(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機ポリマーを含む有機ポリマー組成物であって、該有機ポリマーが、有機ポリマー組成物100重量部当たり、少なくとも0.1重量部の臭素を、該組成物に与えるのに充分な量の、請求項1〜3のいずれか1項に記載の、臭素化及びエポキシ化されたブタジエンホモポリマー又はスチレン/ブタジエンジブロックもしくはトリブロックコポリマーを、その中に溶解又は分散させて有する有機ポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記臭素化及びエポキシ化有機化合物は、種々の塊状ポリマーのための有効な難燃剤である。これは、以下更に完全に説明するように、5重量%損失温度及び230°開始時間(onset time)によって示されるような、溶融加工操作の間の優れた熱安定性を示す傾向にある。
【0015】
HBrスカベンジャーとして機能することに加えて、臭素化及びエポキシ化有機化合物上のエポキシド基は、そこで種々の化学反応を実施することができる官能基を表す。これは、潜在的に、臭素化及びエポキシ化有機化合物が他のポリマー及び分子上にグラフト化することを可能にし、オキシラン環(単数又は複数)の部位での1個又はそれ以上の反応による材料の更なる官能化を可能にする。臭素化及びエポキシ化有機化合物は、エポキシ硬化剤、例えばポリアミンとの接触によって架橋させることができる。これは、例えば臭素化及びエポキシ化有機化合物が、塊状ポリマー中に分散され、次いで架橋されて、予定のサイズ範囲を有する分離した粒子を形成することを可能にする。この架橋及び粒子形成は、HBr及び続くHBr触媒作用反応の除去のために、この材料を、ゲル生成に対して一層耐性にすることができる。
【0016】
本発明の臭素化及びエポキシ化有機化合物は、少なくとも1500の分子量を有することで特徴づけられる。この分子量は、好ましくは少なくとも2000であり、少なくとも5000、少なくとも10,000又は少なくとも20,000であってよい。この分子量は、500,000のように高く又は200,000のように高くてよいが、好ましくは100,000以下、なお更に好ましくは85,000以下である。本発明の目的のために、約2,000又はそれより高い分子量は、ポリスチレン標準物質に対する、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの見掛け分子量である。GPC分子量決定は、直列で連結した2個のPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートル Mixed−Cカラム及びAgilent G1362A屈折率検出器を取り付けたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを使用して、溶離剤として、1mL/分の速度で流し、35℃の温度に加熱したテトラヒドロフラン(THF)で、実施することができる。
【0017】
前記臭素化及びエポキシ化有機化合物は、「臭素化(brominated)」されている。この臭素化によって、単純に、この化合物が、この化合物に臭素原子が導入される方法とは無関係に、臭素原子を含有することが意味される。この臭素原子は、好ましくは脂肪族炭素原子に、なお更に好ましくは第一級及び/又は第二級脂肪族炭素原子(即ち2個以下の他の炭素原子に結合されている炭素原子)に、直接的に結合されている。好ましくは、臭素の5%未満、更に好ましくは2%未満、なお更に好ましくは1%以下が、アリル性又は第三級炭素原子に結合されている。臭化水素化は、殆ど又は全く存在してはならない。臭素化及びエポキシ化有機化合物は、少なくとも35重量%の臭素含量を有する。より高い臭素含量材料は、有機ポリマー組成物中に等価臭素含量を与えるために、より少量で使用することができるので、より高い臭素含量が一般的に好ましい。この臭素含量は、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%又は少なくとも60重量%であってよく、70重量%のように、又は75重量%のように、高くてよい。
【0018】
前記臭素化及びエポキシ化有機化合物は、「エポキシ化(epoxidized)」されている。エポキシ化によって、この化合物が、この化合物にオキシラン基(単数又は複数)が導入される方法とは無関係に、少なくとも1個のオキシラン基を含有することが意味される。臭素化及びエポキシ化有機化合物は、好ましくは1個より多いオキシラン基を有する。臭素化及びエポキシ化有機化合物は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%のオキシラン酸素で、5重量%以下、好ましくは3重量%以下のオキシラン酸素を含有することができる。
【0019】
前記臭素化及びエポキシ化有機化合物は、熱的に安定性でなくてはならず、従って、180℃よりも低い温度で、この化合物を著しく劣化又は分解させる構造を含有してはならない。この臭素化及びエポキシ化有機化合物は、好ましくは金属及び半金属(semi-metal)原子を含有していない。好ましい臭素化及びエポキシ化有機化合物は、それぞれ、化合物の全重量の最大1%を構成する全ての他の元素と共に、炭素、水素、酸素、臭素並びに任意的に窒素及び塩素の元素を含有している。更に好ましくは、臭素化及びエポキシ化有機化合物は、それぞれ、化合物の全重量の最大1%を構成する全ての他の元素と共に、炭素、水素、酸素及び臭素を含有している。
【0020】
臭素化及びエポキシ化有機化合物の熱安定性は、本発明の目的のために、5重量%損失温度の評価によって決定される。5重量%損失温度は、下記の又は等価の方法を使用して、熱重量分析によって評価される。10ミリグラムの化合物を、TA InstrumentsモデルHi−Res TGA2950又は等価のデバイスを使用して、気体状窒素の60ミリリットル/分(mL/分)流量及び10℃/分の加熱速度で、室温(通常25℃)から600℃までの範囲に亘って分析する。サンプルによって失われた質量を、加熱段階の間モニターし、サンプルが、その初期重量の5%を失った温度が、5重量%損失温度(5%WLT)と特定される。約100℃又はそれ未満で起こる重量損失は、これらの損失は、臭素化及びエポキシ化有機化合物の劣化ではなくて、残留溶媒又は他の不純物の蒸発を反映するので、一般的に無視される。この試験による臭素化及びエポキシ化有機化合物の5重量%損失温度は、少なくとも180℃でなくてはならず、好ましくは少なくとも200℃であり、更に好ましくは少なくとも240℃である。
【0021】
臭素化及びエポキシ化有機化合物上のエポキシド基(単数又は複数)の少なくとも幾らかは、好ましくは内部型ではなくて、末端である。「末端(terminal)」エポキシドは、構造:
【0023】
を有し、従って、化合物の末端基を表し、一方、「内部」エポキシドは、構造:
【0025】
(式中、R基は、それぞれ、水素以外のものであり、典型的には、隣接するオキシラン炭素に結合されている炭素原子を有する有機基である)
を有する。末端エポキシドは、予想外に、内部型よりも良い熱安定性を有することが見出された。従って、エポキシド基の少なくとも幾らか、好ましくは実質的に全部が末端エポキシドであることが好ましい。
【0026】
臭素化及びエポキシ化有機化合物は、複数(即ち、2個又はそれ以上、好ましくは3個又はそれ以上)の非共役炭素−炭素二重結合を有する出発材料から便利に形成される。これらの型の二重結合は、臭素化(即ち二重結合に亘る2個の臭素原子の付加)及びエポキシ化(即ち二重結合の部位でオキシラン環を形成するための、二重結合に亘る酸素原子の付加)に付すことができる。出発材料は、少なくとも700、好ましくは少なくとも1000の分子量を有する。
【0027】
好ましい出発材料は、単独で末端非共役炭素−炭素二重結合(即ち−CH=CH
2)又は末端炭素−炭素二重結合及び内部炭素−炭素二重結合(即ち−CH=CHR
1(式中、R
1は有機基である))の両方を含有している。末端炭素−炭素二重結合の存在によって、末端エポキシド基を容易に導入することが可能になる。出発化合物が、両方の型の不飽和を含有する場合、炭素−炭素二重結合の少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも50%で、99%以下、更に好ましくは80%以下が末端型であることが好ましい。しかしながら、内部炭素−炭素二重結合のみ又は末端炭素−炭素二重結合のみを含有することは、不飽和出発材料から、本発明の臭素化及びエポキシ化有機化合物を製造するための本発明の範囲内である。
【0028】
容易に入手可能で、比較的安価である出発化合物には、共役ジエンモノマー、好ましくはブタジエンのポリマー及び共役ジエンとある種の脂肪酸エステルとのコポリマーが含まれる。
【0029】
