特許第6185598号(P6185598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185598改善された形態を有するZSM−5結晶の合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185598
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】改善された形態を有するZSM−5結晶の合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/40 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   C01B39/40
【請求項の数】18
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-546474(P2015-546474)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公表番号】特表2016-503749(P2016-503749A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】US2013066819
(87)【国際公開番号】WO2014088723
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/734,437
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ウェンイー・フランク・ライ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・エス・ロールマン
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−073425(JP,A)
【文献】 特開昭60−033211(JP,A)
【文献】 特開2010−126397(JP,A)
【文献】 特開昭53−039999(JP,A)
【文献】 特開昭61−068321(JP,A)
【文献】 特表平07−506802(JP,A)
【文献】 特表平07−500561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
B01J21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZSM−5フレームワーク構造を有する多孔質結晶材料であって、
前記結晶材料は少なくとも80のXO:Y比を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素であり;
前記結晶材料は少なくとも100m/gのメソ細孔表面積を有し;及び
前記結晶材料が、ZSM−5フレームワーク構造を有し棒状形態を有する結晶を含み、前記結晶が、結晶長に相当する第1の結晶寸法と、0.1μm〜0.5μmである平均結晶長と、前記平均結晶長の半分以下である平均寸法値を有する第2の結晶寸法とを有する、多孔質結晶材料。
【請求項2】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記結晶の少なくとも50体積%が、二次結晶凝集体を形成する一次微結晶であり、前記二次結晶凝集体中の前記一次微結晶の前記第1の結晶寸法は結晶軸に対応し、実質的に整列しており、前記二次結晶凝集体が、前記平均結晶長の少なくとも5倍である平均凝集体長さを有し、前記結晶凝集体が、前記第2の結晶寸法の前記平均寸法値の少なくとも10倍である平均凝集体幅を有する、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項3】
XがSiでありYがAlであり、ZSM−5フレームワーク構造を有する結晶は、ZSM−5結晶である、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項4】
前記XO:Yの比が少なくとも100である、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項5】
前記XO:Yの比が少なくとも150である、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項6】
前記メソ細孔表面積が少なくとも120m/gである、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項7】
前記結晶材料が実質的に純粋であり、前記実質的に純粋な結晶材料が、ZSM−5フレームワーク構造とは異なるフレームワーク構造を有する結晶材料を10重量%未満含む、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項8】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記結晶の全表面積が少なくとも400m/gである、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項9】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記結晶の少なくとも一部が、それらの細孔中に配置された構造指向剤を含有する、請求項1に記載の結晶材料。
【請求項10】
ZSM−5のフレームワーク構造を有する結晶材料の合成方法であって:
ゼオライトフレームワーク構造を有する結晶を形成可能な合成混合物を形成し、前記混合物が、水、四価酸化物(XO)、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および構造指向剤を含み、前記混合物は少なくとも40のXO:Y比を有し、前記構造指向剤が、テトラエチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、またはベンジルトリエチルアンモニウム塩であること;
ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶0.05重量%〜5重量%を前記合成混合物中に加えること;及び
ZSM−5フレームワーク構造を有する実質的に純粋な結晶を前記合成混合物から回収することを含み、前記結晶が、少なくとも1つの寸法において少なくとも0.1μmの平均サイズを有するZSM−5フレームワーク構造を有し、
XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素である、方法。
【請求項11】
XがSiでありYがAlである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記合成混合物中の前記XO:Yの比が少なくとも100である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記回収された結晶のメソ細孔表面積が少なくとも100m/gである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記回収された結晶のXO:Y比が少なくとも80である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記回収された結晶の少なくとも50体積%が、二次結晶凝集体を形成する一次微結晶であり、前記二次結晶凝集体中の前記一次微結晶の第1の結晶寸法は結晶軸に対応し、実質的に整列しており、結晶長に相当する前記第1の結晶寸法が少なくとも0.1μmの平均結晶長を有し、前記二次結晶凝集体が、平均結晶長の少なくとも5倍である平均凝集体長さを有し、前記二次結晶凝集体が、前記平均結晶長の半分以下である平均寸法値を有する第2の結晶寸法の平均寸法値の少なくとも10倍である平均凝集体幅を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ZSM−5フレームワーク構造を有する前記回収された結晶のXO:Y比が少なくとも100である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、40以上のSiO:Alモル比、5〜200のHO:SiOモル比、0.03〜1.2のOH:SiOモル比、0.03〜1.2のM:SiOモル比、0.05〜0.6の構造指向剤:SiOモル比、ここで、Mはアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
ZSM−5のフレームワーク構造を有する材料の合成方法であって:
