特許第6185573号(P6185573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185573硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185573
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20170814BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20170814BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 5/39 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20170814BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L9/06
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K5/372
   C08K5/39
   C08K5/548
   B60C1/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-515512(P2015-515512)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-520269(P2015-520269A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013061615
(87)【国際公開番号】WO2013182610
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】12170991.9
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・フェルトヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・ウンターベルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン−ヨーゼフ・ヴァイデンハウプト
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ヴィーデマイヤー−ヤラト
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5774203(JP,B2)
【文献】 特開2010−018691(JP,A)
【文献】 特開2009−275180(JP,A)
【文献】 特開平07−017205(JP,A)
【文献】 特開2000−143877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のゴム、1種の硫黄含有アルコキシシラン、1種の架橋剤、1種の充填剤、および場合によってはさらなるゴム助剤から製造されるシリカ含有ゴム混合物であって、この混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.1〜15重量部の式(I)のポリスルフィド添加剤
【化1】
[式中、xは、0、1、2、3、または4であり、
Aは、次式の残基であり、
【化2】
Bは次式の残基
【化3】
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
yおよびzは、互いに独立して、0、1または2である)であるか、または
AとBは、互いに独立して、次の基
【化4】
(式中、RおよびRは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルである)の1つである]
および、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.1〜15重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)、を含むことを特徴とする、シリカ含有ゴム混合物。
【請求項2】
ポリスルフィド添加剤として、式(II)
【化5】
[式中、xは、0、1、2、3、または4である]
の化合物の少なくとも1種が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項3】
ポリスルフィド添加剤として、式(IIa)
【化6】
[式中、xは、0、1、2、3、または4である]
の化合物の少なくとも1種が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項4】
ポリスルフィド添加剤として、式(III)、(IIIa)、(IIIb)
【化7】
[式中、xは、0、1、2、3、または4である]
の化合物の少なくとも1種が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項5】
ポリスルフィド添加剤として、式(IV)
【化8】
の化合物の少なくとも1種が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項6】
硫黄含有アルコキシシランの量が、前記式(I)のポリスルフィド添加剤の量よりも多いか、または同じであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項7】
少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項8】
少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを、60:40から90:10までのSBR:BRの重量比で含むことを特徴とする、請求項7に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項9】
少なくとも1種のNRゴムをさらに含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項10】
使用されるゴム100重量部を基準にして、1〜15重量部の1種または複数の硫黄含有アルコキシシランを含み、硫黄含有アルコキシシラン対式(I)のポリスルフィド添加剤の重量比が、1.5:1から20:1までの範囲であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項11】
