(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185481
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】エレクトロルミネッセンスデバイス、およびその製造
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20170814BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20170814BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20170814BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 Z
H05B33/22 Z
H05B33/26 Z
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-549625(P2014-549625)
(86)(22)【出願日】2013年1月3日
(65)【公表番号】特表2015-503829(P2015-503829A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】IB2013050037
(87)【国際公開番号】WO2013102859
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/582,581
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/624,910
(32)【優先日】2012年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/677,864
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515109193
【氏名又は名称】ダークサイド サイエンティフィック, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Darkside Scientific, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ズジンコ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ジェイ マストリアン
【審査官】
濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−529894(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0183434(US,A1)
【文献】
特表2001−525926(JP,A)
【文献】
特表2003−522371(JP,A)
【文献】
特表2010−500733(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02334151(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0129297(US,A1)
【文献】
米国特許第03981820(US,A)
【文献】
特開昭63−193046(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0080256(US,A1)
【文献】
特開2005−093358(JP,A)
【文献】
特開2003−076257(JP,A)
【文献】
特開2003−026932(JP,A)
【文献】
特開2002−231052(JP,A)
【文献】
特開2003−178869(JP,A)
【文献】
特開2007−115624(JP,A)
【文献】
特開2004−259572(JP,A)
【文献】
特開2007−099541(JP,A)
【文献】
特開2008−123780(JP,A)
【文献】
特開2002−150843(JP,A)
【文献】
特開2005−272295(JP,A)
【文献】
特開2006−008451(JP,A)
【文献】
特開2010−285332(JP,A)
【文献】
特開昭63−094594(JP,A)
【文献】
特開2001−196170(JP,A)
【文献】
特表2000−509703(JP,A)
【文献】
特開2004−311422(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/051045(WO,A1)
【文献】
米国特許第04482580(US,A)
【文献】
特開2002−362000(JP,A)
【文献】
特開平9−276345(JP,A)
【文献】
特開2001−113223(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/086483(WO,A1)
【文献】
特開2013−139495(JP,A)
【文献】
特開2003−288843(JP,A)
【文献】
特開平11−352013(JP,A)
【文献】
特開2010−14430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H05B 33/14
H05B 33/22
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を選択するステップと、
水性ベースの導電性のバックプレーン材料を用いて前記基板の上にベース・バックプレーン・フィルム層を塗布するステップと、
水性ベースの誘電体材料を用いて前記ベース・バックプレーン・フィルム層の上に誘電体フィルム層を塗布するステップと、
水性ベースの蛍光体材料を用いて前記誘電体フィルム層の上に蛍光体フィルム層を塗布するステップであって、前記蛍光体フィルム層が、塗布中に紫外線照射光源によって励起され、前記蛍光体フィルム層が塗布されている間に前記紫外線照射光源がコーティング層の均一性を示す視覚インジケータを提供し、蛍光体フィルム層を塗布する間、前記誘電体フィルム層の上に全体的に均一な分布の蛍光体材料を塗布するために前記コーティング層の均一性を示す視覚インジケータに応じて前記蛍光体フィルム層の塗布が調整される、ステップと、
水性ベースの実質的に透明な導電性の電極材料を用いて前記蛍光体フィルム層の上に電極フィルム層を塗布するステップと
を含む、コンフォーマルなエレクトロルミネッセンスシステムを作るためのプロセスであって、
前記バックプレーンフィルム層、前記誘電体フィルム層、前記蛍光体フィルム層、および、前記電極フィルム層が、それぞれスプレー・コンフォーマル・コーティングによって塗布され、
前記バックプレーンフィルム層と前記電極フィルム層との間に電荷を印可して前記蛍光体フィルム層の全域に作られる電界によって、前記蛍光体フィルム層が励起可能であり、これにより前記蛍光体フィルム層がエレクトロルミネッセンス光を放出するものである、プロセス。
【請求項2】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性との両方を有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、さらに前記誘電体材料が、チタン酸塩、酸化物、ニオブ酸塩、アルミン酸塩、タンタル酸塩、およびジルコン酸塩材料のうちの少なくとも1つを含むとともにアンモニア水の溶媒の中に懸濁している、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
