(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪発明を実施するための形態の概要≫
本発明の一態様に係る液滴吐出装置の吐出口検査方法は、複数の吐出口から所定の駆動周波数で液滴を吐出する液滴吐出装置の吐出口検査方法であって、前記複数の吐出口の各々から前記所定の駆動周波数を超える検査用駆動周波数で液滴を吐出させてそれら液滴を吐出対象物の表面に付着させ、付着した各液滴の付着面積、着弾ズレ、着弾再現性、各吐出口における、不吐出、サテライト若しくは2滴化の発生頻度、のうち1以上の項目を計測し、各液滴の計測結果が各項目における規格の範囲外であるときに、その液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定することを特徴とする。
【0011】
また、別の態様では、前記付着した各液滴の付着面積、着弾ズレ、着弾再現性、各吐出口における、不吐出、サテライト若しくは2滴化の発生頻度の計測は、付着した前記各液滴を含む画像を撮像し、当該画像に基づいて前記各液滴の付着面積、着弾ズレ、着弾再現性、各吐出口における、不吐出、サテライト若しくは2滴化の発生頻度を算出して行う構成であってもよい。
【0012】
また、別の態様では、前記検査用駆動周波数は前記所定の駆動周波数に対して1.8倍以上36.7倍未満である構成であってもよい。
また、本発明の一態様に係る液滴吐出装置の検査方法は、上記液滴吐出装置の吐出口検査方法により判定した前記不良吐出口数の、前記複数の吐出口数に対する比率が基準値以下であるとき、前記複数の吐出口のうち前記不良吐出口以外の吐出口のみから液滴を吐出することにより溶液を塗布可能であると判定することを特徴とする。
【0013】
また、別の態様では、前記基準値の設定は8%以下である構成であってもよい。 また、本発明の一態様に係るデバイスの製造方法は、複数の吐出口から所定の駆動周波数で液滴を部材に吐出する液滴吐出装置を用いたデバイスの製造方法であって、前記複数の吐出口の各々から前記所定の駆動周波数を超える検査用の駆動周波数で液滴を吐出させそれら液滴を吐出対象物の表面に付着させ、付着した液滴の付着面積、着弾ズレ、着弾再現性、各吐出口における、不吐出、サテライト若しくは2滴化の発生頻度のうち1以上の項目を計測し、各液滴の計測結果が各項目における規格の範囲外であるときに、その液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定し、前記不良吐出口数の前記複数の吐出口数に対する比率が基準値以下であるとき、前記複数の吐出口のうち前記不良吐出口以外の吐出口のみから前記所定の駆動周波数で液滴を吐出して前記部材に塗布することを特徴とする。
【0014】
≪実施の形態≫
以下、実施の形態実施の形態に係る液滴吐出装置の吐出口検査方法、液滴吐出装置の検査方法およびデバイスの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
<液滴吐出装置>
(全体構成)
液滴吐出装置における液滴の着弾精度の検査では、検査用基板の検査領域や、デバイス半製品の周縁部分に設けられた検査領域に向けて各吐出口から液滴を吐出させ、検査領域を撮像し、撮像により得られた各液滴の画像に基づいて各液滴の位置ずれ量や体積を検査している。具体的には、例えば、液滴が付着した検査領域をCCDカメラなどの撮像装置により撮像し、撮像により得られた画像中の付着物の中からパターンマッチング等により液滴を判別し、判別した液滴の付着位置及び面積を読み取ってその付着位置から液滴の位置ずれ量を算出すると共に、その液滴の付着面積を読み取ってその付着面積から液滴の付着量を算出している。
【0015】
図1は、本発明の一態様に係る液滴吐出装置の主要構成を示す図である。
図2は、本発明の一態様に係る液滴吐出装置の機能ブロック図である。
図1および
図2に示すように、本発明の一態様に係る液滴吐出装置100は、作業テーブル110、ヘッド部120、および制御装置130を備える。
(作業テーブル)
作業テーブル110は、いわゆるガントリー式の作業テーブルであって、吐出対象物200が載置される板状の基台111と、基台111の上方に配置された長尺状の移動架台112とを備える。
図1では、吐出対象物200として着弾検査用の基板が載置されている。
【0016】
移動架台112は、その長手方向が基台111の短手方向(X軸方向)に沿うような姿勢で、基台111の長手方向(Y軸方向)に沿って平行に配置された一対のガイドシャフト113a、113b間に架け渡されている。一対のガイドシャフト113a、113bは、基台111の上面の四隅に配設された柱状のスタンド114a〜114dによって支持されている。
