特許第6185414号(P6185414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185414
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】固体電池用の固体電解質部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20170814BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170814BHJP
   H01B 1/06 20060101ALN20170814BHJP
   H01B 1/08 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01B13/00 Z
   !H01B1/06 A
   !H01B1/08
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-62432(P2014-62432)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-185462(P2015-185462A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】當寺ヶ盛 健志
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎吾
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037992(JP,A)
【文献】 特開2010−102929(JP,A)
【文献】 特開2013−107779(JP,A)
【文献】 特開2010−272344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01B 1/06
H01B 1/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池用の固体電解質部材の製造方法であって、
リチウムイオン伝導性を有する酸化物固体電解質を含む焼結体の表面に、ガラス転位温度が該酸化物固体電解質の分解温度未満であるガラスを配置し、該ガラスを該ガラスのガラス転移温度以上、該酸化物固体電解質の分解温度未満の温度で加熱して溶融し凝固させる、固体電池用の固体電解質部材の製造方法。
【請求項2】
前記ガラスがリチウムイオン伝導性を有するガラス電解質である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ガラスにリチウムイオン伝導性物質が混合されている、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスのガラス転位温度が、前記酸化物固体電解質の分解温度未満であり、且つ、該酸化物固体電解質と該ガラスの反応温度未満である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼結体に対する前記ガラスの質量比が、焼結体100質量部に対し、ガラス0.5〜50質量部である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記焼結体の相対密度が80%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池用の固体電解質部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解質膜の一面側に正極活物質を含む正極を設け、他面側に負極活物質を含む負極を設けた全固体リチウム二次電池が提案されている。このような固体電解質に用いるリチウムイオン伝導性物質の中でも、酸化物固体電解質はリチウムイオン伝導率が非常に高い。
【0003】
特許文献1には、粉末またはペーストからなる酸化物固体電解質に、母材として基本式がLi(B1−y,Az+2−δ(式中、AはC,Al,Si,Ga,Ge,In,Snのうち少なくとも1種以上の元素であり、yは0≦y<1を満たし、zは(B1−y,A)の平均価数であり、x,z,δはx+z=δ/2の関係式を満たす。)であるフラックスを混合することにより、低温で焼結可能なものとする固体電解質焼結体の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、固体電解質の焼結前原料と活物質を含む電極とを低温で一体焼結することで、高温により活物質を変性することなく、固体電解質と活物質を含む電極との間の固体−固体界面の密着性を高めることが可能となる。
