(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ又は複数の電極は、前記バルーンを前記組織に結合係合するように膨張させることによって半径方向外側に付勢されるように、アレイで配列されるとともに同バルーンの外面に取り付けられる複数の双極電極対を含む、請求項1に記載のカテーテル・システム。
【背景技術】
【0004】
医師は、身体の組織の内部、特に、血管などの身体管腔内にアクセスし、管腔内を修復するためにカテーテルを使用する。たとえば、アテローム動脈硬化性疾患によって狭隘化した動脈を開口させるために、バルーン血管形成カテーテルおよび他のカテーテルが使用されることが多い。
【0005】
バルーン血管形成は、閉塞した血管を開口させるときに有効であることが多いが、バルーン拡張に伴う傷害は、重大な損傷をもたらす可能性があるため、バルーン拡張の利益は時間的に制限される場合がある。ステントは、一般に、血管の有益な開口を延長させるのに使用される。
【0006】
バルーン拡張と連携したステント留置は、アテローム性動脈硬化症についての好ましい処理であることが多い。ステント留置では、折畳まれた金属枠体は、身体内に導入されるバルーン・カテーテル上に取り付けられる。ステントは、閉塞部位に入るよう操作され、下にあるバルーンの拡張によって所定場所で拡張する。ステント留置は、幅広く承認を得ており、また、多くの事例において一般的に許容可能な結果をもたらす。血管(特に、冠状動脈)の処置と共に、ステントは、また、生殖性閉塞、胃腸閉塞および肺閉塞の処置などの、身体内の多くの他の管状閉塞を処置するときに使用されることができる。
【0007】
ステント留置後の、再狭窄または身体管腔の事後狭隘化が、かなりの数の事例で起こっている。より最近では、薬剤コーティング・ステント(Johnson and Johnsonのサイファー(Cypher)(商標)ステント、シロリムス(Sirolimus)(商標)を含む関連薬剤など)は、著しく減少した再狭窄率を実証しており、他のステントは、開発中の、また、商業化されている代替の薬剤溶出ステントである。さらに、(経静脈的なまたは経口的な)全身薬剤送出に関する研究も始められており、手技的な血管形成の成功率を改善する可能性もある。
【0008】
薬剤溶出ステントは、多くの患者のアテローム性動脈硬化症の処置についてかなりの有望さを与えるように見えるが、ステントが、使用されることができないか、または、重大な欠点を呈する多くの事例が存在する。一般に、ステント留置は、身体内にインプラントを残す。こうしたインプラントは、特にインプラントの除去が難しくかつ侵襲的手術を含むときに、機械的疲労、腐食および同様なものを含むリスクを呈する可能性がある。ステント留置は、散在性動脈疾患を処置する場合、分岐部を処置する場合、押しつぶしを受け易い身体エリアを処置する場合、ならびに、ねじれ、伸張および短縮を受け易い動脈を処置する場合、さらなる欠点を有する場合がある。
【0009】
しばしば、バルーン血管形成および/またはステント留置と組み合わせて、脈管内放射、低温処置、超音波エネルギーおよび同様なものを含む、種々の修正再狭窄処置または再狭窄防止処置モダリティも提案されている。これらのまた異なる手法は、血管形成およびステント留置に続く血流の事後低下を低減することについて、いろいろな程度の有望さを示すが、血管形成によって組織に最初に課される傷害は問題のまま残っている。
【0010】
狭窄した動脈を開口させるための、ステント留置およびバルーン血管形成に対するいくつかの代替法も提案されている。たとえば、いろいろなアテローム切除デバイスおよび技法が開示され、試みられている。血管形成およびステント留置に欠点および制限があるにもかかわらず、アテローム切除は、拡張ベース手法の幅広い使用および成功率を獲得していない。より最近では、拡張のなおさらなる欠点が明らかになった。これらは、心筋梗塞または心臓発作を引き起こすことある物質を断裂させ、放出する可能性がある不安定プラークの存在を含む。
【0011】
上記に照らして、動脈組織に対する血管拡張を誘発し、身体の管腔をリモデリングするための方法およびシステムを提供することが有利であろう。極端な拡張の傷害に訴える必要なしに、身体管腔をリモデリングすることができる構造を提供しながら、かなりのコストまたは複雑さを回避すること、および、ステント留置に適さない血管および他の身体管腔の開口を可能にすることがさらに望ましいであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、プラークの負荷を軽減し、管腔血流を増加させ、プラーク塞栓受攻性を減少させるために、制御された量の熱エネルギーを用いて血管プラークに影響を及ぼすシステムおよび方法を提供する。非標的プラークを有する偏心疾患では、低温が使用されて、プラーク(「疾患組織(diseased tissue)」)と非疾患動脈組織(「健康組織(healthy tissue)」)の両方が同時に処置される場合がある。このシナリオでは、バルーン拡張によるリコイルまたは将来の血管収縮を低減するか、または、なくす熱治療が適用されなければならない。しかし、熱治療は、即座のコラーゲン萎縮および狭窄がない状態で、組織リモデリング、減量および安定化を促進するために、十分な熱擾乱も与えなければならない。平滑筋を47〜48℃に加熱することによって、平滑筋を実際に殺すかまたは焼灼することなく、平滑筋収縮が無力にされることができる。アクチンおよびミオシン蛋白質は変性するが、生命の酸化代謝酵素は元のまま残る。これは、管腔拡張を促進するか、または、最低でも、収縮(すなわち、急性狭心症発作に対する一因としてしばしばリンクされる血管形成バルーン拡張血管リコイルまたは血管攣(れん)縮)を妨げる可能性がある。同様に、熱エネルギーは、「熱的固定(thermal fixation)」を妨げるのに十分低くなければならない。この場合、組織は、所望の免疫系活性化組織減量を妨げるホルマリン固定と同様に「固定される(fixed)」。組織−温度作用に対する一般的な指針として、以下は、2〜10秒継続時間範囲内に入る相互関係のリストである。
42℃=蛋白質変性
41℃〜44℃=DNA感受性
43℃=自発性脱分極
45℃=ミトコンドリア分解
47.5℃=収縮性蛋白質分解
