【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、ポリメチルメタクリレート骨セメントを貯蔵、混合および適用するための装置において、骨セメント用の第一ペースト状成分のための第一容器と、分配プランジャであって、第一容器内で位置を変えることができ、分配プランジャの反対側の分配チューブを通して第一容器の内容物を押し出す機能を有しており、分配チューブは分配プランジャの反対側にある第一容器の側面のフィードスルーを通して回転および縦方向への位置変換ができるように配置されている、分配プランジャと、第一容器の内容物を混合するための混合設備であって、該混合設備は第一容器内に配置されており、該混合設備は第一容器の内容物を混合するために分配チューブを動かすことにより第一容器内で動かせるように分配チューブに固定されている、混合設備とを備えており、骨セメントの少なくとも1つの第二成分用の少なくとも1つの第二容器が第一容器内に配置されており、該少なくとも1つの第二容器の内部空間は栓により第一容器の内部空間に対して閉ざされており、その栓は投与プランジャによって開けることができ、該少なくとも1つの第二容器は当該栓の反対側で制限されており、第一容器の少なくとも1つの制限表面は可動性の体積補償要素によって形成されていることを特徴とする、装置によって達成される。
【0014】
本発明によれば、骨セメントの成分は第一容器および少なくとも1つの第二容器に存在し得る。
【0015】
第一容器は空気を含まないのが好ましい。第二成分は好ましくは粉末状またはペースト状であり、特に好ましくは自己滅菌ペーストである。自己滅菌ペーストは例えば過酸化水素を含み得る。少なくとも1つの第二容器の1つまたはそれ以上は、EP 2 596 812 A1に記載されているタイプの自己滅菌ペーストを含む。
【0016】
基本的には、本発明の趣旨の実施にあたり、操作接続の面で、分配チューブを分配プランジャの反対側に配置すれば十分である。幾何学的に正確な並列は必要ではない。少なくとも1つの第二容器の栓および投与プランジャについても同様のことが言える。前述の通り、圧力の伝達により反対側が与えられるので、本発明の趣旨を実施するには、投与プランジャと栓を幾何学的に反対の位置に置く必要はない。
【0017】
体積補償要素は、第一容器の円筒状内部空間内で軸方向に移動可能な1つまたは2つの円筒を用いて実施するのが好ましい。あるいは、または加えて、体積補償要素は可撓性の変形可能な皮または膜を用いて成形してもよい。
【0018】
好ましい改良によれば、少なくとも1つの第二容器の栓は、前記第二容器の投与プランジャに圧力をかけることにより開くことができ、そうすることにより第一容器が前記第二容器と接続されるようになる装置を、本発明は提供してもよい。
【0019】
この手段により、第二容器(複数も可)は外側から第一容器側に容易に開くようになる。同時に、栓(複数も可)を開けるのに使用したのと同じ圧力を用いて、第二容器(複数も可)の内容物を第一容器内に移すことができる。従って、栓(複数も可)を開け第二容器(複数も可)の内容物を第一容器内に分配するには、投与プランジャ(複数も可)を一度作動させるだけで十分である。
【0020】
更に、本発明によれば、本発明は栓を栓ストッパーまたは栓キャップの形で提供するのが好ましく、それは閉鎖された状態において、第一容器と少なくとも1つの第二容器の間の隔壁の開口部に栓をし、当該開口部を閉鎖するものである。
【0021】
1つの改良によれば、本発明は、分配チューブの端に第一容器の内部に向けて配置され分配チューブから半径方向に第一容器の内部外側方向に延びている少なくとも2つの混合翼を備える混合設備を提供できる。
【0022】
上記形状を有する混合翼は、第一容器の全内容物が完全に混合されるのを確実なものにできる。
【0023】
