特許第6185634号(P6185634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6185634
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ダイクッション装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/02 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B21D24/02 E
   B21D24/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-165613(P2016-165613)
(22)【出願日】2016年8月26日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102452
【氏名又は名称】エスアールエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義浩
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−190316(JP,U)
【文献】 特開平3−86396(JP,A)
【文献】 特開2016−59929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のスライドの下方に配置されるダイクッションパッドと、
前記ダイクッションパットを支持し、前記プレス機械のワークの成形加工時に前記ダイクッションパッドと共に昇降可能な流体圧シリンダと、
前記プレス機械のワークの成形加工時に前記流体圧シリンダの流体の圧力を調整するように前記流体圧シリンダに設けた比例弁と、
前記プレス機械のワークの成形加工時に前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドのストロークを検出するストローク検出手段と、
前記プレス機械のワークの成形加工時における前記ダイクッションパッドまたは前記流体圧シリンダの複数のストローク範囲と、これら複数のストローク範囲にそれぞれ対応する前記ダイクッションパッドまたは前記流体圧シリンダの上昇または下降の方向と、前記複数のストローク範囲にそれぞれ対応する前記流体圧シリンダの圧力とが設定されている設定部と、
前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドの前記ストローク検出手段によって検出されたストロークに基づいて前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドの上昇または下降の方向を判定し、判定された方向と前記検出されたストロークに応じた圧力を前記設定部から読みだして、その読みだされた圧力に、前記流体圧シリンダの圧力を調整するように前記比例弁を制御する制御部とを、
有するダイクッション装置。
【請求項2】
請求項1記載のダイクッション装置において、前記制御部は、前記方向の判定を、前記ストローク検出手段の検出値が供給されるごとに、そのとき供給された検出値と前回に供給された検出値とを比較することによって行うダイクッション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のダイクッション装置において、前記ストローク検出手段は、前記流体圧シリンダ内に設けられたセンサであるダイクッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械と共に使用するダイクッション装置に関し、特に、ワークへの押圧力を調整することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機械における絞り加工時のダイクッション装置のワークへの押圧力の特性を、ワークへの加工特性に応じて調整して、成形性を向上させようとするものがある。その一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、ダイクッションはロッドを介してオイルシリンダのピストンに接続され、このピストンの昇降によって容積が変化するオイルシリンダのオイル室が電磁ソレノイド弁を介してオイルタンクに接続されている。オイル室には圧力センサが取り付けられ、その検出値は、電磁ソレノイド弁を制御する制御部に供給されている。ダイクッション内にエアー室が設けられ、このエアー室はエアタンクに接続されている。プレス機械のスライドの下降による加圧力によりダイクッションが下降し、エアー室のエアーは圧縮され、オイルシリンダの作動油はオイルタンクに流出するが、電磁ソレノイドの絞りによって流出流量が調整され、ダイクッションの圧力が調整される。