コポリマーと希釈水酸化アンモニウムの比が約2:1である溶液を提供するステップと、
所定量のチタン酸バリウムを所定量の水酸化アンモニウムでプリウェットするステップと、
プリウェットされた前記チタン酸バリウムをコポリマーと希釈水酸化アンモニウムとの前記溶液に添加して過飽和懸濁液を作るステップと
を含む、前記誘電体フィルム層のための組成物を作るステップをさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性とを有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、前記誘電体材料が、デバイスにおいて重ね合わされた層を通る光の伝播を促進する光屈折特性をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
静電的に極めて透過性のあるポリマーマトリクスの中に封入された蛍光体を有する半導電性のコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
量子ドットを含むコーティング組成物、または、銅、マンガン、および銀のうちの少なくとも1つでドープされた硫化亜鉛ベースの蛍光体を含むコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
全体的に透明な基板を選択するステップと、
水性ベースの実質的に透明な導電性の電極材料を用いて前記基板の上に電極フィルム層を塗布するステップと、
水性ベースの蛍光体材料を用いて前記電極フィルム層の上に蛍光体フィルム層を塗布するステップであって、前記蛍光体フィルム層が、塗布中に紫外線照射光源によって励起され、前記蛍光体フィルム層が塗布されている間に前記紫外線照射光源がコーティング層の均一性を示す視覚インジケータを提供し、蛍光体フィルム層を塗布する間、前記電極フィルム層の上に全体的に均一な分布の蛍光体材料を塗布するために前記コーティング層の均一性を示す視覚インジケータに応じて前記蛍光体フィルム層の塗布が調整される、ステップと、
水性ベースの誘電体材料を用いて前記蛍光体層の上に誘電体フィルム層を塗布するステップと、
水性ベースの導電性のバックプレーン材料を用いて前記誘電体フィルム層の上にベース・バックプレーン・フィルム層を塗布するステップと、
を含む、コンフォーマルなエレクトロルミネッセンスシステムを作るためのプロセスであって、
前記バックプレーンフィルム層、前記誘電体フィルム層、前記蛍光体フィルム層、および、前記電極フィルム層が、それぞれスプレー・コンフォーマル・コーティングによって塗布され、
前記バックプレーンフィルム層と前記電極フィルム層との間に電荷を印可して前記蛍光体フィルム層の全域に作られる電界によって、前記蛍光体フィルム層が励起可能であり、これにより前記蛍光体フィルム層がエレクトロルミネッセンス光を放出するものである、プロセス。
【請求項8】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性との両方を有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、さらに前記誘電体材料が、チタン酸塩、酸化物、ニオブ酸塩、アルミン酸塩、タンタル酸塩、およびジルコン酸塩材料のうちの少なくとも1つを含むとともにアンモニア水の溶媒の中に懸濁している、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
コポリマーと希釈水酸化アンモニウムの比が約2:1である溶液を提供するステップと、
所定量のチタン酸バリウムを所定量の水酸化アンモニウムでプリウェットするステップと、
プリウェットされた前記チタン酸バリウムをコポリマーと希釈水酸化アンモニウムとの前記溶液に添加して過飽和懸濁液を作るステップと
を含む、前記誘電体フィルム層のための組成物を作るステップをさらに含む、請求項7または8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性とを有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、前記誘電体材料が、デバイスにおいて重ね合わされた層を通る光の伝播を促進する光屈折特性をさらに有する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
静電的に極めて透過性のあるポリマーマトリクスの中に封入された蛍光体を有する半導電性のコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
量子ドットを含むコーティング組成物、または、銅、マンガン、および銀のうちの少なくとも1つでドープされた硫化亜鉛ベースの蛍光体を含むコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
全体的に透明な基板を選択するステップと、
水性ベースの実質的に透明な導電性の電極材料を用いて前記基板の上に第1の電極フィルム層を塗布するステップと、
水性ベースの蛍光体材料を用いて前記第1の電極フィルム層の上に第1の蛍光体フィルム層を塗布するステップであって、前記第1の蛍光体フィルム層が、塗布中に紫外線照射光源によって励起され、前記第1の蛍光体フィルム層が塗布されている間に前記紫外線照射光源がコーティング層の均一性を示す視覚インジケータを提供し、蛍光体フィルム層を塗布する間前記第1の電極フィルム層の上に全体的に均一な分布の蛍光体材料を塗布するために前記コーティング層の均一性を示す視覚インジケータに応じて前記第1の蛍光体層の塗布が調整される、ステップと、
水性ベースの誘電体材料を用いて前記第1の蛍光体フィルム層の上に誘電体フィルム層を塗布するステップと、
前記蛍光体材料を用いて前記誘電体フィルム層の上に第2の蛍光体フィルム層を塗布するステップであって、前記第2の蛍光体フィルム層が、塗布中に紫外線照射光源によって励起され、前記第2の蛍光体フィルム層が塗布されている間に前記紫外線照射光源がコーティング層の均一性を示す視覚インジケータを提供し、蛍光体フィルム層が塗布されている間前記誘電体フィルム層の上に全体的に均一な分布の蛍光体材料を塗布するために前記コーティング層の均一性を示す視覚インジケータに応じて前記第2の蛍光体フィルム層の塗布が調整される、ステップと、
前記電極材料を用いて前記第2の蛍光体層の上に第2の電極フィルム層を塗布するステップと
を含む、コンフォーマルなエレクトロルミネッセンスシステムを作るためのプロセスであって、
前記第1の電極フィルム層、前記第1の蛍光体フィルム層、前記誘電体フィルム層、前記第2の蛍光体フィルム層、および、前記第2の電極フィルム層が、それぞれスプレー・コンフォーマル・コーティングによって塗布され、
前記第1の電極フィルム層と前記第2の電極フィルム層との間に電荷を印可して前記第1及び第2の蛍光体フィルム層の全域に作られる電界によって、前記蛍光体フィルム層が励起可能であり、これによりデバイスが前記基板の両側に放出されるエレクトロルミネッセンス光を放出するものである、プロセス。