この場合、本発明は、混合翼の軸方向の高さが栓の最大外形より大きく、従って混合翼間の中空空間が少なくとも栓または複数の栓を収容するのに十分である装置を提供できる。
【0024】
その結果、栓または複数の栓が、分配チューブの引き出しを、混合翼と分配チューブ用のフィードスルーを含んでいる第一容器の内部空間の前部との間を塞くことによって妨害することは決してないし、分配チューブが第一容器から更に引き出されるのも確実に妨げる。
【0025】
本発明の装置の好ましい改良によれば、本発明は2つの第二容器を備える装置を提供することができ、その場合、両容器とも、各々1つの栓と、第二容器の内容物を分配するための各々1つの投与プランジャとにより両反対側が制限されている。
【0026】
第三成分および/または追加の医薬品が、上記第二容器を用いてセメント混合物に供給できる。更に、本発明は、第三成分、好ましくは抗生物質または抗生物質の混合物を提供できるのが好ましく、その場合、該成分は、例えば、そして本発明に従って好ましくは、投与漏斗などの充填補助を用いて第二容器に充填される、あるいは充填でき、当該充填補助は、第一容器の反対側を向いている第二容器の端に嵌合する充填ソケットを備えている。従って、本発明によれば、装置は上記充填補助を備えており、該充填補助は、投与プランジャの代わりに、第二容器または複数の第二容器の1つの開放端に配置する必要がある。
【0027】
更に、本発明は、変形可能な連結手段、特に可撓性のフィンによってリングに連結されている少なくとも1つの栓を提案しており、その場合、当該リングは、分配チューブの周りに移動可能な方法で第一容器の内側に配置されているので、連結手段はリングによって分配チューブ上で軸方向に移動可能である、あるいはリングは、第一容器の分配チューブ用フィードスルーに配置されて分配チューブを案内する案内スリーブに固定されている。
【0028】
本発明によれば、リングそれ自体がスリーブとして提供できるのが好ましい。リングの存在により、栓または複数の栓が第一容器内で自由に移動するのが防止され、混合、混合設備の可動性および/またはセメントドウの押出しに干渉するのも防止される。特に、栓が分配チューブの末端開放部上に置かれ、混合セメントドウの流れを妨げるようなことがあってはならない。
【0029】
あるいは、分配チューブを押すことによっても栓または複数の栓、従って第二容器または複数の第二容器が第一容器側に開けられるように、当該栓または複数の栓を混合設備に固定してもよい。少なくとも1つの第二容器が不注意で開くのを防止するため、本発明は、固定装置を用いて当該少なくとも1つの第二容器に取り外し可能な方法で固定されている分配チューブ、または固定可能な分配チューブを提供できる。
【0030】
骨セメントまたは開始成分の不注意な漏洩を防止するため、本発明は、分配チューブ内に配置され、第一容器の内側に向いている末端で分配チューブを閉鎖する、軸方向に移動可能なコアを提供でき、その場合、円周シールリングが当該コアに配置され、分配チューブの内壁に対して当該コアを密閉するのが好ましい。
【0031】
その結果、混合されていない未完成のセメントドウが少なくとも1つの第二容器から分配チューブに入ったり、成分(複数も可)を混合・充填している間に分配チューブから漏れたりするのを、確実に防止できる。
【0032】
更に、本発明は、栓を開けることにより、第二容器の内容物または複数の第二容器の内容物を投与プランジャによって第一容器に移すことができ、次に第一容器と第二容器又は複数の第二容器の内容物を混合設備によって第一容器内で互いに混合できることを提案する。
【0033】
従って、本装置は確実に操作しやすい。
【0034】
本発明の装置の操作を簡略化するため、本発明は、分配プランジャが第一容器に係止可能である、または係止されている装置、好ましくは、分配チューブの反対側に位置する第一容器の末端において係止可能である、または係止されている装置を提供してもよい。
