【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は配列番号1から配列番号8で表されるペプチドを提供する。
【0009】
本発明の好適例において、前記ペプチドは新規のTRPV1活性抑制ペプチドとして特定されたものである。
【0010】
前記TRPV1は、TRPファミリーに属している非特異的陽イオンチャンネルであって、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンにより活性化されて陽イオンが流入され、膜電圧を形成して刺激が神経系に伝えられる膜タンパク質である。前記TRPV1は幾多の経路を介し活性が調節され、PKA、PKC、Ca
2+/カルモジュリン依存症タンパク質キナーゼ(CaMK)及びSrcキナーゼを含むリン酸化/脱リン酸化によって活性が調節される。さらに、TRPV1の活性は、転写後の調節システムによって調節される。このようなTRPV1の調節プロセスにはタンパク質-タンパク質の相互作用を含むが、TRPV1と相互作用するタンパク質は極めて少数のものだけが知られている。
【0011】
本発明の好適例において、本発明者らは、TRPV1を標的とする疾患に適用可能なTRPV1活性抑制剤を調べるため研究した結果、配列番号1から8で示される新規なペプチドを特定した。これらの前記ペプチドは、TRPV1タンパク質のリン酸化アミノ酸を基盤とするペプチド配列、またはTRPV1活性によって誘発される細胞内Ca
2+流入に影響を及ぼすCaMK活性部位を抑制することができるペプチドである。TRPV1活性を効果的に抑制することが確認されたので、前記新規のペプチドを本発明においては、TRPV1活性抑制剤として有用に用いることができる。
【0012】
さらに、本発明は、前記配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドを有効成分として含有する皮膚老化防止またはしわ改善用の化粧料組成物を提供する。
【0013】
前記皮膚老化の防止は、光老化または自然老化による皮膚老化の抑制作用を意味するが、前記皮膚老化は特にUV露出による光老化であることが好ましい。
【0014】
本発明の好適例において、前記皮膚しわは光老化または自然老化によるものであってもよく、光老化によるものがより好ましく、UV露出による光老化であることがさらに好ましいが、これに限定されない。前記皮膚老化及びしわは、TRPV1活性を基盤とするのが好ましいが、これに限定されない。
【0015】
前記ペプチドは、化粧料組成物中に0.001から20mMの濃度で含有されるのが好ましく、0.01から10mMの濃度で含有されるのがさらに好ましいが、これに限定されない。前記ペプチドの濃度が0.001mM未満であると、TRPV1抑制及びこれを通じた抗老化及び皮膚しわの改善効果を得ることができず、20mMを超過すれば、含有量の増加に伴う明らかな効果の増大を呈しないので、生産経済性が低下する。
【0016】
本発明に係るペプチドは、一般的な化学合成、例えば、固相ペプチド合成技術(solid-phase peptide synthesis)によって製造することができ、または、前記ペプチドをコードする核酸を含有する組換えベクターにより微生物を形質転換し、培養した該微生物中に発現したペプチドを、通常の方法で回収し精製して製造することもできるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明に係る化粧料組成物は、前記ペプチド以外に、本発明が目的とする効果を害させない範囲内で、化粧料に通常使用される任意の一般的な原料を含むことができ、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料等のような通常の補助剤、または担体である。
【0018】
本発明に係る化粧料組成物は、その剤形において特に限定されず、当業界で通常製造される如何なる剤形に製造されることができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤−含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション及びスプレーなどに剤形化されることができる。特に、化粧水、エッセンス、ローション、クリーム、パック、ゲル、軟膏、パッチまたはスプレーの剤形に製造されてもよい。
【0019】
前記化粧料組成物の剤形がペースト、クリームまたはゲルの場合には、適切な担体を動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク及び酸化亜鉛からなる群より選ぶことができる。また化粧料組成物がパウダーまたはスプレーの場合は、担体をラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート及びポリアミドパウダーから成る群より選ぶことができ、特にスプレーの場合は、更にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような高圧ガス剤を含むことができる。
【0020】