スライドの上昇時には、圧縮されたエアー圧によってオイルシリンダのピストンがダイクッションを上昇させることによって、ピストンも上昇し、オイル室にオイルタンクからオイルが供給される。ダイクッションの下降時の圧力調整は、圧力センサによって検出されたオイル室の圧力に応じて、制御部が電磁ソレノイドの絞りを調整することによって行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−76323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、スライドが下降するときに、共にダイクッションが下降する場合に圧力を調整することができる。ところで、成型方法で、成型方向に下降、上昇を織り交ぜながら行うような複雑な工程が必要な場合に、ダイクッションの圧力を上昇時、下降時に変化させて制御することができない。例えば、エアーの使用を中止し、電磁ソレノイドに代えてサーボ弁を使用し、圧力センサの圧力に基づいてフィードバック制御を行えば、ダイクッションの昇降制御も可能となるが、サーボ弁やフィードバック制御を使用しなければならないので、高コストとなる。
【0006】
本発明は、低コストでダイクッションの昇降制御が可能なダイクッション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のダイクッション装置では、プレス機械のスライドの下方にダイクッションパッドが配置されている。プレス機械では、例えばスライドに上金型が取り付けられ、ボルスタ上に下金型が配置され、上金型と下金型との間にワークが配置され、スライドがボルスタ側の下方に移動することによって、ワークを上金型と下金型との間でプレスする。ダイクッションパッドは、例えばボルスタの下方に配置され、ワークを支持しているダイクッションピンに結合されている。前記ダイクッションパットを流体圧シリンダが支持している。流体圧シリンダは、前記プレス機械のワークの成形加工時に前記ダイクッションパッドと共に昇降可能である。流体圧シリンダとしては、油圧シリンダやエアーシリンダを使用することができる。流体圧シリンダは、流体圧源からの流体によって駆動され、流体圧シリンダが例えばピストンによって2つの部屋に区画され、その一方の部屋に流体が供給されると共に、他方の部屋から流体が排出され、他方の部屋に流体が供給されると共に、他方の部屋から流体が排出されることによって、昇降するものとすることができる。比例弁が、前記プレス機械のワークの成形加工時に、前記流体圧シリンダでの流体の圧力を調整するように流体圧シリンダに設けられている。比例弁は、例えば流体圧源から前記流体圧シリンダの2つの部屋それぞれに供給される流体の圧力を調整するように設けることもできるし、前記流体圧シリンダの2つの部屋それぞれから排出される流体の圧力を調整するように設けることもできるし、流体圧シリンダの2つの部屋のうち1つの部屋への流体の供給時の圧力及び排出時の圧力を調整するように設けることもできる。また、比例弁は、パイロット式の圧力調整弁と、その圧力調整弁のパイロット圧を調整するパイロット圧調整弁とからなるものとすることもできる。前記プレス機械のワークの成形加工時に前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドのストロークをストローク検出手段が、検出する。前記プレス機械のワークの成形加工時における前記ダイクッションパッドまたは前記流体圧シリンダの複数のストローク範囲と、これら複数のストローク範囲にそれぞれ対応する前記ダイクッションパッドまたは前記流体圧シリンダの上昇または下降の方向と、前記複数のストローク範囲にそれぞれ対応する前記流体圧シリンダの圧力とが、設定部に設定されている。前記ストローク範囲は、それぞれのストローク範囲の上限値と下限値との両方を設定する場合もあるし、各ストローク範囲を経時的に配置した場合に、各ストローク範囲の上限値が次のストローク範囲の下限値に一致することを繰り返すものである場合、各上限値及び各下限値のうち一方のみを設定しておくこともできる。前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドの前記ストローク検出手段によって検出されたストロークに基づいて、制御部が、前記流体圧シリンダまたは前記ダイクッションパッドの上昇または下降の方向を判定し、判定された方向と前記検出されたストロークに応じた圧力を前記設定部から読みだして、その読みだされた圧力に前記流体圧シリンダ内の圧力を、前記比例弁が制御する。
【0008】
