特許第6185585号(P6185585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東工器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6185585-エア工具 図000002
  • 特許6185585-エア工具 図000003
  • 特許6185585-エア工具 図000004
  • 特許6185585-エア工具 図000005
  • 特許6185585-エア工具 図000006
  • 特許6185585-エア工具 図000007
  • 特許6185585-エア工具 図000008
  • 特許6185585-エア工具 図000009
  • 特許6185585-エア工具 図000010
  • 特許6185585-エア工具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185585
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】エア工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20170814BHJP
   B24B 23/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B25F5/00 D
   B25F5/00 F
   B24B23/06
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-524077(P2015-524077)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2014066815
(87)【国際公開番号】WO2014208589
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-133982(P2013-133982)
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保全
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−171781(JP,A)
【文献】 特表2002−505623(JP,A)
【文献】 特開2006−289607(JP,A)
【文献】 特開2005−177868(JP,A)
【文献】 特開2005−028533(JP,A)
【文献】 特開2009−034753(JP,A)
【文献】 特開平07−314315(JP,A)
【文献】 特開2008−088933(JP,A)
【文献】 米国特許第04660329(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02113342(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25C 1/04
F01C 1/344
B24B 23/00 − 23/06
B25B 23/145
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアモータによって駆動されるエア工具において、
前記エアモータを収容するエアモータ収容部、及び該エアモータ収容部から延びて後方開口端にまで至る筒状の給排気管収容部、を有する工具ハウジングであって、前記エアモータ収容部が、前記エアモータに圧縮空気を供給する圧縮空気入口と前記エアモータから圧縮空気を排出する圧縮空気出口とを有し、前記圧縮空気入口と前記圧縮空気出口とが前記給排気管収容部内に開口しており、前記給排気管収容部の外周面に当該エア工具の使用中に作業者が把持するグリップ部が形成されている、工具ハウジングと、
前記工具ハウジングの前記給排気管収容部の内部に配置された給気管であって、前記後方開口端近傍に位置して圧縮空気供給源からの圧縮空気を受け入れる給気入口、前記圧縮空気入口に連通される給気出口、及び前記給気入口から前記給気出口まで延びる給気流路を有する給気管と、
前記工具ハウジングの前記給排気管収容部の内部に配置された排気管であって、前記圧縮空気出口に連通される排気入口、前記後方開口端近傍に位置して圧縮空気を前記給排気管収容部の外部へ排出する排気出口、及び前記排気入口から前記排気出口まで延びる排気流路を有する排気管と、
を備え、
前記排気管が、前記給排気管収容部とは別体に形成され、前記グリップ部との間に隙間が形成されるように配置されている、エア工具。
【請求項2】
前記排気管は、その一部において前記給排気管収容部と係合して該給排気管収容部によって支持されるようにされ、該排気管の一部及び該一部が係合される前記給排気管収容部の少なくとも一方に凹部が設けられて、該排気管の一部及び該一部が係合される前記給排気管収容部との間に隙間が形成されるようにされた、請求項1に記載のエア工具。
【請求項3】
前記給排気管収容部は、上面壁、下面壁、及び側面壁を有し、
