(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185654
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ブレーキ・パッド・プリロードばねを備えるディスク・ブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/097 20060101AFI20170814BHJP
F16D 65/095 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
F16D65/097 D
F16D65/095 B
F16D65/097 A
F16D65/097 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-511012(P2016-511012)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-516968(P2016-516968A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014058346
(87)【国際公開番号】WO2014177451
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】1354036
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513084458
【氏名又は名称】シャシー・ブレークス・インターナショナル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メリアン、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ、アンドレ
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−247054(JP,A)
【文献】
特開2012−163218(JP,A)
【文献】
特開2011−208664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ディスク・ブレーキであって、
全体として垂直の向き(V)の少なくとも2つの対向するアーム(14F、14B)を備えるキャリア(11)であって、前記2つの対向するアーム(14F、14B)が、前方アーム(14F)及び後方アーム(14B)から構成され、前記2つの対向するアーム(14F、14B)の各々が、
それぞれ前記対向するアーム(14B、14F)に向かって水平方向に開いており、全体として水平の向きの上側面(32F、32B)及び下側面(34F、34B)によって境界を画定される、C形断面軸線方向ハウジング(16F、16B)と、
前記ハウジング(16F、16B)の下に構成される、全体として垂直の向き(V)の軸線方向軸受面(20F、20B)と
を備える、キャリア(11)と、
少なくとも1つのブレーキ・パッド(12)であって、
2つの対向する側方設置ラグ(26F、26B)であって、前記2つの対向する側方設置ラグ(26F、26B)が、前方側方設置ラグ(26F)及び後方側方設置ラグ(26B)から構成され、前記2つの対向する側方設置ラグ(26F、26B)の各々が、前記キャリア(11)の前記2つの対向するアーム(14F、14B)のうちの関連付けられたアームの関連付けられたハウジング(16F、16B)内で横方向クリアランスを有するように収容され、全体として水平の向き(L)の上側ファセット(36F、36B)によって境界を画定される、2つの対向する側方設置ラグ(26F、26B)と、
当接ファセットと称される、各側方設置ラグ(26F、26B)に関連付けられた垂直の向きの下側ファセット(38F、38B)と
を備える、少なくとも1つのブレーキ・パッド(12)と、
