(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0012】
(インクジェット記録装置1の構成)
図1を参照して、インクジェット記録装置1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る搬送装置300を備えたインクジェット記録装置1の概略構成を示す模式図である。インクジェット記録装置1は、装置筐体10と、装置筐体10の内部の下方に配置される給紙部20と、インクジェット記録方式の画像形成部30と、用紙排出部40とを備える。
【0013】
給紙部20は給紙カセット200を備える。給紙カセット200は、装置筐体10に着脱自在に装着される。給紙カセット200内には、複数の被記録媒体Pが重ねられた状態で収納されている。被記録媒体Pは、例えば、普通紙、再生紙、薄紙、又は厚紙のような紙である。
【0014】
画像形成部30は、搬送装置300と記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、第1用紙搬送部310と、記録ヘッド390に対向して配置される第2用紙搬送部350とを備える。第2用紙搬送部350は、第1用紙搬送部310と用紙排出部40との間に配置される。なお、画像形成部30は、乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。乾燥装置は、被記録媒体P上に吐出されたインク滴を乾燥させる。
【0015】
第1用紙搬送部310は略C字形の用紙搬送路311を有する。第1用紙搬送部310は、給紙カセット200の一端側の上方に配置されている給紙ローラー312と、用紙搬送路311の入口側に設けられる第1搬送ローラー対313と、用紙搬送路311の途中に設けられる第2搬送ローラー対314と、用紙搬送路311の出口側に設けられるレジストローラー対315と、ガイド板316とを備える。
【0016】
図1において、X軸は、被記録媒体Pの搬送方向Dに直交する方向に平行である。Y軸は、ガイド部材361上における被記録媒体Pの搬送方向Dに平行である。Z軸は、ガイド部材361に直交する方向に平行である。本実施形態1では、Z軸は鉛直方向であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。
【0017】
ガイド板316は給紙ローラー312と第1搬送ローラー対313との間に配置されている。給紙ローラー312は、給紙カセット200内の被記録媒体Pを1枚ずつ取り出す。ガイド板316は、給紙ローラー312が取り出した被記録媒体Pを第1搬送ローラー対313に案内する。
【0018】
第1搬送ローラー対313は、ガイド板316によって案内される被記録媒体Pを挟んで用紙搬送路311に送出する。具体的には次の通りである。第1搬送ローラー対313は、フィードローラー313a及びリタードローラー313bを有する。フィードローラー313aとリタードローラー313bとは互いに対向し、互いに圧接する。フィードローラー313aは回転し、被記録媒体Pを搬送方向Dに送出する。リタードローラー313bは、1枚の被記録媒体Pが送られた場合、フィードローラー313aに従動して回転する。一方、複数枚の被記録媒体Pが重なって送られた場合、リタードローラー313bは、被記録媒体Pを送出する方向の逆方向に回転して、又は停止して、フィードローラー313aに接触している被記録媒体Pから他の被記録媒体Pを分離する。その結果、1枚の被記録媒体Pがフィードローラー313aによって送り出される。
【0019】
第2搬送ローラー対314は、第1搬送ローラー対313が送出した被記録媒体Pを挟んでレジストローラー対315に向けて搬送する。レジストローラー対315は、レジストローラー対315に当接して停止した被記録媒体Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対315は、印字タイミングと被記録媒体Pの搬送とを同期させるために被記録媒体Pを一時待機させた後、被記録媒体Pを印字タイミングに合わせて第2用紙搬送部350に送出する。
【0020】
第2用紙搬送部350は、速度検知ローラー351と、吸着ローラー352と、駆動ローラー353と、テンションローラー354と、一対のガイドローラー356と、無端状の搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、速度検知ローラー351、駆動ローラー353、テンションローラー354、及び一対のガイドローラー356に張設されている。搬送ベルト355は、被記録媒体Pが載置される搬送面と、搬送面に対向する搬送裏面とを有する。駆動ローラー353等の各ローラーの回転軸はX軸に平行である。搬送ベルト355には複数の吸引孔が形成される。複数の吸引孔の各々は、搬送面から搬送裏面まで貫通する。
