特許第6185575号(P6185575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185575
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】皮膚炎症性疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/10 20060101AFI20170814BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K31/10
   A61P17/00
   A61P17/10
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-516094(P2015-516094)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公表番号】特表2015-518886(P2015-518886A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】US2013043921
(87)【国際公開番号】WO2013184586
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/655,936
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508285271
【氏名又は名称】オラテック セラピューティクス リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ピー.セント ローレント
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−503533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メタンスルホニルプロピオニトリルの有効量を含んで成る、ざ瘡の治療のための医薬組成物
【請求項2】
前記医薬組成物が閉鎖面疱、丘疹、膿疱、結節及び嚢胞から成る群から選択されるざ瘡病変を軽減する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
3−メタンスルホニルプロピオニトリルの有効量を含んで成る、酒さの治療のための医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が紅斑、毛細血管拡張症, 赤色ドーム型の丘疹及び膿疱、赤くごろごろ感のする眼(gritty eyes)、熱傷及びピリピリした感覚から成る群から選択される1又は2以上の症状を軽減する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
局所形態である、請求項1又は3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記局所形態が、ゲル、クリーム、ローション、液体、エマルション、軟膏、スプレー、 溶液、懸濁液又はパッチである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
経口形態である、請求項1又は3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記経口形態が、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、又はシロップである、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、炎症又は炎症関連障害、特にざ瘡、乾せん、皮膚炎及び酒さを治療するための3−メタンスルホニルプロピオニトリル又はその医薬的に許容される塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炎症は、微生物又は組織損傷が、高められた血管透過性、内皮受容体のアップレギュレーション、及び周囲組織に侵入し、そして炎症の従来の状況、すなわち発赤、腫脹、発熱及び疼痛を強く生成する先天性及び適応性免疫系の種々の細胞のそれによる増大された放出を生成する種々の細胞型からのサイトカイン及びケモカインの放出を誘発する工程である。
【0003】
炎症は、種々の内因性及び外因性要因により引起され得る、損傷に起因する生存組織の局在性反応である。外因性要因は、物理的、化学的及び生物学的要因を包含する。内因性要因は、炎症性メディエーター、抗原及び抗体を包含する。内因性要因はしばしば、外因性損傷の影響下で進行する。炎症性反応に続いて、しばしば細胞膜の変更された構造及び透過性を伴う。内因性要因、すなわちメディエーター、抗原及びオートゲン(autogen)は、炎症反応の性質及びタイプ、特に損傷の領域におけるその進路を定義する。組織損傷がメディエーターの創造に限定される場合、急性炎症が進行する。免疫反応はまた、抗原、抗体及び自己抗原の相互作用を介して、工程に関与している場合、長期炎症工程が進行するであろう。種々の外因性剤、例えば感染、外傷、放射線はまた、生化学反応を開始する損傷性細胞膜による、分子レベルでの炎症性工程の経過を提供する。
【0004】
現在の治療は、炎症のいくつかの又はすべての病原性成分に向けられる。例えば、コルチコステロイドは、広範囲の活性を有し、そしてNSAISAは、より特定には、抗−プロスタグランジン及び鎮痛剤である。すべての現在の治療は、比較的高い割合の副作用を有し、そして副作用は重度で且つ深刻である。
