【課題を解決するための手段】
【0003】
この目的は、特に独立請求項の対象によって達成することができる。有利な実施形態および改善形態は、従属請求項の対象物である。しかしながら、請求されるものの他にも、本明細書においてさらなる有利な概念を開示することがある。
【0004】
一態様は、第1の計数部材を備える薬物送達デバイス用の用量計数機構に関する。第1の計数部材は、相互作用要素を備える。さらに、用量計数機構は、第1の計数部材の相互作用要素と係合するように構成された係合要素を含む、第2の計数部材を備える。さらに、用量計数機構は、分離部材を備える。さらに、第1の計数部材は、分離部材に対して第1の相対位置と第2の相対位置の間で可動である。分離部材は、第1の計数部材が分離部材に対して第2の相対位置にあるとき、相互作用要素の係合要素との係合を妨げるように構成される。
【0005】
相互作用要素は、相互作用要素の本体から離れるように突出する突出部とすることができる。特に、相互作用要素は、カムとすることができる。係合要素は、突起、特に歯とすることができる。
【0006】
第1の計数部材は、分離部材に対して2つより多い所定の相対位置へ可動とすることができる。特に、第1の計数部材は、分離部材に対して10の所定の相対位置へ可動とすることができる。しかしながら、分離部材は、第1の計数部材が分離部材に対してある所定の相対位置にあるときを除くすべての位置において、相互作用要素の係合要素との係合を妨げるように構成することができる。換言すれば、相互作用要素と係合要素の係合は、厳密に所定の相対位置の1つにおいて可能である。以下では、この位置を第1の相対位置と呼ぶ。他の9つの位置を第2の位置と呼ぶ。
【0007】
特に、相互作用要素と係合要素の係合は、前記要素同士の当接に対応することができる。相互作用要素と係合要素の係合は、相互作用要素が力を係合要素の1つに直接及ぼせるようにすることに対応することができる。特に、係合要素の1つに係合させたとき、相互作用要素が、第1の計数部材の動きを第2の計数部材へ伝えられるようにすることが可能である。
【0008】
相互作用要素の係合要素との係合によって、第1の計数部材が第2の計数部材を動かすことができるようにする。したがって、計数機構は、1つの計数部材の動きを他の計数部材の動きに変えるために、別個の伝動要素など追加の部材を必要としない。したがって、計数機構は、少数の構成要素からなり、それによって機構のスペース要求および費用が軽減される。特に、計数機構の構成要素の数は、2×N−1(Nは計数部材の数)によって与えることができる。計数部材の数は、便宜的に表示すべき桁数によって与えられる。
【0009】
さらに、分離部材は動かないようにすることができる。したがって、分離部材は、薬物送達デバイスのハウジングに、前記ハウジングに対して動くことができないように固定することが可能である。
【0010】
一実施形態において、分離部材は、第1の計数部材が分離部材に対して第1の相対位置にあるとき、相互作用要素の係合要素の1つとの係合を可能にするように構成される。
【0011】
相互作用要素が係合要素に係合されているとき、第1の計数部材の分離部材に対するその第1の相対位置からその第2の相対位置への動きを、第2の計数部材へ伝えることができる。
【0012】
一実施形態において、第1の計数部材は、第1の計数部材が分離部材に対して第2の相対位置にあるとき、第2の計数部材に対して可動である。換言すれば、第1の計数部材は、相互作用要素が係合要素と係合されていないとき、第2の計数部材に対して可動である。
【0013】
一実施形態において、第2の計数部材の動きは、相互作用要素が係合要素と係合されたとき、第1の計数部材の動きによって引き起こされる。
【0014】
第1の計数部材の動きは、特に回転とすることができる。第2の計数部材の動きも、特に回転とすることができる。第1の計数部材の動きは、計数値の一の位の数字の更新に対応することができる。第2の計数部材の動きは、計数値の十の位の数字の更新に対応することができる。第1の計数部材および/または第2の計数部材の動きは、計数値を、好ましくは1つだけ増加または減少させることに対応することができる。
