(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は一実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図であり、
図2は車両傾きと相対勾配値との関係を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態の車両制御装置1は、自動車等の車両Vに搭載され、例えば入庫時及び出庫時における車両Vの走行を制御する。車両制御装置1は、レーザセンサ20、車高センサ30及び車両制御ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。
【0012】
レーザセンサ20は、車両Vの経路の路面に関する路面情報を取得するための外界センサである。レーザセンサ20は、例えば、車両Vの進行方向前方(進行方向先)の路面に対してレーザ光を出射すると共に、その反射光を受光する。レーザセンサ20は、車両制御ECU40に接続されており、その検出値を車両制御ECU40へ出力する。車高センサ30は、車両Vの車高に関する車高情報を取得するものである。車高センサ30は、例えば車体とサスペンションアームとの上下変位量を車高変化量ΔHcとして検出する。車高センサ30は、車両制御ECU40に接続されており、その検出値を車両制御ECU40へ出力する。
【0013】
車両制御ECU40は、例えばCPU(Central Processing Unit)及び各種メモリ等を含んで構成され、車両制御装置1による走行制御を実行する。車両制御ECU40は、外乱減速度推定部41、相対勾配値推定部42、車両重量推定部43、要求駆動力生成部44及びメモリ45を備えている。
【0014】
外乱減速度推定部41は、次に示すように外乱減速度G
extを演算し推定する。すなわち、車両制御ECU40内で生成され平坦路で且つ理想的な環境下での要求駆動力G
ref、車両Vに実際に生じた実駆動力G
real、現在の車両傾き抵抗分の駆動力G
θ、機械抵抗を含むロード抵抗に関する駆動力G
RL、及び、空気抵抗による駆動力Gvのそれぞれは、下式(1)で表される。なお、車両制御ECU40内で生成される上記要求駆動力G
refについては、車両制御おいて通常用いられる種々の手法で生成できる。
G
real=G
ref−(G
θ+G
RL+Gv) …(1)
【0015】
上式(1)においては、入庫時及び出庫時の車両Vの車速が極低車速領域のため、駆動力Gv≒0とできる。また、外乱減速度G
extを駆動力G
θ及び駆動力G
RLの和(G
ext=G
θ+G
RL)とおくと、外乱減速度G
extは下式(2)で表される。車両CAN2から得られる車輪速パルスDpulseを用いて、下式(2)は下式(3)で表される。
G
ext=G
ref−G
real …(2)
G
ext=G
ref−d
2/dt
2(ΣDpulse) …(3)
【0016】
上式(3)から得られる外乱減速度G
extは、駐車支援中の外部環境が変化しない限り一定値を有する。外乱減速度推定部41は、レーザセンサ20により進行方向前方の勾配相対角度である相対勾配値θ
d(
図2参照)が認識されたとき、及び、入庫完了時に、外乱減速度G
extをメモリ45へ出力して保存する。なお、相対勾配値θ
dの認識後にも上式(3)の演算を引き続き行い、外乱減速度G
extが一定値でないときには、路面材質等の外部環境が変化したと判断し、得られた外乱減速度G
extをメモリ45へ再度出力して保存し直してもよい。
【0017】
相対勾配値推定部42は、レーザセンサ20による検出値に基づいて、進行方向前方の相対勾配値θ
d及び現在位置に対する勾配開始位置P
dを算出し推定する。相対勾配値推定部42は、算出した相対勾配値θ
d及び勾配開始位置P
dを。メモリ45へ出力して保存する。
【0018】
車両重量推定部43は、入庫完了時において、車高センサ30で検出された車高高さΔHcに基づき車両重量M
park-inを推定し、該車両重量M
park-inをメモリ45へ出力して保存する。また、車両重量推定部43は、出庫開始時において、車高センサ30で検出された車高高さΔHcに基づき車両重量M
park-outを推定し、該車両重量M
park-outをメモリ45へ出力して保存する。なお、ここでの車両重量M
park-in,M
park-outは、車両総重量を意図する。
【0019】
要求駆動力生成部44は、入庫時において、次に示すように、パワマネECU3の制御入力として要求駆動力G
outを演算し生成する。すなわち、車両Vが勾配開始位置P
dに到達したとき、若しくは、応答遅れを考慮した勾配開始位置P
dの到達前に、メモリ45から外乱減速度G
ext及び相対勾配値θ
dを読み込む。そして、下式(4)により要求駆動力G