【0035】
その結果、第一容器が充填されている間や第一容器が滅菌されている間、不注意によって生じる分配プランジャの干渉運動が防止できる。
【0036】
本発明は、第一容器が円筒形の内部空間を備えており、該第一容器の内部空間にある分配プランジャが円筒形内部空間のフットプリントに一致する形状を有している装置を提供できるのが、特に好ましい。
【0037】
円筒形は、第一容器ひいては装置を実施できる最も簡単な形状である。円筒形内部空間とは、あらゆるフットプリントを有する幾何学的に一般的な円筒を意味しており、円形のフットプリントを有する円筒のみを意味するものではないことは理解されるべきである。従って、内部空間は、円形または丸形ではないフットプリントなど、あらゆるフットプリントを有する真っ直ぐな円筒形であり得る。しかし、本発明では、円形のフットプリントを有する円筒形の内部空間が好ましい。かかる幾何形状によれば、混合設備は第一容器の全ての領域に特に良好に到達可能である。分配プランジャも円筒形であり、第一容器の円筒形内部空間の壁にシールを介して接触しているのが好ましい。ワイパーが内部空間に対向する分配プランジャ側に配置され、分配プランジャを前進させた場合に、混合骨セメントペーストが分配プランジャから押し出され装置の背後から排出されるのを防止するように機能するのが特に好ましい。円柱形を有する第一容器の好ましい幾何形状においては、混合設備は、円筒形内部空間の内径に等しい大きさの混合翼、または好ましくはそれよりも僅かに小さい(例えば、0.1mm小さい)大きさの混合翼を有している。
【0038】
円形のフットプリントを有する円筒形の幾何形状は、装置の設計としては最も単純なものである。従って、第一容器の外面も円筒形であり壁の少なくとも90%が同じ厚さを共有しているのが特に好ましい。従って、第一容器は側面から見ると単純なチューブとして製造し得る。
【0039】
更に、本発明は、円筒形の内部空間を有する第二容器または複数の第二容器、並びに円筒形の内部空間のフットプリントと一致する形状を有する、当該第二容器または複数の第二容器の内部空間内の投与プランジャ、あるいは対応する複数の円筒形内部空間のフットプリントに一致する形状の複数の投与プランジャを提供してもよい。
【0040】
上記対称形は、第一容器の対称形と同じ利点を有する。
【0041】
本発明の更に特に好ましい実施態様は、分配プランジャによって体積補償要素を実行することにより実施でき、その場合、分配プランジャは2つの部分すなわち前部の分配プランジャと制限プランジャから成るように設計され、それらプランジャは互いに移動可能な方法で第一容器に支持されており、第一容器から離れようとする前部分配プランジャの動きは制限プランジャによって制限されており、制限プランジャは第一容器に固定されていてもよく、好ましくは、制限プランジャは外部から取り外し可能で、第一容器上の反対側スナップイン機構に係合するスナップイン機構を備えている。
【0042】
分配プランジャはそもそも例えば可動性を持たせて第一容器内に配列する必要があるので、それを可動性の体積補償要素として利用することが可能である。従って、追加の可動部を備える必要はなく、従って装置の製造原価を低く抑えることができる。
【0043】
この場合、ガス通過開口部が制限プランジャに提供されており、および/またはガス通過開口部が制限プランジャと第一容器の間に提供されており、その場合、ガス通過開口部または複数のガス通過開口部は、前部分配プランジャと制限プランジャの間からガスを排出したり、そこにガスを充填したりするのに適している。
【0044】
その結果、前部分配プランジャと制限プランジャの間のガスを確実に排出し、当該介在空間を滅菌ガスで確実に滅菌することができる。更に、第一容器の内部に前部分配プランジャを押し込んで第一容器の内容物および/または既に混合されたセメントドウを押し出すために、圧縮ガスを当該介在空間に供給することも可能である。
