(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185392
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】密封型電界コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/08 20060101AFI20170814BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20170814BHJP
A61N 1/39 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
H01G9/08 F
H01G9/05 N
!A61N1/39
【請求項の数】25
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-552682(P2013-552682)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2014-507806(P2014-507806A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012023796
(87)【国際公開番号】WO2012106611
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/439,692
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599026474
【氏名又は名称】ヴィシャイ スプレイグ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VISHAY SPRAGUE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エイデルマン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブライトハウプト,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ラステッラ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】フェアフィールド,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】スタトコフ,イリア
(72)【発明者】
【氏名】シーゲル,ヴィッキー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスマン,パベル
(72)【発明者】
【氏名】エシェル,ヒラ
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/121018(WO,A1)
【文献】
実開平03−041921(JP,U)
【文献】
実開昭56−169534(JP,U)
【文献】
特開昭57−099720(JP,A)
【文献】
特開平09−326327(JP,A)
【文献】
実開昭58−155829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/08
H01G 9/012
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と底面部と複数の側面部とを有し且つプレスされた粉体を含有するタンタル製のただ一つのアノード部材であって、前記上面部から伸ばしたアノードワイヤを有する前記アノード部材と、
ガラス絶縁体を有する貫通バレルであって、前記アノードワイヤの少なくとも一部を取り囲む前記貫通バレルと、
金属基板を有するカソード部材であって、前記アノード部材に対し電気的に遠端に位置する前記カソード部材と、
を備え、
第1のケース部において、この第1のケース部の縁端部に形成した第1の開口部を有し、この第1の開口部が第1の合わせ部とその第1の合わせ部に隣接するスロット部とを有し、前記第1のケース部の前記縁端部までそのスロット部を長く延ばしており、この延ばした長さが前記貫通バレルの半径長さよりも大きく、
前記アノード部材の直線的移動のみで前記第1のケース部への前記アノード部材の挿入を可能とする形状が前記第1のケース部に形成されており、前記アノード部材の前記底面部を前記第1のケース部の内側に隣接した状態で前記アノード部材を位置決めし、且つ、前記第1のケース部が前記アノード部材の前記底面部および前記複数の側面部の形状と密に合致しており、
第2のケース部が上側面と横側面と底側面とを有し、前記上側面の内の一つの上側面のエッジを延ばして突起部を形成しており、