【0015】
一実施形態において、相互作用要素は弾性変形が可能である。特に、相互作用要素は、第2の相対位置において弾性変形を受けるような弾性を有する。この位置において、相互作用要素は、例えば分離部材に対する当接によって曲げることができる。しかしながら、同時に、相互作用要素の弾性および/または形は、係合要素との係合時に、相互作用要素が著しく変形しないように選択することが好ましい。むしろ、相互作用要素は、第1の計数部材がその第1の相対位置からその第2の相対位置へ動くときに、係合要素に力を及ぼすように構成される。
【0016】
一実施形態において、第1の計数部材は、分離部材に対して第1の回転軸のまわりで回転可能である。
【0017】
したがって、第1の計数部材のその第1の相対位置からその第2の相対位置への動きは、第1の回転軸のまわりの回転である。
【0018】
一実施形態において、第2の計数部材は、分離部材に対して第2の回転軸のまわりで回転可能である。第2の回転軸は、第1の回転軸に沿って延びることができる。特に、第2の回転軸は、第1の回転軸と平行または同一とすることができる。この場合、第1の計数部材および第2の計数部材は同軸とすることができる。
【0019】
したがって、第1の計数部材のその第1の相対位置からその第2の相対位置への動きが第2の計数部材へ伝えられるとき、第2の計数部材の前記動きは、第2の回転軸のまわりの回転である。第1の計数部材および第2の計数部材は、同じ回転方向に回転するように構成することができる。
【0020】
一実施形態において、分離部材は、開口部を備えた壁を含む。壁は、第1の回転軸に垂直な面内に配置することができる。壁は、壁に提供された開口部を除き、連続にすることができる。壁は、第1の回転軸のまわりに延びることができる。
【0021】
壁は、特に第1の回転軸に垂直な面内で見たとき、C字形を有することができる。
【0022】
第1の計数部材が複数の相互作用要素を備える場合、壁の中に、各相互作用要素に対して1つの開口部を提供することができる。複数の相互作用要素を備える第1の計数部材は、特にバランスのとれた形で、第2の計数部材に力を伝えることを可能にすることができる。
【0023】
一実施形態において、第1の計数部材の分離部材に対する第2の相対位置は、相互作用要素を壁と整列させること、例えば相互作用要素が壁に当接することに対応する。換言すれば、壁は、第1の計数部材がその第2の位置にあるとき、相互作用要素を係合要素から隔てることができる。
【0024】
したがって、壁は、第1の計数部材の相互作用要素の、第2の計数部材の係合要素との係合を妨げることができる。
【0025】
一実施形態において、第1の計数部材の分離部材に対する第1の相対位置は、相互作用要素を開口部と整列させることに対応し、例えば、相互作用部材は、開口部を通って突出することができる。この整列は、第1の回転軸に垂直な方向に見たときに、一列になることとすることができる。
【0026】
したがって、第1の相対位置において、開口部は、第1の計数部材の相互作用要素の、第2の計数部材の係合要素との係合を可能にする。換言すれば、分離部材は、第1の計数部材またはその相互作用要素が、開口部に対して所定の相対位置にある場合のみ、第1の計数部材および第2の計数部材の相互作用を可能にする。
【0027】
一実施形態において、第1の計数部材は、相互作用要素を含む第1の本体を備え、第1の本体は、壁の第1の側に分離部材の壁に隣接して配置され、第2の計数部材は、係合要素を含む第2の本体を備え、第2の本体は、壁の第1の側と反対側の第2の側に分離部材の壁に隣接して配置される。換言すれば、壁は、相互作用要素と係合要素の間に配置される。
【0028】
特に、第1の本体、第2の本体および壁は、管状または円筒状の形を有することができる。第1の本体、第2の本体および壁は、そのそれぞれの半径が異なってもよい。好ましくは第1の回転軸に垂直な面内で見たとき、第1の本体を壁の外側に配置することができ、第2の本体を壁の内側に配置することができる。あるいは、好ましくは第1の回転軸に垂直な面内で見たとき、第1の本体を壁の内側に配置することができ、第2の本体を壁の外側に配置することができる。