前記ブレーキ・パッド(12)の各側方設置ラグ(26F、26B)のための、それぞれ前方パッド誘導ばね(40F)及び後方パッド誘導ばね(40B)であって、前記前方パッド誘導ばね(40F)及び前記後方パッド誘導ばね(40B)の各々が、前記ブレーキ・パッド(12)の前記2つの対向する側方設置ラグ(26F、26B)のうちの関連付けられた側方設置ラグに対して固着され、少なくとも1つの摺動下側ブランチ(42F、42B)を備え、前記少なくとも1つの摺動下側ブランチが前記関連付けられたハウジング(16F、16B)の前記下側面(34F、34B)と協働し、前記関連付けられたハウジング(16F、16B)の前記上側面(32F、32B)に対して垂直上向きに押圧させるように前記関連付けられた側方設置ラグ(26F、26B)の前記上側ファセット(36F、36B)を付勢する、前方パッド誘導ばね(40F)及び後方パッド誘導ばね(40B)と、
車両の関連付けられたホイールと一体となって回転するブレーキ・ディスクであって、前記キャリア(11)に対して横方向の平面内を延在し、2つの対向する環状制動軌道を備え、制動時に前記環状制動軌道のうちの1つに対して前記ブレーキ・パッド(12)が押圧される、ブレーキ・ディスクと、
前記キャリア(11)の各アーム(14F、14B)のための、ばね鋼で製造されたそれぞれ前方ラメラ要素(22F)及び後方ラメラ要素(22B)であって、前方ラメラ要素(22F)及び後方ラメラ要素(22B)の各々が、少なくとも
前記関連付けられたハウジング(16F、16B)に収容され、前記関連付けられたハウジング(16F、16B)をブロックするC形断面軸線方向上側摺動部分(52F、52B)であって、各パッド誘導ばね(40F、40B)の前記摺動下側ブランチ(42F、42B)と前記キャリア(11)の前記ハウジング(16F、16B)の前記下側面(34F、34B)との間に挿置された、摺動フランジと称される全体として実質的に水平の向きの下側の第1のフランジ(24F、24B)と、前記ブレーキ・パッド(12)の前記関連付けられた側方設置ラグ(26F、26B)の前記上側ファセット(36F、36B)と前記関連付けられたハウジング(16F、16B)の前記上側面(32F、32B)との間に挿置された、垂直軸受フランジと称される全体として水平の向きの上側の第2のフランジ(25F、25B)とを備える、C形断面軸線方向上側摺動部分(52F、52B)と、
全体として垂直の向き(V)の前記摺動フランジ(24F、24B)を延長させ、前記関連付けられたアーム(14F、14B)の前記軸線方向軸受面(20F、20B)に接触するように配置され、前記ブレーキ・パッド(12)の前記関連付けられた下側ファセット(38F、38B)のための横方向エンド・ストップとして機能することができる、横方向軸受フランジと称される第3のフランジ(28F、28B)を備える少なくとも1つの軸線方向下側軸受部分(54F、54B)と
を備える、前方ラメラ要素(22F)及び後方ラメラ要素(22B)と
を備え、
前進ギヤで駆動されている前記車両を制動させる場合において前記ブレーキ・パッドが前記ブレーキ・ディスクに対して押圧されるときに、前記前方アームの前記軸線方向軸受面(20F)が、前記ブレーキ・パッド(12)の前記前方側方設置ラグ(26F)の前記下側ファセット(38F)のための横方向エンド・ストップを形成することができ、
前記自動車ディスク・ブレーキが、前記ブレーキ・パッド(12)に接線方向において予め荷重を加えるための少なくとも1つの接線方向プリロードばね(60B)を備え、前記接線方向プリロードばねが、前記後方アーム(14B)と前記ブレーキ・パッド(12)との間に挿置され、全体として水平の方向(DF)で前記ブレーキ・パッドを後方から前方へと常に付勢し、それにより、前記ブレーキ・パッド(12)に加えられる制動力が一切存在しない場合、前記ブレーキ・パッド(12)の前記前方側方設置ラグ(26F)の前記下側ファセット(38F)と前記前方ラメラ要素(22F)の前記横方向軸受フランジ(28F)との間に所定の小さいクリアランス(JF)が画定される
ことを特徴とする自動車ディスク・ブレーキ。
【請求項2】
前記接線方向プリロードばね(60B)が、前記後方アーム(14B)と、前記ブレーキ・パッド(12)に対向して付随する関連部分(62B)との間で圧縮される状態で設置される、ことを特徴とする請求項1に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項3】