第2の開口部が第2の合わせ部として前記突起部の形状に含まれており、前記アノード部材を前記挿入して前記位置決めする場合に第2のケース部の前記上側面が前記アノード部材の前記上面部に近くなる位置にして、そして、前記第1のケース部と前記第2のケース部とを組み合わせた時に前記第1のケース部の外周面に前記突起部が被さる構造になり、
前記第1および第2のケース部が前記貫通バレルの少なくとも一部及び前記アノード部材並びに前記カソード部材を包む外囲器として構成されて、且つ、前記カソード部材の前記金属基板が前記外囲器の少なくとも一部を構成しており、
前記第1および第2の合わせ部の組合せで構成される開口部が、前記貫通バレルと合致する形状であり、金属シールとしてのガラスを含む前記貫通バレルをこの構成される開口部に配置することで、前記第1および第2合わせ部が完全に密封されることを特徴とする密封型コンデンサ。
【請求項2】
前記貫通バレルが円筒状外側面を有し、前記第1および第2の合わせ部がそれぞれ、前記貫通バレルの外側面と合致するよう選択された半丸輪郭と半径を有する請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項3】
前記第1のケース部が第1の深さを有し、前記第2のケース部が第2の深さを有し、前記第1および第2の合わせ部がそれぞれこれらの第1の深さおよび第2の深さの部分に設置され、前記貫通バレルと合致する開口部を形成するようになっている請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項4】
前記アノード部材が保護ラップを有する請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項5】
前記第1のケース部および第2のケース部が互いに溶接されている請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項6】
貴金属で形成された合金層および貴金属/ベースメタル電極部材層が電気化学的に堆積されてなる前記金属基板を具備してなる請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項7】
前記金属基板がバルブ金属から構成されている請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項8】
前記金属基板がタンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、チタン又はこれらの合金から構成されてなる請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項9】
前記第1のケース部と第2のケース部との間に電解液を更に配置させてなる請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項10】
前記電解液が、水、無機酸(リン酸、ホウ酸)、有機酸(シュウ酸)および有機溶媒を含有してなる請求項9に記載の密封型コンデンサ。
【請求項11】
エネルギーを貯蔵し、該貯蔵されたエネルギーの少なくとも80%をパルス送信し得るようになっている請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項12】
前記アノード部材およびカソード部材に電気的に接続された制御回路を更に具備してなり、該制御回路が植込み型除細動器(ICD)として構成されている請求項1に記載の密封型コンデンサ。
【請求項13】
請求項1に記載の密封されたウエット型電解コンデンサを具備してなることを特徴とする植込み可能な装置。
【請求項14】
請求項1に記載の密封されたウエット型電解コンデンサを具備してなる植込み型除細動器(ICD)。
【請求項15】
バッテリーと、
このバッテリーに接続されたプロセッサーと、
これらバッテリー並びにプロセッサーに接続されたコンデンサと、を具備してなる植込み可能な装置であって、
前記コンデンサが、
上面部と底面部と複数の側面部とを有し且つプレスされた粉体を含有するタンタル製のただ一つのアノード部材であって、前記上面部から伸ばしたアノードワイヤを有する前記アノード部材と、
ガラス絶縁体を有する貫通バレルであって、前記アノードワイヤの少なくとも一部を取り囲む前記貫通バレルと、
金属基板を有するカソード部材であって、前記アノード部材に対し電気的に遠端に位置する前記カソード部材と、
前記カソード部材の前記金属基板を少なくとも一部として構成し且つ金属製の蜜封ケースと、を備え、
この密封ケースは、