【0005】
皮膚炎症性疾患を治療するための組成物及び方法の必要性がある。組成物は製造するのに経済的で且つ容易であるべきであり、そして方法は効果的であり、且つ重度の副作用を有すべきではない。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、3−メタンスルホニルプロピオニトリル又は医薬的に許容されるその塩を、その必要な対象に投与する段階を含んで成る、炎症性皮膚疾患又は障害を、治療するための方法に向けられ、ここで前記炎症性皮膚疾患又は障害は、皮膚炎、乾せん、ざ瘡又は酒さである。
【0007】
1つの実施形態によれば、前記方法は、アトピー性皮膚炎を治療し、そして紅斑、硬結、苔蘚化、スケーリング(scaling)及び滲出、及び痂皮から成る群から選択された1又は2以上の症状を軽減する。
【0008】
1つの実施形態によれば、前記方法は、乾せんを治療し、そして紅斑、スケーリング(scaling)及び/又は乾せん病変の厚さを軽減する。
【0009】
1つの実施形態によれば、前記方法は、ざ瘡を治療し、そして閉鎖面疱、丘疹、膿疱、結節及び嚢胞から選択されたざ瘡病変を軽減する。
【0010】
1つの実施形態によれば、前記方法は、酒さを治療し、そして紅斑、毛細血管拡張症、赤色ドーム型の丘疹及び膿疱、赤くごろごろ感のする眼(gritty eyes)、及び熱傷及びピリピリした感覚から成る群から選択された1又は2以上の症状を軽減する。
【0011】
活性化合物は、局部又は全身性投与により投与され得る。好ましい投与経路は、局所投与又は経口投与である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な記載
定義
「医薬的に許容される塩」(pharmaceutically acceptable salts)とは、本明細書において使用される場合、本発明の所望する生物学的活性を保持し、そして所望しない毒性効果を付与しない塩である。医薬的に許容される塩は、異なった塩の結晶性多形及び非晶形を包含する。医薬的に許容される塩は、金属又は有機対イオンにより形成され得、そして次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:アルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩:アルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム又はカルシウム塩;及びアンモニウム又はテトラアルキルアンモニウム塩、すなわちNX4−(ここで、XはC1-4である)。
【0013】
「溶媒和物」(solvates)とは、本明細書において使用される場合、化合物が許容される共溶媒と、ある一定の割合で組合わされる付加複合体である。共溶媒は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:酢酸エチル、乳酸ラウリル、乳酸、ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチレングリコール、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ピリジン、ジオキサン及びジエチルエーテル。
【0014】
「有効量」(effective amount)とは、本明細書において使用される場合、病理学的状態を寛解するか、又は疾患の症状を軽減することにより、疾患を治療するのに有効な量である。
【0015】
医薬組成物
下記3−メタンスルホニルプロピオニトリルの精製された化合物は、その全体が参照により本明細書に組込まれる米国特許第2012/0157524号に従って調製され得る。
【0016】
【化1】
【0017】
本発明は、1又は2以上の医薬的に許容される担体及び3−メタンスルホニルプロピオニトリル、又は医薬的に許容されるその塩、又は溶媒和物を含んで成る医薬組成物の使用に関する。活性化合物は好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、97%、98%又は99%の純度を有する。
【0018】
医薬組成物中の活性化合物3−メタンスルホニルプロピオニトリル又は医薬的に許容されるその塩又は溶媒和物は一般的に、局所製剤に関しては、約0.01−20%、又は0.05−20%、又は0.1−20%、又は0.2−15%、又は0.5−10%、又は1−5%(w/w)、注射製剤に関しては、約0.1−5%、パッチ製剤に関しては、0.1−5%、錠剤製剤に関しては、約1−90%、及びカプセル製剤に関しては、1−100%の量で存在する。
【0019】
1つの実施形態によれば、活性化合物は、任意の許容される担体、例えばクリーム、ゲル、ローション、又は活性化合物を安定化することができ、そして局所適用により影響される領域にそれを送達できる他のタイプの懸濁液中に組込まれる。別の実施形態によれば、医薬組成物は、剤形、例えば錠剤、カプセル、顆粒、細粒剤、粉末、シロップ、座薬、注射用溶液、パッチ、又は同様のもので存在することができる。上記医薬組成物は、従来の方法により調製され得る。
【0020】