また、特許文献1の段落[0021]−[0024]、[0037]−[0039]には、粉末またはペーストからなる酸化物固体電解質層の上にフラックス層を積層することにより原料体を形成し、当該原料体を焼結することにより固体電解質焼結体を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−37992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献1により得られた固体電解質焼結体中に貫通孔が発生するという問題点があることを、新たに見いだした。
本発明は、このように見いだされた問題点に鑑みなされたものであり、酸化物固体電解質焼結体を基体とし、貫通孔量が低減された固体電池用の固体電解質部材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、酸化物固体電解質の焼結体表面をガラス層で被覆することにより、貫通孔量が低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は固体電池用の固体電解質部材の製造方法であって、リチウムイオン伝導性を有する酸化物固体電解質を含む焼結体の表面に、ガラス転位温度が該酸化物固体電解質の分解温度未満であるガラスを配置し、該ガラスを該ガラスのガラス転移温度以上、該酸化物固体電解質の分解温度未満の温度で加熱して溶融し凝固させることを特徴とする。
本発明の製造方法において、前記ガラスはリチウムイオン伝導性を有するガラス電解質であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記ガラスにはリチウムイオン伝導性物質が混合されていることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記ガラスのガラス転位温度は前記酸化物固体電解質の分解温度未満であり、且つ、該酸化物固体電解質と該ガラスの反応温度未満であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記焼結体に対する前記ガラスの質量比は、焼結体100質量部に対し、ガラス0.5〜50質量部であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記焼結体の相対密度は80%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、ガラスが酸化物固体電解質焼結体の表面近傍に留まり貫通孔を封孔するため、少量のガラスの添加で、効率よく固体電解質部材の貫通孔量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に属する固体電解質部材の断面を模式的に示した図である。
図2】本発明の固体電解質部材断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察画像を示した図である。
図3】粉末の酸化物固体電解質層にガラスを積層し、溶融させて得られた従来技術の固体電解質部材の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固体電池用の固体電解質部材の製造方法について説明する。
本発明の固体電解質部材製造方法は、酸化物固体電解質を含む焼結体の表面に、ガラス転位温度が該酸化物固体電解質の分解温度未満であるガラスを配置し、該ガラスを溶融し凝固させることを特徴とする。
【0010】
まず、酸化物固体電解質について説明する。
本発明で用いる酸化物固体電解質は、リチウムに対して耐還元性のある酸化物固体電解質であることが好ましく、特にガーネット構造を有する酸化物固体電解質であることが好ましい。
このようなガーネット型酸化物固体電解質は、代表的には、基本組成が基本式Li5+xLaZr2−x12(式中、Aは、Sc、Ti、V、Y、Nb、Hf、Ta、Al、Si、GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素、xは1.4≦x<2)である。なお、Li5+xLaZr2−x12は化学量論組成でなくてもよく、一部欠損していてもよいし、過剰でも良いし、元素の一部が他の元素に置換されていてもよい。
リチウムイオン伝導性の観点から、通常、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512、LiLaZr12、LiLaTa12、LiLaNb12等を用いるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明の固体電解質部材の製造には、酸化物固体電解質は粉末ではなく焼結体を用いる。