前記排気管は、前記側壁部に係合し、前記上面壁及び前記下面壁との間には隙間が形成されるように配置され、前記側壁部には凹部が設けられて、前記凹部により前記排気管と前記側壁部との間に隙間が形成されるようにされた、請求項1に記載のエア工具。
【請求項4】
前記給気管が、前記給排気管収容部とは別体に形成され、前記給排気管収容部の該グリップ部との間に隙間が形成されるように配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエア工具。
【請求項5】
前記給気管及び前記排気管が一体に形成された、請求項4に記載のエア工具。
【請求項6】
前記給気管の前記給気流路は、前記給気入口から前記給気出口まで略直線状に延在し、
前記排気管は、前記排気入口と前記排気出口との間の中間部分で左右2つに分かれた第1及び第2中間部分を有し、該第1及び第2中間部分が前記給気管を両側から挟むように延在して、前記排気管が前記第1及び第2中間部分において前記給気管に対して立体的に交差するようにした、請求項5に記載のエア工具。
【請求項7】
前記給気流路と前記排気流路とが並行に配置されている、請求項5に記載のエア工具。
【請求項8】
前記給気管の前記給気出口と前記工具ハウジングの前記圧縮空気入口との間に配置された第1シール部材と、前記排気管の前記排気入口と前記工具ハウジングの前記圧縮空気出口との間に配置された第2シール部材とをさらに備え、
前記給気管及び前記排気管が、前記給気流路及び前記排気流路に対して略直角な方向で前記給排気管収容部内に挿入されて該給排気管収容部内に配置されるようにされており、
前記給気管の前記給気出口の端面が前記方向に面するように該方向に対して傾斜し、該給気出口の端面に当接される前記第1シール部材の面が挿入されてきた前記給気管の前記給気出口の端面に密封係合するように前記方向に対して傾斜しており、
前記排気管の前記排気入口の端面が前記方向に面するように該方向に対して傾斜し、前記排気出口の端面に当接される前記第2シール部材の面が挿入されてきた前記排気管の前記排気入口の端面に密封係合するように前記方向に対して傾斜している、請求項4乃至のいずれか一項に記載のエア工具。
【請求項9】
前記給気管の中に配置されて前記給気流路を開閉するためのバルブをさらに備える、請求項1乃至の何れか一項に記載のエア工具。
【請求項10】
前記給気管の外部から前記排気流路を通ることなく前記給気流路内へ延び、前記バルブと係合されたバルブ制御部材をさらに備え、
該バルブ制御部材を前記外部から操作することにより前記バルブの開閉操作を行うようにした、請求項に記載のエア工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアモータを圧縮空気によって駆動するようにされたエア工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエア工具としては、無端研削ベルトを回転駆動して研削作業を行うベルト研削工具(特許文献1)やボルトなどの締結作業を行うエアインパクトレンチ(特許文献2)等がある。このようなエア工具では、内蔵されたエアモータに圧縮空気を供給するための給気流路を構成する給気管がグリップ部を構成するハウジング内に設けられている。また、ハウジングと給気管との間に形成される空間を、エアモータから排出される圧縮空気を排気するための排気流路として利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4912976号公報
【特許文献2】特開2001−138267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなエア工具においては、エアモータから出た直後の圧縮空気が断熱膨張してその温度が低下するのでハウジングのエアモータを収容している部分が冷却されるとともに、温度が低下した圧縮空気が排気流路を通過することによってハウジングの排気流路を構成している部分も冷却されることになる。ハウジングは作業者が作業中に握るグリップ部を構成しているので、作業者は冷たくなったハウジングを握り続けなくてはならなくなる。特に、冬場などは手袋をしていないと作業を続けられないほどに冷たくなることもあるため、作業性が大きく損なわれる虞がある。また、ハウジング内を直接排気が流れているので、エアモータから排気される圧縮空気に含まれる作動油がハウジングの隙間やつなぎ目から外部に漏れてグリップ部が汚れやすく、それによって作業性が損なわれる虞もある。
【0005】
そこで本発明は、排気の断熱膨張によるハウジングの冷却を低減するように排気管を構成したエア工具を提供することを一つの目的とする。また、作動油がハウジングのグリップ部上に漏れないように排気管を構成したエア工具を提供することも一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
エアモータによって駆動されるエア工具において、