化粧料組成物が、溶液または乳濁液の剤形の場合は、適切な担体を溶媒、溶解化剤及び乳濁化剤から成る群より選ぶことができ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0021】
化粧料組成物が懸濁液の剤形の場合は、適切な担体を水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガントから成る群より選ぶことができる。化粧料組成物が界面−活性剤含有クレンジングの剤形の場合は、適切な担体を脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホサクシン酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体及びエトキシ化グリセロール脂肪酸エステルから成る群より選ぶことができる。
【0022】
一般に、UV露出後、TRPV1の発現及び活性が増加し、従ってこれにより細胞内Ca
2+の流入を誘導することが知られており、CaMKもCa
2+の流入に影響を及ぼす。皮膚老化は、MMP-1、ECM形成関連の基質タンパク質及びUV露出により引起こされる他のサイトカインの増加によって増大する。
【0023】
前記TRPV1は皮膚増殖及び分化の調節に関与し、培養されたヒト角質細胞において、TRPV1が媒介されたカルシウムの流入が、細胞の増殖を抑制し細胞のアポトーシス(死滅)を誘導する。さらに、カプサイシンまたは熱によるTRPV1の活性化は、ヒトの皮膚で表皮の透過障壁の形成を変化させるものと知られている。
【0024】
本発明に係る好適例において、本発明者らは、TRPV1の活性を抑制する新しい抑制剤を開発するために研究した結果、新規なRPV1抑制ペプチド(ペプチド1:QRRPSLKSL、ペプチド2:QRAITILDT、ペプチド3:RRPSL、ペプチド4:RAITI、ペプチド5:MHRQETVDC、ペプチド6:LKKFNARRKL、ペプチド7:RQETV及びペプチド8:KFNAR)を確立し、前記ペプチドによる皮膚老化の抑制及びしわ改善の効果を明確にした。
【0025】
本発明の好適例によれば、ヒト角質細胞株であるHaCaT細胞に前記ペプチドを処理した結果、UV露出によって誘導されるMMP-1の発現が減少した(
図1a及び
図1bを参照)。更に、IL-1β、IL-6、IL-8及びTNF-αのような炎症誘発性(pro-inflammatory)サイトカインの発現が抑制された(
図2aから
図2hを参照)。従って、本発明に係るペプチドはUV照射によって増加した細胞内現象を抑制することが明らかとなった。さらに、TRPV1の活性化誘導剤であるカプサイシンのみで処理したコントロールと異なり、カプサイシンで処理した後に本発明のペプチドで処理した実験群は、カプサイシンによる細胞内Ca
2+の流入を該ペプチドにより抑制する(
図3を参照)。
【0026】
さらに、本発明のTRPV1抑制ペプチドの生体(インビボ)内効果を確認するため、無毛マウスの皮膚にUVを照射し、前記ペプチドの処理をした(
図4を参照)。その結果、前記ペプチドは、UV露出量に依存して増加した皮膚の厚さを減少させ(
図5及び
図9を参照)、MMP-13及びMMP-9の発現を減少させ(
図6及び
図7を参照)、コラーゲンの前駆物質であるプロコラーゲンの発現を増加させた(
図8を参照)。さらに、UV露出によって誘導された細胞のアポトーシスを抑制した(
図10を参照)。したがって、本発明の新規なペプチドは、皮膚老化に関与するTRPV1の活性を抑制することによりUV露出後に誘導される皮膚老化現象を抑制し、MMPの発現及び活性を抑制させてプロコラーゲンの発現を向上させる効果があり、皮膚しわ及び弾力改善に寄与することができることが明らかとなった。従って、本発明の前記ペプチドは、皮膚老化の防止及びしわの改善のための化粧料組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【0027】
さらに、本発明は配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドを有効成分として含有する皮膚老化防止またはしわ改善用の薬学的組成物を提供する。
【0028】
本発明の好適例によれば、前記皮膚老化は、光老化または自然老化であってもよく、光老化であることがさらに好ましく、前記光老化はUV露出によるものが最も好ましいが、これに限定されない。
【0029】
前記薬学的組成物に含有される前記ペプチドの濃度は0.001〜20mMであることが好ましく、0.01〜10mMであることがさらに好ましいが、これに限定されない。前記ペプチドの濃度が0.001mM未満であると、皮膚老化の防止またはしわ改善の効果を得ることができず、20mMを超えても、必要以上のペプチドが用いられ、過剰なペプチドは損失されているだけである。
【0030】
本発明に係るTRPV1抑制ペプチドを投与すれば、ヒト角質細胞及び生体(インビボ)内でUV露出によって誘導されるMMP及び炎症誘発性サイトカインの発現を抑制し、皮膚の厚さ及び細胞のアポトーシスを減少させ、UV露出により減少したプロコラーゲンの発現を増加させるので、皮膚老化防止またはしわ改善用の薬学的組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【0031】
