(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ラネー触媒は、多くの場合、種々の化合物の水素化、例えばカルボニル化合物の水素化を行うために、粉末形態で使用される。活性化スポンジ、又は活性化骨格金属触媒とも呼ばれるラネー触媒は、少なくとも1種の触媒活性金属と、アルカリにより浸出させることができる少なくとも1種の金属との合金で作られている。アルカリ可溶性合金成分として、主にアルミニウムが使用されるが、亜鉛及びケイ素等の他の金属も使用することができる。アルカリ性媒体を合金と接触させることで、浸出可能な成分が溶出され、多くの場合、触媒活性材料が得られる。しかしながら、粉末形態のラネー触媒は、連続したバッチ工程における触媒転換後に反応媒体から分離しなければならないという欠点を有する。これには時間を要し、費用がかかる。従って、他の形状が使用されている。例えば、特許文献1は、好ましくは鉄を含み、浸出可能な成分としてアルミニウムを含む、銅に基づく球状ラネー触媒の使用を記載している。この方法は、固定触媒床を用いて行うことができる。
【0003】
活性相の固定化、又は少なくとも代替的なラネー触媒の観点から、複数の改善するための試みが行われている。ラネー触媒は嵩密度が高く、従って使用される触媒活性金属の重量に対して比較的活性が低いことに重大な欠点があることが判明したため、嵩密度を低下させる試みが行われている。
【0004】
中空体形状、好ましくは中空球形状の金属触媒が、特許文献2及び3に記載されている。
【0005】
特許文献4は、カルボニル化合物の水素化によりアルコールを製造するための、中空体形状のラネー触媒の使用を記載している。使用される触媒の製造のために、触媒活性金属と、好ましくはアルミニウムである浸出可能な金属との合金粉末、有機結合剤、必要に応じて、無機結合剤、水、及び促進剤の混合物が、熱的に除去可能な材料からなる球体上に堆積される。好ましくは、発泡スチロールの球体を使用することができる。ポリマー球体上への、金属合金を含む混合物の堆積は、好ましくは流動床中で行うことができる。被覆されたポリマー発泡球体は、ポリマー発泡体を熱的に除去し、金属をアニールするために、高温で焼成される。焼成後、中空球体は、苛性溶液、好ましくはアルカリ水酸化物水溶液又はアルカリ土類水酸化物水溶液で処理することにより活性化され、触媒活性材料が得られる。
【0006】
特許文献5において、同一の発明者らは、この技術は、球体だけでなく幅広い中空体の対象物に適用することができることを示しているが、この技術の欠点は、活性化された中空球体の製造の困難性の増大である点についても言及している。具体的には、発泡スチロールの担体が焼失してから、合金を含む残りの金属シェルが安定化するまでの時間で、活性化された中空球体の製造が臨界となり得る。それ故、特許文献5では、代わりに、支持体が合金含有物質で被覆された、支持された金属触媒を製造して、被覆された支持体を形成することが提案されている。多数の支持体が挙げられているが、金属発泡体については言及されていない。
【0007】
非特許文献1は、反応炉の周期的な運転下で、ニッケルガーゼ上でのメタンの接触分解による水素の製造を記載している。バルクNi金属の比表面積を増加させるために、Niガーゼの外表面にラネー型層が形成された。この目的のために、Niガーゼの表面上にAl−Ni合金が形成され、水酸化カリウム水溶液によりAlが選択的に除去された。外層表面は、ラネーニッケルの特性を有するものとして記載されている。合金形成の詳細については、何ら言及されていない。
【0008】
特許文献6は、固定床ラネーニッケル触媒の調製方法を開示している。この目的のために、ニッケル発泡体が有機溶媒中に投入され、次いで希釈酸溶液でのクリーニング、洗浄、及び乾燥を行い、金属アルミニウムが不活性雰囲気下、660℃〜800℃で溶融される。次いで、前処理したニッケル発泡体を、溶融したアルミニウム中に0.5時間〜6時間浸漬し、それによって温度を660℃〜800℃に維持し、次いで室温で自然冷却する。浸漬時間と浸漬温度とを制御することにより、アルミニウムの所望の堆積を達成することができる。得られた発泡体は、次いで、浸出のためにNaOH溶液又はKOH溶液に浸漬される。このようにして得られたラネーニッケル触媒は、最大90%の水素化ホウ素の転換率を有する触媒活性を示す。
【0009】
特許文献7は、固定床ラネーニッケル触媒の調製方法を開示している。この方法は、アルミニウムシートがアノードとして使用され、ニッケル発泡体がカソードとして使用される電気めっき工程を含む。アルミニウム化されたニッケル発泡体は、不活性ガス雰囲気下、600℃〜1100℃で0.5時間〜3時間加熱される。NaOH溶液又はKOH溶液での浸出が行われる。