【請求項14】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性との両方を有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、さらに前記誘電体材料が、チタン酸塩、酸化物、ニオブ酸塩、アルミン酸塩、タンタル酸塩、およびジルコン酸塩材料のうちの少なくとも1つを含むとともにアンモニア水の溶媒の中に懸濁している、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
コポリマーと希釈水酸化アンモニウムの比が約2:1である溶液を提供するステップと、
所定量のチタン酸バリウムを所定量の水酸化アンモニウムでプリウェットするステップと、
プリウェットされた前記チタン酸バリウムをコポリマーと希釈水酸化アンモニウムとの前記溶液に添加して過飽和懸濁液を作るステップと
を含む、前記誘電体フィルム層のための組成物を作るステップをさらに含む、請求項13または14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
電気的に絶縁性の特性と誘電率の特性とを有する誘電体材料を選択するステップをさらに含み、前記誘電体材料が、前記デバイスにおいて重ね合わされた層を通る光の伝播を促進する光屈折特性をさらに有する、請求項13〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
静電的に極めて透過性のあるポリマーマトリクスの中に封入された蛍光体を有する半導電性のコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
量子ドットを含むコーティング組成物、または、銅、マンガン、および銀のうちの少なくとも1つでドープされた硫化亜鉛ベースの蛍光体を含むコーティング組成物を、前記蛍光体材料用に選択するステップをさらに含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年1月3日に出願された米国仮特許出願第61/582,581号の優先権を主張して、2012年9月22日に出願された米国特許出願第13/624,910号の継続出願である、2012年11月15日に出願された米国特許出願第13/677,864号の優先権を主張するものである。これらの各出願の内容のすべては、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、電気ドライブ回路に接続可能な下側のバックプレーン電極層と上側の電極層とを有するエレクトロルミネッセンスデバイスを作るためのシステムに関する。下側の電極層と上側の電極層の間には、少なくとも1つのエレクトロルミネッセンス領域を形成するために1つまたは複数の機能層が設けられている。
【背景技術】
【0003】
1980年代以降、比較的低い消費電力と、相対輝度と、比較的薄膜の構成で形成され得ることとが、多くの用途に向けて発光ダイオード(LED)や白熱発光の技術に比べて好ましいことを示してきたエレクトロルミネッセンス(EL)の技術が表示デバイスにおいて普及した。
【0004】
商業的に製造されるELデバイスは、従来は、ドクターブレードコーティングおよびスクリーン印刷、またはより最近ではインクジェット印刷などの印刷プロセスを用いて作られてきた。これらのプロセスは、比較的平らなELデバイスを必要とする用途の場合には、比較的効率的で信頼性のある品質管理による大量生産に向いているため、かなり良好に機能している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のプロセスは、凸面、凹面、および反り返った面などの複雑な形状を有する面にELデバイスを適用することが望ましい用途に対しては、本質的に自らを制限している。一部のソリューションが展開されており、この中では、比較的薄膜のELの「転写画」が面に塗布され、その転写画が、次にポリマーマトリクスの中に封入される。中程には上手くいっているが、この類のソリューションにはいくつかの本質的な欠点がある。まず、転写画は、程度の軽い凹面/凸面の形状には満足できる程度に適合し得るが、厳しい半径の湾曲に対しては伸びや皺のない状態で適合することができない。また、転写画自体は、封入用のポリマーと化学的または機械的な結合をなすことはなく、基本的には封入用のマトリクスの中に埋め込まれた異質物のままである。これらの欠点は、製造と、商品の寿命との両方において問題となる。これは、複雑な形状に適用される、埋め込まれる転写画のELランプの製造が難しく、また、機械的応力、熱応力、および、紫外線(UV)光への長期的な露出による層間剥離を被りやすいためである。複雑な形状を取り入れている面を有するアイテムに適合したELランプを作るための方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によるプロセスが開示される。本プロセスによって、ELデバイスが適用されることになる対象アイテムの面、すなわち「基板」の上にそのELデバイスが「ペイント」される。本発明は、一連の層における基板に適用され、各層において、本プロセスに不可欠である特別な機能が実施される。
【0007】
本発明の目的の1つは、コンフォーマルなエレクトロルミネッセンスシステムを作るためのプロセスである。本プロセスは、基板を選択するステップを含む。選択基板の上には、水性ベースの導電性のバックプレーン材料を用いてベース・バックプレーン・フィルム層が塗布される。ベース・バックプレーン・フィルム層の上には、水性ベースの誘電体材料を用いて誘電体フィルム層が塗布される。誘電体フィルム層の上には、水性ベースの蛍光体材料を用いて蛍光体フィルム層が塗布され、蛍光体フィルム層は、塗布中に紫外線照射光源によって励起される。紫外線照射光源は、蛍光体フィルム層が塗布されている間に視覚キューを提供し、誘電体フィルム層の上に全体的に均一な分布の蛍光体材料を塗布するために視覚キューに応じて蛍光体フィルム層の塗布が調整される。蛍光体フィルム層の上には、水性ベースの実質的に透明な導電性の電極材料を用いて電極フィルム層が塗布される。バックプレーンフィルム層、誘電体フィルム層、蛍光体フィルム層、および、電極フィルム層は、それぞれスプレー・コンフォーマル・コーティングによって塗布されることが好ましい。蛍光体フィルム層は、蛍光体フィルム層がエレクトロルミネッセンス光を放出するようにバックプレーンフィルム層と電極フィルム層との間に電荷を印加する際に蛍光体フィルム層にわたって作られる電界によって励起可能となる。
【0008】
発明性のある実施形態におけるさらなる特徴は、添付図面を参照して明細書と特許請求の範囲とを読むことにより、これらの実施形態が関連する当業者には明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による、ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、エレクトロルミネッセンスランプを作るためのプロセスにおける流れ図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、導電素子の経路設定を示す、ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による、導電素子の経路設定を示す、ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、蛍光体層を塗布するためのプロセスにおける流れ図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、着色保護膜を有するELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図7】
