒートショックプロテイン産生促進成分を含有する。このようなヒートショックプロテイン産生促進成分としては、ヒートショックプロテイン産生促進成分として皮膚外用剤に使用できるものであれば特段限定されないが、具体的にはウコン、芍薬、セイヨウシロヤナギ、甘草、モモの抽出物等の植物抽出物が例示でき、これらの抽出物として用いる植物の根、茎、枝、葉、種、全草の単独の部位を用いてもよいし、2部位以上を用いてもよい。そのまま粉砕、又は乾燥したものを用いてもよい。抽出溶媒として極性溶媒を用いた抽出物が好ましく例示できる。前記抽出溶媒としては、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどの多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類から選択される1種乃至は2種以上の極性溶媒で抽出した抽出液、抽出液を乾燥し粉末にしたものを用いることができる。これらの粉砕物、抽出物、乾燥物等をカラムや溶液間の分配により精製し、有効成分を高めたもの等を用いることもできる。
【0011】
ウコンとしては、ショウガ科のCurcuma domestica Val.の根茎部の抽出物、芍薬としては、ボタン科のPaeoniaの根部の抽出物、セイヨウシロヤナギとしては、ヤナギ科ヤナギ属のSalix Albaの葉の抽出物、甘草としては、マメ科カンゾウ属のGlycyrrhizaの根の抽出物、モモとしては、バラ科モモ属のPrunus Persica
Batschの葉の抽出物が特に好ましく例示できる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤全量に対し、ヒートショックプロテイン産生促進成分は、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.015質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、下限未満では本発明の皮膚外用剤が有する肌状態の改善効果が発揮されず、上限を超えると効果が頭打ちになり、色や臭い等の問題が生じ、皮膚外用剤として使用する場合、自由度を損なう場合が存するためである。
【0013】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるポリエチレングリコール
本発明の皮膚外用剤は、その必須成分として、重量平均分子量2000〜5000のポリエチレングリコールを含有する。このようなポリエチレングリコールとしては、具体的に、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000等が例示できる。これらには市販品が存在するので、それら市販品を入手して使用することもできる。市販品としては、具体的には、「トーホーポリエチレングリコール2000」、「PEG4000」(いずれも東邦化学工業株式会社製)等が例示される。
【0014】
本発明の皮膚外用剤においては、重量平均分子量2000〜5000のポリエチレングリコールが、皮膚外用剤全量に対して、0.012〜5.0質量%含有することが好ましく、0.51〜3.0質量%含有することがより好ましい。含有量が下限未満では、角層中の酵素活性の向上効果が認められない場合があり、上限を超えると効果が頭打ちになり、皮膚外用剤としての感触が悪くなる場合があり、好ましくない。
【0015】
更に好ましくは、本発明の皮膚外用剤は、通常、皮膚外用剤に用いられる油剤を実質的に含有しないことを特徴とするが、本発明においては、実質的に含有しないとは、油剤を含有していても、その含有量が、皮膚外用剤全量に対して0.5質量%以下であることを意味する。
【0016】
また、本発明における油剤とは、具体的には、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ジメチコン、フェニルジメチコン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン類、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、サリチル酸ホモメンチル等のUV吸収剤、油溶性ビタミン等が例示される。
【0017】
さらに、本発明の皮膚外用剤にはその効果を損なわない範囲において、通常皮膚外用剤で用いられる、油剤以外の任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、重量平均分子量2000未満のポリエチレングリコール、重量平均分子量5000を超えるポリエチレングリコールの多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、1,3ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン等の本発明のアルカンジオール以外の多価アルコール、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、平均一次粒径が100μm以下の微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体等の水溶性ビタミン等が例示される。
