(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体または発泡剤が半透膜を浸透して活性化前に前記拡張性材料に接触するのを妨げる、第2の不透過性膜、金属箔、または積層をさらに含んでいる、請求項1に記載の腔内シール。
前記第2の不透過性膜が、破裂部位および前記不透過性膜を破裂させて液体または発泡剤を前記半透膜に浸透させ、前記拡張性材料と接触させて前記シールを拡張させるための活性化手段を含んでいる、請求項2に記載の腔内シール。
前記移植物内もしくは人工器官内に位置付けられ、または前記移植物もしくは人工器官の外側に密接しており、移植の間、前記移植物または人工器官のプロファイルからプロファイルを変更しない、請求項1に記載の腔内シール。
十分に低い圧力下で拡張して、前記移植物または人工器官と腔壁との間の空隙をシールするが、前記移植物または人工器官を前記腔壁から押し出さない、請求項1に記載の腔内シール。
前記シールと前記腔内移植物または人工器官との間を調和させ、非拡張状態または圧着状態から拡張状態になることができる支持部材を含んでいる、請求項1に記載の腔内シール。
前記支持部材が拡張性のメッシュまたは支柱であり、前記移植物または人工器官を埋入部位に固定するための手段を任意選択によって含む、請求項10に記載の腔内シール。
前記活性化手段が、前記移植物もしくは人工器官に付着していてよいか、または前記移植物もしくは人工器官を配置するためのカテーテルエレメントと整列されてよい前記破裂部位に接続されているワイヤである、請求項3に記載の腔内シール。
前記腔内移植物または人工器官の部分に相補的である円周を有する請求項1に記載の腔内シールであって、前記シールは、前記シールの拡張前に、前記腔内移植物または人工器官に隣接し、かつ前記腔内移植物または人工器官と実質的に同じ直径であるか、またはそれ未満の直径である、腔内シール。
前記ヒドロゲルが、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、多糖、ポリホスファゼン、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびコポリマー、ならびに各々のブレンドからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーを含んでいる、請求項1に記載の腔内シール。
導入カテーテルまたはシースにおいて送達される腔内移植物または人工器官をシールするための腔内シールであって、前記腔内シールは、腔内移植物または人工器官および請求項1に記載のシールを含んでおり、前記シールは、前記シールまたは前記腔内移植物もしくは人工器官の拡張によって前記腔内移植物または人工器官と整列される、腔内シール。
導入カテーテルまたはシースにおいて送達される腔内移植物または人工器官をシールするための腔内シールであって、前記腔内シールは、腔内移植物または人工器官および請求項1に記載のシールを含んでおり、前記シールは、活性化部材の使用によって前記腔内移植物または人工器官の拡張前に、シールされるべき前記腔内移植物または人工器官の領域と整列される、腔内シール。
導入カテーテルにおいて送達される腔内移植物または人工器官をシールするための腔内シールであって、前記腔内シールは、腔内移植物または人工器官および請求項1に記載のシールを含んでおり、前記シールは、前記腔内移植物または人工器官の遠位または近位に圧着され、前記導入カテーテルまたはシースから取り出されるときに前記腔内移植物または人工器官の部分と整列される、腔内シール。
内腔をシールするための腔内移植物または人工器官であって、該腔内移植物または人工器官は、該腔内移植物または人工器官に貼付される、請求項1に記載の前記腔内シールを1つまたは複数含んでおり、任意選択によって破裂部位を有する不透過性膜を含んおり、該腔内移植物または人工器官は、被験体の内腔壁中に移植される腔内移植物または人工器官。
前記腔内シールは、ステントまたは弁の人工器官に付着してシール可能な腔内装置を形成し、そして前記腔内装置は、ガイドワイヤで挿入カテーテル中に挿入される、請求項28に記載の腔内移植物または人工器官。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
動脈瘤は、血管壁の疾患または脆弱化によって引き起こされる、局所的な、血液充満性の血管の拡張(dilation)である。動脈瘤は、血管が液体を伝える能力に影響を及ぼし、未処置で放置した場合は生命を脅かし得る。動脈瘤は、脳の基部の動脈および大動脈において最も一般的に生じる。動脈瘤のサイズが増すにつれて破裂の危険性は増し、破裂により重度の出血、または突然死を含めた他の合併症がもたらされ得る。動脈瘤は、動脈瘤の一部または全部を外科的に除去し、代替の人工器官セクションを体腔中に移植することによって処置するのが典型的である。しかしながら、このような手順は大規模な外科手術および回復時間を必要とし得る。患者は手順後数日間、入院したままであることが多く、数か月の回復時間を必要とすることがある。さらに、このような大手術に伴う罹患率および死亡率は著しく高い可能性がある。
【0004】
動脈瘤を処置するための別の一取組みは、罹患部位に血管内グラフトアセンブリーを遠隔的に展開することを伴う。このような手順は、血管内グラフトアセンブリーを動脈瘤の部位に血管内送達することを必要とするのが典型的である。次いで、インサイチューでグラフトを拡張または展開し、グラフトの末端を動脈瘤の各側上の体腔に係留する。このようにして、グラフトは、動脈瘤嚢を循環から効果的に排除する。
【0005】
しかし、従来の血管内グラフトアセンブリーの多くにある一つの問題は、このような構造の長期耐久性である。時が経つにつれ、グラフトは体腔の内側表面から分離し、血管壁とグラフトの間に血液の側路が結果として生じ得る。本明細書で用いるエンドリークは、腔内グラフトの内腔の外側であるが、装置によって処置されている動脈瘤嚢または近接する血管セグメント内の持続的な血流または他の体液流と定義される。エンドリークが生じると、動脈瘤嚢の連続的な加圧を引き起こす可能性があり、破裂の危険性の増大をもたらすことがある。
【0006】
エンドリークのほかに、従来の血管内グラフトアセンブリーの多くでの別の一つの問題は、それに続いて起こる装置の遊走および/または外れ(dislodgement)である。例えば、外科医はグラフトに最適な場所を見出した後、装置を体腔の壁に固定し、グラフトの各終端を完全にシールして、エンドリークを防ぎ、ある程度の固定を実現しなければならないが、この固定によりそれに引続いて起こる装置の遊走および/または外れが防止される。
【0007】
大動脈狭窄症(aortic stenosis)は、大動脈弁狭窄症(aortic valve stenosis)としても知られており、大動脈弁の異常な狭窄を特徴とする。この狭窄により弁の完全な開口が妨げられ、心臓から大動脈への血流が閉塞される。その結果、身体中に十分な血流を維持するために、左心室はより激しく働かなければならない。大動脈狭窄症を未処置のまま放置すると、心不全、不整脈、心停止、および胸痛を含めた生命を脅かす問題をもたらし得る。大動脈狭窄症は、正常な三葉弁(trileaflet valve)の、年齢関連した進行性の石灰化によるのが典型的であるが、他の素因的状態には、先天性心疾患、先天性二尖大動脈弁の石灰化、および急性リウマチ熱が含まれる。
【0008】
ここ50年間、心肺バイパス、胸骨切開術(または胸骨部分切開)、大動脈遮断、および心臓麻痺性の心停止を用いた大動脈弁置換術に対する開心術は、最適な処置、および症状のある重度の大動脈狭窄症を有する患者に対する標準のケアを代表するものである(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。しかし、このような侵襲性の手順には年をとりすぎている(90歳代、100歳以上)とみなされるという理由で、または手術の危険性を構成する他の共存する状態にも罹患しているという理由で、開胸弁置換術の候補ではない重度の大動脈狭窄症に罹患している患者が多数いる(非特許文献5)。手術の危険性の高いこれらの患者に対して、侵襲性の低い処置が必要である。
【0009】
経カテーテル大動脈弁移植術(TAV)は、カテーテルを通して生体弁を挿入し、罹患している生来の大動脈弁内に植え込む手順である。最も一般的な移植経路には、経心尖アプローチ(TA)および経大腿(TF)が含まれるが、経鎖骨下および経大動脈の経路も探求されている(非特許文献6)。これらの経皮的な経路は、血管にアクセスするのにニードルカテーテルに頼り、その後ニードルの内腔を通ってガイドワイヤを導入する。他のカテーテルを血管中に配置することができ、人工器官の移植が行われるのはこのワイヤによってである。
【0010】
この手順が最初に行われた2002年以降、外科手術の危険性が高い患者の、重度の大動脈狭窄症を処置するために、世界中でニードルカテーテルの使用が急速に成長し、外科手術の危険性が高くない患者に対する標準のケアとして治療法を採用する支持が高まっている。臨床試験は、TAVで処置した患者間で、1年指標でのあらゆる原因の死亡率はおよそ25%であったことを示しており(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)、2つの平行な前向き多施設共同無作為化、実薬処置対照臨床試験の結果は、1年指標でのあらゆる原因の死亡率と比べた場合、TAVは標準的な治療法より優れていることを示した(TAV群において30.7%であったのに対して、標準治療法群において50.7%)(非特許文献11)。
【0011】
弁傍の漏出は、外科的大動脈弁置換術では極めてまれであり、ほんの1.5%から2%の症例に見られた。しかし、EuroPCR2011で専門家が観察した通り、軽度の弁傍の漏出は、経カテーテル大動脈弁移植術(TAV)では比較的よくあることであり、新たなデータは、より重度の弁傍大動脈弁閉鎖不全症(AR)が人工弁機能不全の主な理由であることを示唆している。Jan−Malte Sinning博士(ドイツ、Bonn、Universitatsklinikum)によると、TAV処置した患者のおよそ15%に中等度から重度の人工器官周囲(periprosthetic)大動脈弁閉鎖不全が生じ、これは12の国際登録書から引き出した数字である。博士の研究所でTAV処置した患者の連続127人のうち、21人が中等度の手技後弁傍ARを発症し、これは、ARなし、または軽度のARを有する患者と比べて、30日死亡率および1年死亡率の著しい高率、ならびに急性腎損傷に関連した。弁傍ARの前兆には、低ベースラインの左心室駆出分画(LVEF)および弁輪または装置のサイズ不十分が含まれる。Kensuke Takagi博士(イタリア、Milan、San Raffaele Hospital)は、博士の病院では、CoreValve(Medtronic)で処置した患者の連続79人中、32人の患者がグレード2+から4+のARを発症したと報告した。多変量解析において、弁−弁輪の不一致は、特に大動脈弁輪が大きいと、より重度の弁傍ARを発症する重大な前兆となったが、さらに強力な前兆は弁の移植が低いことであり、これは3倍を超えて危険性を増大させた。後拡張は弁傍ARの処置を助け得るが、Takagiが言うには、これは最初に弁が正確に位置付けられた患者においてのみ好適であった。Leon MB、Piazza N、Nikolsky Eらを参照されたい。経カテーテル大動脈弁移植の臨床試験に対して標準化されたエンドポイントの定義は、非特許文献12、非特許文献13を参照されたい。
【0012】
経カテーテル心臓弁での漏出を解決することによってもたらされる主な可能性は、低リスクの患者セグメントに対する市場の成長である。低リスク市場セグメントにおける市場機会は、高リスクセグメントのサイズの2倍のサイズであり、したがってTAV装置には優れた長期の血行力学的性能を提供する技術があり、そのため医師がSAVRよりもTAVを推奨するのは不可避である。
【0013】
米国では300万人を超える人が中等度または重度の僧帽弁逆流症(MR)に罹患しており、毎年250,000人を超す新たな患者が診断される。機能的MRは、うっ血性心不全を有する患者の84%に見出すことができ、そのうち65%では弁閉鎖不全の程度は中等度または重度である。機能的僧帽弁逆流症の長期予後の意味は、心不全または死亡に対するリスクの著しい上昇を実証し、この上昇は逆流症の重症度に直接相関する。軽度の逆流症に比べて、中等度から重度の逆流症には、死亡の危険性が2.7倍、心不全の危険性が3.2倍伴い、したがって医療費は著しく高くなる。
【0014】
僧帽弁逆流症の処置は、兆候および症状の重症度および進行によるものである。未検査のまま放置すると、僧帽弁逆流症は心肥大、心不全、および僧帽弁逆流症の重症度のさらなる進行をもたらし得る。軽度の症例に対して、医学的処置は十分であり得る。より重度の症例に対して、弁の修復または置換に心臓手術が必要であることがある。これらの開胸/開心の手順は、特に高齢患者および重度の共存症のある患者には、重大な危険性をもたらす。数社が、僧帽弁を修復するのに侵襲性の低い取組みを開発しようとしているが、疾患の性質が不均一であるため、解剖学的適用可能性が制限されることを見出しており、現在外科的取組みに等しい有効性を実証するのに困難を極めている。侵襲性の低い心臓弁置換に対する革新的な取組みは有望な代替であり、経カテーテル僧帽弁移植(TMVI)装置が開発中である。PVLはこれらの装置では主な問題点である可能性があり、TAV装置の場合におけるよりも重大である。これは、一つには、僧帽弁置換部位に程度の低い石灰化が観察され、装置により大きな保持力があることが必要とされるためである。
【0015】
TAVおよびTMVI装置は、大動脈閉鎖不全症(または大動脈弁逆流症)および僧房弁狭窄症それぞれの疾患状態を処置するのにも用いることができ、これら疾患状態は前述の弁疾患の状態に比べてさほど蔓延していないが、臨床上の予後/重症度は同様またはそれより悪い。これらは、バルブ−イン−バルブ法とも呼ばれる、すでに外科的に植え込まれている、衰えつつある生物人工器官(bioprostheses)内に植え込むこともできる。
【0016】
これらの状態を処置するために、インサイチューで拡張するときに圧力によって活性化されるシール付けリングを用いて、配置部位に装置をシールするための手段を含む、改善された装置が開発されている。この装置が拡張すると、膨潤性の材料がシール付け手段中に放出され、これがシール付け手段を拡張させ、血管壁に合致させ、装置を所定の位置に固定する。Endoluminal Sciences Pty Ltd.による特許文献1を参照されたい。これらシールの機械的束縛は極めて実現困難であり、インサイチューでの速やかな活性化、固定するのに十分であるが移植された人工器官の変形または置き換えには十分でない圧力、生体適合性、長期間にわたるインサイチューでの強度および柔軟性の保持を必要とする。
