特許第6185491号(P6185491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185491
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】戸車ユニット及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   E05D15/06 119
   E05D15/06 103
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-559406(P2014-559406)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2013052005
(87)【国際公開番号】WO2014118908
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】久保 広陽
(72)【発明者】
【氏名】田口 稔
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−192064(JP,U)
【文献】 特開2000−160918(JP,A)
【文献】 特開平8−254066(JP,A)
【文献】 実開平7−14068(JP,U)
【文献】 特開2001−41641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00− 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側壁の間に車輪を回転可能に支持する戸車を備え、前記車輪がレールを転動することで、対象となる建具を構成する扉体が該建具の開口枠により形成される開口を開閉移動する戸車ユニットであって、
前記戸車を複数支持し、かつ前記戸車の間が連結部を通じて前記扉体に直接的、あるいは間接的に連結されたユニット本体を備え、
前記ユニット本体は、前記戸車を見込み方向に沿って並列に支持するものであり、一対のレール間に形成された溝部に進入し、かつ前記車輪が該レールを転動する際に一部が溝部の壁面に摺動する円板状のガイド部材を備えたことを特徴とする戸車ユニット。
【請求項2】
前記戸車は、前記建具とは異なる他の建具を構成する障子の框体に取り付け可能な外形を有しており、
前記ユニット本体は、前記戸車の外形に適合した収納形状を有する複数の収納部のそれぞれに前記戸車を収納することで該戸車を複数支持していることを特徴とする請求項1に記載の戸車ユニット。
【請求項3】
前記連結部は、基端部が前記ユニット本体に形成された貫通孔を貫通し、かつ先端部が前記扉体の構成要素に配設された固定部材の挿通孔を挿通した状態で設けられることでユニット本体と固定部材とを連結することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の戸車ユニット。
【請求項4】
前記連結部の先端部に螺合され、かつ該先端部との螺合個所が該連結部の延在方向に沿って変位することにより、前記ユニット本体と前記固定部材との離間距離を調整可能にするナット部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の戸車ユニット。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1つに記載の戸車ユニットを備えたことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸車ユニット及び建具に関し、より詳細には、一対の側壁の間に車輪を回転可能に支持する戸車を備え、該車輪がレールを転動する戸車ユニットと、この戸車ユニットを備えた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引き違い窓や引き戸等の建具においては、レールを転動する車輪を回転自在に備えた戸車を有するものが知られている。この戸車は、障子の下框(框体)に取り付けられるものや上框(框体)に取り付けられるもの、あるいは方立に取り付けられるもの等々、様々なものがあり、建具の種類及びその適用個所に応じてその外形等の形状が専用に設計されたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−328632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように建具の種類等に応じて専用に設計された戸車が用いられているので、既存の戸車を他の種類の建具等に転用することが困難であり、結果的に製造コストの増大化を招来していた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、既存の戸車を用いることができ、製造コストの低減化を図ることができる戸車ユニット及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る戸車ユニットは、一対の側壁の間に車輪を回転可能に支持する戸車を備え、前記車輪がレールを転動することで、対象となる建具を構成する扉体が該建具の開口枠により形成される開口を開閉移動する戸車ユニットであって、前記戸車を複数支持し、かつ前記戸車の間が連結部を通じて前記扉体に直接的、あるいは間接的に連結されたユニット本体を備え、前記ユニット本体は、前記戸車を見込み方向に沿って並列に支持するものであり、一対のレール間に形成された溝部に進入し、かつ前記車輪が該レールを転動する際に一部が溝部の壁面に摺動する円板状のガイド部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ユニット本体が、戸車を複数支持し、かつ戸車の間が連結部を通じて扉体に直接的、あるいは間接的に連結されているので、他の種類の建具等で用いられている戸車を活用して、扉体を移動可能に支持することができる。