【0010】
また、特許文献8は、フレーム溶射、アーク溶射、又はプラズマ溶射を含む溶射方法を含む固定床ラネーニッケル触媒の調製方法を開示している。アルミニウム被覆されたニッケル発泡体は、次いで、不活性ガス雰囲気下、660℃〜1100℃で0.1時間〜5時間で加熱される。更に、NaOH溶液又はKOH溶液での浸出が行われる。
【0011】
特許文献9は、ニッケル及び浸出可能な金属からなる金属合金を溶融する工程、及びこれに金属合金の発泡及び浸出が続く工程を含む、触媒金属発泡体の調製方法を開示している。得られた触媒金属発泡体は、水素化のための触媒として使用することができる。実施例1では、アルミニウムとニッケルとの合金を調製し、次いで発泡剤を用いて発泡し、次いで苛性ソーダ溶液で浸出させている。
【0012】
特許文献10は、電解槽で使用することができる、又はそこで電流が印加される、金属発泡体シートの調製を開示している。実施例1では、穿孔ニッケル発泡体の調製が開示されており、ニッケル電気めっきによりオープンセル状ポリウレタン発泡体シートが提供され、これにPU発泡基材を除去するための熱分解が続く。得られた網状ニッケル発泡体シートは、オープンセル状の孔と連続的な連結ストランドとのネットワークを有しており、それによって、ストランドは約50μmの平均厚みを有しており、ニッケルシートは、重量約490g/m
2、セル数65ppi、及び平均孔径約390μmを有していた。実施例4では、実施例1の穿孔ニッケル発泡体は、660℃の温度で多孔質のニッケルに箔状のシートとしてアルミを融合させることにより被覆され、次いで15重量%のNaOHで浸出した。
【0013】
特許文献11は、金属発泡体の製造方法を開示している。実施例2では、ニッケル発泡体を、結合剤としてのポリ(ビニルピロリドン)の1%水溶液で被覆し、次いでアルミニウム粉末の混合物を振動装置に適用し、それによって構造の開放多孔特性を実質的に維持した。次いで温度300℃〜600℃を30分間適用し、続けて温度900℃〜1000℃を30分間適用し、それによって窒素雰囲気中で温度処理を行った。得られた金属発泡体は、91%の気孔率を有しており、少なくとも殆どニッケルアルミナイドで構成されていた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従って、本発明は、
(a)第1の金属材料を含む金属発泡体を提供する工程と;
(b)前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料を前記金属発泡体(a)の表面上に適用する工程であって、該工程は、有機結合剤及び前記第2の金属材料の粉末で前記金属発泡体の表面を被覆することにより行われ、前記第2の金属材料は、第1の金属化合物を含み、前記第1の金属化合物は、それ自体が浸出可能であるか、又は前記第1の金属化合物とは異なり且つ浸出可能な第2の金属化合物中に合金化することにより変形することが可能であるか、若しくは、その両方である工程と;
(c)前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料を合金化することにより、前記工程(b)で得られた前記金属発泡体の合金皮を形成する工程と;
(d)前記工程(c)で得られた合金化された前記金属発泡体を、前記第1の金属化合物及び前記第2の金属化合物の少なくともいずれかを前記金属発泡体の前記合金皮から浸出可能な剤で処理し、前記金属発泡体の前記合金皮から前記第1の金属化合物及び前記第2の金属化合物の少なくともいずれかの少なくとも一部を浸出させる工程と;
を含む方法により得られ、未改質コアと前記合金皮とを含み、電子顕微鏡法により決定される前記合金皮の厚みが、最大50μmまでの範囲であることを特徴とする表面改質金属発泡体を対象とする。
【0019】
第1の金属材料は、好ましくは、浸出可能な金属化合物と合金を形成可能な少なくとも1種の金属を含む。一般的に、第1の金属材料は、好ましくは、様々な用途(例えば触媒)に使用される少なくとも1種の金属を含有し、例えばアルミニウムとの浸出可能な合金相を生成可能である。より好ましくは、第1の金属材料は、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Ag、Au、Pt、及びPdからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。更に好ましくは、第1の金属材料は、Ni、Cr、Co、Cu、及びAgから選択される少なくとも1種の金属を含む。第1の金属材料は、単一の金属、例えばNiとして存在することができ、又は複数の金属が存在する場合には、例えば、これらの金属の1種以上を含み、1種以上の金属間相から構成されてもよい合金として存在することができる。但し、第1の金属材料は、例えばAl、Si、又はZn等の浸出可能な金属を含有することもできる。
