特許第6185534号(P6185534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185534解除可能な連結構造、及び解除可能な連結構造を有する医療器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185534
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】解除可能な連結構造、及び解除可能な連結構造を有する医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   A61B17/28
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-201359(P2015-201359)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-70637(P2017-70637A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健一
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/128321(WO,A1)
【文献】 特開2005−261734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0088637(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0004656(US,A1)
【文献】 特開2007−132473(JP,A)
【文献】 特開2009−228898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28
F16L 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端、前端、該後端と該前端との間を延びる外周面、及び該外周面に設けられた前方に面する第1係止面を有する連結シャフトと、
該連結シャフトの周りに取り付けられるチャックであって、後方側の環状基部、及び該環状基部から前方に延びて半径方向での可撓性を有する可撓性部を有し、該可撓性部の半径方向内側面が、後方に面するように設けられ該第1係止面と係合して該連結シャフトが当該チャックに対して前方に変位するのを阻止する第2係止面を有し、該可撓性部の半径方向外側面が後方に面する第3係止面を有する、チャックと、
該チャックの該可撓性部の周りに取り付けられる固定用スリーブであって、後端、前端、及び該後端と該前端との間を延びる内周面を有し、該内周面が、該チャックの該可撓性部の該半径方向外側面に係合して該第2係止面が半径方向外側に変位することを阻止する阻止面、及び前方に面し該第3係止面と係合するようにされた第4係止面を有する、固定用スリーブと、
を備え、
該チャックを該第1係止面と該第2係止面とが係合するように該連結シャフトの周りに取り付けた状態で該固定用スリーブを前方から該チャックの該可撓性部の周りに取り付けることにより、該固定用スリーブの該阻止面が該可撓性部を保持して該第1係止面と該第2係止面とが係合した状態を維持して該チャックと該連結シャフトとを連結状態とし、
該連結状態において、該第4係止面が該第3係止面に係合して該固定用スリーブの該チャックに対する前方への変位が抑制され、該固定用スリーブに該チャックに対する前方への所定の大きさ以上の力を加えると、該第4係止面が該第3係止面を介して該可撓性部を半径方向内側に押圧して撓ませ、該第4係止面と該第3係止面との係合が解除されて、該固定用スリーブを該チャックから取り外すことが可能な状態となるようにされた、解除可能な連結構造。
【請求項2】
該連結状態において、前記連結シャフトが、該チャックに対して、該連結シャフトの長手軸線の周りで回転自在とされた、請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
該連結シャフトの該外周面が第1突起を有し、該第1係止面が該第1突起の前方側の面に形成されており、
該第1係止面と該第2係止面とが係合するように該チャックが該連結シャフトに取り付けられたときに、該連結シャフトの外周面における該第1突起よりも後方側の部分と該チャックの可撓性部の半径方向内側面との間に隙間が形成されるようにされた、請求項1又は2に記載の連結構造。
【請求項4】
該連結シャフトの該外周面が該第1突起から前方側に離れた位置に第2突起をさらに有し、該第2突起の後方側の面に第5係止面が形成されており、
該チャックの該可撓性部が半径方向内側に突出した係止部を有し、該第2係止面が該係止部の後方側の面に形成され、該係止部の前方側の面に第6係止面が形成されており、