(甲)第1のケース部において、この第1のケース部の縁端部に形成した第1の開口部を有し、この第1の開口部が第1の合わせ部とその第1の合わせ部に隣接するスロット部とを有し、前記第1のケース部の前記縁端部までそのスロット部を長く延ばしており、この延ばした長さが前記貫通バレルの半径長さよりも大きく、
(乙)第2のケース部が上側面と横側面と底側面とを有し、前記上側面の内の一つの上側面のエッジを延ばして突起部を形成しており、第2の開口部が第2の合わせ部として前記突起部の形状に含まれており、前記アノード部材を挿入して位置決めする場合に第2のケース部の前記上側面が前記アノード部材の前記上面部に近くなる位置にして、そして、前記第1のケース部と前記第2のケース部とを組み合わせた時に前記第1のケース部の外周面に前記突起部が被さる構造になり、
上記の(甲)および(乙)を具備しており、
そして、前記アノード部材の直線的移動のみで前記第1のケース部への前記アノード部材の前記挿入を可能とする形状が前記第1のケース部に形成されており、前記アノード部材の前記底面部を前記第1のケース部の内側に隣接した状態で前記アノード部材を前記位置決めし、且つ、前記第1のケース部が前記アノード部材の前記底面部および前記複数の側面部の形状と密に合致しており、
そしてその上、前記第1および第2の開口部で構成する開口部が、前記貫通バレルと合致する形状であり、金属シールとしてのガラスを含む前記貫通バレルをこの構成する開口部に配置することで、前記第1および第2合わせ部が完全に密封されており、
さらに、前記コンデンサがエネルギーを貯蔵し、前記プロセッサーがこの貯蔵されたエネルギーの少なくとも一部のパルス送信を制御し得るようになっていることを特徴とする植込み可能な装置。
【請求項16】
上面部と底面部と複数の側面部とを有し且つプレスされた粉体を含有するタンタル製のただ一つのアノード部材であって、前記上面部から伸ばしたアノードワイヤを有する前記アノード部材を用意して、
ガラス絶縁体を有する貫通バレルであって、前記アノードワイヤの少なくとも一部を取り囲む前記貫通バレルを用意して、
金属基板を有するカソード部材であって、前記アノード部材に対し電気的に遠端に位置する前記カソード部材を用意して、
ここで、第1のケース部において、この第1のケース部の縁端部に形成した第1の開口部を有し、この第1の開口部が第1の合わせ部とその第1の合わせ部に隣接するスロット部とを有し、前記第1のケース部の前記縁端部までそのスロット部を長く延ばしており、この延ばした長さが前記貫通バレルの半径長さよりも大きく、
そして、第2のケース部が上側面と横側面と底側面とを有し、前記上側面の内の一つの上側面のエッジから特定長さで延ばした突起部を含む前記第2のケース部を形成して、第2の開口部が第2の合わせ部として前記突起部の形状に含まれており、そして、前記第1のケース部と前記第2のケース部とを組み合わせた時に前記第1のケース部の外周面に前記突起部が被さる構造にして、
前記アノード部材を挿入して位置決めする場合に第2のケース部の前記上側面が前記アノード部材の前記上面部に近くなる位置にして、前記貫通バレルと合致する開口部を構成する前記第1および第2のケース部を形成して、
前記第1のケース部が前記アノード部材の前記底面部および前記複数の側面部の形状と密に合致して、且つ、前記アノード部材の直線的移動のみで前記第1のケース部への前記アノード部材の前記挿入を可能とする形状を前記第1のケース部に形成して、
前記第1のケース部の底面に隣接した状態でこの第1のケース部の中に前記アノード部材を前記位置決めして、前記貫通バレルの少なくとも一部及び前記アノード部材並びに前記カソード部材を囲むケースを構成する前記第1および第2のケース部を密封して、
前記第1および第2の合わせ部を金属シールとしてのガラスを含む前記貫通バレルで密封することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項17】
前記第1および第2の合わせ部のそれぞれが、前記貫通バレルの外側面と合致するよう選択された半丸輪郭と半径を有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のケース部が第1の深さを有し、第2のケース部が第2の深さを有し、前記第1および第2の合わせ部がそれぞれこれらの第1の深さおよび第2の深さの部分に設置され、前記貫通バレルと合致する開口部を形成するようにした請求項16に記載の方法。
【請求項19】
保護ラップで前記アノード部材を少なくとも部分的に覆うようにした請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1および第2のケース部を溶接し、前記ケースを密封するようにした請求項16に記載の方法。
【請求項21】
