特許第6185480号(P6185480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185480授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を提供するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185480
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を提供するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20170814BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G01N21/27 Z
   G01N21/27 B
   A61B5/00 101A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-548283(P2014-548283)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-501000(P2015-501000A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】IB2012057314
(87)【国際公開番号】WO2013093739
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/579,305
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11195114.1
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン シン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シャオシン
(72)【発明者】
【氏名】ユ レンジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ファンファン
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0020357(US,A1)
【文献】 特開2000−146832(JP,A)
【文献】 特表2011−507577(JP,A)
【文献】 特表2011−516879(JP,A)
【文献】 特開昭61−160047(JP,A)
【文献】 S. E. J. Daly et al.,Degree of breast emptying explains change in the fat content, but not fatty acid composition, of human milk,Experimental Physiology,1993年,Vol. 78, No. 6,pp. 741-755
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
A61M 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を、前記乳房から搾出中の母乳について算出された脂肪含量に基づいて提供する方法であって、前記脂肪含量を算出する方法は、
搾出中の母乳の光学的特性を測定するステップと、
測定された前記光学的特性を既知の母乳の試料の光学的特性と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップと、
算出された前記脂肪含量から、前記乳房に残っている母乳の量の指標を算出するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップは、測定された前記光学的特性と前記既知の母乳の試料の光学的特性との前記比較に基づいて搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するためのアルゴリズムを適用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記搾出中の母乳の光学的特性を測定する前記ステップは、光源を使用して、母乳の一部を照明するステップと、RGBセンサを使用して、前記搾出中の母乳の色を検出するステップを含み
前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップは、前記検出された色を、前記既知の母乳の試料の色と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記搾出中の母乳の光学的特性を測定する前記ステップは、光源を使用して、搾出中の母乳を照明するステップと、センサを使用して、前記搾出中の母乳によって吸収された光量を検出するステップとを含み、
前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップは、検出された前記吸収された光量を、前記既知の母乳の試料において吸収された光量と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記搾出中の母乳によって吸収された光量をセンサを使用して検出する前記ステップは、搾出中の母乳に含まれる脂肪球によって散乱又は吸収される所定の波長の光で、前記搾出中の母乳を照明するステップと、前記母乳の透過光量を検出するステップと、検出された前記透過光量を、前記既知の母乳の試料における透過光量と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記搾出中の母乳を照明するステップが、複数の光源により前記所定の波長の光として異なる波長の光を放出、搾出中の母乳の一部を照明することを含み