【0021】
速度検知ローラー351は、ガイド部材361よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの上流に配置される。速度検知ローラー351は、パルス板(図示せず)を含む。速度検知ローラー351は、搬送ベルト355に接触して回転する。速度検知ローラー351と一体となって回転するパルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト355の回転速度が検知される。速度検知ローラー351は、記録ヘッド390の下部における搬送ベルト355の蛇行補正の影響を抑制する。
【0022】
吸着ローラー352は、搬送ベルト355を介してガイド部材361のうち搬送方向Dの上流端部に配置される。吸着ローラー352は、被記録媒体Pを搬送ベルト355及びガイド部材361に押し付けつつ、被記録媒体Pを搬送方向Dに搬送する。吸着ローラー352は、吸引部360によって被記録媒体Pの全体が均等に吸引されるように、被記録媒体Pのカールを軽減する。その結果、被記録媒体Pの搬送ベルト355への密着性を高めることができる。
【0023】
被記録媒体Pが吸着ローラー352に進入するときの吸着ローラー352への衝突振動を緩和するため、吸着ローラー352の慣性モーメントは小さいほうが好ましく、吸着ローラー352は軽いことが好ましい。例えば、吸着ローラー352は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。吸着ローラー352の表面がアルミニウムによって形成される場合、吸着ローラー352の表面の摩耗を抑制するためアルマイト処理を施すことが好ましい。ここで、アルマイト処理とは、アルミニウムを陽極として酸性の処理浴中で電気分解することにより、アルミニウムの表面を電気化学的に酸化させ、酸化アルミニウム皮膜を生成させることをいう。なお、アルマイト処理により、吸着ローラー352は、電気的に絶縁状態となる。ただし、吸着ローラー352に導電性が必要な場合は、吸着ローラー352の表面にはアルマイト処理が施されない。
【0024】
なお、レジストローラー対315による被記録媒体Pの搬送速度と搬送ベルト355による被記録媒体Pの搬送速度との差が発生する場合がある。しかし、吸着ローラー352が搬送ベルト355上の被記録媒体Pに押圧力を付与し、レジストローラー対315と吸着ローラー352との間で被記録媒体Pを撓ませることにより、搬送速度の差を解消することができる。
【0025】
駆動ローラー353は、速度検知ローラー351に対して被記録媒体Pの搬送方向Dに間隔をおいて配置されている。速度検知ローラー351と駆動ローラー353によってガイド部材361上の搬送ベルト355は平面に維持される。駆動ローラー353は、摩擦力によって搬送ベルト355と密着する。例えば、搬送ベルト355がポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリカーボネート(PC)のような樹脂から形成されている場合、駆動ローラー353の表面には、エチレンプロピレンジエン(EPDM)、ポリウレタン樹脂、又はニトリルゴム(NBR)のようなゴム材を巻くことが好ましい。特に、画像形成部30が水系インクを用いて被記録媒体Pに画像を形成する場合、駆動ローラー353に巻かれるゴム材の膨潤を抑制するため、エチレンプロピレンジエン(EPDM)を駆動ローラー353に巻くことが好ましい。
【0026】
搬送ベルト355がエチレンプロピレンジエン(EPDM)のようなゴム材を含む場合、駆動ローラー353の表面は金属によって形成されてもよい。駆動ローラー353の表面がアルミニウムによって形成される場合、駆動ローラー353の表面の摩耗を抑制するため駆動ローラー353の表面にアルマイト処理を施すことが好ましい。アルマイト処理によって駆動ローラー353は電気的に絶縁状態になる。ただし、駆動ローラー353に導電性が必要な場合は、駆動ローラー353の表面にはアルマイト処理が施されない。なお、駆動ローラー353と搬送ベルト355とは電気的に導通している場合、搬送ベルト355を電気的に接地させて、インクの飛翔精度の低下を抑制できる。この場合、搬送ベルト355を形成するゴム材に導電性を付与する。
【0027】