【0017】
したがって、本発明の目的は、インサイチューでステントおよび大動脈弁などの血管内装置をシールするための、改善された、医師が制御することができる手段を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる一目的は、移植後にあらゆるリモデリングが生じた場合、結果として生じたいかなる漏出もシールされるよう、血管の解剖学的構造に対するシール付け手段の能動的な合致のための手段を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる一目的は、特に、生来の弁において十分な石灰化のない個体において、および疾患状態として大動脈閉鎖不全を有する個体において、TAV装置の固定化、係留、またはTAV装置に対する着陸プラットホーム(landing platform)を支持するためのシール付け手段を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる一目的は、腔内装置を血管壁に永久的にシールするのに好適な化学的および物理的性質を有する、ヒドロゲルなどの拡張性材料を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.定義
「ヒドロゲル」は、有機ポリマー(天然または合成の)が、共有結合性、イオン性、または水素結合によって架橋されて、水分子を捕捉してゲルを形成する3次元の開放格子(open−lattice)構造を作り出す場合に形成される物質を意味する。
【0030】
「生体適合性」は一般的に、受容者に対して非毒性であり、被験体にいかなる重大な有害作用を引き起こさない材料およびあらゆる代謝物またはその分解生成物を意味する。
【0031】
「生分解性」は一般的に、生理学的条件下で加水分解または酵素作用によって、被験体が代謝、排出、または排泄することができるより小型の単位または化学種に分解または腐食する材料を意味する。分解時間は、材料の組成および形態の関数である。
【0032】
本明細書で用いられる「速やかな」拡張は、活性化後または液体に曝露後10分未満に、より好ましくは5分未満に所望の寸法に到達する材料を意味する。
【0033】
II.腔内装置シール
A.腔内装置
腔内人工器官およびシール付け装置は、第1の非展開(undeployed)の縮小されたプロファイルの立体配置において、体腔を通って前進する。インサイチューで位置付けると、シール付け装置は縮小された放射状のプロファイルの立体配置から、拡大された放射状のプロファイルを有する第2の立体配置に拡張する。インサイチューおよび第2の立体配置において、シール付け装置は、人工器官と体腔の壁との間に位置付けられるように設計される。一実施形態において、腔内人工器官が体腔における所望の場所にある場合、典型的に、導入カテーテルから展開され、導入カテーテルの上で、人工器官は数々のメカニズムによって拡張された放射状の立体配置に移動することができる。いくつかの実施形態において、人工器官はバネで拡張することができる。あるいは、バルーンまたは拡張性部材を人工器官の内腔内で膨らませて、血管内で拡張された放射状の立体配置に移動させることができる。この放射状の膨張は、今度は、シール付け装置を体腔の壁に対して押し付ける。このシールの利点の一つは、シールは間隙を満たすだけであり、人工器官または移植物の、物理的および機能的両方の、配置および完全性に影響を及ぼさないことである。
【0034】
一実施形態において、シール付け装置は、血管内動脈瘤修復(endovascular aneurysm repair)(EVAR)用に、エンドリークを防ぎ、その後の人工器官の遊走および/または外れを防ぐために、腔内人工器官の近位、中央、および/または遠位の末端を完全にシールするように設計される。
【0035】
別の一実施形態において、シール付け装置は、経カテーテル大動脈弁を完全にシールするように設計される。
図1A、1B、および1Cは、経カテーテル大動脈弁(TAV)10(
図1A)、制御下の活性化可能なシール12(
図1B)、およびTAV14の周囲に配置されたシール(
図1C)の透視図である。
【0036】
図2A、2B、および2Cは、望遠鏡式にTAV10の流入側に向かって圧着された
図1CのTAV14の透視図であり(
図2A)、TAV10およびシール12は拡張状態であり、ステントはTAVの底部セクションと整列され、活性化ワイヤ16は活性化されてシール12を液体に曝露し(
図2B)、展開後、血液と接触すると、シール12はシール内でヒドロゲルの膨潤によって拡張する。
【0037】
腔内装置は、腔内人工器官と独立に移動するように設計され得る。あるいは、腔内装置は、標的部位への送達のために人工器官に接続され得る。腔内装置は、縫合、圧着、弾性の部材、磁性または接着性の接続を含めたあらゆる数々の手段によって人工器官に接続され得る。
【0038】
一実施形態において、シール付け手段は、人工器官移植物に対して後方に位置付けられ、シール時に、移植物に隣接する位置に拡張され引き入れられる。これは、移植物周囲に拡張するシールを有し、かつ/または移植物が導入シースから出てきたときに移植物周囲に移動するようにシールを圧着する、配置時にシールを移植物周囲に引っ張るための縫合または弾性の手段を用いて実現される。これは、輸送中に血管壁を損傷する危険性がすでにある、大動脈弁など、直径の大きな移植物では極めて重要である。
【0039】
シール技術の後者の実施形態の主要な特徴は、シール技術により腔内人工器官の圧着のプロファイルの保存が可能になることである。シール技術は、人工器官に対して遠位または近位に圧着される。この技術の一態様において、シールは、シールの拡張によって人工器官と整列される。別の一態様において、人工器官のシールゾーンは、活性化部材の使用によって人工器官が拡張する前にシールゾーンと整列される。さらに別の一実施形態において、シールは、活性化部材の使用によって、人工器官が拡張する前に人工器官のシールゾーンと整列される、活性化部材は弾性または非弾性の材料から作ることができる。
【0040】
さらなる実施形態において、シールは、装置骨格と装置との間に、または骨格の外側上に位置付けられる。
【0041】
さらなる一実施形態において、腔内装置は、1つまたは複数の係合部材をさらに含むことができる。1つまたは複数の係合部材は、留め金、フック、または血管壁と係合させるための他の手段を含むことができ、それゆえに装置をそれに固定する。
【0042】
B.シール
シールは、腔内人工器官と血管壁との間の凸凹に合致させるように設計されている柔軟な成分を含む。シールは、第1のまたは内側の表面、および第2のまたは外側の表面を有する、概ねリング様の構造を含む。これは、膨らみ、装置の周囲にシールを合致させるように、配置後、液体との接触時または発泡体の活性化時、膨潤する材料を含んでいる。
【0043】
図3に示す通り、シール12は、カプセル内カプセル(a capsule−within−a capsule)である。シール12は、一緒に用いる装置に応じて、様々な形状において提供され得る。好ましい実施形態は「D」形状であり、平坦な部分が支持構造および/または移植される装置に付着されている。
【0044】
シールは、透過性の、半透性の、または不透過性の材料から構成されていてよい。これは、生物安定性(biostable)でも、または生分解性でもよい。例えば、シールは、小型、大型、または一対の孔サイズを有し、以下の特徴:独立気泡もしくは解放気泡の、柔軟なまたは半硬質の、プレーンな(plain)、メラミンの、または後処理の浸透性の発泡体を有する、ポリエーテルまたはポリエステルポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、シリコーン、低密度から高密度のセルロースなどの、天然のポリマーまたは合成のポリマーから構成されていてよい。シールのためのさらなる材料には、ポリビニルアセタールスポンジ、シリコーンスポンジゴム、独立気泡シリコーンスポンジ、シリコーンフォーム、およびフルオロシリコーンスポンジが含まれ得る。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチルテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロンの糸織物(woven yarn)、ポリプロピレン(PP)、コラーゲンまたはタンパク質ベースのマトリックスを含めた血管グラフト材料を用いて特別にデザインされた構造も用いることができる。TAV装置を、鋭利な/石灰化したノジュールに対して拡張した場合、破壊をもたらす損傷が存在しないよう、強度が高いという理由で、PEEKがこの時点で好ましい材料であり、同時に、比較的薄いシートの材料も用いることができ、より低いプロファイルを維持する助けとなる。
【0045】
シール材料は、独立に、または他のタイプのポリマー、チタン、外科用スチール、または形状記憶合金から作られたメッシュと組み合わせて用いることができる。
【0046】
他の実施形態において、カプセルは、1つまたは複数のコンパートメントを含むように分割されてもよい。コンパートメントは、比較的近い間隔で置かれてよい。さらに、隣接するコンパートメント間の距離は変化することができる。この実施形態の分割されたカプセルは、支持部材が第2の拡大された放射状の立体配置にある場合、腔内人工器官の周りに完全には拡張し得ない。支持部材がカプセルを含む一実施形態において、カプセルは支持部材によって実質的に取り囲まれていてよい。しかし、他の実施形態において、カプセルは、支持部材によって部分的にのみ包まれていてよい。
【0047】
カプセルは、その中に薬剤を保持するために、外側壁を含むことができる。外側壁は、適切に柔軟性の、生体適合性の材料から作られていてよい。あるいは、カプセルは、そこから薬剤を放出させる予めデザインされている破壊のメカニズムを有する、より強固な構造を含むことができる。適切な材料の例には、それだけには限定されないが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、またはフルオロシリコーンが含まれる。カプセルの構築に用いることができる他のフルオロポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオリド、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン(polylychlorotrifluoroethylene)、パーフルオロポリエーテル、フッ化エチレンプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン、ポリスルホン、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が含まれる。ガラス、バイオガラス、セラミック、白金、およびチタンなどの非重合性材料も含まれ得る。架橋されているコラーゲンまたはアルギネートなどの、生物学的なベースの材料もさらに含まれ得る。前述のリストは、適切な材料の一例として挙げるにすぎず、網羅的なリストではないことが理解されよう。カプセルは、これら上記に挙げたのとは異なる材料、または材料の組合せから構成されてもよい。
【0048】
支持部材からの薬剤の放出速度は変化することができる。いくつかの実施形態において、カプセルを破裂させるために支持部材に対して加える圧力により、1つまたは複数の薬剤を放出することができる。この速度は殆ど即時放出であり、接着剤を血管に送達して、人工器官を血管壁に貼付するのに特に有用である。しかし、他の薬剤を、より遅い速度、または少なくとも可変の速度で放出してもよい。さらに、薬剤を、主な薬剤(例えば、接着剤)の初めの放出後に放出してもよい。
【0049】
例えば、支持部材が分割されたカプセルを含む一実施形態において、放出される第1の薬剤は、予め規定された初めの圧力下で破裂するように設計された外壁を含む、1つまたは複数の「即時放出の」サブコンパートメント中に保持されてよい。支持部材は、初めの圧力に抵抗するが、より大きな圧力を加えられた場合に破裂し、または破裂しないがある期間にわたってむしろ分解してその中に保持されている薬剤を放出するように設計された外側壁を有する、1つまたは複数の遅効性のサブコンパートメントを含むことができる。
【0050】
典型的には、カプセルは、予め決定された範囲の圧力で破裂して、1つまたは複数の薬剤を放出するように設計される。破裂圧力の範囲は、5psiから250psiの間、5psiから125psiの間、10psiから75psiの間、またはおよそ50psiを含む。
【0051】
様々な異なる技術またはプロセスを用いて、圧力活性化性のカプセルまたはコンパートメントを形成することができる。一実施形態において、例えば、圧力活性化性のカプセルを形成するためのプロセスは、形成の間カプセルにプレストレスを加える(pre−stressing)ことを含む。プレストレスを加えられた材料は、外圧力にさらされた場合に伸びる能力が限られており、応力−ひずみ曲線上の限界応力に達すると破壊する。この方法の第1段階には、その内容物にやはり適合性である生体適合性のカプセル材料(例えば、接着性の材料または広範囲の他のタイプの材料を含むことができる物質)を選択することが含まれる。カプセル材料には、カプセルが用いられる特定の適用に適する引っ張り強度もなければならない。
【0052】
この方法の次の段階には、並より小さい(undersized)カプセルを形成することが含まれる。並より小さいカプセルは、本質的に、チューブの一端がシールされている(例えば、浸漬、ディップ成形、真空成形、吹込成形などによって)、押し出され、伸長されたチューブの形状(例えば、「ソーセージ」)である。このプロセスは、カプセルをその最終的な形状に拡張することによって継続する。カプセルは、例えば、カプセル材料が応力レベル内でプレストレスを加えられるように好適な工具を用いて、伸展(例えば、熱または冷)することによって拡張することができ、それによって、臨床上関連のあるバルーンの膨張圧は、カプセル材料の破壊応力を超える。この方法は、カプセルを所望の内容物で充填することをさらに含むことができ、カプセルは単一のステップでプレストレスを実現するような圧力下にある。カプセルを充填した後、カプセルをシールすることができる(例えば、加熱溶接プロセス、レーザー溶接プロセス、溶剤溶接プロセスなどを用いて)。
【0053】