ゼオライトフレームワーク構造を有する結晶を形成可能な合成混合物を形成し、前記混合物が、水、四価酸化物(XO)、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および構造指向剤を含み、前記混合物は少なくとも100のXO:Y比を有し、前記構造指向剤が、テトラエチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、またはベンジルトリエチルアンモニウム塩であること;
ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶0.05重量%〜5重量%を前記合成混合物中に加えること;及び
ZSM−5フレームワーク構造を有する実質的に純粋な結晶を前記合成混合物から回収することを含み、前記結晶が、少なくとも1つの寸法において少なくとも0.1μmの平均サイズを有するZSM−5フレームワーク構造、少なくとも80のXO:Y比、及び少なくとも100m/gのメソ細孔表面積を有し、
XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
改善された形態を有するゼオライト及びそれらの製造方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト結晶構造は、精製プロセス、および石油ストリームを操作するための他のプロセスにおいて広範囲の用途が見いだされている。一部のゼオライトの用途は本来触媒であるが、別の用途では、ガスストリーム中の分子を選択的に吸着するゼオライトの性質に注目されている。
【0003】
石油ストリームの触媒処理に使用されるゼオライト構造の種類の1つはZSM−5である。ZSM−5はMFIフレームワークのゼオライトである。特許文献1には、ZSM−5結晶を形成するための合成条件の一例が示されている。それらの条件には、ZSM−5結晶を形成するための構造指向剤としてのテトラプロピルアンモニウム塩の使用が含まれる。合成混合物の場合、一般にSiO:Alの比は5〜100であると開示されており、10〜60の比が好ましいと記載されている。
【0004】
触媒処理に使用される別の種類のゼオライト構造の1つはZSM−12であり、これはMTWフレームワーク型を有するゼオライトである。特許文献2には、ZSM−12結晶を形成するための合成条件の一例が示されており、それには構造指向剤としてのテトラエチルアンモニウム塩の使用が含まれている。合成混合物の場合、一般にSiO:Alの比は40〜200であると開示されており、85〜125の比が好ましいと記載されている。
【0005】
特許文献3には、ZSM−12結晶を形成するための合成条件の別の一例が示されており、メチルトリエチルアンモニウム塩の使用が含まれる。合成混合物(アルミナを加えない混合物を含む)の場合、一般にSiO:Alの比が40以上であると開示されており、80以上の比が好ましいと記載されている。
【0006】
特許文献4には、種々のテトラアルキルアンモニウム塩構造指向剤を使用したZSM−5および他のMFIゼオライトの合成方法が記載されている。構造指向剤としては、テトラプロピルアンモニウム塩およびテトラエチルアンモニウム塩が挙げられる。高SiO:Al比のZSM−5を合成するためには、テトラプロピルアンモニウム塩がある程度好ましいことが示されている。0.1以下のOH:SiO比であれば、種結晶とは無関係に核生成が防止されると記載されており、それによってより狭いサイズ分布を有する結晶を生成できる。OH:SiOが0.1以下である合成混合物の場合、その数の種が、結晶サイズの制御のために使用される。すべての合成例が、構造指向剤としてテトラプロピルアンモニウム塩の使用を含んでいる。あるグループの例ではSiO:Alの比が340であり、それによって球状ZSM−5結晶が形成された。第2のグループの混合物は、アルミナが添加されなかったが、フッ化物イオンを含んだ。この第2のグループの混合物の場合、微結晶は「棺」(coffin)型を有すると記載されていた。約0.12重量%の種結晶重量パーセント値において、長さ0.6μmの「棺」型結晶が報告された。すべての例の反応条件は、シリカに対する他の反応物の比が小さいと思われた。これらの合成条件で均一な粒度が得られると報告されているが、均一粒子の構成の根拠は報告されていない。
【0007】
特許文献5には、ZSM−5ゼオライト結晶の合成方法が記載されている。これらのZSM−5結晶は、SiO:Alの比が10〜25である合成混合物から形成されている。少なくとも一部の例において、ZSM−5結晶は、0.05μm以下の平均サイズを有することを特徴とする。これらの結晶は、45m/gを超えるメソ細孔表面積などの高表面積を有するとも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,702,866号明細書
【特許文献2】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献3】米国特許第4,452,769号明細書
【特許文献4】米国特許第5,672,331号明細書
【特許文献5】米国特許第6,180,550号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、ZSM−5のフレームワーク構造を有する多孔質結晶材料を提供し、結晶材料は、少なくとも約80のXO:Y比を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素であり;結晶材料は、少なくとも約100m/gのメソ細孔表面積を有し;結晶材料は、ZSM−5フレームワーク構造を有し、棒状形態を有する結晶を含み、結晶は、結晶長に相当する第1の結晶寸法と、約0.1μm〜約0.5μmである平均結晶長と、平均結晶長の約半分以下である平均寸法値を有する第2の結晶寸法とを有する。
【0010】
別の一態様において、ZSM−5のフレームワーク構造を有する結晶材料の合成方法を提供する。この方法は、ゼオライトフレームワーク構造を有する結晶を形成可能な合成混合物を形成し、混合物は、水、四価酸化物(XO)、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および構造指向剤を含み、混合物は少なくとも約50のXO:Y比を有し、混合物は、ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶の非存在下でのZSM−12フレームワーク構造を有する結晶の形成に好適であること;ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶約0.05重量%〜約5重量%を合成混合物中に加えるステップ;及びZSM−5フレームワーク構造を有する実質的に純粋な結晶を合成混合物から回収することを含み、結晶は、少なくとも1つの寸法において少なくとも0.1μmの平均サイズを有するZSM−5フレームワーク構造を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素である。
【0011】
さらに別の一態様において、ZSM−5のフレームワーク構造を有する材料の合成方法を提供する。この方法は、ゼオライトフレームワーク構造を有する結晶を形成可能な合成混合物を形成し、混合物は、水、四価酸化物(XO)、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および構造指向剤を含み、混合物は少なくとも約100のXO:Y比を有し、構造指向剤は、種結晶の非存在下でのZSM−12フレームワーク構造を有する結晶の形成に好適であること;ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶約0.05重量%〜約5重量%を合成混合物中に加えること;及びZSM−5フレームワーク構造を有する実質的に純粋な結晶を合成混合物から回収することを含み、結晶は、少なくとも1つの寸法において少なくとも0.1μmの平均サイズを有するZSM−5フレームワーク構造、少なくとも約80のXO:Y比、および少なくとも約100m/gのメソ細孔表面積を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】純粋相ZSM−12結晶のXRDプロットを示す。
図2a】ZSM−5不純物を有するZSM−12結晶のXRDプロットを示す。
図2b】ZSM−5不純物を有するZSM−12結晶のSEM画像を示す。
図3a】ZSM−12結晶のXRDプロットを示す。
図3b】ZSM−12結晶のSEM画像を示す。
図4a】微量のZSM−5不純物を有するZSM−12結晶のXRDプロットを示す。
図4b】微量のZSM−5不純物を有するZSM−12結晶のSEM画像を示す。
図5a】ZSM−5結晶のXRDプロットを示す。
図5b】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図5c】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図6a】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図6b】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図7a】ZSM−5結晶のXRDプロットを示す。