前記接線方向プリロードばね(60B)が、前記後方ラメラ要素(22B)と共に単一部品として形成された弾性的に変形可能なリーフである、ことを特徴とする請求項2に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項4】
前記ブレーキ・パッド(12)が、前記後方側方設置ラグ(26B)の上方に位置する、垂直の向きのプリロード・ファセットと称される上側ファセット(62B)を備え、前記弾性的に変形可能なリーフ(60B)が全体として垂直の向きであり、前記後方ラメラ要素(22B)の前記垂直軸受フランジ(25B)を上方に延長させ、前記ブレーキ・パッド(12)の前記プリロード・ファセット(62B)と協働する、ことを特徴とする請求項3に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項5】
前記弾性的に変形可能なリーフ(60B)が、前記後方ラメラ要素(22B)の前記垂直軸受フランジ(25B)を上方に延長させる後方ブランチ(64B)と、前記ブレーキ・パッド(12)の前記プリロード・ファセット(62B)と協働する前方ブランチ(66B)とを備える、ヘアピン形状のリーフである、ことを特徴とする請求項4に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項6】
前記前方ブランチ(66B)が、ドーム形外形の下側自由端セクション(68B)を備え、前記下側自由端セクションの凸面(70B)が、前記ブレーキ・パッド(12)の前記プリロード・ファセット(62B)と協働する、ことを特徴とする請求項5に記載のディスク・ブレーキ。
【請求項7】
前記後方ブランチ(64B)が、前記後方アーム(14B)に対向して付随する相補的な部分(72B)と協働し、それにより、前記後方アーム(14B)を基準として前記後方ラメラ要素(22B)が軸線方向において固定化される、ことを特徴とする請求項5に記載のディスク・ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ディスク・ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は自動車ディスク・ブレーキに関し、この自動車ディスク・ブレーキが:
− それぞれ後方及び前方の、全体として垂直の向きの少なくとも2つの対向するアームを備えるキャリアであって、少なくとも2つのアームの各々が:
・対向するアームに向かって水平方向に開いており、全体として水平の向きの上側面及び下側面によって境界を画定される、C形断面軸線方向ハウジングと;
・ハウジングの下に構成される、全体として垂直の向きの軸線方向軸受面と
を備える、キャリアと;
− 少なくとも1つのブレーキ・パッドであって:
・それぞれ後方及び前方の2つの対向する側方設置ラグ(mounting lug)であって、これらの設置ラグの各々が、キャリアの関連付けられたそれぞれ後方アーム及び前方アームの関連付けられたハウジング内で横方向クリアランスを有するように収容され、全体として水平の向きの上側ファセット(facet)によって境界を画定される、2つの対向する側方設置ラグと;
・当接ファセットと称される、各ラグに関連付けられた垂直の向きのファセットと
を備える、少なくとも1つのブレーキ・パッドと;
− ブレーキ・パッドの各ラグのための、それぞれ後方及び前方のブレーキ・パッド誘導ばね(brake pad guiding spring)であって、ブレーキ・パッドのそれぞれ後方及び前方の関連付けられたラグに対して固着され、少なくとも1つの摺動下側ブランチを備え、この少なくとも1つの摺動下側ブランチが関連付けられたハウジングの下側面と協働し、関連付けられたハウジングの上側面に対して垂直上向きに押圧させるようにラグの上記上側ファセットを付勢する、ブレーキ・パッド誘導ばねと;
− 車両の関連付けられたホイールと一体となって回転するブレーキ・ディスクであって、キャリアに対して横方向の平面内を延在し、2つの対向する環状制動軌道(annular braking track)を備え、制動時にこれらの環状制動軌道のうちの1つに対して上記ブレーキ・パッドが押圧される、ブレーキ・ディスクと;
− キャリアの各アームのための、ばね鋼で作られるそれぞれ後方及び前方のラメラ要素(lamellar element)であって、少なくとも:
・関連付けられたハウジングに収容され、関連付けられたハウジングをブロックするC形断面軸線方向上側摺動部分であって、パッド・スプリングの摺動ブランチとキャリアのハウジングの下側面との間に挿置される、摺動フランジと称される全体として実質的に水平の向きの下側の第1のフランジと、ブレーキ・パッドの関連付けられたラグの上側ファセットと関連付けられたハウジングの上側面との間に挿置される、垂直軸受フランジと称される全体として水平の向きの上側の第2のフランジとを備える、C形断面軸線方向上側摺動部分と;
・全体として垂直の向きの摺動フランジを延長させ、関連付けられたアームの横方向軸受面に接触するように配置され、ブレーキ・パッドの関連付けられた下側ファセットのための横方向エンド・ストップ(end stop)として機能することができる、横方向軸受フランジと称される第3のフランジを備える少なくとも1つの軸線方向下側軸受部分と
を備える、ラメラ要素と
を備え、
ここでは、前進ギヤで駆動されている車両を制動させる場合においてブレーキ・パッドがブレーキ・ディスクに対して押圧されるときに、前方アームの横方向軸受面がブレーキ・パッドの前方ラグのエンド・ストップ・ファセット(end stop facet)のための横方向エンド・ストップを形成することができる。
【0003】
このタイプのディスク・ブレーキは従来技術により知られている。
【0004】
このようなディスク・ブレーキでは、ブレーキ・パッドがパッド・スプリングを介してキャリア内に摺動可能に設置される。
【0005】
このように、制動時に、ブレーキ・パッドが、少なくとも1つのブレーキ・ピストンによって加えられる力の作用を受けながら、キャリア内を軸線方向に移動することができる。
【0006】
また、ブレーキ・パッドは、摩擦ライニングとブレーキ・ディスクの関連付けられた環状面とを接触させることの結果としてブレーキ・パッドの摩擦ライニング(friction lining)に作用する摩擦力を介して加えられる接線方向の力又は荷重を受けることから、横方向にも移動することができる。
【0007】
ブレーキ・パッドを軸線方向に移動させるのを可能にするために、ブレーキ・パッドとキャリアとの間に横方向の機能的クリアランスが存在する。このクリアランスの目的は、ブレーキ・パッドの踏みつけを防止し、ブレーキ・パッドを軸線方向に適切に摺動させるのを可能にすることである。
【0008】
この横方向の機能的クリアランスは制動時にブレーキ・パッドによって覆われる。このクリアランスが大きくなると、休止状態から制動状態へと切り替えられるときにブレーキ・パッドによって蓄積される運動エネルギーが増大する。この運動エネルギーは、後退ギヤから前進ギヤへと又はその逆でシフトされるときにさらに増大する。
【0009】
ブレーキ・パッド内に保存されるエネルギーはブレーキ・パッドとキャリアとの間での接触時に解放され、車両の運転手に可聴の付随的ノッキング・ノイズを発生させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この欠点を克服するために、本発明は、ブレーキ・パッドとラメラ要素との間のクリアランスを縮小させるために前方ラメラ要素の方に向かって弾性的に付勢されるブレーキ・パッドを提案し、この目的は、ある状態から別の状態へと移行するときにブレーキ・パッドによって保存されるエネルギーの量を低減すること及びそれによりノッキング・ノイズを低減することである。
【0011】
本発明はまた、後方ラメラ要素の方に向かって反対側の横方向に移動するときにブレーキ・パッドを減衰させるのを可能にする。
【0012】
本発明は、本明細書において上で説明したタイプのディスク・ブレーキを提案することによりこの欠点を克服し、このディスク・ブレーキがブレーキ・パッドに接線方向において予め荷重を加えるための少なくとも1つの接線方向プリロードばねを備え、接線方向プリロードばねがアームとブレーキ・パッドとの間に挿置され、全体として水平の方向でブレーキ・パッドを後方から前方へと常に付勢し、それにより、ブレーキ・パッドに加えられる制動力が一切存在しない場合、ブレーキ・パッドの関連付けられたエンド・ストップ・ファセットと前方ラメラ要素の横方向軸受フランジとの間に所定の小さいクリアランスが画定される、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の特徴によると、