使用されるゴム100重量部を基準にして、0.3〜7重量部の1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤、および使用されるゴム100重量部を基準にして、0.3〜7重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項12】
前記混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部の式(I)のポリスルフィド添加剤、および使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の充填剤が、酸化物系充填剤およびシリカ系充填剤、ならびにカーボンブラック、またはそれらの混合物の群から選択され、前記充填剤の使用量が、使用されるゴム100重量部を基準にして、50〜200重量部であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項14】
少なくとも1種の充填剤が、20〜400m/gの比表面積を有する沈降シリカおよび/またはケイ酸塩の群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項15】
各種タイプの加硫物およびゴム成形物の製造、特にタイヤおよびタイヤの構成成分の製造のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のゴム混合物をベースとする、各種タイプの加硫物およびゴム成形物、特にタイヤおよびタイヤの構成成分。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に規定のシリカ含有ゴム混合物を製造するための方法であって、
混合プロセスにおいて、複数の混合ステージを有し、それらが場合によっては、複数の成分工程に再分割されていてもよく、前記混合プロセスが、少なくとも以下の成分
・ 1種または複数のゴム、
・ 1種または複数のヒドロキシル化された酸化物系充填剤、
・ 1種または複数の硫黄含有アルコキシシラン、
・ 1種または複数の加硫添加剤、
・ 1種または複数のゴム添加物、
を混合することを含み、
請求項1〜5のいずれか一項に規定の少なくとも1種のポリスルフィド添加剤、および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を、第一混合ステージにおいて混合することにより組み入れることを特徴とする、方法。
【請求項18】
1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤
【化9】
[式中、xは、0、1、2、3、または4であり、
Aは、次式の残基であり、
【化10】
Bは次式の残基
【化11】
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
yおよびzは、互いに独立して、0、1または2である)であるか、または
AとBは、互いに独立して、次の基
【化12】
(式中、RおよびRは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルである)の1つである]
および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含む添加剤混合物であって、添加剤混合物100重量部を基準にして、10〜90重量部の1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤、および添加剤混合物100重量部を基準にして、10〜90重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)が存在している、添加剤混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物、このゴム混合物を製造するためのプロセス、それらの使用およびそれらから製造されるゴム加硫物、ならびにゴムのための添加剤混合物、に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり抵抗性が低いタイヤを好適に製造するための、多くの提案が提供されてきた。(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、および(特許文献4)には、シリカ含有ゴム加硫物のための補強性添加剤として、特定のポリスルフィド系シランが記載されている。しかしながら、それらの文献に記載されているポリスルフィド系シランをシリカ含有ゴム加硫物のための補強性添加剤として使用することには、受容可能な加工性を得るためには、比較的大量の高価なポリスルフィド系シランを使用する必要があり、また硬度が満足のいくものではないという欠点が伴っている。
【0003】
シリカ含有ゴム混合物の加工性を改良するために、その他の添加物質、たとえば脂肪酸エステル、脂肪酸塩または鉱油も提案されていた。記述されたそれらの添加物質も、それらが流動性は向上させるが、それと同時に、比較的高い伸び(たとえば、100%〜300%)における弾性が低下したり、あるいはそうでなければ、加硫物の硬度が低下し、そのために充填剤の補強効果がある程度失われたりする欠点を有している。加硫物の硬度や剛性が不足すると、特にカーブにおけるタイヤの走行性能が不十分なものとなる。
【0004】
添加する補強用フィラーの量を増やせば、加硫物の硬度は上昇するが、混合物の粘度も上がって加工性において不利となり、また可塑化用オイルの量を減らした場合にも同じことがあてはまる。
【0005】
(特許文献5)には、シリカ含有ゴム加硫物のためのポリエーテル添加剤が記載されており、これは前述のような弾性率が低下するという欠点は示さない。しかしながら、当業者は、ショアーA硬度の値を3単位上げようとすると、ゴムを基準にしてそれらを8重量%の量で使用することを必要とする。300%伸びにおける弾性率が低いのが、欠点である。
【0006】
(特許文献6)には、良好な機械的性質を有し、改良されたヒステリシス性能を有する添加剤が記載されている。しかしながら、実施例からは、従来技術である(特許文献7)に記載のビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドと比較して、ショアーA硬度の上昇がほんのわずかであるか、またはまったく無く、その結果ポリマーと充填剤との間の相互作用に何の改良も無いことが明らかである。