【0018】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、角層中の酵素活性を向上させ、肌状態を改善することができる。前記角層中の酵素としては、カリクレイン−5、カスパーゼ14、カタラーゼ、及びNADHデヒドロゲナーゼ、ヒスチジンアンモニアリアーゼ、トランスグルタミナーゼが例示でき、より好ましくはカリクレイン−5、カスパーゼ14、カタラーゼ、及びNADHデヒドロゲナーゼが例示できる。
これらの酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素活性が向上した場合、肌状態が改善したと判断できる。
酵素活性の測定は、例えば、市販の粘着テープ等にて採取された角層細胞から酵素をバッファーにて抽出し、得られた酵素液の酵素活性の変化量を常法に従い測定する方法が挙げられる。角層採取部位は特に限定されない。
酵素活性が向上するか否かの判断は、本発明の皮膚外用剤の使用前後で、酵素活性がどのように変化するかを測定して行うことができる。
以下に試験例を挙げて本発明について詳細に説明する。
【0019】
(角層中酵素の抽出)
健常人1名について、顔部をダブル洗顔した後(メーク落とし・洗顔)、テープストリッピング法により、顔部の角層細胞を採取した。
採取した角層は酵素抽出液(0.1M Tris−HCl(pH7.5)+0.14M NaCl+0.1%Tween20)にてホモジナイズし、15000rpmで遠心した上清を酵素液とした。
酵素活性の算出に必要な蛋白濃度は、前記酵素液を、ProteinAssayKit(同仁化学)を用い測定した。
本試験においては、角層中の酵素として、カリクレイン−5、カスパーゼ−14、カタラーゼ、及びNADHデヒドロゲナーゼを選択し、各酵素の酵素活性を測定した。
【0020】
(角層中酵素活性の測定)
カリクレイン−5は、以下の方法にて測定した。すなわち、MCA基質(Boc−Val−Pro−Arg−MCA、同仁化学)(0.2mM)20μL、アッセイバッファー(50mM HEPES(pH7.5)+60mM
NaCl+0.01%Chaps+5mM EDTA+2mM DTT+1.5mMクエン酸ナトリウム)130μL、酵素抽出液(酵素を含まない)30μLを小試験管中で10分間37℃においてインキュベートしブランクとし、同様に、MCA基質(0.2mM)20μL、アッセイバッファー(50mM HEPES(pH7.5)+60mM NaCl+0.01%Chaps+5mM EDTA+2mM DTT+1.5mMクエン酸ナトリウム)130μL中に酵素液30μLを加え小試験管中で10分間37℃においてインキュベートし、サンプルとした。
ブランク、サンプルともに0.1Mモノクロロ酢酸ナトリウム溶液(pH4.3)で反応を停止し、蛍光強度(EX370nm、EM460nm)を測定し、酵素活性を算出した。
【0021】
カスパーゼ−14は、以下の方法にて測定した。すなわち、MCA基質(0.2mM)20μL、アッセイバッファー(50mM HEPES(pH7.5)+60mM NaCl+0.01%Chaps+5mM EDTA+2mM DTT+1.5mMクエン酸ナトリウム)160μLを小試験管中で10分間37℃においてインキュベートしブランクとし、同様に、MCA基質(0.2mM)20μL、アッセイバッファー(50mM HEPES(pH7.5)+60mM NaCl+0.01%Chaps+5mM EDTA+2mM DTT+1.5mMクエン酸ナトリウム)160μL中に酵素液30μLを加え、小試験管中で10分間37℃においてインキュベートし、サンプルとした。
ブランク、サンプルともに0.1Mモノクロロ酢酸ナトリウム溶液(pH4.3)で反応を停止し、蛍光強度(EX370nm、EM460nm)で測定し、酵素活性を算出した。
【0022】
カタラーゼは、以下の方法にて測定した。すなわち、試験管に50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)300μLに0.1M Tris−HCl(pH7.5)+0.14M NaCl+0.1%Tween20の300μLを混合しブランクとした。同様に、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)300μL中に酵素液300μLを混合し、サンプルとした。試験管内で調整した上記の各試料液に対し、31mM過酸化水素水300μLを加え25℃で反応させた後、0〜4分間の過酸化水素に由来する240nmの吸光度の減少を追跡し、1分間あたりの吸光度の減少量を算出した。240nmにおける過酸化水素の分子吸光度係数(1μmol/mL=0.036)により酵素活性