共役ジエンモノマーの適切なポリマー及びコポリマーは、少なくとも30重量%、更に好ましくは少なくとも50重量%の重合した共役ジエン単位を含有している。これらの中で、ブタジエンのポリマー及びコポリマーが好ましい。ブタジエンホモポリマー及びスチレン/ブタジエンコポリマー(特にブロックコポリマー)は、特に関心のあるものである。ブタジエンホモポリマー及びスチレン/ブタジエンジブロック及びトリブロックコポリマーが最も好ましい。ブタジエンポリマー又はコポリマーは、また、共役ジエンモノマー及びビニル芳香族モノマー以外のモノマーを重合させることによって形成された繰り返し単位を含有することができる。このような他のモノマーには、オレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、アクリル酸エステル又はアクリルモノマー、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸等が含まれる。これらのモノマーは、ビニル芳香族モノマー及び/又はブタジエンとランダムに重合されていてよく、ブロックを形成するように重合されていてよく又はポリマー上にグラフト化されていてよい。
【0030】
共役ジエンモノマーの適切なポリマー及びコポリマーは、好ましくは1,000〜400,000、好ましくは2,000〜300,000、更に好ましくは5,000〜200,000、なお更に好ましくは20,000〜120,000、なお更に好ましくは20,000〜50,000の範囲内の重量平均分子量(M
W)を有する。
【0031】
ブタジエンホモポリマー及びコポリマーは、内部及び末端型の炭素−炭素二重結合の両方を含有する出発材料の例である。ブタジエンは主として2種類の繰り返し単位を形成するように重合する。本明細書において「1,2−ブタジエン単位」として参照される一つの型は、形:
【0033】
を取り、そうして末端不飽和基をポリマーに導入する。本明細書において「1,4−ブタジエン」単位として参照される第二の型は、形−CH
2−CH=CH−CH
2−を取り、そうして内部型の不飽和を主ポリマー鎖中に導入する。殆どの市販のポリブタジエンホモポリマー及びスチレン/ブタジエンブロックコポリマーを含む殆どの市販のブタジエンポリマーは、変化する比率で両方の型のブタジエン単位を有する傾向がある。ポリマー又はコポリマー中のブタジエン繰り返し単位の少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも50%で、99%以下、更に好ましくは80%以下が1,2−ブタジエン単位であることが好ましい。
【0034】
出発材料として有用である脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸又は1種若しくはそれ以上の不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸混合物と、1分子当たり2個又はそれ以上、好ましくは3個又はそれ以上のヒドロキシル基を有するポリオールとのエステルである。脂肪酸エステルの分子量は、好ましくは少なくとも700、更に好ましくは少なくとも850であり、そうして1500又はそれより高い分子量が臭素化及びエポキシ化の後で達成される。脂肪酸エステルは、平均で、1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも2.5個、なお更に好ましくは少なくとも3個の非共役炭素−炭素二重結合を含有する。
【0035】
「脂肪酸(fatty acid)」によって、カルボン酸基のカルボニル炭素を含む、12〜30個の炭素原子の鎖を含有する直鎖モノカルボン酸が意味される。この脂肪酸は、好ましくは12〜24個の炭素原子を含有し、更に好ましくは14〜20個の炭素原子を含有する。「不飽和脂肪酸」は、更に、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する。この脂肪酸は、好ましくは、コスト及び入手性の理由のために、植物油若しくは動物脂又は2種若しくはそれ以上の植物油及び/若しくは動物脂の混合物から得られるような脂肪酸の混合物である。
【0036】
脂肪酸トリグリセリドは、その構成脂肪酸の少なくとも一部分が不飽和である限り、適切な出発材料である。植物油及び動物脂は、天然に産生する脂肪酸トリグリセリドであり、その多くは、容易に入手可能であり、比較的安価である。これらの植物油及び動物脂は、これらが充分な必要な不飽和を有する限り、有用な出発材料である。これらの中で植物油が、より大きい入手性及びより低いコストに基づいて好ましい。ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、カノラ油、オリーブ油、亜麻仁油、桐油及び他の不飽和植物油は、全て適切な出発材料である。
【0037】
2種及び/又はそれ以上の出発植物油及び/又は動物脂のエステル交換反応によって変成された植物油及び動物脂も有用な出発材料である。
【0038】
有用な出発材料である他の脂肪酸エステルには、糖1モル当たり、5〜16、好ましくは5〜12、なお更に好ましくは5〜8モルの1種又はそれ以上の脂肪酸との、1種又はそれ以上の糖のエステルが含まれる。「糖」によって、エステル化される前に、1分子当たり5〜16、更に好ましくは5〜12、なお更に好ましくは5〜8個のヒドロキシル基を含有する、単糖類、二糖類又はオリゴ糖類が意味される。二糖類、例えばスクロース、ラクトース、マルトース及びトレハロースが好ましい糖であり、スクロースが、その容易な入手性及び低いコストに基づいて特に好ましい。所望により、糖の混合物を使用することができる。市販のこの種類のエステルは、P&G Chemicalsから、製品名Sefose(登録商標)1618UC未硬化ソイエート(soyate)、Sefose(登録商標)2275Cベヘネート(behenate)で入手可能である。
【0039】
エステル出発材料の別の適切な種類は、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個のヒドロキシル基を有する(グリセリン以外の)ポリオールと、ポリオール1モル当たり少なくとも3モルの1種又はそれ以上の(前記定義されたような)脂肪酸とのエステルである。前記のように、このようなエステルは、少なくとも2個の炭素−炭素不飽和の部位を含有している。前記のように、この脂肪酸は、好ましくは植物油若しくは動物脂又は2種若しくはそれ以上の植物油及び/若しくは動物脂の混合物から得られるような脂肪酸の混合物である。
【0040】
本発明の臭素化及びエポキシ化有機化合物は、出発エチレン性不飽和化合物から、出発化合物中の非共役炭素−炭素二重結合を、逐次的に臭素化し、エポキシ化することによって製造することができる。いずれの場合においても、不飽和の一部のみが第一の工程において消費され、場合により、第二の反応において、エポキシ化又は臭素化される残留不飽和を残す。臭素化反応及びエポキシ化反応を、いずれかの順序で、実施することが可能であるが、幾つかの場合に、エポキシ化の前に臭素化することが好ましく、エポキシ化を最初に実施する場合、或る種の臭素化技術が回避されるべきである。臭素化工程及びエポキシ化工程が完結した後、出発化合物中の非共役炭素−炭素結合の少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、なお更に好ましくは少なくとも98%が、臭素化又はエポキシ化されていることが好ましい。
【0041】
出発化合物が内部及び末端非共役炭素−炭素二重結合の両方を含有する場合には、エポキシ化の前に臭素化を実施することが好ましく、末端二重結合を選択的にエポキシ化することが望ましい。これは、主として又は独占的に、末端エポキシド基を作り、これは、前記のように、内部エポキシドよりも一層熱的に安定であると思われる。従って、本発明の臭素化及びエポキシ化有機化合物の好ましい製造プロセスは、炭素−炭素二重結合の両方の型を含有する出発不飽和化合物を、内部炭素−炭素二重結合の少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、なお更に好ましくは少なくとも98%が臭素化されるが、末端炭素−炭素二重結合の90%以下、好ましくは80%以下、なお更に好ましくは70%以下が臭素化されるまで、臭素化する第一の工程を含む。第二の工程において、残留する末端炭素−炭素二重結合の少なくとも一部をエポキシ化して、臭素化及びエポキシ化有機化合物が、0.1〜5、好ましくは0.5〜3重量%のオキシラン酸素を含有するようにする。前記のように、エポキシ化工程が完結した後、出発化合物中の非共役炭素−炭素結合の少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、なお更に好ましくは少なくとも98%が、臭素化又はエポキシ化されていることが好ましい。
【0042】
従って、例えばブタジエンのポリマー又はコポリマーを臭素化及びエポキシ化するための好ましい方法は、それを最初に臭素化し、続いてエポキシ化することである。出発ポリマー中の1,4−ブタジエン単位は、臭素化反応の間に容易に臭素化される。1,2−ブタジエン単位の全部を臭素化することなく、1,4−ブタジエン単位の本質的に全部を臭素化することが可能である。典型的には、1,2−ブタジエン単位の少なくとも幾らかも、臭素化工程の間に臭素化されるようになるであろうが、過酷な条件を使用しない限り又は臭素化を長時間続けない限り、1,2−ブタジエン単位の幾らかは、臭素化されないままであろう。臭素化されない1,2−ブタジエン単位の量は、プロセス条件及び臭素化時間の制御によって制御することができる。好ましい方法において、臭素化されたブタジエンポリマー中に残留する1,2−ブタジエン単位は、次いでエポキシ化される。このプロセスは、エポキシ化の全部ではないとしても殆どが1,2−ブタジエン単位で起こる生成物を製造する。この方法で臭素化され、エポキシ化されたブタジエンポリマーは、エポキシ化が1,4−ブタジエン単位で大きく又は単独で起きているものよりも一層熱的に安定であることが見出された。