図7b】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図7c】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図8】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図9a】ZSM−5結晶のXRDプロットを示す。
図9b】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図9c】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図10a】ZSM−5結晶のXRDプロットを示す。
図10b】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図11】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
図12】ZSM−5結晶のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
種々の実施形態において、少なくとも約50、たとえば、少なくとも約100のSiO:Al比を有し、ZSM−12の合成により好適であると従来考えられている構造指向剤を含む合成混合物からのZSM−5結晶の合成方法が提供される。好ましくは、これらの合成混合物は、種結晶が合成混合物中に導入されない場合には典型的にはZSM−12結晶が生成される合成混合物に相当する。
【0014】
SiO:Al比が十分大きい、たとえばSiO:Al比が少なくとも約100である合成混合物の場合、合成混合物へのZSM−5種結晶のシーディングによって、新しい形態の純粋相ZSM−5結晶を生成することができる。この形態は、より大きな「樽」または「ワイン樽」型の二次結晶構造に組織化/凝集した約0.5μm以下の長さを有する棒状の一次微結晶を含むことができ、0.5μm以下の棒状結晶(または細長い結晶)の軸は好都合には、約0.5μm〜約5μmの長さを有する凝集樽型構造の長軸と整列することができる。この新しいモノリス構造(または二次結晶構造)および形態によって、二次結晶の予期せぬ大きなメソ細孔表面積およびメソ細孔容積を得ることができる。
【0015】
ZSM−5およびZSM−12の合成混合物に関して報告される範囲は、大きく重なり合うと言うことができる。一例として、表1は、米国特許第3,702,866号明細書におけるZSM−5、および米国特許第3,832,449号明細書におけるZSM−12に関して記載される合成条件の比較を示している。ZSM−5合成混合物の構造指向剤(SDA)はテトラプロピルアンモニウム塩であり、一方、ZSM−12合成混合物のSDAはテトラエチルアンモニウム塩である。どちらの構造指向剤も表1中ではRで表される。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示されるように、ZSM−5およびZSM−12に関して記載される従来の合成条件は広範囲で重なりうる。ZSM−5およびZSM−12を形成できる条件のこのような重なり合いのため、合成混合物中の構造指向剤は、形成される結晶の種類の決定において大きな影響を有することができる。
【0018】
表1は、ゼオライトの合成の場合のSiO、Al、およびNaの使用を示していることに留意されたい。本明細書の議論において、ゼオライトフレームワーク構造を有する別の結晶は、一般に、ケイ素の代わりにまたはケイ素とともに、スズ、ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせなどの別の四価元素と;アルミニウムの代わりにまたはアルミニウムとともに、ホウ素、インジウム、ガリウム、鉄、またはそれらの組み合わせなどの別の三価元素と;ナトリウムの代わりにまたはナトリウムとともに、カリウム、マグネシウム、カルシウム、またはそれらの組み合わせなどの別のアルカリまたはアルカリ土類元素とを使用して合成できることを理解すべきである。したがって、SiO:Alの比が記載されている場合、それらの比は集合的にYおよびXの成分に一般化することができ、すなわち、XO:Yの同様の比が、対応するゼオライトフレームワーク構造を有する材料の形成にも好適となりうることを理解すべきである。本明細書の議論において、ZSM−5フレームワーク型を有する結晶材料は、MFIフレームワーク型であるまたはMFIフレームワーク型を有すると分類されるあらゆる材料を含むものと定義される。したがって、ZSM−5結晶は、ZSM−5フレームワーク型を有する結晶の定義内の結晶の種類の1つである。
【0019】
従来、種々の構造指向剤が、ゼオライトおよび/または別の微孔質材料の合成に使用されており、ある構造指向剤はZSM−12フレームワーク型を有する構造の合成に好ましく、一方、別の構造指向剤はZSM−5フレームワーク型を有する構造の合成に好ましい。構造指向剤としての第4級アンモニウム塩に関して、テトラエチルアンモニウム塩およびメチルトリエチルアンモニウム塩は、ZSM−5よりもZSM−12を選択的に形成するために使用されている。多くの種類の合成混合物の場合、構造指向剤によって、その混合物から形成されるゼオライト結晶の種類が決定されうる。異なるゼオライトトポロジーを有する種結晶がそのような合成混合物中に導入されると、構造指向剤と合成混合物中の他の成分とに基づいて予想される種類のゼオライト結晶が形成される、という結果が予想されることが多くなりうる。しかし、ZSM−12の形成に好適な構造指向剤を含む合成混合物中にZSM−5種結晶を導入することによって、結晶サイズと形態との新しい組み合わせを有するZSM−5結晶を合成できるという予期せぬ発見をした。好ましくは、ZSM−5種結晶がないことを別にすればZSM−12結晶が形成される合成混合物を使用して、ZSM−5結晶を形成することができる。これに加えてまたはこれとは別に、種結晶の非存在下でZSM−12結晶が形成される合成混合物を使用してZSM−5結晶を形成することができる。
【0020】
種々の実施形態において、反応混合物から回収されるZSM−5結晶は実質的に純粋なZSM−5結晶に相当しうる。実質的に純粋なZSM−5結晶は、たとえばX線回折(XRD)分析法によって測定した場合に、ZSM−12などの別の種類のゼオライトを約10重量%未満含有するZSM−5結晶として本明細書において定義される。好ましくは、実質的に純粋なZSM−5結晶は、約8重量%未満、たとえば約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、または検出できない量(たとえば、XRDによって)の別の種類のゼオライトを含有することができる。
【0021】
ZSM−5結晶サイズおよび凝集体の形態
種々の実施形態において、結晶サイズと結晶形態との有益な組み合わせを有するZSM−5結晶(またはZSM−5フレームワーク構造を有する結晶)の合成方法が提供される。好ましくは、ZSM−12の形成に好適な合成混合物から出発することによって結晶を形成することができる。このような混合物は、たとえば、混合物を適切な結晶化温度まで加熱し、約24〜240時間の時間撹拌するなどの典型的なゼオライト形成条件下で、混合物中にZSM−5の種を導入しない場合に、ZSM−12を形成可能であるおよび/または形成する合成混合物として定義される。これに加えてまたはこれとは別に、合成混合物は、ZSM−5よりもZSM−12の合成に従来使用される構造指向剤を含むことができる。
【0022】
次に、ZSM−12の形成に好適な合成混合物中、および/またはZSM−12の形成に好適な構造指向剤を含むことができる合成混合物中に、ZSM−5種結晶を導入することができる。このような合成混合物中にZSM−5種結晶を導入することで、(純粋相)ZSM−5結晶を形成することができる。ZSM−5結晶は、SiO:Al比が少なくとも約50、たとえば、少なくとも約100、少なくとも約150、または少なくとも約200である合成混合物から形成することができる。これによって、SiO:Al含有量が少なくとも約50、たとえば、少なくとも約100であるZSM−5結晶を形成することができる。場合により、ZSM−5結晶は、アルミナ源を合成混合物に加えることなく形成することができる。これによって、合成混合物中のシリカ源(または別の反応成分)からのアルミナ不純物に対応するアルミナ含有量を有するZSM−5結晶を得ることができる。個別のZSM−5微結晶は、棒状または細長い形状を有する。これらの棒状ZSM−5微結晶は、約0.5μm以下の第1の結晶寸法または結晶長さを有することができる。棒状または細長いZSM−5微結晶は、結晶長の約半分以下(たとえば、約1/3以下)の第2の結晶寸法(または1つの寸法値を有する結晶直径)を有することができる。ZSM−5微結晶は好都合には斜方対称を有することができる。