【0007】
(特許文献8)ではさらに、SBRにおいて、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドを特定の解重合安定剤と組み合わせて使用しているが、そこでは、300−弾性率の値が極めて低いために、満足のいくものではない。
【0008】
(特許文献9)には、少なくとも1種のジエン系エラストマー、シリカおよびカーボンブラックからなる充填剤、ならびに以下のものから選択されるシリカカップリング剤を用いたゴム組成物が記載されている:
(i)テトラチオジプロパノール・ポリスルフィド混合物、または
(ii)テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドと、ビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドとの組合せ。具体的には、テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドの量が、ビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドの量よりもはるかに多く、このことは、テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドが比較的に高価であるために、コスト的に不利である。さらに、前記混合物は、極めて低い引張強度値を示す。このことから、前記混合物が、(測定されるショアーA値から確認されるように)柔らかすぎて、そのために、タイヤの走行性能が比較的に劣ったものとなり、さらには寿命が短くなると結論づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第A2 255 577号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第A4 435 311号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A1 0 0670 347号明細書
【特許文献4】米国特許第A4 709 065号明細書
【特許文献5】欧州特許第1 134 253号明細書
【特許文献6】欧州特許第0 489 313号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第2 255 577号明細書
【特許文献8】欧州特許第1 000 968号明細書
【特許文献9】欧州特許第0 791 622B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ゴム混合物の流動性を損なうことなく、それから製造される加硫物に、特にタイヤにおける転がり抵抗性、摩耗性、および濡れ時の横滑り性能に関する良好な性質、ならびに加硫物の硬度または剛性を与え、その結果タイヤの走行性能に改良を及ぼす可能性がある、特定の添加物質の組合せを含むゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことには、硫黄含有アルコキシシランと組み合わせると1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)およびある種の硫黄含有添加剤は、ゴム混合物の流動性に悪影響を与えることなく、加硫物に対して、良好な動的性能、比較的に短いスコーチ時間、良好な硬度/剛性、顕著に改良された転がり抵抗性、特に、低い摩耗性が得られるということが今や見いだされた。さらに、完全加硫時間も顕著に改良される。
【0012】
ポリマーと充填剤との間の相互作用が改良されて、相乗効果が生まれたと考えられる。
【0013】
したがって、本発明は、以下のものから製造されるゴム混合物を提供する:少なくとも1種のゴム、1種の硫黄含有アルコキシシラン、1種の架橋剤、1種の充填剤、および場合によってはさらなるゴム助剤、さらには式(I)の硫黄含有添加剤の少なくとも1種
【化1】
[式中、xは、0、1、2、3、または4であり、
Aは、次式の残基であり、
【化2】
Bは次式の残基
【化3】
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであるが、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
yおよびzは、互いに独立して、0、1または2である)であるか、または
AとBは、互いに独立して、次の基
【化4】
(式中、RおよびRは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリールであるか、または基−CH−OR、−CH−CH−OR,−NHR、−COR、−COOR、−CHCOOR(ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリールまたはC〜C−アシルである)の1つである]、
および、使用されるゴム100重量部を基準にして0.1〜15重量部の、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイル−ジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリスルフィド添加剤として、式(II)の化合物の少なくとも1種を使用するのが好ましい:
【化5】
[式中、
xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2である]。
【0015】
ポリスルフィド添加剤として、式(IIa)の化合物の少なくとも1種を使用するのが好ましい:
【化6】
[式中、xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2である]。
【0016】
ポリスルフィド添加剤として、式(III)、(IIIa)、(IIIb)の化合物の少なくとも1種を使用するのが好ましい:
【化7】
[式中、xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2である]。
【0017】
ポリスルフィド添加剤として、好ましくは式(IV)の化合物の少なくとも1種、
【化8】