前記エアモータを収容するエアモータ収容部、及び該エアモータ収容部から延びて後方開口端にまで至る筒状の給排気管収容部、を有する工具ハウジングであって、前記エアモータ収容部が、前記エアモータに圧縮空気を供給する圧縮空気入口と前記エアモータから圧縮空気を排出する圧縮空気出口とを有し、前記圧縮空気入口と前記圧縮空気出口とが前記給排気管収容部内に開口している、工具ハウジングと、
前記工具ハウジングの前記給排気管収容部の内部に配置された給気管であって、前記後方開口端近傍に位置して圧縮空気供給源からの圧縮空気を受け入れる給気入口、前記圧縮空気入口に連通される給気出口、及び前記給気入口から前記給気出口まで延びる給気流路を有する給気管と、
前記工具ハウジングの前記給排気管収容部の内部に配置された排気管であって、前記圧縮空気出口に連通される排気入口、前記後方開口端近傍に位置して圧縮空気を前記給排気管収容部の外部へ排出する排気出口、及び前記排気入口から前記排気出口まで延びる排気流路を有する排気管と、
を備え、
前記排気管が、前記給排気管収容部とは別体に形成された、エア工具を提供する。
【0007】
当該エア工具においては、工具ハウジング内に配置された排気管が、工具ハウジングの給排気管収容部とは別体に形成されているので、断熱膨張により冷却された排気が工具ハウジングを直接冷却することを回避することができ、これにより、工具ハウジングが冷たくなるのを抑制することが可能となる。また、排気が給排気管収容部に直接触れないで外部に排気されるようになっているので、排気される圧縮空気中の作動油が給排気管収容部の隙間から外に漏れることを防止することも可能となる。
【0008】
好ましくは、前記排気管が、前記給排気管収容部の側壁との間に隙間が形成されるように配置されているようにすることができる。
【0009】
排気管と給排気管収容部との間に隙間を設けることで排気管と給排気管収容部との間の断熱効果を高めて、断熱膨張した排気による工具ハウジングの冷却をさらに抑制することが可能となる。
【0010】
好ましくは、前記排気管は、その一部において前記給排気管収容部と係合して該給排気管収容部によって支持されるようにされ、該排気管の一部及び該一部が係合される前記給排気管収容部の少なくとも一方に凹部が設けられて、該排気管の一部及び該一部が係合される前記給排気管収容部との間に隙間が形成されるようにすることができる。
【0011】
排気管が給排気管収容部と係合するようにすることで、給排気管収容部が排気管によって支えられるので、工具ハウジングの剛性を高めることが可能となり、しかも上記隙間が形成されるので、給排気管収容部の冷却を抑えることができる
【0012】
好ましくは、前記給気管が、前記給排気管収容部とは別体に形成され、前記給排気管収容部の側壁との間に隙間が形成されるように配置されているようにすることができる。
【0013】
排気管と共に給気管も給排気管収容部と別体に形成されるので、それらが給排気管収容部と一体的に形成される場合に較べて製造を容易にすることができる。また、給気管と給排気管収容部の側壁との間に隙間が形成されているので、排気管が圧縮空気の断熱膨張によって冷却されることに伴って冷却される給気管によって工具ハウジングが直接冷却されることを回避することができる。
【0014】
好ましくは、前記給気管及び前記排気管が一体に形成されているようにすることができる。
【0015】
給気管と排気管とが一体とされて一つの部材とされているので、製造時の組立を容易にすることができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記給気管の前記給気出口が前記排気管の前記排気入口の上方に位置し、前記給気管の前記給気入口が前記排気管の前記排気出口よりも下方に位置し、
前記給気管の前記給気流路は、前記給気入口から前記給気出口まで略直線状に延在し、
前記排気管は、前記排気入口と前記排気出口との間の中間部分で左右2つに分かれた第1及び第2中間部分を有し、該第1及び第2中間部分が前記給気管を両側から挟むように延在するようにすることができる。
【0017】
ここで「上方」「下方」とは、「エアモータ収容部」を前方位置とし、「給排気管収容部」を該エアモータ収容部から略水平方向後方に延びるように設定した場合の位置関係であり、当該エア工具の使用時における位置関係を必ずしも意味するものではない。
【0018】
圧縮空気供給源に接続される給気管の給気入口を排気出口の下方位置とすることで、給気入口から垂れ下がるエアホースに排気が当たらないようにすることができる。さらに、給気流路が略直線状となっているので、エアモータへ圧縮空気を供給する際の圧力損失を小さく押さえることが可能となる。さらには、排気管の中間部分が給気管を両側から挟むように構成されているので、中間部分全体を直線状に延びる給気管の一方の側を通して延ばした場合に較べて、排気流路の当該中間部分における流路断面積を確保しつつ排気流路の曲がりを少なくすることができ流路抵抗を抑えることができる。
【0019】