不活性成分である医薬的に許容される担体は、従来の基準を用いて、当業者により選択され得る。医薬的に許容される担体は、非水性基剤の溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ミセル溶液、ゲル及び軟膏を包含するが、但しそれらだけには限定されない。医薬的に許容される担体はまた、次のものを包含する(但し、それらだけには限定されない)成分も含むことができる:生理食塩水及び水性電解質溶液;イオン性及び非イオン性浸透剤、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、及びデキストロース;pH調整剤及び緩衝剤、例えば水酸化物、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩;及びトロラミン;酸化防止剤、例えば亜硫酸水素、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸、チオ硫酸、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、およびパルミチン酸アスコルビルの塩、酸及び/又は塩基;界面活性剤、例えばレシチン、リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトール(但し、それらだけには限定されない);ポロキサマー及びポロキサミン、ポリソルベート、例えばポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート20、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;ポリビニル、例えばポリビニルアルコール及びポビドン;セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの塩;石油誘導体、例えば鉱油及び白色ワセリン;油脂、例えばラノリン、ピーナッツ油、パーム油、大豆油;モノ-、ジ-、及びトリグリセリド;アクリル酸のポリマー、例えばカルボキシポリメチレンゲル、及び疎水性的に改質された架橋されたアクリル系コポリマー;多糖類、例えばデキストラン及びグリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸ナトリウム。そのような医薬的に許容される担体は、良く知られている保存剤を用いて、細菌汚染に対して保存され得、それらは、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸、及びその塩、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール、及びフェニルエチルアルコールを包含するが、但しそれらだけには限定されず、又は単一又は複数使用のための非保存製剤として製剤化され得る。
【0021】
例えば、3−メタンスルホニルプロピオニトリルの錠剤製剤又はカプセル製剤は、生物活性及び活性化合物との反応を有さない他の賦形剤を含むことができる。錠剤中の賦形剤は、充填剤、結合剤、滑沢剤及び流動促進剤、崩壊剤、湿潤剤、及び放出速度調節剤を包含することができる。結合剤は、製剤の粒子の接着を促進し、そして錠剤製剤のために重要である。結合剤の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラヤガム、デンプン、デンプン、及びトラガカントゴム、ポリ(アクリル酸)、及びポリビニルピロリドン。
【0022】
例えば、3−メタンスルホニルプロピオニトリルのパッチ製剤は、いくつかの不活性成分、例えば1,3−ブチレングリコール、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、エデト酸二ナトリウム、D−ソルビトール、ゼラチン、カオリン、メチルパラベン、ポリソルベート80、ポビドン、プロピレングリコール、プロピルパラベン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、酒石酸、二酸化チタン、及び精製水を含むことができる。パッチ製剤はまた、皮膚透過性増強剤、例えば乳酸エステル(例えば、乳酸ラクリル)又はジエチレングリコールモノエチルエーテルも含むことができる。
【0023】
3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含む局所製剤は、ゲル、クリーム、ローション、液体、エマルジョン、軟膏、スプレー、溶液、懸濁液及びパッチの形で存在することができる。局所製剤中の不活性成分は、例えば次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:ウリルラク(エモリエント/浸透エンハンサー)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エモリエント/浸透エンハンサー)、DMSO(溶解性エンハンサー)、シリコーンエラストマー(レオロジー/テクスチャ改質剤)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、(エモリエント)、オクチサレート、(皮膚軟化剤/UVフィルター)、シリコーンオイル(皮膚軟化剤/希釈剤)、スクアレン(エモリエント)、ヒマワリ油(皮膚軟化剤)、及び二酸化ケイ素(増粘剤)。
【0024】