駆動ローラー353は、モーター(図示せず)によって回転駆動され、搬送ベルト355を反時計回りに回転させる。搬送ベルト355の速度にムラがある場合、搬送ベルト355に対して速度ムラ補正制御が実行されることがある。速度ムラ補正制御とは、搬送ベルト355の速度のムラを補正して搬送ベルト355の速度を一定にする制御のことである。速度ムラ補正制御を実行する場合、駆動ローラー353の慣性モーメントは小さい方が好ましく、駆動ローラー353は軽いことが好ましい。例えば、駆動ローラー353は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。一方、速度ムラ補正制御を実行しない場合、慣性によるフライホイール効果によって駆動ローラー353の回転動作を安定させるため駆動ローラー353の重さを重くすることが好ましい。この場合、駆動ローラー353は、中実の金属を用いて形成される。
【0028】
テンションローラー354は、搬送ベルト355のガイド部材361に対する上流端に配置される。テンションローラー354は、搬送ベルト355が撓まないように搬送ベルト355にテンションを付与する。テンションローラー354の一方端部の位置を変化させることで搬送ベルト355の自動蛇行補正が実行される。
【0029】
搬送ベルト355は、搬送ベルト355に吸着された被記録媒体Pを搬送する。搬送ベルト355は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)又はポリイミド(PI)で形成されることが好ましい。この場合、搬送ベルト355の厚みのムラが抑制される。
【0030】
一対のガイドローラー356は、吸引部360の下方に配置される。一対のガイドローラー356は固定的に配置されて、搬送ベルト355の内周面(搬送裏面)で囲まれた空間を維持する。一対のガイドローラー356のうち駆動ローラー353に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の駆動ローラー353への巻き掛け量を維持する。一対のガイドローラー356のうちテンションローラー354に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の蛇行補正を安定して行うため、搬送ベルト355のテンションローラー354への巻き掛け量を維持する。
【0031】
吸引部360は、搬送ベルト355を介して記録ヘッド390と対向するように搬送ベルト355の搬送裏面側に配置されている。吸引部360は、ガイド部材361と、空気流通室362と、単数又は複数の吸引装置363とを備える。ガイド部材361は、空気流通室362に連通して配置される。
【0032】
空気流通室362は中空の箱形状を有し、空気流通室362の上部は開放されている。つまり、空気流通室362の上部には開口が形成される。ガイド部材361は、空気流通室362の上部開口を覆う(塞ぐ)。ガイド部材361は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを支持する。
【0033】
吸引装置363は、空気流通室362に連通して配置され、空気流通室362の空気を吸引して空気流通室362に負圧を発生させる。結果として被記録媒体Pが空気流通室362の上部に搬送ベルト355及びガイド部材361を介して吸引される。ここで、負圧とは、基準圧よりも低い圧力のことである。本明細書では、基準圧は大気圧である。負圧を「P
N」、絶対圧を「P
A」、基準圧を「P
R」と表すと、負圧P
Nは(P
A−P
R)の絶対値である(P
N=|P
A−P
R|)。絶対圧は絶対真空を0としたときの圧力である。空気流通室362は減圧室として機能する。
【0034】
記録ヘッド390は、単数又は複数のインクジェットヘッド390k、単数又は複数のインクジェットヘッド390c、単数又は複数のインクジェットヘッド390m及び単数又は複数のインクジェットヘッド390yにより構成されている。インクジェットヘッド390k、390c、390m、及び390yの各々は、インクを吐出する。
【0035】
用紙排出部40は、搬送ガイド400と、排出ローラー対410と、排出トレイ420とを備える。搬送ガイド400は、第2用紙搬送部350よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの下流に配置される。排出トレイ420は、装置筐体10に形成された排出口430から外部に突出するように装置筐体10に固定されている。
【0036】
