特許第6185554号(P6185554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185554プラズマを安定させる方法および改善された電離箱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185554
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】プラズマを安定させる方法および改善された電離箱
(51)【国際特許分類】
   H05G 2/00 20060101AFI20170814BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H05G2/00 K
   H05H1/24
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-502363(P2015-502363)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-517181(P2015-517181A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2013056769
(87)【国際公開番号】WO2013149953
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】12290116.8
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515075197
【氏名又は名称】レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】LASER SYSTEMS AND SOLUTIONS OF EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】メストル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】チェカット,ポール
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−282992(JP,A)
【文献】 特開平08−279495(JP,A)
【文献】 特開昭58−100740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
H05H 1/00−1/54
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを安定させる方法であって、
a.多数の高電圧ワイヤ、およびプラズマを形成するのに好適であるガスを電離箱内に提供するステップであって、前記ガスが非活性状態にある、ステップと、
b.前記ガスを高電圧に露出することにより、前記ガスに着火して前記プラズマを形成するステップと、を含み、
着火時に前記プラズマに所定量の光が当てられ、前記光が、100mWから1500mWの放射エネルギーを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記光が、10〜1100ナノメートルの波長を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記光が、連続光であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、前記光が、実質的に前記電離箱に全体として向けられることを特徴とする方法。
【請求項5】
X線を生成する際の請求項1乃至の何れか1項に記載の方法の使用。
【請求項6】
電離箱(1)であって、
a.プラズマを形成するのに好適であるガスであって、非活性状態にあるガスと、
b.前記ガスを高電圧に露出することにより、前記ガスに着火して前記プラズマを形成するための多数の高電圧ワイヤ(2)と、を備え、
前記電離箱が、着火時に前記プラズマに所定量の光を当てるための手段(3、3’、4、4’)を備え
前記プラズマに所定量の光を当てるための前記手段が、100mWから1500mWの放射エネルギーを有することを特徴とする電離箱(1)。
【請求項7】
請求項に記載の電離箱において、前記プラズマに所定量の光を当てるための前記手段が、10〜1100ナノメートルの波長を有する光源を備えることを特徴とする電離箱。
【請求項8】
請求項に記載の電離箱において、前記プラズマに所定量の光を当てるための前記手段が、連続光源を備えることを特徴とする電離箱。
【請求項9】
請求項乃至の何れか1項に記載の電離箱において、前記プラズマに所定量の光を当てるための前記手段が、実質的に前記電離箱に全体として光を向けられるようになっていることを特徴とする電離箱。
【請求項10】
請求項乃至の何れか1項に記載の電離箱において、前記プラズマに所定量の光を当てるための前記手段が、1つまたは複数の外部光源と、前記光を前記電離箱へとガイドするための光導波路と、を備えることを特徴とする電離箱。
【請求項11】
請求項10に記載の電離箱において、前記光導波路が光ファイバーを備えることを特徴とする電離箱。
【請求項12】
請求項乃至11の何れか1項に記載の電離箱を備えるX線発生器
【請求項13】
請求項12に記載のX線発生器を備えるレーザ装置であって、予備電離を得るために前記X線発生器を使用することを特徴とするレーザ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧誘導プラズマを安定させる方法に関する。
【0002】
また本発明は、X線を生成する際のそのような方法の使用に関する。
【0003】
さらに本発明は、高電圧誘導プラズマを形成するための電離箱に関する。
【0004】
また本発明は、そのような電離箱を備えるX線発生器、およびそのようなX線発生器を備えるレーザ装置にさらに関する。
【背景技術】
