特許第6185559号(P6185559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185559有機希釈剤およびセルロースエーテルを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185559
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】有機希釈剤およびセルロースエーテルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20170814BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K9/08
   A61K9/16
   A61K9/20
   A61K9/48
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-505827(P2015-505827)
(86)(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公表番号】特表2015-512941(P2015-512941A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013035592
(87)【国際公開番号】WO2013154980
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】61/622,757
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・アデン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・ザムラー
(72)【発明者】
【氏名】マインオルフ・ブラックハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・エス・グラスマン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ペーターマン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ジェイ・ギラード
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−512421(JP,A)
【文献】 特開2002−201201(JP,A)
【文献】 特開2004−059922(JP,A)
【文献】 特開2008−285673(JP,A)
【文献】 特表2008−531534(JP,A)
【文献】 特開2008−100997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機希釈剤、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および
少なくとも1種の有効成分、
を含み、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、
s23/s26
(ここでs23は無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である)
が0.29以下であるように無水グルコース単位のヒドロキシル基がメチル基で置換されているヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、
前記有効成分が、pH1〜8の水溶液において観測される水溶解度の最低値0.02mg/mL未満を有する、液体組成物。
【請求項2】
種または複数の補助剤をさらに含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは0.05から0.55のMS(ヒドロキシプロピル)を有する、請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは1.6から2.5のメチル置換度(DS(メチル))を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って20℃で2重量%の水溶液として測定される2.4から200mPa・sの粘度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおける少なくとも1種の有効成分の固体分散体であって、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、
s23/s26
(ここでs23は無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である)
が0.29以下であるように無水グルコース単位のヒドロキシル基がメチル基で置換されているヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、
前記有効成分が、pH1〜8の水溶液において観測される水溶解度の最低値0.02mg/mL未満を有する、固体分散体。
【請求項7】
請求項からのいずれか一項に記載の液体組成物を噴霧乾燥することにより調製された、請求項6に記載の固体分散体。
【請求項8】
前記少なくとも1種の有効成分、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび任意で1種または複数の補助剤をブレンドおよび溶融押出成形することにより調製された、請求項に記載の固体分散体。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物を、錠剤、顆粒、小球、カプレット、トローチ剤、坐剤、ペッサリーおよび埋め込み型物品から選択される剤形に接触させるステップを含む、前記剤形をコーティングするためのプロセス。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物を浸漬ピンに接触させるステップを含む、カプセルを製造するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機希釈剤およびセルロースエーテルを含む液体組成物ならびにセルロースエーテル中の有効成分の固体分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られている多くの薬剤は、水への溶解度が低く、そのため剤形の調製には複雑な技術が必要である。水への溶解度が低い薬剤と組み合わせた薬学的に許容可能な水溶性ポリマーの使用に多くの研究が費やされている。水溶性ポリマーの使用は、薬剤の結晶性を低下させ、それによって薬剤の溶解に必要な活性化エネルギーを最小化すること、ならびに薬物分子の周りに親水性の状態を確立し、それによって薬剤自体の溶解度を改善してその生物学的利用能、すなわちその個体による摂取後の体内吸収を増加することを目的としている。しかし、水溶性ポリマーと水への溶解度が低い薬剤とを単純にブレンドすることでは、一般には薬剤の結晶性は低下しない。
【0003】
G.Van den Mooterの「The use of amorphous solid dispersions:A formulation strategy to overcome poor solubility and dissolution rate」、Drug Discov Today:Technol(2011)、doi:10.1016/j.ddtec.2011.10.002は、それらの溶解の速度および程度を改善することにより難溶性薬剤の生物学的利用能を増加する非結晶質の固体分散体の調製を記述している。非結晶質の固体分散体を調製するために最も適用されている2つの製造方法は、噴霧乾燥および熱溶融押出し(hot melt extrusion)であると考えられている。前者のプロセスは、薬剤および担体の一般的な有機溶媒または溶媒の混合物における溶液から開始する。この溶液をノズルを用いて霧化し、続いて溶媒を素早く(ミリ秒単位で)蒸発させる。急速な溶媒蒸発は、固体分散体の非結晶質の状態に寄与する。
【0004】
Dallas B.Warrenら(Journal of Drug Targeting、2010;18(10):704〜731)は、難水溶性の薬剤の吸収を改善するための重合沈殿抑制剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの水溶性のセルロースエーテルの使用を研究している。
【0005】
S.L. Raghavanら(International Journal of Pharmaceutics 212(2001)213〜221)は、酢酸ヒドロコルチゾン(HA)の結晶化へのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG400)の影響を研究している。
【0006】
国際特許出願WO01/85135号は、イトラコナゾールおよびpH非依存性の水溶性ポリマーを溶媒に溶解した溶液の噴霧乾燥により得られるイトラコナゾール含有医薬組成物を開示している。WO01/85135号は、水溶性ポリマーと共にイトラコナゾールの噴霧乾燥をすることでイトラコナゾールの水への溶解度およびその薬効を改善することを教示している。WO01/85135号は、水溶性ポリマーの中でも特に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体の使用を示唆している。メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースは、イトラコナゾールの水溶解度を際立って増加するとされている。
【0007】
国際特許出願第WO2008/047201号は、難水溶性のイオン性薬剤、カチオン種および分散ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む固体分散体を開示している。実施例によれば、薬剤およびHPMC(E3 Prem LV;Methocel(登録商標)、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能)を水およびメタノールと混合して噴霧溶液を形成する。HPMC中の薬剤の固体噴霧乾燥分散体が生成する。
【0008】