【0045】
分配プランジャが体積補償要素として使用される本発明の装置は、制限プランジャの対応開口部内に案内されている前部分配プランジャ上に、適切な方法で案内要素を配列するように提供することができ、その場合、当該案内要素は制限プランジャの対応円筒形フィードスルー内に延びている円筒形ピンであるのが好ましい。
【0046】
この方法の結果、前部分配プランジャが移動中に引っ掛かったり傾いたりすることがなく、第一容器の更なる動きを妨害することもない。
【0047】
本発明の更なる改良は、装置が貯蔵状態にある間、制限プランジャに対する前部分配プランジャの軸方向の動きをブロックする取り外し可能な係止要素を提案する。
【0048】
その結果、第一容器の充填および装置の滅菌が、相対的に移動する該2つの部分(前部分配プランジャと制限プランジャ)によって更に難しくされることはない。
【0049】
本発明の改良は、前部分配プランジャが、弾力性のある発条によって制限プランジャに対して移動可能に支持される方法を提案し、その場合、当該発条は前部分配プランジャと制限プランジャの間に配置され、前部分配プランジャを第一容器の内部空間の方へ押す。当該発条は、案内要素および/またはピン(いずれかが存在する場合)の周りに配置されるのが好ましい。
【0050】
その結果、前部分配プランジャの位置は、例えば混合設備付き分配チューブを繰り返し押したり引いたりして第一容器の内容物を混合することにより生じる第一容器の体積の反復変化の際に、当該弾力性のある発条によって望ましい位置に積極的に復帰される。
【0051】
本発明によれば、第一に、分配チューブが第一容器内に完全に挿入された時点と分配チューブを第一容器から完全に引き出した時点での、第一容器内に位置する分配プランジャ部分の体積の差と、第二に、第二成分の体積または1つの第二容器の内部空間の体積あるいは複数の第二容器の内部空間の体積との合計に少なくとも等しい体積を有するような空間を、移動可能な分配プランジャと制限プランジャの間に提供するのが特に有利である。
【0052】
この構造により、分配プランジャは、体積補償要素として、第一容器の内容物の全体積変化に対応できる。
【0053】
本発明に従って好ましい本発明の更なる改良は、第一容器に対して移動可能な方法で弾力性のある発条によって軸受け状に支持されている少なくとも1つの体積補償要素を提供することができ、その場合、当該発条は体積補償要素を第一容器の内部空間方向へ押す。
【0054】
その結果、体積補償要素は、混合設備付き分配チューブを繰り返し押したり引いたりして第一容器の内容物を混合することにより生じる第一容器の体積の反復変化の際に、当該弾力性のある発条によって元の位置に積極的に復帰される。
【0055】
更に、本発明は、少なくとも1つの第二容器の内壁、栓および投与プランジャによって形成される空間と、周囲大気との間でガス交換が行われるように、少なくとも1つの多孔性のガス透過性シールリングを少なくとも1つの投与プランジャの外面に配置することを提案する。
【0056】
あるいは、または加えて、本発明は、少なくとも1つの第二容器の内壁、栓および投与プランジャによって形成される空間と周囲大気との間でガス交換が行われるように、少なくとも1つのガス透過性の多孔性ディスクを備える投与プランジャも提供できる。
【0057】
その結果、少なくとも1つの第二容器の内容物を排出し滅菌ガスで滅菌できる。
【0058】
本発明の別の改良は、スナップインが生じた後、投与プランジャが第二容器(複数も可)から外れるような後退運動が生じ得ないような適切な方法で、第二容器の内面上の少なくとも1つの反対側スナップイン機構に係合できる少なくとも1つの方向スナップイン要素を有する少なくとも1つの投与プランジャを提供できる。
【0059】