1つの実施形態によれば、乳酸ラウリル(例えば、約0.1−10%、又は約0.2−5%、又は約0.5−5%)が局所ゲル製剤に含まれる。乳酸ラウリルは、局所投与のために安全であると思われる。乳酸ラウリルは、医薬及び化粧品内でのヒト使用のために適格である。乳酸ラウリルは、局所製剤に使用される場合、化合物の透過性を増強する。好ましくは、乳酸ラウリルは、90%以上、好ましくは95%以上の純度を達成するよう精製され;高純度が加水分解及び酸化剤の存在を緩和する。さらに、製剤における0.1−20%、又は0.5−10%(w/w)でのDMSOは、3−メタンスルホニルプロピオニトリルの適切な溶解性を提供する。
【0025】
別の実施形態によれば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが、局所ゲル製剤に含まれる。
【0026】
使用法
炎症は、免疫系の先天性及び獲得された成分の活性化及び継続に起因する組織病理学の工程及び状態である。細胞対細胞相互作用におけるアラキドン酸カスケード及びサイトカイン生成及び作用は、免疫活性化及び応答の決定的成分であり、これが炎症を誘発する。アラキドン酸は、多くの細胞膜に存在する。アラキドン酸が膜から切除される場合、それは前炎症性実体として知られる、既知エイコサノイド、例えばプロスタグランジン及びロイコトリエンの多くを生成することができる。
【0027】
出願人は、3−メタンスルホニルプロピオニトリルが、インビトロでヒト末梢血液単核細胞からプロ−炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、TNFα、IL-4及びIFNγ)放出を阻害したことを発見した。出願人は、3−メタンスルホニルプロピオニトリルが、炎症がアラキドン酸により誘発されたマウス耳腫脹モデルに局所適用される場合、抗−炎症性であることを発見した。出現人は、3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含むゲル製剤がラット及びミニブタにおける14日間の経皮毒性試験で十分に許容されたことを見出した。ラット及びイヌにおける経口、全身性毒性投与の後にしばしば見られる唯一の効果は、軽度の生理学的効果、例えば低められた体温、低められた呼吸数、高められた血圧及び高められた心拍数であった。その効果は、化合物が全身性治療使用のために十分に許容されることを示唆する、予測されるヒト治療用量よりも2000倍以上の用量で見られた。
【0028】
好ましい実施形態によれば、本発明は、皮膚上の炎症の治療において有用である。高度に神経支配される皮膚は、発赤、腫脹及び発熱についての高い能力を有する。皮膚システムにおいては、組織損傷の程度は、結果として生じる炎症応答に比例しないで頻繁に拡大される。皮膚においては、例えば、単なる堅調なストロークが、サイトカイン、IL−1及びTNFの放出を引き起こすであろう。
【0029】
本発明は、炎症性皮膚疾患、例えば酒さ、皮膚炎、乾せん、及びざ瘡(尋常性ざ瘡)を治療するための方法を提供する。前記方法は、その必要な対象を同定し、そして3−メタンスルホニルプロピオニトリルを、前記対象に、疾患の症状を低めるか又は排除するのに有効な量で投与する段階を含んで成る。前記方法は、酒さ、皮膚炎、乾せん、及びざ瘡の症状及び徴候を軽減する。
【0030】
皮膚は、環境的刺激に対して高い反応性であり、そして角化細胞の表皮成分は、アラキドン酸、及びIL−1及びTNFのプロ炎症性サイトカインの両者の非常に富んだ源である。皮膚の樹状細胞であるランゲルハンス細胞は、種々のリンパ球のさらなる免疫応答のための抗原を認識し、そして処理し、そしてそれらの細胞のすべては、それらの特異的細胞表面受容体を介してサイトカインにより主に調節される。
【0031】
皮膚炎(また、湿疹とも呼ばれる)は、皮膚の一般的な炎症である。皮膚炎の特定型は、アトピー性、接触性、貨幣状、及び光誘導性を包含する。
【0032】
接触性皮膚炎は、特定の適応性免疫学的病因なしに皮膚への刺激性暴露の、又はアレルギー性感作及び特定の適応性免疫学的病因を伴って、感作アレルゲンへの皮膚の続く暴露の何れかの皮膚の炎症状態である。両者は、上皮細胞、マクロファージ、樹状細胞、好中球、及び種々のT及びBリンパ球により生成されるエイコサノイド及び/又はサイトカイン部分による細胞から細胞へのメッセージングを介して疾患を開始し、そして伝播する、アラキドン酸及びサイトカイン成分を包含する先天性及び獲得された免疫系応答を包含する。接触性皮膚炎は、急性又は慢性の何れかであり得る。急性形は、開始因子による皮膚接触領域における紅斑、浮腫、及びミクロ又はマクロ小胞化を伴ってのそう痒である。慢性形は、軽度の紅斑、及び特に手上の亀裂を伴ってのそう痒である。
【0033】
アトピー性皮膚炎は、喘息、花粉症及びアトピー性皮膚炎を含むアトピーの広範な疾患複合体の一部である遺伝的に決定された疾患である。アトピー性皮膚炎を有する多くの個人は、不良の場合、表皮の異常バリア機能をもたらす重要な皮膚構造タンパク質をコードするフィラグリン遺伝子の種々の突然変異を有する。その変更されたバリアは、アラキドン酸及びエイコサノイドを包含する先天性免疫応答、及びかゆみ、紅斑及び続くスクラッチの急性応答を開始し、そしてさらに、主にTH2誘導及び活性のリンパ球による炎症を包含する適応性免疫応答を活性化する、好酸球、肥満細胞及び他の炎症性細胞の動員により最初に認識される複数の環境アレルゲンへの暴露を可能にする。アトピー性皮膚炎は、多くのサイトカイン阻害剤、例えばサイクロスポリン及びタクロリムスに対して応答する。
【0034】