【0017】
各ガイドシャフト113a、113bには、リニアモーター部115a、115bが取り付けられており、それらリニアモーター部115a、115bに移動架台112の長手方向両端部が固定されている。一対のリニアモーター部115a、115bをガイドシャフト113a、113bに沿ってY軸方向に移動させると、移動架台112もY軸方向に移動する。
【0018】
移動架台112には、L字形の台座116が取り付けられており、台座116には、サーボモーター部117が取り付けられている。サーボモーター部117のモーター軸(不図示)の先端にはギヤ(不図示)が取り付けられており、そのギアが移動架台112のガイド溝118に嵌合されている。ガイド溝118は、移動架台112の長手方向に沿って設けられており、溝内に形成された微細なラック(不図示)とギアとが噛合している。サーボモーター部117を駆動させると、いわゆるピニオンラック機構によって、台座116はX軸方向に沿って移動する。
【0019】
台座116にはヘッド部120が取り付けられている。サーボモーター部117を駆動させて台座116をX軸方向に沿って移動させると、ヘッド部120もX軸方向に沿って移動する。このようにして、ヘッド部120のインクジェットヘッド122および撮像装置123は、X軸方向に走査可能である。また、リニアモーター部115a、115bを駆動させて移動架台112をY軸方向に沿って移動させると、それに伴なって台座116もY軸方向に沿って移動し、ヘッド部120もY軸方向に沿って移動する。このようにして、ヘッド部120のインクジェットヘッド122および撮像装置123は、Y軸方向にも走査可能である。
【0020】
リニアモーター部115a、115bおよびサーボモーター部117は、それらの駆動を制御するための駆動制御部119に接続されており、駆動制御部119は、通信ケーブル101、102を介して制御装置130のCPU131に接続されている。リニアモーター部115a、115bおよびサーボモーター部117の駆動は、制御装置130の記憶手段132に格納された所定の制御プログラムに基づいて、CPU131が吐出制御部125へ指示を送信し、その指示に基づいて駆動制御部119がリニアモーター部115a、115bおよびサーボモーター部117を駆動制御することにより行われる。
【0021】
(ヘッド部)
ヘッド部120は、本体部121、インクジェットヘッド122、および撮像装置123を備える。本体部121は、作業テーブル110の台座116に固定され、インクジェットヘッド122と撮像装置123は、本体部121に取り付けられている。
図3は、インクジェットヘッドの概略構成を示す断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド122は、圧電素子124a、振動板124b、液室124c、吐出口124d1が開設されたノズル124d等を構成要素とするインク吐出機構部124を複数個(例えば数千個)備える長尺状の部材である。インク吐出機構部124は、インクジェットヘッド122の長手方向に沿って等間隔を空けながら一列に配置されている。
【0022】
圧電素子124aは例えばピエゾ素子であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等からなる板状の圧電体124eを一対の電極124f、124gで挟んでなる積層体である。圧電素子124aに対して例えば数百Hzの周波数の波形電圧を印加することで、圧電素子124aは変形する。
振動板124bは、ステンレスやニッケルからなる薄板であり、液室124cの天板を構成している。振動板124bの上面における液室124cに対応する部分に圧電素子124aが貼り付けられており、圧電素子124aが変形すると、振動板124bにおける圧電素子124aが貼り付けられた部分も変形し、液室124cの体積が変化する。
【0023】
液室124cは、吐出口124d1から吐出するインクを貯留しておくための空間である。液室124c内へは、インクジェットヘッド122に接続された輸液チューブ104を介して外部からインクが供給される。液室124c内に供給されたインクは、液室124cの体積が減少した時に、各吐出口124d1から液滴として吐出対象物200に対して吐出される。
【0024】
吐出口124d1は、液室124cと連通しており、インクジェットヘッド122における基台111と対向する面、すなわち下面に、インクジェットヘッド122の長手方向に沿って列状に等間隔を空けながら複数個(例えば数千個)一列に配置されている。なお、インクジェットヘッド122の吐出口124d1の配置は一列に限定されず、例えば複数列に分けて配置されていても良い。吐出口124d1を複数列に分けて配置する場合は、千鳥配置とすれば吐出口124d1のピッチを狭くすることができる。