このように構成されたダイクッション装置では、プレス機械がワークのプレスを開始すると、ダイクッションパッドが下降し、ダイクッションパッドまたは流体圧シリンダのストロークがストローク検出手段によって検出され、制御部に供給される。制御部は、検出されたストロークを内部に含むストローク範囲から選択する。選択されたストローク範囲が、下降用のものと上昇用のものとの両方になることがある。この場合、例えば検出されたストロークに従って、ダイクッションパッドの移動方向を判定し、その判定された方向に対応するストローク範囲の圧力に流体圧シリンダ内の圧力が変化するように、比例弁を制御する。従って、検出されたストロークに応じて、ダイクッションパッドへの圧力を、下降の場合でも上昇の場合でも、所望の値に調整することができ、しかもその調整にはサーボ弁やフィードバック制御が不要である。
【0009】
前記制御部は、前記方向の判定を、前記ストローク検出手段の検出値が供給されるごとに、そのとき供給された検出値と前回に供給された検出値とを比較することによって行うことができる。今回のストローク検出値と前回のストローク検出値との偏差の正負を判断することによって、下降であるか上昇であるかを判断することができる。
【0010】
また、前記ストローク検出手段は、前記流体圧シリンダ内に設けられたセンサとすることもできる。例えば、ストローク検出手段を、流体圧シリンダの外部に設けることもできるが、流体として油を使用した場合に、ストローク検出手段が油によって汚染され、使用不可になる可能性があるが、流体圧シリンダ内に設けることによって、このような問題は生じない。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によるダイクッション装置では、ダイクッションパッド及び流体圧シリンダを上昇、下降させる制御を、サーボ弁やフィードバック制御を使用せずに、安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1実施形態のダイクッション装置を使用したプレス機械の概略構成図である。
図2図1のダイクッション装置の設定部に設定されたデータを示す図である。
図3図1のダイクッション装置のクッションストロークとダイクッション圧力の変化を示す図である。
図4図1のダイクッション装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
図5図1のダイクッション装置の設定されたデータの別例を示す図である。
図6図5のデータに基づいて制御されるダイクッション装置のクッションストロークとクッション圧力の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1実施形態のダイクッション装置は、プレス機械に使用されている。プレス機械は、図1に示すように、ボルスタ2を有し、その上面に下金型4が配置されている。この下金型4の上方に、上金型6が取り付けられたプレススライド8が配置されている。下金型4と上金型6との間にワーク10を配置し、プレススライド8を下降させることによって、ワーク10を下金型4と上金型6とによって決まる形態にプレスする。
【0014】
ワーク10は、ダイクッション装置のクッションピン12に取り付けられている。クッションピン12は、ダイクッションパッド14に取り付けられている。ダイクッションパッド14は、ボルスタ2の下面側に配置したフレーム16に上下方向に摺動可能に取り付けられている。このダイクッションパッド14の上面にクッションピン12が取り付けられている。従って、上金型6がワーク10に接触し、更に下金型4にワーク10をプレスするとき、クッションピン12と共にダイクッション14が下降する。
【0015】
ダイクッションパッド14の下面に、流体圧シリンダ、例えば油圧シリンダ18の昇降部18aが取り付けられており、油圧シリンダ18の固定部18bが、フレーム16に取り付けられたベース20の上面に固定されている。従って、昇降部18aは、ダイクッションパッド14と共に下降可能である。固定部18b内には図示しないピストンが設けられ、このピストンによって固定部18b内は2つの部屋に区画され、ピストンは昇降部18aに結合されている。
【0016】
この昇降部18aの上昇は、固定部18b内の一方の部屋に、流体圧源、例えば油圧ポンプ22から、流体、例えば圧油を圧油供給経路を介して供給し、他方の部屋から圧油を圧油排出経路を介して、例えば油圧ポンプ22に排出することによって行われ、昇降部18aの降下は、固定部18bの他方の部屋に圧油を供給し、一方の部屋から圧油を排出することによって行われる。この圧油の供給は、図示しない切換弁を介して、一方の部屋または他方の部屋に行われ、圧油の排出も、上記切換弁を介して他方の部屋または一方の部屋から行われる。