しかも、戸車の間が連結部を通じて扉体に直接的、あるいは間接的に連結されていることで、扉体を効率的に支持することが可能になり、更に戸車の数を容易に増加させることで扉体の重量に対して柔軟な対応が可能になる。更に、円板状のガイド部材が一対のレール間に形成された溝部に進入して車輪が該レールを転動する際にその一部が溝部の壁面に摺動するので、扉体が移動する際に見込み方向にガタつくことを防止することができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る戸車ユニットは、上述した請求項1において、前記戸車は、前記建具とは異なる他の建具を構成する障子の框体に取り付け可能な外形を有しており、前記ユニット本体は、前記戸車の外形に適合した収納形状を有する複数の収納部のそれぞれに前記戸車を収納することで該戸車を複数支持していることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ユニット本体が、他の建具を構成する障子の框体に取り付け可能な外形を有する戸車の外形に適合した収納形状を有する複数の収納部のそれぞれに戸車を収納することで該戸車を複数支持しているので、対象となる建具と他の建具との間で戸車を兼用することができ、製造コストを低減させることができる。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る戸車ユニットは、上述した請求項1又は請求項2において、前記連結部は、基端部が前記ユニット本体に形成された貫通孔を貫通し、かつ先端部が前記扉体の構成要素に配設された固定部材の挿通孔を挿通した状態で設けられることでユニット本体と固定部材とを連結することを特徴とする。
【0011】
この発明によっても、連結部の基端部がユニット本体に形成された貫通孔を貫通し、かつ連結部の先端部が扉体の構成要素に配設された固定部材の挿通孔を挿通した状態で設けられることで連結部がユニット本体と固定部材とを連結するので、他の種類の建具等で用いられている戸車を活用して、扉体を移動可能に支持することができる。
【0014】
また、本発明の請求項に係る戸車ユニットは、上述した請求項3において、前記連結部の先端部に螺合され、かつ該先端部との螺合個所が該連結部の延在方向に沿って変位することにより、前記ユニット本体と前記固定部材との離間距離を調整可能にするナット部材を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、連結部の先端部に螺合されるナット部材における該先端部との螺合個所が該連結部の延在方向に沿って変位することにより、ユニット本体と固定部材との離間距離を調整可能にするので、固定部材は扉体の構成要素に配設されていることから、連結部とナット部材との螺合個所を変位させることで、扉体の構成要素に対するユニット本体の高さを自在に調整することができる。
【0016】
また、本発明の請求項に係る建具は、上述した請求項1〜のいずれか1つに記載の戸車ユニットを備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、他の種類の建具等で用いられている戸車を活用して、自身の構成要素を移動可能に支持させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既存の戸車を用いることができ、製造コストの低減化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態である戸車ユニットが適用された建具(本発明の実施の形態である建具)を示す外観図である。
図2図2は、本発明の実施の形態である戸車ユニットが適用された建具(本発明の実施の形態である建具)を示す横断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態である戸車ユニットが適用された建具(本発明の実施の形態である建具)を示す縦断面図である。
図4図4は、図1図3に示した方立の左側面に取り付けられる戸車ユニットを示す斜視図である。
図5図5は、図1図3に示した方立の左側面に取り付けられる戸車ユニットを示す分解斜視図である。
図6図6は、図4及び図5に示した戸車ユニットを構成する戸車が他の建具に適用された状態を拡大して示す拡大縦断面図である。
図7図7は、図4及び図5に示した戸車ユニットを方立の左側面に取り付ける様子を示す説明用斜視図である。
図8図8は、方立の左側面に取り付けられた戸車ユニットの一部を上枠に進入させる様子を示す説明用斜視図である。
図9図9は、方立の左側面に取り付けられた戸車ユニットの一部を上枠に進入させた状態を示す説明用斜視図である。
図10図10は、図9に示した状態において一部内部を示す説明用斜視図である。
図11図11は、図1図3に示した建具を構成する扉体を開放動作させた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る戸車ユニット及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1図3は、それぞれ本発明の実施の形態である戸車ユニットが適用された建具(本発明の実施の形態である建具)を示すものであり、図1は外観図、図2は横断面図、図3は縦断面図である。ここで例示する建具は、いわゆる「折りたたみ戸」と称されるものであり、開口枠10と扉体20とを備えて構成されている。尚、以下においては、図1における左側を左方とするとともに右側を右方とし、かつ紙面の奥側を室内側、紙面の手前側を室外側として説明する。