【0025】
本体部121には、各圧電素子124aを個別に駆動するための駆動回路を備えた吐出制御部125が収納されている。吐出制御部125は、各圧電素子124aに与える駆動信号を制御して、各吐出口124d1からそれぞれ液滴を吐出させる。例えば、吐出制御部125によって、圧電素子124aに印加する駆動電圧パルスが制御され、それぞれの吐出口124d1から吐出される液滴の体積や吐出タイミング等が調節される。
【0026】
吐出制御部125は、通信ケーブル103を介して制御装置130のCPU131に接続されている。CPU131は、記憶手段132に格納された所定の制御プログラムに基づいて吐出制御部125に指示を送信し、吐出制御部125は、受信した指示に従って対象の圧電素子124aに所定の駆動電圧を印加する。
本体部121にはサーボモーター部126が内蔵されており、サーボモーター部126を駆動させると、本体部121の下方に取り付けられたインクジェットヘッド122が、下面を基台111に向けた状態を維持しながら、本体部121とインクジェットヘッド122との連結部分を中心に回転する。これにより、X軸およびY軸に対するインクジェットヘッド122の長手方向の角度が変わる。この角度を調整することにより、吐出対象物に対する吐出口124d1の相対的なピッチが調整可能である。
【0027】
撮像装置123は、例えばCCDカメラであって、通信ケーブル105を介して制御装置130と接続されている。液滴吐出装置100の着弾精度を検査する際には、制御装置130のCPU131から撮像の指示が送信され、その指示を受信した撮像装置123によって基台111上に載置された吐出対象物の表面が撮像される。そして、撮像装置123によって撮像された画像は、制御装置130へ送信される。CPU131は、送信された画像を記憶手段132に格納された所定の制御プログラムに基づいて処理する。
【0028】
(制御装置)
制御装置130は、CPU131、記憶手段(HDD等の大容量記憶手段を含む)132、表示手段(ディスプレイ)134、入力手段133で構成される。制御装置130は具体的にはパーソナルコンピュータ(PC)である。
記憶手段132には、制御装置130に接続された作業テーブル110およびヘッド部120を駆動するための制御プログラム等が格納される。液滴吐出装置100の駆動時には、CPU131は入力手段133を通じてオペレータにより入力された指示と、記憶手段132に格納された各制御プログラムに基づいて所定の制御を行う。
【0029】
以上の構成を有する液滴吐出装置100を用いて、本発明の一態様に係る液滴吐出装置の検査方法、および、本発明の一態様に係るデバイスの製造方法の一部の工程が行われる。
<液滴吐出装置の検査方法>
図4(a)は、実施の形態に係る液滴吐出装置の検査方法を示す工程図、(b)は(a)における、判別工程(ステップS5)における判別方法を示す工程図である。
図5は、実施の形態において良否判別の対象となる付着物を示す図である。
図6は、実施の形態に係るデータテーブルを示す図である。
【0030】
図4(a)に示すように、実施の形態に係る液滴吐出装置の検査方法は、液滴吐出装置の着弾精度を検査するための方法であって、準備工程(ステップS1)、吐出工程(ステップS2)、撮像工程(ステップS3)、読取工程(ステップS4)、および判別工程(ステップS5)を含む。
準備工程(ステップS1)では、
図5に示すように、表面210にアライメントマーク220が表示された検査領域211を有する吐出対象物200を、液滴吐出装置100の基台111上に載置する。吐出対象物200としては、着弾精度を検査するための検査用基板や、機能層を形成する前の半製品等が挙げられる。半製品としては、例えば正孔輸送層や発光層を形成する前のデバイス半製品が挙げられ、半製品に対しては例えば非発光領域である周縁領域(額縁領域)にアライメントマーク220が表示される。
【0031】
アライメントマーク220は、例えば、X軸方向に沿った長尺の直線221と当該直線221と垂直に交差するY軸方向に沿った複数の短尺の直線222とで構成されており、長尺の直線221と短尺の直線222とが交差する点が吐出口124d1から吐出する液滴の狙い位置223となる。狙い位置223は、吐出口124d1に対応して配置されており、吐出口124d1の間隔と狙い位置223の間隔とは同じ幅である。なお、アライメントマークは、上記のような構成に限定されず、各吐出口124d1に対応した狙い位置223が特定できる表示であれば良い。
【0032】