その結果、既に調製されたセメント混合物を分配プランジャによって押し出す際に、当該セメント混合物は分配チューブを通してのみ確実に分配され、少なくとも1つの第二容器を通して漏洩することはない。
【0060】
更に、本発明は、分配チューブ用のフィードスルーと同じ側に、特に分配チューブ用のフィードスルーに隣接して、骨セメントの少なくとも1つの第二成分用の少なくとも1つの第二容器を第一容器上に配置することを提案する。
【0061】
この設計は装置の操作を簡略化する。これは特に、分配プランジャが体積補償要素として使用される場合、および分配チューブの周りまたは分配チューブ用のフィードスルーの周りのネジ山にねじ込まれるスクリューキャップが投与プランジャを前進させるのに使用される場合に該当する。
【0062】
更に、本発明の改良は、第一容器の頂部に配置されるのが好ましい少なくとも1つの第二容器に個別の第三中空円筒を挿入することも提案し、その場合、当該第三中空円筒は骨セメントの成分を含んでおり、投与プランジャおよび栓ストッパーで閉鎖される。
【0063】
当該栓ストッパーは、可動性フィンで第二中空円筒に連結されているのが好ましい。
【0064】
当該個別の第三中空円筒は骨セメントの成分および/または骨セメント用の添加物で充填でき、しかも当該個別の第三中空円筒は充填された後に初めて第二容器の1つに挿入すればいいので、この方法により装置の製造が簡略化される。
【0065】
本発明は、第一容器の頂部(すなわち前部)に配置される第二容器内に配置され、骨セメントの第三成分を含み、栓ストッパーおよび投与プランジャによって閉鎖される個別の中空円筒(その場合、該栓ストッパーは可動性フィンによって第一中空円筒に連結される)、および第一容器の頂部に配置される更に別の第二容器内に配置され、医薬品を含み、栓ストッパーおよび投与プランジャによって閉鎖される更に別の中空円筒(その場合、該栓ストッパーは可動性フィンによって第二中空円筒に連結される)を提供してもよい。
【0066】
更に、本発明は、分配プランジャのガイダンスに係合する案内要素を有する軸方向に可動な分配プランジャを提案する。
【0067】
この場合、本発明は、分配プランジャの案内要素用のガイダンスを有する第二投与プランジャ、および外圧を加えることにより取り外し可能で、第二投与プランジャを逆行できる状態で第一容器の内壁に固定する少なくとも1つのスナップイン要素を有する第二投与プランジャも提供できる。
【0068】
更に、本発明の目的は、前述の請求項のいずれか一項に記載の装置を用いてポリメチルメタクリレート骨セメントを製造する方法において、以下の工程:
A)装置を提供する工程であって、第一容器がPMMA骨セメントの第一液体またはペースト状成分で充填され、少なくとも1つの第二容器が好ましくは粉末またはペースト状であるPMMA骨セメントの第二成分で充填される、工程;
B)投与プランジャを前方に押すことによって少なくとも1つの第二容器を開放し、更に投与プランジャを前進させることによって少なくとも1つの第二容器から第一容器内に第二成分を分配する工程であって、第二成分を第一容器内に導入する際の第一容器の内容物の体積変化は、少なくとも1つの体積補償要素の移動によって補償される、工程;および
C)混合設備を移動させることによって第一容器内の二成分を混合する工程であって、混合設備の移動は、混合設備に連結されている分配チューブを繰り返し第一容器内に押し込んだり、そこから引き出したりすることと関連しており、混合中の第一容器の内容物の体積変化は、少なくとも1つの体積補償要素の移動によって補償される工程、を特徴とする方法に関係している。
【0069】
この場合、本発明は、工程Cの後、分配チューブから除かれるコアを提供することができ、次に工程Dが行われ、分配プランジャを第一容器内で前進させることにより、混合骨セメントが分配チューブを通して適用される。
【0070】