高い重要性および多数の難水溶性薬剤を考慮して、有機希釈剤およびセルロースエーテルを含み、難水溶性の薬剤などの有効成分をその中に組み込むことができ、噴霧乾燥してセルロースエーテル中に有効成分の固体分散体を生成し得る新規の液体組成物を提供することが、本発明の目的である。セルロースエーテル中の改善された噴霧乾燥された有効成分の固体分散体をそこから生成し得る新規の液体組成物を提供することは、本発明の好ましい目的である。有効成分の水溶解度を既知のヒドロキシプロピルメチルセルロースよりも大幅に改善し得るセルロースエーテル中の有効成分の新規の固体分散体を見出すことは、本発明の別の好ましい目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、有効成分の水溶解度は、エーテル置換基が特有の分布パターンを有するセルロースエーテルが選択される場合に、セルロースエーテル中の有効成分の固体分散体を提供することにより著しく改善され得ることが分かっている。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、有機希釈剤、ならびに1−4結合により結合した無水グルコース単位を有し、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、および任意でメチルとは異なるアルキル基を有し、
s23/s26
(ここでs23は無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である)
が0.29以下であるように無水グルコース単位のヒドロキシル基がメチル基で置換されているような少なくとも1種のセルロースエーテルを含む、液体組成物である。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも1種のセルロースエーテル中の少なくとも1種の有効成分の固体分散体を調製するための上記で定義されるような液体組成物の使用である。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、セルロースエーテルは上記で定義されるような、少なくとも1種のセルロースエーテル中の少なくとも1種の有効成分の固体分散体である。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、上記で定義されるような液体組成物を剤形と接触させるステップを含む、剤形をコーティングするためのプロセスである。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、上記で定義されるような液体組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含む、カプセルの製造のためのプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液体組成物は、1−4結合により結合した無水グルコース単位を有し、かつ置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、および任意でメチルとは異なるアルキル基を有する少なくとも1種のセルロースエーテルを含む。ヒドロキシアルキル基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましくはセルロースエーテルは、1種または2種のヒドロキシアルキル基、より好ましくは1種または複数のヒドロキシ−C1~3−アルキル基、例えばヒドロキシプロピルおよび/またはヒドロキシエチルを含む。有用な任意のアルキル基は、例えばエチルまたはプロピルであり、エチルは好ましい。好ましい三元のセルロースエーテルは、エチルヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好ましいセルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、具体的にはヒドロキシ−C1~3−アルキルメチルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0016】
セルロースエーテルの本質的特徴は、s23/s26が0.29以下、好ましくは0.28以下、より好ましくは0.26以下、最も好ましくは0.24以下および特には0.22以下であるような無水グルコース単位上のメチル基のその独特の配置である。s23/s26は、典型的には0.05以上、より典型的には0.08以上および最も典型的には0.11以上である。
【0017】
比s23/s26において、s23は、無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、s26は、無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である。s23を決定するための「無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率」と言う語は、6位がメチルで置換されていないことを意味し、例えば、非置換のヒドロキシル基でもよく、あるいはヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基またはアルキル化ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。s26を決定するための「無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率」と言う語は、3位がメチルで置換されていないことを意味し、例えば、非置換のヒドロキシル基でもよく、あるいはヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基またはアルキル化ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。
【0018】
「ヒドロキシル基がメチル基で置換された」または「ヒドロキシル基がヒドロキシアルキル基で置換された」と言う語は、本明細書で使用する場合、ヒドロキシル基上の水素原子がメチル基またはヒドロキシアルキル基で置き換えられていることを意味する。
【0019】
下式Iは、無水グルコース単位中のヒドロキシル基の番号付けを例示する。式Iは、例示目的のためだけに使われるものであり、本発明のセルロースエーテルを示すものではない(ヒドロキシアルキル基での置換は式Iに示されない)。
【化1】
【0020】
好ましくはセルロースエーテルは、DS(メチル)が1.6から2.5、より好ましくは1.7から2.4、および最も好ましくは1.7から2.2である。セルロースエーテルのメチル置換度、DS(メチル)は、メチル基で置換されたOH基の無水グルコース単位当たりの平均数である。
【0021】
DS(メチル)を決定するための「メチル基で置換されたOH基」と言う語は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合するメチル化OH基だけではなく、ヒドロキシアルキル化後に形成されたメチル化OH基も含む。
【0022】
一般にはセルロースエーテルは、MS(ヒドロキシアルキル)が0.05から0.55、好ましくは0.07から0.50、より好ましくは0.10から0.45、および最も好ましくは0.15から0.35である。ヒドロキシアルキル置換度は、MS(モル置換)を用いて記述される。MS(ヒドロキシアルキル)は、エーテル結合によって結合するヒドロキシアルキル基の無水グルコース単位のモル当たりの平均数である。ヒドロキシアルキル化の時に、複数の置換基が側鎖となり得る。
【0023】
MS(ヒドロキシアルキル)とDS(メチル)との和は、好ましくは少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9、かつ好ましくは最大2.7、より好ましくは最大2.5である。
【0024】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース中のメトキシル%およびヒドロキシプロポキシル%の定量は、米国薬局方(USP 32)に従って行われる。得られる値は、メトキシル%およびヒドロキシプロポキシル%である。これらは続いてメチル置換基に関する置換度(DS)およびヒドロキシプロピル置換基に関するモル置換(MS)に変換される。変換において塩の残存量が考慮されている。
【0025】
本発明の液体組成物において利用されるセルロースエーテルの粘度は、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って20℃で2重量%水溶液として測定され、一般には2.4から200mPa・s、好ましくは2.4から100mPa・s、より好ましくは2.5から50mPa・s、および特には3から30mPa・sである。
【0026】
上述のセルロースエーテルを作成する方法は、実施例に詳細に記載される。セルロースエーテルを作成するためのプロセスのいくつかの態様は、より一般的な語で下記に記載される。
【0027】
上述のセルロースエーテルは、
i.セルロースパルプを第1の量のアルカリ化剤で処理するステップ、および
ii.少なくとも1種のメチル化剤をセルロースパルプに加えるステップ、
を含む第1段階、
後続の反応混合物を70℃以上の反応温度に加熱するステップならびにその後の
iii.毎分無水グルコース単位のモル当たりアルカリ化剤0.075モル当量未満の速度で、少なくとも65℃の温度で、追加量のアルカリ化剤を反応混合物に加えるステップ、および任意でそれぞれの個別の追加段階について、
iv.追加量の少なくとも1種のメチル化剤を反応混合物に加えるステップ、
を含む少なくとも1つの追加段階、
を含む多段階エーテル化プロセスであって、
第1段階におけるアルカリ化剤の追加の前、後または同時に少なくとも1種のヒドロキシアルキル化剤、および任意でメチル化剤とは異なる少なくとも1種のアルキル化剤(alkylation agent)を、セルロースパルプに加えるか、または部分的に反応したセルロースパルプへ、セルロースパルプのエーテル化の進行中に加える、
プロセスにより取得し得る。
【0028】
セルロースエーテルを調製するためのセルロース原料は、典型的には綿または木材から得られるセルロースパルプであり、好ましくは木材パルプである。典型的には粉末または削りくずの形態で提供される。