図6の着色保護層から反射するとともにカラー効果を与える光を示す概略的なレイヤ図である。
【
図8】
図6の着色保護層を通過し、反射光に比べて増大するカラー効果を与える光を示す概略的なレイヤ図である。
【
図9】本発明の一実施形態による、上部層配線を有する多層ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図10】本発明の別の実施形態による、下部層配線を有する多層ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図11】本発明のさらに別の実施形態による、デュアル層配線を有する多層ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態による、デュアル層配線を有する多層ELランプの概略的なレイヤ図である。
【
図13】本発明のさらに別の実施形態による、透明基板を有するELランプの概略的なレイヤ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降の説明では、同一の参照番号は、様々な図面における同一の要素と構造を参照するために用いられている。
【0011】
図1には、本発明の一実施形態による、コンフォーマルなELランプ10の全体的な構成が示されている。ELランプ10は、基板12、プライマー層14、導電性のバックプレーン電極層16、誘電体層18、蛍光体層20、実質的に透明な導電性の上部電極22、バスバー24、および、任意選択の封入層26を備える。
【0012】
基板12は、任意の好適な対象アイテムの選択面であってもよく、その選択面の上にはELランプ10が適用されることになる。基板12は、導電性でも非導電性でもよく、凸面、凹面、および反り返った面のうちの任意の所望の組み合わせを有していてもよい。本発明におけるいくつかの実施形態では、基板12は、限定されないが、ガラスまたはプラスチックなどの透明材料である。
【0013】
プライマー層14は、基板12に塗布された非導電性の塗膜である。プライマー層14は、以降でさらに説明される、次に続く導電性の層と半導電性の層とから基板12を電気的に絶縁する役割を果たす。また、プライマー層14は、基板12と、それに続く層との間の付着を促進することが好ましい。
【0014】
導電性のバックプレーン16は、ELランプ10の下部電極を形成するためにプライマー層14の上でマスクされていることが好ましい塗膜層である。導電性のバックプレーン16は、スプレー可能な導電性の材料であることが好ましく、完成したELランプ10における、点灯したELの「領域」の大まかな輪郭を形成し得る。バックプレーン16用に選択される材料は、様々な環境と用途の要件に適合するように望み通りに調整されてもよい。一実施形態では、バックプレーン16は、導電性の高い、全体的に不透明な材料を用いて作られる。このような材料の例には、限定されないが、Lyons New YorkのCaswell,Inc.より入手可能なSILVASPRAY(商標)などの、アルコール/ラテックスベースの、銀を多く含む溶液と、同じくCaswell,Inc.より入手可能な、銅の導電塗料である「Caswell Copper」などの、水ベースのラテックスの、銅を多く含む溶液とが含まれる。
【0015】
一実施形態では、所定量の銀フレークが銅の導電塗料と混ぜ合わされてもよい。経験によるテストでは、銀フレークの添加が、比較的環境に優しい特徴に悪影響を及ぼすことなく、銅の導電塗料の性能を著しく向上させることが示されている。
【0016】
CaswellのSILVASPRAY(商標)またはCaswell Copperの代わりに、バックプレーン16の材料として、用意された面(すなわち、基板)への塗布に向けて銀を封入するために、(以降でさらに説明される)水性ベースのスチレン・アクリル・コポリマー溶液とアンモニアとからなる溶液の中に銀フレークが混ぜられてもよい。
【0017】
また、導電性のバックプレーン16は、選択金属のめっきに向けた任意の好適なプロセスを用いて非導電性の基板12に好適な導電性の金属材料が施された金属めっきでもよい。金属めっきにおける例示的な種類には、限定されないが、無電解めっき、真空金属被膜、蒸着、および、スパッタリングが含まれる。結果として生じる導電性のバックプレーン16は、バックプレーン16の面にわたる電圧傾度を最小にしてエレクトロルミネッセンスシステムにおける適正な動作(すなわち、十分なランプ輝度と輝度の均一性)を可能とするために比較的低い抵抗を有していることが好ましい。いくつかの実施形態では、めっきされたバックプレーン16の抵抗は、平方インチの表面積あたり約1オーム未満であることが好ましい。
【0018】
導電性のバックプレーン16は、限定されないが、ドイツ、LeverkusenのHeraeus Clevios GmbHより入手可能な「CLEVIOS(商標)SV3」および/または「CLEVIOS(商標)SV4」の導電ポリマーなどの、導電性である全体的に透明な層であってもよい。この構成は、ガラスおよびプラスチックなどの全体的に透明な基板を有する対象アイテムとの用途や、ELランプ10に向けた比較的薄い全体的な層の塗布が望ましい実施形態に対して好ましい場合がある。
【0019】
誘電体層18は、比較的高い誘電率の特性(すなわち、電磁界を透過させる所与の材料の能力における指標)を有する絶縁用のポリマーマトリクスの中に封入された、比較的高い誘電率の特性を有する材料(典型的には、チタン酸バリウム−BaTiO
3)を含む非導電性の塗膜層である。本発明の一実施形態では、誘電体層18は、コポリマーと、希釈水酸化アンモニウムとからなる約2:1の溶液を含む。この溶液に対して、水酸化アンモニウムでプリウェットされたいくらかのBaTiO
3が、過飽和懸濁液を作るために添加される。本発明の様々な実施形態では、誘電体層18は、とりわけ、チタン酸塩、酸化物、ニオブ酸塩、アルミン酸塩、タンタル酸塩、およびジルコン酸塩材料のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0020】
誘電体層18は2つの機能を担っている。まず、誘電体層18は、バックプレーン層16と、重ね合わされた半導電性の蛍光体20、上部電極22、およびバスバー24の層との間の絶縁バリアを提供する。さらに、誘電体層18は、誘電体材料における電磁的な固有の分極特性により、バックプレーン16と上部電極22との間に電場すなわち電荷を発生させるAC信号28が印加される際に、バックプレーン層16と上部電極層22との間に生成される電磁界の性能を向上させる役割を果たす。また、高い誘電体品質のBaTiO
3と、高い誘電率のポリマーマトリクスとは、効率的な電気絶縁体であるにもかかわらず、バックプレーン16と上部電極22との間に生成された静電界に対して非常に透過性がある。
【0021】
さらに、多層ELランプの用途では、AC信号28(