【0022】
開口枠10は、建物の開口部に設置されるもので、上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成されて矩形状の開口を成すものである。上枠11は、上レール15及び上溝部16を備えている。上レール15は、上枠11の長手方向(見付け方向)に沿って延在する見込み方向に一対となるものである。上溝部16は、上レール15と同様に上枠11の長手方向に沿って延在しており、見込み方向に一対となる上レール15の間に形成されている。この上溝部16は、下方が開放するように構成されている。下枠12は、下溝部17を備えている。下溝部17は、下枠12の長手方向(見付け方向)に沿って延在しており、上方が開放するように構成されている。
【0023】
扉体20は、方立30と障子40とを備えて構成されている。方立30は、左縦枠13及び右縦枠14と平行となるように配設されている。かかる方立30の詳細については後述する。
【0024】
障子40は、複数(図示の例では3つ)設けられており、方立30の左方に設けられて最も左方に位置する第1障子40aと、この第1障子40aの右方に位置する第2障子40bと、方立30の右方に設けられた第3障子40cとを備えて構成されている。
【0025】
第1障子40aは、上框41a、下框42a及び左右一対の縦框43a,44aを四周框組みし、更にこれらの框の間にパネル等の面材45aを支持させて構成されたものである。この第1障子40aは、左縦框43aが左縦枠13の見込み面に蝶番21を介して連結されており、左縦枠13に対して室外側に回動可能となるものである。
【0026】
第2障子40bは、上框41b、下框42b及び左右一対の縦框43b,44bを四周框組みし、更にこれらの框の間にパネル等の面材45bを支持させて構成されたものである。この第2障子40bは、左縦框43bにおける左見込み面の室内側端部が第1障子40aの右縦框44aの右見込み面における室内側端部に蝶番22を介して連結されているとともに、右縦框44bにおける右見込み面の室外側端部が方立30における左側面31の室内側端部に蝶番23を介して連結されている。これにより、第2障子40bは、方立30及び第1障子40aに対して回動可能となるものであり、特に方立30に対して室外側に回動可能となるものである。尚、第2障子40bの左縦框43bの室内側面にはハンドル46が取り付けられている。
【0027】
第3障子40cは、上框41c、下框42c及び左右一対の縦框43c,44cを四周框組みし、更にこれらの框の間にパネル等の面材45cを支持させて構成されたものである。この第3障子40cは、左縦框43cの左見込み面における室外側端部が方立30における右側面32の室外側端部に蝶番24を介して連結されており、方立30に対して室外側に回動可能となるものである。また、第3障子40cの右縦框44cの室内側面にはハンドル46が取り付けられている。
【0028】
上記方立30には、左側面31及び右側面32に戸車ユニット50が設けられている。図4及び図5は、図1図3に示した方立の左側面に取り付けられる戸車ユニットを示すものであり、図4は斜視図であり、図5は分解斜視図である。以下においては、方立30の左側面31に取り付けられる戸車ユニット50について説明することとし、方立30の右側面32に取り付けられる戸車ユニットは、方立30の左側面31に取り付けられる戸車ユニット50と左右が異なるだけであるからその説明を割愛する。尚、図3では、右側面32に取り付けられた戸車ユニットの構成要素が示されており、以下に説明する方立30の左側面31に取り付けられた戸車ユニット50と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0029】
これら図4及び図5にも示すように、戸車ユニット50は、ユニット本体51と、上ガイド部材52と、固定部材53と、連結ボルト54とを備えて構成されている。
【0030】
ユニット本体51は、例えばアルミニウム等の金属製の押出材であり、縦断面が下向きコ字状となる2つの収納部511を見込み方向(室内外方向)に一対となるよう上水平連結部512と下水平連結部513とで連結させることで構成されている。このユニット本体51における収納部511は、戸車55の外形に適合した収納形状を有するものであり、戸車55をそれぞれ収納するためのものである。
【0031】
戸車55は、縦断面が下向きコ字状となる戸車本体551における一対の側壁551a,551bの間に車軸553(図6参照)を介して車輪552を回転可能に支持するものである。
【0032】
このような戸車55は、上記戸車ユニット50のために専用に設計されたものであっても構わないが、本発明の実施の形態においては、引き違い窓や引き戸等の他の種類の建具(他の建具)に用いられているものであることが好ましい。より詳細に説明すると、戸車55は、図6に示すように、他の建具100の障子101の下框(框体)102に取り付け可能な外形を有しており、当該下框102に適用すべくその外形等が設計されたものである。尚、図6中の符号103は、下枠に形成されるレールである。
【0033】