または、前記給気管の前記給気出口が前記排気管の前記排気入口の下方に位置し、前記給気管の前記給気入口が前記排気管の前記排気出口の下方に位置し、前記給気流路と前記排気流路とが並行に配置されているようにすることもできる。
【0020】
好ましくは、前記給気管の前記給気出口と前記工具ハウジングの前記圧縮空気入口との間に配置された第1シール部材と、前記排気管の前記排気入口と前記工具ハウジングの前記圧縮空気出口との間に配置された第2シール部材とをさらに備え、
前記給気管及び前記排気管が、前記給気流路及び前記排気流路に対して略直角な方向で前記給排気管収容部内に挿入されて該給排気管収容部内に配置されるようにされており、
前記給気管の前記給気出口の端面が前記方向に面するように該方向に対して傾斜し、該給気出口の端面に当接される前記第1シール部材の面が挿入されてきた前記給気管の前記給気出口の端面に密封係合するように前記方向に対して傾斜しており、
前記排気管の前記排気入口の端面が前記方向に面するように該方向に対して傾斜し、前記排気出口の端面に当接される前記第2シール部材の面が挿入されてきた前記排気管の前記排気入口の端面に密封係合するように前記方向に対して傾斜しているようにすることができる。
【0021】
このような構成により、給気管及び排気管を工具ハウジングに取り付ける際に、給気管及び排気管を給気流路及び排気流路に対して略直角な方向で工具ハウジングの給排気管収容部内に挿入するに従って、第1及び第2シール部材がそれぞれ給気出口及び排気入口によって徐々に圧縮されるようになる。これにより、給気出口及び排気入口並びに各シール部材が傾斜していない場合に比べて、各シール部材にかかる摺動摩擦が低減されて、摩擦により各シール部材が損傷する可能性が低減される。また、給気管及び排気管と各シール部材との間に生じる摩擦抵抗が小さくなるので給気管及び排気管を工具ハウジングの給排気管収容部内に挿入する際に必要な力が低減されて、組み立て性が向上するようにもなる。
【0022】
好ましくは、前記給気管の中に配置されて前記給気流路を開閉するためのバルブをさらに備えるようにすることができる。
【0023】
さらに好ましくは前記給気管の外部から前記排気流路を通ることなく前記給気流路内へ延び、前記バルブと係合されたバルブ制御部材をさらに備え、
該バルブ制御部材を前記外部から操作することにより前記バルブの開閉操作を行うようにすることができる。
【0024】
バルブ制御部材が排気流路を通らないように設けられているので、排気流路にバルブ制御部材とのシール構造を設ける必要がなくなり、構成を簡略化することが可能となる。
【0025】
以下、本発明に係るエア工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエア工具の側面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5図2のV-V線における断面図である。
図6図3のVI-VI線における断面図である。
図7】給排気管の斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るエア工具の側面図である。
図9図8のIX-IX線における断面図である。
図10図9のX-X線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係るエア工具10は、図1及び図2に示すように、エアモータ12を収容する工具ハウジング20と、エアモータ12の出力軸14に固定されたドライブプーリ80と、ドライブプーリ80を覆うように工具ハウジング20に取り付けられ前方に延在するプーリ支持本体部82と、プーリ支持本体部82に前後方向で摺動可能に取り付けられ前方に延在するプーリ支持バー84と、該プーリ支持バー84の先端部84−1に回転自在に取り付けられたアイドルプーリ86と、を備え、ドライブプーリ80とアイドルプーリ86との間に掛け回された無端研削ベルト87をエアモータ12の駆動力によって回転駆動するようにしたベルト式研削工具10である。
【0028】
図2乃至図4に示すように、工具ハウジング20は、円筒状のエアモータ収容部21と、該エアモータ収容部21から後方に向かって後方開口端22にまで延びた筒状の給排気管収容部24とからなっている。エアモータ収容部21内にはエアモータ12が配置され、給排気管収容部24内には当該工具ハウジング20とは別体とされた給排気管40が配置されている。図3に示すように、エアモータ収容部21には、給排気管収容部24内に開口するように、エアモータ12に圧縮空気を供給するための圧縮空気入口21−1が設けられ、また、圧縮空気入口21−1の下方位置にはエアモータ12からの圧縮空気を排出するための圧縮空気出口21−2が設けられている。給排気管40は、給気流路41−1を構成する給気管41と排気流路42−1を構成する排気管42とが一体として形成された構造を有し、給気管41の前端の給気出口41−2がシール部材50を介して圧縮空気入口21−1に接続され、排気管42の前端の排気入口42−2がシール部材52を介して圧縮空気出口21−2に接続されるように、給排気管収容部24内に配置されている。