48℃=分極不能
50℃=血液細胞がアモルファス状になる
50℃=細胞内毒性
50℃=非可逆的細胞死
>50℃=腫瘍症
【0018】
非標的偏心疾患についての治療の場合、50℃未満の上記組織−温度作用はほとんどが有利になると推定されることができる。たとえ1秒間でも無線周波数(RF)エネルギーを用いて治療温度を誘発することは、周囲組織に熱拡散し続ける蓄積した「顕熱(sensible heat)」のために、継続時間の長い高温を有する組織温度をもたらす可能性がある。非可逆的細胞死温度は、先に示されるが、実際には、こうした作用を可能にする広範囲の温度を含む。これらの温度は、(y= ̄0.011x+55.01)の「直線当てはめ(line−fit)」アルゴリズムによって数学的に記述されることができ、ここで、y軸は温度(℃)であり、x軸は時間(秒)である。これは、1秒で55℃から始まり、1000秒で45℃に達する上述した傾斜を有する温度対時間の関係として非可逆的細胞死を実証する。55℃より高い温度では、細胞死についての時間は短すぎて有効に測定できず、45℃未満では、必要とされる時間は、長すぎて有用でなくなる。
【0019】
高温で起こるが、周囲の健康な組織に適用されることなく、わかっており、かつ、ターゲッティングされる疾患プラークにだけ適用されるべきである他の組織−温度作用が存在する。60℃を超える組織温度は、プラーク内での即座の組織減量を可能にするが、健康な血管を、狭窄させる、炭化させる、穿孔する、または、気化させる可能性がある。これらの組織−温度作用の例は
72℃〜86℃=タイプ1コラーゲン分解
85℃=血液凝固/凝集
82℃〜96℃=タイプ3コラーゲン分解
100℃=細胞内/間隙流体相変化−「ポッピング(popping)」
>100℃=組織乾燥
100℃〜200℃=組織グルコースが電極に付着する
>200℃=急速気化/細胞破裂(切断)、炭素化である。
【0020】
一部の脂肪は、51℃程度に低い温度で溶解し始め、一方、他の脂肪は、最高90℃の温度を必要とする。したがって、脂肪は全て、高温で溶解されることができるが、一部の脂肪は、低温治療で溶解しリモデリングされることができる。
【0021】
大きな脂質コアを囲む薄い線維性キャップを有するプラーク(不安定プラーク)は、約50〜55℃の温度に反応するはずであり、また、組織は、そのプラークを除去することなく、非可逆的に損傷されるはずである。その結果の免疫系反応は、食細胞組織減量および瘢痕組織発生であるはずである。理論的に、これは、血栓または急性心筋梗塞をもたらす、将来の断裂および結果としてのカスケード事象から不安定プラークを保護する可能性がある。この処置は、また、減量およびリモデリング・プロセスによって、適度に管腔を開口させる可能性を有する。
【0022】
熱ショック蛋白質は、熱ショック蛋白質(HSP)の活性化による熱治療後の組織減量において役割を担う場合がある。最初に、HSPは、ほとんどの生体細胞、すなわち、哺乳類、植物および酵母に存在する蛋白質である。HSPは、細胞の正常機能蛋白質が、正しいときに正しい場所にあることを確保するために、「シャペロン(chaperones)」のように作用することが多い。HSPの濃度は、熱さ、寒さまたは酸素不足などのストレスに応じて増加する可能性がある。HSPの存在の増加は、除去を必要とする病んだ細胞または壊死細胞についての免疫系に対する信号であり、したがって、熱処置後の組織減量において役割を担う可能性がある。
【0023】
本発明は、管腔を開口し、血流を増加させるために、部分的に閉塞した身体管腔または動脈に沿う物質をリモデリングするのに特に有用であることになる。本明細書で開示される、デバイス、システムおよび方法は、任意の身体管腔、たとえば、大腿動脈、膝窩動脈、冠状動脈および/または頚動脈などの動脈管腔において使用されてもよい。本開示は脈管系における技術の使用に焦点を当てるが、技術は、任意の管腔閉塞にも有用であろう。
本発明が使用されてもよい他の解剖学的構造は、食道、口キャビティ、鼻咽頭キャビティ、聴覚管および鼓室、脳の洞、動脈系、静脈系、心臓、喉頭、気管、気管支、胃、十二指腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、射精管、精管、尿道、子宮腔、膣管および頚管である。
【0024】
本明細書で述べる一部の実施形態が使用されて、適度のまたは標準的な拡張と組み合わされた適度の加熱によってアテローム動脈硬化性疾患を処置してもよい。(適度の加熱および拡張は以下で規定される。)たとえば、電極が上に配設されている血管形成バルーン・カテーテル構造は、任意選択で、標準的な非加熱式血管形成拡張圧より著しく低いことを可能にする場合がある拡張圧と組み合わされて、拡張前に、拡張中に、かつ/または、拡張後に血管壁に電位を印加しうる。10〜16標準大気圧のバルーン膨張圧が、たとえば、特定病変の標準的な血管形成拡張について適切である場合、適切な電位と組み合わせた修正拡張処置は、6標準大気圧以下、おそらく、1〜2標準大気圧程度に低い圧力で行われてもよい。適したバルーン・カテーテル・デバイスの一例は、「System for Inducing Desirable Temperature Effects on Body Tissue」という名称の2007年10月1日に出願された米国仮出願第60/976,733号に開示され、その全体の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
多くの実施形態では、血管の拡張前、拡張中、かつ/または、拡張後に付加される適度の加熱エネルギーは、合併症を低下させながら、拡張効果を増加させる可能性がある。一部の実施形態では、バルーンと一緒のこうした制御された加熱は、リコイルの減少を示し、インプラントの欠点を持たないステントに似た拡張の利益の少なくとも一部を提供することができる。外膜層の加熱を有害反応閾値未満に制限することによって、動脈を加熱する利益が高められてもよい(かつ/または、合併症が防止されてもよい)。内膜および/または中膜のこうした加熱は、約10秒未満の加熱時間(しばしば、3(またはさらに2)秒未満である)を使用して行われてもよい。
【0026】