【0023】
SiO:Al比が少なくとも約100、たとえば、少なくとも約150または少なくとも約200である合成混合物から形成されたZSM−5結晶の場合、棒状一次微結晶は、凝集して凝集二次モノリス結晶構造を形成することができる。好ましくは、合成混合物から得られるZSM−5結晶は、少なくとも約80、たとえば、少なくとも約100のSiO:Al含有量を有することができる。凝集モノリス構造は、大まかには、ワイン樽などの樽の形状を示すことができる。凝集モノリス構造は、少なくとも約100であるが約150未満であるSiO:Al比を有する合成混合物から形成された結晶の場合に存在することができるが、あまり十分に画定されない場合がある。樽構造は、この比の増加とともにより明確に画定できるようになる。個別の一次棒状微結晶は、このような樽の完全に空間が充填された表現を形成することができないので、この樽の記述は概略的なものである。その代わりに、樽の記述は、凝集モノリス構造に言及するための好都合な標識とするために本明細書において使用される。好適な反応混合物において、少なくとも約50体積%のZSM−5結晶材料が、凝集して凝集二次モノリス結晶構造を形成するZSM−5一次微結晶に対応することができる。
【0024】
凝集樽構造において、個別のZSM−5棒状微結晶の結晶長は、樽の長軸と実質的に整列することができる。本明細書の議論において、凝集モノリス構造の一部である微結晶は、結晶の軸が凝集モノリス構造の軸と約5°以内で平行となる場合に、凝集モノリス構造の軸と実質的に整列した結晶長を有するとして定義することができる。好ましくは、二次樽構造を形成する一次微結晶の少なくとも95重量%が、モノリス(樽)構造の軸と実質的に整列することができる。
【0025】
樽形状は、大まかに直円柱(すなわち、典型的な樽形状の1つ)に対応することができるし、あるいはその形状は大まかに楕円柱に対応することもできる。樽形状の長さは、個別の棒状微結晶の長さの少なくとも5倍(たとえば、少なくとも10倍)であってよい。円寸法の場合、樽構造は、個別の一次ZSM−5微結晶の直径(第2の結晶寸法の寸法値)の少なくとも約10倍(たとえば、少なくとも約15倍または少なくとも約20倍)の幅または直径を有することができる。楕円形により類似した形状の樽の場合、楕円形の長軸は、個別の一次ZSM−5微結晶の直径の少なくとも約10倍(たとえば、少なくとも約15倍または少なくとも約20倍)であってよく、一方、短軸は個別のZSM−5微結晶の直径の少なくとも約10倍であってよい。樽の直径は、樽の長軸に沿って変動しうることに有意されたい。
【0026】
図5b、5c、6a、6b、および12は、この凝集樽形態の例を示している。図5bは、SiO:Al比が約250である合成混合物から形成されたZSM−5結晶の樽形態の典型的な例を示している。図5bの図は、個別の棒状微結晶の軸が樽の長軸とほぼ整列していることを示す側面図である。図6aは、別の合成で得たZSM−5結晶の樽形態のより拡大された図を示している。このより拡大された図からは、個別の微結晶と樽の軸との整列が比較的良好であったと思われる。真の最密充填形態と比較して構造中に種々の整列の欠陥および/またはその他の欠陥が存在するので、微結晶は最密充填構造を形成できないことも分かる。図5cおよび6bは、樽形態の凝集体の正面図である。これらの図において、最密充填構造からのずれがさらにより明らかとなりうる。この場合も、個別の微結晶と樽の軸との整列は良好であると思われるが、最密充填形態と比較される種々の位置で、二次樽型結晶中の一次微結晶の間に大きな間隙が見える。
【0027】
図12は、SiO:Al比が約100である合成混合物から形成されたZSM−5結晶の側面図を示している。図5bの形態と比較すると、図12中の樽形状は、あまり十分に画定されていないように見え、樽形状に対する棒状微結晶の整列または組織化も一貫性が低く見える。
【0028】
新しい種類の形態が得られることに加えて、本発明のZSM−5結晶は、結晶のサイズに対して予期せぬ大きなメソ細孔表面積およびメソ細孔容積を有することができる。ゼオライトの表面積は、ミクロ細孔表面積とメソ細孔表面積との組み合わせで大まかに分類することができる。ミクロ細孔表面積は、ゼオライトの細孔網目構造またはフレームワークの中に存在する対応することができる。メソ細孔表面積は、細孔の外部にあるが依然として結晶構造を境界とするゼオライト結晶の表面積を表すことができる(たとえば、凝集体中の結晶粒の間)。通常、表面積は、ゼオライト1グラム当たりの表面積などのバルク特性として報告されうる。
【0029】
より大きなメソ細孔表面積の結晶は、場合によりコークスになる傾向がより低いことがあり、および/またはより長い触媒寿命を有することができると考えられているので、より大きなメソ細孔表面積を有する結晶は、炭化水素(または炭化水素に類似の化合物)の触媒反応に関連する用途で有益となりうる。さらに、より大きなメソ細孔表面積によって、より多くの数の化合物が、ゼオライトの細孔構造を通過する必要なく反応することができ、それによって、反応を触媒する要因としてのゼオライト結晶中への拡散の重要性を軽減することができる。メソ細孔表面積およびミクロ細孔表面積の相対量を変化させることによって、ある種の反応でゼオライトの選択性に場合により影響を与えることもできる。
【0030】
メソ細孔表面積は、細孔外部のゼオライト結晶の表面積を表すことができるので、ゼオライト1グラム当たりのメソ細孔表面積は、結晶サイズが増加するとともに減少すると予想することができる。このことは、ある特定の形態の場合、より大きな結晶では、通常、その結晶形状内部の結晶構造のパーセント値がより大きくなりうることに起因しうる。ゼオライトのミクロ細孔表面積、メソ細孔表面積、および全表面積(たとえば、BET表面積)は、従来、たとえば窒素収着等温線を使用して測定することができる。ASTM D4365−95には、ゼオライトの表面積の測定方法の一例が示されている。
【0031】
図5b、5c、6a、6b、および12のSEM顕微鏡写真において、ZSM−5一次微結晶は、最密充填二次凝集体構造を形成していないことが分かった。その代わり、樽形態は、潜在的な反応物が個別の微結晶の間および形態の内部へ移動するのを促進する多くの間隙を含むことが分かった。このゆるい構造によって、結晶のメソ細孔表面積が維持されおよび/または増加すると予想される。
【0032】
種々の実施形態において、少なくとも0.1μmの代表寸法(すなわち、棒状構造の長さ)を有し、同時に少なくとも約100m/gのメソ細孔表面積をも有するZSM−5一次結晶または微結晶を提供することができる。従来、50m/gを超える、たとえば100m/gを超えるメソ細孔表面積は、代表長が約0.05μm以下程度であるZSM−5結晶を示している。対照的に本明細書に記載のZSM−5結晶は、好都合には、約100m/gを超えるメソ細孔表面積とともに、予想される値の少なくとも2倍の代表長を示すことができる。
【0033】
種々の実施形態において、ZSM−5結晶の高結晶相は、少なくとも約100m/g、たとえば、少なくとも約120m/gまたは少なくとも約150m/gのメソ細孔表面積を有することができる。ZSM−5結晶の全表面積(ミクロ細孔+メソ細孔)は、少なくとも約300m/g、たとえば、少なくとも約350m/gまたは少なくとも約400m/gとなることができる。
【0034】
ZSM−5結晶は、少なくとも20、たとえば、少なくとも100または少なくとも200のアルファ値を有することができる。アルファ値試験は、触媒のクラッキング活性の測定法の1つであり、米国特許第3,354,078号明細書、ならびにJournal of Catalysis,Vol.4、p.527(1965);Vol.6,p.278(1966);およびVol.61,p.395(1980)に記載されており、これらのそれぞれがその説明に関して参照により本明細書に援用される。本発明において使用される試験の実験条件は、Journal of Catalysis,Vol.61,p.395に詳細が記載されるように、約538℃の一定温度および変動する流量が含まれる。
【0035】
ZSM−5結晶の形成のための条件
結晶サイズと形態との所望の組み合わせを有するZSM−5結晶を形成するために、使用される合成混合物はZSM−12結晶の形成に好適となりうる、および/または使用される構造指向剤はZSM−12の形成に特に好適となりうる。ZSM−12結晶の形成に好適な合成混合物は、結晶形成中にZSM−5の種が混合物中に導入されない場合に、典型的なゼオライト結晶形成条件下で、ZSM−12結晶を得ることができる(好ましくは得られる)合成混合物として本明細書において定義される。場合により、しかし好ましくは、結晶形成中に混合物中に種が全く導入されない場合に、合成混合物は、典型的なゼオライト結晶形成条件下でZSM−12結晶を生成することができる。これに加えてまたはこれとは別に、ZSM−12結晶の形成に好適な合成混合物は、水酸化テトラエチルアンモニウムまたはその他の塩、あるいは水酸化メチルトリエチルアンモニウムまたはその他の塩などのテトラアルキルアンモニウム塩構造指向剤を含む合成混合物であってよい。