前記母乳の透過光量を検出するステップが、複数のセンサを使用して、前記搾出中の母乳を透過した前記異なる波長の各波長の透過光量を検出することを含み
前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップが、検出された前記各波長の透過光量を、前記既知の母乳の試料における透過光量と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記搾出中の母乳の光学的特性を測定する前記ステップは、光源を使用して、搾出中の母乳の一部を照明するステップと、センサを使用して、前記搾出中の母乳による光の減衰を検出するステップと、その後、前記検出された減衰を、前記既知の母乳の試料の減衰を表すデータと比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出するステップとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記搾出中の母乳を透過した光、及び前記搾出中の母乳によって散乱された光を検出するための複数のセンサを有し、前記検出された光を、前記搾出中の母乳に入射していない、参照検出器によって受信された光と比較するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光源から放出される前記光の経路内に位置決めされたビームスプリッタを提供するステップを含み、前記ビームスプリッタは、前記搾出中の母乳に向けて前記光源から放出される光の一部を前記参照検出器に向ける、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記搾出中の母乳の前記算出された脂肪含量、又は前記算出された脂肪含量に基づいて前記乳房に残っている母乳の量を表す他の指標を使用者に知らせるステップを含み、前記使用者は、前記他の指標に応じてポンピングを制御する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記搾出中の母乳の前記算出された脂肪含量を表す信号を制御ユニットに供給するステップを含み、前記制御ユニットは、前記信号に応じてポンピングを自動的に制御するように動作可能である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を、前記乳房から搾出中の母乳の算出された脂肪含量に基づいて提供するためのユニットであって、前記ユニットは、搾乳ポンプに取外し可能に装着可能であり、母乳が乳房から搾出されるときに母乳の光学的特性を測定し、前記測定された光学的測定を、既知の母乳の試料の光学的特性と比較して、前記搾出中の母乳の前記脂肪含量を算出し、前記搾出中の母乳の前記算出された脂肪含量から、前記乳房に残っている母乳の量の指標を算出するように動作可能である、ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の前記ユニットを備える、搾乳ポンプ。
【請求項14】
前記搾乳ポンプは、使用中に前記搾乳ポンプに乳房を挿入するための乳房シールドを備え、前記ユニットは、前記乳房シールドに取外し可能に装着可能である、請求項13に記載の搾乳ポンプ。
【請求項15】
前記乳房シールドは、母乳の試料を受け取って一時的に保持又は緩衝するために、膨出部又は凹部を有し、前記ユニットは、前記ユニットが前記搾乳ポンプに装着されるときに、前記膨出部又は凹部内の前記母乳の光学的特性を測定するように動作可能である、請求項14に記載の搾乳ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を、乳房から搾出された母乳の算出された脂肪含量に基づいて提供する方法に関する。また、本発明は、搾乳ポンプに装着可能な、上記の方法を実施するためのユニット、及びそのようなユニットを組み込む搾乳ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(World Health Organisation)によって、生後6ヶ月まで、新生児の完全母乳育児を行い、その後、2歳以上まで、適切な補完食と共に母乳育児が行うことが推奨されている。母親が、乳児が飲むのに適量の母乳を作り出すことができることが非常に重要である。これは、供給と需要の関係の良好な制御を必要とする。なぜなら、母親の乳房は、乳児が飲む量に応じて、作り出される母乳の量を適合させるように働くからである。
【0003】
良好な供給と需要の関係が確立されているとき、母親の母乳供給は、乳児の需要に一致される。従って、通常の授乳時間は、乳児が十分な母乳を飲んだときに終了する。乳児に直接母乳を与えることができないとき、又は直接母乳を与えるのが不都合であるときに、搾乳ポンプを用いて母乳を搾出することを選択する母親もいる。
【0004】