さらに、本発明は、配列番号1から配列番号8で記載されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドを有効成分として含有する皮膚美白用薬学的組成物を提供する。
【0032】
前記薬学的組成物に含有される前記ペプチドの濃度は0.001〜20mMであることが好ましく、0.01〜10mMであることがさらに好ましいが、これに限定されない。前記ペプチドの濃度が0.001mM未満であれば、皮膚美白の効果を十分得ることができず、20mMを超えても、使用するペプチドの量に応じて皮膚美白の効果が上昇しない傾向があるので経済的でない。
【0033】
本発明の好適例において、本発明に係るTRPV1抑制ペプチドは、ヒト角質細胞及び生体(インビボ)内でUV露出によって誘導されるMMPの発現を抑制し、皮膚の厚さ及び細胞の死滅を減少させ、プロコラーゲンの発現を増加させる。TRPV1抑制ペプチドは、このような角質細胞の増殖及び再生作用を介し、UV露出による皮膚のくすみ及び皮膚美白の活性に効果を奏するので、皮膚美白用薬学的組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【0034】
さらに、本発明は、配列番号1から配列番号8で記載されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドを有効成分として含有する炎症、かゆみ症、または痛み改善用薬学的組成物を提供する。
【0035】
本発明の前記薬学的組成物に含有される前記ペプチドの濃度は0.001〜20mMであることが好ましく、0.01〜10mMであることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0036】
前記炎症、かゆみ症及び痛みは、UV露出による刺激によって発生したものであり得るが、これに限定されない。
【0037】
本発明の好適例において、本発明のTRPV1抑制ペプチドの抗炎症活性を確認するため、ヒト角質細胞及び生体内でUV露出によって誘導される炎症誘発性サイトカインに対するTRPV1抑制ペプチドの抑制効果を調べた結果、炎症誘発性サイトカインであるIL-1β、IL-6、IL-8及びTNF-α等の発現量が著しく減少した(
図2aから
図2hを参照)。さらに、前記TRPV1は、多様な疾患及び損傷状態で炎症を誘発することが報告された。具体的には、TRVP1はヒト表皮及び毛嚢由来の角質細胞でカプサイシンによって活性が誘導され、炎症誘発性サイトカインの分泌を促進され、TRPV1と炎症とが関連性あることである。さらに、TRPV1ノックアウトマウスでは、熱に対するしきい値が増加し、関節炎で減少した組織腫脹が観察された(Pharmacology and Therapeutics 2010;125:181.95、Science 2000;288:306.13、Arthritis and Rheumatism 2005;52:3248.56を参照)。
【0038】
それだけでなく、以前の研究等でTRPV1が痛みの伝達経路で重要な役割を果たすことが確認された。すなわち、TRPV1が痛み媒介体によって活性化されると、陽イオンチャンネルのTRPV1を介し陽イオンが流入され、これに伴う活動電位によって中枢神経系(CNS)へ痛みが伝えられる。したがって、TRPV1は既に鎮痛及び消炎剤の開発に重要な標的分子として研究されている(Journal of the Korea Academia-Industrial cooperation Society、2011年、pp.3096-3102を参照)。
【0039】
さらに、TRPV1は皮膚のかゆみ症の発生に係っており、これはTRPV1を発現する感覚求心性ニューロンのかゆみ−特異小群集(subpopulation)を介して発生するものとである(J. Clin. Invest. 116、11741186、2006、Biochim. Biophys. Acta 1772、10041021、2007)。TRPV1はニューロン細胞のみならずヒトの皮膚でも発現され、特に結節性痒疹を病んでいる患者の上皮角質細胞でその発現が増加するものである。
【0040】
したがって、本発明に係るTRPV1抑制ペプチドは、TRPV1活性を抑制することにより、TRPV1の活性増加により誘導される炎症、かゆみ症または痛みを改善することができるので、炎症、かゆみ症または痛み薬学的組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【0041】
本発明に係る薬学的組成物の投与経路は経口又は非経口とすることができ、特に、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸投与が含まれるが、これに限定されない。前記「非経口」には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、病巣内注射または注入技術が含まれる。