図1に示したように、酸化物固体電解質として焼結体を用いた場合には、ガラスが酸化物固体電解質焼結体の表面近傍に留まり貫通孔を封孔するため、少量のガラスの添加で、効率よく貫通孔量を低減することができる。
一方、図3に示したように、粉末(圧粉体)やペーストの酸化物固体電解質層を用い、その上にガラス層を積層し、加熱することによって焼結する場合には、焼結が完了するまでは酸化物固体電解質層中の空孔量が多く、加熱工程中にガラスが固体電解質層内に染込むため、多量のガラスを添加しなければ貫通孔量を低減することができない。
また、本発明で用いる酸化物固体電解質焼結体は空孔量が少ないことが好ましい。酸化物固体電解質焼結体の空孔量は相対密度を指標として表すことができる。本発明で使用される酸化物固体電解質焼結体の相対密度は、好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
ここで、相対密度とは、電子天秤にて測定した乾燥質量を、ノギスを用いて測定した実寸から求めた体積で除算することにより測定密度を算出すると共に、理論密度を算出し、測定密度を理論密度で除算し100を乗算することにより計算した値を言う。
【0012】
次に、本発明で用いるガラスについて説明する。
本発明で用いるガラスは、ガラス転位温度が酸化物固体電解質の分解温度未満であり、好ましくは、ガラス転位温度が酸化物固体電解質の分解温度未満であり、且つ、酸化物固体電解質とガラスとの反応温度未満である。
ガラス転位温度が、酸化物固体電解質の分解温度以上である場合には、酸化物固体電解質の基体自体が劣化し、固体電解質部材の性能に影響する。また、ガラス転位温度が、酸化物固体電解質とガラスとの反応温度以上である場合には、リチウムイオン伝導率を低下させるような第三相や変質層が生成され、固体電解質部材の性能に影響する。
ここで、酸化物固体電解質の分解温度未満であり、且つ、酸化物固体電解質とガラスとの反応温度未満のガラス転位温度としては、好ましくは、800℃以下であり、更に好ましくは、750℃以下である。
例えば、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512の分解温度は約1250℃、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512とLiBOの反応温度は約750℃である。
ガラスのガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)法で、酸化物固体電解質の分解温度は粉末X線回析法で、酸化物固体電解質とガラスとの反応温度は粉末X線回析法で、それぞれ測定可能である。
本発明では、ガラスは粉体、粒体、その他の固体等の性状のものを用いることができる。
【0013】
本発明の製造方法では、少量のガラスの添加で、効率よく貫通孔量を低減することができることから、ガラス転位温度が酸化物固体電解質の分解温度未満のガラスであれば、リチウムイオン伝導性の有無にかかわらず使用することができる。
よって、リチウムイオン伝導性が無い、もしくはほとんど無いB、V、As、V−P−Bi2、V−TeO、SiO−B、V−P、P−AgO、SiO−PbO、P−AgO、NaO−P系等のガラスを使用しても、従来技術と比較して、固体電解質部材のリチウムイオン伝導性に対する影響は小さい。
ここで、リチウムイオン伝導性を有するLiBO等のガラス電解質を使用することで、固体電解質部材のリチウムイオン伝導性に対する影響を更に小さく抑えることができるため好ましい。
また、リチウムイオン伝導性が無いガラスにLiPO、Li3+xLa2/3−xTiO、Li1+xTi2−x(PO(式中、Mは、Al、Ga、In、Scからなる群より選ばれた1種類以上の元素)、Li2+2xZn1−xGeO、LiLa12(式中、Mは、Ta、Nbからなる群より選ばれた1種類以上の元素)、LiLaZr12等のリチウムイオン伝導性物質を混合することによって、固体電解質部材のリチウムイオン伝導性に対する影響を更に小さく抑えることができるため好ましい。このリチウムイオン伝導性物質のようにリチウムを含む物質は、リチウムを含まない物質と比較して融点が高くなる傾向があるが、リチウムイオン伝導性物質とリチウムイオン伝導性が無いガラスを混合することによって、リチウムイオン伝導性物質の溶融開始温度が通常の融点よりも低くなり、固体電解質部材の性能に影響することなく貫通孔を封孔しやすくする効果も期待できる。
【0014】
続いて、酸化物固体電解質を含む焼結体の表面にガラスを配置し、ガラスを溶融し凝固させる方法について説明する。
【0015】
ガラスは焼結体の表面に均一に配置することで、溶融後に焼結体の表面全体を効率良く被覆することが可能となる。溶融は、大気雰囲気下で電気炉を用いる等の一般的な条件下で行うことができる。