outを生成する。相対勾配値θ
dが0の場合には、下式(5)により要求駆動力G
outを生成する。
G
out=G
ref+G
ext+G
θ …(4)
G
out=G
ref+G
ext …(5)
【0020】
また、要求駆動力生成部44は、出庫時において、次に示すように、パワマネECU3の制御入力として要求駆動力G
outを演算し生成する。すなわち、パワマネECU3からのエンジンオン信号の入力に応じて、外乱減速度Gext、相対勾配値θ
d、及び車両重量M
park-in,M
park-outをメモリ45から読み込む。そして、下式(6)により要求駆動力G
outを生成する。
G
out=G
ref+(G
ext+G
θ)×M
park-out/M
park-in …(6)
【0021】
このような要求駆動力生成部44は、生成した要求駆動力G
outをパワマネECU3へ出力する。その結果、入庫時及び出庫時において、要求駆動力G
outに基づいて駆動力制御が実行される。なお、入庫時及び出庫時に、要求駆動力G
outに基づき制動力制御(制駆動力制御)及び操舵制御等が実行されてもよい。
【0022】
メモリ45は、外乱減速度推定部41で推定された外乱減速度G
ext、相対勾配値推定部42で推定された相対勾配値θ
d、及び、車両重量推定部43で推定された車両重量M
park-in,M
park-outを格納し保存する。パワマネECU3は、車両Vを総合的に制御するパワーマネージメントコンピュータである。ここでのパワマネECU3は、例えばエンジンECUやモータECUへ要求駆動力G
outを出力指令信号として送信する。また、パワマネECU3は、エンジン始動時にエンジンオン信号を車両制御ECU40へ出力する。
【0023】
次に、車両制御装置1を用いた入庫時の車両制御(入庫支援)を説明する。
図3は
図1の車両制御装置を用いた入庫時の車両制御を示すフローチャートであり、
図4は
図1の車両制御装置を用いた入庫時の車両制御を説明するための図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、車両制御装置1では、例えばドライバにより支援スイッチがONとされて装置作動中とされ、車両Vがマニュアル運転とされると共にレーザセンサ20が作動されている状態(
図4中の車両V1〜V2の区間)において、車両制御ECU40により以下の処理を実行する。
【0025】
まず、外乱減速度推定部41により、上式(3)に基づき外乱減速度G
extを推定する(S1)。続いて、相対勾配値推定部42により相対勾配値θ
d及び勾配開始位置P
dを推定する(S2)。そして、例えば相対勾配値θ
d又は勾配開始位置P
dに基づいて、進行方向前方に勾配が有るか否かを判定する(S3)。勾配が有ると判定した場合、上記S1で推定した外乱減速度G
extと、上記S2で推定した相対勾配値θ
d及び勾配開始位置P
dとをメモリ45へ保存する(S4)
【0026】
続いて、例えばメモリ45に保存された勾配開始位置P
dに基づいて、車両Vが勾配開始位置P
dに到達したか否かを判定する(S5)。勾配開始位置P
dに到達した場合、要求駆動力生成部44により外乱減速度G
ext及び相対勾配値θ
dをメモリ45から読み込こんだ後、自動運転を開始する(S5,S6,S9)。
【0027】
一方、上記S3にて進行方向前方に勾配が無いと判定した場合、上記S1で推定した外乱減速度G
extをメモリ45へ保存する(S7)。要求駆動力生成部44により外乱減速度G
extをメモリ45から読み込こんだ後、自動運転を開始する(S8,S9)
【0028】
上記S9の後、要求駆動力生成部44により、上式(4)又は上式(5)に基づき要求駆動力G
outを生成してパワマネECU3へ出力する(S10)。その結果、要求駆動力G
outに基づいて、入庫に係る駆動力制御が少なくとも実行される。なお、ここでは、自動運転開始からの所定区間(
図4中の車両V2〜V3の区間)で自動運転が実施され、その後の駐車場Pまでの区間(
図4中の車両V3〜V4の区間)は、自動制御が実施される自動制御区間とされる。
【0029】
そして、車両Vが駐車場Pに到達したと判定した場合において、例えば車両Vの切返し又は駐車が完了したとき、入庫が完了したと判断し、車両重量推定部43により車両重量M
park-inを推定する(S11,S12)。その後、車両重量推定部43から車両重量M
park-inをメモリ45へ出力して保存し、処理を終了する(S13)。
【0030】
なお、上述したように、外乱減速度推定部41によって上記S1後にも上式(3)の演算を引き続き行って外乱減速度G
extを推定してもよい。また、相対勾配値推定部42によって上記S2後にも相対勾配値θ
dを推定してもよい。これらの場合、上記S13においては、外乱減速度推定部41から外乱減速度G