【0029】
上述したプロセスにおいて、セルロースパルプまたはセルロースパルプのヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応の進行時の部分的に反応したセルロースパルプは、1つまたは複数の反応器においてアルカリ化剤で、2つ以上の段階、好ましくは2つまたは3つの段階においてアルカリ化される。アルカリ化剤は、任意の強塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウム、苛性ソーダまたは石灰あるいは2種以上のこうした強塩基の混合物であってよく、水溶液として用いられる。通常はアルカリ金属水酸化物の水溶液の総重量に基づいてアルカリ金属水酸化物の含有量が好ましくは30から70パーセント、より好ましくは35から60パーセント、最も好ましくは48から52パーセントのアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられる。
【0030】
一実施形態において、ジメチルエーテルなどの有機溶媒が希釈剤および冷却剤として反応器に加えられる。さらに、反応器のヘッドスペースは、酸素触媒によるセルロースエーテル生成物の解重合を制御するために任意で不活性ガス(窒素など)でパージされる。
【0031】
プロセスの第1段階においてセルロースパルプは、第1の量のアルカリ化剤、典型的にはセルロース中の無水グルコース単位のモル当たり1.2から3.5モル当量のアルカリ化剤で処理される。処理は、当技術分野において知られている任意の方法、例えば浴または撹拌槽における浸漬あるいは噴霧により行ってよい。パルプ中のアルカリ化剤の均一な膨潤および分散は、混合および撹拌により達成してよい。第1段階においてアルカリ化剤の水溶液のセルロースパルプへの添加の速度は重要ではない。いくつかのポーション、例えば2から4ポーションで加えるかまたは連続的に加えてよい。通常は15から60分間続く第1段階アルカリ化の間、温度は典型的には45℃以下に維持する。
【0032】
さらに、プロセスの第1段階内で、第1の量のアルカリ化剤の前、後または同時に、好ましくはアルカリ化剤の添加後に塩化メチルまたは硫酸ジメチルなどのメチル化剤をセルロースパルプに加える。メチル化剤は、単一の段階において、セルロースに加えるかまたはセルロースパルプのヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応の進行時に部分的に反応したセルロースパルプへ加えてもよいが、好ましくは2つ以上の段階、より好ましくは2つまたは3つの段階、最も好ましくは2つの段階において加えられる。
【0033】
メチル化剤が単一の段階において加えられる場合は、一般には無水グルコース単位のモル当たり3.5から6.0モルの量のメチル化剤が加えられるが、いずれにしても第1段階において反応混合物を加熱する前に加えられるアルカリ化剤に対して少なくとも等モル量が加えられる。メチル化剤が単一の段階において加えられる場合は、好ましくは毎分無水グルコース単位のモル当たりメチル化剤0.25から1.0モル当量の速度で加えられる。第1段階において用いられるメチル化剤は、任意の従来型の懸濁化剤と予備混合してもよい。この場合、好ましくは懸濁化剤および少なくとも1種のメチル化剤の総重量に基づいて20から50%、より好ましくは30から50%の懸濁化剤を含む混合物が用いられる。
【0034】
一旦セルロースが第1の量のアルカリ化剤で処理され、好ましくはさらに45℃以下の温度で実行されるメチル化剤および見込まれる第1段階のさらなる成分の添加が達成されると、反応混合物は、典型的には30から80分以内に、少なくとも70℃、好ましくは70〜90℃の範囲、より好ましくは70〜80℃の範囲の反応温度まで加熱される。通常は次いでこの反応温度で反応を10から30分間続行させる。
【0035】
続いてプロセスは、追加量のアルカリ化剤の添加、および任意でそれぞれの個別の添加段階について、追加量のメチル化剤の反応混合物への添加を含む、少なくとも1つの添加段階を含む。少なくとも1つの添加段階内で水溶液として加えられる追加のアルカリ化剤の総量は、典型的には無水グルコース単位のモル当たりアルカリ化剤1.0から2.9モル当量の範囲である。好ましくは、第1段階において加えられるアルカリ化剤の量と少なくとも1つの添加段階において加えられるアルカリ化剤全体の量との間のモル当量比は、0.6:1から3.5:1である。少なくとも1つの添加段階においてアルカリ化剤は反応混合物にゆっくり、すなわち無水グルコース単位のモル当たりのアルカリ化剤モル当量が毎分0.075未満、好ましくは0.065未満、より好ましくは0.055未満の速度で加えられることは重要である。第2段階のアルカリ化剤は、一般には65から85℃、好ましくは70から80℃の温度で加えられる。
【0036】
典型的にはメチル化剤は、無水グルコース単位のモル当たり2から6モルの範囲の総量で用いられる。メチル化剤が第1段階においてだけでなく、少なくとも1つの添加の後続の段階、好ましくは1つの添加段階においても加えられる場合、典型的には第1段階において無水グルコース単位のモル当たり2.0から4.0モルの量のメチル化剤および少なくとも1つの添加段階において総量で無水グルコース単位のモル当たり1.5から3.4モルのメチル化剤が加えられる。いずれにしてもメチル化剤は、反応混合物に存在するアルカリ化剤に対して少なくとも等モル量が加えられる。したがって、あるとすれば、第2段階のメチル化剤は、セルロースまたは、セルロースパルプのヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応の進行時に部分的に反応したセルロースパルプが、アルカリ化剤に対して少なくとも等モル当量のメチル化剤と連続的に接触するような方法で、アルカリ化剤の添加の第2および任意で第3段階の前または途中に反応混合物に加えられる。
【0037】
メチル化剤が2つの段階において加えられる場合、第1段階のメチル化剤は、好ましくは毎分無水グルコース単位のモル当たりのメチル化剤が0.25から0.5モル当量の速度で加えられる。単一の段階または第1段階のメチル化剤は、懸濁化剤と予備混合してもよい。この場合は懸濁化剤およびメチル化剤の混合物は、好ましくはメチル化剤および懸濁化剤の総重量に基づいて20から50重量パーセント、より好ましくは30から50重量パーセントの懸濁化剤を含む。
【0038】
メチル化剤が2つの段階において加えられる場合、メチル化剤の第2段階は、一般には反応混合物を約70〜90℃の温度に10から30分間加熱した後に反応混合物に加えられる。第2段階のメチル化剤は、好ましくは毎分無水グルコース単位のモル当たりのメチル化剤が0.25から0.5モル当量の速度で加えられる。メチル化剤が2つの段階において加えられる場合、第1段階のメチル化剤と第2段階のメチル化剤との間のモル比は、一般には0.68:1から1.33:1である。少なくとも1つの添加段階のそれぞれにおけるメチル化剤は、その中に用いられる場合、セルロースがアルカリ化剤に対して少なくとも等モル当量の少なくとも1種のメチル化剤と連続的に接触するような方法で、その段階の追加量のアルカリ化剤の添加より前にまたは途中に反応混合物に加えなければならない。
【0039】
上述の手順の代替法として、メチル化剤およびアルカリ化剤それぞれが2つの段階において加えられる場合、第2段階のメチル化剤は、第2段階のアルカリ化剤の一部が加えられた後に反応混合物に加えられ、その後にアルカリ化剤の次の添加が続いてよい;すなわち、メチル化剤は、その後に第3段階のアルカリ化剤の添加が続く第2段階において加えられる。プロセスのこの実施形態において、第2および第3段階において加えられる無水グルコースのモル当たりのアルカリ化剤の総量は、一般には無水グルコース単位のモル当たり1.0から2.9モルであり、その中で好ましくは40から60パーセントが第2段階において加えられ、60から40パーセントが第3段階において加えられる。好ましくは第3段階において用いられるアルカリ化剤はゆっくり、すなわち、毎分無水グルコース単位のモル当たりアルカリ化剤の0.075モル当量未満の速度で、典型的には0.055モル当量未満の速度で加えられる。第3段階のメチル化剤およびアルカリ化剤は、一般には65から85℃、好ましくは70から80℃の温度で加えられる。
【0040】
1種または複数、好ましくは1種または2種のヒドロキシアルキル化剤、例えば酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンも、第1段階において加えられるアルカリ化剤の前、後または同時のいずれかに、セルロースパルプまたは、セルロースパルプのヒドロキシアルキルメチルセルロースへの反応の進行時に部分的に反応したセルロースパルプへ加えられる。単一のヒドロキシアルキル化剤または2種以上、好ましくは1種のみのヒドロキシアルキル化剤を利用してもよい。ヒドロキシアルキル化剤は、一般には無水グルコース単位のモル当たり0.2から2.0モルの量のヒドロキシアルキル化剤が加えられる。ヒドロキシアルキル化剤は、有利には反応混合物を反応温度、すなわち20から70℃、好ましくは40から60℃の温度に加熱する前に加えられる。
【0041】
メチル化剤とは異なる追加のアルキル化剤も、第1段階において加えられるアルカリ化剤の前、後または同時のいずれかに、セルロースパルプに加えてよい。非限定的な例には、塩化エチル、臭化エチルもしくはヨウ化エチル、硫酸ジエチルおよび/または塩化プロピルが含まれる。追加のアルキル化剤は、一般には無水グルコース単位のモル当たり0.5から6モルの量のアルキル化剤が加えられる。アルキル化剤は、有利には反応混合物を反応温度、すなわち20から70℃、好ましくは40から60℃の温度に加熱する前に加えられる。
【0042】
上述の多段階エーテル化の達成後、得られるセルロースエーテルは、典型的にはさらに精製、乾燥および/または粉砕される。通常はセルロースエーテルは、洗浄して塩および他の反応副生成物を除去する。エーテル化反応の副生成物として形成された塩が溶解可能である任意の溶媒を用いてよいが、通常は水が利用される。セルロースエーテルは、反応器中で洗浄してもよいが、好ましくは反応器の下流に位置する別個の洗浄器内で洗浄される。洗浄の前または後に、例えば蒸気への暴露により残留揮発性有機化合物の含有量を減少し、セルロースエーテルを取り除いてもよい。