【0020】
第2の金属材料は、それ自体が浸出可能な第1の金属化合物、及び浸出可能で第1の金属材料とは異なる第2の金属化合物中に合金化することにより変形することが可能な第1の金属化合物の少なくともいずれかを含む。例えば、Ni発泡体上に塗布されたAl粉末を加熱して合金化した場合、浸出性の異なる種々のAl含有金属間種を、合金化工程で形成することができる。本明細書において、「金属化合物」との用語は、広く解釈されるべきであり、単一の金属、及び金属間化合物を含む。好ましくは、第2の金属材料は、Si、Al、及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。また、第2の金属材料は、第1の金属材料に使用可能な1種以上の金属を含んでいてもよい。好ましくは、第2の金属材料は、一般的に第1の金属化合物として、Alを含むか、又はAlからなる。浸出可能な金属化合物の具体例は、Al(アルミニウム)、Ni
2Al
3、及びNiAl
3である。また、第2の金属材料は、1種を超える浸出可能な金属化合物を含むことができる。
【0021】
合金化条件は、含まれる物質の相図に応じて選択される。例えば、Ni及びAlを含む合金化の場合には、合金化条件は、Alに富んだ浸出可能な化合物(即ちNiAl
3及びNi
2Al
3)の形成を最大化するために、Lei等(参照:Applied Catalysis A(適用される触媒A):General 214(2001),第69頁〜第76頁)に基づき、Ni−Al相図に基づき選択される。
【0022】
好ましい実施形態では、第1の金属材料は、Niを含むか、又は本質的にNiからなり、第2の金属材料は、NiとAlとの混合物を含むか、又は本質的にNiとAlとの混合物からなる。本明細書において、「混合物」との用語は、広く解釈されるべきであり、合金又は単なる物理的混合物を包含する。例えば、NiとAlとの混合物が粉末形態で使用される場合、「混合物」は、合金の粉末だけでなく、AlとNiとの粉末の混合物のいずれも指す。本明細書において、「から本質的になる」との用語は、所望の発泡体の特性を改善させるために、促進剤元素が少量で存在し得る場合を指す。
【0023】
更に好ましい実施形態では、第1の金属材料は、Niを含むか、又は本質的にNiからなり、第2の金属材料は、本質的にAlからなる。
【0024】
「から本質的になる」との用語は、他の元素、特に金属元素の微量の存在は除外されないものと解釈されるべきである。
【0025】
即ち、促進剤、即ち改質金属発泡体の所望の特性を改善する促進剤元素を、特に合金皮に使用することができる。促進剤は、例えば、クロム、マンガン、鉄、バナジウム、タンタル、チタン、タングステン、モリブデン、レニウム及び白金族金属の少なくともいずれか、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、又はビスマスとすることができる。表面改質金属発泡体における促進剤の量は、促進剤の種類及びその意図する用途に応じて大幅に変えることができるが、一般的には、合金皮の総重量に基づき、最大20重量%まで、好ましくは最大5重量%までの範囲である。例えば、Cr又はMoが促進剤として使用される場合は、それらの量は、多くの場合、2重量%〜3重量%の範囲である。
【0026】
本発明の表面改質金属発泡体、金属発泡体(a)の表面を改質することにより得られる。
【0027】