貴金属で形成された合金層および貴金属/ベースメタル電極部材層が電気化学的に堆積されてなる前記金属基板を具備してなる請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記金属基板がバルブ金属から構成されている請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記金属基板がタンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、チタン又はこれらの合金から構成されてなる請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記ケースに電解液を少なくとも部分的に充填させることを更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記電解液が、水、無機酸(リン酸、ホウ酸)、有機酸(シュウ酸)および有機溶媒を含有してなる請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2011年2月4日に出願された米国特許出願第61/439,692号の優先権を主張する出願であり、その全体を援用する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明はコンデンサに係り、特に、植込み可能な心臓除細動器(implantable cardioverter defibrillators)などの医療用途での使用に適したコンデンサに関する。
【背景技術】
【0003】
コンデンサは広範な電子機器に使用されている。或る種の用途においては、コンデンサは所定の電圧に急速充電可能であり、一旦充電された際には可なり大きいエネルギーパルスを送信し得ることが要求される。このような用途の一例は植込み可能な装置においてである。このような用途においては、コンデンサはサイズ的にコンパクトであり、信頼性も高いことも重要である。しかし、従来の設計においては、アノード部材などの内部構造のためのケース内部で使用可能なスペースを最大に利用するものとなっていない。従って、同程度の電子的パフォーマンスを達成するには、より大きいケースが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は密封型コンデンサ(hermetically sealed capacitor)およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この密封型コンデンサはアノードリード(anode lead)および貫通バレル(feed through barrel)を有するアノード部材(anode element)と、カソード部材と、第1の開口部を有する第1のケース部と、第2の開口部を有する第2のケース部とを具備してなる。これら第1および第2の開口部は上記貫通バレルと合致するよう形づけられた開口部を形成するようになっている。この第1の開口部は上記貫通バレルを受理するよう形づけられたスロット部を含むものであってもよい。これら第1および第2の開口部はそれぞれ第1および第2の合わせ部を含むものであってもよく、これら第1および第2の合わせ部が上記貫通バレルと合致するよう形づけられる。
【0006】
上記貫通バレルは円筒状外側面(a round outer surface)を有するものでもよく、上記第1および第2の合わせ部はそれぞれ、上記貫通バレルの外側面と合致するよう選択された半丸輪郭と半径(half round profile and a radius)を有するものでもよい。上記の第1のケース部および第2のケース部は互いに密封的に封止することができる。上記の第1のケース部は第1の深さを有し、第2のケース部は第2の深さを有し、上記の第1および第2の合わせ部がそれぞれ第1の深さおよび第2の深さの部分に配置され、上記貫通バレルと合致する開口部を形成するようになっている。第2のケース部は突起(protrusion)を有し、第2の合わせ部がこの突起内に形成されていてもよい。上記貫通バレルはガラス又はセラミックスからなるものでもよい。
【0007】
アノード部材は保護ラップを有するものでもよい。上記の第1のケース部および第2のケース部は溶接などの従来の方法で結合させることができる。この密封型コンデンサは更にカソード部材を形成する金属基板を有するものとすることができる。この金属基板は上記第1および第2のケース部の少なくとも一方の一部であってもよい。この金属基板は、貴金属で形成された合金層および貴金属/ベースメタル電極部材層が電気化学的に堆積されたものからなるものであってもよい。この金属基板はバルブ金属からなるものであってもよい。この金属基板(metal substrate)はタンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、チタン又はこれらの合金からなるものであってもよい。