また、ここでは戸車55として戸車本体551に車輪552が回転可能に支持されるものを例示したが、本発明においては、車輪552が高さ調整機構等を介して戸車本体551に回転可能に支持されるものであっても構わない。
【0034】
かかる戸車55は、ユニット本体51の各収納部511における天壁511aの収納ネジ孔511bを貫通するビスN1が戸車本体551の上壁551cの本体ネジ孔551dを挿通してこれら各ネジ孔511b,551dと螺合することでユニット本体51に締結されて各収納部511に収納されることとなる。これにより、ユニット本体51は、戸車55を見込み方向に一対となるよう並列に支持することができる。尚、ここでは、戸車55がビスN1によりユニット本体51に締結されて各収納部511に収納されることを例示したが、戸車55が各収納部511に圧入されて収納されても良い。
【0035】
上ガイド部材52は、円板状の形態を成したものであり、上ガイド支持板521に対して回転可能に取り付けられている。この上ガイド部材52の外径寸法は、上枠11の上溝部16における見込み方向の長さに僅かに小さい大きさを有している。
【0036】
このような上ガイド部材52は、上ガイド支持板521のガイドネジ孔521aを貫通するビスN2がユニット本体51の下水平連結部513のガイド用ネジ孔513aを挿通してこれら各ネジ孔521a,513aと螺合することで上ガイド支持板521がユニット本体51に締結されて下水平連結部513の下面に取り付けられている。
【0037】
固定部材53は、例えばアルミニウム等の金属製材料を加工して構成されるもので、基部531と、室外側固定片532と、室内側固定片533とを有して構成されている。
【0038】
基部531は、上下方向に沿って延在する固定用挿通孔531aを有する部位である。室外側固定片532は、基部531の室外側端部より室外側に延在する平板状部位である。室内側固定片533は、基部531の室内側端部より室内側に延在する平板状部位である。
【0039】
連結ボルト54は、上端側が頭部54aを有する基端部541であり、下端側が先端部542となっている。この連結ボルト54は、ユニット本体51の上水平連結部512及び下水平連結部513に形成された貫通孔512a,513bを貫通した先端部542が固定部材53における基部531の固定用挿通孔531aを挿通して2つのナット56と螺合することでユニット本体51と固定部材53とを連結する連結部である。これにより、ユニット本体51は、戸車55の間が連結ボルト54を通じて扉体20に間接的に連結されている。
【0040】
ここで、ユニット本体51の上水平連結部512の貫通孔(以下、上側貫通孔ともいう)512aの内径は、連結ボルト54の頭部54aよりも大きいものである。また、ユニット本体51の下水平連結部513の貫通孔(以下、下側貫通孔ともいう)513bの内径は、連結ボルト54の頭部54aよりも小さいものである。更に、ナット56は、外径が固定部材53の固定用挿通孔531aの内径よりも大きいものである。
【0041】
従って、連結ボルト54は、上側貫通孔512aを貫通した後、基端部541が下側貫通孔513bを貫通し、かつ先端部542が固定部材53の固定用挿通孔531aを挿通した状態で設けられている。また、ナット56は、自身が回転することで連結ボルト54との螺合個所を該連結ボルト54の延在方向(上下方向)に沿って変位するものである。
【0042】
そして、このような連結ボルト54によりユニット本体51と連結された固定部材53が、図7に示すように、室外側固定片532及び室内側固定片533の固定ネジ孔(図示せず)を貫通する固定ネジN3が方立30の左側面31に形成された取付ネジ孔(図示せず)を挿通してこれら各ネジ孔と螺合することで該方立30の左側面31に配設されている。
【0043】
ところで、連結ボルト54の先端部542と螺合するナット56は、連結ボルト54との螺合個所を該連結ボルト54の延在方向(上下方向)に沿って変位することができるので、ナット56と連結ボルト54との螺合個所を変位させることでユニット本体51と固定部材53との離間距離を調整可能なものとすることができる。
【0044】
このように方立30に取り付けられた戸車ユニット50を、図8に示すように上枠11の内部に相対的に進入させて、車輪552を対応する上レール15に転動可能に載置させることで、図9及び図10に示すように方立30を上枠11より吊下げることができる。この場合において、上ガイド部材52を上枠11の上溝部16に進入させておく。また、方立30の下端部より下方に突出するよう設けられた円板状の下ガイド部材18(図3参照)を下枠12の下溝部17に進入させておくことが望ましい。
【0045】
上述したように戸車ユニット50を構成する車輪552が上レール15に載置されており、かかる車輪552が上レール15を転動することで、方立30は、開口枠10の見付け方向、すなわち左右方向にスライド移動することができる。この際、上ガイド部材52は、その外周面の一部が上溝部16の壁面と摺動し、下ガイド部材18は、その外周面の一部が下溝部17の壁面と摺動する。
【0046】
このような構成を有する建具においては、上述したように方立30が左右方向にスライド移動可能であり、各障子40は蝶番21,22,23,24を介して連結されることで回動可能となっていることから、図11に示すように、各障子40を室外側に回動させつつ方立30を左方にスライド移動させることで、扉体20を開放動作させることができる。
【0047】