本発明における組織のリモデリングは、電極対間の組織に対する、通常、RFエネルギー、マイクロ波エネルギーおよび/または超音波エネルギーの形態の、組織リモデリング・エネルギーの印加を用いて、リモデリング・ゾーンにおいて行われる。このエネルギーは、標的組織および/または側副組織の表面またはバルク温度を制限する、たとえば、不安定プラークの線維性キャップまたは動脈構造の内膜層の加熱を、次の通りにより具体的に述べられる、47℃と99℃との間のどこかの範囲内の最高温度に制限するように制御されることになる。この温度範囲は、2つのドーズ処置範囲、すなわち、50℃と65℃との間の低いまたは「適度の(gentle)」表面温度処置、および、65℃と99℃との間の範囲の高い表面温度処置に分割されてもよい。低温処置の意図は、バルク組織温度が、多くは、50℃〜55℃未満のままとなるように、50℃と65℃との間の表面温度を生成することであり、そのことが、偏心疾患において見出される健康組織を重篤に損傷しないことになる。意図される結果は、バルーン拡張によるリコイルを低減することである。この低温処置ドーズは、選択性を使用することなく、全ての組織について安全である。65℃と99℃との間の高い表面温度処置の意図は、疾患組織を萎縮させ、溶解させ、減量することである。意図される結果は、プラークの負担を低下させ、溶解させることである。この高温処置ドーズは、処置部位の選択性が利用可能であるときに使用されることが意図されるだけである。
【0027】
他の組織(内膜層または線維性キャップなど)の加熱を防止しながら、脂質プールの溶解を誘発するのに十分になるよう、約50℃〜約65℃の範囲の表面温度に、不安定プラークの脂質に富むプールの加熱を制限することは、普通なら再狭窄または同様なものをもたらす可能性がある免疫反応を最小にする、または、防止する場合があり、また、処置に対する組織の治癒反応によって、処置中に、処置直後に、かつ/または、処置後、1時間以上して、1日以上して、1週間以上して、または、さらに1カ月以上して、蛋白質結合を変性させ、破壊するのに十分であり、それにより、より大きな血管管腔がもたらされ、血流が改善される場合がある。
【0028】
組織の表面温度を、約50℃〜約65℃の範囲に保つために、リモデリング・ゾーン(電極対間の組織)に留まるように較正される電力と時間の組合せを使用して、リモデリング・ゾーンに電力が印加される。
図1は、死体の大動脈に関して行われた試験の一部の結果を示し、時間に対して達成される種々の電極エネルギー設定および表面温度を示す。0.5秒と10秒との間について1ワットと5ワットとの間に平均電力があることによって、達した表面温度は、50℃と65℃との間であった。サンプル・ドーズは、以下の表1に示される。
【0030】
図2は、システムのコンピュータ・シミュレーションの時間対温度曲線を示し、ベンチ・トップ・データ(
図1に示す)とFEAコンピュータ・モデルとの間の強い相関を示す。高い電力設定は、低い電力設定に比べてより強い相関を示す。これは、2Dモデルに長手方向熱移動が存在しないこと、および、
図2のコンピュータ・シミュレーションに同様に含まれていないバイオクーリング作用によるものと思われる。両方のモードは、低電力設定で大きな冷却作用を有するであろう。それでも、FEAモデルとベンチ・トップ実験との間の相関は非常に良好である。
【0031】
本明細書で述べる方法およびシステムは、組織タイプがわかっていても、または、わかっていなくても達成され、また、求心性と偏心性の両方のアテローム性動脈硬化症の処置に使用される可能性がある。アテローム性動脈硬化症は、事例の50%以上にわたって、おそらく、75%程度の(または、さらにそれ以上の)事例で血管の軸に対して偏心している場合があるため、この非選択性処置は特に有利である。本発明は、さらに、組織特性の差を利用してもよい。1つの組織は、別のタイプの組織に比べてより良好な熱伝導率(k)を有する場合、より急速に熱を取り去ることになる。1つの組織が、別のタイプの組織に比べて低い比熱容量(c
p)を有する場合、同じ量のエネルギーが同じ質量(また、(相対的に類似の組織密度を仮定すると)容積)に印加される場合、その温度はより増大することになる。1つのタイプの組織は、密な脈管系を有するか、または、十分に灌流されたエリアに確実に非常に近い場合、より急速に熱を取り去ることになる。
【0032】
本発明は、以下の特性、すなわち、相対的に乏しい(低い)熱伝導性、低い比熱容量、乏しい生得の血液灌流および/または十分に灌流されたエリアから離れた相対的に長い距離の1つまたは複数を有するタイプの組織を優先的に加熱することを可能にする。非常に重要なことには、本発明は、異なる組織のロケーションを知ることなく優先的な加熱が達成されることを可能にする。
【0033】
動脈疾患の場合、上記特性は全て当てはまる。疾患は、一般に、脂質性の脂肪に似た疾患組織および/または線維性のコラーゲンに似た組織からなる。両方とも、健康な脈管組織と比べて低い比熱容量および低い伝導率を有する。健康な脈管組織は、また、微小脈管を有し、また、十分に灌流された組織に非常に近く、したがって、健康組織はより効率的に熱を取り去ることができる。
【0034】
非選択的処置の1つの利点は、疾患組織と健康組織との生得の差、たとえば、「熱慣性(thermal inertia)」および灌流のために、エネルギーが、所望のタイプの組織内に優先的に/選択的に蓄積することである。
【0035】
「熱慣性」は、岩の温度が経時的にどのように変化するかを記述するために、地質学で主に使用される概念である。高い熱慣性を有する物質は、加熱し冷却するのに長く時間がかかり、また、その逆である。量は、また、「熱浸透率(thermal effusivity)」として知られており、(k ρ c
p)
1/2として定義される。ここで、kは固有熱伝導率であり、c
pは比熱容量であり、ρは質量密度である。
【0036】
この同じ概念は組織に当てはめられてもよい。疾患のある動脈組織は、健康な動脈組織と比較して、低いk、c
pおよびρを有する。したがって、3つ全ての量が低い場合、熱慣性は、疾患組織、特に、脂肪質不安定プラークについてかなり低い(表2を参照されたい)。
【0038】
健康な動脈組織(たとえば、内膜および外膜)と疾患組織(たとえば、不安定プラーク)との間の熱慣性の差はかなりのものである、すなわち、約2倍の開きがある。