給気管41の後端の給気入口41−3には、圧縮空気供給源に繋がるエアチューブ(図示しない)を接続するための継手54が取り付けられている。この継手54は、給排気管40の横断方向に貫通したピン挿入孔44(図7)に挿入された継手保持ピン56が係合溝55に係合することにより、給気流路41−1から抜けないように保持されるとともに、長手軸線周りで回転自在となるように取り付けられている。給気入口41−3から給気出口41−2にまで至る給気流路41−1は、概ね直線状に延在するようになっていて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気が通過する際の圧力損失を抑えるようにしている。排気管42は、圧縮空気出口21−2に接続された排気入口42−2から、工具ハウジング20の後方開口端22の上方に位置する排気出口42−3にまで、途中で給気管41と立体的に交差するようにして延在している。具体的には、図4に示すように、排気管42の排気入口42−2と排気出口42−3との間の中間部分42−4が左右に2つに分かれた第1中間部分42−4aと第2中間部分42−4bとからなっており、この第1中間部分42−4aと第2中間部分42−4bとが給気管41の一部を両側から挟むように延在して立体的に交差している。したがって、このような排気管42によって構成される排気流路42−1は、1つの流路が中間部分42−4で2つに分岐しまた1つに統合されるような流路となっている。このような流路の構成とすることで、中間部分42−4を直線状に延びる給気管41の一方の側を通して延ばした場合に較べて、排気流路42−1の当該中間部分42−4における流路断面積を確保しつつ排気流路42−1の曲がりを少なくすることができ流路抵抗を抑えることができる。また、本実施形態においては、工具ハウジング20の横断方向での中央付近を通過する給気管41の両側を排気流路42−1として利用することで、給排気管40の特に左右方向(図4で見て上下方向)での幅を小さく抑えて、給排気管40を収容する給排気管収容部24の幅を小さく抑えるようにしている。これにより給排気管収容部24の外周面によって構成されるグリップ部26をコンパクトな形状としている。なお、本実施形態においては、工具ハウジング20は樹脂製の部材で、給排気管40は鋳造により形成された金属製の部材となっており、工具ハウジング20におけるグリップ部26を構成している給排気管収容部24内に金属製の給排気管40を配置することにより、後述するようにグリップ部26の剛性を高めるようにもなっている。
【0029】
図5に示すように、給気管41の給気流路41−1内には、給気流路41−1を開閉してエアモータ12への圧縮空気の供給を制御するためのバルブ60が設けられている。このバルブ60は、給気流路41−1に設けられた段部46に形成されたシール面47に密封係合するバルブシール部材62と、このバルブシール部材62に固定された後端部63−1から給気流路41−1内で給気出口41−2側に向かって延在するバルブロッド63と、バルブシール部材62をシール面47に押圧するように給気流路41−1内においてバルブシール部材62と継手54の前端面との間に設定されたバネ64とからなる。このバルブ60は、給気管41の側壁に設けられた開口48を通って給気流路41−1内にまで延びるバルブ制御部材66によって給排気管40の外部から開閉が操作されるようになっている。具体的には、バルブ制御部材66がその先端部に設けられた挿通穴66−1内にバルブロッド63の先端部63−2が挿入された状態で配置されており、このバルブ制御部材66を給気流路41−1内に押し込むことでバルブロッド63の先端部63−2が図で見て上方に押されてバルブロッド63が傾き、これによりバルブシール部材62が、図5に示すように傾いてバルブシール部材62とシール面47との間に隙間が生じるようになっている。バルブシール部材62とシール面47との間に隙間が生じることによってバルブ60と給気流路41−1との密封が解除され、給気流路41−1が給気入口41−3と給気出口41−2との間で連通した状態となる。
【0030】
図5に示すように、給排気管収容部24の下方位置には、作業者がバルブ60の開閉を操作するためのバルブ操作レバー70が配置されている。このバルブ操作レバー70は、給排気管収容部24の内部に位置する枢軸72を中心に工具ハウジング20に対して枢動可能に取り付けられ、工具ハウジング20の外部に露出した操作面70−1を図で見て上方に押すことで、図1に示す工具ハウジング20から下方に飛び出た状態から、図5に示す工具ハウジング20内に押し込まれた状態にまで、図で見て時計回りに枢動するようになっている。また、このバルブ操作レバー70は、給排気管40に面した位置にある係合面70−2においてバルブ制御部材66の後端面66−2と係合しており、当該バルブ操作レバー70を枢動させることにより、バルブ制御部材66を給気流路41−1内に押し込んで上述のようにバルブ60を開くことができるようになっている。