【0016】
ガラスを溶融させる温度は、酸化物固体電解質の分解や変質が生じない温度であることが好ましい。これにより、酸化物固体電解質の基体自体が劣化し、固体電解質部材の性能低下を抑制できる。
更に、ガラスを溶融させる温度は、酸化物固体電解質の分解温度未満であり、且つ、酸化物固体電解質とガラスとの反応温度未満であることが好ましい。酸化物固体電解質とガラスとが化合物を生成する温度以下の温度で加熱するため、酸化物固体電解質と、ガラスとの反応生成物が生じない。これにより、リチウムイオン伝導率を低下させるような第三相の生成を抑制できる。
【0017】
また、ガラスの添加量は、酸化物固体電解質100質量部に対し、好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは20質量部以下である。リチウムイオン伝導性の無いガラスや酸化物固体電解質と比較してリチウムイオン伝導度の低いガラス電解質の使用量を少なくすることにより、リチウムイオン伝導度に対する影響を最小限に抑えた上で、効率良く貫通孔量を低減することができる。
【0018】
本発明の製造方法より得られた固体電解質部材は、用いたガラスが、酸化物固体電解質を含む焼結体の表面近傍に含浸した構造を有するが、ガラスの一部が含浸せずに焼結体の表面に残り、焼結体とガラスの積層構造を有していてもよい。
上述したように、酸化物固体電解質の焼結体は圧粉体やペーストと比較して空孔量が少ないため、ガラスの染込みが少ない。よって、ガラスが焼結体表面近傍に留まり、効率良く貫通孔量が低減されている。つまり、貫通孔の入口が封止されている。
一般的に、リチウムを含む物質は加熱、溶融後に冷却すると結晶化しやすいが、酸化物固体電解質を含む焼結体上で、溶融後に凝固したガラス電解質やリチウムイオン伝導性物質は、結晶相であってもよく、非晶質であってもよく、結晶相と非晶質の混相であってもよい。
固体電解質部材の貫通孔量は、気体透過係数(cm・mm/kPa/mm/min)を指標として表すことができる。ここで気体透過係数とは、標準状態(標準環境温度と圧力、STAP)の気体透過量(cm)と固体電解質の厚さ(mm)とを乗算した値を、圧力差(kPa)、透過面積(mm)及び、透過時間(min)で除算した係数である。
本発明の製造方法により、固体電解質部材中の貫通孔量が大幅に低減され、結果として、固体電解質部材の空孔内でのリチウムデンドライトの析出による負極中のリチウム容量低下を防止することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
Li6.75LaZr1.75Nb0.2512(共立マテリアル株式会社製)焼結体(相対密度90%)の表面をサンドペーパー(1200番)で乾式研磨し酸化物固体電解質の基材を得た。
LiO(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)とBO(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)を550℃で6時間焼成することにより、LiBOガラス電解質を得た。
上記酸化物固体電解質焼結体の基材上に、基材100質量部に対して、1質量部の上記LiBOガラス電解質の粉末、もしくはペレットを載せ、原料体を形成した。
当該原料体を750℃で5時間、大気雰囲気下の電気炉中に保持し、ガラス電解質を溶融した(昇温速度:5℃/min、降温速度:炉冷)。
【0021】
[実施例2〜5]
実施例1のLiBOガラス電解質添加量を3(実施例2)、5(実施例3)、10(実施例4)、20(実施例5)質量部と変更したことを除き、実施例1と同様に固体電解質部材を得た。
【0022】
[実施例6]
実施例5のLiBOガラス電解質をリチウムイオン伝導性のないガラスであるBへと変更し、溶融条件の保持温度を500℃としたことを除き、実施例5と同様に固体電解質部材を得た。
【0023】
[実施例7]
実施例6で使用したリチウムイオン伝導性のないガラスであるB 0.5質量部にリチウムイオン伝導性物質であるLiPO 20質量部を混合したことを除き、実施例6と同様に固体電解質部材を得た。
【0024】
[比較例1〜4]
実施例1の基材の替わりに酸化物固体電解質粉末を10MPaで一軸形成したペレット(相対密度50%)を用い、当該酸化物固体電解質基材上に、基材に対して1(比較例1)、20(比較例2)、100(比較例3)、400(比較例4)質量部の上記LiBOガラス電解質の粉末、もしくはペレットを載せ、原料体を形成した。
当該原料体を750℃で5時間、大気雰囲気下の電気炉中に保持し、ガラス電解質を溶融した(昇温速度:5℃/min、降温速度:炉冷)。