【0043】
セルロースエーテルは、水分および他の揮発性の化合物の含有量をセルロースエーテル、水および他の揮発性化合物の重量の和に基づいて好ましくは水および他の揮発性化合物が0.5から10.0重量%、より好ましくは0.8から5.0重量%まで減少させるために乾燥させてもよい。乾燥は、トレイ乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、撹拌乾燥機または管乾燥機などの従来型の乾燥機を用いて行ってよい。水分および他の揮発性化合物の含有量の減少は、セルロースエーテルが微粒子形状に粉砕されることを可能にする。乾燥したセルロースエーテルは、ボールミル、衝撃式粉砕機、刃物研削盤または気流衝撃式ミル(air−swept impact mill)などの当技術分野において知られている任意の適した手段によって所望されるサイズの粒子に粉砕してもよい。必要に応じて、乾燥および粉砕を同時に行ってもよい。
【0044】
上述したプロセスに従って、一般には重量で1.5%の水溶液中20℃でHaake RS600においてせん断速度2.55s−1で測定される粘度が150mPa・sより大きく、好ましくは500から200,000mPa・s、より好ましくは500から100,000mPa・s、最も好ましくは1,000から80,000、特には1,000から60,000であるセルロースエーテルが得られる。本発明の液体組成物における使用に特に適したセルロースエーテルを調製するために、こうしたセルロースエーテルは、一般には部分的解重合プロセスを受ける。部分的解重合プロセスは、当技術分野において良く知られており、例えば欧州特許出願第1,141,029号;第210,917号;第1,423,433号;および米国特許第4,316,982号に記載されている。あるいは、部分的解重合は、セルロースエーテルの生成中に、例えば酸素または酸化剤の存在によって達成してもよい。こうした部分的解重合プロセスにおいて、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って20℃で2重量%水溶液で測定される粘度が2.4から200mPa・s、好ましくは2.4から100mPa・s、より好ましくは2.5から50mPa・s、特には3から30mPa・sであるセルロースエーテルが得られ得る。
【0045】
本発明の組成物は、25℃および大気圧で液状であり、上述のように少なくとも1種のセルロースエーテルに加えて有機希釈剤を含む。本明細書で使用する場合「有機希釈剤」と言う語は、有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機希釈剤は、1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素または塩素のようなハロゲンを有する極性有機溶媒である。より好ましい有機希釈剤は、アルコール、最も好ましくは多官能性アルコール、例えばグリセロール、または単官能性アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールもしくはn−プロパノール;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン;酢酸塩、例えば酢酸エチル;ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン;ニトリル、例えばアセトニトリルである。より好ましくは有機希釈剤は、1から6個、最も好ましくは1から4個の炭素原子を有する。本発明の液体組成物は、さらに水を含み得るが、液体組成物は、有機希釈剤および水の総重量に基づいて、50より多く、より好ましくは少なくとも65、および最も好ましくは少なくとも75重量パーセントの有機希釈剤、ならびに50未満、より好ましくは最大35、および最も好ましくは最大25重量パーセントの水を含んでいなければならない。任意で少量の水と混合される好ましい有機希釈剤の特定の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、80から95重量パーセントのメタノールおよび20から5重量パーセントの水のブレンド、80から95重量パーセントのテトラヒドロフランおよび20から5重量パーセントの水のブレンド、55から85重量パーセントのアセトンおよび45から15重量パーセントの水のブレンド、15から85重量パーセントのアセトンおよび85から15重量パーセントのメタノールのブレンド、15から85重量パーセントのメチルエチルケトンおよび85から15重量パーセントのメタノールのブレンド、30から50重量パーセントのアクリロニトリルおよび70から50重量パーセントのC1〜4−モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはn−プロパノールのブレンド;30から50重量パーセントのメタノールおよび70から50重量パーセントのテトラヒドロフランまたは酢酸エチルのブレンド、あるいは70から90重量パーセントのエタノールおよび10から30重量パーセントのテトラヒドロフランまたは酢酸エチルのブレンドである。
【0046】
本発明の液体組成物は、有効成分のための賦形剤システムとして有用であり、特には有効成分、例えば肥料、除草剤または殺虫剤、あるいは生物学的有効成分、例えばビタミン、ハーブ系およびミネラル系のサプリメントおよび薬剤などのための賦形剤システムを調製するための中間体として有用である。したがって、本発明の液体組成物は、好ましくは1種または複数の有効成分、最も好ましくは1種または複数の薬剤を含む。「薬剤」と言う語は、従来型の、動物、特にヒトに投与した場合に有益な予防的および/または治療的特性を有する化合物を意味する。好ましくは、薬剤は、生理学的に妥当なpH(例えば、pH1〜8)で最低限の水溶解度が約0.5mg/mL以下である薬剤を意味する「低溶解性薬剤」である。本発明は、薬剤の水溶解度が低下するほど高い有用性を見出している。したがって、本発明の組成物は、水溶解度(mg/mL)がUSP疑似胃腸緩衝液を含めた任意の生理学的に妥当な水溶液(例えば、pH値が1から8までの物)において観察される最低値である、水溶解度が0.1mg/mL未満または0.05mg/mL未満または0.02mg/mL未満、またはさらには0.01mg/mL未満の低溶解性薬剤のために好ましい。
【0047】
本発明の液体組成物内および本発明の固体分散体内に含まれるセルロースエーテルは、水溶液において過飽和レベルの難水溶性の薬剤などの、難水溶性の有効成分の濃度を維持することが可能である。上述のセルロースエーテルが無い場合よりも、水溶液において難水溶性の有効成分の大幅に高い濃度が維持され得る。水溶液における難水溶性の有効成分の過飽和の程度は、所与の有効成分の物理的安定性および溶出速度などの様々な要因に依存する。Dwayne T.FriesenらはMOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、1003〜1019、2008年において、構造的に異なる範囲の物理化学的特性の化合物を物理的性質のマップTm/Tg比対log P上に分類した。log P値は、化合物の親油性の標準的尺度である。2つの相が互いに平衡状態にある場合に、(2)水相中の薬剤濃度に対する(1)オクタノール相中の薬剤濃度の比の10を底とする対数として定義されるlog Pは、広く認められている疎水性の尺度である。log Pは、実験的に基づいて測定するか、または当技術分野において知られている方法を用いて計算してもよい。計算した値をlog Pのために用いる場合は、log Pを計算するために一般に認められている任意の方法を用いて計算された最高値が使われる。算出されたlog P値は、その計算法により、しばしばClog P、Alog PおよびMlog Pなどと呼ばれる。log Pは、フラグメント法、例えばCrippenのフラグメント法(27 J.Chem.lnf.Comput.Sci.2 1(1987))、Viswanadhanのフラグメント法(29 J.Chem.lnf.Comput.Sci.163(1989))またはBrotoのフラグメント法(19 Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.7 1(1984))を用いて概算してもよい。
【数1】
【0048】
高いlog P値を持つ化合物は、極めて疎水性であり、極度に低い水溶性(それらの融点が約100℃を超える場合はしばしば1μg/mL未満)および水中に置かれた場合に湿潤しにくい性質を有する傾向がある。
【0049】
Tmは大気圧における化合物の融解温度、Tgはガラス転移温度である。Dwayne T.Friesenらは、この物理的性質マップTm/Tg比対log P(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、2008の1018頁、図14)上のそれらの位置に基づいて化合物を4つのグループに分けている。第1のグループ、グループ1は、相対的に低いTm/Tg比(<1.25K/K)および低から中程度のlog P値(約6未満)の化合物からなり、グループ2の化合物は、やや高いTm/Tg比(1.25〜1.4)および低から中程度のlog P値(約6未満)を有する。グループ3の化合物は、さらにより高いTm/Tg値(1.4より高い)および低から中程度のlog P値(約6未満)を有する。最後に、グループ4の化合物は、高いlog P値(少なくとも約6)を有する。
【0050】
驚くべきことに、本発明の液体組成物中で利用されるセルロースエーテルは、さらに既知の同等のセルロースエーテルよりも高い、水溶液中である有効成分を過飽和レベルで維持する能力を有することが分かっている。例えば8.54mg/lの極めて低い水溶性を有しマップTm/Tg比対log P(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、2008年の1018頁、図14)上のグループ2に属する薬剤グリセオフルビンは、上記のs23/s26が0.29以下のセルロースエーテルの存在下で、s23/s26が0.29より大きい同等のセルロースエーテルの存在下よりも高い濃度を有する。
【0051】