吐出工程(ステップS2)では、液滴吐出装置100が有する複数の吐出口124d1から各吐出口124d1に対応した各狙い位置223に向けて液滴を吐出させ、検査領域211に各液滴を着弾させる。このとき、デバイスの製造工程において基板等の対象物に溶液を塗布する実塗布時の駆動周波数を超える検査用駆動周波数で、各吐出口124d1の各々から液滴を吐出させ、それら液滴を吐出対象物200の表面に付着させる。検査用駆動周波数は、実塗布時の動周波数に対して1.8倍以上36.7倍未満であることが好ましい。検査領域211は、吐出対象物200の表面210における撮像装置123によって撮像される領域であり、アライメントマーク220の狙い位置223は全て検査領域211内に含まれている。
【0033】
撮像工程(ステップS3)では、検査領域211を複数の撮像領域I
1〜I
n(
図5には撮像領域I
1〜I
15を表示)に分け、撮像領域I
1〜I
n毎に異なるタイミングで順次それら撮像領域I
1〜I
nを撮像して、検査領域I
1〜I
nに付着している各付着物の画像を取得する。検査領域211は、撮像領域I
1〜I
nを全て合わせた領域である。
各撮像領域I
1〜I
nは、例えば撮像装置123によって同じタイミングで撮像される範囲である。本実施の形態では、1つの撮像領域I
1〜I
nに1つの狙い位置223が存在している。すなわち、1つの狙い位置223につき1回の撮像が行なわれる。各狙い位置223は1つの各撮像領域I
1〜I
nの中心に位置している。
【0034】
なお、1つの撮像領域I
1〜I
nには、良否判定の対象とする狙い位置223が複数存在していても良い。1つの撮像領域I
1〜I
nに狙い位置223を複数存在させることによって、撮像の回数を減らすことができる。
ところで、通常、1つの吐出口124d1からは1つの液滴が吐出され、その液滴が液滴として判別され、その液滴に基づいて液滴吐出装置100の着弾精度が評価される。
【0035】
読取工程(ステップS4)では、各付着物の画像に基づいて付着物に関する情報を読み取る。具体的には、各撮像領域I
1〜I
nについて、それら撮像領域I
1〜I
n内の全ての付着物について位置ずれ量を読み取り、最も位置ずれ量の小さい付着物を付着物A
1〜A
nと判別する。
図5では、付着物のうち各撮像領域I
1〜I
n内における狙い位置223に最も近い付着物のみに符号を付している。そして、それら付着物に関する付着面積、および位置ずれ量を読み取る。
【0036】
付着面積とは、付着物が吐出対象物200の表面210と接触している領域の面積である。付着面積は、例えば、画像のコントラストから各付着物の平面視における輪郭を特定し、その輪郭内の面積を読み取って取得することができる。
位置ずれ量とは、狙い位置223から付着物までの距離である。位置ずれ量は、例えば、各付着物の輪郭から、各付着物の中心を決定し、その中心から狙い位置までの距離を読み取って取得することができる。
【0037】
判別工程(ステップS5)は、付着物A
1〜A
nの付着面積に基づいて液滴吐出装置の着弾精度が一定の水準を満たしているか否かを判別する工程であって、
図5(b)に示すように、吐出口判別工程(ステップS51)及び吐出装置判別工程(ステップS52)から構成されている。
吐出口判別工程(ステップS51)では、付着物A
1〜A
nの付着面積が付着面積規格の範囲外である場合に、その付着物A
1〜A
nを形成するための液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定する。付着面積が付着面積規格の上限値を超え大き過ぎる場合と付着面積が付着面積規格の下限値を下回り小さい場合の、いずれの場合においても液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定することが好ましい。しかしながら、大き過ぎる場合、或いは、小さ過ぎる場合のいずれかの場合においてのみ不良吐出口と判定しても良い。本実施の形態では、付着面積規格の上限値を超える場合と下限値を下回る場合のいずれの場合においても液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定している。なお、上述した付着面積以外にも不吐出、着弾ズレ、着弾再現性、2滴化の発生の有無や程度を判定基準として使用してもよい。
【0038】
図6は、実施の形態に係るデータテーブルを示す図である。
図6に示すデータテーブルに、付着面積の具体例が示されている。「撮像領域」の欄には相対経過時間(撮像領域I
1〜I
nの番号)が格納されており、「面積」の欄には付着面積が格納されている。付着物A
1〜A
nの対する付着面積規格の上限値は、例えば35μm
2、下限値は、例えば20μm
2であり、付着面積が付着面積規格の下限値以上であって上限値以下である場合に、付着面積規格の範囲内であると判定される。