金属発泡体は、それ自体は既知である。本発明の目的のために使用することができる金属発泡体は、特に限定されない。好ましくは、網状の金属発泡体が使用される。孔の径及び形状、ストラット(strut)の厚み、面積密度、発泡体密度、幾何学的表面積、及び気孔率等の形態学的特徴は、広く変動させることができる。更に、これらの金属発泡体は、種々の方法により得ることができる。例えば、有機ポリマー発泡体を、第1の金属材料で被覆することができ、その後、例えば、有機ポリマー発泡体を高温で燃焼することにより、又は適切な溶媒で有機ポリマー発泡体を除去することにより、有機ポリマー発泡体が除去される。被覆は、有機ポリマー発泡体を、第1の金属材料を含有する溶液又は懸濁液と接触させることにより達成することができる。これは、例えば、便宜上、有機ポリマー発泡体に、第1の金属材料を含有する対応する溶液又は懸濁液を噴霧することにより、又は有機ポリマー発泡体を、第1の金属材料を含有する対応する溶液又は懸濁液に浸漬することにより行うことができる。或いは、例えば、第1の金属材料の化学気相堆積により乾式堆積を行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、使用される金属発泡体(a)は、ポリウレタン(PU)発泡体を第1の金属材料で被覆し、次いでポリウレタン(PU)発泡体を燃焼することにより得ることができる。被覆は、好ましくは、ポリウレタン(PU)発泡体への第1の金属材料の電解析出により達成される。この目的のために、電解析出が行われる前に、ポリウレタン発泡体の表面が既知の手段により導電化される。
【0029】
本発明の目的のために、金属発泡体(a)は、100μm〜5000μm、好ましくは450μm〜4000μm、更に好ましくは450μm〜3000μmの孔径を有し、5μm〜60μm、好ましくは10μm〜30μmの範囲のストラットの厚みを有し、300kg/m
3〜1200kg/m
3の範囲の見掛け発泡体密度を有し、100m
2/m
3〜20000m
2/m
3、好ましくは1000m
2/m
3〜6000m
2/m
3の範囲の比表面積を有し、0.50〜0.95の範囲の気孔率を有する場合に特に有利であることが見出された。
【0030】
孔径は、一般的に、「The Guide 2000 of Technical Foams(工業用発泡体のガイド2000)」,ブック4,パート4,第33頁〜第41頁に記載されているRecticelのVisiocell分析法により決定される。具体的には、孔径は、透明紙に印刷された目盛り付きの環を、選択されたセルに重ね合わせることで、セル径の光学的測定法により決定される。孔径の測定は、平均セル径の値を得るために、少なくとも100個の異なるセルについて行われる。
【0031】
見掛け密度は、ISO845に従い、単位体積当たりの重量として決定される。
【0032】
発泡体の表面積の決定は、一般的に、実験的に決定するBET表面積の下限値が約0.01m
2/gであり、従って誤差が約0.005m
2/gであるという事実を考慮する。従って、一般的に、小さな表面積を含む発泡体の表面積は、近似値として、特定の仮定に基づく数値的方法を必要とする。
【0033】
従って、基部発泡体の幾何学的表面積(GSA)は、2−D発泡体スキャン及び数値的方法を用いて決定した。具体的には、GSAは、画像化技術を用いて以下の方法で決定した。即ち、硬化剤を含む発泡体試料(20mm×20mm)(樹脂及びエポキシ硬化剤の、重量比10:3の混合物)が、ホルダ内に配置される。試料を、炉温度70℃で30分間硬化する。発泡体試料を、研磨ディスク及び水を用いて研磨する。画像取込み及び処理を、「インナービュー(Inner View)」ソフトウェアで行う。画像は36区画(1区画が1.7mm×2.3mmである)から取り込み、取り込んだ画像の解析はソフトウェアで実行する。3つの最大値及び3つの最小値を除き、以下の式に従い30区画に基づくGSA評価を行う。
【0034】
(A
s/V)=Σ
l(P
s/A
total)
l/l
・断面積(A
total)
・断面積当たりのストラット面積(As)
・断面積当たりのストラットとの周長(Ps)
【0035】
改質発泡体の比表面積(BET)は、ガス吸着を用い、DIN9277に従って決定される。
【0036】
気孔率(%)は、以下の式で計算される。
【0037】
気孔率(%)=100/VT×(VT−W(1000/ρ)
ここで、VTは、発泡体シート試料の体積(単位[mm
3])であり、Wは、発泡体シート試料の重量(単位[g])であり、ρは、発泡材料の密度である。
【0038】
ストラットの厚みは、発泡体の微細構造の三次元可視化を提供するSalvo等のX線マイクロトモグラフィ(参照:Salvo,L.,Cloetens,P.,Maire,E.,Zabler,S.,Blandin,J.J.,Buffiere,J.Y.,Ludwig,W.,Boller,E.,Bellet,D.及びJosserond,C.2003,「X−ray micro−tomography as an attractive characterization technique in materials science(材質科学における魅力的な特性化技術としての、X線マイクロトモグラフィ)」,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research,B200:第273頁〜第286頁)を用い、平均値として求めた。各ストラットについて、等価の水力直径(同一の断面のシリンダに等しい直径)を計算し、多数のストラットに渡り統計的に平均化する。次いで、以下のように、Ni発泡体を実例として使用し、前述のSalvo等の方法に従って水力直径からストラットの厚みを求める。