したがって、本発明の好ましい態様は、上述のような少なくとも1種のセルロースエーテルと、1.0より大きく1.8まで、好ましくは1.1より大きく1.6まで、より好ましくは1.15から1.5まで、最も好ましくは1.25から1.40のTm/Tg比(ここで融解温度Tmおよびガラス転移温度Tgはそれぞれケルビンである)を有する少なくとも1種の有効成分と、を含む、液体組成物または固体分散体である。有効成分は、好ましくは1より大きく11まで、好ましくは1.5から8、最も好ましくは2から6のlog Pを有する。
【0052】
低溶解性の有効成分は本発明と共に使用するために好ましい部類を代表するものではあるが、有効成分は、本発明の利益を享受するために低溶解性の有効成分である必要はない。使用の所望の環境において明らかな水溶解性を示す有効成分は、最大1から2mg/mLまで、またはさらには20から40mg/mLにまで達する水溶解性を有していてもよい。有用な低溶解性薬剤は、国際特許出願WO2005/115330、17〜22頁に記載されている。
【0053】
本発明の液体組成物は、好ましくは液体組成物の総重量に基づいて1から40重量パーセント、より好ましくは2.5から30重量パーセント、最も好ましくは5から25重量パーセント、および特には7から20パーセントの上述のような少なくとも1種のセルロースエーテル、40から99重量パーセント、より好ましくは54.9から97.4重量パーセント、最も好ましくは65から94.5重量パーセントおよび特には70から92パーセントの有機希釈剤、ならびに0から40パーセント、好ましくは0.1から40パーセント、最も好ましくは0.5から25パーセント、および特には1から15パーセントの有効成分を含む。
【0054】
本発明の一態様において本発明の液体組成物は、上述のような少なくとも1種のセルロースエーテル、1種または複数の有効成分および任意で懸濁液、噴霧可能な組成物またはシロップ剤などの形態の液状形態で用いられ得る1種または複数の補助剤を含む。液体組成物は、例えば、経口、眼、局所、直腸または鼻の利用のために有用である。液体希釈剤は一般に、上述のように任意で少量の水と混合されたエタノールまたはグリセロールなど、薬学的に許容可能でなければならない。
【0055】
本発明の別の態様において、本発明の液体組成物は、上述のような少なくとも1種のセルロースエーテルおよび任意で1種または複数の補助剤における、さらに上に述べた薬剤などの少なくとも1種の有効成分の固体分散体を生成するために用いられる。固体分散体は、組成物から液体希釈剤を除去することにより生成される。液体組成物から液体希釈剤を除去する1つの方法は、液体組成物を薄膜またはカプセル内に流し込むことによるもの、あるいは固体担体上に液体組成物を塗布することによるものであり同様に有効成分を含み得る。固体分散体を生成する好ましい方法は噴霧乾燥によるものである。「噴霧乾燥」と言う語は、液体混合物を小さい液滴に分割すること(噴霧化)および液滴からの溶媒の蒸発のための強い駆動力がある噴霧乾燥装置において混合物から溶媒を迅速に除去することを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセスおよび噴霧乾燥装置は、一般にはPerry’s Chemical Engineers’Handbook、20−54から20−57頁(第6版、1984年)に記載されている。噴霧乾燥プロセスおよび装置のさらなる詳細は、Marshallによって再調査された「Atomization and Spray−Drying」、50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954年)、およびMastersのSpray Drying Handbook(第4版、1985年)である。有用な噴霧乾燥プロセスは、国際特許出願第WO2005/115330号、34頁7行〜35頁25行に記載されている。
【0056】
あるいは、本発明の固体分散体は、i)a)上記で定義される少なくとも1種のセルロースエーテル、b)1種または複数の有効成分およびc)1種または複数の任意の添加剤をブレンドすること、ならびにii)ブレンドを溶融押出しさせることにより調製してもよい。「溶融押出し」と言う語は、本明細書で使用する場合、射出成形、溶融鋳造および圧縮成形として知られるプロセスを含む。薬剤などの有効成分を含む溶融押出成形組成物のための技術は知られており、Joerg BreitenbachによりMelt extrusion:from process to drug delivery technology、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 54(2002年)107〜117または欧州特許出願第0872233号に記載されている。上述した成分a)、b)および任意でc)は、好ましくは粒子の形態、より好ましくは粉末化された形態で混合される。成分a)、b)および任意でc)は、溶融押出しのために利用される機器内にブレンドを供給する前に予備混合してもよい。溶融押出しのために有用な機器、具体的には有用な押出機は、当技術分野において知られている。あるいは、成分a)、b)および任意でc)は、押出機に別々に供給し、加熱するステップの前または途中に機器内でブレンドしてもよい。好ましくは成分a)、b)および任意でc)は、押出機ホッパー内で予備ブレンドされ、そこから押出機内に供給される。押出機内に供給された組成物または成分は、組成物またはそれらの少なくとも1種もしくは複数の成分が溶解または軟化して有効成分が全体に分散したブレンドを形成することとなる温度である押出機の加熱された領域を通過する。ブレンドは、溶融押出しを受け、押出機から出される。典型的な押出し溶解温度は、50から210℃、好ましくは70から200℃、より好ましくは90から190℃であり、押出機加熱区域(1つまたは複数)のための設定により決定される。処理中の組成物の有効成分および他の成分の劣化または分解を最小化することとなる運転温度範囲が選択されなければならない。単一または複数のスクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機は、本発明の溶融押出プロセスにおいて用いてもよい。押出機内で得られる溶融または軟化混合物は、1つまたは複数の出口開口部、例えば1つまたは複数のノズルまたはダイを通って推し進められる。溶融または軟化混合物は、次いで1つまたは複数の開口部を有するダイまたは他のこうした要素を通って外に出て、その時に、溶融押出しされたブレンド(この時点で押出物と呼ばれる)は硬化し始める。ダイを出る時に押出物はまだ温かいまたは熱いので、成形、鋳造、切断、粉砕、小球に球形化、より糸状に切断、錠剤化または所望の物理的形状への他の処理が容易になされ得る。
【0057】
噴霧乾燥または溶融押出により、少なくとも大部分、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは100%の有効成分が非結晶質の形態でありセルロースエーテル中に分散した、好ましくは固体非結晶質の分散体が生成される。「非結晶質の」と言う語は、本明細書で使用する場合、有効成分が長距離の三次元の並進秩序を有さないことを意味する。本発明の固体分散体は、セルロースエーテルa)および有効成分b)の総重量に基づいて好ましくは20から99.9パーセント、より好ましくは30から98パーセント、および最も好ましくは60から95パーセントの上述のようなセルロースエーテルa)、ならびに好ましくは0.1から80パーセント、より好ましくは2から70パーセント、および最も好ましくは5から40パーセントの有効成分b)を含む。セルロースエーテルa)および有効成分b)の組み合わせた量は、固体分散体の総重量に基づいて好ましくは少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも80パーセント、および最も好ましくは少なくとも90パーセントである。残りの量は、もしあれば、上述のような1種または複数の補助剤c)である。固体分散体は、1種または複数のセルロースエーテルa)、1種または複数の有効成分b)、および任意で1種または複数の補助剤c)を含んでいてよいが、それらの総量は一般には上述の範囲内である。
【0058】
少なくとも1種のセルロースエーテル中の少なくとも1種の有効成分の固体分散体が一旦形成されると、分散体の剤形への組み込みをしやすくするためにいくつかの処理作業が用いられ得る。これらの処理作業には、乾燥、造粒および製粉が含まれる。固体分散体中の任意の補助剤の含有は、組成物を錠剤、丸薬、顆粒、小球、カプレット、微粒子、カプセルの充填物などの剤形、またはペースト、クリーム、懸濁液もしくはスラリー中に配合するために有用であり得る。剤形中の有効成分の量は、剤形の総重量に基づいて一般には少なくとも0.1パーセント、好ましくは少なくとも1パーセント、より好ましくは少なくとも3パーセント、最も好ましくは少なくとも5パーセントおよび一般には最大70パーセント、好ましくは最大50パーセント、より好ましくは最大30パーセント、最も好ましくは最大25パーセントである。
【0059】
本発明の別の態様において、本発明の液体組成物は、錠剤、顆粒、小球、カプレット、トローチ剤、坐剤、ペッサリーまたは埋め込み型剤形などのコーティング剤形のために用いてコーティングされた組成物を形成してもよい。本発明の液体組成物が薬剤などの有効成分を含む場合、薬剤層化が達成され得る、すなわち、剤形およびコーティングは、異なる最終用途のための異なる有効成分を含み得るおよび/または異なる放出動態を有し得る。
【0060】
本発明のさらに別の態様において、本発明の液体組成物は、カプセルの製造のために液体組成物を浸漬ピンに接触させるステップを含むプロセスにおいて用いてもよい。
【0061】
本発明の液体組成物および固体分散体は、任意の添加剤、例えば着色剤、顔料、乳白剤、風味および味改良剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、粘着防止剤、流動促進剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、塩、例えば塩化ナトリウム;単糖類、例えば精製糖および乳糖;第2のセルロースエーテル、ならびに任意のそれらの組み合わせをさらに含み得る。1種または複数の任意の補助剤の有用な量および種類は、一般には当技術分野において知られており、本発明の液体組成物または固体分散体の意図される最終用途によって決まる。多種類の任意の補助剤が国際特許出願WO2005/115330、45頁20行〜46頁33行に開示されている。