別の一実施形態において、カプセルは、真空形成プロセスまたは他の適切な技術を用いて、エアピローまたはバブルラップ型のカプセルアセンブリーを形成することによって形成することができる。このプロセスの次の段階には、カプセルアセンブリーの基部でフィルムを穿孔し、個々のカプセルに不活性な雰囲気化で所望の内容物を充填することが含まれる。カプセルを充填した後、別のフィルムを穿刺孔にわたって適用し、熱および/または溶剤を局所的に適用することによって、穿刺孔を再シールすることができる。他の方法を用いて穿刺孔をシールすることができる。いくつかの実施形態において、穿刺孔がカプセル自体と同じ圧力で再破裂し、その結果いくらかの薬剤(例えば、カプセル内の接着性の材料)が腔内人工器官の対応する部分上に流れるように、カプセルを設計することができる。
【0054】
1つまたは複数の破壊点を、カプセル内に作り出すことができる。このプロセスには、チューブの一端がシールされている(例えば、浸漬、ディップ成形、真空形成、吹込成形などによって)、押し出され、伸長されたチューブとして成形されたカプセルを作り出すことが含まれ得る。カプセルは、ポリマー材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、およびシリコーンゴム)、または他の適切な材料から構成され得る。伸長されたチューブに沿った1つまたは複数の予め決定された場所に、このプロセスは、厚さが本質的に減少した領域を作り出すことを含み得る。これらの領域は、ツール(例えば、カプセルの長さに沿って剃刀の刃の仕上げを有するコアピン)、レーザーアブレーションなどを用いて、部分的に浸透性の孔を作り出し、基材よりも弱い軸方向の接着性のジョイント(例えば、シートからのチューブ)を作り出し、または他の適切な技術を用いて形成することができる。この方法は次に、薄くなり、または弱化した領域を破裂するのに必要とされるより小さな圧力で、カプセルを所望の内容物で充填することを含む。カプセルを充填した後、カプセルの開放されている終端を、上記に記載した溶接プロセスまたは他の適切なプロセスの一つを用いてシールすることができる。
【0055】
さらに別の特定の一実施形態において、1つまたは複数の応力点をカプセル内に作り出すことができる。この方法は、上記に記載したあらゆる技術を用いて、カプセルを形成し、カプセルに所望の内容物を充填することを含むことができる。カプセルを形成し、カプセルを非展開の立体配置にした後、プロセスには、予め決定されたピッチおよび張力で、カプセルの周りに縫合(例えば、ニチノールワイヤ)を包むことがさらに含まれ得る。カプセルが、非展開の状態から展開された立体配置に動かされ、かつ湾曲し、または円周の形状をとる場合、縫合は予め決定された点でカプセルを圧縮する。このような点では圧力が上昇するため、これらの点でカプセル壁において応力点が作り出される。
【0056】
別の一実施形態において、装置は、ひとたび予め決定された圧力がその点に対して適用されるとカプセルの浸透を引き起こす、スパイクまたは他の隆起した領域など、支持部材上に1つまたは複数の圧力点を含むことができる。
【0057】
圧力が活性化するカプセルまたはコンパートメントを形成するためのなおさらに別の特定の一実施形態は、カプセルの内側コンパートメントがシールされ、接着剤または他の所望の薬剤を含むカプセルの外側コンパートメントから分離されている、二重壁のカプセルを作り出すことを含む。この内側コンパートメントは、従順性の、または柔軟性の材料から構成されていてよく、外側コンパートメントは、実質的に従順性の低い材料から構成されていてよい。外側コンパートメントには、破壊点があっても、またはなくてもよい。内側コンパートメントは、従順性の低いレザバーを有する一方向弁によって液体が連絡している。このレザバーは、拡張性部材またはバルーンの膨張によって高圧に加圧され、それによってバルブを開け、内側コンパートメントを加圧および拡張するように設計されている。このプロセスは次に、外側コンパートメント(接着剤を含んでいる)が破裂するまで、外側コンパートメントを加圧する。この特定の実施形態の一利点は、これは、その他の方法では外側の拡張性部材またはバルーン単独で可能であるよりも高い値まで、カプセル内の圧力を上昇させることができることである。
【0058】
なおさらなる一実施形態において、カプセルは、比較的強固な材料またはメッシュから作られた内側コンパートメント、および比較的柔軟な材料から作られた外側コンパートメントを有する。この実施形態において、内側コンパートメントは、薬剤を含んでいるレザバーとして働き、予め決定された圧力で破損または破裂するようにデザインされている。外側コンパートメントはまた、薬剤を放出させる破壊圧力点を有することができる。内側コンパートメントの強剛性により、長期間安定性およびカプセル化された薬剤の貯蔵安定性がもたらされ得る。破裂圧力の適用は、例えば、送達装置の入り口部位(例えば、大腿動脈)で外側のソースに接続されているカプセルに直接接続されているチューブによって、局所的または遠隔的いずれかで行うことができる。
【0059】
拡張性カプセル
一実施形態において、カプセルがシール内に「吊るされている」ように、シールがカプセルを完全に取り囲んでいる。詳しい一実施形態において、例えば、シール12は、カプセル106から放出された薬剤(複数可)108のあらゆる塞栓形成(遠位または近位)を防ぐように設計されている多孔性材料を含むことができる。シールは、相対的に多孔性から相対的に非多孔性までの、段階的な程度の相対的空孔性を有することができる。好ましい細孔のサイズは、液体が膨潤性材料に速やかにアクセスすることができるように、5ミクロンから70ミクロンであり、より好ましくは約35ミクロンである。
【0060】
好ましい実施形態において、カプセルは、シール内の単一の環状コンパートメントであり、腔内人工器官の周辺を完全に取り囲んで拡張する。しかし、他の実施形態において、カプセルは、1つまたは複数のさらなるコンパートメントまたはセクションを含むことができ、腔内人工器官を完全に取り囲んで拡張しなくてもよい。さらに、カプセルは、シール内に含まれていても、またはいなくてもよく、シールに対して装置(apparatus)上の異なる位置に位置付けられてよい。さらに、カプセルは、特定の適用、薬剤(複数可)、腔内人工器官の立体配置、および数々の他の要因に応じて、様々な異なる形状および/またはサイズを有することができる。
【0061】
透過性および不透過性の膜
好ましい一実施形態において、
図3に示す通り、シール12は、内側膜18および外側膜20の2つの膜を含んでいる。発泡体またはヒドロゲルなどの拡張性材料22は、内側膜18内に配置される。内側膜18は半透性(液体は進入させるが、捕捉されているヒドロゲルまたは発泡体は退去させない)であるが、外側膜20は、任意選択の、予め決定された破裂点24以外は、不透過性である。外側膜20は、ポリマー22を時期尚早の膨潤から保護するために、貯蔵および輸送の間、ならびにあらゆる手順前の調製(例えば、装置のすすぎまたは洗浄)の間、液体に対して不透過性であるようにデザインされている。外側膜20はまた、最高14atmの圧力が加えられた場合でも、破れず、または生来の石灰化の鋭利な縁端によって穿孔もしくは貫通されないよう、強力かつ穿孔に耐えるようデザインされている。これにより、内側膜18の破裂が防止され、拡張性材料またはヒドロゲル22の塞栓形成のあらゆる危険性が緩和される。破裂点24は、シールが所定の位置に拡張される場合にのみ、血液などの液体を拡張性シール中に浸透させ、それによって漏出を防ぐ。
【0062】
透過性膜は、ポリイミド、リン脂質二重層、複合薄膜(TFCまたはTFM)、セルロースエステル膜(CEM)、荷電モザイク膜(CMM)、両極性膜(BPM)、および陰イオン交換膜(AEM)を含めた、様々なポリマーまたは有機材料から作ることができる。
【0063】
液体は入れるがヒドロゲルを逃さないのに好ましい孔サイズの範囲は、液体が膨潤性材料に速やかにアクセスすることができるように、5ミクロンから70ミクロン、より好ましくは約35ミクロンから70ミクロン、最も好ましくは約35ミクロンである。
【0064】
透過性膜は、透過性材料のみで形成されていてもよく、または不透過性である領域が1つもしくは複数あってもよい。透過性膜を用いて、移植物もしくは人工器官に隣接する装置の、または装置の支持部材と接触する装置の、内側上など、望ましくない領域におけるシールの形状を、膨潤が乱さないことを保証し得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、第2の不透過性膜は、プラズマ蒸着、真空蒸着、共押出し、または加圧積層で適用される。
【0066】
拡張性材料
水溶性の液体に接触すると膨潤する拡張性材料が好ましい。最も好ましくは、これらの材料は、2倍から100倍、より好ましくは50倍から90倍、最も好ましくは約60倍拡張する。移植部位の血液および/または他の液体は、破られた後、シール中に浸透することができ、気体の反応生成物の形成もしくは放出により、乾燥したまたは拡張性の材料に液体を吸収させ、膨潤させ、または反応して拡張させる。半透性の内側膜18は、拡張性材料22がシール12を逃すのを妨げるが、液体の進入は許す。体積を拡張することによって、この材料は腔内の空間をシールする。
【0067】
適切な物理的性質および化学的性質を有するあらゆる拡張性材料を用いることができる。ある実施形態において、拡張性材料はヒドロゲルである。他の適切な材料には、活性化時に形成される発泡体およびスポンジが含まれる。
【0068】
拡張性材料は、室温および37〜40℃の両方で安定であり、放射線または蒸気などの1つまたは複数の手段によって滅菌されるように選択される。スポンジまたは発泡体は、組織の内殖またはマトリックスの内皮化(endothelialisation)を許す生体適合性材料から作ることができる。このような内皮化または組織の内殖は、好適なポリマー材料を選択することによって、またはポリマー骨格を適切な成長促進性の因子もしくはタンパク質でコーティングすることによってのいずれかで促進され得る。
【0069】
1.ヒドロゲル
ヒドロゲルは、速やかな膨潤をもたらすように、またカプセルの完全性が破られた場合に生体適合性であるように選択される。2種以上のヒドロゲル、または膨潤する他の材料を用いることができる。
【0070】
現在の拡張性ゲルよりも強力でより弾力的である拡張性ゲルが開発されている。これらのゲルは、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、または4分未満、生理学的液体に曝露された場合、速やかに、乾燥状態の少なくとも10×、20×、25×、30、または40×、より好ましくは、乾燥状態の最高50×拡張することができる。これらのより強力なゲルは、典型的には、分子強化分子として働く、炭素原子が20個を超え、かつ/または分子量が400Daを超え、より好ましくは炭素原子が40個を超え、かつ/または分子量が800Daを超える分子の長鎖架橋剤を用いて合成され、優れた膨潤性の性質を維持する一方で、より弾力的で長持ちのするゲルを作り出す。これらゲルの膨潤力は、典型的にはおよそ0.0005N/mm
2から0.025N/mm
2、好ましくは0.002N/mm
2から0.012N/mm
2である、必要以上の半径方向力を行使しないように調整することもできる。
【0071】
いくつかの実施形態において、これらのゲルを、外科手術装置に取り付ける前にゲルをカプセル化するのに用いられる、基礎となる膜またはメッシュ上に噴霧乾燥し、またはそれに対して共有結合性に付着することができる。ゲルは、基礎となる膜またはメッシュ上の1つまたは複数の官能基に対して共有結合を形成することができる官能基を、1つまたは複数導入することによって、共有結合性に付着することができる。適切な官能基には、それだけには限定されないが、アリル基、ビニル基、またはアクリル基が含まれる。官能基は、ゲルおよび/もしくは膜もしくはメッシュ上に直接、またはより長い/より大型の化学的部分の一部として導入することができる。本明細書で用いられる「アリル」は、構造式H2C=CH−CH2Rを有する基を意味し、式中Rは、残りの分子、すなわち、ヒドロゲルおよび/または基礎となる膜もしくはメッシュに対する接続点である。本明細書で用いられる「アクリル」は、構造H
2C=CH−C(=O)−を有する基を意味する。基に好ましいIUPAC名は、プロパ−2−エノイルであり、(あまり正確ではないが)アクリリルまたは単にアクリルとしても公知である。アクリロイル基を含む化合物は、「アクリル(acrylic)化合物」と呼ぶことができる。本明細書で用いられる「ビニル」は、部分−CH=CH
2を含む基を意味し、これはCH
2=CH
2であるエテンの誘導体であり、水素原子1個が、基礎となる基材または膜に対する結合など、いくつかの他の基または結合で置き換えられている。ビニル基は、ヒドロゲルおよび/または基礎となる膜もしくはメッシュ上に直接導入することができ、あるいは、より長い/より大型の鎖の一部であってよい。
【0072】
上記に記載した長鎖親水性架橋剤は、マイケル付加反応など、フリーラジカル重合反応またはさらなる反応に関与することができる少なくとも2個の、好ましくは2個を超える反応性官能基(例えば、アリル、アクリリル、ビニルなど)を有し、少なくとも分子の一部が基材に付着している場合は、ゲルを基材に係留して、ゲルが破られた場合に、より小型のゲル粒子の放出を防ぐ。
【0073】
長鎖架橋剤、および/またはゲルの多孔性基材に対する化学的付着により、周期的な装着をさらに持ちこたえることができるゲルがもたらされる。ゲルを含んでいるこれらのシールは、環状またはストリップの形状を含めた、あらゆる形状に作ることができる。これら架橋剤の背後にある原理は、たった2個の重合性の基を有する短い架橋剤を有することよりもむしろ、本明細書に記載する架橋剤が、複数の重合性の/反応性の基を有する長鎖親水性ポリマー(例えば、PVA、PEG、PVAc、天然の多糖、例えば、デキストラン、HA、アガロース、およびデンプン)を含むことである。長鎖架橋剤により、「断片化(fragmenting)」しにくいヒドロゲルがもたらされ、このことは、小型のゲル粒子が離脱し、脳に塞栓形成するあらゆる危険性を最小にするので重要である。長鎖架橋剤はまた、ヒドロゲルの完全性の増大をもたらし、ヒドロゲルをさらにしなやかにし、それによって周期的な装着の下でもいっそう弾力的にし、これはヒドロゲルの長期耐久性にとって重要な要因である。この利点は、上記で注目した通り、炭素原子20個未満および/または分子量400Da未満の、架橋に用いることができる活性基(例えば、ビニル、アクリル、アリル基)を2個有する、短鎖の2価のリンカーと架橋されているヒドロゲルに比べて、およそ0.0005N/mm
2から0.025N/mm
2の、より好ましくは、0.002N/mm
2から0.012N/mm
2の間の、非常に強力なヒドロゲルである。興味深いことに、これらのゲルは非常に堅固であり、同時に非常に良好な膨潤性の特徴を有する。非常に強力なゲルは、大幅に、かつ/または速やかに膨潤することはない。本明細書で用いられる、非常に強力は、一般的に、約0.0005N/mm