【0043】
出発化合物が、内部炭素−炭素二重結合のみを含有するか又は末端炭素−炭素二重結合のみを含有するとき、臭素化及びエポキシ化は、いずれかの順序で実施することができるが、臭素化が最後に実施される場合、或る種の臭素化剤は回避されるべきである。
【0044】
臭素化反応は、出発化合物(又はエポキシ化された出発化合物)を、臭素化剤と、出発材料中の所望の比率の非共役炭素−炭素二重結合を臭素化するために充分な条件下で、接触させることによって実施される。出発化合物中の非共役炭素−炭素二重結合を臭素化する方に選択的である温和な臭素化方法が好ましい。この臭素化プロセスは、出発材料中に存在するかも知れないような芳香族環を著しく臭素化してはならない。更に、この臭素化プロセスは、顕著な量の臭素を、出発化合物中に存在するかも知れない第三級又はアリル性炭素原子の上に導入しないのが好ましい。
【0045】
臭素化剤の2種の特に適切なクラスは、(1)元素状臭素及び(2)第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドである。これらの臭素化剤のいずれも、臭素化がエポキシ化の前に実施されるときに使用することができる。しかしながら、臭素化を、エポキシ化の後で(又はエポキシ化された出発材料上で)実施する場合、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドが強く好ましい。元素状臭素は、オキシラン基と反応して、望ましくない対応する臭化水素酸塩を形成し得る。
【0046】
不飽和出発化合物を元素状臭素によって臭素化する適切な方法は、国際特許出願公開第WO2008/021418号明細書に記載されている。また国際特許出願公開第WO2008/021418号明細書に記載されているように、脂肪族アルコールがこの臭素化の間に存在していてよい。残留する臭素及び他の副生物は、抽出、洗浄又は他の有用な方法により、臭素化生成物から除去することができる。前記のように、臭素化剤として元素状臭素を使用する臭素化は、出発化合物がエポキシ化の前に臭素化される場合に有用である。出発化合物がエポキシ化されると、元素状臭素は、オキシラン環に容易に付加して、臭化水素酸塩を形成し得るので、この方法は好ましくない。
【0047】
不飽和出発材料を、第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドによって臭素化する適切な方法は、例えば国際特許出願公開第WO2008/021418号明細書及び2008年8月22日に出願された米国仮特許出願第61/090,054号明細書中に記載されている。ピリジニウムトリブロミド、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド及びテトラアルキルアンモニウムトリブロミドが、適切な第四級アンモニウムトリブロミドである。具体的な例には、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミド等が含まれる。適切な第四級ホスホニウムトリブロミドは、式R
4P
+(式中、それぞれのRは炭化水素基である)によって表すことができる、第四級ホスホニウム基を含有する。第四級ホスホニウムトリブロミドは、テトラアルキルホスホニウムトリブロミド(この場合、R基のそれぞれはアルキルである)であってよい。4個のR基は全て同じものであってよい。その代わりに、リン原子に結合された2種、3種又は4種の異なったR基が存在していてもよい。R基は、それぞれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキルである。R基は更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。特定の第四級ホスホニウムトリブロミドの例には、テトラメチルホスホニウムトリブロミド、テトラエチルホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−プロピル)ホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムトリブロミド、テトラヘキシルホスホニウムトリブロミド、テトラオクチルホスホニウムトリブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムトリブロミド等又はこれらの混合物が含まれる。
【0048】
第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド臭素化剤は、対応する第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩を、元素状臭素と混合することによって製造することができる。このモノブロミド塩は、通常、水溶性であり、それ故、トリブロミドを製造する便利な方法は、元素状臭素を、モノブロミド塩の水溶液に添加することである。この反応は、ほぼ室温でよく進行するが、所望により、より高い温度又はより低い温度を使用することができる。このトリブロミドは水相から沈殿する傾向があり、それ故、任意の便利な固液分離方法によって、液相から回収することができる。第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドは、多くの有機溶媒中に可溶性であるので、これは、有機溶媒による抽出によって水相から分離して、有機溶媒中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液を形成することができる。トリブロミドを、所望によりこのような溶媒中に溶解させて、反応混合物の中へのトリブロミドの添加を容易にすることができる。
【0049】
一般的に、前記臭素化を実施するために、温和な条件のみが必要である。臭素化温度は、−20〜100℃の範囲であってよく、好ましくは0〜85℃である。100℃よりも高い温度を使用することができるが、必要ではなく、選択率の低下及び/又は副生物に於ける増加に至り得る。臭素化剤としてこのようなトリブロミドが選択されたとき、この反応が進行するとき、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド臭素化剤は、対応する第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩に転化されるようになる。
【0050】
この反応の時間は臭素化の所望量を達成するために充分なものである。この臭素化は少なくとも35%の臭素含量が達成されるまで続けられる。臭素化をエポキシ化の前に実施するとき、幾らかがエポキシ化のために残るように、全ての非共役炭素−炭素二重結合の完全な臭素化を防止するための注意が払われる。典型的には、臭素化は、出発材料上の非共役炭素−炭素二重結合の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%で起こる。非共役炭素−炭素二重結合の90%以下又は95%以下を臭素化できる。臭素化の程度は、しばしば、プロトンNMR方法を使用して決定することができる。
【0051】
この臭素化は、特に出発化合物が、臭素化反応の温度で固体であるか又はこれらの条件下で粘稠な液体であるとき、溶媒中で実施することができる。適切な溶媒には、エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ハロゲン化アルカン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジブロモメタン、ジクロロメタン及び1,2−ジクロロエタン;炭化水素、例えばシクロヘキサン及びトルエン並びにハロゲン化芳香族化合物、例えばブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンが含まれる。溶媒の好ましい種類は、臭素化条件下で液体であるもの及び臭素化剤又は出発化合物と望ましくなく反応しないものである。酸素含有溶媒は、脂肪族炭素−炭素二重結合に亘る付加反応に関与して、生成物の熱的特性の低下に至り得るので、好ましい溶媒は、好ましくは非プロトン性であり、酸素化されない。従って、ハロゲン化された及び炭化水素溶媒が酸素含有溶媒を超えて好ましい。温和な条件が使用されるとき、ハロゲン交換反応は顕著な程度まで起こらないことが見出され、この理由のために、塩素化溶媒が、本発明において使用するために非常に適している。
【0052】
臭素化反応に続いて、臭素化された材料を、使用した任意の溶媒から回収し、所望するとき又は特定の応用のために必要なとき、単離した材料を精製して、残留する臭素、臭素化剤、溶媒及び副生物を除去することができる。臭化物塩は、この材料を、シリカゲル又はイオン交換樹脂床に通過させることによって、除去することができる。臭素化材料を、塩基及び/又は還元剤、例えばアルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ金属亜硫酸水素塩水溶液で洗浄して、存在するかも知れない未反応の臭素化剤を中和又はクエンチすることができる。これは、残留する臭素又は臭素化合物に起因する、臭素化材料中に存在し得る任意の橙色を有効に除去又は排除する。