【0042】
本発明に係る組成物は、TRPV1抑制ペプチドに加えて、更に、同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。本発明の前記組成物は、それぞれ通常の方法に従い散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液等の形態に剤形化して用いられることができる。
【0043】
経口投与のための固形製剤には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸薬などが含まれる。経口のための液状製剤には、懸濁液剤、内溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、一般に用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、それぞれ通常の方法に従い散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁液剤、エマルジョン、シロップ、坐剤、エアロゾルなどの外用剤及び滅菌注射製剤の形態に剤形化して用いられることができ、好ましくはクリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはパップ剤の皮膚外用薬学的組成物を調製して用いることができるが、これに限定されるものではない。非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。
【0044】
前記組成物は、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、滲透圧調節のための塩及び/または緩衝剤などの補助剤、及びその他治療的に有用な物質を更に含有することができ、通常の混合、顆粒化またはコーティング方法に従い剤形化することができる。
【0045】
本発明に係る薬学的組成物は、個体の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、投与時間、投与経路、排出率、薬物並合及び特定疾患の重症度を含む幾多の要因に従い多様に変わり得る。
【0046】
本発明に係る前記ペプチドを有効成分として含有する薬学的組成物を単位容量形態に剤形化する場合、該組成物中に、有効成分として本発明のペプチドを約0.01〜1,500mgの単位容量で含有することが好ましく、大人の治療に必要な投与量は投与の頻度と強度に応じて、一日に約1〜500mgの範囲が一般的であるが、これに限定されない。大人に対して筋肉内または静脈内投与するとき、一日に大体約5〜300mgの全体投与量が好ましいが、一部の患者に対しては、さらに高い一日投与量が好ましいことがある。
【0047】
本発明に係る組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を用いる方法等と併用して用いることができる。
【0048】
さらに、本発明は、配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドの薬学的に有効な量を処理または投与するステップを含む皮膚老化防止またはしわ改善の方法を提供する。
【0049】
さらに、本発明は、配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドの薬学的に有効な量を処理または投与するステップを含む皮膚美白方法を提供する。
【0050】
さらに、本発明は、配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドの薬学的に有効な量を処理または投与するステップを含む炎症、かゆみ症、または痛み改善の方法を提供する。
【0051】
ここで、前記薬学的に有効な量とは0.0001〜100mg/kgであり、好ましくは0.001〜10mg/kgであるが、これに制限されるものではない。処理または投与量は、特定の患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与期間、投与方法、排出率、疾患の重症度などに従い調節されることができる。処理または投与は、一日に一回投与でもよく、数回に分けて実施することもできる。
【0052】
本発明を適用する対象個体は脊椎動物で、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは鼠、兎、ギニーピッグ、ハムスター、犬、猫のような実験動物であり、最も好ましくはチンパンジー、ゴリラのような類人猿類動物である。
【0053】
前記処理または投与方法は、塗布、経口または非経口投与することができ、非経口投与時、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射または胸部内注射によって投与されることができる。
【0054】