【0008】
この密封型コンデンサには更に上記の第1のケース部と第2のケース部との間に配置させた電解液が含まれる。この電解液は、水、無機酸(リン酸、ホウ酸)、有機酸(シュウ酸)および有機溶媒を有するものとすることができる。この密封型コンデンサはエネルギーを蓄え、この蓄えられたエネルギーの少なくとも80%のパルス送信を提供するものとなる。
【0009】
植込み型除細動器(ICD)などの植込み可能な装置は、密封されたウエット型電解コンデンサを使用するような形状をなしている。この植込み可能な装置にはバッテリー、このバッテリーに接続されたプロセッサー、およびこれらバッテリー並びにプロセッサーに接続されたコンデンサが含まれる。このコンデンサには、アノードリードおよび貫通バレルを有するアノード部材と、カソード部材と、第1の開口部を有する第1のケース部と、第2の開口部を有する第2のケース部とを含む密封ケースが含まれ、これら第1および第2の開口部は上記貫通バレルと合致するよう形づけられた開口部を形成するようになっている。このコンデンサはエネルギーを蓄えるよう構成され、このプロセッサーは蓄えられたエネルギーの少なくとも一部のパルス送信を制御するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】第1の実施例に係わる密封型コンデンサの端面図。
【
図1B】
図1Aに示す密封型コンデンサのA-A線に沿う縦断面図。
【
図1C】アノード部材の設置を示す密封型コンデンサの縦断面図。
【
図1D】ポリマークレードルの設置を示す密封型コンデンサの縦断面図。
【
図2A】第2の実施例に係わる密封型コンデンサの端面図。
【
図2B】第2のケース部の他の具体例を示す端面図。
【
図2C】アノード部材の設置を示す密封型コンデンサの縦断面図。
【
図3】植込み型除細動器内における
図2A〜
図2Eに示すコンデンサのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を特定の具体例に基づいて説明する。ここに示すものは単に説明および具体例を目的とするものであり、当業者であれば本発明は他の選択、置換およびバリエーションを容易に理解し得るであろう。
【0012】
図1Aは第1の実施例に係わる密封型コンデンサ10の端面図である。このコンデンサは第1のケース部12と、第2のケース部14とを有する。これら第1のケース部12および第2のケース部14は溶接16などの従来法を介して互いに接合させることができる。第1のケース端部18には開口部20が形成され、これが貫通バレル22を受理するよう形づけられている。この貫通バレル22は第1のケース部12に全体的に封着され、アノードワイヤ24と第1のケース部12との間の電気的絶縁を提供している。
【0013】
図1Bは
図1Aに示す密封型コンデンサ10のA-A線に沿う縦断面図である。このコンデンサ10は、アノードワイヤ24を備えたアノード部材26を具備してなる。このアノード部材26は種々の方法で構築することができ、保護ラップ28を有するものとしてもよい。アノードワイヤ24は貫通バレル22を解して第1のケース部12から絶縁されている。この貫通バレル22はガラス絶縁体30を有するものでもよい。ポリマークレードル32は、アノード部材26と第1のケース部12との間の未使用空間を満たすのに使用されている。このポリマークレードル32は種々の方法で形成することができる。
【0014】
図1Cはアノード部材26の設置を示す密封型コンデンサ10の縦断面図である。この設置の間において、アノード部材26は第1のケース部12の底部との関連で或る角度を以って大略的に配置される。貫通バレル22およびアノードワイヤ24は、第1のケース部12内の開口部20に挿入される。ついで、アノード部材26を第1のケース部内に枢動させ、貫通バレル22が上記開口部20に受理されるようにする。この第1のケース部にはギャップ34が設けられていて、アノード部材26の挿入の間における隙間を提供するようになっている。
図1Dはアノード部材26と第1のケース部12との間のギャップ34を満たすようにポリマークレードル32を設置する様子を示す縦断面
図10である。
【0015】
図2Aは第2の実施例に係わる密封型コンデンサ100の端面図である。このコンデンサ100は第1のケース部112と、第2のケース部114とを有する。これら第1のケース部112および第2のケース部114は例えば溶接、接着、ロウ付けなどの従来法を介して互いに接合させることができる。第1のケース部112および第2のケース部114は双方とも、アノードワイヤ124および貫通バレル122のための開口部を画成するよう形づけられている。第1のケース部112は、第1の開口部152を含む端部118を有する。