図1)によってバックプレーン16と電極22とに印加された電界によって誘電体層の屈折率が影響を及ぼされる光屈折性の特性の誘電体層18が選択されてもよい。選択誘電体層18の材料におけるこれらの光屈折性の特性は、ELランプにおいて重ね合わされた層を通る光の伝播を促進するために利用されてもよい。光屈折性の特性を有する非限定の例示的材料はBaTiO
3である。
【0022】
蛍光体層20は、静電的に極めて透過性のあるポリマーマトリクスの中に封入された材料(典型的には、金属ドープされた硫化亜鉛(ZnS))からなる半導電性の塗膜層である。ドープされたZnSは、AC信号28によって生成された交番する静電界によって励起されると、その静電界からエネルギーを吸収し、基底状態に戻る際にそのエネルギーを可視光の光子として再放出する。蛍光体層20は、2つの機能を担っている。まず、金属ドープされた硫化亜鉛の蛍光体は、技術的には半導体として分類されるが、コポリマーマトリクスの中に封入されると、バックプレーン16の層と、重ね合わされた上部電極22およびバスバー24の層との間のさらなる絶縁バリアをさらに効果的に提供する。また、蛍光体層20は、交番する電磁界によって励起されると可視光を放出する。
【0023】
本発明の一実施形態では、蛍光体層20は、コポリマーと、希釈水酸化アンモニウムとからなる約2:1の溶液を含む。この溶液に対して、希釈水酸化アンモニウムでプリウェットされた銅、マンガン、および銀のうちの少なくとも1つでドープされた、金属ドープされたいくらかの硫化亜鉛ベース蛍光体(すなわち、ZnS:Cu、Mn、Agなど)が、過飽和懸濁液を作るために添加される。
【0024】
水性ベースのスチレン・アクリル・コポリマー溶液(以降では、「コポリマー」)は、誘電体層18と蛍光体層20との両方に向けた封入用のマトリクスとして利用されることが好ましい。この材料は、生物や環境に悪影響を及ぼさず、近接近や長期接触の理由で好適である。例示的なコポリマーは、Michigan、MidlandのDow Chemical Companyより入手可能なDURAPLUS(商標)のポリマーマトリクスである。コポリマーにおける重要な利点は、選択基板12の上の様々な下部コーティングと上部コーティングの選択肢に対して、化学的に無害で用途の広い結合機構を提供する点である。コポリマー用の希釈剤/乾燥剤として水酸化アンモニウムが用いられてもよい。
【0025】
ELランプ10の製造時において、誘電体層18および蛍光体層20におけるコポリマー溶液のうちの揮発成分が硬化プロセス中に(通常は蒸発によって)取り除かれると、その結果生じるコーティングは化学的にほとんど不活性である。このため、誘電体層18および蛍光体層20のコーティングは、上にある層、または下にある層と化学的に容易に反応せず、その結果、それらのコーティングは、均質な誘電体18と蛍光体粒子20の層の分布を被って保護する。
【0026】
化学的には、硬化プロセスの間は、誘電体層18と蛍光体層20における長鎖コポリマーの開放端は露出している。このことは、化学的に異なる層どうしの間に強力な機械的結合を作るために準備の整ったしくみを提供するが、これは、露出しているポリマーの鎖の端が、基本的にはマジックテープ(登録商標)式ファスナーのフック部分と同様の「フック」として働くためである。これらのフックは、第2の長鎖ポリマー溶液の塗布によって浸入を容易に受け入れる比較的浸透性の表面形状を提供する。第2の層が硬化するにつれ、その層のポリマーの鎖の端が露出し、基本的には前述の露出したコポリマーの端と「接合」して、隣接する層どうしの間の強力な機械的結合を作る。
【0027】
上部電極22は、導電性であるとともに光に対して全体的に透明であることが好ましい塗膜層である。上部電極22は、限定されないが、導電ポリマー(PEDOT)、カーボンナノチューブ(CNT)、アンチモン錫酸化物(ATO)、および、インジウム錫酸化物(ITO)などの材料で作られていてもよい。好ましい製品は、希釈剤/乾燥剤としてのイソプロピルアルコールで希釈された(ドイツ、LeverkusenのHeraeus Clevios GmbHより入手可能な)導電性であり、透明な、可撓性のポリマーであるCLEVIOS(商標)である。導電性ポリマーであるCLEVIOS(商標)は、比較的高い有効性を示し、比較的環境に無害である。また、導電性ポリマーであるCLEVIOS(商標)は、スチレンコポリマーをベースとしているため、下にある蛍光体層20との化学的な架橋/機械結合に向けた整ったしくみを提供する。
【0028】
インジウム錫酸化物(ITO)およびアンチモン錫酸化物(ATO)を含む別の材料が上部電極22の溶液に向けて選択されてもよい。しかし、より重要な環境問題の理由により、これらよりもCLEVIOS(商標)の導電ポリマーの方が望ましい。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、バックプレーン電極層16が全体的に透明であることが望ましい場合がある。このような場合、上部電極22に向けて上記で説明された材料のいずれかが、バックプレーン電極層16に向けて利用されてもよい。
【0030】
上部電極22の材料における効率は、可視光に対して全体的に透明でありながら導電性でもあるという、相異する動作要件によって阻害される。ELランプ10における点灯領域の面積が大きくなると、収穫逓減点に近づき、この場合には、上部電極層22にわたって必要な電圧分布に向けた、十分に低い抵抗率を実現するための上部電極層22の厚さが光学的には抑制となり、逆の場合には、上部電極の厚さは、電気的には容認できないほど不十分となる。このため、最適な光学特性に向けて上部電極層の厚さを最小にするために、できるだけ点灯領域に接近した、より効率的な導電体を用いて、透明な上部電極層22を補うことがしばしば望ましい。バスバー24は、通常、導電性のバックプレーン16を作るために使用可能な1つまたは複数の材料からなる、導電材料でできている比較的低いインピーダンスの細片を提供することによってこの要件を満たす。バスバー24は、一般に点灯領域の周辺端部に適用される。
【0031】
バスバー24は、図では上部電極層22に隣接するように概略的に示されているが、実際には上部電極層の上(すなわち、頂部)に施されてもよい。逆に、バスバー24の上(すなわち、頂部)に上部電極層22が施されてもよい。
【0032】
上部電極22およびバスバー24は、いったん施されるとスクラッチまたはマーキングによる損傷を被りやすい。上部電極22およびバスバー24を硬化させた後には、ELランプを損傷から保護するために、好適な硬度の透明ポリマー26などの、封入用の透明な塗膜層26でELランプ10を封入することが好ましい。封入層26は、ELランプ10のスタックアップの上に塗布され、それによってELランプ10を外部からの損傷から保護する電気絶縁材料であることが好ましい。また、封入層26は、ELランプ10のスタックアップによって放出される光に対して全体的に透明であることが好ましく、また、トップコート層との化学的および/または機械的な結合のための機構を可能にする、基板12である対象アイテムに向けて想定される任意のトップコート材料に化学的に適合することが好ましい。封入層26は、任意の数である、水性の、エナメルまたはラッカーベースの製品で構成されていてもよい。
【0033】