特に好ましくはL−シスチン、CAS No.:56−89−3を使用する。
【0018】
本発明において使用されるゴム添加剤の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)、さらには式(I)の硫黄含有添加剤の少なくとも1種の添加、さらには、場合によってはその他の添加物質の添加は、混合プロセスの最初の段階で、その組成物の温度が120〜200℃であるときに実施するのが好ましいが、しかしながら、それよりも後の段階で、たとえば硫黄架橋剤および/または加硫促進剤と共に、より低い温度(20〜120℃)で実施することもできる。本明細書において本発明の添加剤を添加する形態は、成分1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)と式(I)の硫黄含有添加剤の少なくとも1種との直接的な混合物の形態であってもよいし、あるいは、個々の成分の形態であってもよい。
【0019】
その他の好ましいポリスルフィド添加剤は実施例において列挙する。
【0020】
本発明のシリカ含有ゴム混合物には、少なくとも1種のSBRゴムおよび少なくとも1種のBRゴムが含まれているのが好ましい。
【0021】
それが、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを、60:40から90:10までのSBR:BRの重量比で含んでいるのが好ましい。
【0022】
好ましくは、それが少なくとも1種のNRゴムをさらに含んでいることもできる。
【0023】
それが、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムと少なくとも1種のNRゴムとを、ゴムを基準にして少なくとも60重量パーセントで多くとも85重量パーセントのSBRと、ゴムを基準にして少なくとも10重量パーセントで多くとも35重量パーセントのBRと、ゴムを基準にして少なくとも5重量パーセントで多くとも20重量パーセントのNR、の比率で含んでいるのが好ましい。
【0024】
本発明のゴム混合物および本発明のゴム加硫物の製造においては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも適している。好適な合成ゴムは、たとえば次の文献に記載されている:W.Hofmann,Kautschuktechnologie[Rubber technology],Genter−Verlag,Stuttgart,1980。
【0025】
なかんずくそれらに含まれるのは、以下のものである。
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C〜C−アルキル・コポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエンコポリマー(スチレン含量が、1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のもの)
IIR:イソブチレン/イソプレン・コポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(アクリロニトリル含量が、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%のもの)
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエン・コポリマー、
およびそれらのゴムの混合物。
【0026】
本発明におけるシリカ含有ゴム混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.3〜7重量部の1種または複数の、式(I)、または請求項に記載されているようなそれから誘導されるいずれかの式のポリスルフィド添加剤、ならびに使用されるゴム100重量部を基準にして0.3〜7重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含んでいるのが好ましい。
【0027】
硫黄含有アルコキシシランの量が、式(I)のポリスルフィド添加剤の量よりも多いか、または同じであるのが好ましい。
【0028】
硫黄含有アルコキシシランを、式(I)のポリスルフィド添加剤に対して、1.5:1から20:1まで、特には5:1から15:1までの重量比で使用するのが好ましい。
【0029】
本発明のゴム混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部の式(I)のポリスルフィド添加剤を含んでいるのが好ましく、また、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含んでいるのが好ましい。
【0030】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物から製造することが可能なゴム加硫物も提供する。
【0031】
本発明はさらに、充填されたゴム加硫物を製造するプロセスもまた提供するが、それは、以下のことを特徴としている:
i)少なくとも1種のゴムを、
ii)ゴム(i)を基準にして、10〜150重量%、好ましくは30〜120重量%の充填剤、および
iii)ゴム(i)を基準にして、0.1〜15重量%、好ましくは0.3〜7重量%の式(I)のポリスルフィド添加剤、および
iv)ゴム(i)を基準にして、0.1〜15重量%、好ましくは0.3〜7重量%の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)
と混合し(ここでその組成物の温度が低くとも120℃であり、剪断速度が1〜1000sec−1、好ましくは1〜100sec−1である)、次いでさらなる加硫用薬剤を添加してから、その混合物を従来法で加硫させる。
【0032】
本発明の式(I)のポリスルフィド添加剤の添加、ならびに、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)の添加を、混合プロセスの最初の段階(そこでは、組成物の温度が100〜200℃で、剪断速度が上述のようである)に実施するのが好ましいが、より後に、より低い温度(40〜100℃)で、たとえば硫黄および加硫促進剤と共に実施することもまた可能である。
【0033】