【0039】
発泡体面積密度(AD)[kgNi/m
2発泡体]/発泡体の厚み(FT)[m]=X(kgNi/m
3発泡体)
X[kgNi/m
3発泡体]/ニッケル密度[kgNi/m
3固体Ni]=Y[無次元]
幾何学的表面積(GSA)=m
2/m
3
発泡体のストラットの厚み[m]=Y/GSA
【0040】
580μmのNi発泡体の実例は、以下の通りである。
【0041】
AD=450g/m
2
FT=0.0017m
ニッケル密度=8900kg/m
3
GSA=3100m
2/m
3
【0042】
450[gNi/m
2]/0.0017[m]=265kgNi/m
3発泡体
【0043】
265[kgNi/m
3発泡体]/8900[kg/m
3固体Ni]=0.03m
3固体Ni/m
3発泡体
【0044】
1m
3の発泡体は、3100m
2の表面積を有する。
【0045】
固体Niのストラットの厚み[m]= 0.03/3100[m
2/m
3]=〜10μm
【0046】
工程(c)で得られた合金化金属発泡体、及び本発明の表面改質金属体は、未改質コア、及び合金皮を含む。本発明の表面改質金属体のコアは、好ましくは、100μm〜5000μm、好ましくは450μm〜4000μm、更に好ましくは450μm〜3000μmの孔径を有し、5μm〜60μm、好ましくは10μm〜30μmの範囲のストラットの厚みを有し、300kg/m
3〜1200kg/m
3の範囲の見掛け密度を有し、100m
2/m
3〜20000m
2/m
3、好ましくは1000m
2/m
3〜6000m
2/m
3の範囲の幾何学的表面積を有し、0.50〜0.95の範囲の気孔率を有する金属発泡体からなる。
【0047】
表面改質金属発泡体は、表面領域における改質発泡体が、好ましくは1m
2/g〜150m
2/g、より好ましくは10m
2/g〜100m
2/gの比表面積(最大2gの発泡体試料を使用し、DIN9277に従うBET)を有する。
【0048】
本発明の表面改質金属発泡体は、合金皮の厚みが最大50μmまで、好ましくは5μm〜50μm、より好ましくは5μm〜30μm、更に好ましくは5μm〜20μmの範囲である場合に特に有利な特性を示す。これが、表面改質金属発泡体の機械的安定性と、所望の表面特性、例えば触媒特性との間の最適なバランスを提供する。
【0049】
一般的に、合金皮の厚みは、ストラットの厚みに関連する。この点に関し、合金皮は、平均30μmのストラットの厚みの5%〜70%、好ましくは40%〜60%、更に好ましくは45%〜55%の厚みを有する場合が好ましい。
【0050】
別の態様では、本発明は、
(a)第1の金属材料を含む金属発泡体を提供する工程と;
(b)前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料を前記金属発泡体(a)の表面上に適用する工程であって、該工程は、有機結合剤及び前記第2の金属材料の粉末で前記金属発泡体の表面を被覆することにより行われ、前記第2の金属材料は、第1の金属化合物を含み、前記第1の金属化合物は、それ自体が浸出可能であるか、又は前記第1の金属化合物とは異なり且つ浸出可能な第2の金属化合物中に合金化することにより変形することが可能であるか、若しくは、その両方である工程と;
(c)前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料を合金化することにより、前記工程(b)で得られた前記金属発泡体の前記合金皮を形成する工程と;
(d)前記工程(c)で得られた合金化された前記金属発泡体を、前記第1の金属化合物及び前記第2の金属化合物の少なくともいずれかを前記金属発泡体の前記合金皮から浸出可能な剤で処理する工程と;
を含み、表面改質金属発泡体が、未改質コアと前記合金皮とを含むことを特徴とする表面改質金属発泡体の製造方法を対象とする。
【0051】
本方法においては、100μm〜5000μm、更に好ましくは450μm〜3000μmの孔径を有し、5μm〜60μmの範囲のストラットの厚みを有する金属発泡体(a)が好ましくは使用される。更に、合金密度が好ましくは5000kg/m