該係止部が該第1突起と該第2突起との間に係止されたときに該第5係止面と第6係止面とが係合して、該連結シャフトが該チャックに対して前方に変位することが阻止されるようにされた、請求項3に記載の連結構造。
【請求項5】
該チャックの該第3係止面が、該連結状態において該連結シャフトの該第1突起から後方側に離れる位置に形成されている、請求項3又は4に記載の連結構造。
【請求項6】
該連結シャフトの該外周面が該第1係止面よりも前方側の位置において前方に面した第7係止面をさらに有し、該固定用スリーブの内周面が該阻止面よりも前方側の位置において後方に面した第8係止面をさらに有し、該第7係止面と該第8係止面とが係合することにより、該固定用スリーブが該連結シャフト上を後方に通過できないようにされた、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の連結構造。
【請求項7】
操作ハンドルと、
該操作ハンドルから遠位方向に延在するガイド管と、
該操作ハンドルから該ガイド管内を通って遠位方向に延在し、該操作ハンドルによって長手軸線の方向に変位される駆動シャフトと、
該駆動シャフトの遠位端に連結された先端駆動部と、
を備え、
該先端駆動部と該ガイド管とが、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の連結構造によって解除可能に連結されており、
該先端駆動部が該連結構造の該チャックと該連結シャフトとのうちの一方を有し、該ガイド管が該連結構造の該チャックと該連結シャフトとのうちの他方を有し、該連結構造の該固定用スリーブが該連結シャフトを覆うように配置された、医療器具。
【請求項8】
該先端駆動部が該連結シャフトを有し、該固定用スリーブの最小内径が該先端駆動部の最大外径よりも小さくされて、該固定用スリーブが該先端駆動部上を遠位方向に通過しないようにされた、請求項7に記載の医療器具。
【請求項9】
該先端駆動部が該駆動シャフトの長手軸線の方向での変位に伴って開閉される把持部材を有する、請求項7又は8に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を解除可能に連結するための連結構造、および該連結構造を有する医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば腹腔鏡下手術で用いられる鉗子においては、体内に挿入された先端の把持部材を体外のハンドルによって開閉操作できるようになっているが、通常、ハンドルと把持部材とは、ハンドルによって長手軸線の方向に動かされる駆動シャフトと、駆動シャフトを覆うガイド管とによって連結され、ハンドルによって駆動シャフトをガイド管に対して長手軸線の方向で変位させることで把持部材を開閉させるようになっている。このような鉗子などの医療器具においては、一度手術で使用されたものはきれいに洗浄する必要があるが、上述のような構造を有する鉗子などの医療器具はガイド管の中にも体液が浸入することがあるため、ガイド管や駆動シャフトを分解して洗浄できるようになっていることが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の鉗子においては、駆動シャフトが把持部材に連結されており、把持部材とガイド管とは、把持部材の近位端に形成された雄ねじ部とガイド管の遠位端に形成された雌ねじ部とを螺合することにより固定されるようになっている。したがって、把持部材をガイド管に対して回転させることで該螺合を解除して把持部材及び駆動シャフトとガイド管とを分解することができるので、分解した状態で洗浄することにより駆動シャフトやガイド管の中もきれいに洗浄することが可能となる。
【0004】
また、部材同士を連結する構造としては、例えば特許文献2に開示されているような、通常の管継手においてよく利用されるロックボールを利用した構造のものもある。この連結構造においては、連結及びその解除がスリーブを引くだけで行えるため、連結及びその解除の操作を迅速且つ容易に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−207260号公報
【特許文献2】特開2010−253121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1の鉗子においては、洗浄の度に螺合を解除しなければならずその作業に手間がかかる。また、ねじ部には細かい螺旋状の溝が形成されているため、この溝内に汚れがたまりやすいといった問題もある。また、引用文献2のロックボールを利用した連結構造を鉗子のような医療器具に用いた場合には、小さなロックボールやスプリング、スリーブなどの部材によって複雑に構成されていることにより、それら部材の間に付着した汚れを洗浄することが困難であるし、また、万が一ロックボールなどの部材が外れて身体内に残ってしまうと身体に大きな影響を与える重大な問題となるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、部材間の連結およびその解除が容易に行えるとともに構造が比較的に単純で洗浄を容易に行うことが可能となる解除可能な連結構造、及びそのような連結構造を有する医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、