式(I)のポリスルフィド添加剤および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を混合プロセスに添加する形態は、相互に独立して、純粋な形態とするか、あるいは不活性な有機もしくは無機キャリヤーの上に吸収させた形態とするかのいずれかとすることができる。好ましいキャリヤー物質は、シリカ、天然もしくは合成のケイ酸塩、酸化アルミニウム、および/またはカーボンブラックである。
【0034】
式(I)のポリスルフィド添加剤を、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)との混合物の形態にして、混合プロセスに添加することもまた可能である。
【0035】
本発明の目的のためには、本発明のゴム混合物およびゴム加硫物のために使用することが可能なシリカ含有充填剤は、以下の充填剤である:
・ 微粒子状シリカ、たとえばケイ酸塩の溶液からの沈殿法によるかまたはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解法によって製造し、5〜1000m/g、好ましくは20〜400m/g(BET表面積)の比表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。それらのシリカは、場合によってはさらに、他の金属酸化物、たとえばAl、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr,Tiの酸化物との混合酸化物の形態を取っていてもよい。
・ 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、20〜400m/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。
・ 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ。
・ ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、ストランド)、またはガラスマイクロビーズ。
【0036】
使用することが可能なその他の充填剤は、カーボンブラックである。本発明において使用されるカーボンブラックは、たとえばランプ−ブラックプロセス、ファーネス−ブラックプロセス、またはガス−ブラックプロセスによって製造され、20〜200m/gのBET表面積を有するが、例としては、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、またはGPFカーボンブラックが挙げられる。
【0037】
本発明のゴム混合物における式(I)のポリスルフィド添加剤の好ましい使用量は、ゴムを基準にして、0.3〜7%である。
【0038】
一つの特に好ましい変法は、シリカ、カーボンブラック、および式(I)のポリスルフィド添加剤の組合せからなっている。この組合せにおけるシリカ対カーボンブラックの比率は、所望に従って変化させることが可能である。タイヤ技術の観点からは、シリカ:カーボンブラックの比率が、20:1から1.5:1までであるのが好ましい。
【0039】
本発明におけるゴム加硫物のために使用することが可能な硫黄含有シランは、好ましくは、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよびそれに対応するジスルファン、ならびに3−トリエトキシシリル−1−プロパンチオールまたはシランたとえば、Si 363(Evonik(独国)製)またはシランNXTもしくはNXT Z(Momentive(旧GE、米国)製)であるが、ここで、そのアルコキシ残基はメトキシまたはエトキシであり、使用量は、100重量部のゴムを基準とし、それぞれの場合において100%強度活性成分として計算して、2〜20重量部、好ましくは3〜11重量部である。しかしながら、前記硫黄含有シランから作った混合物を使用することもまた可能である。液状の硫黄含有シランをキャリヤーの上に吸収させて、計量を容易とし、および/または分散を容易とするように改良することができる(乾燥液体(dry liquid))。活性成分の含量は、乾燥液体100重量部あたり、30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0040】
本発明におけるゴム加硫物には、たとえば反応加速剤、抗酸化剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、抑制剤、金属酸化物、およびさらには活性剤たとえば、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオールのようなその他のゴム助剤を含めることも可能であるが、これらはゴム工業界では公知のものである。
【0041】
ゴム助剤の使用量は、慣用される量であって、なかんずく、その加硫物が意図されている目的に依存する。慣用される量は、ゴムを基準にして、0.1〜30重量%である。
【0042】
以下のものが架橋剤として使用される:ペルオキシド、硫黄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛。それらに、公知の加硫促進剤、たとえばメルカプトベンゾチアゾール、−スルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、グアニジン、キサントゲネート、およびチオホスフェートを添加することもまた可能である。硫黄が好ましい。
【0043】
架橋剤および加硫促進剤の使用量は、ゴムを基準にして約0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0044】
先にも説明したように、ゴム混合物に抗酸化剤を添加して、熱および酸素の影響を打ち消すのが有利である。好適なフェノール系抗酸化剤としては、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、およびさらには立体障害チオビスフェノールなどが挙げられる。
【0045】
ゴムの変色があまり重要ではない場合には、アミン系の抗酸化剤、たとえば、ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするものなどを使用することもまた可能である。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0046】