搾乳ポンプを使用するとき、母親は、乳房に残っている母乳の量、及び搾乳ポンプの使用を終える時を知ることは難しい。全ての母乳が乳房から搾出されたかどうかを知ることが重要である。なぜなら、授乳生理学によれば、乳房が空にされていない場合、乳房が供給と需要の関係のバランスを取るように働くときに、長期的な母乳生成が減少するからである。更に、母乳が乳房にあまりにも長く残っている場合、乳房は細菌成長にとって良好な環境を生み出すので、乳腺炎が生じ得る。
【0005】
母親が、母乳が作り出される量を監視し、それを乳児の要求に合わせることができることが知られている。しかしながら、これは、特に乳児が成長して、より多くの母乳を求めるときには難しくなり得、乳房が必要以上又は必要未満の母乳を作り出すことになり得る。
【0006】
また、例えば国際公開第2001/054488 A1号から、搾乳ポンプによって母乳が搾出されている流量を監視するために流量計を使用することも知られている。これは、乳房が空である度合いの指標を与えるために使用され得る。即ち、乳房が空になるにつれて、流量は減少する。しかしながら、これは、不正確である場合があり、乳房が空である又はほぼ空である場合には搾乳ポンプ器具の不具合(閉塞又は真空シールの損失など)を引き起こす虞がある。
【0007】
また、国際公開第2009/060448 A2号及び米国特許出願公開第2005/0059928 A1号から、ポンピング又は授乳中に乳房を監視するために電子センサを使用することも知られている。乳房の形状、導電率、及び他の特性が、乳房に母乳が満たされている度合いの指標を与えることができる。これもまた不正確である場合があり、異なる使用者毎に較正するのは難しい。
【0008】
更に、上述の方法及びデバイスは、使用し難く、しばしば、乳房領域内に装着される必要なセンサにより嵩張り、快適でない。
【0009】
母乳の組成は、人によって、様々な授乳段階で、更には1回の授乳中においても異なる。一般に、母乳は、87%〜88%の水と、約4%の脂肪と、約7%の乳糖と、約1%のタンパク質及び他のミネラルとを含む溶液である。脂肪は、水に不溶性であり、従って、水中に懸濁された脂肪球の形態を取る。脂肪球は、4μmの平均直径を有する。これらの脂肪球は、母乳中に存在する最大の粒子である。カゼインタンパク質などのタンパク質も粒子形態で存在するが、0.005μm〜0.3μmとはるかに小さい。母乳の他の成分は、水中に溶解され、従って大きな粒子は存在しない。
【0010】
乳房が空になるにつれて、母乳の脂肪含量が上昇することが知られている。授乳時間中の脂肪含量の差は、前乳での20グラム/リットルから、後乳での130グラム/リットルまでの範囲内であり得る。典型的には、科学者は、乳房に残っている母乳の量を算出するための正確で確実な方法としてこの尺度を使用する。母乳試料の脂肪含量を算出するために、一般に遠心分離機が使用されて、(不溶性の)脂肪を水から分離する。次いで、脂肪の量が測定され得る。
【0011】
乳房が空になった時を判断する別の方法は、乳房撮影技法を使用して乳房体積を推定するものである。乳房の形状は、乳房が空にされるにつれて自然に変化し、これは、外部から見ることができる相違である。
【0012】
遠心分離機も乳房撮影法も、定期的な日常の使用には適していない。なぜなら、それらは、複雑であり、コストが高く、且つ不便であり、しかも、リアルタイムで、乳房からたった今搾出された母乳の試料に対して、搾乳ポンプが依然使用されている状態のままで迅速且つ簡単には実施され得ない機器及びプロセスを必要とするからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、搾乳ポンプの機能、並びに使用者の快適性及び便宜性を損なうことなく、授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を迅速且つ簡単に提供する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を、前記乳房から搾出された母乳の算出された脂肪含量に基づいて提供する方法であって、前記脂肪含量を算出する方法が、搾出中の母乳の光学的特性を測定し、前記測定された光学的測定を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料の対応する光学的特性を表すデータと比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出し、前記搾出された母乳の算出された脂肪含量から、乳房に残っている母乳の量の指標を算出する方法が提供される。
【0015】
好ましくは、この方法は、測定された光学的特性と既知の脂肪含量を有する母乳の試料の前記対応する光学的特性との前記比較に基づいて搾出された母乳の脂肪含量を算出するためのアルゴリズムを適用して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップを含む。
【0016】
母乳の脂肪含量により授乳時間中に母乳の色が変化するので、一実施形態では、搾出された母乳の光学的特性を測定するステップは、光源を使用して、母乳の一部を照明するステップと、RGBセンサを使用して、搾出された母乳の色を検出するステップと、その後、前記測定された色を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料の色と比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップとを含み、脂肪含量が、乳房に残っている母乳の量を示す。
【0017】