乾せんの病因の現在の理論は、遺伝的に敏感である個人において、表皮におけるトリガー現象、例えば外傷又は超抗原接触が、アラキドン酸及びエイコサノイド生成、動員及び好中球の活性による先天性免疫系の応答を開始することである。前記応答の、サイトカイン活性化及び特定Tリンパ球の活性によるTH1適応性免疫の応答への続く転換が、表皮及び真皮における病理学的変化をもたらし、これが紅斑性、肥厚化及びうろこ状であるプラークの典型的な乾せん病変をもたらす。乾せんは、種々の免疫モジュレーター、例えばシクロスポリン、メトトレキセート、及びサイトカインシグナル伝達を干渉する特定の生物製剤の宿主に対して応答する。
【0035】
尋常性ざ瘡、すなわち特に顔面及び上胸及び背部の毛包脂腺卵胞単位の漸進性炎症性疾患は、思春期後の男性及び女性において、及び副腎成熟の前でさえ、女性において非常に一般的な疾患である。副腎、卵巣及び精巣腺、及び毛包脂腺ユニット自体によるアンドロゲンホルモンの増大された生成が、皮脂の増加及びその脂質組成の変化をもたらし、これが、ざ瘡の初期病変をもたらす毛包脂腺卵胞の赤外−漏斗部分のある程度の閉塞をもたらすために卵胞皮脂上皮細胞と結合する。この結果として生じる拡張及び思春期での皮脂の変更された組成が、卵胞を通して真皮中に漏れ、そしてエイコサノイド生成及び続く炎症の開始のアラキドン酸経路を開始する遊離脂肪酸に皮脂中のトリグリセリドを分解するための酵素を生成するプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌による卵胞のコロニー化を促進する。前記菌にまた、前記領域にさらなる炎症性細胞を引きつけるケモカイン生成、及び続くサイトカイン生成及び炎症を継続し、そして増幅する作用を開始せしめる。従って、微小面皰における漸進性炎症の開始及び伝播は、炎症性ざ瘡、丘疹、膿疱、結節、及び嚢胞のいくつかの特徴的病変への進行を生成する。本発明は、一般的なざ瘡、面皰ざ瘡、丘疹膿疱性ざ瘡、丘面皰ざ瘡、結節嚢胞ざ瘡、集簇性座瘡、首のうなじのケロイド状ざ瘡、再発性粟粒ざ瘡、壊死性ざ瘡、新生児ざ瘡、職業的ざ瘡、にきび酒さ、老人性ざ瘡、太陽ざ瘡又はにきび薬物性を治療するために有用である。
【0036】
酒さは、顔面紅斑及び時には、にきびにより特徴づけられる慢性症状である。酒さは典型的には、頬、鼻又は額全体の中央上に発赤として始まるが、しかしまた、首、胸、耳及び頭皮にはあまり影響を与えない。ある場合、追加の症状、例えば半永久的発赤、毛細血管拡張症(顔面上の表在血管の拡張)、赤色ドーム型の丘疹(小さな隆起)及び膿疱、赤くごろごろ感のする眼(ざらざら眼)、熱傷及びピリピリした感覚、及びいくつかの進行した場合、赤分葉鼻(鼻瘤)が進行することができる。皮膚に影響を及ぼす次の3種のタイプの酒さが存在する:紅斑毛細血管拡張性酒さ、丘疹膿疱性酒さ及び瘤腫性酒さ。
【0037】
アラキドン酸誘発された炎症の阻害において、及びプロ炎症性サイトカインの放出の阻害において有効である3−メタンスルホニルプロピオニトリル(MSPN)は、炎症性皮膚疾患、例えば皮膚炎、乾せん、ざ瘡、及び酒さを治療するのに有効である。MSPNは、アトピー性皮膚炎の治療において、及び紅斑、硬結、苔癬化、スケーリング(scaling)、及び滲出及び痂皮から成る群から選択される1又は2以上の症状の軽減において有効である。MSPNは、乾せんの治療、及び紅斑、スケーリング及び/又は乾せん病変の厚さの緩和において有効である。MSPNは、ざ瘡の治療、及び閉鎖面疱、丘疹、膿疱、結節,及び嚢胞から成る群から選択されるざ瘡病変の緩和において有効である。
【0038】
MSPNは、酒さの治療、及び紅斑、毛細血管拡張症、赤色ドーム型の丘疹及び膿疱、赤くごろごろ感のする眼(gritty eyes)及び熱傷及びピリピリした感覚から成る群から選択される1又は2以上の症状の緩和において有効である。
【0039】
本発明の医薬組成物は、局所投与及び全身性投与により適用され得る。局所投与(Local administration)は、局所投与(topical administration)を包含する。全身性投与は、経口、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は直腸)、及び他の全身性経路の投与を包含する。全身性投与においては、活性化合物は、最初に、血漿に達し、そして次に、標的組織中に分散する。局所投与及び経口投与は、本発明のための投与の好ましい経路である。
【0040】
組成物の投与は、損傷の程度、及び各患者の個々の応答に基づいて変更することができる。全身性投与に関しては、投与される活性化合物の血漿濃度は、変えることができ;一般的に、1×10-10−1×10-4モル/l、及び好ましくは、1×10-8−1×10-5モル/lである。
【0041】
1つの実施形態によれば、組成物は、影響される領域上に局所的に適用され、そしてその中に擦りこまれる。組成物は、医薬問題、及び慢性又は急性である疾患の病状に依存して、1日当たり少なくとも1又は2回、又は1日当たり3〜4回、局所適用される。一般的に、局所組成物は、約0.01−20%、又は0.05−20%、又は0.1−20%、又は0.2−15%、又は0.5−10%、又は1−5%(w/w)の活性化合物を含む。例えば、局所組成物は、約1又は5%(w/w)の活性化合物を含む。影響される領域のサイズに依存して、0.2−85ml、典型的には0.2−10mlの局所組成物が、用量当たり個人に適用される。活性化合物は、皮膚を通過し、そして不快な部位に送達される。
【0042】
1つの実施形態によれば、医薬組成物は、対象に経口投与される。経口投与のための投与量は、一般的に1−50、及び好ましくは1−10mg/kg/日である。
【0043】