3〜8000kg/m
3の範囲であり、300kg/m
3〜1200kg/m
3の範囲の見掛け発泡体密度を有する。好ましい金属発泡体の幾何学的表面積は、100m
2/m
3〜20000m
2/m
3、好ましくは1000m
2/m
3〜6000m
2/m
3の範囲であり、気孔率は0.50〜0.95の範囲である。
【0052】
電子顕微鏡法により決定される合金皮の厚みは、好ましくは最大50μmまでの範囲である。
【0053】
「浸出可能な」及び「浸出可能な金属化合物」との用語は、広く解釈されるべきである。適切な化学媒体との相互作用により除去可能な、即ち浸出可能な、任意の金属化合物が含まれる。例えば、AlとNiとの金属化合物の場合には、Ni
2Al
3及びNiAl
3が浸出可能な金属化合物と考えられるが、NiAlは浸出可能な金属化合物とは考えられない。適切な化学媒体、即ち浸出可能な金属を浸出させることが可能な剤(以下で「浸出剤(leaching agent)」との用語も使用される)は、酸性媒体、アルカリ性媒体、又は錯化媒体とすることができる。本明細書では、「錯化媒体(complexing medium)」は、浸出可能な金属の錯化剤を含む媒体を指す。
【0054】
但し、本発明においては、アルカリ性媒体を使用することが好ましい。好ましくは、NaOH、KOH及びLiOH、又はその任意の混合物が使用され、好ましくは水溶液の形態で使用される。その使用においては、浸出剤の濃度だけでなく、継続時間及び温度は、第1の金属材料及び第2の金属材料に応じて変化させることができる。
【0055】
好ましく使用されるアルカリ性媒体は、1M〜10MのNaOH水溶液である。浸出工程、即ち工程(d)は、一般的に、20℃〜98℃の温度で、好ましくは50℃〜95℃の温度で、1分間〜15分間、好ましくは2分間〜10分間行われる。例えば、浸出可能な金属化合物がAlを含むか、又はAlからなる場合、浸出工程においては、5MのNaOH溶液を90℃で3分間〜5分間を有利に使用することができる。
【0056】
工程(b)における第2の金属材料の適用は、金属発泡体(a)を第2の金属材料中に包む又は浸漬する、若しくは、第2の金属材料を好ましくは粉末の形態で発泡体(a)上に噴霧する又は注ぐ等の、多くの異なる方法により行うことができる。いずれの方法でも、第2の金属材料の適用は、金属発泡体(a)の表面を、有機結合剤及び第2の金属材料の粉末で被覆することにより行われる。
【0057】
最良の方法は、支持体が例えばベルト上を搬送されている際に、粉末を支持体上に散布する又は注ぐことより、第2の金属材料を支持体の発泡体上に適用することである。好ましくは、第2の金属材料は、30μm〜50μmの範囲の平均粒径を有する粉末の形態で使用される。
【0058】
本発明の方法では、工程(b)において、金属発泡体(a)の表面は、このように有機結合剤及び第2の金属材料の粉末で被覆される。更に好ましくは、結合剤の被覆は、好ましくは第2の金属材料の被覆の前に行われる。
【0059】
結合剤は、通常、発泡体上の結合剤層の厚みが、通常は10μm〜60μm、好ましくは10μm〜30μmの範囲となるような量で用いられる。
【0060】
本発明の特有の利点は、表面改質金属発泡体の構造を、予測可能な方法で設計することができることである。これは、例えば、第1の金属材料及び第2の金属材料の適切な選択により達成することができる。特に、第2の金属材料の選択は、浸出性の制御を可能にし、従って最終的に得られる合金皮の形態の制御を可能にする。
【0061】
好ましい方法では、浸出可能な金属の所望の浸出性を有する合金(c)は、合金化の温度及び時間だけでなく、クエンチングの温度及び時間を調節することにより得られる。
【0062】
好ましくは、第2の金属材料の組成は、特定の浸出性を有するように調節される。浸出特性を制御可能にして所望の多孔質の表面構造が得られるように、工程(c)で形成された合金の組成を制御することが更に好ましく、ここでは、浸出時に特定の振舞いを示す表面合金領域を得るために、高温での合金化が行われ、続いてクエンチング工程が行われる。
【0063】
第2の金属材料は、好ましくは0重量%〜80重量%の1種以上の非浸出可能な金属、及び20重量%〜100重量%の1種以上の浸出可能な、好ましくはアルカリ浸出可能な金属化合物、好ましくはAlから構成される。例えば、第2の金属材料を構成する金属元素がAl及びNiである場合には、それぞれの重量基準の量が等しいことが好ましい。
【0064】
条件、特に温度条件は、第2の金属材料の性質に依存する。