その他の抗酸化剤としては、ホスファイトたとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合させた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。一般的には、フェノール系抗酸化剤と組み合わせた形で、ホスファイトが使用される。ペルオキシド加硫するNBRのタイプでは主として、TMQ、MBI、およびMMBIが使用される。
【0047】
オゾン抵抗性は、当業者には公知の抗酸化剤、たとえばN−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタールを使用することによって、改良することができる。
【0048】
加工助剤は、ゴム粒子の間で作用させ、混合、可塑化、および成形のプロセスの際の摩擦力を打ち消すことを目的としている。本発明におけるゴム混合物の中に存在させることが可能な加工助剤は、プラスチックを加工するために慣用される各種の潤滑剤、たとえば炭化水素、たとえばオイル、パラフィンおよびPEワックス、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸たとえば、脂肪酸およびモンタン酸、酸化PEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびカルボン酸エステル、たとえば以下のエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールのアルコールと、酸成分としての長鎖カルボン酸からのものなどである。
【0049】
ゴム混合物は、硫黄加硫促進剤系を用いるだけではなく、ペルオキシドを用いても架橋させることができる。
【0050】
使用することが可能な架橋剤の例としては以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシ−3−イン。
【0051】
前記ペルオキシド系架橋剤に加えて、架橋収率を増大させるために使用することが可能なさらなる添加物を使用するのも有利である。それらの好適な例としては以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、Znジアクリレート、Znジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0052】
使用することが可能な、また別の架橋剤は、可溶性もしくは不溶性の形態の元素状硫黄、または硫黄供与体である。
【0053】
使用することが可能な硫黄供与体の例は、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノ−ジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)である。
【0054】
本発明におけるゴム混合物を硫黄−加硫させるためには、架橋収率を向上させるために使用可能なさらなる添加物を使用することもまた可能である。原理的には、しかしながら、架橋のために硫黄または硫黄供与体を単独で使用することもまた可能である。
【0055】
架橋収率を向上させるために使用することが可能な好適な添加物の例は、以下のものである:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、二環状もしくは多環状アミン、グアニジン誘導体、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
【0056】
同様に好適な添加物の例は、以下のものである:ジアミン亜鉛ジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、さらには環状ジスルファン。
【0057】
本発明におけるゴム混合物においては、硫黄加硫促進剤系が好ましい。
【0058】
燃焼の際の、燃焼性を抑制し、発煙を抑制する目的で、本発明におけるゴム混合物の組成には、難燃化剤を含むこともできる。使用される難燃化剤の例としては、以下のものがある:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、または炭酸マグネシウム。
【0059】
ゴム加硫物にはさらに、たとえばポリマー性加工助剤または耐衝撃性改良剤として機能する他の合成ポリマーを含むこともできる。前記合成ポリマーは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C10−アルコールのアルコール成分を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルをベースとする、ホモポリマーおよびコポリマーからなる群より選択される。具体的には、C4〜C8−アルコールの群、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノール、および2−エチルヘキサノールからの同一であるか、または異なっているアルコール残基を有するポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマーを挙げることができる。
【0060】
本発明におけるゴム加硫物は、フォームを製造するために使用することができる。そのためには、化学的発泡剤または物理的発泡剤を添加する。使用することが可能な化学的発泡剤は、この目的に関して公知の各種物質、たとえば、アゾジカルボンアミド、p−トルオールスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、さらにはこれらの物質を含む混合物である。好適な物理的発泡剤の例は、二酸化炭素またはハロゲン化炭化水素である。
【0061】
加硫プロセスは、場合によっては10〜200barの圧力下で、100〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で実施することができる。
【0062】
ゴムと充填剤およびゴムと式(I)のポリスルフィド添加剤とのブレンドは、慣用される混合装置、たとえばロール、インターナルミキサー、および混合エクストルーダーで実施することができる。
【0063】
本発明におけるゴム加硫物は、改良された性質を有する成形物を製造するため、たとえばケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベア用ベルト、ロール被覆、タイヤ、靴底、シールリング、および制振要素を製造するためには好適である。