2から0.025N/mm
2を超える強度を有するヒドロゲルを意味する。望ましい膨潤率は30×以上であり、理想的な範囲は50×〜80×である。膨潤率が高いほど、装置の導入プロファイルは低くなり、アクセス血管(大腿動脈、橈骨動脈など)がより小さい患者をさらに多く処置できるようになる。
【0074】
このようなゲルの適切な化合物には、それだけには限定されないが、アクリル酸、アクリルアミド、または他の重合可能なモノマーが含まれ、架橋剤、例えば、ポリビニルアルコール、および部分的に加水分解されているポリ酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、またはアクリル基、アリル基、およびビニル基などの反応性側基を有する様々な他のポリマーを用いることができる。さらに、広範囲の天然の親水コロイド、例えば、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプン、ガラクトマンナン、ペクチン、ヒアルロン酸などを用いることができる。例えば、アリルグリシジルエーテル、アリルブロミド、アリルクロリドなどの試薬を用いて、必要な二重結合を組み入れて、アクリル基、アリル基、およびビニル基を含むものなど、フリーラジカル重合反応または付加反応に関与させてこれらポリマーのバックボーンにすることができる。使用する化学反応に応じて、反応性二重結合を組み入れるのに、数々の他の試薬を用いることができる。
【0075】
実施例1および2に記載する通り、短時間に実質的な膨潤を有するヒドロゲルを同定するための研究が行われた。合成のモノマーの重合および架橋に基づくヒドロゲルの膨潤に影響を及ぼす主な要因は:
(1)モノマーのタイプ、
(2)架橋剤のタイプ、
(3)モノマーおよび架橋剤のゲル中の濃度、および
(4)モノマーの架橋剤に対する比率
である。
【0076】
速やかに膨潤するヒドロゲルの例には、それだけには限定されないが、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、特に、架橋されているアクリル酸ポリマーおよびコポリマーが含まれる。適切な架橋剤には、アクリルアミド、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、および複数の重合性の基を有する長鎖親水性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアリルグリシジルエーテルで誘導体化したものが含まれる。適切なヒドロゲルを形成するのに用いることができる材料のさらなる例には、アルギネートなどの多糖、ポリホスファゼン(polyphosphazine)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ならびに各々のコポリマーおよびブレンドが含まれる。例えば、米国特許第5,709,854号、第6,129,761号、および第6,858,229号を参照されたい。
【0077】
一般的に、これらポリマーは、水、緩衝塩溶液、またはアルコール水溶液などの水溶液に少なくとも部分的に可溶性である。いくつかの実施形態において、ポリマーは荷電した側基を有し、またはその1価のイオン塩である。陽イオンと反応することができる酸性側基を有するポリマーの例として、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリスチレンなどのスルホン化ポリマーがある。アクリル酸またはメタクリル酸の、ビニルエーテルモノマーまたはポリマーとの反応によって形成される酸性側基を有するコポリマーも用いることができる。酸性基の例には、カルボン酸基およびスルホン酸基がある。
【0078】
陰イオンと反応することができる塩基性側基を有するポリマーの例には、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、およびいくつかのイミノ置換されているポリホスファゼンがある。ポリマーのアンモニウム塩または四級塩も、バックボーンの窒素またはペンダントのイミノ基から形成することができる。塩基性側基の例にはアミノ基およびイミノ基がある。
【0079】
水溶性ゲル化剤、例えば、多糖ゴム、より好ましくは、アルギネートなどのポリアニオン系ポリマーは、ポリカチオン性ポリマー(例えば、ポリリジンなどのアミノ酸ポリマー)と架橋してシェルを形成することができる。例えば、Goosenらへの米国特許第4,806,355号、第4,689,293号、および第4,673,566号;Limらへの米国特許第4,409,331号、第4,407,957号、第4,391,909号、および第4,352,883号;Rhaらへの米国特許第4,749,620号および第4,744,933号;ならびにWangらへの米国特許第5,427,935号を参照されたい。アルギネートなどのヒドロゲル形成性ポリマーを架橋するのに用いることができるアミノ酸ポリマーには、カチオン性ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ならびにこれらのコポリマーおよびブレンドが含まれる。
【0080】
他の例示の多糖には、キトサン、ヒアルロナン(HA)、およびコンドロイチン硫酸が含まれる。アルギネートおよびキトサンは、ある溶液条件下で架橋ヒドロゲルを形成し、HAおよびコンドロイチン硫酸は、ヒドロゲルを形成するための架橋基を含むように改変されるのが好ましい。アルギネートは、イオン性架橋によって、2価の陽イオンの存在下でゲルを形成する。ヒドロゲルの性質は、アルギネート前駆物質(分子量、組成、およびマクロマー濃度)を変化させることによってある程度制御することができるが、アルギネートは分解せず、むしろ2価の陽イオンを1価のイオンによって置き換えた場合に溶解する。さらに、アルギネートは細胞の相互作用を促進しない。ポリリジンで架橋したアルギネートヒドロゲルの記載には、Limらへの米国特許第4,391,909号を参照されたい。ポリリジンの代わりに架橋剤として用いるのに適する他のカチオン性ポリマーには、ポリ(β−アミノアルコール)(PBAA)が含まれる(Ma Mら、Adv. Mater.、23巻、H 189〜94頁(2011年))。
【0081】
キトサンは、天然の非哺乳類多糖であるキチンを部分的に脱アセチル化することによって作られるが、哺乳類の多糖に酷似しており、それが細胞カプセル化にとって魅力的となっている。キトサンは、主にリゾチームによってアセチル化されている残基が加水分解されることにより、分解する。脱アセチル化の度合いが高いほど、分解時間は遅くなるが、疎水性が増大するため細胞の接着は良好になる。希酸条件下(pH<6)ではキトサンは陽性に荷電し、水溶性であるが、生理学的pHではキトサンは中性で疎水性であり、固体の、物理的に架橋したヒドロゲルの形成がもたらされる。ポリオール塩の添加により、中性のpHでの細胞のカプセル化が可能になり、ゲル化は温度依存性になる。
【0082】
キトサンには、修飾することができるアミン基およびヒドロキシル基が多くある。例えば、架橋性のマクロマーを作り出すのに、キトサンをメタクリル酸にグラフトすることによって修飾し、生理学的pHでの水溶性を増強するのに、キトサンを乳酸にやはりグラフトする。この架橋されたキトサンのヒドロゲルは、リゾチームおよび軟骨細胞の存在下で分解する。光重合性のキトサンマクロマーは、キトサンを光反応性のアジド安息香酸基で修飾することによって合成することができる。開始剤の非存在下でUVに曝露すると、相互に、またはキトサン上の他のアミン基と反応してアゾ架橋を形成する反応性のニトレン基が形成される。
【0083】
ヒアルロナン(HA)は、身体中の多くの組織に存在し、胚発生、創傷治癒、および血管新生において重要な役割を果たす、グリコサミノグリカンである。さらに、HAは、細胞表面受容体によって細胞と相互作用して、細胞内シグナル伝達経路に影響を及ぼす。総合して、これらの特質により、HAは、組織工学の骨格として魅力的なものとなっている。HAは、細胞のカプセル化のためにメタクリレートおよびチオールなどの架橋性部分で修飾することができる。架橋されたHAゲルはヒアルロニダーゼによる分解を依然として受けやすく、ヒアルロニダーゼはHAを様々な分子量のオリゴ糖フラグメントに分解する。耳介の軟骨細胞は、光重合したHAヒドロゲル中でカプセル化され得、ゲル構造は、マクロマー濃度およびマクロマーの分子量によって制御される。さらに、光重合したHAおよびデキストランのヒドロゲルは、未分化のヒト胚性幹細胞の長期培養物を維持する。HAヒドロゲルは、マイケル型付加反応のメカニズムによってやはり製作されており、このメカニズムではアクリル化HAがPEG−テトラチオールと反応する、またはチオール修飾されているHAがPEGジアクリレートと反応するのいずれかである。
【0084】
コンドロイチン硫酸は、皮膚、軟骨、腱、および心臓弁を含めた多くの組織において見出される高パーセント値の構造性プロテオグリカンを構成し、ある範囲の組織工学の適用に魅力的な生体高分子となっている。光架橋されたコンドロイチン硫酸のヒドロゲルは、コンドロイチン硫酸をメタクリレート基で修飾することによって調製することができる。ヒドロゲルの性質は、重合の前に、メタクリレート置換の度合いおよび溶液中のマクロマー濃度によって制御するのが容易であった。さらに、陰性に荷電したポリマーにより、膨潤圧力の増大が作り出され、これにより、ゲルは、機械的性質を犠牲にせずにより多くの水を吸い込むことができる。コンドロイチン硫酸のコポリマーのヒドロゲル、およびPEGまたはPVAなどの不活性ポリマーも用いることができる。
【0085】
生分解性のPEGヒドロゲルは、架橋を可能にするための(メタ)アクリレート官能基でエンドキャップされている、ポリ(α−ヒドロキシエステル)−b−ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(α−ヒドロキシエステル)のトリブロックコポリマーから調製することができる。PLAおよびポリ(8−カプロラクトン)(PCL)は、細胞カプセル化のための生分解性PEGマクロマーを作り出すうえで、最も一般的に用いられているポリ(α−ヒドロキシエステル)であった。分解のプロファイルおよび速度は、分解性のブロックの長さおよび化学式によって制御される。エステル結合も、血清中に存在するエステラーゼによって分解され得るが、エステラーゼは分解を加速する。生分解性PEGヒドロゲルはまた、PEG−bis−[2−アクリロイロキシプロパノエート]の前駆体から製作することができる。直鎖状PEGマクロマーの代替として、PEG分子1個あたり複数の反応性ビニル基を含んでいる、PEGベースのデンドリマーのポリ(グリセロール−コハク酸)−PEGを用いることができる。これら材料の魅力的な特徴は、分枝の度合いを制御する能力であり、この能力は結果的に、ヒドロゲルおよびヒドロゲル分解の構造上の性質全体に影響を及ぼす。分解は、デンドリマーバックボーン中に存在するエステル連結によって生じる。
【0086】
生体適合性の、ヒドロゲル形成性のポリマーは、ポリホスホエステルまたはポリホスフェートを含むことができ、ホスホエステル連結は加水分解性の分解を受けやすく、ホスフェートの放出をもたらす。例えば、ホスホエステルを、架橋性PEGマクロマーである、ポリ(エチレングリコール)−ジ−[エチルホスファチジル(エチレングリコール)メタクリレート](PhosPEG−dMA)のバックボーン中に組み入れて、生分解性のヒドロゲルを形成することができる。骨細胞によって合成されるECM成分であるアルカリホスファターゼを加えると、分解が増強される。分解生成物であるリン酸は、媒体中のカルシウムイオンと反応して不溶性のリン酸カルシウムを生成し、ヒドロゲル内の自己石灰化を誘発する。ポリホスホエステルであるポリ(6−アミノエチルプロピレンホスフェート)は、メタクリレートで修飾されてマルチビニルマクロマー(multivinyl macromer)を作り出すことができ、分解速度はポリホスホエステルポリマーの誘導化の度合いによって制御された。
【0087】
ポリホスファゼンは、バックボーンが交互の単結合と二重結合によって分離されている窒素および亜リン酸からなるポリマーである。亜リン酸原子は各々、2つの側鎖に対して共有結合している。架橋に適するポリホスファゼンは大多数の側鎖基を有し、側鎖基は酸性であり、2価または3価の陽イオンと塩架橋を形成することができる。好ましい酸性側基の例には、カルボン酸基およびスルホン酸基がある。加水分解に安定なポリホスファゼンは、Ca
2+またはAl
3+などの2価または3価の陽イオンによって架橋されているカルボン酸側基を有するモノマーから形成される。イミダゾール、アミノ酸エステル、またはグリセロール側基を有するモノマーを組み入れることによって、加水分解により分解するポリマーを合成することができる。生体内腐食性のポリホスファゼン(polyphosphazine)は、多価陽イオンと塩架橋を形成することができる酸性側基、ならびにin vivoの条件下で加水分解する側基(例えば、イミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロール、およびグルコシル)の、少なくとも2つの異なるタイプの側鎖を有する。側鎖の加水分解によりポリマーの腐食がもたらされる。加水分解性側鎖の例には、非置換の、および置換されているイミダゾールおよびアミノ酸エステルがあり、これらは基がアミノ連結によって亜リン酸原子に結合している(この様式で両方のR基が付着しているポリホスファゼンポリマーは、ポリアミノホスファゼンとして公知である)。ポリイミダゾールホスファゼンでは、ポリホスファゼンバックボーン上のいくつかの「R」基は、バックボーンの亜リン酸に環の窒素原子によって付着しているイミダゾール環である。
【0088】
全ての実施形態において、ステントを壁から押し出さず、または装置の立体配置を変えないように、十分に低い圧力下でヒドロゲル/拡張性材料が作動することが絶対的に重大である。要約すると、拡張性材料は、漏出をシールすることが必要とされる部位で材料が保持されるように、半透性または不透過性の材料などの材料内に含まれている。材料は、活性化のための手段に基づいて選択される。材料が、機械的せん断力によって、または発泡剤に曝露されることによって拡張する場合、これらの材料はシール内に内部的に提供され、活性化ワイヤなどの外部の活性化物質が、拡張性材料から活性化物質を単離するための手段を乱すのを許す。材料は体液に曝露されるとインサイチューで活性化するので、この材料が、液体と接触することによって活性化される場合、装置が使用前に乾燥状態で貯蔵されるのであれば単離のためのさらなる手段は必要とされない。材料が使用前に湿潤状態で貯蔵される場合は、拡張性材料を活性化前に乾燥状態に保つのに、第2の不透過性膜が必要とされる。第2の不透過性膜は、移植時に開口されて生体液を半透性材料によって拡張性材料に到達させる破裂部位を含むのが典型的である(すなわち、半透性が、拡張性材料を保持するが、液体を通過させる材料を意味する場合)。あるいは、不透過性材料は破裂部位を含まなくてよいが、ひとたび装置が展開されたらインサイチューで液体がヒドロゲルの膨潤をもたらすように、装置を貯蔵から取り出し、食塩水で洗浄した後で簡単に除去され、その後カテーテル中に装着され得る。