【0065】
第2の金属材料としてAlが使用される場合、金属発泡体の合金皮としての第1の金属材料と第2の金属材料との合金の形成は、好ましくは工程(b)で得られた金属発泡体を、650℃〜730℃の温度範囲まで、好ましくは660℃〜710℃の温度範囲まで加熱することにより形成される。
【0066】
第2の金属材料としてNiAl粉末が使用される場合、上限温度は著しく高く、即ち850℃〜900℃、好ましくは880℃〜900℃である。
【0067】
更に好ましくは、合金を得るための加熱中は、温度は上記範囲まで継続的に上昇し、最大15分間までの保持時間維持され、例えばAlが第2の金属材料として用いられる場合には、660℃〜710℃の温度範囲である。次いで、被覆及び加熱された金属発泡体を冷却する。これは、例えば単に加熱を停止して金属発泡体を室温まで冷却することにより達成することがでる。但し、好ましくは、冷却は、冷却媒体を適切に適用することにより補助される。従って、形成された合金中の浸出可能な金属成分と非浸出可能な金属成分との比率を調節することができる。
【0068】
冷却媒体は、例えば、アルゴン又は窒素等の気体、或いは例えば水、好ましくは脱気水等の液体とすることができる。冷却媒体の中でも、液体の使用が好ましい。
【0069】
更に好ましい方法では、第1の金属材料は、ニッケルを含むか、又はニッケルで構成され、第2の金属材料は、アルミニウムを含む。
【0070】
促進剤の存在が有利となり得る。従って、方法の好ましい実施形態では、少なくとも1種の促進剤元素が、工程(b)において発泡体(a)の表面に適用されるか、又は追加の工程(e)において工程(d)で得られた発泡体に適用されるか、若しくはその両方である。
【0071】
本発明の表面改質金属発泡体は、多くの化学的工程及び物理的工程で用いることができる。
【0072】
物理的工程は、特に吸着工程又は吸収工程である。例としては、薬学的用途、精製用途、及び産業用途における液体廃棄物の流れからの金属の除去及び回収である。
【0073】
本発明の表面改質金属発泡体は、例えば、水素化、異性化、水和、水素化分解、還元的アミノ化、還元的アルキル化、脱水、酸化、脱水素化、転位、及び他の反応等の、特に有機化合物を含む多くの触媒される化学反応のための触媒配合物中の成分としても用いることができる。
【0074】
本発明は、従って、吸着工程又は吸収工程において、又は化学的工程における触媒活性材料の成分として、本発明の改質金属発泡体を使用する第3の態様を対象とする。好ましくは、化学的工程は、化合物の水素化である。
【0075】
最終的な触媒配合物中の成分としての表面改質金属発泡体の非常に好ましい用途は、カルボニル、オレフィン、芳香族環、ニトリル、及びニトロ化合物等の選択的水素化工程における使用である。原理的には、表面改質金属発泡体は、全てのラネー型水素化反応に使用することができる。具体例は、ニトロ基のアミンへの水素化、カルボニル基の水素化、ポリオールの水素化、脂肪族ニトリルの脂肪族アミンへの水素化、還元的アルキル化、ニトリルのアミンへの水素化、アルコールの脱水素化、還元的アルキル化、オレフィンのアルカンへの水素化、アジドのオレフィンへの水素化である。化学的工程は、好ましくは、カルボニル化合物の水素化である。
【0076】
これに関して、本発明の表面改質金属発泡体は、特定の化学的工程の要求に合わせて容易に調整可能であることに留意されたい。本明細書に記載の表面改質は容易に達成することができるので、例えば、触媒活性が異なる触媒活性表面改質金属発泡体を得ることが可能である。複数のこれらの金属発泡体を組み合わせることにより、必要に応じて触媒活性を調節することが可能な触媒活性材料を得ることができる。例えば、化学反応器内の温度分布が均一ではない場合が知られている。本発明は、この場合、適切に調節された触媒活性を有する金属発泡体を組み合わせることにより、それに応じて調節された局所的な触媒活性を有する触媒活性材料を提供することができる。例えば、化学反応器の内側がより低温であることを考慮すると、触媒活性は、化学反応器の壁から内側にかけて増加し得る。
【0077】
本発明の表面改質金属発泡体は、高い気孔率を示し、軽量であり、表面積が大きい。更に、それらは、改質合金皮と、第1の金属材料を含む未改質金属発泡体とのそれぞれにおいて、良好な構造的均質性を示すことが明らかとなった。流量特性、質量特性、及び熱伝導特性に関しては、表面改質金属発泡体は、薄い改質層により、圧力損失の低下、流動混合の強化、高熱伝速度及び高物質移動速度、並びに高熱伝導率及び低拡散抵抗を可能にする。