【0062】
以下の実施例は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。特段の指定のない限り、全ての割合は重量による。
【実施例】
【0063】
実施例1から3および比較例AからH
ヒドロキシプロピルメチルセルロース中のメトキシル%およびヒドロキシプロポキシル%の定量は、米国薬局方(USP 32)に従って行われる。得られる値は、メトキシル%およびヒドロキシプロポキシル%である。これらは続いてメチル置換基に関する置換度(DS)およびヒドロキシプロピル置換基に関するモル置換(MS)に変換される。変換において塩の残存量が考慮されている。
【0064】
試料の粘度は、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って20℃で重量で2%の水溶液として測定される。
【0065】
s23/s26の測定
セルロースエーテル中のエーテル置換基の測定は、一般に知られており、例えば、Carbohydrate Research、176(1988)137〜144、Elsevier Science Publishers B.V.、アムステルダム、Bengt Lindberg、Ulf LindquistおよびOlle StenbergによるDISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O−ETHYL−O−(2−HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載されている。
【0066】
具体的には、s23/s26の測定は以下のように行われる:
10〜12mgのセルロースエーテルを、約90℃で撹拌下で4.0mLの分析用乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck(独国、ダルムシュタット)、0.3nm分子篩ビード上で保管)に溶解し、次いで再び室温に冷却する。溶液を室温で一晩撹拌したままにし、完全に可溶化する。セルロースエーテルの可溶化を含む全反応は、4mLのねじ蓋式バイアル中で乾燥窒素雰囲気を用いて行う。可溶化後、溶解したセルロースエーテルを22mLのねじ蓋式バイアルへ移す。無水グルコース単位のヒドロキシル基当たり30倍モル過剰の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルである、粉末化した水酸化ナトリウム(新しくすり潰したもの、分析グレード、Merck(独国、ダルムシュタット))およびヨウ化エチル(合成用、銀で安定化、Merck−Schuchardt(独国、ホーエンブルン)を加え、溶液を暗所、窒素下で周囲温度で3日間勢いよく撹拌する。第1の試薬追加と比較して3倍量の試薬水酸化ナトリウムおよびヨウ化エチルの添加および室温でさらなる撹拌をさらに2日間することで完全エチル化(perethylation)を繰り返す。任意で反応混合物は、反応の進行時の良好な混合を確実にするためにDMSO最大1.5mLまで希釈してもよい。5mLの5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を反応混合物に注ぎ入れ、次いで得られる溶液を4mLのジクロロメタンで3回抽出する。混ぜ合わさった抽出物を2mLの水で3回洗う。有機相を無水硫酸ナトリウム(約1g)で乾燥する。ろ過後、窒素の緩流中で溶媒を除去し、試料をさらなる試料調製まで4℃で保管する。
【0067】
完全エチル化した試料約5mgの加水分解を、100℃で1時間の撹拌下で、1mLの90%の含水ギ酸と共に2mLのねじ蓋式バイアル中で窒素下で行う。窒素の流れの中で35〜40℃で酸を除去し、1mLの2M水性トリフルオロ酢酸と共に不活性窒素雰囲気中で撹拌下で120℃で3時間加水分解を繰り返す。完了後酸を除去し、共蒸留のために約1mLのトルエンを用いて窒素の流れの中で周囲温度で乾燥する。
【0068】
加水分解の残留物を、2Nアンモニア水溶液(新しく調製したもの)中で0.5mLの0.5Mホウ化重水素化ナトリウム(sodium borodeuteride)を用いて室温で撹拌下で3時間減少させる。過剰試薬を約200μLの高濃度酢酸を滴下で追加することにより消失させる。得られる溶液を、窒素の流れの中で約35〜40℃で蒸発乾固し、続いて真空中で室温で15分間乾燥させる。粘性の残留物を、メタノール中の15%酢酸0.5mLに溶解し、室温で蒸発乾固する。これを5回行い、純メタノールで4回繰り返す。最終蒸発後、試料を真空中で室温で一晩乾燥する。
【0069】
減少の残留物を、600μLの無水酢酸および150μLのピリジンで90℃で3時間アセチル化する。試料を冷却後、バイアルをトルエンで満たし、窒素の流れの中で室温で蒸発乾固する。残留物を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLの水に注ぎ入れ、2mLのジクロロメタンで抽出する。抽出を3回繰り返す。混ぜ合わさった抽出物を4mLの水で3回洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。乾燥したジクロロメタン抽出物を、続いてGC分析する。GCシステムの感度によっては、抽出物のさらなる希釈が必要であり得る。
【0070】
ガス液体クロマトグラフ(GLC)分析を、J&WキャピラリーカラムDB5、30m、0.25mm ID、0.25μm面層厚を備えたHewlett Packard 5890Aおよび5890AシリーズII型のガスクロマトグラフで1.5バールのヘリウムキャリアガスで運転して実施する。ガスクロマトグラフを、60℃で1分一定に保ち、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、4℃/分の速度で250℃までさらに加熱し、20℃/分の速度で310℃までさらに加熱し、ここでさらに10分間一定に保つ温度プロファイルでプログラムする。注入器温度は280℃に設定し、炎イオン化検出器(FID)の温度は300℃に設定する。1μLの試料を、スプリットレスモードで弁時間(valve time)0.5分で注入する。データを取得し、LabSystems Atlasワークステーションで処理する。
【0071】
定量的なモノマー組成物データは、FID検出器を備えたGLCによって測定されるピーク面積から得られる。モノマーのモル感度は、有効炭素数(ECN)の概念に沿って計算されるが、下表に記載のように修正される。有効炭素数(ECN)の概念は、Ackman(R.G.Ackman、J.Gas Chromatogr.、2(1964)173〜179およびR.F.Addison、R.G.Ackman、J.Gas Chromatogr.、6(1968)135〜138)によって記述されており、Sweetら(D.P.Sweet、R.H.Shapiro、P.Albersheim、Carbohyd.Res.、40(1975)217〜225)により、部分的にアルキル化された酢酸アルジトールの定量分析に適用されている。
【0072】
ECNの計算に用いるためのECN増分:
[表]
【0073】
モノマーの異なるモル感度を補正するために、ピーク面積に2,3,6−Meモノマーに対する感度として定義されるモル感度係数MRFモノマーを乗じる。2,3,6−Meモノマーは、s23/s26の測定において分析される全ての試料中に存在するため、基準として選択される。
MRFモノマー=ECN2,3,6−Me/ECNモノマー
【0074】
モノマーのモル分率は、下式に従って、補正されたピーク面積を補正されたピーク面積の合計で割ることにより計算される:
s23=[(23−Me + 23−Me−6−HAMe + 23−Me−6−HA + 23−Me−6−HAHAMe + 23−Me−6−HAHA]、および
s26=[(26−Me + 26−Me−3−HAMe + 26−Me−3−HA + 26−Me−3−HAHAMe + 26−Me−3−HAHA]
(式中、s23は、下記の条件に合致する無水グルコース単位のモル分率の和であり:
a)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位は置換されていない(=23−Me)、
b)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位はメチル化されたヒドロキシアルキル(=23−Me−6−HAMe)または2個のヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖(=23−Me−6−HAHAMe)で置換されている、ならびに
c)無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位はヒドロキシアルキル(=23−Me−6−HA)または2個のヒドロキシアルキル基を含む側鎖(=23−Me−6−HAHA)で置換されている;
s26は、下記の条件に合致する無水グルコース単位のモル分率の和である:
a)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位は置換されていない(=26−Me)、
b)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位はメチル化されたヒドロキシアルキル(=26−Me−3−HAMe)または2個のヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖(=26−Me−3−HAHAMe)で置換されている、ならびに
c)無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位はヒドロキシアルキル(=26−Me−3−HA)または2個のヒドロキシアルキル基を含む側鎖(=26−Me−3−HAHA)で置換されている)。
【0075】
HAMC中の置換基の測定の結果を下表4に記載する。HPMCのヒドロキシアルキル(HA)がヒドロキシプロピル(HP)の場合は、メチル化されたヒドロキシアルキル(HAMe)はメチル化されたヒドロキシプロピル(HPMe)である。