これまで述べたように、現在のEL製品は、平面であるか、またはほぼ平面である比較的単純な形状の面に対する用途に限られている。これは、スクリーン/インクジェット印刷ベースのプロセスが、それぞれの層において必要な要素の適正な配分比を確実なものとするために、平らであるか、または、ほぼ平らである面を必要とするためである。異なる印刷ベースのEL製造プロセスである、プライマー層14、バックプレーン16、誘電体層18、蛍光体層20、上部電極層22、バスバー24、および、封入層26は、ペインターの技能の範囲に対して、またはその範囲において通常得られるツールと方法の両方に適合するように作られ、またその両方によって塗布されることが好ましい。このように、ELランプ10は、プライマー層14、バックプレーン16、誘電体層18、蛍光体層20、導電性の上部電極22、バスバー24、および封入層26からなるコンフォーマルコートのスタックアップとして基板12の上に「ペイント」される。ELランプ10は、それぞれの層における選択要素と、スプレーベースの機器に適合する、本明細書で開示される塗布技術とを利用することにより、多様な材料、および/または、複雑な形状に適用することができ、それにより、あらゆる「ペイント可能な」基板12の面が、コンフォーマルな、エネルギー効率の良いELランプの用途に向けて利用され得る。このように、ELランプ10は、基板12の形および形状に適合するという意味で「コンフォーマル」である。
【0034】
次に
図1と組み合わせた
図2を参照して、ELランプを作るためのプロセスs100を説明する。
【0035】
s102では、基板12が選択される。基板12は、通常、選択対象アイテムの面であり、任意の好適な導電性または非導電性の材料で作られていてもよく、また、いかなる所望の輪郭または形状を有していてもよい。
【0036】
s104では、プライマー層14が基板14に塗布される。意図されている対象アイテムの基板12が導電性、すなわち、金属またはカーボンファイバーであろうと、非導電性、すなわち、何らかの形態のガラス、プラスチック、繊維ガラス、または複合材料であろうと、基板面を封止するために、いくらかの適合した酸化物ベースのプライマーを比較的薄い層の状態で基板に塗布し、基板とELランプ10との間の電気的絶縁を行い、上に重なるトップコート層との付着を確実なものとすることが好ましい。いくつかの場合、s106において、意図されているトップコートに適合する、好適なエナメル/ラッカー/水性塗料の薄い層を酸化物のプライマー層の上に塗布することが望ましいこともある。「トップコート」は、本明細書で用いられる場合には概して、たとえば、ELランプと、ELランプによって覆われていない基板12の部分とを覆っている半透明のコーティングである、完成したELランプ10を覆って配置された任意のコーティングを指す。s106の任意選択のペイントステップは、基板12を含む対象アイテムが、さらなるELランプ10の層が施される前に長引く処理を受ける場合には特に魅力的である。露出したプライマー面は、酸化物ベースのプライマーにおける相対的な「やわらかさ」のために、頻繁な取り扱いによっては劣化することがあり、その結果生じる酸化物の塵が元の面に汚れをつける場合がある。
【0037】
s108では、所与の面におけるELの「点灯領域」ごとに、蛍光体層20を励起するAC信号28(
図1)の経路を提供するための2つの電気接続が行われる。これらの電気経路を設けるには2つの基本的なしくみがあり、その選択は、対象アイテムの基板12の特性によって決められる。さらに
図3を参照すると、非導電性のプラスチック、ガラス繊維、または複合材料の対象アイテムの基板12の場合には、対象アイテムの基板12とプライマー層14とにおける小さい開口部32を介して、ELランプ10のバックプレーン16とバスバー24とに1つまたは複数の「キャリースルー」導電素子30−1、30−2をそれぞれ設けて、上にあるバックプレーンとバスバーとの電気接触を行うことが好ましい。
【0038】
このキャリースルー技術は、導電性の基板12の対象アイテムにおけるいくつか形態では、基板と信号経路との間に絶縁用の覆い34を含む場合にも効果的である。このことは、実用面と安全面との両方の考慮であるが、これは、基板/対象アイテムに不必要に通電することによってシステムにかけられる電流需要がシステム全体の電力消費効率を著しく低下させるためであり、また、対象アイテムにおける導電性の基板12と、対象アイテムの基板における欠陥などの、グラウンド状態に至る任意の経路とからELランプ10の領域を電気的に絶縁することによって安全性を向上させる。
【0039】
対象アイテムの基板12に対する
図3の上記キャリースルー技術の利用が(流体格納容器の完全性を維持するなどの)構造上または実用上の考慮によって禁止される場合、ELランプ10に対する信号経路は、絶縁用のプライマー層14の中に埋め込まれている導電素子30−1および30−2によって設けられてもよく、また必要な場合には、
図4に示されているようにパネルエッジに「巻き付いて」いてもよい。バックプレーン16とバスバー24への信号アクセスを提供する
図3および
図4の方法、すなわち、「キャリースルー」または「巻き付き」は、どちらも機能的には同じであり、対象アイテムの基板12によって課される特定の条件と要件に応じて選択されてもよい。
【0040】
s110では、バックプレーン層16が塗布される。バックプレーン層16は、これまで説明されたように導電材料を含むパターンであり、プライマーコーティング14によってマスクされている。バックプレーン層16は、好ましくはエアブラシ、または、十分に細かい穴の重力供給型スプレー機器を用いて、たとえば約0.001インチである、任意の好適な厚さまで塗布されてもよい。バックプレーン層16は、このように塗布されると、導電素子30−1(
図3、
図4)と接触するように配置されてAC信号28と電気接触し、さらに、点灯したELランプ10の領域における大まかな輪郭を画定する。
【0041】
ステップs112では、誘電体フィルム層18がスプレー塗布される。これまでに説明された過飽和の誘電体溶液が、周囲温度や対象アイテムの基板12の形状などの変数に対して調整された所定の空気圧における可視光の下で、吸引および/または圧力供給型のスプレー機器を用いて塗布される。誘電体層18は、華氏約70度以上の周囲の空気温度で塗布されることが好ましい。この誘電体層は、BaTiO
3の粒子/ポリマーの溶液における均一な分布を確実なものとするとともに、塗布された層内における「流れ出し」または「垂れ落ち」をもたらすことのある、溶液の表面張力に打ち勝ち得る過剰な盛り上がりを防ぐために、溶液の連続的な薄い膜として塗布されることが好ましい。塗布された層における流れ出し、または垂れ落ちをもたらす、材料の過剰な盛り上がりは、最終製品の外観に関して直接的で有害な影響を有する、(「サンドデューニング」と呼ばれる)封入粒子の不均一な集まりにつながる。したがって、周囲温度や湿度の条件に応じて、確定可能な時間の間、膜どうしの間に、直射日光および強化赤外ランプなどのソースからの強化赤外放射の印加によって、連続的な塗布層における最初の空気乾燥を増やすことがしばしば望ましい。
【0042】