【0005】
ガス状媒体に予備電離放射線を供給することにより、パルスガスレーザの放電安定性が大幅に高められることが知られている。予備電離を得るための実行可能な手段の1つにX線発生器を使用することがある。その一例が、国際公開第8910003号パンフレットに記載されている。
【0006】
一般に、X線発生器の動作は以下の原理に基づいている。
− プラズマがプラスイオン源として生成される。
− このプラスイオンはマイナス極性の電極の方へと加速され、この電極との衝突時に二次電子を生成する。
− 生じた電子ビームは、前述の電極から離れる方向に加速して送られ、金属板と衝突する。
− 金属板上での電子ビームの衝突時にX線が生成される。
【0007】
粒子タイプのX線発生器では、1本または複数のワイヤがヘリウムなどの低圧ガスを充満させた電離箱の内部に配置される。高電圧パルスをワイヤに印加するにつれて、高密度プラスイオンを生成するプラズマが電離箱内に形成されることになる。このタイプのプラスイオン源は非常に高い反復率で動作が可能である。
【0008】
しかしながら、一般的によく知られている性能限界は、プラズマをある一定の時間(通常1分を超える時間)にわたる着火が行われないと、プラズマの安定性が揺らぐ、いわゆるジッター効果が起こるおそれがあり、すなわちプラズマは通常より低密度のイオンを生成する場合がある、ということである。このことは、おそらく着火時にプラズマを維持するのに必要な電荷の量が十分ではないことに関連すると思われる。
【0009】
X線発生器によって生成されるX線予備電離ビームの、主レーザ放電に対するタイミングが、レーザの出力エネルギーおよび安定性に大きく影響することが、さらに一般的に認められているので、不安定なプラズマは主レーザ放電の最適性能を大きく損なう場合がある。
【0010】
上記の問題を解決する試みにおいては、ワイヤに印加される高電圧を増加させることにより、あるいは第1の高電圧パルスに続いて、多数の低電圧パルスを印加することにより、着火時にプラズマを維持するための電荷の量を増加することが可能である。しかしながら、この試みの欠点は、高電圧ワイヤにかかるストレスが増加して、電離箱内のアークの発生に起因する故障の危険性が高まることである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、着火時に、特にある一定の時間にわたる着火が行われなかった後にプラズマの安定性改善を可能にする方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、安定的であり、さらには改善されたイオン密度を生成する方法を提供することである。
【0013】
また本発明の目的は、着火時に、特にある一定の時間にわたる着火が行われなかった後にプラズマの安定性を改善した電離箱を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、改善されたX線発生器を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる別の目的は、改善されたレーザ装置を提供することである。
【0016】
本発明は、着火時にプラズマに所定量の光を当てることにより、上記目的を達成する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、プラズマを安定させる方法であって、
a.多数の高電圧ワイヤ、およびプラズマを形成するのに好適であるガスを電離箱内に提供するステップと、
b.ガスを高電圧に露出することにより、ガスに着火してプラズマを形成するステップと、を含み、
着火時にプラズマに所定量の光が当てられることを特徴とする方法に関する。
【0018】
また本発明は、X線を生成する際のそのような方法の使用に関する。
【0019】
さらに本発明は、電離箱であって、
a.プラズマを形成するのに好適であるガスと、
b.ガスを高電圧に露出することにより、ガスに着火してプラズマを形成するための多数の高電圧ワイヤと、を備え、
電離箱が、着火時にプラズマに所定量の光を当てるための手段を備えることを特徴とする電離箱に関する。
【0020】
さらに本発明は、そのような電離箱を備えるX線発生器、およびそのようなX線発生器を備えるレーザ装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る1つの実施形態を示す。
図2図2は、本発明に係る別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る第1の実施形態では、プラズマを安定させる方法であって、
a.多数の高電圧ワイヤ、およびプラズマを形成するのに好適であるガスを電離箱内に提供するステップと、
b.ガスを高電圧に露出することにより、ガスに着火してプラズマを形成するステップと、を含み、
着火時にプラズマに所定量の光が当てられることを特徴とする方法である。
【0023】
驚くべきことに本出願人は、プラズマの着火時に、特に比較的長い時間にわたる着火が行われなかった後に電離箱内に光学的放射(光)を提供することによって、不安定性、いわゆるジッターを抑制する効果があることを発見し、実験によって確認した。
【0024】
いずれの理論に縛られることなく、プラズマに光を当てることで、電離箱の表面上または電離箱の容積内に、着火時にプラズマを維持するのに必要な十分な電荷を生成しやすくなる。光に当てることによりプラズマ中のイオン励起を強化することで、プラズマの安定性が改善されると考えられている。
【0025】
好ましくはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)またはこれらの混合物などの貴ガスからなる群から選択される任意のタイプのイオン性ガスからプラズマに着火してもよい。
【0026】
本発明によれば、電離箱内部では、イオン性ガスは、中真空の範囲の圧力、好ましくは1Paから100Paの範囲の圧力下にある。