【0064】
ゴムの加工において重要な因子は、添加剤を用いて最初に調製されたゴム混合物が、低い流動粘度(ムーニー粘度、ML1+4/100℃)を有していて、加工しやすいということである。多くの用途において、それが意図しているのは、熱に曝露させるゴム混合物に対する(たとえば170℃、t95での)後続の加硫プロセスが、可能な限り迅速に進行して、時間およびエネルギーのコストを抑制することである。
【0065】
成形に依存するスコーチ時間(たとえばt5)は、狭い時間範囲の内、特に300秒を超え、500秒未満になるようにするべきである。
【0066】
170℃/t95の加熱条件での本発明におけるシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.13未満であり、それと同時にそれのショアーA硬度が23℃で60を超えているのが好ましく、さらに、損失係数tanデルタが60℃で0.12未満であり、それと同時にショアーA硬度が23℃で60を超えていれば、特に好ましい。その加硫物の300弾性率値は、12MPaを超え、好ましくは15MPaを超え、特には20MPaを超える。
【0067】
170℃/t95の加熱条件下でシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.12未満であり、それと同時にそのスコーチ時間が、300秒よりは長いが、1000秒よりも短いのが好ましい。
【0068】
170℃/t95の加熱条件下でシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.12未満であり、それと同時にその完全加硫時間が、1000秒よりも短い、好ましくは500秒よりも短いのが好ましい。
【0069】
170℃/t95の加熱条件下でシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物のスコーチ時間が300秒より長く、それと同時にその完全加硫時間が500秒よりも短いのが好ましい。
【0070】
本発明はさらに、各種のタイプの加硫物およびゴム成形物を製造するため、特にタイヤおよびタイヤの構成成分を製造するための、本発明のシリカ含有ゴム混合物の使用も提供する。
【0071】
本発明はさらに、1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含む添加剤混合物も提供する。
【0072】
その添加剤混合物が、添加剤混合物100重量部を基準にして、10〜90重量部の1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤、および添加剤混合物100重量部を基準にして、10〜90重量部の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含んでいるのが好ましい。
【0073】
本発明の添加剤混合物における、1種または複数の式(I)のポリスルフィド添加剤の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)に対する重量比が、10:90から90:10まで、特に25:75から75:25までであるのが好ましい。
【0074】
少なくとも欧州連合が、自動車からの二酸化炭素の放出を制限することに関心を寄せているので、自動車産業では、130g/km以下のCO放出という目標に到達するための経済性に優れた方法を探索している。この場合、低転がり抵抗のタイヤが、本質的に重要である。それらは、フリーホイーリングの際に必要とされる変形のためのエネルギーがより低いので、燃料消費量を低減する。
【0075】
転がり抵抗性の減少が、他の重要な性質を犠牲にして達成されるようなことがないようにするためには、濡れ時におけるグリップ性と回転騒音に関する要件が同時に規定される。濡れ時の横滑り性能および転がり抵抗性の第一の指標は、損失係数tanデルタによって与えられる。これは、0℃では可能な限り高く(良好な濡れ時横滑り抵抗性)、60〜70℃では可能な限り低く(低転がり抵抗性)なるべきである。ゴム加硫物の硬度が、その剛性の第一の指標を与える。
【実施例】
【0076】
ポリスルフィド添加剤の実施例
実施例1
【化9】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス排出付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラーを備えた、500mL四ツ口フラスコ、
初期仕込み:
91.75g=0.75molの3−メルカプトプロピオン酸メチル(Acros製、≧98%)
250mLのシクロヘキサン(分析グレード、Merck製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
51.15g=0.375molの二塩化二硫黄(≧99%、Merck製)。
【0077】
窒素を用いてフラッシュさせた装置の中に、乾燥させたシクロヘキサンおよび3−メルカプトプロピオン酸メチルを導入する。3−メルカプトプロピオン酸メチルが完全に溶解したら、5〜10℃の温度で約1時間かけて二塩化二硫黄を滴下により加えるが、その間、その混合物に窒素を通しておく。計量添加の速度は、温度が10℃を超えないように設定する。
【0078】
反応が終了した後も、依然として窒素を通気しながら、室温で一夜撹拌を続ける。
【0079】
次いでその反応溶液を、50℃でRotavaporを用いて蒸発させることによって濃縮し、その反応生成物を、真空乾燥オーブン中60℃で、恒量になるまで乾燥させる。
【0080】
収量:
108.4g(95.6%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化10】
【0081】
実施例2
【化11】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス排出付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラー、ガス導入管を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
118.0g=0.75molのメルカプト安息香酸(Aldrich、≧99%)