s114では、蛍光体層20が塗布される。これまでに説明された過飽和の蛍光体溶液が、周囲温度や、対象アイテムの基板12の形状などの変数に対して調整された所定の空気圧において、吸引および/または圧力供給型のスプレー機器を用いて塗布される。蛍光体層20は、塗布中のオペレータに対する視覚インジケータ、すなわち視覚キューを強調して、比較的均一な粒子の分布を確実なものとするために、長波長の紫外線光(たとえば、UA「A」、または「ブラックライト」の紫外線光)などの紫外線照射光源の近くで(たとえば、その下で)塗布されることが好ましい。蛍光体層20は、華氏約70度以上の周囲の空気温度で塗布されることが好ましい。この蛍光体層20は、ZnSの粒子/ポリマーの溶液における均一な分布を確実なものとするとともに、塗布された蛍光体層内における「流れ出し」または「垂れ落ち」をもたらす、溶液の表面張力に打ち勝ち得る過剰な盛り上がりを防ぐために、溶液の連続的な薄い膜として塗布されることが好ましい。誘電体層18と同様に、塗布された層における「流れ出し」、または「垂れ落ち」をもたらす、材料の過剰な盛り上がりは、最終製品の外観に関して直接的で有害な影響を有する、封入粒子の不均一な集まり(すなわち、「サンドデューニング」)につながり得る。したがって、温度や湿度などの周囲条件に応じて、確定可能な時間の間、膜どうしの間に、直射日光および強化赤外ランプなどのソースによる強化赤外放射の印加によって、連続的な塗布層における最初の空気乾燥を増やすことが好ましい。
【0043】
図5には、蛍光体層20の塗布におけるさらなる詳細が示されている。これまでに説明された過飽和の蛍光体溶液が、周囲温度や、対象アイテムの基板12の形状などの変数に対して調整された所定の空気圧において、吸引および/または圧力供給型のスプレー機器を用いて塗布される。蛍光体層20は、塗布中のオペレータに対する視覚インジケータ、すなわち視覚キューを強調して、比較的均一な粒子の分布を確実なものとするために、上記の紫外線照射光源の下で塗布されることが好ましい。
【0044】
s114−1では、オペレータが、蛍光体層20の塗布の前に、ペイントされる対象アイテムを全体的に均一に照射するように紫外線照射光源を配置することが好ましい。この紫外線照射光源は、暗くなっているか、もしくは実質的に他の光源のない室内または他の場所に置かれていることが好ましく、それにより紫外線照射光源は、ペイントされる対象物に対する照射の主要光源となる。
【0045】
s114−2では、対象アイテムの基板12に蛍光体層20が塗布される。オペレータは、蛍光体層を塗布する際に、その蛍光体層が紫外線照射光源の下で明るくなることを確認する。このことによって、コーティングの品質に向けた視覚キューがもたらされる。一方、オペレータは、通常の周囲の白色光の下では、蛍光体層20と誘電体層18を区別することができないが、これは、この2つの層が視覚的に混ざることになるためである。
【0046】
s114−3では、オペレータが、好ましくは、1つまたは複数の比較的薄い蛍光体のコートを含む蛍光体フィルム層20を紫外線照射光源の下で塗布するため、そのオペレータは、蛍光体層のコーティングがより均一になることに注意するようになり、それにより、仕上がった蛍光体層が望み通りに均一になることを確実なものとするために蛍光体層のコーティングを多かれ少なかれどこに施すべきかがわかるようになる。塗布されている蛍光体フィルム層20は、塗布中に上記の紫外線照射光源によって励起され、それによって紫外線照射光源は、蛍光体フィルム層が塗布されている間にオペレータに視覚キューを提供する。114−4では、オペレータは、全体的に均一な分布の蛍光体材料を誘電体フィルム層18の上に塗布するために、視覚キューに応じて蛍光体フィルム層20の塗布を調整する。いくつかの実施形態では、約0.001インチ以下の蛍光体層が好ましい。蛍光体フィルム層20が所望の厚さと均一性に達すると、コンフォーマルなコーティングプロセスは、s114−5において終了する。
【0047】
本発明における誘電体層18と蛍光体層20の成分は、不活性の粒子成分を除いては化学的に同一であるため、それらの成分は、機能的には、封入された不活性の粒子によってのみ区別される、種類の異なる単一の、化学的に交差結合する層を化学的に形成する連続的なプロセスにおいて塗布される。
【0048】
引き続き
図2を参照すると、所望の厚さと分布の誘電体層18、蛍光体層20が、ステップs112、s114においてそれぞれ堆積すると、s116において、誘電体層と蛍光体層とから残りの水分を蒸発によって取り除くのに十分である確定可能な時間の間、結果として生じたコーティングスタックアップの硬化が可能となり、また、塗布された誘電体/蛍光体層とバックプレーン層16との間の機械的結合の形成が可能となる。この時間は、温度や湿度などの環境因子に応じて変化する。本プロセスは、s112およびs114に向けて上記で説明された赤外線の熱源を用いることによって適宜加速され得る。
【0049】
s118では、バスバー24が施される。バスバー24は、通常、エアブラシ、または、十分に細かい穴の好適な重力供給型スプレー機器を用いて施される。それにより、バスバーは、透明な上部電極層22のための効率的な電流源をもたらすとともに、その上部電極層22との電気的な接触を行うために所与のEL点灯領域の周縁をおおむねトレースする導電経路を好ましくは形成し、また所望パターンのEL点灯領域における外縁を画定する。
【0050】
いくつかのELランプの場合には、点灯領域の表面積が十分に大きいため、点灯領域の周辺部に施されたバスバー24は、大型の四角いランプの中心部などの、バスバーから離れたランプの部分に対しては十分な電圧の分配を行わない。同様に、一部の基板12は、点灯領域の部分がバスバー24から離れている不規則な形状を有する場合がある。このような場合、バスバー24は、バスバーと電気的に連通しているとともにバスバーからELランプの離れた部分まで延びている、バスバーの材料でできた1つまたは複数の「指」を含み得る。同様に、好適な格子パターンが、バスバー24と電気的に連通し、バスバーからELランプの離れた部分まで延びていてもよい。
【0051】
s120では、エアブラシ、または、十分に細かい穴の好適な重力供給スプレー機器を用いて、露出した蛍光体層20とバスバー24の上に上部電極22が塗布され、それにより上部電極は、EL領域の周辺部におけるバスバーとの間のギャップをブリッジする導電経路を形成して、EL領域の表面部分全体にわたる全体的に光学的に透明な導電層を提供する。上部電極22は、上部電極の塗布中に蛍光体層20の照射を視覚的にモニターするために、上部電極とバックプレーン16に印加された動作電気信号28を加えられることが好ましい。このことにより、ELランプが所望の通り照射し得る十分な厚さと効率が、上部電極22のコーティングによって達成されたかどうかをオペレータが確認することが可能となる。それぞれのコートは、溶液の水/アルコール成分の空気蒸発を可能にするために、各コート間における強化された赤外線照射の印加によって設けられ得ることが好ましい。必要なコートの数は、材料における分布の均一性と、バスバー24における任意のギャップ間の物理的距離によって求められる特定の局所的な導電性とによって決定される。
【0052】
s122では、封入層26が塗布される。封入層26は、ELランプ10のスタックアップを完全に覆うことによってELランプを損傷から保護するように塗布されることが好ましい。
【0053】
本発明におけるいくつかの実施形態では、ELランプ10は、ELランプ10によって放出された見かけの色を操作するためのさらなる特徴を含み得る。このような一実施形態では、
図6に示されているように、s124(
図2)において、ELランプ10の上に顔料で着色された保護膜36が施される。
【0054】