搬送ガイド400は、搬送ベルト355から搬送される被記録媒体Pを排出ローラー対410に案内する。搬送ガイド400を通過した被記録媒体Pは、排出ローラー対410によって排出口430の方向に送出され、排出口430を介して排出トレイ420に排出される。
【0037】
(実施形態1)
[基本構成]
図2〜
図3を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図2は、ガイド部材361を示す平面図である。
図3(a)は、溝364a1の一部拡大平面図である。
図3(b)は、
図3(a)のIIIb−IIIb線に沿った断面図である。
【0038】
ガイド部材361は、インクジェット記録装置1の平面視において矩形状である。ガイド部材361は、上壁364と下壁365とを含む二重壁状である。上壁364は下壁365よりも記録ヘッド390に近い位置に配置される。
【0039】
上壁364には、複数の溝364aが形成される。溝364aは、記録ヘッド390に向かって開口している。複数の溝364aの各々は、長円形状であり、ガイド部材361上における被記録媒体Pの搬送方向D(Y方向)に沿って延びる。溝364aのY方向に沿った長さは、54mmである。溝364aの搬送方向Dに直交する方向(X方向)に沿った幅Wは、6mmである。
【0040】
複数の溝364aは、少なくとも1つの溝(第1溝)364a1を含む。第1溝364a1の深さDsは、第1溝364a1の幅W以上である(Ds≧W)。第1溝364a1の鉛直方向(Z方向)に沿った深さDsは、9mmである。
図2は、一例として、記録ヘッド390の直下を示す領域A1に第1溝364a1の少なくとも一部分を配置している状態を示しているが、第1溝364a1はガイド部材361の全面に配列されてもよい。
【0041】
下壁365には、複数の溝364aの各々に対応して貫通孔365aが形成される。各貫通孔365aは、ガイド部材361においてX方向及びY方向に沿って千鳥足状に配置される。貫通孔365aは、断面が円形状であり、Z方向に沿って下壁365を貫通している。貫通孔365aの直径は、6mmである。貫通孔365aは、溝364aの一方端部、他方端部、又は中央部に形成される。
図3は、第1溝364a1において、貫通孔365aが搬送方向Dの下流側の端部に形成されている状態を示している。
【0042】
図4及び
図5を参照して、搬送ベルト355及びガイド部材361と負圧との関係を説明する。
図4は、搬送ベルト355を示す平面図である。
図5は、
図4のV−V線に沿った断面図である。
図5において、矢印Fは空気の流れを示す。
【0043】
図4に示すように、搬送ベルト355には、Y方向に沿った複数の吸引孔355aを含む列が、X方向に沿って複数本形成されている。これらの複数本の列は、吸引孔355aが千鳥足状に配置されるように形成されている。搬送ベルト355の厚みは、100μmである。吸引孔355aの直径は、2mmである。
【0044】
同様に、ガイド部材361には、Y方向に沿った複数の溝364aを含む列が、X方向に沿って複数本形成されている。これらの列は、溝364aが千鳥足状に配置されるように形成されている。これらの複数本の溝364aの列に対応して、複数本の吸引孔355aの列が配置される。
【0045】
複数の溝364aの各々は、4つの吸引孔355aと対向し得るように形成されている。搬送ベルト355の進行に伴って、複数の溝364aの各々に対向する吸引孔355aが1つずつ入れ替わってゆく。
【0046】
図1を参照して示したように、搬送ベルト355の搬送面上に被記録媒体Pが載置された状態で吸引装置363を駆動すると、空気流通室362内に負圧が発生する。吸引装置363は、ファンである。負圧は、複数の貫通孔365a、複数の溝364a、及び複数の吸引孔355aを介して被記録媒体Pに作用する。被記録媒体Pは、搬送ベルト355の回転に伴って搬送方向Dに搬送される。
【0047】
図5に示すように、搬送ベルト355、第1溝364a1及び貫通孔365aによって、空気の流路は形成される。空気流通室362内に発生した負圧によって、空気は吸引孔355aから流入し、貫通孔365aに向かって流れ、空気流通室362へ流れ込む。
【0048】
第1溝364a1の深さDsは幅W以上である。従って、第1溝364a1のZ方向に沿った断面積が大きくなり、流路抵抗が小さくなる。その結果、第1溝364a1での圧力降下が小さくなる。さらに、深さDsを大きく形成したことによって、第1溝364a1に流入する空気が第1溝364a1の底面に当たる際の圧力降下が更に軽減される。以上により、第1溝364a1においては、貫通孔365aから遠い吸引孔355aの負圧の低下を抑制することができる。