900mLのトルエン(分析グレード、Aldrich製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
51.15g=0.375molの二塩化二スルフィド(≧99%、Merck製)。
【0082】
窒素を用いてフラッシュさせた装置の中に、乾燥させたトルエンおよびメルカプト安息香酸を導入する。次いで、そうして生成した懸濁液に、窒素を通しながら、0〜5℃の温度で約1時間かけて二塩化二硫黄を滴下により添加する。計量添加速度は、温度が5℃を超えないように設定する。
【0083】
反応が終了した後も、窒素を通気しながら、室温で一夜撹拌を続ける。
【0084】
次いでその反応溶液を、D4フリットを通して濾過し、濾過して得られた生成物を約200mLの乾燥トルエンを用いて2回洗い流す。その反応生成物を、真空乾燥オーブン中室温(約25℃)で乾燥させる。
【0085】
収量:
144.6g(104.1%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化12】
【0086】
実施例3
【化13】
結果:
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、それによって本発明を限定することは意図されていない。
【0087】
表1に列記した、以下のゴム配合物を、試験のために選択した。特に断らない限り、すべての数値データは、「100部のゴムあたりの部数」(phr)をベースにしたものである。
【0088】
1.5Lのインターナルミキサー(70rpm)の中で次のゴム混合物を製造した(出発温度:80℃、混合時間:5分間)。硫黄および加硫促進剤は、最終段階でロール上で混合した(温度:50℃)。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
驚くべきことには、表2の結果からも分かるように、本発明の実施例(ゴム配合1およびゴム配合2)において測定されたスコーチ時間(130℃/t5)が、参照例と比較すると顕著に短いことが見いだされた。機械的性質たとえば、引張強さ、破断時伸び、および特に300弾性率は、極めて良好である。試験した加硫物では、参照例に比較して、良好な濡れ時の横滑り性能および顕著に改良された転がり抵抗性(tanデルタ(0℃)>0.35およびtanデルタ(60℃)<0.13)、および同様に極めて優れた摩耗値(<70mm)を示している。完全加硫時間においても顕著な改良があった。
【0094】
【表5】
【0095】
驚くべきことには、表2および2aの結果から分かるように、本発明の実施例において測定されたスコーチ時間(130℃/t5)が、比較例における場合よりもはるかに短かいことが見いだされた。本発明の加硫物は、より良好な300弾性率値と優れた転がり抵抗性を示す。本発明の実施例の極めて優れた摩耗値(<70mm)はとりわけ驚くべきことである。比較例3の場合と比較して本発明の実施例においては、摩耗が20%改良された。比較例1および2からの摩耗値を基準にして測定すると、本発明の実施例で達成される改良の可能性は40%を超える。
【0096】
ゴム混合物および加硫物の試験:
ムーニー粘度の測定:
粘度は、ゴム(およびゴム混合物)を加工しているときに、それらによって発揮される抵抗力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計の中で、溝のあるディスクが上下共にサンプル物質で取り囲まれていて、加熱可能なチャンバーの中で、約2回転/分の速度で回転される。この目的のために必要な力を、トルクの形式で測定し、それぞれの粘度に対応させる。その試験片は一般的には、1分間で100℃に予備加熱し、それから4分かけて測定するが、その間温度は一定に保たれる。
【0097】
粘度は、それぞれの試験条件と共に記述するが、一例は、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、大ロータ、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)である。
【0098】
表1に記載されたゴム混合物の粘度は、ムーニー剪断円板式粘度計の手段により測定したものである。
【0099】
スコーチ性能(t5スコーチ時間):
混合物の「スコーチ」性能を測定するために、上述したのと同一の試験を使用することができる。本特許において選択された温度は、130℃である。ロータを回転させて、トルク値が、最小値を過ぎ、その最小値(t5)に対して5ムーニー単位だけ高くなるまで続ける。値が大きくなるほど(ここでの単位:秒)、スコーチが遅い(ここでは高いスコーチ値)。
【0100】
レオメーター(バルカメーター)170℃/t95完全加硫時間:
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)における加硫の進行と、その結果の分析データは、ASTM D5289−95に従い、MDR 2000 Monsantoレオメーター中で測定する。表2は、この試験の結果を照合している。
【0101】
ゴムの95%が架橋された時点を、完全加硫時間として測定する。選択した温度は170℃であった。
【0102】
硬度の測定:
本発明におけるゴム混合物の硬度を測定するために、表1の配合に従って、そのゴム混合物から作った厚み6mmのミルドシートを作製した。そのミルドシートから直径35mmの試験片を切り出し、それらについて、ショアーA硬度値を、デジタルショアー硬度試験器(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm)の手段により測定した。
【0103】
引張試験:
引張試験は、エラストマーの荷重限界を直接求めるのに役立つ。破断した時の長手方向の伸びを初期の長さで割り算すると、破断時伸びが得られる。ある段階の伸び、大抵の場合は50、100、200、および300%に達せさせるのに必要な力も測定し、弾性率(所定の300%の伸びでの引張強度、すなわち300弾性率)として表す。
【0104】
表2に試験結果を示す。
【0105】
動的制動:
動的試験法を使用して、周期的に変動する荷重下でのエラストマーの変形挙動の特性表示をする。外部応力が、ポリマー鎖のコンホメーションを変える。
【0106】
この測定によって、損失係数のtanデルタが、損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’との間の比率を使用して間接的に決まる。