前記炎症は、好ましくは、皮膚炎、アレルギー、アトピー、喘息、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔疾、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛(fibromyalgia)、乾癬関節炎、骨関節炎、リウマチ性関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、多発性硬化症、及び急性及び慢性炎症疾患からなる群より選択されるいずれか一つであるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
したがって、本発明に係るTRPV1抑制ペプチドは、TRPV1の活性を効果的に抑制するので、TRPV1の活性化により誘導される疾患で、皮膚老化、しわ、美白、並びに炎症、かゆみ症及び痛みの緩和及び改善のため有用に用いることができる。
【0056】
さらに、本発明は
1)TRPV1タンパク質に被検物質を処理するステップと、
2)前記被検物質で処理された実験群のTRPV1タンパク質の活性と、前記被検物質で処理されていない対照群のTRPV1タンパク質との活性を測定することにより、TRPV1タンパク質の活性を減少させる被検物質を選別するステップとを含む、
皮膚老化防止またはしわ改善用候補物質のスクリーニング方法を提供する。
【0057】
併せて、本発明は、本発明の配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のペプチドを利用したスクリーニング方法を提供する。
【0058】
具体的には、次のステップ:
1)TRPV1を暗号化するポリヌクレオチドを含むプラスミドで宿主細胞を形質転換した形質転換体を製造するステップと、
2)前記形質転換体を、TRPV1特異的活性剤とTRPV1活性抑制剤候補物質とで処理し(実験群)また前記形質転換体を前記TRPV1特異的活性剤と、配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つのペプチドとで処理する(対照群)ステップと、
3)ステップ2)の実験群と対照群のTRPV1イオンチャンネルの活性をそれぞれ測定するステップと、
4)ステップ 3)のそれぞれの測定値を比べ、対照群より低いか同等のTRPV1イオンチャンネルの活性を示すTRPV1活性抑制剤候補物質を選別するステップとを含む、
TRPV1活性抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0059】
本発明は、さらに他のスクリーニング方法として、次のステップ:
1)TRPV1を暗号化するポリヌクレオチドを含むプラスミドで宿主細胞を形質転換した形質転換体を製造するステップと、
2)前記形質転換体を、TRPV1特異的活性剤と被検物質とで処理し(実験群)、また該形質転換体を前記TRPV1特異的活性剤と、配列番号1から配列番号8で示されるペプチドからなる群より選択されるいずれか一つのペプチドとで処理する(対照群)ステップと、
3)ステップ2)の実験群と対照群のTRPV1イオンチャンネルの活性をそれぞれ測定するステップと、
4)ステップ 3)のそれぞれの測定値を比べ、対照群より低いか同等のTRPV1イオンチャンネルの活性を表す被検物質を選別するステップとを含む、
皮膚老化防止またはしわ改善用候補物質のスクリーニング方法を提供する。
【0060】
本発明の好適例において、ステップ1)の宿主細胞は、ヒト角質細胞株であってもよく、HaCaT細胞株であることがより好ましいが、これに限定されず、イオンチャンネル活性及び抑制剤のハイスリープットスクリーリングの観察(スタディー)に利用することができる細胞株であれば全て利用可能である。
【0061】
前記方法において、ステップ2)のTRPV1特異的活性剤は、UVまたはカプサイシンであることが好ましく、本発明に係る配列番号1から配列番号8で示されるTRPV1抑制ペプチドは0.001〜20mMの濃度で処理されることが好ましく、0.01〜10mMで処理するのがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0062】
前記ステップ2)の候補物質は、天然化合物、合成化合物、RNA、DNA、ポリペプチド、酵素、タンパク質、リガンド、抗体、抗原、バクテリアまたは真菌の代謝産物または生活性分子であることができる。
【0063】
前記ステップ3)のTRPV1イオンチャンネル活性の測定は、カルシウムイメージングによって行われることができ、これに限定されず、TRPV1の活性を確認することができる方法であれば全て使用可能である。
【0064】
本発明に係る配列番号1から配列番号8で示されるペプチドは、TRPV1活性剤として知られたUVまたはカプサイシンによって増加したTRPV1活性を抑制し、動物モデルでTRPV1活性により引起こされる皮膚老化及び皮膚しわの改善効果を有するので、TRPV1活性に対する配列番号1から配列番号8で示されるペプチドの抑制効果と比べ、これと類似するかさらに高い抑制効果を有するTRPV1活性抑制剤及び被検物質を選別することにより、TRPV1によって媒介される皮膚老化またはしわ防止剤の候補物質をスクリーニングすることができる。