【0053】
臭素化化合物を、その熱安定性を更に増加させるために、アルカリ金属塩基によって処理することができる。このアルカリ金属塩基は、例えば水酸化物又は炭酸塩であってよい。このアルカリ金属塩基は、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムであってよい。リチウム、ナトリウム及びカリウムが好ましい。アルコキシドイオンは1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有することができ、メトキシド及びエトキシドが特に好ましい。特に好ましいアルカリ金属アルコキシドはリチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムエトキシドである。アルカリ金属塩基処理の間の温度は、例えば−10℃〜100℃であり、好ましくは約10℃〜60℃である。アルカリ金属塩基は、有効であるために、短い時間、典型的に数分間のオーダー又はより短い間、臭素化材料と接触状態にすることのみを必要とする。
【0054】
エポキシ化は、出発有機化合物又は臭素化した有機化合物を、非共役炭素−炭素二重結合を酸化してオキシランを形成する酸化剤と接触させることによって実施することができる。適切な酸化剤には、種々の過酸化物、過酸及び過エステル、例えば過酸化水素、過酢酸、酢酸ナトリウム/過酢酸混合物及びメタ−クロロ過安息香酸が含まれる。所望の数の炭素−炭素二重結合をエポキシ化するために必要な量を超える、過剰の酸化剤を使用することができる。エポキシ化反応は、種々の金属触媒、例えば米国特許第5,274,140号明細書及びJ.Org.Chem.1988年、第53巻、第1553-1557頁に記載されているような、Venturelloの(タングステン)触媒を使用して、触媒作用させることができる。Venturelloの触媒は、酸化剤としての過酸化水素と共に使用するために、特に有用である。エポキシ化反応は、好ましくは温和な温度条件下で実施され、−20℃〜100℃が好ましい範囲であるが、この反応は、所望により、より高い又はより低い温度で実施することができる。使用される特定の温度は、使用される特定の酸化剤及び使用される場合触媒に幾らか依存するであろう。エポキシ化反応は、臭素化及びエポキシ化有機化合物が、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5重量%のオキシラン酸素を含有するまで、実施する。この反応は、臭素化及びエポキシ化有機化合物が、5重量%以下のオキシラン酸素を含有するまで、続けることができる。
【0055】
エポキシ化反応が完結した後、エポキシ化された材料を、温和な塩基又は還元剤、例えば重炭酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム溶液で処理して、反応の終わりで残留しているかも知れない任意の酸化剤を中和することが好ましい。これは、エポキシ化を臭素化の前に実施するとき、非常に好ましい。そうでないと、顕著な量の臭素化がアリル性又は第三級炭素原子で起こり得、これは臭素化及びエポキシ化有機化合物の熱安定性を低下させる。
【0056】
臭素化反応及びエポキシ化反応は、一緒に、好ましくは出発有機化合物上の非共役炭素−炭素二重結合の少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、なお更に好ましくは少なくとも98%を消費する。生成物中の残留する二重結合は、特に、生成物を、押出物品(フォーム、フィルム、繊維、成形品等)の製造のために塊状ポリマーとブレンドするとき、望ましくない架橋反応に至り得る。この架橋は、ゲル形成及び加工装置の汚染に至り得る。ゲルの存在は、損なわれた物理的特性、損傷された表面若しくは光学的特性又は増加した色形成に至り得る。ゲルは、特にブレンドが形成されるとき、ブレンドを溶融加工するための能力に影響を与え得る。
【0057】
本発明の臭素化及びエポキシ化有機化合物は、種々の他のポリマー(便宜上、これを、本明細書において「塊状(bulk)」ポリマーとして参照する)用の難燃剤として有用である。最も関心のある塊状ポリマーは溶融加工操作によって有用な物品に加工される熱可塑性材料である。従って、塊状ポリマーは、250℃又はそれ以下の温度で溶融加工することができるどのような熱可塑性ポリマーであってもよい。塊状ポリマー並びに臭素化及びエポキシ化有機化合物は、臭素化及びエポキシ化有機化合物が溶融した塊状ポリマーと相溶性であるように、一緒に選択すべきである。臭素化及びエポキシ化有機化合物は、それが、存在する相対的比率で塊状ポリマーと混和性である場合又はそれが、塊状ポリマー中に分散されて、微細に分散されたドメインを形成することができる場合、本発明の目的のために、塊状ポリマーと相溶性であるべきと考えられる。これらのドメインは、好ましくは大部分が25μmよりも小さい、更に好ましくは10μmよりも小さいサイズであるが、幾らか大きいドメインが存在してもよい。溶融加工された製品中での、臭素化及びエポキシ化有機化合物の大部分が肉眼で見える(スケールで約100μm又はそれより大きい)ドメインの形成は、相溶性の欠落を示す。
【0058】
塊状ポリマーとして関心のある熱可塑性ポリマーには、ビニル芳香族ポリマー(ビニル芳香族ホモポリマー、ビニル芳香族コポリマー又はビニル芳香族ホモポリマー及び/若しくはビニル芳香族コポリマーの1種又はそれ以上のブレンドを含む)並びにその中に、臭素化及びエポキシ化有機化合物が可溶性であるか又は分散して、優勢的にサイズが25μmよりも小さい、好ましくは10μmよりも小さいドメインを形成することができる他の有機ポリマーが含まれる。スチレンのポリマー及びコポリマーが好ましい。ポリスチレンホモポリマー並びにスチレンとエチレン、プロピレン、アクリル酸、無水マレイン酸及び/又はアクリロニトリルとのコポリマーが最も好ましい。ポリスチレンホモポリマーが最も好ましい。前記のポリマーの任意の2種若しくはそれ以上のブレンド又は前記のポリマーの1種又はそれ以上と他の樹脂とのブレンドも、塊状ポリマーとして使用することができる。
【0059】
前記塊状ポリマーは、溶融加工を可能にするために充分に高い分子量を有していなくてはならない。一般的に、少なくとも10,000の数平均分子量が適切である。
【0060】
臭素化及びエポキシ化有機化合物は、塊状ポリマーとブレンドされて、有機ポリマー組成物を形成する。組成物の全重量基準で、0.1重量%〜25重量%の範囲内の臭素含有量を有する有機ポリマー組成物を提供するために充分な量の臭素化及びエポキシ化有機化合物が、典型的に存在する。(FR添加剤によって与えられた)有機ポリマー組成物中の好ましい臭素濃度は、0.25〜10重量%であり、更に好ましい量は0.5〜5重量%であり、なお更に好ましい量は1〜3重量%である。所定の臭素含有量をブレンドに与えるために必要である臭素化及びエポキシ化有機化合物の量は、勿論、少なくとも、その臭素含有量での部に依存する。しかしながら、一般的に、塊状樹脂100重量部当たりの約0.15重量部(pphr)のように少量の臭素化及びエポキシ化有機化合物を与えることができる。少なくとも0.4pphr又は少なくとも0.8pphrの臭素化及びエポキシ化有機化合物を与えることができる。100pphr以下の臭素化及びエポキシ化有機化合物がブレンド中に存在してよいが、更に好ましい最大量は50pphrであり、更に好ましい最大量は20pphrであり、なお更に好ましい最大量は10pphr又は7.5pphrですらある。
【0061】
幾つかの態様において、臭素化及びエポキシ化有機化合物と塊状ポリマーとのブレンドは、また、少なくとも1種の亜リン酸アルキル化合物を含有している。適切な亜リン酸アルキルは、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastic Additive Handbook)」、H.Zweifel編、第5版、第441頁(2001年)中に記載されている。この亜リン酸アルキル化合物は、少なくとも1個の
【0063】
(式中、それぞれのR基は、非置換又は置換のアルキル基である)
基を含有している。上記の式において、2個のR基は、一緒に、置換されていてよく、脂肪族炭素によって隣接する−O−原子に結合して、−O−P−O−結合を含む環構造を形成する二価の基を形成することができる。R基は、鎖状又は分岐であってよい。−O−原子に隣接し、結合しているR基の炭素原子は、好ましくはメチレン(−CH
2−)炭素である。R基上の置換基は、例えばアリール、シクロアルキル、
【0065】
又は不活性置換基であってよい。前記構造中のR
2は、他のR基又はアリール若しくは置換アリール基であってよい。
【0066】
R
2基の好ましい種類は、少なくとも1個の、第三級炭素原子を含有する分岐したアルキル基によって置換されているアリール基である。第三級炭素原子を含有する分岐したアルキル基は、更に、1個又はそれ以上のアリール基によって置換されていてよい。R