このバルブ操作レバー70には、当該バルブ操作レバー70に対してその長手軸線方向では摺動可能であるが長手軸線方向周りには回転できないように保持されたネジシャフト74と、このネジシャフト74と螺合して回転可能とされたナット76と、該ネジシャフト74の先端に固定された当接部材78とが設けられている。バルブ操作レバー70を枢動させたときに、この当接部材78が給排気管40の下部外表面に設けられた傾斜当接面49に当接することによって、バルブ操作レバー70の枢動範囲が制限される。また、当接部材78は、ナット76を回転させることでネジシャフト74と共に軸線方向で移動するようになっており、当接部材78の位置を変化させることによって当接部材78が給排気管40の傾斜当接面49に当接するときのバルブ操作レバー70の枢動位置を調節することができる。このようにバルブ操作レバー70の枢動範囲を調節することによってバルブ制御部材66が給気流路41−1内に押し込まれる移動量が変更され、結果としてバルブ操作レバー70を押し込んだときのバルブ60の開度が調整されることになる。なお、本実施形態においては、バルブ制御部材66は、排気流路42−1を通ることなく給気流路41−1内に延びるように設定されているため、バルブ制御部材66を給気流路41−1内に導くための開口48は給気管41にのみ設けられていて、排気管42には設けられていない。そのため、バルブ制御部材66に対してシールを要する部分が給気管41との間に限られるので、シール箇所が少なくなって構造が簡略化できるとともに、シール部材による摺動抵抗が小さくなってバルブ開閉時の操作性が向上する。
【0031】
バルブ操作レバー70の操作面70−1を押していた力を解除すると、バルブシール部材62を給気流路41−1が閉じられた状態へと戻そうとするバネ64の付勢力により、バルブ操作レバー70はバルブ制御部材66に押されて反時計回りに枢動し、図1の状態に戻る。なお、圧縮空気が継手54から供給されている状況においては、圧縮空気の圧力もバルブシール部材62を閉じた状態へ戻す力となる。すなわち、バネ64の付勢力と圧縮空気の圧力とによって、バルブ操作レバー70は操作前の状態(図1)に戻される。
【0032】
継手54に接続されたエアチューブを介して圧縮空気供給源から圧縮空気が供給されている状態で、バルブ操作レバー70の操作面70−1を押してバルブ60を開けると、圧縮空気は、給気流路41−1及び圧縮空気入口21−1を通って給気口12−1からエアモータ12内に流れる。圧縮空気が供給されたエアモータ12は、図3で見て反時計回りに回転駆動される。エアモータ12内を通って排気口12−2から排出される圧縮空気は、圧縮空気出口21−2から排気流路42−1内へと流れ、排気出口42−3から工具ハウジング20の後方開口端22を通って大気中に排出される。エアモータ12を回転駆動させた圧縮空気はエアモータ12の排気口12−2から排出された直後に圧力が急激に低下して断熱膨張する。断熱膨張した空気はその温度が低下するため、排気管42は温度が低下した空気によって冷却される。
【0033】
給排気管40における排気管42の側面は、図6に示すように、給排気管収容部24の側面壁28と係合した状態で給排気管収容部24内に配置されている。金属製の給排気管40を樹脂製の工具ハウジング20の給排気管収容部24と係合するように配置することにより、給排気管40が工具ハウジング20を内側から支持して、工具ハウジング20のグリップ部26に必要十分な剛性を持たせるようにしている。給排気管収容部24の排気管42と係合する部分には、複数の凹部30が形成されており、給排気管40との間に空隙が形成されて接触面積が小さくなるようにしている。また、給排気管40と給排気管収容部24の上面壁32及び下面壁34との間には隙間が形成されるようになっている。このように、給排気管40とグリップ部26を形成する給排気管収容部24との間に隙間を設け、また係合する部分においては凹部30を設けて接触面積を小さくするようにすることで、グリップ部26と給排気管40との間で熱が伝わりにくくなる。すなわち、当該エア工具10を使用中に圧縮空気の断熱膨張により冷却された排気管42によって、グリップ部26が冷たくなるのを抑制することが可能となる。
【0034】
図2に示すように、工具ハウジング20に取り付けられたプーリ支持本体部82の先端部84−1にはプーリ支持バー84を受け入れるバー収容孔82−1が設けられている。バー収容孔82−1には摺動インサート88が挿入されており、この摺動インサート88は、プーリ支持本体部82の側面からバー収容孔82−1にまで貫通するネジ穴82−2に螺合された固定ネジ89によってプーリ支持本体部82に固定されている。プーリ支持バー84は、摺動インサート88の円滑な面を有する内孔に挿入されて、プーリ支持本体部82に対して前後方向に摺動可能に保持されており、プーリ支持バー84の側面には前後方向に延びるスロット穴状の摺動制限孔84−2が形成されている。プーリ支持本体部82には、位置決めネジ90が、該プーリ支持本体部82の側面から挿入されて摺動インサート88の貫通孔88−1を通ってプーリ支持バー84の前後方向に所定長さだけ延びているスロット穴状の摺動制限孔84−2内にまで延びるように設けられている。