(μmol/min/g)を求めた。
【0023】
NADHデヒドロゲナーゼは以下の方法にて測定した。すなわち、基質であるNADH 0.2mMを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)2.8mLを25℃で5分間予備加温後、1.2mMの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)水溶液を0.1mL添加し、次いで、予め、酵素希釈液(200mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5))で希釈した酵素液0.1mLを加え、反応を開始し、25℃で20秒毎に600nmの吸光度の減少を4分間測定した。
盲検として上記において、NADHデヒドロゲナーゼ溶液0.1mLの代わりに酵素希釈液0.1mLを加え、上記同様に操作を行って反応を開始し、25℃で20秒毎に600nmの吸光度の減少を4分
間測定した。
【0024】
(サンプル1〜12の酵素活性の測定)
酵素にダメージを与えるため紫外線(UVB)を100mJ/cm
2となるように照射したのち、前記酵素液にヒートショックプロテイン産生促進成分と重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールとを表1の濃度(w/v)となるように添加し、3時間後のカリクレイン−5、カスパーゼ−14、カタラーゼ、及びNADHデヒドロゲナーゼの酵素活性を測定した。コントロールを100%としたときの各サンプルの酵素活性を算出し%で表示した。また、紫外線を照射しない場合の各酵素の活性はコントロールを100%に対し170〜180%であった。
【0026】
表2の結果より、ヒートショックプロテイン産生促進成分及び重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールを含有するサンプル1〜4の群では、コントロールやサンプル5〜12に比べ、紫外線ダメージによる酵素の活性低下が抑制された。従って、ヒートショックプロテイン産生促進成分と、重量平均分子量が2000〜5000であるポリエチレングリコールとを含有する本発明の皮膚外用剤が、紫外線による酵素の変性を抑制、修復し、酵素活性の低下を抑制、改善することが明らかとなった。
【0028】
<試験例2>
(酵素と肌状態の関連性)
カリクレイン−5の酵素と肌状態の関連性を把握するため、前記のように、60名の健常者の顔部の角層細胞を採取し、酵素活性を測定し、酵素活性の高さから低中高群を設定し、低い群、高い群で肌の明るさ、毛穴の目立ち、しわ、及び肌の凹凸(ムラ)に差が認められるか観察した。
肌の明るさは、洗顔後(メーク落とし・洗顔)、室温22±2℃、湿度50±5%の条件下にて安静にし、右の頬下部を分光測色計CM−2600d(コニカミノルタオプティクス株式会社)にてL
*値を測定し、5回測定を行い、平均値を求めた。
毛穴の目立ち、しわ、及び肌の凹凸は、前記と同様に洗顔を行い、前期条件下で安静にした後、顔 正面および左右斜めの3部位について、VISIA Evolution(Canfield Scientific Ltd.)を用いて、毛穴スコア、凹凸及びシワの個数を測定した。
【0029】
図1〜4に酵素活性が低い群、高い群における、肌の明るさ(L
*値)、毛穴の目立ち(毛穴スコア)、しわの数、及び肌の凹凸(ムラ)の結果を示す。酵素活性が高い群は低い群に比べ、肌が明るく、毛穴スコアが低く毛穴が目立ちにくく、しわの数が少なく、凹凸が少ないことが観察された。従って、酵素活性の向上が肌状態の改善に繋がることが判った。また、カスパーゼ−14、カタラーゼ、及びNADHデヒドロゲナーゼにおいても同様に、酵素活性の向上が、肌状態の改善に繋がることが確認された。
【実施例】
【0030】
表3に示す処方にしたがって本発明の皮膚外用剤を調製した。
表3の成分(イ)を攪拌しながら60℃に加熱した。これに成分(ロ)を常温にて攪拌混合したものを添加し、次に(ハ)を加え攪拌し続け均一溶液とした。次に、成分(ホ)を加え攪拌混合し、均一となるまで攪拌を続け皮膚外用剤を得た。なお表中成分(イ)〜(ホ)における数字は質量%を表す。
【0031】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、肌状態を改善する皮膚外用剤を提供することができる。