【0039】
この熱「慣性」の概念は、「熱時定数(thermal time constant)」として考えられることもできる。「熱時定数」という用語は、等価的なRC回路の時定数に由来する。RC回路、抵抗器とコンデンサを直列に有する回路は、貯蔵されるエネルギー・チャージと消散モード(電流を熱に変える抵抗器)を有する回路である。組織に関する例は類似の例である。
【0040】
伝導がそこを通して起こるおおよその寸法と共に、物質の固有熱抵抗率を使用して熱抵抗が計算される場合、おおよそのR値が計算されることができる。静電容量は、貯蔵されるエネルギーであり、比熱容量とおおよその容積または質量を使用して計算されることもできる。これは、物質の熱伝導率、比熱容量および密度に正比例する値(秒単位)を与える。そして、組織特性が変動している間、寸法は一定に保たれることができるため、この値は、どんな正確な寸法が仮定されるかを心配することなく、特性の2つのセット間で相対的に比較されることができる。
【0041】
熱慣性公式は、物理的寸法を全く仮定しないことを除いて同じである。したがって、熱慣性公式は、「固有(specific)」熱慣性−幾何形状と共に変動しない熱慣性である。熱慣性から「熱時定数」を得るために、熱慣性項を2乗し、熱伝導経路について指定された容積および寸法において乗算することが必要になる。これらの初期近似は、健康組織および疾患のある動脈組織が、それぞれ、7秒および14秒の熱時定数を有することを示した。
【0042】
異なる組織自体の熱特性における利点に加えて、健康な脈管組織は、また、さらなる微小脈管を有し、また、十分に灌流された組織に非常に近く、したがって、健康組織はより迅速に熱を取り去ることができる。健康な動脈組織と疾患のある動脈組織との間の脈管灌流の差は、表3に示され、その作用は、方程式1および2に示す、Pennesによる生物学的熱移動方程式によって定量化される。
【0044】
【数1】
q
p=−ω
bρ
bc
bρ(T−T
a)
方程式2:血液灌流項
【0045】
血液灌流ωは、健康組織よりおよそ7倍大きい。そして、組織は、43℃などのわずかに高い温度に達すると、拡張し、血流をさらに改善することになる。これは、健康組織が、速く熱を消散させることができるようにするさらなる利益である。
【0046】
この技術の考えられる利点を評価するために、いくつかのモデルが作られた。加熱パラメータ(電力対時間、考えられるPWMの包含など)を最適化するために、さらなる研究が行われる場合がある。そして、モデルはどれも、血液灌流からの冷却を含まない。一方、これらのモデルは、最適化なしで明確な利点を示す。電力が、デューティ・サイクルまたはオン時間とオフ時間の比と呼ばれるレートでオン/オフされるパルス幅変調(PWM)。これは、過剰加熱の可能性を減少させ、より制御された投与レートを可能にする可能性がある。
【0047】
FEAモデル構成は
図3および4に示される。
図5は、健康組織への30秒間の0.5ワットの処置電力を示す(ピーク=51℃)。
図6は、不安定プラークへの30秒間の0.5ワットの処置電力0.5ワットを示す(ピーク=61℃)。健康組織と不安定プラークとの温度差が見られることができる。ピーク温度の差は10℃である。このことは、同じエネルギーで加熱される組織の容積は、健康組織よりも疾患組織においてより高い温度に達することを示す。
【0048】
これらのモデルは、冷却または灌流の差を適切に利用せず、加熱の差だけを利用することに留意されたい。3Dモデルでは、健康組織の高い熱伝導率の作用は、動脈の長手方向への損失の増加によって増幅されるべきである。
【0049】
この技術の別の重要な態様は、時間と温度との関係および時間と温度との関係が細胞死にどのように影響を及ぼすかである。発見された時間−温度関係は、一般的なルールとして、温度の1℃の増加ごとに、細胞死を引き起こすのに必要とされる時間量は半分になるように指数関数的である。たとえば、45℃では、細胞死を引き起こすのにおよそ1000秒を必要とすることになる。55℃では、1秒かかるだけである。したがって、10℃熱いという差は、実際には、1000倍効果的である。
【0050】
従来技術との区別 サーマル・バルーンを使用するときに本発明と従来の試みとの間で行われる重要な区別が存在する。本発明は、離散的なドーズで局在化方式で投与され、エネルギーは、サーマル・バルーンなどによって、単に表面に印加されるのではなく、組織内で生成される。本明細書で説明するように、本発明は、動脈疾患(脂肪)の絶縁特性を、欠点ではなく利点として使用する。サーマル・バルーン血管形成術における従来の試みは、熱を絶縁体(伝導率が低い脂肪)内に優先的に押し込もうとしたために失敗した。疾患内に熱伝導させる代わりに、従来のサーマル・バルーンによって投与される熱は、無差別にまたは優先的に健康組織内に伝導された。
【0051】
本発明は、ステント留置と組み合わせて、かつ/または、ステント内再狭窄を処置するために使用することができるが、血管の開口径を増加させることに特によく適しており、そこでは、ステント留置が実行可能なオプションでない。潜在的な用途は、アテローム性動脈硬化症が、1つのエリアに局在化するのではなく、動脈のかなりの長さに沿って広がる散在性疾患の処置を含む。本発明は、また、ステントが、多くの血管の急激な屈曲内に進められるか、または、急激な屈曲内で拡張される必要が全くないため、急激に湾曲した曲がった血管の処置について有利な使用を見出す場合がある。なおさらなる有利な用途は、(側面分枝閉塞が問題になる場合がある)分岐部に沿う処置、および、(破砕および/またはステント破損故障が問題になる場合がある)脚、足、腕、首、腹などの体肢における処置を含む。
【0052】
散在性疾患および不安定プラークは、それぞれ、
図7Aおよび7Bに示される。
図7Cは脈管屈曲度を示す。
図7Dは、分岐部におけるアテローム硬化性物質を示す。
【0053】
動脈解離および再狭窄は、
図7E〜7Gを参照して理解されてもよい。動脈は、3つの層、すなわち、内皮層、中膜層および外膜層を備える。従来の血管形成中に、内側層は、壁から部分的に剥離するか、または、離脱して、
図7Eに示すように解離を形成する可能性がある。こうした解離は、分かれ、血流を妨げる場合がある。