更に、本発明の方法の改良は、分配チューブを第一容器内に出し入れすることによって、分配チューブに連結されている混合設備を第一容器内で移動させ、それによって第一容器の内容物を混合することを提案し、その場合、加えて、混合設備は分配チューブを回転させることによって第一容器内で回転させるのが好ましい。
【0071】
その結果、可動要素は1つだけなので、すなわち分配チューブだけが操作されるので、当該方法は特に容易に実施可能であり、不正確な操作の生じる可能性は減少する。更に、秩序正しい外科室にはそぐわない悪い条件下であっても、成分の混合は容易である。
【0072】
更に、本発明は、工程Aの前に、第一容器の内部および少なくとも1つの第二容器の内部をガス抜きおよび滅菌し、この目的のために、好ましくは、制限プランジャ、前記前部分配プランジャおよび/または体積補償要素を係止させ、その後、第一容器を骨セメントの第一成分で充填し、少なくとも1つの第二容器を骨セメントの第二成分で充填し、好ましくは、それと同時にまたはその後、抗生物質または抗生物質の混合物を少なくとも1つの第二容器に充填する、方法を提供できる。
【0073】
その結果、内容物が確実に滅菌される。患者の感染が予防できる。
【0074】
本発明の方法の好ましい改良によれば、本発明は、混合後、混合設備が第一容器の前部内面に接触するように、分配チューブを第一容器の外部方向に移動させる(または引き出す)、方法を提供してもよい。
【0075】
更に、本発明は、完全に押し込まれた後スナップイン機構によって少なくとも1つの第二容器に逆行できない状態で固定される、投与プランジャまたは複数の投与プランジャを提供できる。
【0076】
従って、本発明の方法は、第一容器に生じる体積変化の補償を堆積補償要素を用いて行う方法の実施を提供できる。
【0077】
分配プランジャが係止要素によって係止可能である場合、本発明は、少なくとも1つの第二容器の内容物を第一容器に移す前または導入する前に、分配プランジャの係止要素を取り外し、該分配プランジャが軸方向に自由に移動できるようにする、方法も提供できる。
【0078】
本発明は、本発明の装置の設計および本発明の方法の使用によって、各成分が1:10およびそれ以上の混合比を有する骨セメントの混合および適用に関して選択肢が容易に提供できるという、驚異的発見に基づいている。扱いやすく利用しやすく低投与量の成分を含む第二容器または複数の第二容器が提供されるので、ユーザーはほとんど努力することなく容易に上記成分を添加できる。体積補償要素のお蔭で、セメントペーストまたは開始成分は装置から漏洩することはなく、従って混合時に周囲および/または骨セメントを汚染することもない。構造体は、容易かつ低価格で製造でき、滅菌でき、開始成分で充填できる。更に、投与漏斗が提供してあるので、ユーザーは、例えば、患者に合わせた抗生物質の特殊混合物あるいは他の医薬品など、追加の添加剤を添加できる。
【0079】
本発明の装置の構造体の一例は、例えば、以下で構成されるポリメチルメタクリレート骨セメントを貯蔵および混合する装置である:
a)ペースト状の成分Aで充填された第一容器を備える円筒形の貯蔵容器;
b)フィードスルーを通して分配容器の頂部を軸方向に移動可能な分配チューブで、該分配チューブは第一容器に対向する側に2つまたはそれ以上の混合翼を含む;
c)分配チューブを塞ぐコアで、該コアは、第一容器に対向するチューブ側において逆行できる状態で該分配チューブを閉鎖する;
d)第一容器に連結される少なくとも1つの中空円筒で、該中空円筒は、成分Bで充填される第二容器を形成する;
e)第一容器の方向のみに軸方向に押し出すことができ、第一容器を第二容器から分離する栓ストッパー;
f)軸方向に移動可能なやり方で少なくとも1つの中空円筒内に配置される少なくとも1つの投与プランジャ;
g)第二容器は、栓ストッパーと投与プランジャによって中空円筒内に制限されている;
h)第一容器を制限する、軸方向に移動可能な分配プランジャ(前部分配プランジャ);