この位置決めネジ90により、プーリ支持バー84が回転しないように保持されるとともに、当該プーリ支持バー84の前後方向での摺動可能な範囲を制限している。プーリ支持バー84には、その後端面84−3から前方に向かって延びるスプリング収容孔84−4が形成されており、このスプリング収容孔84−4内には当該プーリ支持バー84を前方に付勢するためのスプリング92が設定されている。このスプリング92は、その前端部92−1がスプリング収容孔84−4の前端面84−5に当接し、その後端部92−2がプーリ支持バー84の後端面84−3からさらに後方に向かって延びるように設定されている。バー収容孔82−1の後方にはスプリング92をその後方位置から支持するためのスプリング支持部材94が、プーリ支持本体部82上の枢動軸94−1を中心に枢動可能に取り付けられている。スプリング支持部材94が図2に示す位置にあるときには、スプリング支持部材94のスプリング支持突起部94−2がスプリング92の後端部92−2に配置されたスプリング座96と係合して、スプリング92をプーリ支持バー84との間で圧縮した状態となる。このスプリング92の付勢力によりプーリ支持バー84の前端部に設けられたアイドルプーリ86は無端研削ベルト87の内周面に押し付けられて、該無端研削ベルト87に所定の張力を加えた状態となる。スプリング支持部材94を図で見て時計回りにおよそ90度回転させると、スプリング座96がスプリング支持突起部94−2によって支持されない状態となり、スプリング92は自然長にまで延びる。この状態では、プーリ支持バー84は、スプリング92の付勢力を受けることなく後方に移動可能となるので、アイドルプーリ86と無端研削ベルト87との間に隙間が生じて、無端研削ベルト87の取り外しが可能となる。なお、スプリング支持部材94にはドライブプーリ80を側方から覆うカバー98が取り付けられていて、スプリング支持部材94と共に枢動するようになっている。
【0035】
図8乃至図10に示す本発明の第2の実施形態に係るエア工具110は、上記第1の実施形態に係るエア工具10と比べて、主に圧縮空気の流路の構成が異なっている。図10に示すように、当該エア工具110においては、給気管141の給気出口141−2が排気管142の排気入口142−2の下方に位置し、給気管141の給気入口141−3が排気管142の排気出口142−3の下方に位置しており、給気流路141−1と排気流路142−1とが並行に配置されている。これに伴い、工具ハウジング120の圧縮空気入口121−1と圧縮空気出口121−2の位置が、第1の実施形態に係るエア工具10とは逆になっている。すなわち、圧縮空気入口121−1が圧縮空気出口121−2の下方に位置するようになっている。給気管141の給気入口141−3から供給された圧縮空気は、給気流路141−1及び給気入口141−3を通ってエアモータ112の吸気口112−1から該エアモータ112内に入って、エアモータ112内を図で見て反時計回りに流れながらエアモータ112を同方向に回転駆動させる。エアモータ112の排気口112−2から出た圧縮空気は、その流れの向きを反転させてエアモータ112の外側に形成された環状流路112−3内を時計回りに流れて圧縮空気出口121−2から排気流路142−1内に至り、排気出口142−3から外部に排気される。
【0036】
工具ハウジング120は、図9に示すように、右側部分120−1と左側部分120−2とキャップ部分120−3とにより構成されており、給排気管140は左側部分120−2とキャップ部分120−3とが取り外されている状態で、給気流路141−1及び排気流路142−1に対して略直角な方向D(右方向)で右側部分120−1の給排気管収容部124内に挿入されて配置されるようになっている。
【0037】
給気管141の給気出口141−2と工具ハウジング120の圧縮空気入口121−1との間には第1シール部材150が配置されている。同様に、排気管142の排気入口142−2と工具ハウジング120の圧縮空気出口121−2との間にも第2シール部材152が配置されている。給気管141の給気出口141−2の端面141−4は、図9に示すように、上記方向Dに面するように該方向Dに対して傾斜しており、第1シール部材150の給気出口141−2に当接する面151も同様に傾斜している。また、図示されてはいないが、排気管142の排気入口142−2の端面142−4と第2シール部材152の排気入口142−2に当接する面153も同様に傾斜している。これにより、給排気管140を上記方向Dで工具ハウジング120の右側部分120−1の給排気管収容部124内に挿入するに従って、第1及び第2シール部材150、152の各面151、153と給排気管140の各端面141−4、142−4との間の距離が徐々に小さくなって、やがて第1及び第2シール部材150、152の各面151、153と給排気管140の各端面141−4、142−4とが当接するようになる。