【0089】
異なる材料の性質は相互に補い合う。例えば、弁が展開した直後では、材料が速やかに膨潤して、弁周囲の漏出をできるだけ即時にシールすることが重要である。速やかな膨潤を可能にするために、短期間では機械的強度が譲歩され得る。長期間では、しかしながら、シールの機械的強度が高いことが最優先である。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル(複数可)の機械的強度は、約0.0005N/mm
2から約0.025N/mm
2、好ましくは約0.002N/mm
2から約0.012N/mm
2である。機械的強度は、膨潤させ、それによって漏出をもたらす間隙を「能動的に」合致させるのに十分高くなければならないが、人工器官もしくは移植物の物理的もしくは機能的な完全性を乱し、または人工器官もしくは移植物を壁から押し出すほど高くてはならない。別の重要な一考察は、機械的強度は、特に心伝導を担う左脚(LBB)周辺では、解剖学的構造に対して過剰な圧力を加えるほど高くてはならないということである。過剰な圧力が働くと、左脚ブロック(LBBB)として公知の心伝導の異常が起こり得る。典型的に、ヒドロゲルの膨潤によって解剖学的構造に対して働く外向きの圧力は、人工器官または移植物によって働く圧力未満であることが考慮に入れられる。
【0090】
速やかに膨潤する、ヒドロゲルであってよい分解性の材料は、ゆっくりと膨潤するが機械的強度の高い、ヒドロゲルであってよい非分解性の材料と組み合わせて用いることができる。短期間では、速やかに膨潤することができる分解性の材料は、弁周囲の漏出を速やかにシールする。時が経つにつれ、この材料は分解し、ゆっくりとした膨潤を示し、機械的強度の高い材料によって置き換えられる。最終的に、シールは、ゆっくりと膨潤する非分解性の材料から構成される。シール中にたった1つの材料を用いるのも可能であるが、2つ以上の異なる形態を用いることも可能である。例えば、粒子サイズの異なるヒドロゲルは異なる性質を示し得るので、シールにおいて結晶サイズの異なる2つのヒドロゲルを用いることができる。
【0091】
2.発泡体およびスポンジ
あるいは、移植前に産生された発泡体を、シールを形成するための膨潤性材料として用いることもできる。例えば、生体適合性ポリマーまたは架橋性プレポリマーなどの適切なマトリックスを、1つまたは複数の発泡剤とブレンドしてもよい。発泡剤には、刺激に反応して気体を産生する化合物または化合物の混合物が含まれる。発泡剤は、マトリックス内に分散され、刺激にさらされると気体を発し、細かい気泡がマトリックス内に分散されるときにマトリックスの拡張を引き起こす。適切な発泡剤の例には、生理学的に許容される酸(例えば、クエン酸または酢酸)と生理学的に許容される塩基(例えば、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸カルシウム)との混合物など、生体液で水和されると気体を発する化合物が含まれる。他の適切な発泡剤は当技術分野において公知であり、加圧気体を含む乾燥粒子、例えば、二酸化炭素を含むショ糖粒子(米国特許第3,012,893号を参照されたい)または他の生理学的に許容される気体(例えば、窒素もしくはアルゴン)、および薬学的に許容される過酸化物が含まれる。
【0092】
他の例には、膨潤時間を短縮するために、公知のヒドロゲル材料の形態を変更することが含まれる。形態を変更するための手段には、例えば、凍結乾燥またはポロゲンの技術によって、材料の多孔性を増大することが含まれる。例えば、ポリマーおよび界面活性剤または脂質などの生体適合性材料を好適な溶剤中に溶解し、固体もしくは溶液として造孔剤を溶液中に分散し、次いで溶液および造孔剤を噴霧乾燥して粒子を形成することによって、噴霧乾燥粒子を生成することができる。ポリマー溶液および造孔剤を微粒化して細かいミストを形成し、高温のキャリアガスと直接接触させることによって乾燥させる。当技術分野において入手できる噴霧乾燥器を用いて、ポリマー溶液および造孔剤を噴霧乾燥器の吸気口で微粒化し、少なくとも1つの乾燥チャンバーを通過させ、次いで粉末として回収することができる。温度は、用いる気体またはポリマーに応じて変動してよい。吸気口および出口の温度は、所望の生成物を生成するように制御することができる。噴霧乾燥の間に形成される粒子のサイズおよび形態は、溶液を噴霧するのに用いられるノズルおよび造孔剤、ノズル圧力、造孔剤を含む溶液の流速、用いられるポリマー、溶液中のポリマーの濃度、ポリマー溶剤のタイプ、造孔剤のタイプおよび量、噴霧の温度(吸気口および出口両方の温度)、ならびにポリマーの分子量の関数である。一般的に、ポリマー溶液の濃度が同じであると仮定すると、ポリマーの分子量が高いほど、粒子サイズは大きくなる。
【0093】
噴霧乾燥に典型的なプロセスのパラメータは以下の通りである:吸気口温度=30〜200℃、出口温度=5〜100℃、およびポリマーの流速=10〜5000ml/分。ポリマー溶液中には、孔の形成を増大するために、ポリマー溶液の体積に対して0.01重量%から90重量%の間の量の造孔剤が含まれる。例えば、噴霧乾燥において、固体として、または水などの溶剤中の溶液いずれかとして、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、もしくは安息香酸アンモニウム、または他の揮発性の塩などの、揮発性の塩などの造孔剤を用いることができる。次いで、固体の造孔剤、または造孔剤を含んでいる溶液をポリマー溶液と乳化して、ポリマー中造孔剤の分散液または液滴を作り出す。次いで、分散液または乳液を噴霧乾燥して、ポリマー溶剤および造孔剤を両方とも除去する。ポリマーが沈殿した後、硬化した粒子を凍結させ、凍結乾燥させて、ポリマー沈殿ステップの間に除去されなかったあらゆる造孔剤を除去することができる。
【0094】
乾燥ヒドロゲルの小型粒子を調製することによって、高速の膨潤を実現することができる。微粒子の拡散経路が極めて短いと、わずか数分で膨潤を完了することが可能になる。大型の乾燥ヒドロゲルは、ヒドロゲルマトリックスにわたって互いに相互接続されている孔を作り出すことによって、ヒドロゲルのサイズおよび形状にかかわらず速やかに膨潤するように作ることができる。相互接続されている孔により、毛管力による水の高速の吸収が可能になる。多孔性のヒドロゲルを作る簡単な方法は、重合の間に気泡を生成することである。発泡体が依然として安定である間に重合を完了すると、超多孔性(superporous)のヒドロゲルが形成される。超多孔性のヒドロゲルは、あらゆる鋳型において合成することができ、したがってあらゆる形状の3次元構造を容易に作ることができる。気体吹込み(または発泡)法によって生成される孔のサイズは、100mmオーダー以上である。
【0095】
超多孔性ヒドロゲルのあらゆる部分が、水または水性媒体と接触している場合、水は開口チャネルを通ってすぐに吸収されて空間全体を充填する。このプロセスにより、乾燥した超多孔ヒドロゲルは非常に速やかに膨潤するようになる。
【0096】
拡張性のスポンジまたは発泡体も、外科用埋め込みをシールするのに用いることができる。これらスポンジまたは発泡体を、ストリップまたは環状の形状に切断し、他の手段によって乾燥または脱水し、次いで、ひとたび装置を所定の位置に置いたら速やかに再水和させる。あるいは、このような材料を水和し、次いで圧搾してその体積を縮小させて外科用器具に付着させ、次いで、外科用器具を所定の位置に置いた後、拡張させてシールを形成させることができる。このような膨潤は殆ど瞬時である。スポンジまたは発泡体の形態のシール付け材料のさらなる一利点は、これらの拡張は可逆性であり得、したがってこれらが植え込まれた位置から送達用カテーテルに容易に後退させることができ、それによって複数回装置をもとの位置に戻すのを完了し、かつ/または装置の回収可能性を完了することが可能になることである。このようなスポンジおよび発泡体は、それだけには限定されないが、合成ポリマー、天然ポリマー、またはこれらの混合物を含めたある範囲の材料から作ることができる。このような材料は、重合および/または架橋の前にモノマー/ポリマー混合物に気体または不混和性の溶剤などの造孔性の物質を含めることによって形成することができる。好適なモノマーおよび/または重合性の架橋剤を用いることにより、このようなスポンジ/発泡体は、周期性の応力に耐えるように作ることができ、このような材料を、適合性の繊維またはウィスカーでさらに補強して、強度を増し、破損の可能性を低下させることもできる。
【0097】
いくつかの実施形態において、これらのスポンジまたは発泡体は、外科用装置に取り付ける前にスポンジ/発泡体をカプセル化するのに用いられる基礎となる膜またはメッシュに化学的に付着することができる。これは、拡張性のものを基材に係留し、破損の場合に小分子の放出を妨げるように、小分子として、または長鎖触手のいずれかとして、基礎となる基材にアリル基またはアクリル基のいずれかを付着することによって行うことができる。
【0098】
発泡体は、半透膜を必要とせずに拡張するようにデザインすることができる。
【0099】
C.支持部材または骨格
シールは、腔内人工器官と血管壁との間の凸凹を合致させるのに十分に柔軟であることができる。材料の一群は、人工器官の部分と血管壁との間に位置付けられるように腔内人工器官の少なくとも一部分を受け止めるように設計されている、メッシュ様または概ねリング様の構造を含むことができる。これは通常、骨格または支持部材と呼ばれる。
【0100】
図4A〜4Cに示す通り、シール12は、ステント/金属の裏打ちまたは骨格26を有する。骨格26は構造を提供し、圧着、装着、および展開を可能にする。骨格26は、バルーン拡張型ステント、または自己拡張型のステントのいずれかであってよい。骨格26は、外側膜20の表面に付着している。
【0101】
支持部材が第2の縮小された放射状立体配置にある場合、実質的にらせん状の立体配置を形成することができる。支持部材のらせん状構造は、その中に内部通路を提供して、腔内人工器官の少なくとも一部分を受け止める。支持部材は、形状記憶材料または可塑的に拡張性材料である、MP35N、SS316LVM、またはL605などのスチールを含むことができる。形状記憶材料は、1つまたは複数の形状記憶合金を含むことができる。この実施形態において、形状記憶材料が予め決定された様式で動くことにより、支持部材が、第1の縮小された放射状の立体配置から、第2の拡大された放射状の立体配置に動く。形状記憶材料は、ニッケル−チタン合金(ニチノール)を含むことができる。あるいは、形状記憶材料は、以下の金属の組合せのあらゆる一つの合金を含むことができる:銅−亜鉛−アルミニウム、銅−アルミニウム−ニッケル、銅−アルミニウム−ニッケル、鉄−マンガン−ケイ素−クロム−マンガン、および銅−ジルコニウム。さらに、チタン−パラジウム−ニッケル、ニッケル−チタン−銅、金−カドミウム、鉄−亜鉛−銅−アルミニウム、チタン−ニオブ−アルミニウム、ウラン−ニオブ、ハフニウム−チタン−ニッケル、鉄−マンガン−ケイ素、ニッケル−鉄−亜鉛−アルミニウム、銅−アルミニウム−鉄、チタン−ニオブ、ジルコニウム−銅−亜鉛、ニッケル−ジルコニウム−チタン。
【0102】
少なくとも一部の支持部材は、以下の金属の組合せのあらゆる一つも含むことができる:Ag−Cd 44/49at.%Cd;Au−Cd 46.5/50at.%Cd;Cu−Al−Ni 14/14.5重量%Alおよび3/4.5重量%Ni、Cu−Snおよそ15at.%Sn、Cu−Zn38.5/41.5重量%Zn、Cu−Zn−X(X=Si、Al、Sn)、Fe−Ptおよそ25at.%Pt、Mn−Cu5/35at.%Cu、Pt合金、Co−Ni−Al、Co−Ni−Ga、Ni−Fe−Ga、様々な濃度のTi−Pd、Ni−Ti(Niおよそ55%)。支持部材の形状記憶材料は、支持部材の長さにわたって背骨として働くことができる。
【0103】
可塑的拡張型(plastically−expandable)、またはバルーン拡張型の材料はステンレス鋼(316L、316LVMなど)、Elgiloy、チタン合金、白金−イリジウム合金、コバルトクロム合金(MP35N、L605など)、チタン合金、ニオブ合金、および他のステント材料を含むことができる。
【0104】
支持部材は、ポリエーテルまたはポリエステル、ポリウレタンまたはポリビニルアルコールなどの生体適合性ポリマーから構成されていてよい。材料は、低密度から高密度の範囲であり、小型、大型、または一対の孔サイズを有し、以下の特徴:独立気泡または解放気泡の、柔軟性または半硬質の、プレーンな、メラミンの、または後処理の浸透性の発泡体を有するセルロースなどの天然ポリマーをさらに含むことができる。支持部材に対するさらなる材料には、ポリビニルアセタールスポンジ、シリコーンスポンジゴム、独立気泡シリコーンスポンジ、シリコーンフォーム、およびフルオロシリコーンスポンジが含まれる。PTFE、PET、およびナイロンの糸織物など、血管グラフト材料を用いて特にデザインされた構造も用いることができる。
【0105】
少なくとも一部の支持部材は、透過性材料から構成されていてよい。あるいは、少なくとも一部の支持部材は半透性であってよい。さらなる一実施形態において、少なくとも一部の支持部材は、不透過性の材料から構成されていてよい。
【0106】
支持部材は、数々の材料から作られている半透性膜をさらに含むことができる。例として、ポリイミド、リン脂質二重層、複合薄膜(TFCまたはTFM)、セルロースエステル膜(CEM)、荷電モザイク膜(CMM)、両極性膜(BPM)、または陰イオン交換膜(AEM)が含まれる。
【0107】