【0016】
この第1の開口部152はアノード部材の直線的挿入を許容するよう形づけられている(例えば、第1のケース部112との関係でアノードを回転させる必要なく)。この実施例において、第1の開口部152は一般にスロット部160および第1の合わせ部162を有している。この第1の合わせ部162は第1の深さ170に配置されている。この実施例において、この第1の合わせ部162は半丸形状をなし、その半径は円形の貫通バレルと合致するよう選択されている。なお、これら形状に関し、本発明の開示範囲から逸脱することなく、他の形状を採用し得ること(例えば、貫通バレルの輪郭に応じて)を理解されるべきである。
【0017】
第2のケース部114は、第2の深さ172に位置する第2の開口部154と共に形成された端部115を有する。この第2の開口部154は更に突起164内に形成された第2の合わせ部166を備えている。この実施例において、第2の合わせ部166は半丸形状(half round shape)をなし、その半径は円形の貫通バレルと合致するよう選択されているものとして概略的に示されている。上述のように、これら形状に関し、本発明の開示範囲から逸脱することなく、他の形状を採用し得ること(例えば、貫通バレルの輪郭に応じて)を理解されるべきである。これら第1のケース部112および第2のケース部114は全体的に互いに接合されコンデンサケース117(例えば、
図2D参照)を形成するものと理解されるべきである。第1の深さ170および第2の深さ172は、第1の合わせ部162および第2の合わせ部166が共同して貫通バレルのための開口部を画成するよう選択される。
【0018】
図2Bは第2のケース部214の他の形状を示している。この第2のケース部214は第2の深さ272に位置する第2の開口部254と共に形成された端部215を有する。この第2の開口部254は更に第2の合わせ部266を備えている。このケース端部215は、そこに第2の合わせ部266が形成され得るような十分な深さを以って形成されている(例えば、突起を必要としない)。この実施例において、第2の合わせ部266は半丸形状をなし、その半径は円形の貫通バレルと合致するよう選択されているものとして概略的に示されている。上述のように、これら形状に関し、本発明の開示範囲から逸脱することなく、他の形状を採用し得ること(例えば、貫通バレルの輪郭に応じて)を理解されるべきである。ケース端部の形状については、本発明の開示範囲から逸脱することなく、第1の合わせ部と第2の合わせ部とを正しく配置させるための様々な形状を採用することが可能であることを理解されるべきである。
【0019】
図2Cはアノード部材126の設置を示す密封型コンデンサ100の縦断面図である。この設置の間において、アノード部材126は第1のケース部112内に直線的に挿入される。貫通バレル122およびアノードワイヤ124は、傾斜挿入又は何らかの枢動動作を必要とせずに第1の開口部152内に挿入することができる。アノード部材126が直線的に挿入されるので、第1のケース部112はアノード部材126の形状に合致した形状とすることができる。つまり、アノード部材126と第1のケース部112との間の大きなギャップを必要としなくなる。このように僅かな隙間が必要となるに過ぎないので、ポリマークレードルを用いて第1のケース部112とアノード部材126との間のギャップを満たす必要はなくなる。その結果、より大きいアノード部材126を第1のケース部112内に挿入することができる。
【0020】
図2Dは組立てられた密封型コンデンサ100の端面図である。
図2EはそのB-B線に沿う密封型コンデンサ100の縦断面図である。第1の合わせ部162と第2の合わせ部166(first and second mating portions 162, 166)とが提携してコンデンサケース117内に開口部220を概して形成するようになっている。この実施例において、開口部220は円形状をなし、その半径は円形の貫通バレル122と合致するよう選択される。これら第1のケース部112および第2のケース部114(the first and second case portions 112, 114)は上述のような従来法(
図2Eに示すような溶接部116)を介して、第1のケース部112および第2のケース部114の連結部にて互いに接合させることができる(