2基の他の好ましい種類は、分岐又は鎖状であってよい、炭素数2〜30、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基である。適切なR
2基の例には、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、2,4−ジ(t−ブチル)フェニル、
【0068】
が含まれる。好ましい亜リン酸アルキルは、ペンタエリスリトールジホスファイト化合物である。これらの材料は、構造:
【0070】
を有する。上記の式中、それぞれのR
3は、非置換若しくは置換の鎖状若しくは分岐したアルキル基、アリール基又は置換されたアリール基である。
【0071】
好ましい亜リン酸アルキルの具体例には、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト及びジ(2,4−ジ(t−ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが含まれる。これらは、Doverphos(登録商標)S−9228(Dover Chemical Corporation)、Doverphos(登録商標)S−682(Dover Chemical Corporation)及びIrgafos(登録商標)126(Ciba Specialty Chemicals)として市販されている。
【0072】
亜リン酸アルキル化合物は、好ましくは臭素化及びエポキシ化有機ポリマー中に、臭素化及びエポキシ化有機化合物の100重量部当たり、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、更に好ましくは少なくとも40部の亜リン酸アルキル化合物の範囲まで可溶性である。
【0073】
他の安定剤及び/又は酸スカベンジャーが、亜リン酸アルキル及びエポキシ化合物に加えて、存在していてよい。このような材料の例には、例えば無機材料、例えばピロリン酸四ナトリウム、ハイドロカルマイト(hydrocalumite)、ハイドロタルサイト(hydrotalcite)及びハイドロタルサイト様クレー;1000又はそれより低い分子量を有するポリヒドロキシル化合物、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロール、キシリトール、ソルビトール若しくはマンニトール又はこれらの部分エステル並びにアリルオフィリック(allylophilic)及び/又はジエンオフィリック(dieneophilic)であってよい有機スズ安定剤が含まれる。有機スズ化合物には、例えばアルキルスズチオグリコレート、アルキルスズメルカプトプロピオネート、アルキルスズメルカプチド、アルキルスズマレエート及びアルキルスズ(アルキルマレエート)(ここで、アルキルは、メチル、ブチル及びオクチルから選択される)が含まれる。適切な有機スズ化合物は、Ferro Corporation(即ち、Thermchek(登録商標)832、Thermchek(登録商標)835)及びBaerlocher GmbH(即ち、Baerostab(登録商標)OM36、Baerostab(登録商標)M25、Baerostab(登録商標)MSO、Baerostab(登録商標)M63、Baerostab(登録商標)OM710S)から市販されている。
【0074】
凝集体中で、約0.5pphr以下のこのような無機材料、ポリヒドロキシル化合物及び有機スズ安定剤を使用することが、一般的に好ましい。それは、これらの材料が、ポリマーを可塑化し、発泡材料の場合には、大きすぎる量で使用すると、気泡構造を妨げ得る傾向があるためである。特に、有機スズ安定剤の量は、好ましくは0.5pphr以下であり、存在する場合には、好ましくは0.1〜0.4pphrのレベルで存在する。幾つかの態様において、これらの材料は、組成物中に存在しない。
【0075】
他の任意の成分が、特定の溶融加工操作のために必要なとき又は所望されるとき存在していてよい。
【0076】
本発明の有機ポリマー組成物は、典型的には、有用な物品を形成するために溶融加工される。本発明の目的のために、溶融加工には、塊状ポリマーと臭素化及びエポキシ化有機化合物との溶融物を作ること、この溶融物をある形状に形成すること、次いでこの溶融物を冷却して、それを固化させ、物品を形成することが含まれる。種々の溶融加工操作、例えば押出、射出成形、圧縮成形、流延等が、本発明の範囲内である。最も関心のある溶融加工操作は押出発泡である。それぞれの場合に、溶融加工操作は、任意の便利な方式で実施することができる。臭素化及びエポキシ化有機化合物の存在を別にして、溶融加工操作は、完全に従来通りである方式で実施することができる。
【0077】
溶融加工操作の間に存在してよい他の添加剤には、例えば滑剤、例えばステアリン酸バリウム又はステアリン酸亜鉛、UV安定剤、顔料、核生成剤、可塑剤、FR相乗剤、IRブロッカー等が含まれる。
【0078】
押出発泡は、塊状ポリマー、臭素化及びエポキシ化有機化合物、発泡剤及び有用であるような他の添加剤を含有する加圧された溶融物を形成することによって実施される。原材料が混合され、ポリマーが溶融したときに、得られるゲルが、開口を通して、より低い圧力のゾーン中に押し進められ、そこで、発泡剤が膨張し、ポリマーが固化して、フォームを形成する。押出フォームは、シート(1/2インチ(12mm)以下の厚さを有する)、厚板若しくはボードストック(boardstock)(1/2インチ(12mm)〜12インチ(30cm)以上の厚さを有する)又は他の便利な形状の形をとることができる。このフォームは、所望により、押出されて、融合ストランドフォームを形成することができる。種々の原材料を、個別に又は種々の組合せで、加工装置の中に供給することができる。プレミックスは、塊状ポリマーの粒子と臭素化及びエポキシ化有機化合物の粒子とのドライブレンドの形であってよい。その代わりに又はそれに加えて、塊状ポリマー並びに臭素化及びエポキシ化有機化合物を、溶融加工操作の前に溶融ブレンドし、溶融混合物又はブレンドの粒子を、溶融加工操作の中に導入することができる。発泡剤を、ポリマー材料が溶融した後、別の流れとして導入することが、一般的に好ましい。
【0079】
押出発泡プロセスにおける発泡剤は、発熱(化学的)型又は吸熱(物理的)型であってよい。物理的発泡剤、例えば二酸化炭素、種々の炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、水、アルコール、エーテル及びヒドロクロロフルオロカーボンが、特に適切である。
【0080】
本発明のFR剤は、前記の5%WLTによって示されるように、正味化合物として良好な熱安定性を示す。熱安定性の幾らかより厳格な試験は、230℃開始時間試験であり、この試験は、塊状ポリマー中のFR剤のブレンドが、測定可能な重量損失が見られる前に、230℃の温度に耐えることができる時間の長さを評価する。FR剤を、ポリスチレンホモポリマーと、ブレンドが1.8%の臭素を含有するような比率でブレンドする。サンプルを、熱重量分析装置の上で230℃に加熱し、この温度で、サンプルが測定可能な重量損失を示すまで保持する。測定可能な重量損失が見られる前に経過する時間の長さが、230℃開始時間である。230℃開始時間は、少なくとも7分間でなくてはならず、好ましくは少なくとも9分間である。
【0081】
この溶融加工操作において製造された物品は、他の溶融加工操作において製造された同様の物品と同じ方式で使用することができる。物品がフォームであるとき、このフォームは、好ましくは80kg/m
3以下、更に好ましくは64kg/m
3以下、なお更に好ましくは48kg/m
3以下の密度を有する。断熱材として使用されるフォームは、好ましくは24〜48kg/m
3の密度を有するボードストックの形にある。ビレットフォームは好ましくは24〜64kg/m
3、更に好ましくは28〜48kg/m
3の密度を有する。このフォームは、好ましくはASTM D3576に従って、0.1〜4.0mm、特に0.1〜0.8mmの範囲内の平均気泡サイズを有する。このフォームは圧倒的に独立気泡であってよく、即ちASTM D6226−05に従って、30%又はそれ以下、好ましくは10%又はそれ以下、なお更に好ましくは5%又はそれ以下の連続気泡を含有してよい。更に多い連続気泡のフォームも本発明に従って製造することができる。
【0082】
本発明に従って製造されたボードストックフォームは、建築物フォーム断熱材として、屋根又は壁アセンブリの一部として有用である。本発明に従って製造された他のフォームは装飾ビレット、パイプ断熱材として及び成形コンクリート基礎応用において使用することができる。
【実施例】
【0083】
下記の実施例は、本発明を例示するために示されるが、本発明の範囲を限定するために示されない。全ての部及び%は、他の方法で示されない限り重量基準である。
【0084】
実施例1