後端、前端、該後端と該前端との間を延びる外周面、及び該外周面に設けられた前方に面する第1係止面を有する連結シャフトと、
該連結シャフトの周りに取り付けられるチャックであって、後方側の環状基部、及び該環状基部から前方に延びて半径方向での可撓性を有する可撓性部を有し、該可撓性部の半径方向内側面が、後方に面するように設けられ該第1係止面と係合して該連結シャフトが当該チャックに対して前方に変位するのを阻止する第2係止面を有し、該可撓性部の半径方向外側面が後方に面する第3係止面を有する、チャックと、
該チャックの該可撓性部の周りに取り付けられる固定用スリーブであって、後端、前端、及び該後端と該前端との間を延びる内周面を有し、該内周面が、該チャックの該可撓性部の該半径方向外側面に係合して該第2係止面が半径方向外側に変位することを阻止する阻止面、及び前方に面し該第3係止面と係合するようにされた第4係止面を有する、固定用スリーブと、
を備え、
該チャックを該第1係止面と該第2係止面とが係合するように該連結シャフトの周りに取り付けた状態で該固定用スリーブを前方から該チャックの該可撓性部の周りに取り付けることにより、該固定用スリーブの該阻止面が該可撓性部を保持して該第1係止面と該第2係止面とが係合した状態を維持して該チャックと該連結シャフトとを連結状態とし、
該連結状態において、該第4係止面が該第3係止面に係合して該固定用スリーブの該チャックに対する前方への変位が抑制され、該固定用スリーブに該チャックに対する前方への所定の大きさ以上の力を加えると、該第4係止面が該第3係止面を介して該可撓性部を半径方向内側に押圧して撓ませ、該第4係止面と該第3係止面との係合が解除されて、該固定用スリーブを該チャックから取り外すことが可能な状態となるようにされた、解除可能な連結構造を提供する。
【0009】
当該連結構造においては、チャックを連結シャフトの周りに取り付けた状態で固定用スリーブを前方からチャックの周りに取り付けることによりチャックと連結シャフトとの連結が完了し、また固定用スリーブをチャックから所定の大きさ以上の力で前方に引き抜くようにすることにより該連結が解除されるようになっており、螺合等により連結する従来の構造に比べて連結及びその解除を迅速且つ容易に行うことが可能となる。また、部品点数を少なくできるため、部品が紛失する可能性が小さくなり、また部品の洗浄も容易となる。
【0010】
好ましくは、該連結状態において、前記連結シャフトが、該チャックに対して、該連結シャフトの長手軸線の周りで回転自在とすることができる。
【0011】
具体的には、
該連結シャフトの該外周面が第1突起を有し、該第1係止面が該第1突起の前方側の面に形成されており、
該第1係止面と該第2係止面とが係合するように該チャックが該連結シャフトに取り付けられたときに、該連結シャフトの外周面における該第1突起よりも後方側の部分と該チャックの可撓性部の半径方向内側面との間に隙間が形成されるようにすることができる。
【0012】
より具体的には、
該連結シャフトの該外周面が該第1突起から前方側に離れた位置に第2突起をさらに有し、該第2突起の後方側の面に第5係止面が形成されており、
該チャックの該可撓性部が半径方向内側に突出した係止部を有し、該第2係止面が該係止部の後方側の面に形成され、該係止部の前方側の面に第6係止面が形成されており、
該係止部が該第1突起と該第2突起との間に係止されたときに該第5係止面と第6係止面とが係合して、該連結シャフトが該チャックに対して前方に変位することが阻止されるようにすることができる。
【0013】
好ましくは、該チャックの該第3係止面が、該連結状態において該連結シャフトの該第1突起から後方側に離れる位置に形成されているようにすることができる。
【0014】
より好ましくは、該連結シャフトの該外周面が該第1係止面よりも前方側の位置において前方に面した第7係止面をさらに有し、該固定用スリーブの内周面が該阻止面よりも前方側の位置において後方に面した第8係止面をさらに有し、該第7係止面と該第8係止面とが係合することにより、該固定用スリーブが該連結シャフト上を後方に通過できないようにすることができる。
【0015】
また本発明は、
操作ハンドルと、
該操作ハンドルから遠位方向に延在するガイド管と、