【0036】
以下の表2は、ZSM−12結晶の形成に好適な条件の例を示している。表2中、「M」は、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオン、たとえばナトリウムカチオンを意味し、「SDA」は構造指向剤を意味する。表2は、合成混合物中の種々の成分のモル比を示している。
【0037】
【表2】
【0038】
構造指向剤は、種結晶を使用せずに、および/またはZSM−5の種を導入せずに、合成混合物からZSM−12を形成するようなあらゆる好適な構造指向剤であってよい。構造指向剤は、第4級アンモニウム塩、たとえば、テトラエチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ジベンジルジメチルアンモニウム塩、またはそれらの組み合わせであってよく、あるいはそれらを含むことができる。別の可能性のある構造指向剤としては、へミサメチレンアミン塩、ジメチルヘキサメチレンアミン塩、デカメトニウム塩、ジ第4級アンモニウム塩、および/またはZSM−12の形成に好適となりうるそれらの組み合わせを挙げることができるが、必ずしもそれらに限定されるものではない。好ましくは、構造指向剤は、テトラアルキルアンモニウム塩、たとえばテトラエチルアンモニウム塩および/またはメチルトリエチルアンモニウム塩であってよく、あるいはそれらを含むことができる。SDA塩中の対イオンは、Cl、Br、および/またはIなどのハロゲン化物イオン、および/または水酸化物イオンなどのあらゆる好都合な対イオンであってよい。
【0039】
合成混合物はZSM−12の形成に好適であってよいが、ZSM−5種結晶を合成混合物中に導入することによってZSM−5結晶の形成を促進することができる。好ましくは、種結晶は、約0.5μm以下、たとえば、約0.25μm以下、または約0.1μm以下の結晶サイズを有するZSM−5種結晶に相当する。合成混合物に加えられる種結晶の量は、約0.05重量%〜約10重量%であってよい。
【0040】
ZSM−5種結晶のシーディングの後、混合物は約200℃以下、たとえば約130℃〜約160℃の温度に維持しながら、約24時間〜約240時間撹拌することができる。次に、得られたZSM−5結晶を合成混合物の残りから分離することができる。
【0041】
合成混合物が最初に形成される場合、あらゆる好都合な方法で、合成混合物の温度を所望の合成温度まで上昇させることができる。たとえば、所望の合成温度に到達するまで、合成混合物の温度を少なくとも10℃/時、たとえば、少なくとも25℃/時、少なくとも40℃/時、または少なくとも75℃/時で上昇させることができる。撹拌速度は、容器の大きさおよび拡散装置の性質に依存して、たとえば約25rpm〜約500rpmなどのあらゆる好都合な撹拌速度であってよい。
【0042】
ZSM−5結晶が形成された後、生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、水を除去するために約100℃〜約160℃または約100℃〜約140℃などの好適な温度で乾燥させることができる。
【0043】
合成されたままの形態では、ZSM−5結晶は、指向剤として使用された有機材料を含有することがある。触媒または吸着剤として使用する前に、合成された状態の材料は、有機成分の全てまたは一部を除去するために通常は処理することができ、たとえば合成された状態の材料を約250℃〜約550℃の温度で約1時間〜約48時間の時間加熱することによって処理することができる。
【0044】
所望の程度まで、合成された状態の材料のナトリウムカチオンなどの本来のカチオンは、当技術分野において周知の技術により、少なくとも一部をイオン交換によって別のカチオンに置換することができる。希望する場合、置換される好ましいカチオンとしては、金属イオン、水素イオン、水素前駆体イオン(たとえば、アンモニウムイオン)、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。また希望する場合には、特に好ましいカチオンとしては、特定の炭化水素変換反応の触媒活性を調節できるカチオンを挙げることができ、そのようなものとしては水素、希土類金属、および/または周期表のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、およびVIII族の金属を挙げることができる。
【0045】
本発明の結晶材料は、吸着剤としておよび/または有機化合物変換プロセスの触媒として使用される場合、通常、たとえば、空気または窒素などの雰囲気中、大気圧、減圧、または加圧下で、30分〜48時間の間、約200℃〜約370℃の温度に加熱することによって、少なくとも部分的に脱水することができる。脱水は、これに加えてまたはこれとは別に、単に真空中にZSM−5を置くことによって室温(約20〜25℃)で行うことができる、十分に脱水するためにはより長時間が必要となりうる。
【0046】
場合により、結晶は、約350℃〜約925℃で、たとえば、約1分〜約6時間、たとえば約1分〜約20分の時間焼成することができる。焼成温度に到達させるために、オーブンまたは結晶を加熱するための他の装置の温度は、50℃、100℃の増分、または別の好都合な増分で上昇させることができる。希望するなら結晶は、場合により、所望の最終焼成温度に温度を上昇させる前に、ある時間の間、徐々に上昇する温度で維持することができる。このような断続的な徐々に上昇する加熱によって、結晶構造から水蒸気を逃すことができ、同時に、結晶中の損傷および/または形態変化を最小限にしたり/なくしたりすることができる。
【0047】
得られた結晶の結晶構造を確認するためにX線回折(XRD)分析を使用することができる。得られた結晶を視覚化するための顕微鏡写真を得るために走査電子顕微鏡法(SEM)を使用することができる。
【0048】
本発明により調製された合成ZSM−5結晶は、合成されたままの形態、水素型、または別の(一価または多価)カチオン型のいずれかで使用することができる。これに加えて、またはこれとは別に、水素化−脱水素の機能が望ましくなり得る場合、これらは、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、および/または白金および/またはパラジウムなどの1種類以上の貴金属などの水素化成分と密接に混合して使用することができる。このような成分は、組成物中で交換させたり、内部に含浸させたり、および/または物理的に密接に混合したりすることができる。
【0049】
触媒として使用する場合、特定の有機変換プロセスに使用される温度およびその他の条件に対して抵抗性である別の材料と本発明のZSM−5とを混合することが望ましい場合がある。このようなマトリックス材料としては、活性および不活性の材料、ならびに合成または天然のゼオライト、ならびに無機材料、たとえばクレー、シリカおよび/または金属酸化物、たとえば、アルミナ、チタニア、マグネシア、セリア、および/またはジルコニアを挙げることができる。後半の無機材料は、天然、あるいはゼラチン状沈殿物、ゾル、またはゲルの形態のいずれかであってよく、たとえばシリカと金属酸化物との混合物であってよい。ZSM−5を活性材料とともに(混合して)使用することで、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換および/または選択性を向上させることができる。不活性材料は、特性のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤/充填剤として適切に機能することができ、それによって、反応速度、温度などを制御する他の手段を使用することなく経済的で系統的に生成物を得ることができる。多くの場合、結晶性触媒材料は、天然のクレー、たとえば、ベントナイトおよび/またはカオリンに混入することができる。これらの材料(クレー、酸化物など)は、たとえば特定の物理的性質を向上させるために、部分的には触媒のバインダーとして機能することができる。たとえば、石油精製における触媒は多くの場合乱暴に取り扱われることがあり、そのため触媒の摩損/破壊によって粉末状材料となりやすく、それによって処理における問題が生じうるので、良好な圧壊強度を有する触媒が提供されることが望ましい場合がある。
【0050】