図7Fと7Gを比較することによって理解されることができるように、従来の血管形成術は、血管の組織を損傷する可能性がある比較的攻撃的な手技である。この損傷に応じて、ステントなどの異物の存在に応じて、かつ/または、元々のアテローム動脈硬化性疾患の進行が継続することに応じて、開口した動脈は、
図7Gに示すように、再狭窄するか、または、その後、径が減少する可能性がある。薬剤溶出ステントは、再狭窄を減少させることが示されているが、埋め込み後数年経ってからの、これらの新しい構造の有効性は、十分に調査されておらず、こうした薬剤溶出ステントは、多くの血管において適用可能でない。
【0054】
図7E〜7Gに示すような従来の血管形成術に伴う問題の一部を回避するために、本発明は、カテーテル・システムを使用して動脈組織をリモデリングする方法を開示し、カテーテル・システムは、中程度の熱を使用して、組織表面に約50℃と65℃との範囲の温度をもたらし、それにより、組織を適度にリモデリングし、動脈が開口することを可能にすることができる。方法は、第1の圧力で動脈管腔内でカテーテル・バルーンを拡張することを含み、拡張することによって、バルーンが動脈組織に接触する。バルーンが動脈組織に接触すると、複数の電極が動脈組織に結合して、動脈組織内に複数のリモデリング・ゾーンを画定する。複数の電極対は、その後、関連する所望の量の双極組織リモデリング・エネルギーで駆動されて、関連する所望の組織リモデリング・エネルギーで複数のリモデリング・ゾーンのそれぞれを加熱し、リモデリング・エネルギーは、筋肉収縮を回避し、かつ、管腔の短期と長期の両方の閉塞を防止するよう構成される。
【0055】
一部の事例では、組織シグネチャおよび/またはシグネチャ・プロファイルが人によって異なる場合があるため、隣接組織を弁別するのに役立つために、処置される組織のベースライン測定(脈管内超音波、光干渉断層撮影または同様なものによって特徴付けられる場合がある)を得ることが望ましい場合がある。さらに、組織シグネチャおよび/またはシグネチャ・プロファイル曲線は、異なる組織間の関連する傾斜、オフセットおよび同様なものの識別を容易にするために正規化されてもよい。その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Tuned RF Energy And Electrical Tissue Characterization For Selective Treatment Of Target Tissues」という名称の米国特許出願第60/852,787号および2007年4月4日に出願された「Tuned RF Energy And Electrical Tissue Characterization For Selective Treatment Of Target Tissues」という名称の米国仮出願第60/921,973号に開示される技法のうちの任意の技法が、本発明と組み合わされてもよい。
【0056】
本発明で使用するためのカテーテル・システムの一実施形態は、
図8に示され、血管形成バルーンの外側に取り付けられた電気接点を有する血管形成カテーテルを含む。無線周波数コントローラ、発生器または電力源および接続ケーブルは、カテーテルにエネルギーを供給する。カテーテルは、長さがおよそ135cmであり、まずは人の大腿動脈および膝窩動脈の最も一般的なサイズに対処するために3.0mm、4.0mm、5.0mmおよび6.0mmのバルーン径ではじめに設けられる。カテーテルは、動脈プラークを変成させ(modify)、プラーク負担を減少させるように意図された機械的エネルギーおよび輻射エネルギーを使用し、より大きな動脈管腔をもたらす。発生する温度は低く、総適用時間は、今日実施されるほとんどの血管形成手技と比べて短い。カテーテル・デバイスは、標準的な血管形成術機器と互換性があり、それにより、従来の血管形成技法を使用して、対側性または同側性の一般的な手法によって下肢脈管系のアクセスを可能にする。
【0057】
図8は、動脈組織に対して所望の温度作用を誘発するカテーテル・システム10の一実施形態を示す。カテーテル・システム10は、近位端16および遠位端18を有するカテーテル本体14を有するバルーン・カテーテル12を含む。カテーテル本体14は、可撓性があり、カテーテル軸15を規定し、ガイドワイヤ管腔および膨張管腔など1つまたは複数の管腔を含んでもよい。所望である場合、なおさらなる管腔が、灌流、流体送出、撮像または同様なものなどの他の処置または用途のために設けられてもよい。カテーテル12は、膨張可能バルーン20を含む。ハウジング29は、ガイドワイヤ管腔22に連通する第1コネクタ26および膨張管腔24に流体連通する第2コネクタ28を含む。膨張管腔22は、バルーン20と第2コネクタ28との間に延在する。第1と第2の両方のコネクタ26、28は、任意選択で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを備えてもよい。ハウジング29は、また、導体36を介して電極34に電気結合される電気コネクタ38を収容する。これは、電極34が容易に駆動されることを可能にし、電極は、コントローラ40、および、双極または単極RFエネルギー源、マイクロ波エネルギー源、超音波エネルギー源または他の適したエネルギー源などの電力源42によって駆動されることが多い。一実施形態では、電気コネクタ38は、コントローラ40を介してRF発生器に結合され、コントローラ40は、エネルギーが電極38に選択的に送られることを可能にする。単極RFエネルギーが使用されると患者グラウンドは、(たとえば)外部電極またはカテーテル本体14上の電極によって提供されてもよい。
【0058】
電極34は、バルーン20の表面上に取り付けられ、関連する導体36は、電極から近位に延在する。電極34は、バルーン20上で多くの異なるパターンまたはアレイで配列されてもよい。システムは、エネルギーの単極または双極印加のために使用されてもよい。単極エネルギーの送出の場合、グラウンド電極パッドなどのグラウンド電極が、カテーテル軸上か、または、患者の皮膚上で使用される。双極エネルギーの送出の場合、隣接する電極を円周の周りに離間して、隣接する電極間に双極エネルギーを導くことが可能になる。他の実施形態では、電極をバルーンの周りでバンドで配列して、遠位電極と近位電極との間に双極エネルギーを導くことを可能にすることができる。