− 上記ブレーキ・パッド接線方向プリロードばねが、後方アームと、ブレーキ・パッドに対向して付随する関連部分との間で圧縮される状態で設置され、
− 上記ブレーキ・パッド・プリロードばねが、後方ラメラ要素と共に単一部品として形成される弾性的に変形可能なリーフであり、
− ブレーキ・パッドが、後方側方ラグの上方に位置する、垂直の向きのプリロード・ファセット(preload facet)と称される上側ファセットを備え、上記弾性的に変形可能なリーフが全体として垂直の向きであり、後方ラメラ要素の垂直軸受フランジを上方に延長させ、ブレーキ・パッドの上記プリロード・ファセットと協働し、
− 上記弾性的に変形可能なリーフが、後方ラメラ要素の垂直軸受フランジを上方に延長させる後方ブランチと、ブレーキ・パッドの上記プリロード・ファセットと協働する前方ブランチとを備える、ヘアピン形状のリーフであり、
− 上記前方ブランチがドーム形外形の下側自由端セクションを備え、この下側自由端セクションの凸面がブレーキ・パッドの上記プリロード・ファセットと協働し、
− 上記後方ブランチが、後方アームに対向して付随する相補的な部分と協働し、それにより、後方アームを基準として後方ラメラ要素が軸線方向において固定化される。
【0014】
添付図面を参照することによって理解される以下の詳細な説明を読むことにより本発明の他の特徴及び利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来技術によるディスク・ブレーキのキャリア内でのブレーキ・パッドの設置を示す軸線方向端面図(axial end−on view)であり、ここでは、車両が前進ギヤのときに制動力を加える位置でブレーキ・パッドが描かれる。
【
図2】
図1と同様の図であり、ここでは、車両が後退ギヤのときに制動力を加える位置でブレーキ・パッドが描かれる。
【
図3】本発明によるディスク・ブレーキのキャリア内でのブレーキ・パッドの設置を示す、
図1と同様の図である。
【
図4】描かれる本発明によるディスク・ブレーキのキャリア内でのブレーキ・パッドの設置を示す、
図2と同様の図である。
【
図5】本発明による、プリロードばねを備える後方ラメラ要素を示す斜視図である。
【
図6】本発明によるディスク・ブレーキの後方アーム内でのブレーキ・パッドの設置を示す詳細な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本記述及びその後の特許請求の範囲では、図に描かれる二面からなる座標系(L,T,V)を基準とする及び本記述で与えられる定義を基準とする「軸線方向」、「横方向」及び「垂直」の向きなどの表現は非限定的に使用され、これらは地球重力場を基準としない。
【0017】
同一の参照符号は、同じ構成要素又は同様の機能を有する構成要素を示す。
【0018】
本記述では、添字「F」及び「B」は、慣例に従い、本発明の主題を形成するディスク・ブレーキのブレーキ・ディスクの前進及び後退の回転方向に方向付けられる構成要素に対してそれぞれ付され、これらは、1つのホイールにこのディスク・ブレーキを装備するような自動車の前進ギヤでの走行方向及び後退ギヤでの走行方向にそれぞれ関連するディスクの回転方向に対応する。
【0019】
図1が、従来技術の1つの形態による、ディスク・ブレーキ10のキャリア11内に設置されるブレーキ・パッド12を描く。
【0020】
ブレーキ・パッド12が、ブレーキ・ディスクの前方及び後方への回転方向を基準としてそれぞれ方向付けられる2つの対向するラグ26
F及び26
Bを備える。
【0021】
既知の手法では、キャリア11が、実質的に平行で全体として垂直の向き”V”の2つの対向するアーム14
F及び14
Bを備え、これらの2つの対向するアームの14
F及び14
Bの各々が、対向するアーム14
B、14
Fの方に向かって水平方向に開いているC形断面を有する、軸線方向の方向”L”で方向付けられるハウジング16
F、16
Bを備える。
【0022】
各ハウジング16
F、16
Bが、全体として水平の向きの上側面18