【0029】
一実施形態において、第1の本体および第2の本体の一方は、第1の本体および第2の本体の他方の内側に配置される。それによって、壁を第1の本体と第2の本体の間に配置することができる。この配置は、特に第1の回転軸に垂直な面内に与えることができる。
【0030】
特に、相互作用要素は、第1の計数部材の分離部材に対する第1の相対位置において、壁の中の開口部を通って突出する。
【0031】
一実施形態において、相互作用要素は、第1の計数部材の分離部材に対する第2の相対位置において壁に当接する。
【0032】
特に、相互作用要素は、壁との当接によって弾性変形させることができる。
【0033】
一実施形態において、第1の計数部材は、第1の回転軸のまわりで第1の回転方向に回転可能であり、相互作用要素は、第1の計数部材の側壁から突出し、相互作用要素と側壁は鋭角を画成する。鋭角は、好ましくは第1の回転軸に垂直な面内で見たとき、第1の回転方向と反対の方向に画成することができる。
【0034】
鋭角により、第1の計数部材を分離部材に対するその第1の相対位置からその第2の相対位置へ動かしたとき、相互作用要素の弾性変形が容易になる。さらに、鋭角は、相互作用要素が係合要素の1つに係合されたとき、第1の計数部材の動きが第2の計数部材へ伝えられるように選択される。
【0035】
一実施形態において、第1の計数部材は第1のインデックス要素(index element)を備え、第2の計数部材は第2のインデックス要素を備え、第1のインデックス要素および第2のインデックス要素は、協働して数字を表示するように構成される。
【0036】
インデックス要素の各々は、数字を含むことができる。インデックス要素の各々は、対応する本体のあらゆる動き、すなわちあらゆる回転に追従することができる。したがって、計数部材の1つの動きが、計数値の更新、すなわち計数値の増加または減少に対応することができる。
【0037】
計数値は、デバイス内に残された用量の数に対応することができる。あるいは、計数値は、行われた薬物送達動作の数に対応することができる。
【0038】
第1のインデックス要素は、計数値の一の位の数字を表示することができる。第2のインデックス要素は、計数値の十の位の数字を表示することができる。計数値がデバイス内に残された用量の数に対応する場合、十の位の数字は、一の位の数字が「0」から「9」に変わるときだけ更新されればよい。したがって、第1の計数部材のその第1の相対位置からその第2の相対位置への動きは、第1のインデックス要素を、「0」を表示することから「9」に更新することに対応する。この動きは、相互作用要素の係合要素との係合によって第2の計数部材へ伝えられる。したがって、それは、次の計数値の十の位の数字を表示する第2のインデックス要素の更新に対応する。例えば、計数値を「20」から「19」に更新することができる。
【0039】
一実施形態において、計数機構はブロッキング要素(blocking element)をさらに備え、ブロッキング要素は、第1の計数部材がブロッキング要素に対して所定の第1の相対ブロッキング位置(blocking position)にあり、かつ第2の計数部材がブロッキング要素に対して所定の第2の相対ブロッキング位置にあるとき、計数機構のさらなる動作を妨げる。
【0040】
特に、ブロッキング要素は、所与の用量の数、特に所定の用量の数が送達されたとき、薬物送達デバイスの動作を妨げることができるようにすることが可能である。ブロッキング要素が妨げるように構成される動作は、薬物送達デバイスの薬物送達動作とすることができる。
【0041】
好ましくは、その動作は、所与の用量の数が送達された後、恒久的に妨げられる。特に、ブロッキング要素が動作を妨げるようになった後、その動作は、デバイスのハウジングが開かれ、ブロッキング要素が解放された場合のみ、再び許容され得る。好ましくは、ブロッキング要素をロック解除するために、薬剤の容器を交換する必要がある。この場合、デバイスは、容器の交換を可能にする再利用可能なデバイスであるように構成することができる。