【0059】
図9は、疾患組織の双極処置を概略的に示す。電極対34Aおよび34Bを有するバルーン20は、脂肪質疾患/壊死性コア48、線維性疾患/線維性キャップ44、健康組織45を有する動脈管腔内に位置決めされる。処置は、対34Aと34Bとの間で双極エネルギーを使用することによって、健康組織45、脂肪質疾患/壊死性コア48および線維性疾患/線維性キャップ44に対して行われる。電極対は、バルーン上の任意の電極対であってよく、たとえば、一部の実施形態では、電極対は、34Aと34Cまたは34Aと34Dまたは、34A〜34Dの任意の組合せであってよい。この配置構成は、電極対間で特定の深さに容積を有する、電極対間の動脈組織に対する特定の処置ゾーンまたはセグメント52(「リモデリング・ゾーン」)にエネルギーまたは熱(「組織リモデリング・エネルギー)を送出する、組織を通るエネルギー経路50を生成する。電極対の異なる組合せを使用することは、オーバラップする対を使用することによって、リモデリング・ゾーン間のギャップを減少させるか、または、なくす場合がある。双極エネルギーで電極対を使用することは、単極手法の考えられる一部の問題を回避する可能性がある。疾患動脈組織48は、健康動脈組織に比べて高い電気抵抗率を有する。双極システムにおいて電極対34A、34Bを使用することによって、組織リモデリング・エネルギーは、リモデリング・ゾーン内において電極対間で、健康組織、疾患組織または健康組織と疾患組織の両方の組合せを通過することになる。任意の数の電極対が、異なるパターンまたはアレイで使用されて、多数のリモデリング・ゾーンを生成してもよい。コントローラは、どれが最も大きな利点を有するとしても、定電力、定電流または定電圧を適用してもよい。
【0060】
図10は、疾患組織の単極処置に使用するためのバルーン・カテーテル・システムの一実施形態を示す。電極対34Aおよび34Bを有するバルーン20は、脂肪質疾患/壊死性コア48、線維性疾患/線維性キャップ44、健康組織45を有する動脈管腔内に位置決めされ、患者の皮膚上に位置決めされるような1つまたは複数の電気グラウンドが使用される。動脈管腔の円周の周りに配列した複数の単極電極34に電力が印加されると、エネルギー54は、動脈壁を通って半径方向外側に送られ、疾患動脈組織と健康動脈組織の両方を処置する。
【0061】
加熱によって動脈組織をリモデリングするためのカテーテル・システム10の使用は、
図11A〜11Cを参照して理解されることができる。
図11Aに見られるように、処置部位のアクセスは、しばしば、血管58内で疾患組織48の標的領域にガイドワイヤ56を進めることを含むことになる。バルーン20の位置特定は、X線不透過性マーカによって、X線不透過性構造のバルーン20(または、バルーン20上に、または、バルーン20に隣接して設置された対応するX線不透過性マーカ)によって、かつ/または、X線不透過性電極34の使用によって容易にされてもよい。ガイドワイヤ56は蛍光透視鏡による(または他の)撮像のもとで位置決めすることができる。
【0062】
カテーテル12は、ガイドワイヤ56上を遠位に進められ、アテローム硬化性物質48に隣接して位置決めされる。バルーン20は、血管の管腔内で半径方向に拡張するため、電極34または電極34Aおよび34Bは、動脈組織に半径方向に係合する。疾患組織48はカテーテル12を中心にして偏心して分布する可能性があるため、電極34は、
図9および10を参照して理解されることができるように、疾患組織48、健康組織60または両方の組織の組合せに係合してもよい。
【0063】
先に説明したように、電極34は、バルーン20の周りに円周方向に位置決めされる。
RFエネルギーなどのエネルギーは、電極34または隣接する電極対34Aおよび34Bに送られ、疾患組織48と健康組織60の両方を処置する。コントローラ40は、1〜180秒間、約0.25〜5ワットの平均電力で、または、約4〜45ジュールで電極を駆動してもよい。高いエネルギーの処置は、90秒間0.5ワットまたは180秒間0.25ワットなどの長い継続時間でかつ低い電力で行われる。2〜4ワット範囲のほとんどの処置は、1〜4秒で実施される。広い電極間隔を使用すると、処置の電力および継続時間をスケールアップするのに適切であることになり、その場合、平均電力は5ワットより大きく、総エネルギーは45ジュールを超える可能性がある。同様に、短い、または、小さい電極対を使用することは、平均電力をスケールダウンすることを必要とすることになり、総エネルギーは4ジュール未満になる可能性がある。電力および継続時間は、重篤な損傷を引き起こすのに十分でないよう、特に、血管内の疾患組織48を焼灼するのに十分でないように較正される。血管内のアテローム硬化性物質を焼灼するメカニズムは、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、Slager等によって、「Vaporization of Atherosclerotic Plaque by Spark Erosion」(J.of Amer.Cardiol.,pp.1382−6,1985年6月)という名称の論文において、また、Stephen M.Fryによって、「Thermal and Disruptive Angioplasty:a Physician’s Guide」(Strategic Business Development,Inc.,1990年)において申し分なく記載されている。
【0064】
ここで
図11Cを参照すると、上述したように、バルーン20は、加熱を動脈管腔の開口と組み合わせる血管形成バルーンであってよい。一部の実施形態では、駆動された電極または他のエネルギー放出面によってアテローム硬化性物質に対して引き起こされる損傷が、損傷された組織病変のその後の吸収をもたらし、それにより、治癒プロセスの一部として、処置の終了後に血管のさらなる開口をもたらす場合がある。
【0065】
一部の実施形態では、バルーン20は、繰返し収縮してもよく、カテーテル12の軸方向移動が使用されて、バルーン20が再位置決めされ、疾患組織に沿う複数の処置ロケーションのそれぞれにおいてバルーン20がその後拡張される。
【0066】