F、18
Bと、全体として水平の向きの平行な下側面20
F、20
Bとを備える。
【0023】
ハウジング16
F、16
Bがばね鋼で作られるラメラ要素22
F、22
Bを受け入れて収容し、これらのラメラ要素22
F、22
Bが、ブレーキ・パッド12のラグ26
F、26
Bとハウジング16
F、16
Bの上側面18
F、18
Bとの間に挿置される、全体として水平の向きの摺動及び支承のための少なくとも1つの上側フランジ24
F、24
Bと、ブレーキ・パッド12のラグ26
F、26
Bと垂直方向面20との間に挿置される垂直の向きの垂直軸受フランジ28
F、28
Bと、ブレーキ・パッド12のラグ26
F、26
Bの下に配置される弾性保持フランジ30
F、30
Bとを備える。
【0024】
このタイプのブレーキでは、ブレーキ・パッド12が、ばね鋼で作られるラメラ要素22
F、22
Bを介してキャリア11内に摺動可能に設置される。
【0025】
ブレーキ・パッド12を軸線方向に移動させるのを可能にするために、ブレーキ・パッド12のラグ26
F、26
Bと、キャリア11のアーム14
F、14
B内に収容されるばね鋼で作られるラメラ要素22
F、22
Bとの間に、横方向の機能的クリアランスが存在する。
【0026】
図1に示されるように、ディスクが前進”F”の回転方向で回転するとき、ブレーキ・パッド12が矢印D
Fの方向に移動させられ、ラグ26
Fとラメラ要素22
Fの垂直軸受フランジ28
Fとの間のクリアランスを覆う。
【0027】
図2に示されるように、ディスクが後退”B”の回転方向で回転するとき、ブレーキ・パッド12が矢印D
Bの方向に移動し、ラグ26
Bとラメラ要素22
Bの垂直軸受フランジ28
Bとの間のクリアランスを覆う。
【0028】
ラメラ要素22
F、22
Bのフランジ28
F、28
Bは、ブレーキ・パッド12を減衰させること並びにブレーキ・パッドとキャリアの対応するアームとの間での接触時にブレーキ・パッド内に保存されるエネルギーが解放されるのを防止することを目的として、回転方向に応じて荷重R
F又はR
Bを加えるための横方向のスティフネスを有する。
【0029】
しかし、このようなディスク・ブレーキはブレーキ・パッド12の安定性の問題と考えられてよい問題を有しており、このようなセットアップでは、ブレーキ・パッド12とキャリア11との間での接触時にどのくらいの大きさのトルクが発生するかを高い信頼性で繰り返し決定することが不可能である。
【0030】
横方向のスティフネスを低減するために、既知の手法において、摺動フランジ24
F、24
B及び水平支持フランジからラメラ要素22
F、22
Bの垂直軸受フランジ28
F、28
Bを分離させることが提案されている。
【0031】
このデザインを用いることにより、
図3及び4に描かれるように、前方アーム14
F及び後方アーム14
Bの各々が、対向する後方アーム14
B又は前方アーム14
Fの方に向かって水平方向に開いているC形断面軸線方向ハウジング16
F、16
Bを備え、これは、全体として水平の向きの上側面32
F、32
B及び下側面34
F、34
Bによって境界を画定される。
【0032】
アームはまた、対応するアーム14
F、14
Bのハウジング16
F、16
Bの下に配置される全体として垂直の向きの軸線方向軸受面20
F、20
Bを備える。
【0033】
図3及び4に描かれるように、各ブレーキ・パッド12の各ラグ26
F、26
Bは、全体として水平の向きの上側ファセット36
F、36
Bによって境界を画定される。
【0034】
さらに、垂直の向きの下側ファセット38
F、38
Bが、関連付けられた側方ラグ26
F、26
Bの下に位置する。
【0035】
ブレーキ・パッドには2つの同様のパッドばね40
F、40
Bが備え付けられ、これらは各々がブレーキ・パッド12の関連付けられたラグ26
F、26
Bに対して固着される。
【0036】
各パッドばね40
F、40
Bが、関連付けられたハウジングの下側面34
F、34
Bと協働して関連付けられたハウジングの上側面32
F、32
Bに対して垂直上向きに押圧するようにラグ26
F、26
Bの上側ファセット36
F、36
Bを付勢する、摺動のための少なくとも1つの下側ブランチ42
F、42