【0049】
以上、
図2〜
図5を参照して説明したように、第1溝364a1の深さDsを幅W以上に大きくすることによって、貫通孔365aからの距離が遠い吸引孔355aと近い吸引孔355aとの負圧の差が小さくなる。従って、被記録媒体Pの搬送に伴って各吸引孔355aの吸引力が変動することが抑制される。その結果、搬送装置300は被記録媒体Pを安定して搬送することができる。
【0050】
(実施形態2)
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態2に係る搬送装置300の基本構成を説明する。上述したように、実施形態2に係る搬送装置300において、第1溝364a1の少なくとも一部分は、記録ヘッド390に対向する。
【0051】
以下に、記録ヘッド390に対向して、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する理由を説明する。一般的な吸引部のガイド部材には、全域にわたって複数の溝及び複数の貫通孔が形成される。吸引部のガイド部材の構成は、被記録媒体に形成される画像の位置ズレ及び色ズレの精度を決定する一要因であると考えられる。画像の位置ズレ及び色ズレは、インクの着弾精度に依存すると考えられる。インクの着弾精度は、インクの飛翔距離の精度と被記録媒体の搬送速度の精度とに依存する。インクの飛翔距離は、記録ヘッドと被記録媒体との間隙の距離である。インクの飛翔距離の精度を維持するためには、浮きが無い状態で被記録媒体を保持する必要がある。
【0052】
そこで、被記録媒体の浮きが発生しないように被記録媒体を吸引すること、及び記録ヘッド下方の平面を精度よく構成することが要求される。従って、記録ヘッド下方に配置され被記録媒体が載置されるガイド部材の構成は、インクの着弾精度、ひいては、画像の位置ズレ及び色ズレの精度を決定する一要因と考えられる。
【0053】
これに対し、実施形態2では、記録ヘッド390に対向する領域A1に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する。領域A1における被記録媒体Pの浮きを軽減することによって、インクの飛翔距離を一定にし易く、インクの着弾乱れを軽減することができる。その結果、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制することができる。
【0054】
(実施形態3)
図1及び
図6を参照して、本発明の実施形態3に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図6は、ガイド部材361を示す平面図である。実施形態3は、実施形態2に対して、第1溝364a1の少なくとも一部分を被記録媒体Pの搬送方向Dに沿ったガイド部材361の最上流領域A2に配置する点で異なる。
【0055】
実施形態3に係る搬送装置300において、複数の溝364aは、搬送方向Dにおける最上流に位置する最上流溝364aを含む。第1溝364a1の少なくとも一部分は、最上流溝364aを含む最上流領域A2に位置する。最上流溝364aは吸着ローラー352に近接する。
【0056】
以下に、最上流領域A2に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する理由を説明する。一般的に、第1用紙搬送部によって搬送された被記録媒体は、吸着ローラーによって、搬送ベルトの搬送面上へ送出される。被記録媒体が吸着ローラーによって送出される際に、被記録媒体が搬送ベルトに接する面積が小さいため、被記録媒体を搬送ベルトに吸着させる吸着力(被記録媒体に作用する吸引力)が弱くなる。上述したように、被記録媒体と搬送ベルトとの間に浮きが発生すると、印字ズレ及び色ズレが発生する可能性がある。印字ズレ及び色ズレは、特に、被記録媒体の前端部で発生し易い。
【0057】
これに対し、実施形態3では、最上流領域A2に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する。最上流領域A2における被記録媒体Pの浮きを軽減することによって、上述したように、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制することができる。
【0058】
(実施形態4)
図1及び