【0027】
光は、プラズマの不安定性を抑制するのに好適である任意の波長を有してもよい。より具体的には、波長は、10〜1100ナノメートル、100〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル(可視光領域)、100〜400ナノメートル(紫外光領域)であってもよい。
【0028】
光は、1mWから5000mW、1mWから3000mW、好ましくは100mWから1500mWの放射エネルギーを有してもよい。
【0029】
光は、パルス光または連続光であってもよい。連続光は、光パルスと電離放電との間を正確に同期させる必要がないという点で、パルス光よりも有利な場合がある。
【0030】
光を、電離箱内の1本または複数の高電圧ワイヤに集束させてもよいし、着火されたプラズマ「中心」に集束させてもよい。好ましくは、光は、実質的に電離箱に全体として向けられる。電離箱の一部分だけ(すなわちプラズマの一部分だけ)ではなく、実質的にその全体を光に露出することは有利な場合がある。このようにする方が、着火時にプラズマが効率よく安定化するからである。
【0031】
本発明に係る1つの実施形態では、本発明は、電離箱(1)であって、
a.プラズマを形成するのに好適であるガスと、
b.このガスを高電圧に露出することにより、ガスに着火してプラズマを形成するための多数の高電圧ワイヤ(2)と、を備え、
電離箱が、着火時にプラズマに所定量の光を当てるための手段(3、3’、4、4’)を備えることを特徴とする電離箱(1)を提供する。
【0032】
電離箱内では、イオン性ガスとも呼ばれる、プラズマを形成するのに好適であるガスが、中真空状態で存在している。1本または多数の高電圧ワイヤが、好ましくは電離箱の中心に配置され、高電圧源に接続される。
【0033】
高電圧を印加することによりイオン性ガスが着火されると、形成されたプラズマは、プラズマを安定させるために所定量の光に露出される。
【0034】
本発明によれば、プラズマに所定量の光を当てるための手段は、10〜1100ナノメートル、100〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル(可視光領域)、100〜400(紫外線スペクトル領域)の波長を有する、光を提供するのに好適である任意の光源および/または光学系を備えてもよい。おそらく光学系の方が、光子エネルギーが大きいので、効率がよくなるであろう。
【0035】
光源は、1mWから5000mW、1mWから3000mW、好ましくは100mWから1500mWの放射エネルギーを有してもよい。また光源は、連続光源またはパルス光源であってもよい。パルス光源の場合には、プラズマの着火時に光のパルスを提供するために、光学源をワイヤに印加された高電圧パルスと同期させることができる。
【0036】
プラズマに所定量の光を当てるための手段は、1本または複数の高電圧ワイヤに、あるいは着火されたプラズマ「中心」に光が集束されるようになっていてもよい。好ましくは、この手段は、実質的に電離箱に全体として光が向けられるようになっていてもよい。すなわち電離箱の一部分に光を集束するのではなく、電離箱にまったく光を集束しないのでもない。
【0037】
本発明に係る1つの実施形態では、プラズマに所定量の光を当てるための手段は、1つまたは複数の内部光源、すなわち電離箱の内部に設置された光源、あるいは1つまたは複数の外部光源(3、3’)、すなわち電離箱の外部に設置された光源を備えてもよい。
【0038】
外部光源の場合には、プラズマに所定量の光を当てるための手段は、電離箱(1)の壁に組み込まれた1つまたは複数の透明窓部(4’)をさらに備えてもよいし、あるいはこの代わりに、外部光源(3、3’)から電離箱へと光(4)をガイドするための専用の光学部品を備えてもよい。
【0039】
光源は、連続ランプまたは閃光ランプ、レーザ、発光ダイオード(LED)などのような、上記の範囲の波長および放射エネルギーを有する光を生成するのに好適である任意の光源であってもよい。
【0040】
光を外部光源から電離箱へとガイドするためのそのような光学部品は、例えば鏡、レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、光ファイバーのような光導波路などのような、光をガイドするのに好適である任意の種類の光学機器を備えてもよい。
【0041】
図1に示されるような本発明の特定の実施形態では、プラズマに所定量の光を当てるための手段は、可視スペクトル領域(400〜800nm)で放射する数個の発光ダイオード(LED)(3)を備えてもよい。ここでは、それぞれのLED出力は、光ファイバー(4)に結合される。それぞれの光ファイバー出力は、密封シールされたフィードスルーを有する電離箱に挿入される。光ファイバーは、1つまたは複数の側で、あるいは電離箱の両側で挿入されてもよい。
【0042】
あるいはこの代わりに、図2に示されるように、プラズマに所定量の光を当てるための手段は、UVスペクトル領域で放射する閃光ランプ(3’)および電離箱の壁に組み込まれた1つまたは複数の窓部(4’)を備えてもよい。
【0043】
さらに本発明による1つの実施形態では、上記のプラズマを安定させる方法を、X線を生成するために使用してもよい。そしてX線の生成は以下の原理に基づいている。
1.低圧ワイヤプラズマは、所定量の光を当てることで着火時に安定化し、プラスイオンを生成する。
2.プラスイオンはマイナス極性の電極の方へと加速され、この電極との衝突時に二次電子を生成する。
3.生じた電子ビームは、前述の電極から離れる方向に加速して送られ、金属板と衝突する。
4.金属板上での電子ビームの衝突時にX線が生成される。
【0044】
さらに、本発明による別の実施形態では、上記の電離箱をX線発生器で使用してもよい。また、そのような電離箱が組み込まれたX線発生器をレーザ装置で使用してもよい。
図1
図2