Bを備える。
【0037】
図3、4及び6が示すように、このようなパッドばね40
F、40
Bは一般に「渦巻ばね」と呼ばれ、これは、本発明を限定するわけではないが、対応するラグ26
F、26
Bに対してパッドばね40
F、40
Bを固着させるためにブレーキ・パッドのラグ26
F、26
Bを弾性的にクランプするクリップ46
F、46
Bを備える。
【0038】
ラグ26
Bを例として描いている
図6に示されるように、このようなパッドばね40
Bは、クリップ46
Bを摺動下側ブランチ42
Bに接続させる湾曲ブランチ48
Bをさらに備える。この湾曲ブランチ48
Bは、主として、その弾性をパッド・スプリングに与える。
【0039】
さらに、ラグ26
F、26
Bが、キャリア11の各アーム14
F、14
Bに関連付けられたばね鋼で製造されたラメラ要素22
F、22
Bの介入により、ハウジング16内に受け入れられる。
【0040】
図3から5でより具体的に示されるように、各ラメラ要素22
F、22
Bは、水平方向に開いているC形状断面の、摺動部分と称される、軸線方向の向きの上側部分52
F、52
Bを備える。
【0041】
各上側部分は関連付けられたハウジング16
F、16
B内に受け入られてその中でロックされ、また、パッドばね40
F、40
Bの摺動ブランチ42
F、42
Bとキャリア11のハウジング16
F、16
Bの下側面34
F、34
Bとの間に挿置される全体として実質的に水平の向きの摺動のための下側の第1のフランジ24
F、24
Bを備える。
【0042】
各上側部分52
F、52
Bが、ブレーキ・パッド12の関連付けられたラグ26
F、26
Bの上側ファセット36
F、36
Bと、関連付けられたハウジング16
F、16
Bの上側面32
F、32
Bとの間に挿置される全体として水平の向きの上側の第2の垂直軸受フランジ25
F、25
Bを備える。
【0043】
各ラメラ要素22
F、22
Bが軸線方向の向きの少なくとも1つの下側軸受部分54
F、54
Bをさらに備え、これらの少なくとも1つの下側軸受部分54
F、54
Bが第3の横方向軸受フランジ28
F、28
Bを備え、これらの第3の横方向軸受フランジ28
F、28
Bが、摺動フランジ24
F、24
Bを延長させ、摺動フランジ24
F、24
Bの平面に直交する平面内を延在し、対応するアーム14
F、14
Bの横方向軸受面20
F、20
Bに接触するように配置され、ブレーキ・パッド12の関連付けられた下側ファセット38
F、38
Bのための横方向エンド・ストップを構成することができる。
【0044】
具体的には、前進ギヤで移動している車両の制動時にブレーキ・パッドがブレーキ・ディスクに対して押圧されてそれによりパッドが前方アームの方向に横方向に移動するとき、前方アームの横方向軸受面20
Fが、ブレーキ・パッド12の前方ラグ26
Fのエンド・ストップ・ファセット38
Fのための横方向エンド・ストップを形成することができる。
【0045】
下側の第1の摺動フランジ24
F、24
Bの各々が、この事例では下側の第1のフランジ24
F、24
Bの中で切断される固定用突起部(anchoring tongue)56
F、56
Bをさらに備え、これらは下方向に突出してハウジング16の下側面34
F、34
Bと協働し、それにより、
図3及び4に示されるようにハウジング16のこれらの下側面34
F、34
B内で固定用突起部56
F、56
B自体が固定される。
【0046】
このタイプのブレーキでは、ばね40
F、40
Bは垂直方向の荷重を加えることから、ラグ26
F、26
Bとハウジング16
F、16
Bとの間の横方向クリアランスを縮小させること、又は、ブレーキ・パッド12の横方向の移動を減衰させることは不可能である。
【0047】
パッド接線方向プリロードばねと称されるばね60
Bが、全体として水平の接線方向において後方から前方へとすなわち
図3の矢印D
Fの方向にブレーキ・パッド12を常に付勢するために、この事例では後方アーム14
Bであるアームとブレーキ・パッド12との間に挿置され、その結果、ブレーキ・パッド12に加えられる制動荷重が存在しない状態で、ブレーキ・パッド12の関連付けられたエンド・ストップ・ファセット38