図7を参照して、本発明の実施形態4に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図7は、ガイド部材361を示す平面図である。実施形態4は、実施形態2及び実施形態3に対して、第1溝364a1の少なくとも一部分を、被記録媒体Pの搬送方向Dにおけるガイド部材361の最下流領域A3に配置する点で異なる。
【0059】
実施形態4に係る搬送装置300において、複数の溝364aは、搬送方向Dにおける最下流に位置する最下流溝364aを含む。第1溝364a1の少なくとも一部分は、最下流溝364aを含む最下流領域A3に位置する。最下流溝364aは、駆動ローラー353に近接する。
【0060】
一般的に、搬送ベルトによって搬送された被記録媒体は、搬送ガイドによって排出ローラー対に案内される。被記録媒体が排出ローラー対によって搬送方向下流側に引き込まれる際に、被記録媒体が搬送ベルトに接する面積が小さくなる。これにより、上述したように、被記録媒体と搬送ベルトとの間に浮きが発生すると、印字ズレ及び色ズレが発生する可能性がある。印字ズレ及び色ズレは、特に、被記録媒体の後端部で発生し易い。
【0061】
これに対し、実施形態4では、最下流領域A3に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する。最下流領域A3における被記録媒体Pの浮きを軽減することによって、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制することができる。
【0062】
(実施形態5)
図1及び
図8を参照して、本発明の実施形態5に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図8は、ガイド部材361を示す平面図である。実施形態5は、実施形態2〜実施形態4に対して、第1溝364a1の少なくとも一部分を、被記録媒体Pの辺が通過する位置に配置する点で異なる。
【0063】
実施形態5に係る搬送装置300において、第1溝364a1の少なくとも一部分は、第1領域A4に位置する。第1領域A4は、搬送方向Dに沿った被記録媒体Pの辺が通過する位置を含む。第1領域A4は、搬送方向Dの最上流から最下流まで、搬送方向Dに沿って延びる。矩形状の被記録媒体Pの両端の辺がガイド部材361上を通過する場合、第1領域A4の数は2つである。第1領域A4の数は、搬送装置300が搬送可能な被記録媒体Pのサイズの種類数に応じて増加することができる。
【0064】
以下に、第1領域A4に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する理由を説明する。一般的に、搬送ベルト上を搬送される被記録媒体において、搬送方向に沿った辺近傍は、搬送ベルトの吸引孔と接する数が少ないため、辺近傍に対して作用する吸引力が弱く、浮き(めくれ)が発生することがある。これにより、上述したように、印字ズレ及び色ズレが発生する可能性がある。特に、搬送可能な最小サイズの被記録媒体の場合、被記録媒体が小さいため、辺近傍の浮き(めくれ)による印字ズレ及び色ズレが発生し易い。
【0065】
これに対し、実施形態5では、第1領域A4に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置する。第1領域A4における被記録媒体Pの浮き(めくれ)を軽減することによって、画像の位置ズレ及び色ズレを抑制することができる。
【0066】
特に、搬送可能な最小サイズの被記録媒体Pの辺が通過する位置に、第1溝364a1の少なくとも一部分を配置することが好ましい。被記録媒体Pが小さいために、被記録媒体Pに作用する吸引力が弱い場合であっても、被記録媒体Pの辺近傍の浮き(めくれ)を軽減することができる。
【0067】
以上、図面(
図1〜
図8)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(1)
図1で示した吸引装置363はファンであるが、真空ポンプであってもよい。
【0069】
(2)
図2で示したように、1つの溝364aには1つの貫通孔365aが形成されているが、複数の貫通孔365aが形成されてもよい。
【0070】
(3)
図3及び
図5で示したように、第1溝364a1の深さDsは同一溝内で一定であるが、一定でなくてもよい。例えば、貫通孔365aからの距離が遠くなるにしたがって深さDsを深くしてもよい。これにより、貫通孔365aからの距離に応じた流路抵抗の軽減が可能となる。
【0071】
(4)実施形態1〜5では、搬送装置300を備えるインクジェット記録装置1について説明したが、搬送装置300は、その他の記録装置、例えば電子写真方式の画像形成装置に搭載されてもよい。