支持部材は、組織の内殖のためのマトリックスを提供するための、少なくとも多孔性の領域を含むことができる。この領域に薬剤をさらに含浸させて組織の内殖を促進してもよい。支持部材自体に、薬剤または薬物を含浸させてもよい。支持部材は、その外側表面に接続され、または外側表面において含浸されている薬剤の個々のデポーをさらに含むことができる。支持部材が1つまたは複数のカプセルを含んでいる一実施形態において、薬剤は、カプセルを破裂させることによって放出され得る。薬剤が、カプセル、デポー中に、コーティング中に保持され、または支持部材の材料中に含浸されていてもいなくても、数々の異なる薬剤が支持部材から放出され得る。例えば、支持部材がカプセルを含む一実施形態において、カプセルは、コンパートメントを2つ以上のサブコンパートメントに分けるための脆い壁によって分割されている環状のコンパートメントを含むことができる。異なる薬剤が、各サブコンパートメント中に保持され得る。一実施形態において、環状のコンパートメントは、少なくとも1つの内側のサブコンパートメントおよび少なくとも1つの外側のサブコンパートメントで縦方向に分割され得る。あるいは、カプセルは、2つ以上のサブコンパートメントに、放射状に分割され得る。サブコンパートメントは相互に対して同心性であってよい。カプセルが区切られている実施形態において、異なるコンパートメントは、その中に異なる薬剤を保持することができる。
【0108】
支持部材は、シール付け装置の脈管構造への係留を改善/増強するための、フック、バルブ、または同様の/他の固定手段を有することができる。さらに、例えば、腹部および胸部大動脈瘤などの短く角張った頸部を適切に係留するのに不十分な石灰化が存在する弁の場合、支持部材は、さらに補強された基礎となる構造に装置を位置付ける必要があり得る場合に、装置に対する「着陸地帯」として働くことができる。
【0109】
全ての実施形態において、支持部材は、つなぎ部材によってグラフトまたはステントに接続されていてよい。つなぎ部材は、エラストマー材料から作られていてよい。あるいは、つなぎ部材は、非エラストマーであってよく、所望の活性化メカニズム用に、相対的に固定された長さ、または好適に計算された長さであってよい。
【0110】
装置の支持部材がカプセルを含む実施形態において、カプセルは、支持部材内に単一の環状コンパートメントを含むことができる。この実施形態において、支持部材が第2の拡大された放射状の立体配置にある場合、カプセルは腔内人工器官周辺の周りに完全に拡張する。あるいは、カプセルは人工器官の周辺の周りに部分的にのみ拡張することができる。2つ以上のカプセルが、人工器官の周りに拡張することができる。
【0111】
他の実施形態において、
図6A〜6Dに示す通り、カプセル80は、潜在的な漏出部位へのより広く、深い拡張を可能にするアコーディオン様構造を有し、あらゆる脈管のリモデリングとともに拡張するさらなる余地も維持し、それによって一定かつ耐久性のあるシールが確実になり得る。これは、
図6A〜6Bにおいて示す支持構造82内に、または
図6C〜6Dに示す支持構造82の外側上に位置付けることができる。
【0112】
D.治療薬、予防薬、または診断薬
1つまたは複数の治療薬、予防薬、または診断薬(「薬剤」)を、薬剤(複数可)を構造材料またはシール材料中に、またはその上のいずれかに装着することによって、装置中に組み入れるのが有利であり得る。薬剤の放出の速度は、以下を変化させることを含む数々の方法によって制御することができる:吸収性材料の薬剤に対する比率、吸収性材料の分子量、薬剤の組成、吸収性ポリマーの組成、コーティングの厚さ、コーティング層の数およびコーティング層の相対的な厚さ、薬剤の濃度、および/または装置もしくはシール付け材料に対する薬剤の物理的もしくは化学的な結合もしくは連結。放出の速度を制御するために、吸収性ポリマーを含めた、ポリマーおよび他の材料の上塗り(top coat)を適用することもできる。
【0113】
例示の治療薬には、それだけには限定されないが、Tanguayら、Current Status of Biodegradable Stents、Cardiology Clinics、12巻、699〜713頁(1994年)、J. E. Sousa、P. W. Serruys、およびM. A. Costa、Circulation、107巻(2003年)2274頁(第I部)、2283頁(第II部)、K. J. Salu、J. M. Bosmans、H. Bult、およびC. J. Vrints、Acta Cardiol、59巻(2004年)51頁に記載されている、抗炎症薬または免疫調節薬、抗増殖薬、遊走および細胞外マトリックスの生成に影響を及ぼす薬剤、血小板の沈殿または血栓の形成に影響を及ぼす薬剤、血管の治癒および再内皮化を促進する薬剤が含まれる。
【0114】
抗トロンビン薬の例には、それだけには限定されないが、ヘパリン(低分子量ヘパリンを含む)、R−ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、エフェガトラン、マダニの抗凝固性ペプチド、およびプパック(Ppack)が含まれる。
【0115】
抗増殖薬の例には、それだけには限定されないが、パクリタキセル(タキソール)、QP−2ビンクリスチン、メトトレキセート(Methotrexat)、アンジオペプチン(Angiopeptin)、マイトマイシン、BCP678、アンチセンスc−myc、ABT578、アクチノマイシン−D、レステンASE(RestenASE)、1−クロロデオキシアデノシン、PCNAリボザイム、およびセレコキシブが含まれる。
【0116】
細胞の複製/増殖を変調する薬剤には、ラパマイシン(TOR)阻害薬(シロルムス、エベロリムス、およびABT−578を含む)、パクリタキセルおよびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、イホスファミド、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチン)を含む抗悪性腫瘍薬、抗腫瘍抗生物質(例えば、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、エトポシド、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、およびミトキサントロン)、代謝拮抗薬(例えば、デオキシコホルマイシン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2−クロロデオキシアデノシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、カペシタビン、シトシン、アラビノシド、アザシチジン、ゲムシタビン、フルダラビンリン酸塩、およびアスパラギナーゼ(aspariginase))、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドセタキセル、エストラムスチン)、ならびに分子標的薬(例えば、イマチニブ、トレチノイン、ベキサロテン、ベバシズマブ、ゲムツズマブ、オゴミシン(ogomicin)、およびデニロイキンディフティトックス)の標的が含まれる。
【0117】
抗再狭窄薬の例には、それだけには限定されないが、免疫調節薬、例えば、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、ビオレスト(Biorest)、ミゾリビン、シクロスポリン、インターフェロンγ1b、レフルノミド、トラニラスト、コルチコステロイド、ミコフェノール酸、およびビホスフォネート(Biphosphonate)が含まれる。
【0118】
抗遊走薬および細胞外マトリックス変調薬の例には、それだけには限定されないが、ハロフジノン、プロピルヒドロキシラーゼ阻害薬、C−プロテイナーゼ阻害薬、MMP−阻害薬、バチマスタット、プロブコールが含まれる。
【0119】
抗血小板薬の例には、それだけには限定されないが、ヘパリンが含まれる。
【0120】
創傷治癒薬および内皮化(endothelialization)促進薬の例には、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、17βエストラジオール、Tkase阻害薬、BCP671、スタチン、一酸化窒素(「NO」)−ドナー、および内皮前駆細胞(「EPC」)抗体が含まれる。
【0121】
他の有効薬剤を組み入れることができる。例えば、泌尿器適用において、抗生物質を、感染を防ぐために、装置または装置のコーティング中に組み入れることができる。消化器および泌尿器の適用において、有効薬剤を、癌を局所処置するために装置または装置のコーティング中に組み入れることができる。
【0122】
シールまたは支持部材から放出される薬剤(複数可)には、組織成長促進性の材料、薬物、および生物学的薬剤、遺伝子送達薬剤、および/または遺伝子標的分子も含まれてよく、より詳しくは、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、肝細胞成長因子、結合組織成長因子、胎盤由来成長因子、アンジオポエチン−1、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子が含まれてよい。細胞の挙動を変調するための薬剤には、微小繊維状コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンゲル、合成Arg−Gly−Asp(RGD)接着ペプチド、テネイシン−C、Del−1、CCNファミリー(例えば、Cyr61)低酸素誘導因子−1、アセチルコリン受容体アゴニスト、および単球走化性タンパク質が含まれる。遺伝子送達(gene delivery)薬には、遺伝子送達用のウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス)、および非ウイルス性遺伝子送達薬/方法(例えば、ポリカチオンポリエチレンイミン、架橋されているヒドロゲル微粒子内でカチオン性ポリマーとシクロデキストリン環またはDNAからなる、機能性ポリカチオンなど)が含まれる。
【0123】
一実施形態において、1つまたは複数の薬剤にはモノクローナル抗体が含まれてよい。例えば、モノクローナル抗体は、ベバシズマブなどの脈管新生阻害物質であってよく、または抗炎症の性質を有することができる。特異的なモノクローナル抗体のさらなる例には、それだけには限定されないが、アダリムマブ、バシリキシマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、ダクリツマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、またはトラスツズマブが含まれる。
【0124】
薬剤(複数可)は、コルチコステロイド、エストロゲン、アンドロゲン、プロゲストゲン、および副腎性アンドロゲンなどのステロイドであってよい。薬剤(複数可)には、抗血小板薬、抗血栓薬、および線維素溶解薬、例えば、糖タンパク質IIb/IIIa阻害薬、直接トロンビン阻害薬、ヘパリン、低分子量ヘパリン、血小板アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害薬、線維素溶解薬(例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター、レテプラーゼ、およびテネクテプラーゼなど)が含まれてよい。
【0125】
さらに、薬剤(複数可)は、小型干渉RNA、マイクロRNA、DNA酵素、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの遺伝子標的分子、または前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞、CD34+もしくはCD133+単球、造血幹細胞、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、多分化能成人前駆細胞、および人工多能性幹細胞)ならびに分化細胞(例えば、内皮細胞、線維芽細胞、単球、および平滑筋細胞)などの細胞であってよい。さらに、粘膜付着性ポリマー(例えば、チオレートポリマー)などの薬物送達薬、またはアテローム性動脈硬化を局所的に処置する薬物、例えば、高比重リポタンパク質コレステロール(HDL)、HDLミメチック、ヘムオキシゲナーゼ−1インデューサ(例えば、プロブコールおよびその類似体、レスベラトールおよびその類似体)、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)還元酵素阻害薬、およびフィブラート(フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラートなどを含む)が含まれる薬剤であってよい。
【0126】
薬剤(複数可)はまた、微小繊維状コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンゲル、合成Arg−Gly−Asp(RGD)接着ペプチド、テネイシン−C、Del−1、CCNファミリー(例えば、Cyr61)、低酸素誘導因子−1、アセチルコリン受容体アゴニスト、および単球走化性タンパク質など、生物補綴物に関連する細胞挙動を変調することができる。
【0127】
装置中または装置上に、造影剤、放射線不透過性マーカー、またはin vivoでの追跡、位置付け、および他の目的で装置を画像化できるようにする他の添加剤を組み入れることも有利であり得る。このような添加剤は、装置または装置のコーティングを作るのに用いられる吸収性の組成物に添加し、または装置の一部のもしくは装置全部の表面に吸収させ、その上に溶融し、もしくはその上に噴射してもよい。この目的に好ましい添加剤には、銀、ヨウ素、およびヨウ素標識した化合物、硫酸バリウム、酸化ガドリニウム、ビスマス誘導体、二酸化ジルコニウム、カドミウム、タングステン、金タンタル、ビスマス、白金、イリジウム、およびロジウムが含まれる。これらの添加剤は、それだけには限定されないが、マイクロサイズもしくはナノサイズの粒子、またはナノ粒子であってよい。放射線不透過性(radio−opacity)は、蛍光透視によって、またはエックス線分析によって決定することができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、抗炎症薬などの低分子量薬物の1つまたは複数は、ヒドロゲル形成性ポリマーに共有結合性に付着している。
【0129】
このような場合、抗炎症薬などの低分子量薬物は、ヒドロゲル形成性ポリマーに、in vivoで切断されるようにデザインされている連結部分によって付着している。連結部分は、in vivoで低分子量薬物の徐放をもたらすように、加水分解的に、酵素的に、またはこれらの組合せで切断されるようにデザインされ得る。連結部分の組成および薬物に対する部分の接続点は両方とも、連結部分の切断が、抗炎症薬などの薬物、またはそれの適切なプロドラッグのいずれかを放出するように選択される。連結部分の組成も、薬物の所望の放出速度に鑑みて選択することができる。
【0130】