46%の重合されたスチレン及び54%の重合されたブタジエンを含有するスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマーを、臭素化し、次いでエポキシ化する。出発トリブロックコポリマー中のブタジエン単位の約84%は1,2−ブタジエン単位であり、残りは主として1,4−ブタジエン単位である。このコポリマー5.8gを、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。7.2gの臭素及び11.2gのテトラエチルアンモニウムモノブロミド塩を、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させることによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの別の溶液を製造する。これらの溶液を、室温で約1時間、一緒に混合し、次いで、約2日間静置したままにする。反応が進行するにつれて、テトラエチルアンモニウムモノブロミドが沈殿する。反応の終わりに、沈殿を濾別し、濾液を、追加の40mLの1,2−ジクロロエタンで洗浄する。次いで、有機層を、60グラムの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。400mLのイソプロパノール中への投入によって、ポリマーを沈殿させる。得られる白色ポリマーを、真空濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。1,4−ブタジエン単位の本質的に全部を含有する、ブタジエン単位の80%が臭素化される。この材料は245℃の5%WLTを有する。
【0085】
10gの臭素化されたトリブロックコポリマーを、100mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。2.1gの70%メタ−クロロ過安息香酸を添加する。得られる溶液を、室温で5日間攪拌する。次いで、この溶液を分液漏斗に移し、飽和重炭酸ナトリウム溶液の30mLアリコートで2回、そして1%重炭酸ナトリウム溶液で1回洗浄する。次いで、300mLのイソプロパノールの中への投入によって、ポリマーを沈殿させ、濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。プロトンNMRにより、出発ブタジエン単位の73%が臭素化され、22%がエポキシ化され、そして約5%が残る。エポキシ化の本質的に全部は末端型のものである。この材料の5%WLTは252℃であり、これはエポキシ化反応の前よりも著しく高い。臭素の約0.8%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約46重量%の臭素を含有している。
【0086】
実施例2
出発ブタジエン単位の80%が臭素化され、18%がエポキシ化され、約2%が未反応のままであるように、反応時間を僅かに変更して、実施例1を繰り返す。エポキシ化は、本質的に全部、末端型のものである。臭素化及びエポキシ化材料の5%WLTは254℃である。臭素の約1.8%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約54重量%の臭素を含有している。
【0087】
実施例3
出発ブタジエン単位の88%が臭素化され、7%がエポキシ化され、約5%が未反応のままであるように、反応時間を僅かに変更して、実施例1を繰り返す。エポキシ化は、本質的に全部末端型のものである。臭素化及びエポキシ化材料の5%WLTは255℃である。臭素の約0.3%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約57重量%の臭素を含有している。
【0088】
実施例4
実施例1に記載したトリブロックコポリマー5gを、50mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。この溶液を0℃まで冷却し、2.5gの70%メタ−クロロ過安息香酸を添加する。この混合物を0℃で2時間攪拌し、安息香酸が生成したときに、これは濁ってくる。この溶液を、30mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、そして30mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で、1回洗浄する。300mLのイソプロパノール中への投入によって、エポキシ化されたポリマーを沈殿させ、真空濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。出発ブタジエン単位の21%がエポキシ化される。このエポキシ化は、主として、1,4−ブタジエン単位で起こる。
【0089】
エポキシ化されたトリブロックコポリマー4.6gを、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。5.6gの臭素及び8.85gのテトラエチルアンモニウムモノブロミド塩を、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させることによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの別の溶液を製造する。これらの溶液を、室温で約1時間、一緒に混合し、次いで、約2日間静置したままにする。反応が進行するにつれて、テトラエチルアンモニウムモノブロミドが沈殿する。反応の終わりに、沈殿を濾別し、濾液を追加の40mLの1,2−ジクロロエタンで洗浄する。次いで、有機層を、60gの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。400mLのイソプロパノール中への投入によって、ポリマーを沈殿させる。得られる白色ポリマーを、真空濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。
【0090】
プロトンNMRにより、出発ブタジエン単位の77%が臭素化され、21%がエポキシ化され、そして約2%が残る。エポキシ化の本質的に全部は内部型のものである。この材料の5%WLTは245℃である。臭素の約0.1%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約53重量%の臭素を含有している。
【0091】
実施例5
出発ブタジエン単位の69%が臭素化され、29%がエポキシ化され、約2%が未反応のままであるように、反応時間を僅かに変更して、実施例4を繰り返す。エポキシ化は、本質的に全部、内部型のものである。臭素化及びエポキシ化材料の5%WLTは241℃である。臭素の約0.1%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約51重量%の臭素を含有している。
【0092】
実施例6
出発ブタジエン単位の83%が臭素化され、13%がエポキシ化され、約4%が未反応のままであるように、反応時間を僅かに変更して、実施例4を繰り返す。エポキシ化は、本質的に全部内部型のものである。臭素化及びエポキシ化材料の5%WLTは247℃である。臭素の約0.1%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約57重量%の臭素を含有している。
【0093】
実施例1〜6の評価
実施例1〜6の臭素化及びエポキシ化トリブロックコポリマーを、別々に、ポリスチレンの中にブレンドする。ポリスチレン(Dow ChemicalグレードPS168)を、50g混合ボウル及びローラーブレードミキサーを取り付けたHaaks Polylab Rheomix600トルクレオメーターのボウルに添加する。このボウルを180℃に予熱する。ポリスチレンを、低いRPM及び窒素パッド下で添加する。ポリスチレンを、40RPM及び180℃で2分間混合した後、臭素化及びエポキシ化トリブロックコポリマーを添加する。ポリスチレンとトリブロックコポリマーとの比率は、それらの一緒にした重量が50gであり、ブレンドが1.8重量%の臭素を含有するように選択される。混合を、窒素下で180℃で、更に8分間続ける。実施例1〜6を使用して製造されたブレンドを、それぞれ、ブレンドB1〜B6として同定する。
【0094】
それぞれのブレンドの一部を、別々に、熱重量分析装置の上で、230℃まで加熱し、この温度で保持する。サンプルが、測定可能な重量損失を示す時間を、ブレンドの熱安定性の指標として決定する。これらの結果を、表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1中のデータ(ブレンドB1〜B3について)は、エポキシ化が末端型のものであるとき、230℃開始時間が、ブレンド中の一定の臭素レベルで、エポキシ化の量と相互に関連していることを示している。ブレンドB4〜B6についての開始時間は、全て、より低く、エポキシ化のレベルに無関係である。これは、末端エポキシ化ではなくて、内部エポキシ化の存在に起因する。内部エポキシ化は、ブレンドB1〜B3中に存在する末端エポキシ化よりも低く熱的に安定であると信じられる。内部エポキシ化の幾らかは、ブレンドB4〜B6を製造するために使用されたブレンド条件下で反応して、より低い230℃開始時間になると信じられる。このデータは内部エポキシ化よりも末端エポキシ化の方が好ましいことを支持している。
【0097】
実施例7