図2E)。第1のケース部112と第2のケース部114との間の連結部全体に亘って封止することができることを理解されたい。貫通バレル122はこれら第1のケース部112および第2のケース部114に対してほぼ封止され、アノードリード124と、第1および第2のケース部の112、114との間の電気的絶縁を提供している。
【0021】
アノード部材126は保護ラップ128を有するものとしてもよい。貫通バレル122はガラス絶縁体130を有するものとしてもよい。アノード部材126はナトリウム還元コンデンサグレードタンタル粉を5.0〜7.0g/ccのグリーン密度(green density)にプレスし、これを1450℃〜1650℃の範囲で真空焼結したものからなるものでもよい。これら粉体、プレスおよび焼結の条件については、必要とする所望のコンデンサを得るべく種々変更することができる。アノード部材126の形成は、所望の酸化物の厚みに必要な電圧を維持することができる電解質内でなすことができる。
【0022】
コンデンサ100は種々のケース形状のものとすることができる。例えば四角形、円形、半円形などであるが、これらに限定されない。コンデンサ100は一般にアノード端子又はアノードワイヤ124並びにカソード端子182を有している。電解液180は密封されたケース112,114内に配置され、カソード部材127およびアノード部材126の双方を囲むようにする。
【0023】
電解液180は、脱イオン(DI)水、有機酸、無機酸および有機溶媒を含むゲルを含むものでよい。電解液180の構成成分は種々の濃度で混合させ、10〜60mS/cmの間の好ましい範囲内の導電性を提供させることができる。このような電解液180の好ましい一例は以下の通りである:
65〜80%のDI水;
0.2〜0.6%の燐酸;
15〜30%のエチレングリコール;
3〜6%のしゅう酸;
2〜4%のホウ酸。
【0024】
図2Eを参照すると、カソード部材127は種々の方法で形成することができる。例えば、カソード部材127は貴金属で形成された合金層および金属塩の溶液からこの合金層表面に電気化学的に堆積された貴金属/ベースメタル電極部材層からなる金属基板から形成することができる。カソード180の1設計例は、Ti-Pd合金上に電気化学的に堆積されたPdおよびCuの混合物である。合金化基板に対するカソード180の付着強度を増大させるため、Pd-Cuの最初の平滑なフィルムを粘着層として電着させてもよい。ついで、この粘着層の上面に強靭な高表面積層を堆積させ、高キャパシタンスカソード180を達成させる。
【0025】
カソード180の金属基板はバルブ金属で形成してもよい。このようなバルブ金属の例は、タンタル、ニオブ、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、チタン又はこれらの合金である。この金属基板は任意の形状、構成のもの、例えば平面状、円筒状などであってよい。更に、この金属基板は任意の適当な形状の直線状のもの、あるいはコンデンサケース112,114の一部を表すものであってもよい。このようなカソード部材127の構造は高いカソードキャパシタンスをもたらし、これがコンデンサ100内に蓄えられたエネルギーを負荷に対して効率的に放出させるのを助けることになる。
【0026】
図3は植込み型除細動器(ICD)装置300の一例を示している。このICD装置300は
図1A〜
図1D又は
図2A〜
図2Eに示すコンデンサ100と、制御回路302とを有しており、この制御回路302はコンデンサ100のアノード端子124およびカソード端子182に電気的に接続されている。更に、ICD装置300は検出器304およびバッテリー306を有するものでもよい。コンデンサ100は、第1の端子124と第2の端子182との間に蓄えられたエネルギーの少なくとも80%(好ましくは87%を超える)のパルス送信を提供するよう構成されている。上記検出器304は患者の症状をモニターし、そのモニターしたデータを制御回路302に提供するようになっている。この検出器304は簡潔のため単一の部材として示されている。しかし、複数の検出器、モニター装置又は検出器リード線を制御回路302に供給して、この制御回路302に患者の症状を提供し得ることは当業者であれば理解し得るであろう。制御回路302は検出器からの情報をモニターし、異常又は危機的症状(これは1つ又はそれ以上の所定の閾値を超え他1又はそれ以上の所定のパラメータとして定義することができる)を検出したとき、電気ショックの放出を開始する。
【0027】
例示として、検出器304は患者の心臓内の電気的活動を検出し、得られたデータを制御回路302に送る。制御回路304がこの電気的活動をモニターし、もしもそれが或る電気的閾値より下に低下したとき、又はもしもこの電気的活動が不規則であった場合(不整脈で起こりえる)は、電気ショックの放出を開始する。