別の実施形態では、搾出された母乳の光学的特性を測定するステップは、光源を使用して、搾乳後の母乳を照明するステップと、センサを使用して、前記搾出された母乳によって吸収された光の量を検出するステップと、その後、前記測定された吸収を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料の吸収を表すデータと比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップとを含み、脂肪含量が、乳房に残っている母乳の量を示す。
【0018】
好ましくは、この実施形態では、センサを使用して、搾出された母乳によって吸収された光の量を検出するステップは、搾出された母乳に含まれる脂肪球によって散乱又は吸収されることが知られている所定の波長の光で、搾出された母乳を照明するステップと、前記母乳を透過された光の量を検出するステップと、前記透過された光の前記測定された量を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料を透過される光の量を表すデータと比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップとを含み、脂肪含量が、乳房に残っている母乳の量を示す。
【0019】
この実施形態は、更に、異なる波長の光を放出する複数の光源で、搾出された母乳の一部を照明するステップと、複数のセンサを使用して、搾出された母乳を透過された各波長の光の量を検出するステップと、透過された光の前記測定された量を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料を透過された光の量と比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップとを含んでもよく、脂肪含量が、乳房に残っている母乳の量を示す。
【0020】
更に別の実施形態では、搾出された母乳の光学的特性を測定するステップは、光源を使用して、搾乳された母乳の一部を照明するステップと、センサを使用して、前記搾出された母乳による光の減衰を検出するステップと、その後、前記測定された減衰を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料の減衰を表すデータと比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出するステップとを含み、脂肪含量が、乳房に残っている母乳の量を示す。
【0021】
この実施形態では、複数のセンサが、搾出された母乳を透過された光、及び前記搾出された母乳によって散乱された光を検出するために使用されてもよく、検出された光を、搾出された母乳に入射していない、参照検出器によって受信された光と比較する。
【0022】
この実施形態は、光源から放出される光の経路内に位置決めされたビームスプリッタを含んでもよく、それにより、搾出された母乳に向けて光源から放出される光の一部が参照検出器に向けられる。
【0023】
好ましくは、この方法は、搾出された母乳の算出された脂肪含量、又は算出された脂肪含量に基づいて前記乳房に残っている母乳の量を表す他の指標を使用者に知らせるステップを含み、それにより、使用者は、前記情報に応じてポンピングを制御し得る。
【0024】
これは、使用者が、供給と需要の関係を制御して、搾乳ポンプ及びセンサの各使用によって十分な母乳が搾出されることを保証することができるようにするという利点を有する。
【0025】
この方法は、更に、搾出された母乳の算出された脂肪含量を表す信号を制御ユニットに供給するステップを含んでもよく、前記制御ユニットは、前記信号に応じてポンピングを自動的に制御するように動作可能である。
【0026】
これは、乳房を空にするように搾乳ポンプを設定することができるという利点を与え、搾乳ポンプは、乳房が空になるまでポンプ動作を続ける。ポンプの動作を自動的に停止させることができるこの機能は、乳房組織に痛み及び損傷を与え得る過剰ポンピングを防止する。
【0027】
また、本発明の別の態様によれば、授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を、前記乳房から搾出された母乳の算出された脂肪含量に基づいて提供するためのデバイスであって、搾乳ポンプに取外し可能に装着可能であり、母乳が乳房から搾出されるときに母乳の光学的特性を測定し、前記測定された光学的測定を、既知の脂肪含量を有する母乳の試料の対応する光学的特性と比較して、前記搾出された母乳の脂肪含量を算出し、前記搾出された母乳の算出された脂肪含量から、乳房に残っている母乳の量の指標を算出するように動作可能なデバイスが提供される。
【0028】
上記のユニットを備える搾乳ポンプが提供され得る。好ましくは、搾乳ポンプは、使用中に搾乳ポンプに乳房を挿入するための乳房シールドを備え、前記ユニットは、前記乳房シールドに取外し可能に装着可能である。
【0029】
乳房シールドは、母乳の試料を受け取って一時的に保持又は緩衝するために、膨出部又は凹部を有してもよく、前記ユニットは、前記ユニットが前記搾乳ポンプに装着されるときに、前記膨出部又は凹部内の母乳の光学的特性を測定するように動作可能である。
【0030】
次に、好ましい実施形態が、単に例として、添付図面を参照して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】流体の流れに隣接する光源と光センサの方法図面である。
図2】1対の光源と、流体の流れの両側に位置された対応する1対の光センサとを使用する方法を示す図である。