本発明により合成結晶材料とともに使用できる天然クレーとしては、モンモリロナイトおよび/またはカオリンファミリー(サブベントナイト、ならびにDixie、McNamee、Georgia、およびFloridaクレーとして一般に知られているカオリン、または主要鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトである他のものを含む)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。このようなクレーは、最初に採掘されたとき、および/または最初に焼成、酸処理、および/または化学的改質が行われたときの未処理の状態で使用することができる。
【0051】
上記材料に加えてまたはそれとは別に、本発明の結晶は、多孔質マトリックス材料、たとえばシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、および/または三元組成物、たとえばシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、およびシリカ−マグネシア−ジルコニアとともに使用することができる。多孔質マトリックスは、コゲルの形態であってよい。これらの成分の混合物を使用することもできる。
【0052】
ZSM−5結晶の用途の一例は、石油または炭化水素を含有する他の供給原料、たとえば石油供給原料中に通常見られるヘテロ原子を含有する炭化水素化合物の流動接触分解(FCC)の触媒としてのZSM−5の使用である。ZSM−5は、1種類以上の吸着した金属および/または前述の1種類以上のバインダー材料とともに配合することができる。
【0053】
別の実施形態
さらにまたはこれとは別に、本発明は、以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0054】
実施形態1。ZSM−5のフレームワーク構造を有する多孔質結晶材料であって、結晶材料は少なくとも約80のXO:Y比を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素であり;結晶材料は少なくとも約100m/gのメソ細孔表面積を有し;結晶材料は、ZSM−5フレームワーク構造を有し棒状形態を有する結晶を含み、結晶は、結晶長に相当する第1の結晶寸法と、約0.1μm〜約0.5μmである平均結晶長と、平均結晶長の約半分以下である平均寸法値を有する第2の結晶寸法とを有し、結晶は好ましくはZSM−5結晶である、多孔質結晶材料。
【0055】
実施形態2。ZSM−5フレームワーク構造を有する結晶の少なくとも50体積%が、二次結晶凝集体を形成する一次微結晶であり、二次結晶凝集体中の一次微結晶(又は結晶:crystallite)の第1の結晶寸法が実質的に整列(又は配列)しており、二次結晶凝集体が、平均結晶長の少なくとも5倍である平均凝集体長さを有し、結晶凝集体が、第2の結晶寸法の平均寸法値の少なくとも10倍である平均凝集体幅を有する、実施形態1の結晶材料。
【0056】
実施形態3。XがSiでありYがAlである、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0057】
実施形態4。XO:Yの比が少なくとも約100、たとえば、少なくとも約150または少なくとも約200である、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0058】
実施形態5。メソ細孔表面積が少なくとも約120m/g、たとえば、少なくとも約150m/gである、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0059】
実施形態6。結晶材料が実質的に純粋であり、実質的に純粋な結晶材料は、ZSM−5フレームワーク構造とは異なるフレームワーク構造を有する結晶材料を10重量%未満含む、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0060】
実施形態7。ZSM−5フレームワーク構造を有する結晶の全表面積が、少なくとも約300m/g、たとえば、少なくとも約350m/gまたは少なくとも約400m/gである、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0061】
実施形態8。ZSM−5フレームワーク構造を有する結晶の少なくとも一部が、それらの細孔中に配置された構造指向剤を含有する、上記実施形態のいずれか1つの結晶材料。
【0062】
実施形態9。ZSM−5のフレームワーク構造を有する結晶の合成方法であって:ゼオライトフレームワーク構造を有する結晶を形成可能な合成混合物を形成し、混合物が、水、四価酸化物(XO)、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、および構造指向剤を含み、混合物は少なくとも約50のXO:Y比を有し、混合物が、ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶の非存在下、好ましくは種結晶の非存在下でのZSM−12フレームワーク構造を有する結晶の形成に好適であること;ZSM−5フレームワーク構造を有する種結晶約0.05重量%〜約5重量%を合成混合物中に加えること;及びZSM−5フレームワーク構造を有する(好ましくは実質的に純粋な)結晶、好ましくはZSM−5結晶を合成混合物から回収することを含み、結晶が、少なくとも1つの寸法において少なくとも0.1μmの平均サイズを有するZSM−5フレームワーク構造を有し、XはSi、Ge、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される四価元素であり、好ましくはSiであり、YはAl、B、In、Ga、Fe、またはそれらの組み合わせから選択される三価元素であり、好ましくはAlである、方法。
【0063】
実施形態10。合成混合物中のXO:Yの比が少なくとも約100、たとえば、少なくとも約150または少なくとも約200である、実施形態9の方法。
【0064】
実施形態11。ZSM−5フレームワーク構造を有する回収された結晶は少なくとも約100m/g、たとえば、少なくとも約120m/gまたは少なくとも約150m/gのメソ細孔表面積を有する、実施形態9または実施形態10の方法。
【0065】
実施形態12。ZSM−5フレームワーク構造を有する回収された結晶は少なくとも約80、たとえば、少なくとも約100、少なくとも約120、または少なくとも約150のXO:Y比を有する、実施形態9〜11のいずれか1つの方法。
【0066】
実施形態13。回収された結晶少なくとも50体積%が、二次結晶凝集体を形成する一次微結晶であり、二次結晶凝集体中の一次微結晶の第1の結晶寸法が実質的に整列しており、第1の結晶寸法が少なくとも約0.1μmの平均サイズを有し、二次結晶凝集体が、平均結晶長の少なくとも5倍である平均凝集体長さを有し、結晶凝集体が、第2の結晶寸法の平均寸法値の少なくとも10倍である平均凝集体幅を有する、実施形態12の方法。
【0067】
実施形態14。構造指向剤が、テトラアルキルアンモニウム塩、たとえば、テトラエチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、および/またはベンジルトリエチルアンモニウム塩である、またはそれらを含む、実施形態9〜13のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態15。種結晶の非存在下および/またはZSM−5フレームワーク構造を有する結晶の非存在下でのZSM−12フレームワーク構造を有する結晶の形成に好適な混合物が、種結晶の非存在下でZSM−12フレームワーク構造を有する結晶の形成に好適な構造指向剤を含有する合成混合物を含む、実施形態9〜14のいずれか1つの方法。
【実施例】
【0069】
比較例1−種結晶を使用しないZSM−12の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−12を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、およびHi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)を含むように調製した。混合物は以下の表3に示すモル組成を有した。
【0070】
【表3】
【0071】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図1は合成されたままの状態の材料のXRDパターンを示しており、これは純粋相ZSM−12生成物に典型的なパターンを示すことが分かった。合成されたままの状態の材料のSEMは、この材料が小さな結晶の凝集体から構成されることを示している。SEM分析に基づき、平均結晶サイズを測定すると<0.05ミクロンであった。
【0072】