i)前部分配プランジャの背後に配置される第二プランジャ(制限プランジャ)で、上記第二プランジャは外力により取り外し可能なスナップイン要素によって内部カートリッジ壁に固定されており、軸方向に移動可能な前部分配プランジャと周囲大気との間にある第一容器の空間に連結する少なくとも1つのガス通過開口部を有している;および
j)移動可能な前部分配プランジャと第二制限プランジャとの間の空間の体積は、成分Bの体積と、分配チューブを第一容器内に最大限侵入させた時の分配チューブの体積との合計に少なくとも等しい。
【0080】
この場合、それぞれ1つの栓ストッパーと軸方向に移動可能な1つの投与プランジャを有する2つの中空円筒を提供するのが好ましい。
【0081】
本発明の方法は、例えば、以下のように実施できる:
a)まず、分配プランジャが軸方向に自由に移動できるように、分配プランジャの係止要素を取り外す;
b)少なくとも1つの投与プランジャを栓ストッパーの方向に押すことにより、該ストッパーは中空円筒からペースト状の成分Aが存在する第一容器内に移動し、該投与プランジャを更に移動させることにより、成分Bが第一容器ひいてはペースト状の成分Aに押し出される;
c)スナップイン機構が貯蔵容器の頂部の内側に達した後、該機構により投与プランジャは逆行できない状態で中空円筒内に固定される;
d)その後、混合翼によって分配チューブを軸方向および接線方向に移動させることにより成分Bとペースト状の成分Aを混合し、ドウCを形成する;
e)混合後、分配チューブを貯蔵容器の頂部方向に移動させ、混合設備を貯蔵容器(第一容器)の内面に接触させる;
f)次に、コアを分配チューブから引き出し、制限プランジャとその上に位置する前部分配プランジャとを貯蔵装置の頂部方向に移動させることにより、セメントドウCが分配チューブの空間から周囲へ押し出される;および
g)工程b、cおよびd中に、成分Bが押し込まれ混合翼を含む分配チューブが押し込まれたり引き出されたりすることによって生じる第一容器の体積変化が、前部分配プランジャの軸方向の移動により補償される。
【0082】
本発明の別の方法は、例えば、以下のようにして実施できる:
a)まず、分配プランジャが軸方向に自由に移動できるように、分配プランジャの係止要素を取り外す;
b)第一投与プランジャを栓ストッパーの方向に押すことにより、該ストッパーは中空円筒からペースト状の成分Aが存在する第一容器内に移動し、該第一投与プランジャを更に移動させることにより、医薬品が第一容器ひいてはペースト状の成分Aに押し出される;
c)スナップイン機構が貯蔵容器の頂部の内側に達した後、該機構により第一投与プランジャは逆行できない状態で中空円筒内に固定される;
d)次に、第二投与プランジャを栓ストッパーの方向に押すことにより、該ストッパーは中空円筒からペースト状の成分Aが存在する第一容器内に移動し、該第二投与プランジャを更に移動させることにより、成分B1が第一容器ひいてはペースト状の成分Aに押し出される;
e)スナップイン機構が貯蔵容器の頂部の内側に達した後、該機構により投与プランジャは逆行できない状態で中空円筒内に固定される;
f)その後、混合翼を含む分配チューブを軸方向および接線方向に移動させることにより成分B1、医薬品およびペースト状の成分Aを混合し、ドウCを形成する;
g)混合後、分配チューブを貯蔵容器の頂部方向に移動させ、混合設備を貯蔵容器の内面に接触させる;
h)次に、コアを分配チューブから引き出し、制限プランジャとその上に位置する前部分配プランジャとを貯蔵装置の頂部方向に移動させることにより、セメントドウCが分配チューブを通して第一容器から周囲へ押し出される;および
i)工程b、cおよびd中に、医薬品および成分B1が押し込まれ混合翼を含む分配チューブが押し込まれたり引き出されたりすることによって生じる第一容器の体積変化が、前部分配プランジャの軸方向の移動により補償される。