【0017】
ベース20の下面には、機械式リリーフ弁23が設けられている。このリリーフ弁23は、パイロット圧方式のもので、そのパイロット圧が比例リリーフ弁24に供給されており、この比例リリーフ弁24のリリーフ圧を制御部26が制御することによって、リリーフ弁23のパイロット圧が制御されて、シリンダ18の一方の部屋に供給または排出される圧油の圧力が制御されて、ダイクッションパッド14の昇降時それぞれに押し力、例えばダイクッション圧力を与えている。リリーフ弁23と比例リリーフ弁24とが比例弁を構成している。なお、比例リリーフ弁24から排出された機械式リリーフ弁23のパイロット圧油は、比例リリーフ弁24の排出経路を介して油圧ポンプ22に戻される。
【0018】
このダイクッション圧力は、制御部26が比例リリーフ弁24を制御することによって調整される。この調整はダイクッションパッド14のストロークに応じて行うため、このストロークを検出するように、ストローク検出手段、例えば磁歪センサ28が油圧シリンダ18内に設けられている。この磁歪センサ28によって検出されたストロークは、制御部26に供給されている。このストロークは、ダイクッションパッド14が基準位置(ストローク0)、例えば上金型6がクッションピン12に接触した位置から下降するほど、値が大きくなり、例えば基準位置から120mmまで降下する。
【0019】
ダイクッションストロークとダイクッション圧力との関係は、例えば図3に示すようにユーザーによって定められる。同図において、二点鎖線で示すように、プレススライド8が上死点から下死点まで、下降し、上昇し、上昇状態を維持し、下降し、下降状態を維持する。この間のダイクッションストロークに対応してダイクッション圧力が決定される。プレススライド8の下降に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストロークの基準位置0からダイクッションストローク20mmまで下降する間、300kNのダイクッション圧力を与えると決定される。0から20mmまでのダイクッションストローク範囲のダイクッション圧力は、成型開始時の圧力である。プレススライド8のさらなる下降に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストローク20から40mmまで下降する間、250kNのダイクッション圧力を与えると決定される。プレススライド8のさらなる下降に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストローク40から60mmまで下降する間に、200kNのダイクッション圧力を与えると決定される。プレススライド8の上昇に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストローク60から50mmまで上昇する間に、300kNのダイクッション圧力を与えると決定される。プレススライド8の下降に伴いダイクッションパッド14がクッションストローク60から80mmまで下降する間に、150kNのダイクッション圧力を与えると決定される。プレススライド8の下降に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストローク80から120mm(プレススライド8が下死点に到達したのに相当する位置)まで下降する間に、100kNのダイクッション圧力を与えると決定される。プレススライド8の停止に伴いダイクッションパッド14がダイクッションストローク120mmで停止する間に、300kNのダイクッション圧力を与えると決定される。なお、ダイクッションパッド14の上昇は、例えばプレススライド8が上昇したことにより、ダイクッションパッド14を押さえていた力が弱まり、ダイクッションパッド14に油圧シリンダ18が与えている力の方が大きくなることによって、生じる。
【0020】
上述したストローク範囲とこれらにそれぞれ対応する設定圧力とが図2に示すようにユーザーによって設定部30に設定される。但し、図2の設定1乃至設定6として設定されるのは、ダイクッションストローク0から20mmのストローク範囲を除いた範囲である。ダイクッションストローク0から20mmの設定圧力は、上述したように成型開始時の圧力であって、別途初期値として300kNと設定されている。
【0021】