該操作ハンドルから該ガイド管内を通って遠位方向に延在し、該操作ハンドルによって長手軸線の方向に変位される駆動シャフトと、
該駆動シャフトの遠位端に連結された先端駆動部と、
を備え、
該先端駆動部と該ガイド管とが、上記のいずれかの連結構造によって解除可能に連結されており、
該先端駆動部が該連結構造の該チャックと該連結シャフトとのうちの一方を有し、該ガイド管が該連結構造の該チャックと該連結シャフトとのうちの他方を有し、該連結構造の該固定用スリーブが該連結シャフトを覆うように配置された、医療器具を提供する。
【0016】
当該医療器具においては、先端駆動部とガイド管とが上述の連結構造によって解除可能に連結されているため、先端駆動部とガイド管との連結及びその解除が迅速且つ容易に行え、使用後の洗浄作業が容易になる。
【0017】
好ましくは、該先端駆動部が該連結シャフトを有し、該固定用スリーブの最小内径が該先端駆動部の最大外径よりも小さくされて、該固定用スリーブが該先端駆動部上を遠位方向に通過しないようにすることができる。
【0018】
さらに好ましくは、該先端駆動部が該駆動シャフトの長手軸線の方向での変位に伴って開閉される把持部材を有するようにすることができる。
【0019】
なお、本願における「遠位」とは当該医療器具の使用状態において使用者から遠い側を意味し、「近位」とは使用者に近い側を意味する。また、当該連結構造における「前」及び「後」は、当該連結構造を説明するために便宜的に用いるものであり使用状態における前後方向を必ずしも意味するものではない。
【0020】
以下、本発明に係る解除可能な連結構造及び連結構造を有する医療器具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の医療器具の一実施形態に係る鉗子の部分断面図である。
図2図1の鉗子の先端部の拡大図である。
図3図2の先端部の連結構造の連結を解除した状態の図である。
図4】連結構造の連結及びその解除の際の動作を示す第1の図である。
図5】連結構造の連結及びその解除の際の動作を示す第2の図である。
図6】連結構造の連結及びその解除の際の動作を示す第3の図である。
図7】連結構造の連結及びその解除の際の動作を示す第4の図である。
図8】連結構造の連結及びその解除の際の動作を示す第5の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の医療器具の一実施形態に係る鉗子1は、図1に示すように、操作ハンドル10と、操作ハンドル10から遠位方向に延在するガイド管12と、操作ハンドル10からガイド管12の中を通って遠位方向に延在する駆動シャフト14と、駆動シャフト14の遠位端14aに連結された先端駆動部16と、を備えている。先端駆動部16とガイド管12とは、後述する連結構造30により解除可能に連結されている。
【0023】
先端駆動部16は、図2及び図3に示すように、筒状本体部18と、筒状本体部18内に配置されて駆動シャフト14の遠位端14aに連結されているリンク機構20と、リンク機構20に駆動連結されている2つの把持部材22(図では一方のみが示されている)とを有している。リンク機構20は、駆動シャフト14が近位方向に変位すると把持部材22を開き、駆動シャフト14が遠位方向に変位すると把持部材22を閉じるように構成されている。
【0024】
操作ハンドル10は、固定ハンドル10aと可動ハンドル10bとからなり、可動ハンドル10bを固定ハンドル10aから遠ざける方向(図1で見て反時計回り)に枢動させることにより、駆動シャフト14を近位方向に引っ張って把持部材22を開き、可動ハンドル10bを固定ハンドル10aに近づける方向(図1で見て時計回り)に枢動させることにより、駆動シャフト14を遠位方向に押し出して把持部材22を閉じるようになっている。当該鉗子1には、さらに、操作ハンドル10に対して回転自在とされ、駆動シャフト14を保持する回転ダイヤル24が設けられており、この回転ダイヤル24を回転させることにより駆動シャフト14を一緒に回転させて先端駆動部16を長手軸線Lの周りで回転させることができるようになっている。
【0025】
当該鉗子1においては、ガイド管12が湾曲した形状を有している。駆動シャフト14は、湾曲したガイド管12内において長手軸線Lの方向に変位可能であり且つ長手軸線Lの周りで回転可能であるようにするために、可撓性を有する部材により形成されている。例えばこのような可撓性の部材として、コイル状の金属巻線を使用することができる。
【0026】
先端駆動部16とガイド管12とを解除可能に連結する連結構造30は、図2に示すように、先端駆動部16の筒状本体部18に圧入固定された連結シャフト32と、ガイド管12の遠位端12aに溶接により固定されたチャック34と、連結シャフト32の外周面32cの周りで長手軸線Lの方向で変位可能に配置された固定用スリーブ36とからなる。
【0027】