比較例2−種結晶を使用しないZSM−12の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−12を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、およびHi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)を含むように調製した。混合物は以下の表4に示すモル組成を有した。
【0073】
【表4】
【0074】
この混合物を、オートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図2a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルから、ZSM−5およびZSM−12のトポロジの混合相を示すことが分かった。図2b中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、ZSM−12の比較的小さな結晶と、ケイ酸含有ZSM−5の比較的大きな結晶の不純物相との凝集体から構成されることを示すことが分かった。SEM顕微鏡写真に基づくと、ZSM−5結晶は代表サイズが約10μm以上であることが分かり、一方、ZSM−12結晶は代表サイズが約1〜5μmであることが分かった。比較例1で得られる純粋相と、ZSM−5不純物を有するZSM−12に相当して得られる結晶との両方に基づいて、この比較例2における合成混合物が、ZSM−12の形成に好適な合成混合物の定義の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0075】
比較例3−種結晶を使用しないZSM−12の形成
構造指向剤として臭化メチルトリメチルアンモニウム(MTEABr)を含む混合物を使用してZSM−12を合成した。この混合物は、水、MTEABr溶液(約7部のMTEABr、約2部の水)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、Al(OH)、およびUltrasil(商標)シリカ(約93重量%のSiO)を含むように調製した。混合物は以下の表5に示すモル組成を有した。
【0076】
【表5】
【0077】
この混合物をオートクレーブ中285°F(140.5℃)において150RPMで撹拌しながら168時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。図3a中の合成されたままの状態の材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な純粋相を示している。図3b中の合成されたままの状態の材料のSEMは、材料が米粒型の形態の単一の大きな結晶(>2ミクロンの平均結晶サイズを有する)で構成されたことを示している。得られた生成物のSi/Al比は約140/1であった。
【0078】
実施例4−ZSM−5で汚染されたオートクレーブ中でのZSM−5の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、およびHi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)を含むように調製した。反応混合物の初期の形成中には種を加えなかった。しかし、ZSM−5の種で汚染されたオートクレーブ中で結晶を合成した。混合物は以下の表6に示すモル組成を有した。
【0079】
【表6】
【0080】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図4a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図4b中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、樽状形態を有するZSM−5の比較的小さな結晶の凝集体で構成されたことを示すことが分かった。得られたZSM−5結晶のSi/Alモル比は約191であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶を測定すると、約111mg/gのヘキサン収着(アルファ試験より)を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約432m/g(約303m/gのミクロ細孔;約129m/gのメソ細孔)であった。
【0081】
実施例5−ZSM−5の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表7に示すモル組成を有した。
【0082】
【表7】
【0083】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図5a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは、純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図5b〜5c中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、比較的小さな結晶の凝集体から構成されたことを示すことが分かった。SEM顕微鏡写真に基づくと、凝集した結晶の少なくとも50体積%が樽状形態を有することが分かった。図5bは樽形態の側面図を示しており、一方、図5cはその形態の正面図を示している。図5b〜5cから分かるように、個別の棒状結晶または微結晶は、集合体または凝集体の樽形態の一部として個別の性質を維持していることが示された。
【0084】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約180であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約140のアルファ値および約108mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約457m/g(約263m/gのミクロ細孔;約194m/gのメソ細孔)であった。
【0085】
実施例6−ZSM−5の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表8に示すモル組成を有した。
【0086】
【表8】
【0087】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図6a〜6b中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、樽状形態の比較的小さな結晶の凝集体から構成されたことを示すことが分かった。
【0088】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約90であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約190のアルファ値および約100mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約441m/g(約277m/gのミクロ細孔;約164m/gのメソ細孔)であった。
【0089】
実施例7−ZSM−5の形成
この実施例は、実施例4と同様のものであるが、この実施例では、合成に使用したオートクレーブ中にZSM−5を有するのではなく、合成混合物にZSM−5の種を明確に加えた。この実施例は、実施例5に類似のものでもあるが、初期合成混合物中により少ない重量%の種を使用した。臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(約0.01重量%、残りの混合物成分に対して)を含むように調製した。混合物は以下の表9に示すモル組成を有した。
【0090】
【表9】
【0091】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図7a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図7b〜7c中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、樽状形態の比較的小さな結晶の凝集体から構成されたことを示すことが分かった。結晶化には約24時間を要した。
【0092】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約191であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約63のアルファ値および約110mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約467m/g(約338m/gのミクロ細孔;約129m/gのメソ細孔)であった。
【0093】
実施例8−ZSM−5の形成