図6に示した例では、各撮像領域I
3〜I
4における付着物A
3〜A
4が、付着面積規格の範囲外であると判定され、その付着物A
3〜A
4を形成するための液滴を吐出した吐出口124d1が不良吐出口として判定される。全ての撮像領域I
1〜I
nの「良否判別」の欄には、付着物A
1〜A
nの判定結果を意味する「○」又は「×」が格納される。
【0039】
吐出装置判別工程(ステップS52)では、上述の吐出口判別工程(ステップS51)で判定した不良吐出口数の、インクジェットヘッド122に含まれる全吐出口数に対する比率が基準値以下であるか否かを判定する。そして、基準値以下であるとき、その液滴吐出装置はインクジェットヘッド122に含まれる全吐出口数のうち不良吐出口以外の吐出口のみから液滴を吐出することにより溶液を対象物に塗布可能であると判定する。不良吐出口の比率が大きすぎると、デバイス製造工程における溶液塗布時に1サブピクセル内に割り当てられる吐出口数が減少する。そのため、1サブピクセルに滴下できる上限液滴数が減少し設計膜厚を実現するのに必要な滴下量を満たすことができない。こうした観点から基準値の設定は8%以下であることが好ましい。しかしながら、ここで示した基準値は一例であり、サブピクセルの容量、1サブピクセル内に割り当てられる吐出口数、各吐出口から吐出可能な滴下量等に基づいて適宜設定することが好ましい。
【0040】
図7は、吐出工程(ステップS2)における検査用駆動周波数と、吐出口判別工程(ステップS51)における不良吐出口検出率との関係を示した評価結果である。また、
図8は、
図7における評価に用いたインクの粘度を示した図である。
図7において、デバイスの製造工程において基板等の対象物に溶液を塗布する際の実塗布時の駆動周波数範囲は、約0.3〜約5.5kHzである。また、本実施の形態における検査用駆動周波数は、約10〜11kHzである。
【0041】
図7に示すように、インク1及びインク2を用いた場合には、駆動周波数を高めても不良吐出口検出率の変化はなく約0%である。一方、インク粘度が一番高いインク3を用いた場合には、駆動周波数が実塗布時の駆動周波数範囲内である約5.5kHz以下の場合、不良吐出口検出率の変化はなく約0%である。しかしながら、約5.5kHzを超えた領域では駆動周波数の増加に伴い不良吐出口検出率は増加する。約5.5kHzを超えた駆動周波数で吐出口検査を行うことにより、例えば、実塗布時駆動周波数範囲内である約5.5kHz以下では検出することができなかった潜在的な不良吐出口を検出することができる。これにより、デバイス製造工程において偶発的に吐出不良を生じさせるおそれがある吐出口を検出することができる。
【0042】
以上により、液滴吐出装置の検査が完了し、得られた検査結果に基づいて、液滴吐出装置の良否が判定される。液滴吐出装置が良と判定された場合には、その液滴吐出装置を用いてデバイスの製造を行う。液滴吐出装置が不良と判定された場合には、溶液吐出時における液滴吐出装置の調整が行なわれる。
<デバイスの製造方法>
(有機EL素子の全体的な製造工程)
図9は、実施の形態に係るデバイスの製造方法の一態様である有機EL装置の製造方法を説明する工程図である。
図9に示す基板1は、TFT基板上に、感光性樹脂を塗布しフォトマスクを介した露光・現像によって平坦化膜が形成されたものである。
【0043】
図9(a)に示すように、基板1上に、陽極2、ITO層3、ホール注入層4を順に形成し、ホール注入層4上にバンク5を形成する。それに伴ってバンク5どうしの間に素子形成領域となる凹部空間5aが形成される。
陽極2は、例えばスパッタリングによりAg薄膜を形成し、当該Ag薄膜を例えばフォトリソグラフィ法でマトリックス状にパターニングすることによって形成する。なお、Ag薄膜は真空蒸着等で形成しても良い。
【0044】
ITO層3は、例えばスパッタリングによりITO薄膜を形成し、当該ITO薄膜を例えばフォトリソグラフィ法でパターニングすることにより形成する。
ホール注入層4は、WOx又はMoxWyOzを含む組成物を用いて、真空蒸着、スパッタリングなどの技術で形成する。
バンク5は、ホール注入層4上にバンク材料を塗布する等によってバンク材料層を形成し、形成したバンク材料層の一部を除去することによって形成する。バンク材料層の除去は、バンク材料層上にレジストパターンを形成し、その後、エッチングすることにより行うことができる。バンク材料層の表面に、必要に応じてフッ素系材料を用いたプラズマ処理等によって撥液処理を施してもよい。バンク5はラインバンクであって、基板1上には、複数のラインバンクが互いに平行に形成されている。
【0045】