extが、相対勾配値推定部42から相対勾配値θ
dが、メモリ45へそれぞれ出力されて保存される。
【0031】
次に、車両制御装置1を用いた出庫時の車両制御(出庫支援)を説明する。
図5は、
図1の車両制御装置を用いた出庫時の車両制御を示すフローチャートである。
図5に示すように、車両制御装置1では、パワマネECU3によりエンジンオン信号を車両制御ECU40へ入力し、この入力に応じて、車両重量推定部43により車両重量M
park-outを推定してメモリ45に保存する(S21〜S23)。
【0032】
そして、要求駆動力生成部44により、外乱減速度G
ext、相対勾配値θ
d及び車両重量M
park-in,M
park-outをメモリ45から読み込み、上式(6)に基づき要求駆動力G
outを生成してパワマネECU3へ出力する(S24,S25)。その結果、要求駆動力G
outに基づいて、出庫に係る駆動力制御が少なくとも実行される。
【0033】
以上、本実施形態の車両制御装置1では、前回の入庫時に、車両傾き抵抗分の駆動力G
θ及び機械抵抗を含むロード抵抗に関する駆動力G
RLを含む外乱減速度G
extと、相対勾配値θ
dと、を経路の路面情報としてメモリ45に記録する。そして、記憶した入庫時の路面情報に基づき、当該経路を介する出庫時に駆動力制御を実施する。これにより、入庫時及び出庫時に車両Vは同じ経路を通ることから、出庫時において、路面情報の取得までの間に車両制御の精度が低下してしまうことがなく、制御開始直後から高い精度で車両制御を実施できる。従って、車両制御の精度を向上させることが可能となる。また、車両制御装置1では、現在地又は駐車場Pの判定や画像認識手段が別途に必要とならず、コスト増加を抑制することもできる。
【0034】
ところで、自動駐車における走行制御では、平坦路だけでなく勾配路においても、cmオーダーでの高い位置制御性能が求められる。また、勾配に差し掛かっている車両Vについて走行制御を作動させると、一般的な車両制御装置では、要求駆動力に不足が生じて車両Vがずり下がったり、勾配中の制駆動力に過不足が生じてずり下がりや急加速が生じたりする場合がある。これに対し、車両制御装置1では、現在の車両Vの傾きを精度よく算出でき、推定した相対勾配値θ
dを考慮した適切な要求駆動力G
outを生成することができる。入庫時に目標停止位置で精度よく停止できると共に、出庫時のずり下がりを防止できる。
【0035】
また、車両制御装置1では、路面勾配に対する車両Vの傾きを精度よく認識して適切な要求駆動力で制御する必要があるところ、
図2に示すように、スロープ状の駐車場Pへの自動駐車において、車両Vに搭載されたレーザセンサ20を用いて、現在の車両Vの傾きθ
0に対する進行方向前方にある相対勾配値θ
dと勾配開始位置P
dを推定する。ここで、車両Vの制駆動制御を行う上で、現在の車両Vの傾きθ
0と相対勾配値θ
dとの両者を加えた補償入力を生成する必要がある。
【0036】
この点、レーザセンサ20では、現在の車両Vの傾きθ
0を推定することが難しい場合がある。勾配センサ等が車両Vに搭載される場合でも、1degレベルの推定精度を出すことも困難である。そこで、車両制御装置1では、要求駆動力G
refに対する実駆動力G
realの関係から、駆動力G
θ,G
RLを算出する。換言すると、駐車支援環境下では下記条件1,2が成立することから、下記条件1,2を用いて駆動力G
θ,G
RLを推定し、ひいては外乱減速度G
extを推定する(上記S1参照)。これを相対勾配値θ
dの推定(上記S2)及び車両重量M
park-in,M
park-outの推定(上記S12,S25)と合わせて制駆動制御を実施する。これにより、車両制御装置1によれば、勾配での入庫及び出庫に適切な制駆動制御を実現可能となる。
【0037】
条件1: 1回の駐車支援中で路面材質が変化することは少ないため、駆動力G
RLは一定と考えられる。少なくとも連続的に外部環境が変化することは考えられない。
条件2: 入庫及び出庫においては、車両Vは略同じ経路を走るため、駆動力G
θ,G
RLは変化がないとみなされる。なお、入庫及び出庫では、乗員数変化による車両重量の変化が考えられる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0039】
例えば、上記実施形態では、路面情報は経路の路面勾配に関する情報を含んでおり、外乱減速度G
ext及び相対勾配値θ
dを路面情報としてメモリ45に記憶したが、路面情報は、特に限定されるものではなく、車両Vの経路の路面に関する情報であればよい。
【0040】
上記において、レーザセンサ20と外乱減速度推定部41と相対勾配値推定部42とが路面情報取得部を構成し、メモリ45が記憶部を構成し、要求駆動力生成部44とパワマネECU3とが駆動力制御部を構成する。