【0078】
本発明は、複数の利点を有する。本発明は、化学的工程において使用するための、高い機械的安定性、活性化された外層の非常に定義された表面構造、及び高レベルの気孔率を有する触媒用の成分を製造することができる。更に、本発明は、触媒の全量に対して、比較的高い割合の活性化材料及び比較的高い活性表面積を可能にする。この点に関して、本発明の表面改質金属発泡体は、それを通して良好な材料の移動が可能になると同時に、移動した材料が、触媒部位と接触することができる。更に、本発明の発泡体の使用は、チャネリングを回避することができる。本発明の方法は、良好な浸出を可能にするので、本発明の表面改質金属発泡体は、本発明の実施形態では、化学反応器内で、その場で便利な方法で形成することができる。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。
実施例1
表面積密度450g/m
2、並びに中間孔径580μm及び気孔率93.8%の孔に対応した、表面積0.0222m
2/gの75mm×75mm×1.7mmの寸法を有し、ストラットの厚み10μm、見掛け密度552kg/m
3、及び幾何学的表面積(GSA)3100m
2/m
3を有するNi発泡体に、結合剤としてポリビニルピロリドンの1重量%水溶液を噴霧した。結合剤は、15μmの厚みのポリビニルピロリドンの最終的な層を得る量で使用した。
【0080】
噴霧したNi発泡体を室温で乾燥した後、結合剤で被覆された発泡体を、平均粒径30μm〜50μmのAl粉末で被覆した。この目的のために、Al粉末を、粉末/発泡体の重量比が「1」となる量で、結合剤で被覆された発泡体上に注いだ。Al粉末が開放多孔性構造に均一に分布するように、被覆された金属発泡体を振動させた。
【0081】
次いで、水素雰囲気中で5K/分の加熱速度で最大600℃まで加熱することにより、結合剤を除去した。次いで、温度を600℃に0.5時間保持した。
【0082】
次いで、5K/分の加熱速度で温度700℃まで連続的に加熱することによりNi−Al合金を形成した。この温度に達した後、加熱された発泡体を、次いで自然冷却により室温まで冷却した。このようにして、発泡体上に50:50モル%のNi−Al組成の層を得ることができた。
【0083】
次いで、冷却した発泡体を、5MのNaOH溶液で、70℃で3分間〜5分間処理した。
【0084】
その結果、表面改質金属発泡体が得られた。得られた表面改質金属発泡体は、厚みが最大10μmであり、ガス吸着を用いてDIN9277に従いBET測定により決定される比(BET)表面積が57.4m
2/gである合金皮を有していた。
【0085】
実施例2
NiCrAl発泡体(73重量%のNi、21重量%のCr、及び6重量%のAl)を用いた点を変更し、特に断りのない限り実施例1を繰り返した。また、合金化は、Ar雰囲気中で、900℃で30分間行った。
【0086】
表面積密度1180g/m
2、並びに中間孔径580μm及び気孔率89.6%の孔に対応した、表面積0.00084m
2/gの75mm×75mm×1.7mmの寸法を有し、ストラットの厚み15μm、見掛け密度821kg/m
3、及び幾何学的表面積(GSA)6860m
2/m
3を有するNiCrAl発泡体に、結合剤としてポリビニルピロリドンの1重量%水溶液を噴霧した。結合剤は、15μmの厚みのポリビニルピロリドンの最終的な層を得る量で使用した。
【0087】
噴霧したNi発泡体を室温で乾燥した後、結合剤で被覆された発泡体を、平均粒径30μm〜50μmのAl粉末で被覆した。この目的のために、Al粉末を、粉末/発泡体の重量比が「1」となる量で、結合剤で被覆された発泡体上に注いだ。Al粉末が開放多孔性構造に均一に分布するように、被覆された金属発泡体を振動させた。
【0088】
次いで、水素雰囲気中で5K/分の加熱速度で最大600℃まで加熱することにより、結合剤を除去した。次いで、温度を600℃に0.5時間保持した。
【0089】
次いで、5K/分の加熱速度で温度900℃まで連続的に加熱することによりNi−Al合金を形成した。この温度に達した後、加熱された発泡体を、30分間この温度に維持し、次いで自然冷却により室温まで冷却した。
【0090】
次いで、冷却した発泡体を、5MのNaOH溶液で、70℃で3分間〜5分間処理した。
【0091】
その結果、表面改質金属発泡体が得られた。得られた表面改質金属発泡体は、厚みが最大10μmであり、ガス吸着を用いてDIN9277に従いBET測定により決定される比表面積(SSA)が10.8m
2/gである合金皮を有していた。