Fと前方ラメラ要素の横方向軸受フランジ28
Fとの間に縮小される所定のクリアランス”J
F”が画定される。
【0048】
図に示される本発明の実施例では、ブレーキ・パッド12の接線方向プリロードばね60
Bは、後方アーム14
Bと、ブレーキ・パッド12の後方側方部分に対向して付随する関連部分62
Bとの間で圧縮される状態で設置されるばねである。
【0049】
有利には、ブレーキ・パッド12が、後方側方ラグの上方に位置する垂直の向きのプリロード・ファセットと称される上側ファセットを備え、これが、ばね60
Bに対向するブレーキ・パッドの部分62
Bを形成する。
【0050】
ばね60
Bの信頼性を最適にするために、及び、特には、ばねが偶発的に引き抜かれるリスクを一切回避するために、ブレーキ・パッド接線方向プリロードばね60
Bは、ここでは、
図3から5に示されるように、後方ラメラ要素22
Bと共に単一部品として形成される弾性的に変形可能なリーフから構成される。
【0051】
弾性的に変形可能なリーフ60
Bは全体として垂直の向きであり、後方ラメラ要素の垂直軸受フランジ25
Bを上方に延長させ、ブレーキ・パッド12のプリロード・ファセット62
Bと協働する。
【0052】
図5に示されるように、ヘアピンの形状となるようにリーフ60
Bを成形することにより、弾性的に変形可能なリーフ60
Bの最高の耐疲労抵性が得られる。
【0053】
したがって、リーフ60
Bは、後方ラメラ要素22
Bの垂直軸受フランジ25
Bを上方に延長させる後方ブランチ64
Bと、ブレーキ・パッド12のプリロード・ファセット62
Bと協働する前方ブランチ66
Bとを備える。
【0054】
図5により具体的に示されるように、前方ブランチ66
Bは、ドーム形外形の下側自由端セクション68
Bを有し、この下側自由端セクション68
Bの凸面70
Bがブレーキ・パッド12のプリロード・ファセット62
Bと協働し、それにより特には、接触圧力が低減され、したがって、ブレーキ・パッドの良好な軸線方向の摺動に悪影響を与えやすい摩擦荷重が低減されるようになり、また、ブランチ66
Bとパッド12との間の接触が高い精度で位置決めされるようになる。
【0055】
後方アーム14
Bを基準として後方ラメラ要素22
Bを軸線方向において固定化するために、後方ブランチ64
Bが、後方アーム14
Bに対向して付随する相補的な部分72
Bと協働することが好都合には留意されよう。
【0056】
具体的には、後方アーム14
Bの相補的な部分72
Bがスタッドとして構成され、プリロードばね60
Bの後方ブランチ64
Bが後方ブランチ64
Bから後方へと実質的に水平に延在する2つのタブ74
Bを備え、2つの対向するタブ74
Bと協働する軸線方向エンド・ストップを構成するようにスタッド状部分72
Bを握持する。
【0057】
図3に示されるように前進ギヤの場合にブレーキ・パッド12が制動時にD
Fに移動するように付勢されるとき、プリロードばね60
Bが、ブレーキ・パッド12の関連付けられたエンド・ストップ・ファセット38
Fと前方ラメラ要素の横方向軸受フランジ28
Fとの間のクリアランスJ
Fを縮小させるのを可能にする。
【0058】
図5に示されるように、プリロードばね60
Bはアーム14
Bに逆らってブレーキ・パッド12が方向D
Bに戻るのを減衰させることも可能にし、ここでは、このように戻ろうとすることは制動荷重が単に解放されることの結果であるか、又は、最も極端な場合では、後退ギヤから前進ギヤへシフトされることに伴って制動荷重が解放されることの結果である。
【0059】
本発明は、キャリア11内でのブレーキ・パッド12の移動によって発生するノイズを大幅に低減するのを可能にし、同時にパッド12の動作安定性も維持させる。
【0060】
プリロードばね60
Bのスティフネスは、有利には、前進ギヤと後退ギヤとの間で方向を切り替えるときのパッド12の移動速度を設定するのに十分となるように、選択される。
【0061】
また、プリロードばね60
Bのスティフネスは、弱い制動時でも、ラメラ要素22
Bの第3の横方向軸受フランジ28
Bを介してブレーキ・パッド12の下側ファセット38
Bとアーム14
Bの横方向軸受面20
Bとを接触させることができるくらいに十分に低くなるように選択される。