【0076】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、以下の手順に従って生成した。細かく挽いた木材セルロースパルプをジャケット付きの撹拌した反応器に充填した。反応器を排気し窒素でパージして酸素を除去し、次いで再度排気した。反応は2段階で実行した。第1段階において、セルロース中の無水グルコース単位のモル当たり2.0モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液をセルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液およびセルロースの混合物を40℃で約30分撹拌した後、無水グルコース単位のモル当たり1.5モルのジメチルエーテル、2.5モルの塩化メチルおよび0.5モルの酸化プロピレンを反応器に加えた。次いで反応器の内容物を60分で80℃まで加熱した。80℃に達した後、第1段階の反応を5分間進行させた。
【0077】
反応器の内容物を80℃でさらに20分で加熱した。次いで反応の第2段階を、無水グルコース単位のモル当たり塩化メチル2.8モル当量の量の塩化メチルの添加により開始した。塩化メチルのための添加時間は10分であった。次いで無水グルコース単位のモル当たり2.3モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を50分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.046モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物をさらに温度80℃に135分間維持した。
【0078】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出して熱水を含む槽に移した。次いで粗製HPMCをギ酸で中和し、塩化物が無いように熱水(AgNO凝集試験によって評価される)で洗い、室温に冷却し、気流式乾燥器(air−swept drier)内で55℃で乾燥した。次いで材料を、0.5mmスクリーンを用いるAlpine UPZミルを用いて粉砕した。
【0079】
得られる粉末を、既知の方法で粉末のkg当たり最大3.0gのガス状塩化水素で最高85℃の温度で所望の粘度が得られるまで粉末状試料を加熱することにより部分的に解重合した。部分的に解重合したヒドロキシプロピルメチルセルロースを、炭酸水素ナトリウムで中和した。
【0080】
実施例2
第2段階のための温度および用量プロファイルを変更したことを除いて実施例1を繰り返した。80℃で5分間進行させることによって第1段階が終了した後、反応器の内容物をさらに20分以内で65℃に冷却した。次いで反応の第2段階を、無水グルコース単位のモル当たり塩化メチル2.8モル当量の量の塩化メチルの添加により開始した。塩化メチルのための添加時間は10分であった。次いで無水グルコース単位のモル当たり2.3モルの水酸化ナトリウムの量で50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を45分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.051モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物を20分で80℃まで加熱し、次いで温度80℃に135分間維持した。
【0081】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1において一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0082】
実施例3
細かく挽いた木材セルロースパルプをジャケット付きの撹拌した反応器に充填した。反応器を排気し窒素でパージして酸素を除去し、次いで再度排気した。反応は2段階で実行した。第1段階において、セルロース中の無水グルコース単位のモル当たり2.0モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液をセルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液およびセルロースの混合物を40℃で約20分撹拌した後、無水グルコース単位のモル当たり1.5モルのジメチルエーテル、2.5モルの塩化メチルおよび1.15モルの酸化プロピレンを反応器に加えた。次いで反応器の内容物を60分で80℃に加熱した。80℃に達した後、第1段階の反応を15分間進行させた。
【0083】
反応の第2段階を、無水グルコース単位のモル当たり塩化メチル2.8モル当量の量の塩化メチルの添加により開始した。塩化メチルのための添加時間は10分であった。次いで無水グルコース単位のモル当たり2.3モルの水酸化ナトリウムの量で50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を90分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.026モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物を温度80℃に120分間維持した。
【0084】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0085】
比較例A(先行技術ではない)
細かく挽いた木材セルロースパルプをジャケット付きの撹拌した反応器に充填した。反応器を排気し窒素でパージして酸素を除去し、次いで再度排気した。反応は2段階で実行した。第1段階において、セルロース中の無水グルコース単位のモル当たり1.8モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液をセルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液およびセルロースの混合物を40℃で約30分撹拌した後、無水グルコース単位のモル当たり1.5モルのジメチルエーテル、2.3モルの塩化メチルおよび0.7モルの酸化プロピレンを反応器に加えた。次いで反応器の内容物を60分で80℃まで加熱した。80℃に達した後、第1段階の反応を5分間進行させた。
【0086】
次いで反応器の内容物を20分以内で60℃まで冷却した。反応の第2段階を、無水グルコース単位のモル当たり塩化メチル2.5モル当量の量の塩化メチルの添加により開始した。塩化メチルのための添加時間は10分であった。次いで無水グルコース単位のモル当たり2.0モルの水酸化ナトリウムの量で50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を45分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.044モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物30分で80℃まで加熱し、次いで温度80℃に135分間維持した。
【0087】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0088】
比較例B(先行技術ではない)
細かく挽いた木材セルロースパルプをジャケット付きの撹拌した反応器に充填した。反応器を排気し窒素でパージして酸素を除去し、次いで再度排気した。反応は2段階で実行した。第1段階において、セルロース中の無水グルコース単位のモル当たり3.0モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液をセルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液およびセルロースの混合物を40℃で約30分撹拌した後、無水グルコース単位のモル当たり1.5モルのジメチルエーテル、5.0モルの塩化メチルおよび1.0モルの酸化プロピレンを反応器に加えた。次いで反応器の内容物を60分で80℃まで加熱した。80℃に達した後、第1段階の反応を25分間進行させた。
【0089】
次いで反応を20分以内で60℃に冷却した。次いで無水グルコース単位のモル当たり1.00モルの水酸化ナトリウムの量で50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を60分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.017モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物を20分以内で80℃まで加熱し、次いで温度80℃に120分間維持した。
【0090】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0091】
比較例C(先行技術ではない)
反応混合物に加える酸化プロピレンの量が無水グルコース単位のモル当たり1.6モルの酸化プロピレンであったことを除いて、比較例Bを繰り返した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0092】
比較例D(先行技術ではない)
第2段階のための温度および用量プロファイルを変更したことを除いて実施例1を繰り返した。80℃で5分間進行させることによって第1段階が終了した後、反応器の内容物をさらに20分以内で50℃に冷却した。次いで反応の第2段階を、無水グルコース単位のモル当たり塩化メチル2.8モル当量の量の塩化メチルの添加により開始した。塩化メチルのための添加時間は10分であった。次いで無水グルコース単位のモル当たり2.3モルの水酸化ナトリウムの量で50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を15分の時間をかけて加えた。添加の速度は、毎分無水グルコース単位のモル当たり水酸化ナトリウム0.153モルであった。第2段階の添加の完了後、反応器の内容物を20分で80℃まで加熱し、次いで温度80℃に135分間維持した。
【0093】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0094】
比較例E〜G