次に、機能層としての発光層6を形成する前に、吐出口検査方法(ステップS51)によって着弾精度の検査を行なう。液滴吐出装置の吐出口検査方法については上述したとおりである。続けて、液滴吐出装置の検査方法(ステップS52)によって液滴吐出装置の良否を判定する。液滴吐出装置の良否判定方法は上述したとおりである。すなわち、吐出口判別工程(ステップS51)で判定した不良吐出口数の、インクジェットヘッド122に含まれる全吐出口数に対する比率が基準値以下であるとき、その液滴吐出装置は不良吐出口以外の吐出口のみから液滴を吐出することにより溶液を対象物に塗布可能であると判定する。
【0046】
そして、予め検査の合格基準として定められた基準を満たし、液滴吐出装置が良と判定される場合には、その液滴吐出装置を用いて発光層6の形成するための溶液の塗布を行う。予め検査の合格基準として定められた基準を満たさず液滴吐出装置が不良と判定される場合には、溶液吐出時における液滴吐出装置の調整が行なわれる。
液滴吐出装置の調整としては、着弾位置がずれているときは吐出口124d1の吐出時の位置を調整したり、液滴の体積が適正でないときは吐出口124d1からの吐出量を調整したり、不吐出の吐出口124d1があったときは隣接する吐出口124d1からの吐出量を増加させたりする調整が実施され、位置ずれや液滴量の増減が激しい場合は、吐出口の整備等が行なわれる。
【0047】
吐出口124d1の整備方法としては、例えば各吐出口124d1に対して、公知のパージ処理、フラッシング処理、ワイピング処理のいずれかを実施することが挙げられる。または吐出制御部125から各圧電素子124aへの印加電圧値を変化させ、滴下するインク量を増減させる処理が挙げられる。或いはインクジェットヘッド122が寿命を迎えている場合には、インクジェットヘッド122を交換することもできる。一方、インクの調整方法としては、インク濃度、インク粘度、インク組成の少なくともいずれかを調整する方法が挙げられる。
【0048】
次に、
図9(b)に示すように、バンク5同士間のサブピクセル形成領域となる凹部空間5aに、インクジェット法により有機発光層の材料を含むインクを充填し、印刷成膜したその膜を乾燥させ、ベーク処理することによって、発光層6を形成する。このとき、上述の吐出口判別工程(ステップS51)で判定した不良吐出口以外の吐出口のみから液滴を吐出することにより溶液を対象物に塗布する。これにより、デバイス製造の前段階において、製造工程において偶発的な吐出不良を生じさせるおそれがある不良吐出口を有するノズルを検出して選別し、不良吐出口を有するノズルを用いることなく、液滴吐出装置を用いて溶液を対象物に塗布することができる。
【0049】
図9では1対のバンク5間に発光層6が1つだけ示されているが、基板1上には、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、
図9の紙面横方向に繰り返して並んで形成される。この工程では、R、G、Bいずれかの機発光材料を含むインク6aを充填し、充填したインク6aを減圧下で乾燥させることによって、
図9(c)に示すように発光層6を形成する。
【0050】
なお、
図9では示していないが、発光層6の下には、機能層としてのホール輸送層をウェット方式で形成してもよい。また、発光層6の上に機能層としての電子輸送層をウェット方式で形成してもよい。
次に、
図9(d)に示すように、電子注入層7、陰極8、封止層9を順次形成する。
電子注入層7は、例えば真空蒸着によってバリウムを薄膜成形する。
【0051】
陰極8は、例えばスパッタリング法によってITOを薄膜成形する。
封止層9は、樹脂封止材料を塗布した後、UVを照射してその樹脂封止材料を硬化させて形成する。さらに、その上に板ガラスを載せて封止してもよい。
以上の工程を経て有機EL装置が完成しデバイスが製造される。
なお、本実施の形態では、液滴吐出装置の検査を、機能層である発光層6の形成前に行なったが、液滴吐出装置の検査のタイミングはこれに限定されず、インクジェット法によりいずれかの機能層を形成する前に少なくとも1回実施すれば良い。
【0052】
(発光層形成用の溶液塗布方法)
液滴吐出装置100を用いて、発光層6を形成する工程を量産的に行う方法について説明する。
発光層6の形成時には、発光層6を形成するための溶液である3色のインク(赤色インク、緑色インク、青色インク)を用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を、複数のラインバンク間の各領域に形成する。
【0053】
説明を簡略にするため、ここでは、複数の基板に対してまず一色のインクを塗布し、次に、その複数の基板に別の色のインクを塗布し、次にその複数の基板に3色目のインクを塗布する方法で、3色のインクを順次塗布することとする。