設定1乃至6において、図3から明らかなように、ダイクッションパッド14は、常に下降するわけではなく、設定3や6のように下降から転じて上昇し、その上昇した位置を維持する場合がある。単に設定部30において各ストローク範囲と、これらにそれぞれ対応する設定圧力とを設定しておいて、磁歪センサ28が検出したストロークが含まれるストローク範囲に対応する設定圧力となるように、設定部26が比例リリーフ弁24を制御するだけでは、例えばストローク50mmは、設定2にも設定3にも含まれており、このストロークが検出された場合、制御部26は、設定2または設定3の設定圧力のいずれを設定するべきか制御不能となる。そこで、設定部30では、図2に示すように、各ストローク範囲に対応して、下降または上昇のストローク方向が設定されている。そして、制御部26は、磁歪センサ28からのストロークの変化から、ダイクッションパッド14が上昇しているか、下降しているかを判断し、判断された方向で、検出されたストロークが含まれるストローク範囲に対応する設定圧力がダイクッションパッド14に与えられるように、比例リリーフ弁24を制御する。
【0022】
図4は、ダイクッションストロークが20から120mmの範囲で、制御部26が行う処理を示すフローチャートである。なお、ダイクッションストローク0から20mmの範囲で制御部26が行う処理は、図示していない。予め定めた周期を持つサンプリングタイミングごとに磁歪センサ28のストローク値が制御部26に供給される。このストローク値が供給されるごとに図4に示す処理を制御部26が実行する。図3に破線で示すのが、サンプリングタイミングである。この処理では、今回供給されたストローク値をS(0)として制御部26が取得する(ステップS2)。そして、この取得したストローク値が含まれているストローク範囲を、設定部30から制御部26が読みだす(ステップS4)。例えば図2に示すように設定されている場合に、ストローク値が30mmであれば、30mmが含まれるストローク範囲として設定1の20乃至40mmが読みだされる。またストローク値が50mmであれば、50mmが含まれるストローク範囲として設定2と設定3とが読みだされる。また、ストローク値が110mmであれば、110mmが含まれる設定5と設定6とが読みだされる。
【0023】
ステップS4に続いて、S(0)と、前回のサンプリングタイミングに供給されて後述するように記憶されているストローク値S(−1)とを比較し、S(0)とS(−1)とが等しいか、S(0)がS(−1)より増加しているか、減少しているかを制御部26が判断する(ステップS6)。S(0)とS(−1)とが等しいということは、例えば図3のサンプリングタイミングtx1のストローク値をS(−1)と、tx1よりも一つ前のサンプリングタイミングtx2のストローク値をS(0)とすると明らかなように、ダイクッションパッド14が、前回のサンプリングタイミングと同じ位置に存在していることを表している。S(0)がS(−1)より増加しているということは、例えば図3のサンプリングタイミングtx3のストローク値をS(0)、tx3の1つ前のサンプリングタイミングtx4のストローク値をS(−1)とすると明らかなように、ダイクッションパッド14が前回のサンプリングタイミングの位置よりも下降していることを表している。S(0)がS(−1)より減少しているということは、例えば図3のサンプリングタイミングtx5のストローク値をS(0)、tx5の1つ前のサンプリングタイミングtx6のストローク値をS(−1)とすると明らかなように、ダイクッションパッド14が前回のサンプリングタイミングの位置よりも上昇していることを表している。
【0024】
従って、ステップS6において、増加と判断されると、読みだされているストローク範囲のうち下降と方向が選択されている設定圧力を油圧シリンダ18が発生するように比例リリーフ弁24を制御部26が制御する(ステップS8)。例えば、S(0)が50mmであれば、設定2と設定3とがステップS4において読みだされるが、ステップS6での判断の結果が増加であると、設定2の200kNが設定される。ステップS6において、減少または等しいと判断されると、読みだされているストローク範囲のうち上昇と方向が選択されている設定圧力を油圧シリンダ18が発生するように比例リリーフ弁24を制御する(ステップS10)。例えば、S(0)が50mmであれば、設定2と設定3とがステップS4において読みだされるが、ステップS6での判断の結果が減少または等しいであると、設定3の300kNが設定される。
【0025】
そして、ステップS8またはS10に続いて、次回に、この処理を行うときに、現在のストローク値を前回のストローク値として使用するために、制御部26は、S(0)のストローク値をS(−1)に記憶させ(ステップS12)、この処理を終了する。
【0026】