そして、さらに給排気管140を挿入していくと、第1及び第2シール部材150、152が給排気管140の各端面141−4、142−4によって徐々に圧縮されていき、給排気管140が工具ハウジング120の給排気管収容部124の所定の位置に配置されると、第1及び第2シール部材150、152が給排気管140の各端面141−4、142−4にそれぞれ密封係合した状態となるようになっている。当該実施形態においては、給排気管140を右側部分120−1に挿入するようになっているが、左側部分120−2に挿入するようにしてもよい。その場合には、方向Dは左方向となる。また、工具ハウジング120を左右に分割されるのではなく上限に分割されるようにして、給排気管140を上下方向で工具ハウジング120の給排気管収容部124内に挿入するようにしてもよい。
【0038】
なお、第2の実施形態における上述の給排気管140と第1シール部材150及び第2シール部材152との間の密封接続の構造は、第1の実施形態におけるエア工具10に採用してもよい。また上記実施形態においては、第1シール部材150と第2シール部材152とは一体の部材となっているが、別個の部材としてもよい。
【0039】
上記実施形態に係るエア工具10、110においては、圧縮空気によって冷却される給排気管40、140が、グリップ部26、126を構成する工具ハウジング20、120とは別体に設けられているので、給排気管40、140と工具ハウジング20、120との間の断熱性が高まり、断熱膨張して温度が低下した圧縮空気によってグリップ部26、126が直接冷却されることが回避される。これにより、グリップ26、126が冷たくなるのを抑制できる。また、通常複数の部材から構成される工具ハウジングに給気流路及び排気流路を直接形成していた従来のエア工具においては、各部材のつなぎ目をシール構造として流路を形成するようにしていたが、本実施形態においては、給排気管40、140を給気流路41−1、141−1と排気流路42−1、142−1とが形成されている別体の一つの部材としているので、圧縮空気が通過する流路におけるシール箇所が従来のものに比べて少なくなり、構造を簡略化できると共に、圧縮空気及び該圧縮空気に含まれる作動油のシール部分から漏出を低減するようにもできる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、給気管41、141と排気管42、142とを一体の給排気管40、140として構成しているが、給気管41、141と排気管42、142とを別々の部材としてもよい。また、本発明に係るエア工具10、110についてベルト式研削工具10、110を例として説明をしたが、当該エア工具10、110はベルト式研削工具に限らず、エアインパクトレンチ等の他のエア工具とすることもできる。
【符号の説明】
【0041】
エア工具(ベルト式研削工具)10;エアモータ12;給気口12−1;排気口12−2;出力軸14;工具ハウジング20;エアモータ収容部21;圧縮空気入口21−1;圧縮空気出口21−2;後方開口端22;給排気管収容部24;グリップ部26;側面壁28;凹部30;上面壁32;下面壁34;給排気管40;給気管41;給気流路41−1;給気出口41−2;給気入口41−3;排気管42;排気流路42−1;排気入口42−2;排気出口42−3;中間部分42−4;第1中間部分42−4a;第2中間部分42−4b;ピン挿入孔44;段部46;シール面47;開口48;傾斜当接面49;シール部材50;シール部材52;継手54;係合溝55;継手保持ピン56;バルブ60;バルブシール部材62;バルブロッド63;後端部63−1;先端部63−2;バネ64;バルブ制御部材66;挿通穴66−1;後端面66−2;バルブ操作レバー70;操作面70−1;係合面70−2;枢軸72;ネジシャフト74;ナット76;当接部材78;ドライブプーリ80;プーリ支持本体部82;バー収容孔82−1;ネジ穴82−2;プーリ支持バー84;先端部84−1;摺動制限孔84−2;後端面84−3;スプリング収容孔84−4;前端面84−5;アイドルプーリ86;無端研削ベルト87;摺動インサート88;貫通孔88−1;固定ネジ89;位置決めネジ90;スプリング92;前端部92−1;後端部92−2;スプリング支持部材94;枢動軸94−1;スプリング支持突起部94−2;スプリング座96;カバー98;
エア工具(ベルト式研削工具)110;エアモータ112;吸気口112−1;排気口112−2;環状流路112−3;工具ハウジング120;右側部分120−1;左側部分120−2;キャップ部分120−3;圧縮空気入口121−1;圧縮空気出口121−2;給排気管収容部124;グリップ部126;給排気管140;給気管141;給気流路141−1;給気出口141−2;給気入口141−3;端面141−4;排気管142;排気流路142−1;排気入口142−2;排気出口142−3;端面142−4;第1シール部材150;面151;第2シール部材152;面153;
方向D;
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10