【0028】
バッテリー306はコンデンサ100を充電し、ICD装置300に電力を供給するのに用いられる。コンデンサ100に対する充電は、一定でよく(充電漏れの作用に対抗するため)、それによりコンデンサ100は常に即座の放電に備えられるようにしたり、あるいは充電を定期的としたり(すなわち、コンデンサ100の充電レベルを所定の閾値以上に保つため所定の間隔で充電する)、あるいは充電を要求時にし、異常の発生が検出されたときにバッテリー306を用いてコンデンサを充電する。
【0029】
ICD装置300の適用において、制御回路302が患者の異常又は危機的症状を検出したとき、コンデンサ100は患者の心臓に対し電気ショック療法の機能を実行する。コンデンサ100は所定電圧までの急速充電を提供することができ、その後、十分なエネルギーの1又はそれ以上のパルスを送信し患者の心臓の正常な機能を回復させる。
【0030】
図3に示すコンデンサ100は本質的に効率的であり、極めてコンパクトであり、ICD装置300内の制約された容積内にフィットするよう形づけることができる。1例として、コンデンサ100のサイズは1.5〜3.0ccであり、
図3に示すような半月形のものからなる。しかし、これは本発明を制限するものと考えてはならない。コンデンサ100は、それが植込まれるヒトによって要求される特定の形状にフィットするよう任意のサイズおよび形状に合わせることができるものと理解されるべきである。
【0031】
ICD装置300の適用をサポートするため、コンデンサ100は要求に応じて9Jの最小値を供給することができる(但し、12Jの大きいものをも供給することができる)。実際に放出されるエネルギー量は制御回路302により決定される。
【0032】
図4はコンデンサの製造方法400を示すフロー図である。この方法400は、ステップ410でアノードワイヤおよび貫通バレルを有するアノード部材を用意すること、ステップ420でカソード部材を用意すること、ステップ430で第1の開口部を有する第1のケース部を形成すること、ステップ440で第2の開口部を有する第2のケース部を形成し、これにより、これら第1および第2の開口部が該貫通バレルと合致するよう形づけられた開口部を形成すること、更に、該第1のケース部と該第2のケース部とを密封し前記アノードおよびカソード部材を囲繞するケースを形成することが含まれる。この際の密封には、第1および第2のケース部を溶接し、これらケースを密封することが含まれる。形成されたケースには電解液が少なくとも部分的に充填される。
【0033】
方法400には、第1の開口部にスロット部を形成し、該スロット部により貫通バレルを受理するようにすることが含まれる。方法400には、前記第1および第2の開口部にそれぞれ第1および第2の合わせ部を形成し、該第1および第2の合わせ部が前記貫通バレルと合致するようにすることが含まれる。方法400には、前記貫通バレルの外側面と合致するよう選択された半丸輪郭と半径を有する第1および第2の合わせ部を形成することが更に含まれる。更に、方法400には、第2のケース部に突起を形成し、前記の第2の合わせ部をこの突起内に形成するようにすることが含まれる。方法400には、保護ラップで前記アノード部材を少なくとも部分的に覆うようにすることが含まれる。
【0034】
以上、密封されたウエット型電解コンデンサについて説明した。しかし、本発明はここに示し、記載した特定の具体例に制限されるものではなく、コンデンサのサイズ、形状について種々の変形例、使用される物質の変形例、その他、当業者にとって自明な他の変形、代替、選択も本発明の考慮の範疇にあることを理解されるべきである。
【符号の説明】
【0035】
10 密封型コンデンサ
12 第1のケース部
14 第2のケース部
16 溶接
18 第1のケース端部
20 開口部
22 貫通バレル
24 アノードワイヤ
26 アノード部材
28 保護ラップ
30 ガラス絶縁体
32 ポリマークレードル
34 ギャップ
100 密封型コンデンサ
112 第1のケース部
114 第2のケース部
115 端部
116 溶接部
117 コンデンサケース
118 端部
122 貫通バレル
124 アノードワイヤ
126 アノード部材
127 カソード部材
128 保護ラップ
130 ガラス絶縁体
152 第1の開口部
154 第2の開口部
160 スロット部
162 第1の合わせ部
164 突起
166 第2の合わせ部
170 第1の深さ
172 第2の深さ
180 電解液
182 カソード端子
214 第2のケース部
215 ケース端部
254 開口部
266 第2の合わせ部
272 第2の深さ
300 植込み型除細動器(ICD)装置
302 制御回路
304 検出器
306 バッテリー