このように構成すると、磁歪センサ28のストローク値と、設定部30に設定されたデータとに基づいてダイクッションパッド14に対するダイクッション圧力を、比例リリーフ弁24を用いて制御することができる。特に、フィードバック制御を用いずに、磁歪センサ28によって検出したダイクッションパッド14のストロークの変化に従ってダイクッションパッド14が下降する場合だけでなく、上昇する場合にも、ダイクッション圧力を調整できる。また、磁歪センサ28に代えてレーザーセンサを使用することもできるが、油を多く使用する環境下では、油がレーザーセンサの遮光部に付着したり、油が霧状となってレーザー光を乱反射させたりして、レーザーセンサが使用不可になる可能性がある。しかし、磁歪センサ28を油圧シリンダ18内に設けているので、油を多く使用する環境下でも、使用不可とならず、ストロークを正確に検出することができる。
【0027】
設定部30では、ストローク範囲の下限値と上限値との両方を設定したが、例えば使用する各ストローク範囲を時系列で並べた場合、先行するストローク範囲の上限値が、次のストローク範囲の下限値と一致する場合には、下限値のみを設定するように構成することもできる。図5は、その場合の設定部30の設定の例で、図6に示すようにダイクッションストローク範囲0から20mmにおいて、ダイクッション圧力が300kN、次のダイクッションストローク範囲20から40mmにおいて、ダイクッション圧力が250kN、次のダイクッションストローク範囲40から20mmにおいて、ダイクッション圧力が200kN、次のダイクッションストローク20から80mmにおいて、ダイクッション圧力が150kN、次のダイクッションストローク80から50mmにおいて、ダイクッション圧力が200kN、次のダイクッションストローク50から120mmにおいて、ダイクッション圧力が150kN、最後のダイクッションストローク120から0mmにおいて、ダイクッション圧力が予めノックアウト出力で、各ストローク範囲を時系列で並べると、それぞれ先行するストローク範囲の上限値が、次のストローク範囲の下限値に一致している。この場合、下限値のストローク値と、そのストローク値を下限値とするストローク範囲での設定圧力とストロークの方向とをそれぞれ設定部30に設定している。このように構成すると、ストローク範囲は、その下限値のみを設定すればよいので、ユーザーの設定作業が容易になる。なお、この場合も、上記の実施形態と同様に、ストローク範囲0乃至20mmに対する設定圧力は初期値として別途設定されている。
【0028】
上記の実施形態では、油圧シリンダ18の一方の部屋への圧油の供給時及び排出時の圧力を調整したが、油圧シリンダ18の2つの部屋それぞれへの圧油の供給時または排出時の圧力を調整を調整することもできる。また、比例弁としてリリーフ弁23と比例リリーフ弁24とを使用したが、これに代えて、単体のリリーフ弁であって、そのパイロット圧を制御部26によって制御することができるタイプのリリーフ弁を比例弁として使用することもできるし、制御部26によって制御可能な比例弁であれば、他のタイプのものを使用することもできる。流体圧シリンダとして油圧シリンダを使用したが、これに代えてエアーシリンダを使用することもできる。また、磁歪センサ28をストローク検出手段として使用したが、これに代えて光電センサ等を使用することもできる。また、上記の実施形態では、ストローク検出手段としての磁歪センサ28を油圧シリンダ18に取り付けたが、ストローク検出手段をダイクッションパッド14に設けることもできる。
【符号の説明】
【0029】
2 ボルスタ
4 下金型
6 上金型
8 プレススライド
10 ワーク
12 クッションピン
14 ダイクッションパッド
18 油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
23 リリーフ弁(比例弁
24 比例リリーフ弁(比例弁)
26 制御部
28 磁歪センサ(ストローク検出手段)
30 設定部
【要約】
【課題】 低コストでダイクッション装置のダイクッションの昇降制御を可能とする。
【解決手段】 プレス機械のスライド8の下方にダイクッションパッド14が配置され、パット14を支持している油圧シリンダ18がプレス機械のワーク10の成形加工時にパッド14と共に昇降する。ワーク10の成形加工時にシリンダ18のストロークを磁歪センサ28が検出する。ワーク10の成形加工時におけるパッド14の複数のストローク範囲と、これらにそれぞれ対応するパッド14の上昇または下降の方向と、油圧シリンダ18の圧力とが、設定部30に設定されている。磁歪センサ28が検出したストロークに基づいて、制御部26が、油圧シリンダの上昇または下降の方向を判定し、判定された方向と検出されたストロークとに応じた圧力を設定部30から読みだして、その圧力をシリンダ18に供給するように、油圧シリンダ18に設けた比例弁22を制御する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6