実施例1に記載したトリブロックコポリマー10gを、50mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。この溶液を0℃まで冷却し、5.2gの70%メタ−クロロ過安息香酸を添加する。この混合物を0℃で2時間攪拌し、安息香酸が生成したとき、これは濁ってくる。この溶液を、30mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、そして30mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で1回洗浄する。この方法で、ブタジエン単位の約13%がエポキシ化される。このエポキシ化は、主として、1,4−ブタジエン単位で起こる。
【0098】
6.6gの臭素及び15.4gのテトラエチルアンモニウムモノブロミド塩を、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させることによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの別の溶液を製造する。これらの溶液を、室温で約1時間、一緒に混合し、次いで、約2日間静置したままにする。反応が進行するにつれて、テトラエチルアンモニウムモノブロミドが沈殿する。反応の終わりに、沈殿を濾別し、濾液を、追加の40mLの1,2−ジクロロエタンで洗浄する。次いで、有機層を、60グラムの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。500mLのイソプロパノール中への投入によって、ポリマーを沈殿させる。得られる白色ポリマーを、真空濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。プロトンNMRにより、出発ブタジエン単位の82%が臭素化され、13%がエポキシ化され、そして約5%が残る。エポキシ化の本質的に全部は、内部型のものである。この材料の5%WLTは252℃である。臭素の約0.1%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このポリマーは約56重量%の臭素を含有している。
【0099】
実施例8
実施例1に記載したトリブロックコポリマー10gを、50mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。この溶液を0℃まで冷却し、5.2gの70%メタ−クロロ過安息香酸を添加する。この混合物を0℃で2時間攪拌し、安息香酸が生成したとき、これは濁ってくる。この溶液を、30mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、そして30mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で1回洗浄する。この方法で、ブタジエン単位の約16%がエポキシ化される。このエポキシ化は、主として、1,4−ブタジエン単位で起こる。1.3gの臭素及び2.1gのテトラエチルアンモニウムモノブロミド塩を、5mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させることによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの別の溶液を製造する。これらの溶液を、室温で約1時間、一緒に混合し、次いで、約2日間静置したままにする。反応が進行するにつれて、テトラエチルアンモニウムモノブロミドが沈殿する。反応の終わりに、沈殿を濾別し、濾液を、追加の5mLの1,2−ジクロロエタンで洗浄する。次いで、有機層を、20gの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び20gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。75mLのイソプロパノール中への投入によって、ポリマーを沈殿させる。得られる白色ポリマーを、真空濾過によって集め、60℃の真空オーブン内で一夜乾燥させる。プロトンNMRにより、出発ブタジエン単位の66%が臭素化され、16%がエポキシ化され、そして約14%が残る。エポキシ化の本質的に全部は、内部型のものである。この材料の5%WLTは僅かに239℃である。臭素の約4%はアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。このサンプルの、より劣った5%WLTは、アリル的に及び/又は第三級的に結合された臭素原子の、より高い%に起因している。この実験は、実施例7と一緒に、臭素化がエポキシ化に続くとき、塩基及び/又は還元剤による処理が、臭素化に先行すべきであることを示唆している。
【0100】
比較サンプルA
実施例1に記載したトリブロック出発材料2gを、60mLのヘキサン中に溶解させる。この溶液を0℃まで冷却し、0.8gの70%メタ−クロロ過安息香酸を添加する。この溶液を0℃で3時間攪拌する。10mLのシクロヘキサン及び2mLのイソプロパノールを添加し、この混合物を窒素下で68℃まで加熱する。4mLのシクロヘキサン中の2.56gの臭素の溶液を、10分間かけて滴下により添加する。次いで、この反応混合物を冷却し、30gの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び30gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。次いで、200mLのメタノール中に沈殿させることによって、ポリマーを単離し、濾過し、60℃の真空オーブン内で一夜、乾燥させる。ブタジエン単位の84%が臭素化されるが、何もエポキシ化されない。この結果は、元素状臭素によるオキシラン環の臭素化に起因する。この生成物は、また、大きい比率のアリル性及び第三級臭素化を含有している。5%重量損失温度は243℃である。
【0101】
実施例9
メタ−クロロ過安息香酸(70重量%、5.6ミリモル、1.4g)を、30mLのジクロロエタン中の、5gのスクロース/大豆脂肪酸エステル(P&G ChemicalsからのSefose(登録商標)1618UC)の0℃の溶液に添加する。この溶液を、0℃で3時間攪拌する(その時間内に、この溶液は、安息香酸の生成と共に濁ってくる)。次いで、この溶液を分離漏斗に移し、50mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、50mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で1回、そして50mLの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄する。溶解されたエポキシ化材料を、300mLのガラス瓶に移す。別のガラス瓶内で、4.26gのテトラエチルアンモニウムブロミドを、10mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させた2.7gの臭素に添加することによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドを製造する。この臭素混合物を、少なくとも30分間放置し、次いで、エポキシ化材料の溶液に添加する。得られる混合物を1時間振盪し、次いで、環境温度で19時間放置する。テトラエチルアンモニウムモノブロミド塩が、臭素化反応が進行するにつれて沈殿する。この沈殿を濾過し、追加の40mLの1,2−ジクロロエタンを使用して、濾液を洗浄する。有機層を集め、60gの10%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。有機相を、ロータリーエバポレーターで分離して、濁った無色の油を得る。この油を、真空下で、ロータリーエバポレーターで3時間60℃の水浴中で回転させて、残留する溶媒を除去する。プロトンNMRにより、出発材料中の炭素−炭素二重結合の25%がエポキシ化され、75%が臭素化された。NMRにより測定可能な残留するオレフィンは存在しない。この生成物の5%WLTは、261℃である。この生成物は35.3重量%の臭素を含有している。
【0102】
実施例10
メタ−クロロ過安息香酸(mCPBA、70重量%、7.2ミリモル、1.8g)を、50mLのジクロロエタン中の、5gのポリブタジエンホモポリマーの0℃の溶液に添加する。この溶液を、0℃で3時間攪拌する(この間に、この溶液は安息香酸の生成と共に濁ってくる)。次いで、この溶液を分離漏斗に移し、50mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液で2回、50mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で1回、そして飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。臭素化ポリマー溶液を300mLのガラス瓶に移す。別のガラス瓶に、19.81gのテトラエチルアンモニウムブロミドを、30mLの1,2−ジクロロエタン中の12.55gの臭素の溶液に添加することによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの溶液を製造する。この臭素混合物を、30分間放置し、次いで臭素化されたゴム溶液に添加する。得られる混合物を1時間振盪し、次いで室温で2日間放置する。テトラエチルアンモニウムモノブロミド塩が、臭素化反応が進行するにつれて沈殿する。この沈殿を濾過し、追加の40mLの1,2−ジクロロエタンを使用して、濾液を洗浄する。有機層を集め、60gの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。500mLのイソプロパノールからの沈殿によって、ポリマーを単離する。白色ポリマーを真空濾過によって集め、真空オーブン内で60℃で一夜乾燥させる。プロトンNMRにより、出発材料中の炭素−炭素二重結合の7%がエポキシ化され、88%が臭素化された。エポキシ化反応を最初に実施したので、エポキシド基は主として内部型である。出発ポリマー中のブタジエン単位の5%は残っている。この生成物の5%WLTは240℃である。この生成物は72.7重量%の臭素を含有している。臭素の0.1%未満がアリル性及び第三級炭素原子に結合されている。