連結構造30の連結シャフト32は、図4に示すように、後端32aと前端32bとの間を延びる外周面32cを有する。外周面32cには、環状の第1突起32dと、第1突起32dから前方側に離れた位置にある環状の第2突起32eとが設けられている。
【0028】
連結構造30のチャック34は、後方側の環状基部34aと、この環状基部34aから前方に延びる可撓性部34bとを有する。可撓性部34bは周方向で等間隔に6つ配置されており、それぞれが半径方向での可撓性を有する。各可撓性部34bの先端には、半径方向内側に突出した係止部34cが設けられている。また、可撓性部34bの半径方向外側面34dには、半径方向外側に突出した係止突起34eが設けられている。なお、可撓性部34bの数は任意であり、いくつに設定しても良い。
【0029】
このようなチャック34を連結シャフト32の外周面32c上を摺動させて前方に進めると、図5に示すように、可撓性部34bの係止部34cは、連結シャフト32の第1突起32dに係合して半径方向外側に押され、これにより可撓性部34bは半径方向外側に撓む。さらにチャック34を前方に進めて可撓性部34bの係止部34cが第1突起32dを超えると、図6に示すように、係止部34cが連結シャフト32の第1突起32dと第2突起32eとの間に嵌まって、連結シャフト32の第1突起32dの前方側の面に形成された前方に面する第1係止面32fとチャック34の半径方向内側面34fにおける係止部34cの後方側の面に形成された後方に面する第2係止面34gとが長手軸線Lの方向で係合した状態となる。このとき、連結シャフト32の外周面32cにおける第1突起32dよりも後方側の部分とチャック34の可撓性部34bの半径方向内側面34fとの間には隙間Dが形成される。
【0030】
連結構造30の固定用スリーブ36は、図4に示すように、後端36aと前端36bとの間を延びる内周面36cを有する。内周面36cには、当該固定用スリーブ36をチャック34の周りに取り付けたときにチャック34の係止部34cに係合する阻止面36dと、チャック34の係止突起34eに係合する係止溝36eとが形成されている。
【0031】
このような固定用スリーブ36を連結シャフト32の外周面32c上及びチャック34の半径方向外側面34d上を後方に進めると、図7に示すように、固定用スリーブ36の内周面36cとチャック34の係止突起34eとが係合して、チャック34の可撓性部34bは隙間Dに向かって半径方向内側に湾曲する。さらに固定用スリーブ36を後方に進めると、図8に示すように、チャック34の係止突起34eが固定用スリーブ36の係止溝36e内に位置して可撓性部34bの半径方向内側への撓みが解放され、可撓性部34bは撓みのない状態となる。また、固定用スリーブ36の阻止面36dがチャック34の係止部34cの半径方向外側面34dに係合して係止部34cが半径方向外側に変位することを阻止した状態となる。この状態においては、係止部34cが半径方向外側に変位しないので、連結シャフト32の第1係止面32fとチャック34の第2係止面34gとの係合が解除できなくなる。このように固定用スリーブ36を前方からチャック34の可撓性部34bの周りに取り付けることにより、連結シャフト32はチャック34に対して前方に変位できない状態に拘束されて、チャック34と連結シャフト32とが連結状態となる。
【0032】
また、図8の連結状態においては、チャック34の係止突起34eの後方側の面に形成された後方に面する第3係止面34hと固定用スリーブ36の係止溝36eの後方側の面に形成された前方に面する第4係止面36fとが係合して、固定用スリーブ36がチャック34に対して前方に変位することが抑制される。ただし、固定用スリーブ36に前方への所定の大きさ以上の力が加えられると、第4係止面36fが第3係止面34hを半径方向内側に押圧して可撓性部34bが半径方向内側に撓み、これにより第4係止面36fと第3係止面34hとの係合が解除されて図7の状態に戻り、固定用スリーブ36を前方に変位させてチャック34から取り外すことが可能となる。
【0033】
図6乃至図8に示すように、チャック34の係止部34cが連結シャフト32の第1突起32dと第2突起32eとの間に係止された状態においては、第2突起32eの後方側の面に形成された後方に面する第5係止面32gとチャック34の係止部34cの前方側の面に形成された前方に面する第6係止面34iとが長手軸線Lの方向で係合しており、連結シャフト32がチャック34に対して後方にも変位しないようになっている。
【0034】