1つの実施形態によれば、医薬組成物は、対象に皮下投与される。皮下投与のための投与量は一般的に、0.3−20、及び好ましくは0.3−3mg/kg/日である。
【0044】
当業者は、広範囲の種類の送達機構がまた、本発明のために適切であることを理解するであろう。
【0045】
本発明は、哺乳類対象、例えばヒト、ウマ及びイヌの治療に有効である。本発明は、ヒトの治療において特に有用である。
【0046】
次の実施例は本発明をさらに例示する。それらの実施例は、本発明を単に例示するものであり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1.ゲル製剤1
表1は、3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含む1つのゲル製剤を例示する。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例2.ゲル製剤2
表2は、3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含む別のゲル製剤を例示する。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例3.サイトカイン活性の阻害
3−メタンスルホニルプロピオニトリル(MSPN)を、ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)からのインビトロサイトカイン放出に対するその効果について試験した。PBMCによるサイトカインの分泌は、炎症応答において有意な役割を演じる。
【0052】
MSPNを、二重反復して、新鮮なヒトPBMCの培養物に、162μM(22μg/ml)で添加した。1時間後、PBMCを、マイトジェンリボ多糖及びコンカナバリンA(ConA)を用いて刺激し、サイトカインを分泌した。50pg/mlでのリポ多糖を用いて、インターロイキンIL−6及び腫瘍壊死因子TNFαの放出を刺激した。20μg/mlでのConAを用いて、IL−4の放出を刺激し、そして5μg/mlでConAを用いて、インターフェロンIFNγを刺激した。コルチコステロイドデキサメタゾン(100nM)を、正の対照として使用した。24時間のインキュベーションの後、上清液を、Luminex Beadキットを用いて、サイトカインについてアッセイした。22μg/mlでのMSPNは、IL-1β、IL-6、TNFα、IL-4及びIFNγの放出を、95%、98%、98%、7%及び21%、阻害した。デキサメタゾンは、IL-1β、IL-6、TNFα、IL-4及びIFNγの放出を、それぞれ24%、60%、42%、93%及び87%、阻害した。
【0053】
結果は、MSPNが炎症工程に関与するサイトカインに対して有意な阻害を有することを示す。
【0054】
実施例4.局所適用によるマウスにおける3−メタンスルホニルプロピオニトリルの抗−炎症活性
精製された3−メタンスルホニルプロピオニトリルを、ビヒクル(エタノール/アセトン 1:1)に溶解し、5%(w/v)にした。活性化合物、インドメタシン(ビヒクルにおける陽性対照)、及びビヒクルを、マウスに局所適用し、そして刺激性接触性皮膚炎のモデルである、マウスにおける局所アラキドン酸誘発耳における抗−炎症活性について評価した。
【0055】
22±2gの体重の雄ICRマウスを用い、そしてランダムに分けた:各グループは10匹のマウスを有した。アラキドン酸(20μlのアセトン:エタノール(1:1)0.5mg)を、各マウスの右耳の前面及び後面に局所適用した。表3に列挙されるような試験物質及びビヒクルを、アラギドン酸適用の30分前及び15分後、同様にして適用した。右耳及び左耳の厚さを測定し、そして差異を、右耳における炎症の指標として計算した。耳の腫脹を、炎症の指標として、アラキドン酸適用の60及び90分後に、Dyerモデルのマイクロメーターゲージにより測定した。%阻害率を、式:Ic−It/Ic×100(式中、Ic及びItは、それぞれ、対照及び治療されたマウスにおける耳の厚さ(mm)の上昇を示す)に従って計算した。ANOVA及びDunnett検定を用いて、ビヒクル対照と治療されたグループとの間の有意な差異を確かめた。アラキドン酸適用の90分後で測定される結果が、表3に要約される。
【0056】
【表3】
【0057】
3−メタンスルホニル−プロピオニトリルは、ビヒクル治療されたグループにおける阻害率に比較して、アラキドン酸により誘発された耳腫脹において、有意な阻害率(36%)をもたらした。MSPN−治療されたマウスと、ビヒクル−処理されたマウスとの間の差異は、統計学的に有意であることが決定された(t−決定によるp−値は<0.001であった)。
【0058】
実施例5.MSPN製剤の全身性投与
この研究は、ラットへの経口及び皮下経路による投与の後、MSPNの全身性(血漿)暴露を決定するために行われた。
【0059】
MSPN物質を、経口投与のために水において、及び皮下投与のために生理食塩水において調整した。282〜295gの体重のラットを、この研究に使用した。雄ラット(n=2)は、経口及び皮下経路により、50、160又は500mg/kgで単回投与された。雌ラット(n=2)は、経口及び皮下経路により、500mg/kgでのみ投与された。血液を、0.25、1、2、3、4、6、12、24及び48時間で、各ラットから採血し、そしてLC/MS/MSによりMSPN濃度について測定した。
【0060】