比較例E〜GのHPMCのものは、The Dow Chemical Companyから市販されている。それらの特性を下表1に示す。
【0095】
比較例H
細かく挽いた木材セルロースパルプをジャケット付きの撹拌した反応器に充填した。反応器を排気し窒素でパージして酸素を除去し、次いで再度排気する。反応は1段階で実行した。セルロース中の無水グルコース単位のモル当たり3.90モルの水酸化ナトリウムの量で、50重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液をセルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液およびセルロースの混合物を40℃で約20分撹拌した後、無水グルコース単位のモル当たり2.07モルのジメチルエーテル、4.40モルの塩化メチルおよび1.00モルの酸化プロピレンを反応器に加えた。次いで反応器の内容物を80分で80℃まで加熱した。80℃に達した後、反応を60分間進行させた。
【0096】
反応後、反応器を通気して約50℃に冷却した。反応器の内容物を取り出し、実施例1に記載のようにさらに処理した。得られた粉末を部分的に解重合し、続いて実施例1に一般に記載されるような既知の方法で中和した。
【0097】
実施例1から3ならびに比較例AおよびHのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性を下表1に示す。s23/s26の測定の詳細を下表2に示す。
【0098】
液状有機組成物
実施例1〜3および比較例A〜Hの10重量パーセントのHPMCのものを、以下に希釈した:
I)室温で、重量比が90/10であるメタノール/水の混合物、
II)重量比が90/10であり、メタノール/水混合物の総重量に基づいて0.4重量%のNaOHを追加的に含むメタノール/水の混合物。
全てのケースにおいて粘性液体組成物が得られた。
【0099】
難溶性薬剤の水溶解度に及ぼすセルロースエーテルの影響
実施例1から3および比較例AからHのセルロースエーテルの水溶液における薬剤濃度を過飽和レベルに維持する能力を、難水溶性の薬剤グリセオフルビンおよびフェニトインで試験した。
【0100】
グリセオフルビンは、水への溶解度が8.54mg/l、logPが2.2、Tmが220℃、Tgが85℃、かつその結果Tm/Tg=493°K/358°K=1.39である。[Feng,Taoら、J.Pharm.Sci.;Vol.97、No.8、2008年、3207〜3221頁、およびW.Curatolo、Pharmaceutical Research、Vol.26、No.6、2009年6月、1422頁]。グリセオフルビンは、Tm/Tg比対log Pのマップ上でグループ2に属する(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、1018頁の図14)。
【0101】
フェニトインは、水への溶解度が32mg/l、logPが2.47、Tmが295℃、Tgが71℃、且つその結果Tm/Tg=568°K/344°K=1.65[Friesenら、MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、1003〜1019頁、およびW.Curatolo、Pharmaceutical Research、Vol.26、No.6、2009年6月、1422頁]である。フェニトインは、Tm/Tg比対log Pのマップ上でグループ3に属する(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、2008年、1018頁の図14)。
【0102】
37℃のリン酸緩衝食塩水(82mM塩化ナトリウム、20mM第二リン酸ナトリウム、47mM第一りん酸カリウム、0.5重量%擬似腸液粉末、pH6.5)中の下表1に示されるセルロースエーテルの溶液(950μl、3.16mg/L)を、Tecan 150リキッドハンドラーを用いて37℃に加熱したアルミニウム製96(8×12)ウェルブロックに配置した所定の1mLバイアルにロボット制御で供給した。37℃で有機薬剤溶液を、下表1に示されるセルロースエーテルを含むリン酸緩衝食塩水に分注した。有機薬剤溶液は、a)最終最大薬剤濃度が1000mg/Lのジメチルホルムアミド50μL中、20g/Lのグリセオフルビン、またはb)最終最大薬剤濃度が1000mg/Lのジメチルホルムアミド50μL中、20g/Lのフェニトインであった。ロボットは、それぞれのバイアルについて混合するために約30秒間決められた順序で液体を吸引して分注した。180分後、バイアルを約3200×g(g=地球上の重力)で遠心分離機に1分かけた。アリコート(30μl)を、96−ウェルプレート内のメタノール(150μl)に移し、密封し、短時間穏やかに撹拌して混合し、次いでHPLCによって薬剤濃度を分析した。
【0103】
対照実行(Control Run)において、セルロースエーテルを全く含まないリン酸緩衝食塩水で実験を繰り返した。
【0104】
下表1においてグリセオフルビンおよびフェニトインの濃度は、遠心分離で180分後に沈殿しなかったがリン酸緩衝食塩水には溶解したままであった物を示す。
【0105】
下表1における結果は、本発明の液体組成物および固体分散体中に含まれるセルロースエーテルは水溶液中の難水溶性の薬剤の濃度を過飽和レベルに維持できることを例示している。セルロースエーテルが無い対照実行におけるよりも相当に高い水溶液中の薬剤濃度が維持され得る。
【0106】
驚くべきことにいくつかの薬剤に関して、s23/s26が0.29以下である上記のセルロースエーテルは、水溶液において23/s26が0.29より大きい同等のセルロースエーテルよりも薬剤を過飽和レベルに保つより高い能力さえも有することが見出されている。
【0107】
例えば、8.54mg/lの非常に低い水への溶解度を有しTm/Tg比対log Pのマップ(MOLECULAR PHARMACEUTICS VOL.5、NO.6、2008年、1018頁の図14)上のグループ2に属する薬剤グリセオフルビンは、実施例1〜3のセルロースエーテルの存在下で、比較例AからHの存在下でよりも高い濃度を有する。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
本開示は以下も包含する。
[1] 有機希釈剤と、少なくとも1種のセルロースエーテルであって、1−4結合により結合した無水グルコース単位を有し、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、および任意でメチルとは異なるアルキル基を有し、
s23/s26
(ここでs23は無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である)
が0.29以下であるように無水グルコース単位のヒドロキシル基がメチル基で置換されているような前記少なくとも1種のセルロースエーテルと、を含む、液体組成物。
[2] 少なくとも1種の有効成分および任意で1種または複数の補助剤をさらに含む、上記態様1に記載の液体組成物。
[3] 前記少なくとも1種のセルロースエーテルは0.05から0.55のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、上記態様1または2に記載の液体組成物。
[4] 前記少なくとも1種のセルロースエーテルは1.6から2.5のメチル置換度(DS(メチル))を有する、上記態様1から3のいずれかに記載の液体組成物。
[5] 前記MS(ヒドロキシアルキル)と前記DS(メチル)との和は少なくとも1.8である、上記態様1から4のいずれかに記載の液体組成物。
[6] 前記少なくとも1種のセルロースエーテルは、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って20℃で2重量%の水溶液として測定される2.4から200mPa・sの粘度を有する、上記態様1から5のいずれかに記載の液体組成物。
[7] 前記少なくとも1種のセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、s23/s26は0.24以下である、上記態様1から6のいずれかに記載の液体組成物。
[8] 前記組成物は水をさらに含み、かつ前記組成物は有機希釈剤および水の総重量に基づいて50重量パーセントより多くの有機希釈剤および50重量パーセント未満の水を含む、上記態様1から7のいずれかに記載の液体組成物。
[9] 少なくとも1種のセルロースエーテルにおける少なくとも1種の有効成分の固体分散体の調製のための、上記態様2から8のいずれかに記載の液体組成物の使用。
[10] 1−4結合により結合した無水グルコース単位を有し、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、および任意でメチルとは異なるアルキル基を有し、
s23/s26
(ここでs23は無水グルコース単位の2位および3位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は無水グルコース単位の2位および6位における2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である)
が0.29以下であるように無水グルコース単位のヒドロキシル基がメチル基で置換されているような少なくとも1種のセルロースエーテルにおける少なくとも1種の有効成分の固体分散体。
[11] 上記態様2から8のいずれかに記載の液体組成物を噴霧乾燥することにより調製された、上記態様10に記載の固体分散体。
[12] 前記少なくとも1種の有効成分、前記少なくとも1種のセルロースエーテルおよび任意で1種または複数の補助剤をブレンドおよび溶融押出成形することにより調製された、上記態様10に記載の固体分散体。
[13] 前記固体分散体は、小球、顆粒、丸薬、錠剤、カプレット、カプセル微粒子、カプセルの充填物、または粉末、ペースト、クリーム、懸濁液もしくはスラリーに配合された、上記態様11または12に記載の固体分散体。
[14] 上記態様1から8のいずれかに記載の液体組成物を剤形に接触させるステップを含む、前記剤形をコーティングするためのプロセス。
[15] 上記態様1から8のいずれかに記載の液体組成物を浸漬ピンに接触させるステップを含む、カプセルを製造するためのプロセス。