以上のような構成を有する本実施の形態である戸車ユニット50によれば、ユニット本体51が車輪552を回転可能に支持する複数の戸車55を見付け方向に一対となるよう並列に支持し、かつ戸車55の間が連結ボルト54を通じて方立30に配設された固定部材53に連結されているので、他の種類の建具100等で用いられている戸車55を活用して、方立30をスライド移動可能に支持することができる。従って、既存の戸車55を用いることができ、製造コストの低減化を図ることができる。しかも、戸車55の間が連結ボルト54を通じて扉体20を構成する方立30に連結されていることで、扉体20を効率的に支持することが可能になり、更に戸車55の数を容易に増加させることで扉体20の重量に対して柔軟な対応が可能になる。
【0048】
また、上記戸車ユニット50によれば、ユニット本体51が、他の建具100を構成する障子101の下框102に取り付け可能な外形を有する戸車55の外形に適合した収納形状を有する複数の収納部511のそれぞれに戸車55を収納することで該戸車55を複数支持しているので、対象となる建具(開口枠10及び扉体20)と他の建具100との間で戸車55を兼用することができ、製造コストを低減させることができる。
【0049】
更に、上記戸車ユニット50によれば、ユニット本体51の下水平連結部513の下面に取り付けられた上ガイド部材52が、上枠11の上溝部16に進入して方立30がスライド移動する際に外周面の一部が上溝部16の壁面に摺動するので、方立30がスライド移動する際に見込み方向(室内外方向)にガタつくことを防止することができる。
【0050】
また更に、上記戸車ユニット50によれば、ナット56と連結ボルト54との螺合個所を変位させることでユニット本体51と固定部材53との離間距離を調整可能なものとすることができるので、固定部材53は方立30に配設されていることから、連結ボルト54とナット56との螺合個所を変位させることで、方立30に対するユニット本体51の高さを自在に調整することができる。
【0051】
本発明の実施の形態である建具によれば、上記戸車ユニット50を備えているので、既存の戸車55を用いることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0053】
上述した実施の形態では、戸車ユニット50は、扉体20を構成する方立30に取り付けられていたが、本発明においては、戸車ユニットが扉体を構成するいずれかの障子の縦框に取り付けられていても良い。この場合、障子は回動可能となっていることから、戸車ユニットを構成するユニット本体は固定部材に対して回転可能に取り付けられることが好ましい。
【0054】
上述した実施の形態では、扉体20として方立30を備えたものを例示したが、本発明においては、方立を含まない扉体に適用されるものであっても良いし、方立を含みつつ4つ以上の障子を備えてなる扉体に適用されるものであっても良い。
【0055】
上述した実施の形態では、戸車ユニット50を構成する戸車50の車輪552は、上レール15に載置されて転動するものであったが、本発明における車輪は、下レールに載置されて転動するものであっても良い。
【0056】
上述した実施の形態では、戸車ユニット50は、固定部材53を備え、かかる固定部材53が方立30に配設されることにより扉体20に間接的に連結されていたが、本発明においては、固定部材53がなくてもよく、扉体20の構成要素(方立30及び障子40)に形成した連結用孔に連結部が進入して扉体にユニット本体が直接的に連結されても構わない。
【0057】
上述した実施の形態では、戸車55は、戸車本体551の上壁551cがユニット本体51の各収納部511における天壁511aに接合するよう、各収納部511に収納されていたが、本発明では、これに限られず、戸車本体551の側壁が551a,551bのいずれか一方が各収納部511における側壁に接合するよう、各収納部511に収納されても良い。
【0058】
上述した実施の形態では、ユニット本体51は、収納部511が、戸車55の外形に適合した収納形状を有するものであったが、本発明においては、ユニット本体は、複数の戸車を支持することができればその形状は特に限定されるものではなく、例えば平板状のものであっても構わない。
【0059】
上述した実施の形態では、折りたたみ戸を建具として例示したが、本発明においては、引き違い窓や引き戸等を建具として適用しても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 開口枠
11 上枠
12 下枠
13 縦枠(左縦枠)
14 縦枠(右縦枠)
15 上レール
16 上溝部
17 下溝部
18 下ガイド部材
20 扉体
30 方立
40 障子
40a 第1障子
41a 上框
42a 下框
43a 左縦框
44a 右縦框
45a 面材
40b 第2障子
41b 上框
42b 下框
43b 左縦框
44b 右縦框
45b 面材
40c 第3障子
41c 上框
42c 下框
43c 左縦框
44c 右縦框
45c 面材
31 左側面
32 右側面
50 戸車ユニット
51 ユニット本体
511 収納部
512 上水平連結部
513 下水平連結部
513b 貫通孔
52 上ガイド部材(ガイド部材)
521 上ガイド支持板
53 固定部材
531 基部
531a 固定用挿通孔(挿通孔)
532 室外側固定片
533 室内側固定片
54 連結ボルト(連結部)
54a 頭部
541 基端部
542 先端部
55 戸車
551 戸車本体
551a 側壁
551b 側壁
552 車輪
56 ナット(ナット部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11