【0025】
[比較例5]
Li6.75LaZr1.75Nb0.2512(共立マテリアル株式会社製)焼結体(相対密度90%)の表面をサンドペーパー(1200番)で乾式研磨し、ガラスの添加と溶融を行わず、被検物として用いた。
【0026】
(貫通孔量)
固体電解質部材の貫通孔量の指標とする気体透過係数(cm・mm/kPa/mm/min)は、ナノパームポロメーター(西華産業株式会社製)を用いて測定した気体透過量(cm)から算出した。標準状態(SATP)の気体透過量(cm)は窒素ガスの差圧を40kPaとしたときの1分間の流量を読み取った。ガス透過面積はφ7mm、試料厚さは1mmとした。
【0027】
(断面観察)
断面試料作製装置(日本電子株式会社製)にて固体電解質部材の断面出しを行った後、SEM(日本電子株式会社製)を用いて加速電圧10kVで測定を行った。
【0028】
(実験結果)
ガラスを表面に添加して溶融したLi6.75LaZr1.75Nb0.2512の気体透過係数、ガラス及び添加剤の種類、添加量、使用したガラスのガラス転位温度及び添加剤の融点を表1にまとめた。なお、表中では、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512をLLZOと記載した。
【0029】
【表1】
【0030】
酸化物固体電解質焼結体のみを用いた比較例5と比較して、酸化物固体電解質焼結体にガラスを被覆した実施例1〜7では、気体透過係数が減少していた。
以上より、酸化物固体電解質にガラスを添加することで、貫通孔を低減する効果が確認された。
【0031】
酸化物固体電解質の基体に焼結体を使用した実施例1〜7は、基体に粉末ペレットを使用した比較例1〜4と比べて気体透過係数が大幅に低減されていた。同じLiBO添加量で比較した場合、焼結体を基体に用いる場合には、粉末ペレットを基体に用いる場合の1/100以下となった(実施例1と比較例1、実施例5と比較例2)。
また、焼結体を基体に用いた場合には、実施例1〜5に示すように、酸化物固体電解質100質量部に対して1質量部のガラスの添加から気体透過係数の低減効果が確認されたが、粉末ペレットを基体に用いた場合には、比較例1〜4に示すように酸化物固体電解質100質量部に対して400質量部のガラスを添加しなければ、気体透過係数の低減効果を確認できなかった。
以上より、酸化物固体電解質の基体に粉末ペレットではなく焼結体を使用することにより、貫通孔量を低減するために必要なガラス添加量を大幅に少なくできることが確認された。
図2に示したSEM観察画像から、ガラス層は表面近傍の孔のみを塞いでいることが確認された。
以上の結果を総合し、貫通孔量を低減するために必要なガラス添加量を大幅に少なくすることが可能となった理由を推定すると、焼結体の空孔量が少ないためガラスが深く染込むことが無く、表面部分に留まり、貫通孔の表面近傍のみが封孔されたためと考えられた。
【0032】
実施例6より、リチウムイオン伝導性のないガラスであるBを使用して、気体透過係数を低減できることが確認された。本発明では、酸化物固体電解質の粉末ペレットを基体に用いる従来技術と比較して、貫通孔量を低減するために必要なガラス量が非常に少ないため、リチウムイオン伝導性の無いガラスによって貫通孔量を低減したとしても、リチウムイオン伝導度への影響を比較的小さく抑えて、固体電解質部材を製造することができる。
実施例1〜5より、リチウムイオン伝導性のあるガラス電解質であるLiBOを使用しても、気体透過係数を低減できることが確認された。上述のように、本発明ではガラスの添加量が少ないため、リチウムイオン伝導性の無いガラスによって貫通孔量を低減したとしても、リチウムイオン伝導度への影響は比較的小さいが、リチウムイオン伝導性のあるガラス電解質を使用することで、リチウムイオン伝導度への影響を更に小さく抑えつつ、固体電解質部材を製造することができる。
また、実施例7より、リチウムイオン伝導性のないガラスであるBとリチウムイオン伝導性物質であるLiPOの混合物を使用しても、気体透過係数を低減できることが確認された。上述のように、リチウムイオン伝導性の無いガラスによって貫通孔量を低減したとしても、リチウムイオン伝導度への影響は比較的小さいが、リチウムイオン伝導性の無いガラスとリチウムイオン伝導性物質の混合物を使用することで、リチウムイオン伝導度への影響を更に小さく抑えつつ、固体電解質部材を製造することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 酸化物固体電解質層(焼結体)、2 ガラス質層、3 空孔、4 酸化物固体電解質層(焼結体)、5 ガラス質層、6 封孔部、7 未封孔部、8 酸化物固体電解質層(粉末)、9 ガラス質層
図1
図2
図3