他の実施形態では、ELランプ10によって放出される見かけの色を操作するために、反射光および/または放出光が利用されてもよい。面の見かけの色は、周囲条件のもとで、様々な周波数の光の吸収と反射によって決定される。したがって、着色された保護膜と共に有色蛍光体を選択的に用いることによって、見かけの色における修正または変更を行うことが可能である。
図7は、ELランプ10の色を修正する反射光を有するELランプを示し、
図8は、ELランプによって放出された光の見かけの色を修正する放出光を示す。
【0055】
誘電体層18のBaTiO
3と蛍光体層20のZnSの粒子成分とは、それぞれ可視波長の光に対する光学的半透明の重要な特性を示す。そのため、これらの特性を上手く利用するために、全体にわたって光学的に透明な封入材の層38によって分けられた、ELランプ10の層を直接的に重ね合わせることが可能である。それぞれの層を二者択一的または同時に励起することによって、見かけの色の実質的な修正が実現可能である。これらの技術を、これまでに説明された着色用の、反射性/放出性のトップコート方法と組み合わせることによって、ベースとなるELランプ10のカスタマイズに向けた数多くの可能性が提供される。
図9は、上部層配線を有する多層構成のELランプ50を示し、
図10は、下部層配線を有する多層構成のELランプ60を示し、
図11は、デュアル層配線を有する多層構成のELランプ70を示す。ELランプ50、60、70は、他の点では、材料と構成においてELランプ10と同様である。
【0056】
図12には、本発明におけるさらに別の実施形態によるELランプ80が示されている。ELランプ80は、ガラスまたはプラスチックなどの全体的に透明な材料で作られていることが好ましい基板12を含む。ELランプ80のスタックアップでは、第1のバスバー24−1が基板12に施される。第1のバスバー24−1の上には、全体的に透明な第1の電極フィルム層22−1が塗布される。第1の電極フィルム層22−1の上には、第1の蛍光体層20−1が塗布される。第1の蛍光体層20−1の上には、誘電体層18が塗布される。誘電体層18の上には、第2の蛍光体層20−2が塗布される。第2の蛍光体層20−2の上には、全体的に透明な第2の電極フィルム層22−2が塗布される。最後に、第2の電極フィルム層22−2の上には封入用の透明コート26が適宜塗布される。ELランプ80は、他の点では、材料と構成においてELランプ10と同様である。
【0057】
ELランプ80の動作においては、
図12に示されているように、AC信号28がバスバー24−1、24−2に印加される。このAC信号は、バスバー24−1、24−2から電極22−1、22−2にそれぞれ電気的に伝わり、蛍光体層20−1および20−2にわたるAC場を生成する。このAC場によって蛍光体層20−1、20−2が励起され、それによって蛍光体層が光を放出する。蛍光体層20−1によって放出された光は、透明基板12の方に向かい、その透明基板12を通過する。蛍光体層20−2によって放出された光は、反対方向の、封入用の透明コート26の方に向かい、その透明コート26を通過する。
【0058】
本発明の一実施形態では、
図2のプロセスは、
図13に示されているように、全体的に透明な基板12の上にELランプ90を作るためにわずかに再構成されてもよい。s102では基板が選択される。基板12が導電性である場合には、s104の、電気的に絶縁性である、全体的に透明な形態のプライマー層14が基板に塗布されてもよい。基板12(またはプライマー層14)の上には、s118の、1つまたは複数のバスバー24が施される。バスバー24および基板12(またはプライマー層14)の上には、s120の透明な電極層22が塗布される。電極フィルム層22の上には、s114の蛍光体フィルム層20が塗布される。蛍光体層の上には、s112の誘電体フィルム層18が塗布される。誘電体フィルム層18の上には、s104の、導電性のベース・バックプレーン・フィルム層16が塗布される。あるいは、全体的に透明な第2の電極層22が、s104のベース・バックプレーン・フィルム層16のために代用されてもよい。s108の電気接続は、これまでに説明された任意の方法で行なわれてもよい。このように構成された場合、蛍光体フィルム層20によって放出された光は、透明な電極層22と、透明な基板12とを通って放射される。ELランプ90は、他の点では、上記で詳述されたELランプ10と同様である。
【0059】
いくつかの機構および添加物が利用され、特定の添加物がパッシブ機能、アクティブ機能、または放出機能のいずれかを提供するかどうかによって視覚的に示される、本発明によって作られるELランプの外観を大幅に修正および/または強化してもよい。まず、パッシブ添加物が利用されてもよい。パッシブ添加物は、定義によれば、ELランプ10、50、60、70、80、90のいずれかのコーティング層の中に組み込まれる成分であり、機能としては光を放出しないが、所望の品質を呈するように放出光に修正を加える。天然のものと人工的なものとの両方においていくつかの材料があり、それらの材料は、改良されたフレネルレンズ効果を用いることによって、複屈折/偏光/結晶の光学特性を上手く利用して、色、および/または、見かけの輝度を実質的に向上させるために用いられてもよい。
【0060】
アクティブ添加物は、光を放出しないが、電界の印加によって光に修正を加える材料である。いくつかの天然材料と、特にポリマーである、ファミリーの増えている人工材料とが、重要な電気光学特性、特に、電界の印加による材料の光学特性の改良を示している。エレクトロクロミズム、すなわち、電荷の印加によって色を変化させる材料の能力は、これらの効果のうち、とりわけ関心のあるものである。このような材料が、蛍光体層20のコポリマーに組み込まれていてもよく、または、蛍光体層と上部電極22の層との間の別の層として組み込まれていてもよい。
【0061】
人工のEL材料における最近の進歩は、蛍光体層20に向けた基本組成のうちの、ドープされたZnS成分を引き立たせるか、または取り替えることによって、本発明によって作られるELランプの性能をさらに向上させることを約束するものである。とりわけ、窒化ガリウム(GaN)、硫化ガリウム(GaS)、セレン化ガリウム(GaSe
2)、および、様々な金属トレース成分によってドープされたアルミン酸ストロンチウム(SrAl)の化合物は、EL材料としての価値を示している。
【0062】
蛍光体層20に向けた基本組成のうちの、ドープされたZnS成分を引き立たせるか、または取り替えるために利用され得る別の材料は量子ドットである。量子ドットは、EL材料のファミリーに新たな放出のしくみを導入する比較的最近の技術である。ドーパント材料の特性に基づく所与の帯域幅(色)の光を放出する代わりに、粒子自体の物理的なサイズによって放射周波数が決定され、そのため、放射周波数は、近赤外を含む広範なスペクトルにわたる光を放出するように「最適化」され得る。また、量子ドットは、エレクトロルミネッセンスの特徴だけでなく、フォトルミネッセンスの特徴をも示す。これらの能力は、機能的な要件に応じて、従来のEL材料を量子ドットと混ぜ合わせるか、または、従来の材料を完全に量子ドットの技術と取り替えることによって、本発明によって作られるELランプにいくつかの潜在的な機能上の利点を提供する。
【0063】
本発明が示され、また本発明の詳細な実施形態に関して説明されたが、本発明の形態および細部における変更が、本発明における特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得ることが当業者によって理解されよう。