図3】光源と、流体の流れの周りに位置された複数の光センサとを備える方法を示す図である。
図4】典型的な搾乳ポンプアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
脂肪は、水中に懸濁された脂肪球による光の反射、吸収、及び散乱により、母乳の光学的特性に影響を及ぼす。この影響の帰結の1つは、脂肪含量が変化するときの母乳の色の変化である。
【0033】
図面を参照すると、図1は、光源2と、光センサ3と、流体の流れ1とを示す。流体の流れ1は、乳房からたった今搾出されて、搾乳ポンプ(図示せず)に入っている母乳を表す。この実施形態では、光源2は、白色(広域スペクトル)LEDなど、所要の光を生成することができる任意の電気デバイスで良い。光センサ3は、光が流体の流れ1によって反射された後に光の色組成を検出するように構成され、光の赤色、緑色、及び青色成分について色合成に関する数値データを出力するRGBセンサなど、任意のタイプの色感知素子で良い。光センサ3からの出力信号は、制御ユニット(図示せず)に伝送され、制御ユニットは、その信号を既知のデータと比較し、データ比較に基づいて、使用者の乳房に残っている母乳の量に関して使用者に知らせ、それにより、使用者がそれに従ってポンピングを変更できるようにする。代替として、搾乳ポンプは、センサ3からの出力、及び既知のデータとの比較に応じて自動的に制御され得る。
【0034】
図1の実施形態では、光源2と光センサ3は、別個の部品として図示され、流体の流れに沿って互いに隣接して位置決めされる。しかしながら、光源2と光センサ3が、流体の流れ1の周りの領域内の任意の位置で異なる配置にされてもよく、更には、光を放出する機能と流体の流れの色を検出する機能との両方を有する1つの構成要素に組み合わされ得ることが理解されよう。
【0035】
図2は、2つの光源4、5を備え、流体の流れ1に対して光源4、5と反対の側に2つの光センサ6、7が位置決めされた、方法の別の実施形態を示す。光源4、5は、流体の流れ1に向けられた、それぞれ制御された波長を有する光を生成する。流体の流れ1の反対側に位置決めされた光センサ6、7は、光が流体の流れ1を通過した後に光を検出する。第1の光センサ6が、第1の光源4からの光のみを検出し、第2の光センサ7が、第2の光源5からの光のみを検出するように構成される。流体の流れ1は、乳房からたった今搾出されて、搾乳ポンプ(図示せず)に入っている母乳を表す。
【0036】
この実施形態では、母乳中の脂肪球による吸収又は散乱を特に受けやすいが、母乳の他の成分による散乱をできるだけ避けるように、光源によって放出される光の波長を制御することが重要である。前述のように、脂肪球は、典型的には直径が1.5μm〜12μmであり、平均4.5μmである。また、母乳は、光を散乱又は吸収することができるカゼインタンパク質粒子も含有する。しかしながら、授乳時間を通じて母乳のカゼイン含量のパーセンテージはかなり一定であるので、カゼイン粒子は、乳房が空である度合いの指標を与えるためには使用され得ない。
【0037】
この知識により、光源4、5から放出される光の波長は、脂肪球による吸収及び散乱がカゼイン粒子による吸収及び散乱から区別され得るように選択され得る。
【0038】
第1の光源4と第2の光源5は、レーザダイオードを備え、第1の光センサ6と第2の光センサ7は、フォトダイオードを備える。第1のレーザダイオード4と第2のレーザダイオード5は、読取りの確実性を高め、脂肪球サイズのばらつきに対処するように、異なる波長の光を放出する。
【0039】
第1のレーザダイオード4及び第2のレーザダイオード5によって生成される光が母乳1を通過するとき、光の幾らかが母乳1の脂肪、タンパク質、及び他の成分によって吸収される。第1のフォトダイオード6及び第2のフォトダイオード7は、光が母乳1によって変えられた後に光を検出し、制御ユニット(図示せず)と協働して、母乳1中の脂肪球によって吸収された光の量を特定することができる。制御ユニットは、測定値を実験結果と比較し、母乳の脂肪含量を算出するためにアルゴリズムを使用することができる。この情報は、乳房に残っている母乳の量を検出して、使用者に知らせる又は搾乳ポンプでの何らかの制御アクションを作動させるために使用され得る。
【0040】
図3は、流体の流れ1の周りに配置された、1つの光源8と、4つの光センサ9、10、11、12と、ビームスプリッタ16とを備える、方法の第3の実施形態を示す。この実施形態では、光源8は、レーザダイオードであり、光センサ9、10、11、12は、フォトダイオードである。前述のように、流体の流れ1は、乳房から搾出され、搾乳ポンプ(図示せず)に入っている母乳である。
【0041】
光センサ9、10、11、12は、母乳1中の脂肪球による光散乱率、即ち母乳1の濁度を検出するように構成される。濁度は、個々の粒子による流体の霞み又は曇り具合を示す光学的特性である。光が流体を透過されるときに光の減衰及び/又は散乱を測定することによって流体の濁度を測定することが知られている。前述のように、母乳は、脂肪球を含有し、従って、光が母乳を通過するときに散乱される光の量は、母乳の脂肪含量の測定値を与える。より多くの脂肪球が存在する場合、より多くの光が散乱される。
【0042】