組織の周波数ターゲッティングは
図12に示される。異なる組織タイプは、異なる特性電気インピーダンスを有し、異なる特性電気インピーダンスによって、組織は、他の組織と比べて、特定の周波数または周波数範囲のエネルギーをより容易に吸収する。組織がより伝導性が高い特定の周波数または周波数範囲のエネルギーを印加することによって、エネルギーは、より容易に組織に浸透する。一般に、疾患組織のサンプルは、健康組織のサンプルに比べて高いインピーダンス特性を示すことが示された。
図12に示すように、組織78の疾患エリアが比較的健康な組織80によって囲まれる場合、健康組織は、健康組織のインピーダンスが低いために、疾患組織を電流から遮蔽する可能性がある。そのため、双極電流が電極34Aと34Bとの間で伝送されると、最小の(または、所望より少ない)電流82が疾患組織78を通過し、大きな電流84は、インピーダンスが低い健康組織80において見られる場合がある。通常、組織インピーダンスが有用な程度に変動する周波数範囲は、30キロヘルツと30メガヘルツとの間で起こる。
【0067】
周波数ターゲッティングは、疾患組織のインピーダンスが健康組織のインピーダンス以下になる周波数または周波数範囲を決定することによって、たとえば、閾周波数における、または、閾周波数未満の動作によって、疾患組織に対してより多くのエネルギーを送出しようとする。特定の周波数または周波数範囲で送出されるエネルギーは、特定の周波数以外で送出されるエネルギーに比べて疾患組織においてより多くの熱を消散させることになる。
【0068】
図13〜17Bは、動物の調査において行われた試験の組織学的結果を示す。
図13は、7日目における8秒間の1ワットの印加を示し、ベンチ・トップ試験において50℃の最高表面温度があり、挿入された矢印の部位において平滑筋の中程度の短縮を示す。
図14は、8日目における2秒間の2ワットの印加を示し、ベンチ・トップ試験において同様に50℃の最高表面温度があった。
図15A、15Bは、7日目における1秒間の4ワットの印加を示し、
図15Cは、30日目における1秒間の4ワットの印加を示す。各電極に対応する明らかな熱印加(黒矢印)が存在する。血管壁のコラーゲン・エリアの一部に対して熱変化があるようにも見える。これは、60℃をほんのわずかに超えたバルク組織温度を示唆する。
図16A、16Bは、7日目における4秒間の2ワットの印加を示し、
図16Cは、30日目における4秒間の2ワットの印加を示す。スライドは、各電極−組織界面における熱治療を示す(黒矢印は処置ゾーンの縁を示す)。コラーゲン・エリア内の深いところの対応する熱作用および組織萎縮の大まかな観測結果も存在する。図は、また、同様にコラーゲン変性をもたらした、処置ゾーンの中間における組織内へのある程度の熱拡散を示す。これは、電極の下の熱堆積の局所エリアが70℃以上に達したことを示す。もちろん、電極の中間で、電極から離れて半径方向に傾斜する、また、脈管および周囲組織の深いところの温度勾配が存在する。
図17Aは、7日目における2秒間の3ワットの印加を示し、
図17Bは、30日目における2秒間の3ワットの印加を示す。
【0069】
図18A〜18Gは、長さが5cmで遠位端に閉塞を有する、新しく切除されたヒトの膝窩動脈に関して行われたベンチ・トップ試験の一部の結果を示す。動脈は、
図18Aおよび18Bに示すように、フロー・タンク内に接続され、その後、全動脈の処置前ベースラインIVUSスキャンを受けて、処置のための適した病変部を位置特定された。それぞれ、2.2mmおよび2.4mmの最小および最大管腔径を有する4.5mm
2の管腔面積、ならびに、それぞれ、5.8mmおよび6.8mmの最小および最大径を有する32.7mm
2の固有血管面積を有する部位が選択された。
【0070】
この実験の場合、動脈組織に対して所望の温度作用を誘発するための、4mmバルーンを有するカテーテル・システムが使用された。カテーテルは、動脈内に挿入され、所望のロケーションに達し、6標準大気圧まで膨張させられた。処置が実施され、カテーテルは、収縮され、動脈から除去された。処置は、2秒間、4ワットで適用された。
図18Cおよび18Dに示すように、全動脈の処置後スキャンがその後実施され、それぞれ、4.6mmおよび5.5mmの最小および最大径を有する20.5mm
2への管腔面積の増加、ならびに、それぞれ、6.5mmおよび7.3mmの最小および最大径を有する37.2mm
2への血管面積の増加を示した。これが、ベンチ・トップ調査でなく臨床状況であった場合、6mmバルーンが、固有血管径によりよく一致する(match)ために実施され、より大きな管腔開口をもたらすであろう。
【0071】
処置に続いて、動脈は、
図18E〜18Gに示すように、染色され、ホルマリンに固定され、切断され、写真撮影された。
図18Eは、処理エリアに対して近位に切取ったコントロール断面である。
図18Fおよび18Gは、それぞれ、処置エリア内の約4mmおよび8mmのところの処理エリアの断面であり、処置、TTC染色および固定後の切断された動脈の画像を示す。
【0072】
ここで
図19を参照すると、標的組織の所望の加熱をもたらし、かつ/または、側副組織に対する加熱を制限するための適した電力範囲は、少なくとも部分的に、電極(または他のエネルギー伝送面)にエネルギーが印加される時間、幾何形状および同様なものに依存する可能性がある。最初に、電極を用いて組織に対して本明細書で述べる処置を適用するとき、特に、本明細書で述べる範囲内の電力を印加するとき、所望の範囲以外の電圧および/または電流を印加しなければならないことを回避するための、回路内の組織の好ましい負荷インピーダンス範囲が存在してもよい。適した負荷インピーダンス範囲は、一般に約20オーム〜約4500オームの範囲内にあり、より典型的には、約40オーム〜約2250オームの範囲内にあり、好ましくは、約50オーム〜約1000オームの範囲内にあるであろう。
【0073】