【0103】
実施例11
4.8gの2000分子量のブタジエンホモポリマーを、300mLのガラス瓶内で、30mLの1,2−ジクロロエタン中に溶解させる。別のガラス瓶に、19.01gのテトラエチルアンモニウムブロミドを、30mLの1,2−ジクロロエタン中の12.05gの臭素の溶液に添加することによって、テトラエチルアンモニウムトリブロミドの溶液を製造する。この臭素混合物を、30分間放置し、次いで、このゴム溶液に添加する。得られる混合物を1時間振盪し、次いで、室温で2日間放置する。テトラエチルアンモニウムモノブロミド塩が、臭素化反応が進行するにつれて沈殿する。この沈殿を濾過し、追加の40mLの1,2−ジクロロエタンを使用して、濾液を洗浄する。有機層を集め、60gの1%重亜硫酸ナトリウム水溶液及び60gの0.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。
【0104】
この臭素化ポリマー溶液を、200mLの丸底フラスコに入れ、メタ−クロロ過安息香酸(70重量%、13.3ミリモル、3.3g)を添加する。この溶液を、室温で2日間攪拌する(その間に、この溶液は、安息香酸の生成と共に濁ってくる)。次いで、この溶液を分離漏斗に移し、80mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液、50mLの飽和塩化ナトリウム溶液及び50mLの1%重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄する。500mLのイソプロパノールからの沈殿によって、臭素化及びエポキシ化ポリマーを単離する。このポリマーを真空濾過によって集め、真空オーブン内で60℃で一夜乾燥させる。プロトンNMRにより、出発材料中の炭素−炭素二重結合の16%がエポキシ化され、78%が臭素化された。エポキシ化反応を最後に実施したので、エポキシド基は主として末端型である。出発ポリマー中のブタジエン単位の6%は残っている。この生成物の5%WLTは250℃である。この生成物は69.1重量%の臭素を含有している。臭素の約0.1%がアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。
【0105】
以下に、本発明及びその関連態様を記載する。
態様1.少なくとも1500の分子量、少なくとも35重量%の臭素含量及び1分子当たり少なくとも1個のオキシラン基を有し、そして少なくとも180℃の5重量%損失温度を有する臭素化及びエポキシ化有機化合物。
態様2.臭素化及びエポキシ化されたブタジエンのホモポリマー又はコポリマーである態様1に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物。
態様3.臭素化及びエポキシ化された、ポリオールと1種又はそれ以上の脂肪酸とのエステルである態様1に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物。
態様4.オキシラン基(単数又は複数)の少なくとも1個が末端である態様1又は2に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物。
態様5.態様1に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物の製造プロセスであって、(a)少なくとも700の分子量及び複数の非共役炭素−炭素二重結合を有する出発化合物を、該非共役炭素−炭素二重結合の少なくとも1個であるが全部よりも少ない二重結合が臭素化されかつ臭素化された出発化合物が少なくとも35重量%の臭素を含むように、臭素化し、そして次に(b)少なくとも1個の残留する非共役炭素−炭素二重結合をエポキシ化することを含んでなるプロセス。
態様6.前記出発化合物がブタジエンのホモポリマー又はコポリマーである態様5に記載のプロセス。
態様7.前記出発化合物がポリオールと1種又はそれ以上の脂肪酸とのエステルである態様5に記載のプロセス。
態様8.前記少なくとも1個の残留非共役炭素−炭素二重結合が末端にある態様5に記載のプロセス。
態様9.工程(a)を、出発化合物を第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドと接触させることによって、実施する態様5〜8のいずれかに記載のプロセス。
態様10.工程(b)を、臭素化された出発化合物をメタ−クロロ過安息香酸と接触させることによって、実施する態様5〜9のいずれかに記載のプロセス。
態様11.態様1に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物の製造プロセスであって、(a)少なくとも700の分子量及び複数の非共役炭素−炭素二重結合を有する出発化合物を、該非共役炭素−炭素二重結合の少なくとも1個であるが全部よりも少ない二重結合がエポキシ化されるようにエポキシ化し、そして次に(b)残留する非共役炭素−炭素二重結合の少なくとも一部を、前記化合物を第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドと接触させることによって臭素化して、少なくとも1500の分子量を有しかつ少なくとも35重量%の臭素を含む臭素化及びエポキシ化有機化合物を製造することを含んでなるプロセス。
態様12.前記出発化合物がブタジエンのホモポリマー又はコポリマーである態様11に記載のプロセス。
態様13.前記出発化合物がポリオールと1種又はそれ以上の脂肪酸とのエステルである態様11に記載のプロセス。
態様14.工程(b)を、出発化合物を第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドと接触させることによって、実施する態様11〜13のいずれかに記載のプロセス。
態様15.工程(a)を、臭素化された出発化合物をメタ−クロロ過安息香酸と接触させることによって、実施する態様11〜14のいずれかに記載のプロセス。
態様16.態様1に記載の臭素化及びエポキシ化有機化合物の製造プロセスであって、(a)内部非共役炭素−炭素二重結合及び末端非共役炭素−炭素二重結合の両方を含む出発不飽和化合物を、内部炭素−炭素二重結合の少なくとも90%が臭素化されるが末端炭素−炭素二重結合の90%以下が臭素化されるまで臭素化し、そして(b)残留する末端炭素−炭素二重結合の少なくとも一部をエポキシ化して、少なくとも35重量%の臭素及び0.1〜5重量%のオキシラン酸素を含む臭素化及びエポキシ化有機化合物を得ることを含んでなるプロセス。
態様17.前記出発化合物がブタジエンのホモポリマー又はコポリマーである態様16に記載のプロセス。
態様18.工程(a)を、出発化合物を第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドと接触させることによって、実施する態様16又は17に記載のプロセス。
態様19.工程(b)を、臭素化された出発化合物をメタ−クロロ過安息香酸と接触させることによって、実施する態様16〜18のいずれかに記載のプロセス。
態様20.臭素化及びエポキシ化ブタジエンポリマーの製造プロセスであって、(a)少なくとも700の分子量を有し、そして1,4−ブタジエン単位及び1,2−ブタジエン単位の両方を有する出発ブタジエンポリマーを、1,4−ブタジエン単位の少なくとも90%が臭素化され、そして1,2−ブタジエン単位の最大90%が臭素化されるように臭素化し、そして次に(b)少なくとも1個の残留する非臭素化1,2−ブタジエン単位をエポキシ化して、臭素化及びエポキシ化ブタジエンポリマーを生成せしめることを含んでなるプロセス。
態様21.工程(a)を、出発化合物を第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドと接触させることによって、実施する態様20に記載のプロセス。
態様22.工程(b)を、臭素化された出発化合物をメタ−クロロ過安息香酸と接触させることによって、実施する態様20又は21に記載のプロセス。
態様23.有機ポリマーを含む有機ポリマー組成物であって、該有機ポリマーが、有機ポリマー組成物100重量部当たり、少なくとも0.1重量部の臭素を、該組成物に与えるのに充分な量の、態様1〜4のいずれかに記載の、臭素化及びエポキシ化有機化合物を、その中に溶解又は分散させて有する有機ポリマーを含んでなる組成物。