【0042】
あるいは、デバイスは、ブロッキング要素がデバイスをロックした後、すなわち動作を妨げるようになった後、動作を再び可能にすることが全くできないように構成することができる。この場合、デバイスは、デバイスがロックされた後に処分されるように構成することができる。
【0043】
一実施形態において、第1の計数部材および第2の計数部材は各々、通路を備える。特に、通路は、第1の回転軸に垂直な面内に画成することができる。したがって、通路は、ある要素が、第1の計数部材または第2の計数部材の内側から第1の計数部材または第2の計数部材の外側へ、第1の回転軸もしくは第2の回転軸に対して傾斜したまたは垂直な方向に、好ましくは半径方向に通過することを可能にする通路とすることができる。
【0044】
通路は、それぞれの計数部材の中に提供された開口部、特に計数部材を通る孔を含むことができる。好ましくは、通路は、各計数部材において、計数部材の中心から異なる位置に提供される。それによって、計数部材がそれぞれの軸のまわりを回転すると、通路の位置が変わるようになる。
【0045】
一実施形態において、第1の計数部材のブロッキング位置は、第1の計数部材の通路をブロッキング要素に整列させることに対応し、第2の計数部材のブロッキング位置は、第2の計数部材の通路をブロッキング要素に整列させることに対応する。
【0046】
特に、第1の計数部材の通路をブロッキング要素に整列させることは、第1の回転軸に垂直な面内で第1の回転軸に垂直な方向に見たとき、一列にすることである。さらに、第2の計数部材の通路をブロッキング要素に整列させることは、第2の回転軸に垂直な面内で第2の回転軸に垂直な方向に見たとき、一列にすることである。
【0047】
計数機構のブロッキング位置では、通路を互いに整列させる。
【0048】
好ましくは、計数機構は、所与の用量の数が送達され、計数機構が所与の数を数えると、第1の計数部材および第2の計数部材の通路とブロッキング要素を整列させるように構成される。第1の計数部材および第2の計数部材の通路は、ブロッキング要素の動き、特にブロッキング要素が計数機構のさらなる動作を妨げるブロッキング位置への動きを可能にすることができる。さらに、ブロッキング位置において、ブロッキング要素は、動作中に動かされなければならない薬物送達デバイスの相互作用要素に接触するように構成および配置することができ、さらにブロッキング要素は、この要素の動きを妨げるように構成および配置することができる。
【0049】
一実施形態において、第2の計数部材は第2の相互作用要素を備え、計数機構は、第2の計数部材の第2の相互作用要素と係合可能にした第3の係合要素を含む第3の計数部材をさらに備え、計数機構は第2の分離部材をさらに備え、第2の計数部材は、第2の分離部材に対して第1の相対位置および第2の相対位置へ可動であり、第2の分離部材は、第2の計数部材が第2の分離部材に対してその第2の相対位置にあるとき、第2の相互作用要素の第3の係合要素との係合を妨げるように構成される。
【0050】
したがって、第1の計数部材の動きを第2の計数部材へ伝えるために使用される機構を、第2の計数部材の動きを第3の計数部材の動きに変えるために使用することもできる。さらに、第3の計数部材は、計数値の百の位の数字を表示するように構成されたインデックス要素をさらに備えることができる。
【0051】
一実施形態において、薬物送達デバイスは、これまでに論じた計数機構を備える。
【0052】
薬物送達デバイスは、吸入器、特に乾燥粉末の吸入器とすることができる。しかしながら、用量計数機構は、任意の他の薬物送達デバイス、例えば注射ペンなどの注射器にも適している。特に、用量計数機構は、一定用量の薬物送達デバイス、すなわち、送達される薬物の量を使用者が変更できないデバイスに使用することができる。むしろ、一定用量のデバイスでは、用量の大きさは、送達機構の設計によって決まる。