そして、以下の説明では、複数の基板に対して、3色の中の一色のインク(赤色インク)を塗布する工程について代表的に説明する。
【0054】
図1、
図10(a)を参照しながら、液滴吐出装置100を用いて、発光層形成用のインクを塗布する工程を説明する。
この工程では、作業テーブル110に製品製造用の基板1を載置して、発光層形成用のインクを塗布する。
[ラインバンクの場合]
基板1は、
図4(a)に示すように、基板1上に、陽極2、ITO層3、ホール注入層4、バンク5が形成されたものに相当する。
【0055】
図10(a)に示すように、基板1は、ラインバンク5がY方向に沿った状態で作業テーブル110上に載置され、Y方向に沿って伸長するインクジェットヘッド122をX方向に走査しながら、各吐出口124d1からラインバンク同士の間に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。
なお、赤色インクを塗布する領域は、x方向に隣接して並ぶ3つの領域の中の1つである。
【0056】
この塗布工程では、記憶手段132の管理テーブルに基づいて、上記吐出口判別工程(ステップS51)にて判定された不良吐出口を有する吐出口以外の吐出口124d1だけが使用される。従って、上記吐出口判別工程(ステップS51)にて判定された不良吐出口に分類された吐出口124d1は使用されない。
N枚の製品製造用の基板1に対してインクの塗布が終わると、次に、その複数の基板に別の色のインクを塗布し、次にその複数の基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。
【0057】
[格子状のピクセルバンクの場合]
上述の形態では、バンクがラインバンクであったが、本実施形態では、
図10(b)に示すように製品製造用の製品用基板10に形成されているバンクは、格子状のピクセルバンクであって、このピクセルバンクによって、矩形状のサブピクセルが規定される構造であってもよい。
【0058】
製品用基板にインクを塗布する工程では、液滴吐出装置100の作業テーブル110上に、このピクセルバンク50が形成された製品用基板10を載置して、ピクセルバンク50で規定されたサブピクセルとなる領域にインクを塗布する。
このとき、各サブピクセルの長手方向がY方向、各サブピクセルの幅方向がX方向となるように載置して、インクジェットヘッド122をX方向に操作しながら、着弾目標に向けて各吐出口からインクを吐出する。
図10(b)では、赤色のサブピクセル領域に赤色のインクを塗布する目標位置が示されている。
【0059】
ただし、
図10(b)に示すように、インクジェットヘッド122が備える複数の吐出口124d1の中で、サブピクセルの領域上を通過する吐出口だけを使用し、サブピクセルの領域上を通らない吐出口(
図10(b)中に×をつけた吐出口)は、常に使用しない点は、実施の形態1と異なっている。
図10(b)に示す例では、1つのサブピクセル領域に対して7個の目標位置が設定され、7個の吐出口124d1からインクが吐出される。
【0060】
さらに、この塗布工程では、上述のラインバンク5を用いた場合と同様に、記憶手段132の管理テーブルに基づいて、上記吐出口判別工程(ステップS51)にて判定された不良吐出口以外の吐出口124d1だけが使用される。従って、上記吐出口判別工程(ステップS51)にて判定された不良吐出口に分類された吐出口124d1は使用されない。
【0061】
N枚の製品製造用の基板1に対してインクの塗布が終わると、次に、その複数の基板に別の色のインクを塗布し、次にその複数の基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。
<まとめ>
上述のとおり、本実施の形態に係る液滴吐出装置の吐出口検査方法では、吐出口判別工程(ステップS51)において、デバイスの製造工程において基板等の対象物に溶液を塗布する際の実塗布時の駆動周波数を超えた検査用の駆動周波数で液滴を吐出対象物200に付着させる。そして、付着物A
1〜A
nの付着面積が付着面積規格の範囲外である場合に、その付着物A
1〜A
nを形成するための液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定する。
【0062】
これにより、実塗布時駆動周波数付近の比較的低い周波数では検出することができなかった潜在的な不良吐出口を検出することができる。
さらに、本実施の形態に係る液滴吐出装置の検査方法では、吐出装置判別工程(ステップS52)において、上述の吐出口判別工程(ステップS51)で判定した不良吐出口数の、インクジェットヘッド122に含まれる全吐出口数に対する比率が基準値以下であるか否かを判定する。そして、基準値以下であるとき、その液滴吐出装置は不良吐出口以外の吐出口のみから液滴を吐出することにより溶液を対象物に塗布可能であると判定する。