図3に示される実施形態では、レーザダイオード8とビームスプリッタ16は、レーザダイオード8から放出される光が2つの部分に分割されるように構成され、一方の部分は第1のフォトダイオード9に向けられ、他方の部分は母乳1の流れに向けられる。レーザダイオード8からの光の分割された部分の第1の部分を検出する第1のフォトダイオード9の測定値が、参照測定値となる。光の第2の部分が母乳1の流れと相互作用するとき、光のいくらかは、流れを通過し、第2のフォトダイオード10によって検出される。第2のフォトダイオード10は、第1のフォトダイオード9の測定値と比較して、光の減衰の測定値を与えるように構成される。光の残りは、吸収されるか、又は任意の方向に散乱される。第3のフォトダイオード11と第4のフォトダイオード12は、特定の方向に散乱された光を検出するように位置決めされる。4つのフォトダイオード9、10、11、12は全て、それらの測定値を制御ユニット(図示せず)に通信し、制御ユニットは、実験データから導出されたアルゴリズムを使用して、母乳1の脂肪含量を算出する。制御ユニットは、読取値を使用することによって多くのやり方でこれを実現してもよい。この実施形態では、母乳1の濁度、従って脂肪含量は、以下の比を互いに比較し、また実験により導出された定数と比較することによって算出され得る。
− 前方散乱比(第3のフォトダイオード11/第1のフォトダイオード9)
− 後方散乱比(第4のフォトダイオード12/第1のフォトダイオード9)
− 透過減衰比(第2のフォトダイオード10/第1のフォトダイオード9)
【0043】
上記の比のただ1つの値を計算するようにこの実施形態が簡略化され得ることに留意されるべきである。それら全てを測定することが、精度を高める。
【0044】
図4は、乳房受取りシールド15を有する典型的な搾乳ポンプアセンブリ13を図示し、乳房受取りシールド15は、円筒部分14に向かって狭まり、円筒部分14は、乳房受取りシールド15を搾乳ポンプの本体20及び母乳収集容器21に接続する。円筒部分14は、図1図3を参照して述べられたセンサなど光センサが装着され得る変形部、膨出部、又は他の形態14aを有しても良い。これは、センサに関する好ましい位置である。なぜなら、母乳の脂肪含量の変化が最高の精度で検出されるように、母乳が、乳房から出た直後又はすぐ後に、既に母乳収集容器21内にある母乳と混合される前にセンサによって分析されることが有利であるからである。センサは、搾乳ポンプに取外し可能に取り付けられてもよく、搾乳ポンプの洗浄前にセンサの取外しを可能にする。
【0045】
ポンピング中、母乳は、円筒部分14に沿って流れ、母乳の試料は変形部又は膨出部14aを通過し、変形部又は膨出部14aは緩衝領域を提供する。なぜなら、この領域を通過する母乳は、円筒部分14を通過する母乳に比べて乱流が少ないことがあり、分析をより容易にするからである。明らかに、搾出された母乳の光学的特性の変化を測定するためのデバイスが乳房シールドの外側に取り付けられる場合には、母乳シールド、又は膨出部14aの近傍の母乳シールドの少なくとも一部は、そこを通って分析対象の母乳内に進む光に対してほとんど又は全く影響を及ぼさない透明材料から形成されなければならない。
【0046】
センサは、使用者又は搾乳ポンプ制御ユニットにフィードバックされる信号を発生する。ユーザインターフェースは、乳房に残っている母乳の量が少ない、又は空であるときに使用者に知らせることができる。例えば、一連のライト又は他の標識が、算出された測定値に基づいて、乳房に残っている母乳の量を示すために表示され得る。搾乳ポンプがユーザインターフェースを提供されるか否かに関わらず、搾乳ポンプ制御ユニットは、測定値を使用して、ポンピングパワーが十分であるかどうか判断し、適宜、パワーを増加又は減少することができる。また、搾乳ポンプ制御ユニットは、乳房が空である又は少量の母乳しか乳房に残っていないことを測定値が示す場合には、ポンピングを自動的に停止し得る。
【0047】
授乳中に乳房に残っている母乳の量に関する指標を提供するための各方法が個別に述べられてきたが、より正確で確実な測定を実現するために方法の任意の組合せを同時に使用することも可能であることが理解されよう。
【0048】
用語「備える」は、他の要素又はステップを除外せず、「1つの」は、複数を除外しないことが理解されよう。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されていることだけでは、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことは示さない。特許請求の範囲内の任意の参照符号は、特許請求の範囲の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0049】
本出願では、特許請求の範囲は、特徴の特定の組合せに関して策定されているが、本発明の開示の範囲は、明示的に若しくは暗示的に本明細書に開示される任意の新規の特徴若しくは特徴の任意の新規の組合せ、又はそれらの任意の一般化も含み、それが、本出願において任意の請求項で特許請求されるものと同じ発明に関するかどうかには関わらず、また、親発明と同じ技術的問題の任意のもの又は全てを軽減するか否かには関わらないことが理解されるべきである。ここで、本出願人は、本出願又はそこから導出される任意のさらなる出願の手続き中に、新規の請求項が、そのような特徴及び/又は特徴の組合せに関して策定され得ることを通知する。
【0050】
添付の特許請求の範囲の範囲に入る他の修正形態及び変形形態は、当業者に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4