連結部分には、一般的に、1つまたは複数の有機官能基が含まれる。適切な有機官能基の例には、二級アミド(−CONH−)、三級アミド(−CONR−)、二級カーバメート(−OCONH−;−NHCOO−)、三級カーバメート(−OCONR−、−NRCOO−)、尿素(−NHCONH−;−NRCONH−;−NHCONR−、−NRCONR−)、カルビノール(−CHOH−、−CROH−)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、エーテル(−O−)、およびエステル(−COO−、−CH
2O
2C−、CHRO
2C−)が含まれ、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環基である。一般的に、連結部分内の1つまたは複数の有機官能基の同定は、抗炎症薬の所望の放出速度に鑑みて選択され得る。さらに、1つまたは複数の有機官能基は、抗炎症薬のヒドロゲル形成性ポリマーに対する共有結合性の付着を促進するように選択され得る。好ましい実施形態において、連結部分は、in vivoで単純な加水分解によって切断されて抗炎症薬を放出し得る1つまたは複数のエステル連結を含んでいる。
【0131】
ある実施形態において、連結部分は、1つまたは複数の上記に記載した有機官能基を、スペーサー基と組み合わせて含む。スペーサー基は、オリゴマー鎖およびポリマー鎖を含めた、原子のあらゆるアセンブリーから構成されてよいが、スペーサー基における原子の合計数は、好ましくは原子3個から200個の間であり、より好ましくは原子3個から150個の間、より好ましくは原子3個から100個の間、最も好ましくは原子3個から50個の間である。適切なスペーサー基の例には、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルキルアリール基、オリゴ−およびポリエチレングリコール鎖、ならびにオリゴ−およびポリ(アミノ酸)鎖が含まれる。スペーサー基が変動することにより、in vivoでの薬物の放出にわたってさらなる制御がもたらされる。連結部分がスペーサー基を含む実施形態において、スペーサー基を、薬物およびヒドロゲル形成性ポリマーの両方に対して接続するのに、1つまたは複数の有機官能基が一般的に用いられる。
【0132】
ある実施形態において、1つまたは複数の薬物は、アルキル基、エステル基、およびヒドラジド基を含んでいる連結部分によってヒドロゲル形成性ポリマーに共有結合性に付着している。例示を目的とすると、
図1は、抗炎症薬であるデキサメタゾンのアルギネートに対する、アルキル基を含んでいる連結部分によるコンジュゲートを示すものであり、エステル基はアルキル基を抗炎症薬に対して接続し、ヒドラジド基はアルキル基を、アルギネート上に位置するカルボン酸基に対して接続している。この実施形態において、エステル基のin vivoの加水分解により、長期間にわたって低投与量のデキサメタゾンが放出される。
【0133】
薬物のヒドロゲル形成性ポリマーに対する共有結合性の付着に有用な反応および戦略は、当技術分野において公知である。例えば、March、「Advanced Organic Chemistry」、第5版、2001年、Wiley−Interscience Publication, New York)およびHermanson、「Bioconjugate Techniques」、1996年、Elsevier Academic Press、U.S.A.を参照されたい。所与の薬物の共有結合性の付着に好適な方法は、官能基の適合性、保護基の戦略、および不安定な結合の存在に関するので、この方法は、所望の連結部分ならびに抗炎症薬およびヒドロゲル形成性ポリマーの全体としての構造に鑑みて選択され得る。
【0134】
シールは、組織の内殖のための多孔性マトリックスとしてさらに働くことができ、例えば、成長因子を添加するなどにより、組織の内殖を促進するうえで助けとなり得る。これは、腔内人工器官の長期間の固定を改善する。例えば、薬剤がカプセルから放出された後に薬剤(例えば、組織接着剤)の速やかな活性化を誘発する活性化物質(例えば、接着性活性化物質)を、シールに含浸させてもよい。しかし、他の実施形態において、シールは様々な材料からなっていてよく、かつ/または様々な特徴を含むことができる。
【0135】
カプセル中の薬剤(複数可)は、接着材料、組織成長促進材料、シール付け材料、薬物、生物学的薬剤、遺伝子送達薬、および/または遺伝子標的分子を含むことができる。別の一実施形態において、1つまたは複数の薬剤は、標的部位に送達するために被覆されていてよい。ひとたび標的部位に位置付けられたら、1つまたは複数の薬剤は、周囲の環境に放出できるように被覆をとられてよい。この実施形態は、固体または半固体の状態の薬剤に対して特定の適用があり得る。
【0136】
シールを内腔に対して、または植え込まれる装置に対して固定するのに用いることができる接着剤には、以下の1つまたは複数が含まれる:シアノアクリレート(2−オクチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、iso−ブチル−シアノアクリレート、およびメチル−2−シアノアクリレート、およびエチル−2−シアノアクリレートを含む)、アルブミンベースのシール材、フィブリン糊、レソルシノール−ホルムアルデヒド糊(例えば、ゼラチン−レソルシノール−ホルムアルデヒド)、紫外(UV)光硬化性糊(例えば、スチレン誘導性(スチレン化)ゼラチン、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、リン酸緩衝食塩水(PBS)中カルボキシル化カンファーキノン(camphorquinone);アクリレートの末端キャップを有するポリエチレングリコールのコポリマー、ならびにポリエチレングリコールおよびポリ乳酸からなるシール材からなるヒドロゲルシール材−エオシンベースのプライマー(primer);コラーゲンベースの糊、ならびにポリメチルメタクリレート。
E.貯蔵安定性を増大するためのシール付け手段のさらなるカプセル化
シールは、分配および使用のために滅菌包装することができる。代替において、シールは、TAVまたはステントなど、シールするためにデザインされている装置の一部として、またはそれら装置とのキットにおいて包装することができる。このさらなるカプセル化は、100%の水分バリアとして作用することにより、溶液(例えば、グルタルアルデヒド、アルコール)内での貯蔵の間、拡張性材料の活性化を防止する。
【0137】
心臓弁は、経カテーテルおよび手術用両方とも、主に、装置の組織成分を保存するために、グルタルアルデヒドまたは同様の溶液中に貯蔵される。装置を埋め込む前に、溶液から装置を取り出し、グルタルアルデヒドが全て洗い流されるように装置を徹底的にすすぐことにより、装置を移植に備える。
【0138】
シール付け装置/カプセルの外側の透過性の層は、水のグルタルアルデヒドからカプセル中へのいかなる浸透も防ごうとするものであるが、プロファイルの制約からして厚さが不十分であり得る可能性があり、その結果、得ることができる貯蔵安定性はほんの限られたものであり得る。カプセル化した拡張性材料が体内に導入されるまでその望ましい非拡張状態のままである場合に貯蔵安定性の増大を得るために、さらなる不透過性層が必要とされ得る。このさらなる不透過性層は、装置を貯蔵溶液から取り出した後は必要とされず、グルタルアルデヒドが全て洗い流されるようにすすがれる。これは、装置を貯蔵液から取り出した後、移植直前に除去されるのが典型的である。
【0139】
シール付け手段を低プロファイルにするために、外側膜および内側膜の厚さを最小に保つ必要がある。シール付け装置を、経カテーテル弁の場合と同様、その貯蔵安定性のために溶液中に水浸して貯蔵する場合、低プロファイルの薄膜は、それらを通して水分を透過させ得、それによってシール付け手段を時期尚早の活性化の危険にさらし得る。したがって、確実にシール付け装置の好適な貯蔵安定性を得ることができるように、さらなる手段が必要である。
【0140】
図7A〜7Dおよび
図8に示す通り、このさらなる手段は、「不透過性の」外側膜94の上をカプセル化するさらなる層92であってよい。このさらなる層92は、100%水分不透過性にするために、非常に厚くてよく、金属層が厚さ数ミクロン積層していてよい。
【0141】
このさらなるカプセル化層は除去可能であり、カプセル化層が、人工器官を送達カテーテル中に装着および圧着する直前に除去することができ、その後人工器官が脈管構造中に送達されるように、気密性のシール付けカプセル/層を容易に剥ぎ取れるようにするメカニズムを有するようにデザインされている。層は、すすぎのプロセスが完了し、装置を装着する準備ができた後に、剥ぎ取り、破裂、溶融、蒸発を含めた様々な手段を用いて除去することができる。
【0142】
さらなるカプセル化層は、除去プロセスによりシール付け手段の完全性および基礎となる装置とのアセンブリーが完全に損なわれないままであることが保証されるように、アセンブリープロセスの間、縫合または他の好適な手段によってシール付け手段で装置アセンブリーに付着され得るメカニズムでデザインされ得る。
【0143】
水分不透過性フィルムの複合材料は、ポリマーフィルム、金属を被覆したポリマーフィルム、および金属フィルムの組合せを含んでいる。ポリマー層は、それだけには限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成され得る。ポリマーフィルムは、ガラスまたは炭素のいずれかで鉱物充填されていてよく、またはされ得ない。ポリマーフィルムの厚さは6um以上である。金属フィルムおよびコーティングには、アルミニウム、ステンレス鋼、金、鉱物充填(ガラスおよび炭素)、ならびに厚さ9um以上のチタンが含まれる。コーティングはプラズマ蒸着、加圧積層、真空蒸着、および共押出しなどのプロセスで適用することができる。金属フィルムは、加圧積層によってポリマーフィルムに積層することができる。
【0144】
E.シール付け手段を有する装置を配置するための装置
移植時にシールを位置付ける実施形態
好ましい一実施形態において、シール付け手段は、人工器官移植物の後方に位置付けられ、シール時に、拡張され、または移植物に隣接する位置に引き入れられる。これは、移植物の周囲に拡張するシールを有し、かつ/または移植物が導入シースから出てきた場合に移植物の周囲に移動するようにシールを圧着する、配置時に移植物周囲にシールを引っ張るための縫合または弾性の手段を用いて実現される。これは、大動脈弁など、輸送の間に血管壁を損傷する危険がすでにある、直径の大きな移植物では、極めて重要である。
【0145】
シール技術の後者の実施形態の主な特徴は、これにより腔内人工器官の圧着のプロファイルの保存が可能になることである。シール技術は、人工器官の遠位または近位に圧着される。この技術の一態様において、シールは、シールの拡張によって人工器官と整列される。別の一態様において、人工器官のシールゾーンは、活性化部材の使用により、人工器官が拡張する前にシールゾーンと整列される。さらに別の一実施形態において、シールは、活性化部材の使用により、人工器官が拡張する前に人工器官のシールゾーンと整列され、活性化部材は弾性または非弾性の材料で作られていてよい。
【0146】
さらなる一実施形態において、腔内装置は、1つまたは複数の係合部材をさらに含むことができる。1つまたは複数の係合部材は、留め金、フック、または血管壁と係合するための他の手段を含むことができ、それゆえ装置をそこに固定する。
【0147】
図11Aおよび11Bに示す通り、ニチノールで作られている自己整列式支持部材82は、カテーテル80内での付着縫合の使用を排除する。ヒドロゲルを含んでいる二重膜のカプセルは、これらの部材に付着していてよく、人工器官の拡張で活性化される。自己整列式部材82は、人工器官フレーム84の一部として直接レーザー切断されてよく、または縫合を用いて接続されてよい。このメカニズムの主な利点は、人工器官の遠位/近位/中央セクションでカプセルが整列するのを可能にする「活性化部材」(縫合など)でのあらゆる破壊モードが排除されることである。
【0148】
展開および回収に対するメカニズム
さらに別の一実施形態において、あるメカニズムによりシステムの展開および回収の両方が可能になる。これは、使用し易さ、および配置の正確さの見込みからとくに重要である。この特徴により、最初の試みで適切に位置付けられなかった場合、医師はin vivoで装置の配置を交換/変更することが可能になる。また、手術の間になんらかの合併症があった場合、医師は患者から装置を完全に回収することができる(「拡張性材料」が完全に拡張した後でも)。
【0149】
自己拡張型の人工器官と用いた場合の主な特徴:
1.装置が解剖学的構造にある場合、正確/的確な配置を可能にする、システムの再位置付け可能性(re−positionability)(人工器官が部分的にカテーテルに回収される場合)
2.システムの回収可能性(人工器官およびelsのSEALカプセルの両方がカテーテル中に完全に捕獲され、身体の外で回収される場合)。
【0150】
III.使用方法
装置およびシールは、心室、心臓付属器、心臓壁、心臓弁、動脈、静脈、鼻道、洞、気管、気管支、口腔、食道、小腸、大腸、肛門、尿管、膀胱、尿道、膣、子宮、ファロピウス管、胆道、または耳道を含めた様々な組織内腔においてシールするために利用することができる。作動中、人工器官が血管壁に沿った所望の位置にあるように、腔内人工器官は患者内の静脈内に位置付けられる。次いで、バルーンまたは他の拡張性部材が、腔内人工器官内から放射状に拡張して、血管壁に対して装置(apparatus)を加圧し、または押し付ける。バルーンが拡張すると、活性化ワイヤを始動させ、カプセルを破裂させ、シールの膨潤を引き起こし、いくつかの実施形態において、薬剤を放出する。一実施形態において、薬剤は接着性材料を含み、カプセルが破裂した場合、接着性材料がシールの孔を通って流れる。上記で論じた通り、シールは接着剤の流れを制御して接着性材料の塞栓形成を防ぐことができる。
【0151】
特定の実施形態において、患者の大動脈内のグラフトまたはステントをシールするのにこの装置を用いることができる。さらなる一実施形態において、心耳をシールするのにこの装置を用いることができる。この実施形態において、装置は、薬剤を送達して、人工器官の成分のシールを、心耳の開口を横切って発効させ得る。
【0152】
さらなる一実施形態において、血管における解離をシールするのにこの装置を用いることができる。この実施形態において、支持部材は、偽腔の開口に隣接して位置付けられ、腔内ステントが引き続きそこに送達される。ステントが放射状に拡張するとき、支持部材は、そこから接着剤の放出を引き起こして組織をシールし、真の血管壁に対して偽腔を作り出す。
【0153】
さらなる一実施形態において、1つまたは複数の気腫性の血管をシールするのに、この装置が用いられる。
【0154】