連結シャフト32の第2突起32eの前方側の面には、前方に面した第7係止面32hが形成されている。また、固定用スリーブ36の前端部36gは、半径方向内側に突出しており、その後方側の面には後方に面した第8係止面36hが形成されている。固定用スリーブ36が連結シャフト32の周りに配置されている状態において、連結シャフト32の第7係止面32hと固定用スリーブ36の第8係止面36hとが対向するようになっており、チャック34が連結シャフト32に取り付けられていない状態においても、固定用スリーブ36は連結シャフト32上を後方に通過することができないようになっている。
【0035】
図8の連結状態において、チャック34の係止部34cが連結シャフト32の環状の第1突起32dと第2突起32eとの間に配置されているため、連結シャフト32はチャック34に対して長手軸線Lの方向には実質的に変位しない。しかし、周方向では互いに係合しておらず、またチャック34は連結シャフト32に押しつけられるようにはなっていないため、連結シャフト32はチャック34に対して長手軸線Lの周りで回転自在となっている。
【0036】
上述のような連結構造30により先端駆動部16とガイド管12とが解除可能に連結されている図1に示す当該鉗子1においては、操作ハンドル10を操作して駆動シャフト14を長手軸線Lの方向で変位させる際に、先端駆動部16とガイド管12とは連結構造30により相対的に長手軸線Lの方向で変位しないように連結されているため、駆動シャフト14をガイド管12に対して相対的に変位させて把持部材22を開閉させることができる。また、先端駆動部16は、連結構造30によってガイド管12に対して回転自在に連結されているため、回転ダイヤル24により駆動シャフト14を回転させると、その回転力により駆動シャフト14に連結された先端駆動部16はガイド管12に対して回転する。これにより、把持部材22の周方向での向きを自由に調節することが可能となる。
【0037】
固定用スリーブ36の前端部36gの内径は、先端駆動部16の筒状本体部18の外径よりも小さくなっているため、固定用スリーブ36は先端駆動部16を超えて前方に動かすことはできないようになっている。すなわち、固定用スリーブ36は、図3に示すようにチャック34から取り外された状態においても、その前端部36gが連結シャフト32の第2突起32eと先端駆動部16の筒状本体部18との間に拘束されて連結シャフト32上から外れないようになっている。
【0038】
当該鉗子1においては、固定用スリーブ36を前方からチャック34の周りに取り付けることによりチャック34と連結シャフト32との連結が完了し、また固定用スリーブ36をチャック34から前方に引き抜くようにすることにより連結が解除されるため、従来の螺合による連結構造にくらべて、先端駆動部16とガイド管12との連結及びその解除を迅速且つ容易に行うことが可能となる。また、固定用スリーブ36は、連結シャフト32上から外れない構造となっているため、仮に身体内で固定用スリーブ36がチャック34から外れたとしても、固定用スリーブ36が身体内に残されることはない。また先端駆動部16は駆動シャフト14により操作ハンドル10に連結されているため、先端駆動部16が身体内に残されることもない。
【0039】
上記実施形態においては、先端駆動部16に連結シャフト32が固定され、ガイド管12にチャック34が固定されているが、連結構造30の前後を逆にして、先端駆動部16にチャック34を固定し、ガイド管12に連結シャフト32を固定するようにしてもよい。また、上記実施形態においては、連結構造30のチャック34と連結シャフト32とをそれぞれ独立した1つの部材として形成し、それらをガイド管12と先端駆動部16とに固定するようにしているが、チャック34と連結シャフト32をそれぞれガイド管12と先端駆動部16の一部として一体的に形成するようにしてもよい。
【0040】
また、先端駆動部16の把持部材22に替えて他の部材として、鉗子以外の医療器具としてもよい。さらには、当該連結構造30は鉗子などの医療器具以外のものを解除可能に連結するために使用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
鉗子1;操作ハンドル10;固定ハンドル10a;可動ハンドル10b;ガイド管12;遠位端12a;駆動シャフト14;遠位端14a;先端駆動部16;筒状本体部18;リンク機構20;把持部材22;回転ダイヤル24;連結構造30;
連結シャフト32;後端32a;前端32b;外周面32c;第1突起32d;第2突起32e;第1係止面32f;第5係止面32g;第7係止面32h;
チャック34;環状基部34a;可撓性部34b;係止部34c;半径方向外側面34d;係止突起34e;半径方向内側面34f;第2係止面34g;第3係止面34h;第6係止面34i;
固定用スリーブ36;後端36a;前端36b;内周面36c;阻止面36d;係止溝36e;第4係止面36f;前端部36g;第8係止面36h;
長手軸線L;隙間D
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8