雄に関しては、50、160又は500mg/kgで経口投与した後、測定される平均最大血漿濃度は、それぞれ、160、560及び12,000μg/mlであり;そして皮下投与後では、それぞれ、160、760及び3300μg/mlであった。雌に関しては、500mg/kgの経口投与後の平均Cmaxは、3800μg/mlであり、そして500mg/kgの皮下投与後では、9500μg/mlであった。半減期は、両経路及び両性別で類似し、そして8〜15時間の範囲であった。
【0061】
上記結果は、経口及び皮下経路の後、MSPNの有意な生物学的利用能を有したことを示す。
【0062】
実施例6.経口適用によるマウスにおける3−メタンスルホニルプロピオニトリルの抗−炎症活性(仮想例)
精製された3−メタンスルホニルプロピオニトリルを、ビヒクル(水中、1%Tween80)に懸濁し、5−15mg/mlにする。試験化合物、デキサメタゾン(ビヒクル中、正の対照)、及びビヒクルを、マウスに経口投与し、そしてマウスにおける局所アラキドン酸誘発耳腫脹モデルにおける抗−炎症活性を評価した。
【0063】
22±2gの体重の雄ICR由来のマウスを、この実験に使用する。10−15匹のマウスを、各グループのために使用する(活性化合物、正の対照及びビヒクル)。すべての動物は、調節された温度(22−24℃)及び湿度(60%−70%)環境下で、12時間の明/暗サイクルにより、少なくとも1週間、使用の前、維持される。
【0064】
アラキドン酸(20μlのアセトン中、0.5mg)を試験動物の右耳の前面及び後面上に局所適用し、炎症を誘発する。ビヒクル(10ml/kg)及びビヒクル(10ml/kg、50−150mg/kg)中、MSPNを、アラキドン酸投与の1時間前、強制経口により経口投与し、そしてデキサメタゾンは、アラキドン酸投与の3時間前、強制経口により経口投与される。耳浮腫のアラキドン酸誘発の60分及び90分後で、右耳及び左右の厚さを測定し、そして差異を、右耳における炎症の標識として計算する。有意な活性が、ビヒクル処理されたグループに比較し、アラキドン酸誘発された耳腫脹における統計学的に有意な阻害率(t−検定により決定されたp−値は<0.05であった)として定義される。
【0065】
実施例7.アトピー性皮膚炎の治療(仮想例)
目的:アトピー性皮膚炎を有する患者におけるMSPNゲルの有効性を調べるためである。
【0066】
製剤:1−5%でMSPNを含むゲル製剤(実施例2)を、この実施例に使用する。プラシーボは、活性化合物を有さない同じゲルを含む。
【0067】
方法論:これは、ランダム化された、二重盲検、プラシーボ調節された、並列処理の臨床活性研究である。
【0068】
軽度〜重度のアトピー性皮膚炎を有する男性及び女性患者が、研究の開始の前、4週間、アトピー性皮膚炎について、すべての治療の中断の後、登録される。患者は、1:1の比率でランダム化される(活性ゲル、プラシーボ)。合計300人の患者が登録され、そして治療される。
【0069】
活性ゲル又はプラシーボを、身体の影響領域に、1日2度、12週間、適用する。治療結果は、12週まで、次に、試験薬適用の中断の4週後、2週間隔で評価される。
【0070】
評価のための基準:
安全性:
安全性が、一般的病歴及び物理的徴候により、血液学、血清化学及び尿検査についての臨床検査により、及び「0」(ナシ)〜「3」(重度)の評価尺度を用いて、紅斑、スケーリング、乾燥、ピリピリした痛み/熱傷の局所適用部位許容性パラメーターの評価により評価される。
【0071】
有効性:
有効性は、下記を用いて評価する:
1.研究開始時まで、及び12週まで、及び続いて、研究投薬の中断の4週後で、2週間隔で、疾患重症度の総合評価。調査員の全体的評価(IGA)は、0〜4の評価尺度(0=なし又はなし(clear)、1=ほとんどなし、2=軽度の関与、3=中位の疾患関与、及び4=重度の疾患関与)に基づかれる。
【0072】
2.0−4の尺度(0=なし又はなし(clear)、1=ほとんどなし、2=軽度の関与、3=中位の疾患関与、及び4=重度の疾患関与)で評価される各パラメーターによる、紅斑、硬結、苔癬化、スケーリング(scaling)及び滲出及び痂皮についての関与の代表的標的アトピー性皮膚炎領域の個別評価。
【0073】
これらの有効性評価の個々の統計学的分析が、各2週試験時点で実施される。有効性の最終的評価は、12週の治療の終了時、ビヒクルグループに対する活性グループの比較に基づかれる。4週後の治療評価は、投薬中断の後の治療効果の耐久性を評価するために利用される。
【0074】
実施例8.乾せんの治療(仮想例)
目的:尋常性乾せんを有する患者におけるMSPNゲルの有効性を調べるためである。
【0075】
製剤:1−5%でMSPNを含むゲル製剤(実施例2)を、この実施例に使用する。プラシーボは、活性化合物を有さない同じゲルを含む。
【0076】
方法論:これは、ランダム化された、二重盲検、プラシーボ調節された、並列処理の臨床活性研究である。
【0077】
軽度〜重度のアトピー性皮膚炎を有する男性及び女性患者が、登録される。患者は、研究の開始の前、4週間、尋常性乾せんについて、すべての治療を中断する。患者は、1:1の比率でランダム化される(活性ゲル、プラシーボ)。合計200人の患者が登録され、そして治療される。
【0078】
活性ゲル又はプラシーボを、身体の影響領域に、1日2度、12週間、適用する。治療結果は、12週まで、次に、試験薬適用の中断の4週後、2週間隔で評価される。
【0079】
評価のための基準:
安全性:
安全性が、一般的病歴及び物理的徴候により、血液学、血清化学及び尿検査についての臨床検査により、及び「0」(ナシ)〜「3」(重度)の評価尺度を用いて、紅斑、スケーリング、乾燥、ピリピリした痛み/熱傷の局所適用部位許容性パラメーターの評価により評価される。
【0080】
有効性:
有効性は、下記を用いて評価する:
1.研究開始時まで、及び12週まで、及び続いて、研究投薬の中断の4週後で、2週間隔で、疾患重症度の総合評価。調査員の全体的評価(IGA)は、0〜4の評価尺度(0=なし又はなし(clear)、1=ほとんどなし、2=軽度の関与、3=中位の疾患関与、及び4=重度の疾患関与)に基づかれる。
【0081】
2.0−4の尺度(0=なし又はなし(clear)、1=ほとんどなし、2=軽度の関与、3=中位の疾患関与、及び4=重度の疾患関与)で評価される各パラメーターによる、紅斑、スケーリング及び厚さについての関与の代表的標的乾せん病変領域の個別評価。
【0082】
各有効性評価の統計学的分析が、各2週試験時点について実施される。有効性の最終的評価は、12週での治療の終了時、ビヒクルグループに対する活性グループの比較に基づかれる。4週後の治療評価は、投薬中断の後の治療効果の耐久性を評価するために利用される。
【0083】
実施例9.ざ瘡の治療(仮想例)
目的:尋常性ざ瘡を有する患者におけるMSPNゲルの有効性を調べるためである。
【0084】
製剤:1−5%でMSPNを含むゲル製剤(実施例2)を、この実施例に使用する。プラシーボは、活性化合物を有さない同じゲルを含む。
【0085】
方法論:これは、ランダム化された、二重盲検、プラシーボ調節された、並列処理の臨床活性研究である。
【0086】
軽度〜重度の尋常性ざ瘡を有する男性及び女性患者が、登録される。患者は、研究の開始の前、4週間、尋常性乾せんについて、すべての治療を中断する。患者は、1:1の比率でランダム化される(活性ゲル、プラシーボ)。合計500人の患者が登録され、そして治療される。
【0087】
活性ゲル又はプラシーボを、身体の影響領域に、1日2度、12週間、適用する。治療結果は、12週まで、次に、試験薬適用の中断の4週後、2週間隔で評価される。
【0088】
評価のための基準:
安全性:
安全性が、一般的病歴及び物理的徴候により、血液学、血清化学及び尿検査についての臨床検査により、及び「0」(ナシ)〜「3」(重度)の評価尺度を用いて、紅斑、スケーリング、乾燥、ピリピリした痛み/熱傷の局所適用部位許容性パラメーターの評価により評価される。
【0089】
有効性:
有効性は、下記を用いて評価する:
1.研究開始時まで、及び12週まで、及び続いて、研究投薬の中断の4週後で、2週間隔で、疾患重症度の総合評価。調査員の全体的評価(IGA)は、0〜4の評価尺度(0=なし又はなし(clear)、1=ほとんどなし、2=軽度の関与、3=中位の疾患関与、及び4=重度の疾患関与)に基づかれる。
【0090】
2.すべてのタイプのざ瘡病変、すなわち開放及び閉鎖面疱、丘疹、膿疱、結節及び嚢胞の個別評価。
【0091】
各有効性評価の統計学的分析が、各2週試験時点について実施される。有効性の最終的評価は、12週での治療の終了時、ビヒクルグループに対する活性グループの比較に基づかれる。4週後の治療評価は、投薬中断の後の治療効果の耐久性を評価するために利用される。
【0092】
実施例10.酒さの治療
患者Aは、酒さの長期病歴を有する58歳男性である。患者Aがフレアアップ(flare-up)を経験した場合、患者Aは彼の鼻、頬、顎及び額上に発赤を有した。患者Aはまた、自分の顔の赤い部分に小さなバンプも有した。患者Aは、5%の3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含むゲル製剤を供給された(実施例2を参照のこと)。
【0093】
各フレアアップに続いて、患者Aは、5%のゲル製剤を、発赤が消えるまで(平均3回を要する)、赤い領域上に1日2度、適用した。
【0094】
実施例11.肘上の湿疹の治療
患者Bは肘及び膝上の皮膚の乾燥、かゆみ、及び赤み、時々、さらに亀裂し、そして革のようになる、慢性皮膚問題である湿疹(アトピー性皮膚炎)を有する58歳男性である。患者Bは、5%の3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含むゲル製剤を供給された(実施例2を参照のこと)。
【0095】
患者Bは、1日1度、5%ゲル製剤を、影響される領域に適用し、症状が解決するまで、それを十分にこすりつけた。治療期間は、症状の重症度に依存して、典型的には2−3日、及び最大で5日であった。
【0096】
実施例12.背中の肩領域周囲のざ瘡の治療
患者Cは、23歳女性である。患者Cは、彼女の肩と背中にざ瘡を発症した。患者Cは、5%の3−メタンスルホニルプロピオニトリルを含むゲル製剤を供給された(実施例2を参照のこと)。
【0097】
患者Cは、彼女のざ瘡が消えるまで、1日1度、5%ゲル製剤を適用し、そして毎日、改善性を告知した。治療期間は、約5日であった。
【0098】
本発明、及びそれの製造及び使用方法及び工程が、それが関連する当業者によるその製造及び使用を可能にするために、完全、明確な、簡素で正確な用語で今回記載されている。前述は本発明の好ましい実施形態を記載し、そして変更が特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、行うことができることが理解されるべきである。本発明としてみなされる主題を特に指摘しそして明確に特許請求するために、以下の特許請求の範囲が明細書を結論づける。