なおさらなる一実施形態において、血管または心臓などの組織構造内の人工弁をシールするのにこの装置を用いることができる。一例として、TAVなどの人工心臓弁のシールが含まれる。本発明の装置によって提供されるシールが弁傍の漏出を防ぐことが想定される。
【0155】
図4A〜4Cに示す通り、外側膜20のセクションを、活性化ワイヤ16を用いて指定された破裂点24で破裂させた場合、シール12内でポリマー22の活性化が起こる。これは
図4Aにおいてシール12が比較的平坦である破裂の前を示し、指定される破裂部位24は、
図4Bに示す通り開口され、次いで
図4Cに示す通りシール12が拡張する。破裂部位24は、レーザーなどの手段を用いて部位24の膜20の表面を弱化して、膜20に部分的に切断し、または膜20を穿孔することによって形成される。活性化ワイヤ16は、接着剤、縫合、または無頭釘(brad)、リベット、ステープル、もしくはクランプなどの拘束手段によって破裂部位24に固定される。破裂部位24は、予め決定された圧力または位置で開口し、典型的に人工器官または配置カテーテルの一部に接続されている、活性ワイヤを引くことにより開口される。
【0156】
図5A〜5Eは、「活性化ワイヤ」16で装置を圧着および装着する方法を図示する。活性化ワイヤ16は、装置の展開/配置の間、「活性化または破裂」が始動され得るように、圧着/装着プロセスの間に長さが短くなっていなければならない。圧着/装着の前、活性化ワイヤ16は十分長く、そのため「活性化メカニズム」は活性化とは程遠く、シール14中のヒドロゲルが貯蔵および貯蔵安定性の間に依然として完全にシールされ/脱活性化され得る。
【0157】
圧着/装着手順の間に活性化ワイヤ16の長さを短くするのに、金属圧着が用いられる。貯蔵の間、および装置のカテーテル中への挿入が完了した後、「未圧着(uncrimped)」状態の金属圧着は「圧着」し、過剰の活性化ワイヤ16は切り落とされる。このステップの後、カテーテルにおいてTAV装置を完全に装着する最終ステップは完了し、装置を患者中に挿入する準備が整う。
【0158】
シールを有する装置を、特定の装置に典型的な様式で挿入する。移植部位に到達した後、シールは破裂し、シールは拡張して部位をシールする。次いで、ガイドワイヤおよび挿入カテーテルを撤回し、挿入部位を閉じる。
【0159】
図9A〜9Dは、覆いをとったシール付け手段52あり、またはなしでの、サピエン弁50の配置を示す図である。サピエン弁50のLVOT中の配置が低すぎると、グラフトスカートが脈管構造に対して完全に並置せず(
図9A)、ステントの解放気泡を通って、スカート上の間隙/領域ならびに装置周囲から弁周囲の漏出が起こり得る(
図9B)。
図9Cに示す通り、シール付け手段52を有するサピエン弁50は、LVOT中の配置が低すぎる場合でも、LVOTの内側壁に対して均一に弁50をシールする。
図9Dは、シール52が所定の位置にある場合、弁周囲の漏出が生じず、「漏出した」血液が左心室に戻るのを防ぐ方法を示す。
【0160】
類似の結果がSJM/Medtronic TAV装置で得られる。
図10Aは、正確に位置付けられたSJM/Medtronic TAV装置60を示す。
図10Bは、不正確に位置付けられ、PV漏出をもたらしたSJM/Medtronic TAV装置60を示す。
図10Cは、シール付け手段62を有する、不正確に位置付けられたSJM/Medtronic TAV装置60で、血管周囲の漏出が防止された方法を示す図である。
【0161】
図6A〜6Bは、TAV装置の内側に配置されているシールの透視図である。
図6C〜6Dは、TAV装置の外側に配置されているシールの透視図である。
図6Eは、外側の不透過性膜がステント骨格に搭載され、ステントパターンと整列して内側から突出し、一方で内側の透過性膜は装置の内周と隣接したままであるように、装置の内側に配置されているシールを示す。ヒドロゲルは拡張し、バルーンを飛び出させる。
【0162】
図7A〜7Dは、グルタルアルデヒドなどの保存溶液中に貯蔵する間、移植可能な装置を保護するための不透過性シール付けシステムの、所定位置のシールの(
図7A)、外側のシールが除去された(
図7B)、外側のシールが除去され、内側のシールが除去された(
図7C、7D)透視図である。
図8は、
図7A〜7Dの外側および内側のシールを示す断面図である。
【0163】
図11Aおよび11Bに関して上記で論じたとおり、ニチノールから作られる自己整列式支持部材82は、カテーテル80内での付着縫合の使用を排除する。ヒドロゲルを含んでいる二重膜のカプセルはこれらの膜に付着していてよく、人工器官の拡張で活性化される。自己整列式部材82は、人工器官フレーム84の一部として直接レーザー切断されてよく、または縫合を用いて接続されてよい。このメカニズムの主な利点は、カプセルが人工器官の遠位/近位/中央セクションと整列するのを可能にする「活性化部材」(縫合など)でのあらゆる破壊モードが排除されることである。この実施形態により、装置およびシール付けの配置が同時に可能になり、移植時に装置が適切に整列することが保証される。
【0164】
図12A〜12Fに示す通り、自己拡張型TAV人工器官フレーム90は、展開の間、カテーテル94から放出される。自己整列式支持部材92は、カテーテルの「フリップ」から放出された後、TAV人工器官の基体に対してそれ自体(およびそれに付着しているあらゆるものと)整列する。回収の間は、このステップが反対の順序で続く。
【0165】
図13A〜13Eは、シール114を、移植時に装置フレーム116に隣接した場所に引き入れる付着縫合112を用いた、TAV装置110の展開を示す。
【0166】
シールは、流通および使用のために滅菌包装することができる。代替において、シールは、TAVまたはステントなど、シールに対してデザインされている装置の一部として、または装置とのキットにおいて包装することができる。
【0167】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに理解されよう。
【実施例】
【0168】
(実施例1)
速やかに膨潤するヒドロゲルの調製
短時間に実質的な膨潤を有するヒドロゲルを同定するための研究が行われている。合成のモノマーの重合および架橋に基づきヒドロゲルの膨潤に影響を及ぼす主な要因は:
モノマーのタイプ、
架橋剤のタイプ、
モノマーおよび架橋剤のゲル中の濃度、および
モノマーの架橋剤に対する比率
である。
【0169】
アクリル酸ポリマーは速やかに膨潤することができ、良好な生体適合性を有するとみなされている。ポリマーを架橋してヒドロゲルを形成するのに数々の市販の架橋剤を用いることができる。これらには、ビスアクリルアミド、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、およびポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(MW500Da)が含まれる。
【0170】
材料と方法
アクリル酸の濃度、架橋剤のタイプ、架橋剤の濃度、およびモノマーの架橋剤に対する比率の好適な組み合わせを同定するために試験を行った。ゲルを作るのに用いた処方の基本的組成を表1に示す。これらを以下の通り調製した:
アクリル酸を、架橋剤および必要な水の50%と混合し、15M水酸化ナトリウムでpHを中性に調節し、水で全体積を調節する。
【0171】
デシケーターまたは他の適切な容器中、真空下で溶液を脱気する。
【0172】
開始剤(APSおよびTEMED)を加え、十分に混和し、ゲルを一夜放置する。
【0173】
機械的性質および膨潤について試験する。
【0174】
小型ビーカーまたはFalconチューブ中でゲルを形成させた後、ゲルを小片に切断し、完全に乾燥するまで乾燥させた。次いで、ゲルの小片を回収し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再膨潤させた。ゲル片の重量を、次いで、規則的な間隔で記録した。
【0175】
結果
組成および膨潤のデータを表1および表2に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2-1】
【0178】
【表2-2】
【0179】
【表2-3】
【0180】
【表2-4】
【0181】
様々な処方に対する膨潤データを、
図14A(5分以内の膨潤)および
図14B(60分以内の膨潤)においてグラフ化する。
【0182】
主なデータから見ることができるように、最も速やかに膨潤するゲルはゲルNo.23であり、5分で2000%膨潤し、ポリアクリルアミドゲルに対する膨潤率300%と極めてよく比較される。60分間膨潤させた場合、ゲルNo.19はほぼ7000%膨潤し、ゲルNo.23は4000%膨潤した。
【0183】
理想的なゲルは速やかに膨潤し、最大の膨潤状態に速やかに到達するので、ゲルNo.23は、膨潤データのみに基づくと最良のゲルである。ゲルNo.23は、アクリル酸15%およびポリ(エチレングリコール)ジアクリレート0.05%からなる。ゲルNo.19は、アクリル酸10%およびポリ(エチレングリコール)ジアクリレート0.05%からなる。
【0184】
(実施例2)
ヒドロゲルに対する代替の架橋剤の評価
選択された架橋剤の背後にある原則は、重合性基を2つだけ有する短い架橋剤を有するよりもむしろ、多価架橋剤(すなわち、重合性基を複数有する長鎖親水性ポリマー)が用いられているということである。短鎖の2価の架橋剤に比べて、非常に強力なヒドロゲルが得られる。これらのゲルは非常に強固である一方で、非常に良好な膨潤の性質を有する。非常に強力なゲルは、通常、非常に大幅に膨潤することはない。
【0185】
ポリビニルアルコール(PVA)を、アルカリ条件下、アリルグリシジルエーテルで誘導体化した。アクリル酸をPVAベースの架橋剤と組み合わせ、次いで開始剤として過硫酸アンモニウムおよびTEMEDを用いて、この混合物をフリーラジカル重合によって重合することによりゲルを作成した。
【0186】
原則的に、数々の異なる開始材料で架橋剤を作ることができる:ある範囲のPVAおよび部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)または反応性側基を有する様々な他のポリマーを、基本的な重合体のバックボーンとして用いることができる。さらに、例えば、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプン、ガラクトマンナン、ペクチン、ヒアルロン酸などの広範囲の天然の親水コロイドを用いることができる。例えば、アリルグリシジルエーテル、臭化アリル、塩化アリルなどのある範囲の試薬を用いて必要な二重結合をこのバックボーン中に組み入れることができる。使用する化学反応に応じて、数々の他の試薬を用いて反応性の二重結合を組み入れることができる。
【0187】
多価架橋剤の調製
ポリビニルアルコール(PVA、30〜70kDa)を、アルカリ条件下、アリルグリシジルエーテルで誘導体化した。PVA2gを、水190mL中に溶解した。完全に溶解させた後、50%NaOH10mLを加え、次いでアリルグリシジルエーテル1mLおよび水素化ホウ素ナトリウム0.2gを加えた。反応を16時間進行させた。引き続き、イソプロパノールを加えることにより、架橋剤を反応混合物から沈殿させた。沈殿物をろ過によって回収し、イソプロパノールで洗浄し、水50mL中に再溶解した。架橋剤を、以下に記載する通り、さらなる精製または特性決定をせず、ゲル形成に利用した。
【0188】
ゲル形成および特性決定
アクリル酸を、上記で調製したPVAベースの架橋剤と合わせることによってゲルを形成し、次いで、混合物を、開始剤として過硫酸アンモニウムおよびTEMEDを用いてフリーラジカル重合によって重合した。
【0189】
アクリル酸15%を、様々な比率/濃度のPVAベースの架橋剤と組み合わせて含む3種類のゲルを調製した。表3に列挙する成分(開始剤を除く)を混合し、チューブをデシケーター中に配置し、真空を適用することによって脱気した。10分後、真空を切り、デシケーター中にあるチューブをさらなる10分間真空下に置いた。デシケーターを開け、開始剤を加えた。次いで、チューブの内容物を徹底的に混合した。チューブに蓋をし、一夜放置して重合させ、ヒドロゲルを形成させた。
【0190】
【表3】
【0191】
ゲルはほのかなピンク色で、ゲル化するとpHおよそ7.7を示した。ゲルに不透明度の増大が観察され、ゲル23aの不透明度が最も低く、ゲル23cの不透明度が最も高かった。これらのゲルは、架橋剤としてポリ(エチレングリコール)ジアクリレートと作られたゲルよりも、著しく高いゲル強度を有していた。これらのゲルは、機械的性質が非常に良好であり、膨潤性も非常に良好であった。ゲル23a〜cに対する膨潤率を測定し、表4に示す。5分後および60分後に膨潤パーセントを測定した。
【0192】
【表4】
【0193】
(実施例3)
in vitroモデルにおけるシール付けの実証
材料と方法
図15A〜15Bに示すTAV移植のin vitroモデルを、心臓リーフレット(leaflet)104を固定する折りたたみ式メッシュ102から形成されるTAVがその中に配置されているチューブを用いて構築した。このモデルにおいて、メッシュ102はチューブ中に均一に据え付けられておらず、メッシュ102とチューブ100の間の領域に弁傍の漏出部位106を作り出した。
【0194】
TAVは、
図2A〜2Cを参照して上記に記載した拡張性のシールを含んでいる。シール12は、ワイヤ16を用いて拡張されてシール12を周囲の液体(血液)に曝し、ヒドロゲルの拡張をもたらし、シール12をチューブ100の内側に対して押し付け、シール12の膜に弁周囲の漏出部位108をシールした。
【0195】
結果
図15Aは、装置の不適切による弁傍の漏出部位106を示す。
図15Bは、装置の基礎となる形状寸法を乱さずに、漏出部位がシールカプセル108でシールされることを示す。シールの合致は、漏出部位が存在する場所においてのみ、能動的に起こる。シールは、装置の中央開口部の面積を低減せず、結果として血流に対していかなる有害作用もない。
【0196】
前述より、本開示の特定の実施形態を例示の目的で本明細書に記載してきたが、これら実施形態から様々な修飾形態を作ることができることが理解されよう。特定の実施形態の文脈において記載した本開示のある種の態様は、他の実施形態において組み合わされ、または排除され得る。例えば、特定の実施形態によるシール付け装置は、前述の成分および特徴のいくらかだけを含むことができ、他の装置は、上記に開示したものに加えて他の成分および特徴を含むことができる。さらに、ある種の実施形態に付随する利点をこれら実施形態の文脈において記載してきたが、他の実施形態もこのような利点を示すことができ、実施形態全てが必ずしもこのような利点を示す必要はない。したがって、本開示は、上記に示さず、または記載しなかった他の実施形態を含むことができる。