回路内の組織の負荷インピーダンスは、組織の特性に、また、同様に(たとえば)、電極の幾何形状が、回路内に有効に含まれる組織の幾何形状に影響を及ぼすため、組織に係合する双極電極対の幾何形状に依存する可能性がある。エネルギーが送られる先の組織は、約0.2シーメンス/メートル〜約0.5シーメンス/メートルの範囲の電気伝導率を有してもよい。異なるタイプの疾患組織は、異なる範囲の電気伝導率を有する場合があり、あるタイプの疾患組織は、約0.2シーメンス/メートル〜約0.35シーメンス/メートルの範囲の電気伝導率を有し、一方、他のタイプの疾患組織は、約0.35シーメンス/メートル〜約0.5シーメンス/メートルの範囲内に入る。電極対間の間隔および(間隔を横切る)電極の長さは、共に、負荷インピーダンスに影響を及ぼすことになり、ほとんどの実施形態は、0.25mmと2.50mmとの間の電極対間隔(隣接する縁から縁までの)を有し、例示的な実施形態は、0.50mmと2.00mmとの間の電極対間隔を有し、好ましい実施形態は、0.75mmと1.50mmとの間の電極対間隔を有する。
【0074】
特定の対内の電極の長さおよび間隔に関して、これらの因子は電力およびインピーダンスに相互に関連する。電極の長さが減少するにつれて、発生器によって見られるインピーダンスは増加する(go up)が、組織の容積が減少することになるため、発生器に関する電力設定は減少する場合がある。電極間のギャップが広くなるにつれて、発生器によって見られるインピーダンスは同様に増加するが、組織の容積も増加することになるため、発生器に関する電力設定は増加する場合がある。そのため、電極長さおよび電極間隔を減少させると、負荷インピーダンスに対するおよそ反対の作用が存在する。
【0075】
所望の電力、エネルギーおよび処置時間は、同様に、相互関連しており、同様に、少なくとも電極幾何形状に関連する場合がある。非常に一般的に言うと、長い期間にわたって印加される低電力の処置は、比較的高い総エネルギーによる処置をもたらす傾向があり、一方、短い期間にわたる高い電力の処置は、低いエネルギーの処置をもたらす傾向がある。より具体的には、比較的低い平均電力(1W以下)では、処置当たりの総エネルギー送出は8〜45ジュールの範囲にある場合がある。高い(1Wを超える)電力では、処置当たりの総エネルギー送出は4〜15ジュールの範囲にある場合がある。電極間隔が2倍になると、電力は4倍増加する場合がある。組織内に伝送される電力は、しばしば電力およびエネルギー密度を所望の範囲内に維持するために、特定の電極構成に対して較正され、スケーリングされることができる。例示的な電力範囲は、たとえば、約1〜5ワットであってよい。継続時間は、低い電力設定の場合に長く、通常、約1秒から8秒まで変動する。10秒よりずっと長い継続時間を使用して、1W未満の非常に低い電力設定も可能である。
【0076】
電極構成を変更することによって、電力設定を大幅にスケーリングすることも可能である。たとえば、電極の内側の縁から縁までの間隔が2倍になる場合、組織の容積がおよそ4倍になるため、およそ4倍の電力が印加されてもよい。したがって、本明細書で述べる例示的な実施形態と多少異なる電極構成は、およそ4〜20ワットの電力範囲内で使用される可能性がある。電極を短縮すること、そのため、リモデリング・ゾーンの容積を短縮し、減少させることは、また、組織容積に印加するのに適切である電力の大きさに影響を及ぼすであろう。
【0077】
依然として
図19を参照すると、この複雑な関係のセットを定量化し、例示的な処置デバイスが動作することができる空間を境界付けるために、これらのパラメータのいくつかの安全値の間の経験的な関係が、生成され、かつ、グラフで、表形態で、または、数学的関係によって提供されてもよい。特に有利な関係を記述する例示的な式は、
電力=b*x
2*L*(t
(-0.59))
である。式中、bは0.2〜0.6の範囲のパラメータであり、xは電極の内側の縁から縁までの間隔(ミリメートル単位)であり、Lは電極の長さ(ミリメートル単位)(また、同様に、リモデリング・ゾーンの近似の長さ)であり、電力はワット単位であり、tは時間(秒単位)である。bは、ワット/(mm
3)*(秒
0.59)の単位を有する。この式で記述される範囲の例示的な処置は、本明細書で述べる例示的な電極幾何形状を用いて、2秒間で4ワット、3秒間で3ワット、4秒間で2ワットおよび12秒間で1ワットなどの処置を含む。さらに、180秒間で0.25ワットなどの長い継続時間で非常に低い電力の処置もカバーされる。代替の適した処置範囲は、電極寸法による最大電力および時間についてのおよその数値を示す
図19に示す曲線のセット内か、または、それの近くになる。なおさらなる代替の処置パラメータ値は、表4を参照して理解されることができ、表4は、少数の異なる電極対幾何形状についての電力と時間の異なる組合せについての総エネルギーを示す。
【0079】
組織を特徴付け、かつ/または、処置するエネルギーおよび電力は比較的低いため、電力源は、任意選択で、電池に貯蔵されたエネルギーを利用してもよく、電力源および/または関連するコントローラは、任意選択で、手持ち式ハウジング内に含まれる。こうした電池で動くシステムの使用は、混雑した手術室内で利益がある場合があり、また、不注意の過剰処置を回避するのに役立つ場合がある。電池は、1回使用カテーテルを有するキット内に含まれるのに適した使い捨て構造であってよく、一方、プロセッサ回路は再使用可能であってよい。他の実施形態では、電池は充電式であってよい。
【0080】
アテローム硬化性物質のリモデリングは、アテローム硬化性プラークおよび他のプラークの萎縮、溶解および同様なものを含んでもよい。動脈層内のアテローム硬化性物質は変性し、溶解する場合があり、かつ/または、処置は、血流を改善するために、動脈層内でのアテローム硬化性物質の萎縮を含んでもよい。本発明は、また、偏心病変を含む場合がある、不安定プラークまたは不安定プラークが問題となる血管の処置にとって特定の利点を提供する場合がある。本発明は、また、(キャップの肥厚化を誘発し、破裂に対するプラークの受攻性を低くするための)キャップ構造の中程度の加熱および/または(脂質に富むプールをリモデリングし、変性させ、溶解し、萎縮させ、かつ/または、再分配するための)不安定プラークの脂質に富むプールの加熱のための応用範囲を見出すであろう。
【0081】
例示的な実施形態が、例として、また、理解を明確にするために、ある程度詳細に述べられたが、種々の修正、適応および変更が使用されてもよいことを当業者は認識するであろう。そのため、本発明の範囲は、添付特許請求の範囲によってだけ制限されるべきである。