【0063】
これにより、デバイス製造の前段階において、製造工程において偶発的な吐出不良を生じさせるおそれがある不良吐出口を有するノズルを検出して選別し、不良吐出口を有するノズルを用いることなく、液滴吐出装置を用いて溶液を対象物に塗布することができる。
その結果、デバイス製造の前段階において、デバイス生産工程における連続的に溶液塗布が可能となりデバイス製造における歩留低下を防止し生産効率を改善できる。
【0064】
<変形例>
(1)上記実施の形態では、吐出口判別工程(ステップS51)では、付着物A
1〜A
nの付着面積が付着面積規格の範囲外である場合に、その付着物A
1〜A
nを形成するための液滴を吐出した吐出口を不良吐出口と判定する構成とした。しかしながら、上述した付着面積以外の特性を用いて液滴を吐出した吐出口の良否を判定してもよい。例えば、不吐出、着弾ズレ、着弾再現性、2滴化の発生の有無や頻度を判定基準として用いる構成としてもよい。変形例に係る液滴吐出装置の吐出口検査方法は、吐出口判別工程(ステップS51)において、デバイスの製造工程において基板等の対象物に溶液を塗布する際の実塗布時の駆動周波数を超えた検査用の駆動周波数で液滴を吐出対象物200に付着させる。そして、付着物A
1〜A
nの着弾ズレ、着弾再現性、各吐出口における、不吐出、サテライト若しくは2滴化の発生頻度、のうち1以上の項目を計測し、計測結果が各項目における規格の範囲外であるときに、その吐出口を不良吐出口と判定する構成であってもよい。
【0065】
ここで、着弾ズレとは、付着物A
1〜A
nの中心位置の狙い位置223からずれた距離をさす。着弾再現性とは、各吐出口から吐出された液滴の着弾位置の繰り返し再現性をさす。不吐出の発生頻度とは、各吐出口について吐出口から液滴が吐出されない状態が発生する頻度をさす。サテライトの発生頻度とは、各吐出口について主液滴の近くに副液滴の着弾痕がある状態が発生する頻度をさす。2滴化の発生頻度とは、1吐出口当たり2滴で着弾検査用パターンを形成する場合に、1滴目と2滴目の着弾位置が離れすぎていて1つの液滴とならない状態が発生する頻度をさす。
【0066】
これらの検査項目の何れか又は複数を用いることより、実施の形態に示した例と同様に、実塗布時駆動周波数付近の比較的低い周波数では検出することができなかった潜在的な不良吐出口を検出することができる。
(2)上記実施の形態では、1つのインクジェットヘッドを有する液滴吐出装置100を用いて、3色(赤、緑、青)の中の一色のインクを複数の基板に塗布し、次に、その一色が塗布された基板に別の色のインクを塗布することとして説明したが、液滴吐出装置100において、赤、緑、青用の3つのインクジェットヘッドを設けて、3色のインクを基板に並行して塗布する場合においても、上述した塗布方法を適用するができる。例えば、一連の工程の繰り返しを3色のインクを用いて並行して行ってもよい。それによって、上記実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(3)上記実施の形態では、有機EL装置の発光層を形成する工程において上述した塗布方法を適用する例を説明したが、発光層以外の機能層(例えばホール注入層、電子注入層)をウェット方式で形成する場合、あるいはTFT基板における有機半導体層をウェット方式で形成する場合においても、上述した塗布方法を適用することが可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0068】
(4)上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。また、各実施の形態に係る液滴吐出装置の吐出口検査方法、液滴吐出装置の検査方法、検査方法、デバイスの製造方法、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【0069】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0070】
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
さらに、塗布装置においては基板上に回路部品、リード線等の部材も存在するが、電気的配線、電気回路について当該技術分野における通常の知識に基づいて様々な態様を実施可能であり、本発明の説明として直接的には無関係のため、説明を省略している。尚、上記示した各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。