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、Ultrasil(商標)シリカ(約93重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表10に示すモル組成を有した。
【0094】
【表10】
【0095】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図8中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、ワイン樽状形態の比較的小さな結晶の凝集体から構成されたことを示すことが分かった。
【0096】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約200であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約120のアルファ値および約108mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約447m/g(約348m/gのミクロ細孔;約120m/gのメソ細孔)であった。
【0097】
実施例9−ZSM−5の形成
塩化メチルトリエチルアンモニウム(MTEACl)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、MTEACl水溶液、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約45%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表11に示すモル組成を有した。
【0098】
【表11】
【0099】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図9a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図9b〜9c中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、ワイン樽状形態の比較的小さな結晶の凝集体から構成されたことを示すことが分かった。図9b中の倍率は、図9c中の倍率の約2倍であった。
【0100】
得られたZSM−5結晶は、Si/Alモル比が約114であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約160のアルファ値を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約447m/g(約272m/gのミクロ細孔;約175m/gのメソ細孔)であった。
【0101】
実施例10−ZSM−5の形成
塩化メチルトリエチルアンモニウム(MTEACl)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、MTEACl水溶液、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約45%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表12に示すモル組成を有した。
【0102】
【表12】
【0103】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。図10a中の合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図10b中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、混合形態を有する凝集体から構成されたことを示すことが分かった。
【0104】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約71であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約190のアルファ値および約79mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると、約417m/g(約357m/gのミクロ細孔;約60m/gのメソ細孔)であった。この合成混合物から得られたZSM−5結晶は、上記実施例で観察されたような典型的な性質を示さないことが分かったが、その理由は、合成混合物中のSiO/Al比が小さく、その結果として生成物Si/Al比が80:1未満となったためである可能性がある。
【0105】
実施例11−ZSM−5の形成(比較例)
臭化テトラエチルアンモニウム(TEABr)を構造指向剤として含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEABrの約50重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、硫酸アルミニウムの約47%溶液(水中)、Hi−Sil(商標)233シリカ(約87重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表13に示すモル組成を有した。
【0106】
【表13】
【0107】
この混合物をオートクレーブ中約280°F(約138℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。図11中、合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真から、材料が、混合形態を有する凝集体から構成されたことを示すことが分かった。理論によって束縛しようとするものではないが、樽状形態(および/または比較的広い表面積)の実現の失敗は、比較的小さいSi/Alモル比(この場合約57)に起因しうると考えられる。
【0108】
合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約81のアルファ値および約50mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約251m/g(約199m/gのミクロ細孔;約51m/gのメソ細孔)であった。この合成混合物から得られたZSM−5結晶は、上記実施例で観察されたような典型的な性質を示さないことが分かったが、その理由は、合成混合物中のSiO/Al比が小さく、その結果として生成物Si/Al比が80:1未満となったためである可能性がある。
【0109】
実施例12−ZSM−5の形成
水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)として構造指向剤を含む混合物を使用してZSM−5を合成した。この混合物は、水、TEAOHの約35重量%溶液(水中)、NaOHの約50重量%溶液(水中)、アルミン酸ナトリウムゾル(水中約45重量%)、Ultrasil(商標)PMシリカ(約93重量%のSiO)、およびZSM−5の種(残りの混合物成分に対して約1重量%)を含むように調製した。混合物は以下の表14に示すモル組成を有した。
【0110】
【表14】
【0111】
この混合物をオートクレーブ中約320°F(約160℃)において約250rpmで撹拌しながら約72時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、約250°F(約120℃)で乾燥させた。合成されたままの状態の材料のXRDスペクトルは純粋相ZSM−5トポロジーを示すことが分かった。合成されたままの状態の材料のSEM顕微鏡写真を図12に示している。
【0112】
得られたZSM−5結晶はSi/Alモル比が約183であることが分かった。合成されたままの状態の結晶を、次に、室温(約20〜25℃)において硝酸アンモニウム溶液を用いた3回のイオン交換で水素型に変換し、続いて約250°F(約120℃)で乾燥させ、約1000°F(約538℃)で約6時間焼成した。得られたh型結晶についてアルファ試験プロトコルを用いて測定すると、約110のアルファ値および約107mg/gのヘキサン収着を示した。このh型結晶の全表面積を測定すると約474m/g(約308m/gのミクロ細孔;約166m/gのメソ細孔)であった。
【0113】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、そのように限定されるものではない。特定の条件下での操作のための好適な変更/修正は当業者には明らかとなるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明の真の意図/範囲内となるすべてのそのような変更/修正を含むと解釈されることを意図している。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11
図12