(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185674
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物及びテクスチャーエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20170814BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/308 B
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-553389(P2016-553389)
(86)(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公表番号】特表2017-509152(P2017-509152A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2015000934
(87)【国際公開番号】WO2015133730
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0027375
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0031098
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】リム, デ スン
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ヒュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ミュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ヒュン スブ
【審査官】
正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−139023(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/058477(WO,A2)
【文献】
特開2010−141139(JP,A)
【文献】
特開2005−019605(JP,A)
【文献】
特表2006−516067(JP,A)
【文献】
特開2011−205058(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0081742(US,A1)
【文献】
特表2014−534630(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0151671(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/002502(WO,A2)
【文献】
国際公開第2004/025718(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02372779(EP,A2)
【文献】
国際公開第2013/089338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
H01L 31/0236
H01L 31/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化合物及び下記化学式1の化合物を含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【化1】
(式中、Rは炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基であり、Xは互いに独立的に水素又はメチル基であり、yは1乃至3の整数であり、Mはアルカリ金属である。)
【請求項2】
請求項1において、前記Mは、ナトリウム又はカリウムである、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項3】
請求項1において、前記アルカリ化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム及びテトラヒドロキシエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つである、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項4】
請求項1において、前記エッチング液組成物は、多糖類を更に含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項5】
請求項4において、前記多糖類は、グルカン系化合物、フルクタン系化合物、マンナン系化合物、ガラクタン系化合物及びこれらの金属塩からなる群から選択される少なくとも一つである、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項6】
請求項4において、前記多糖類は、セルロース、ジメチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、4-アミノベンジルセルロース、トリエチルアミノエチルセルロース、シアノエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、澱粉、デキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸ナトリウム、サポニン、グリコーゲン、ザイモサン、レンチナン、シゾフィラン及びこれらの金属塩からなる群から選択された1種以上のグルカン系化合物である、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項7】
請求項1において、前記アルカリ化合物0.5乃至5重量%、前記化学式1の化合物0.001乃至5重量%及び残量の水を含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項8】
請求項7において、前記エッチング液組成物は、多糖類0.0001乃至2重量%を更に含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のエッチング液組成物による結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
【請求項10】
請求項9において、前記エッチング液組成物を50乃至100℃の温度で、30秒乃至60分間噴霧させることを含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
【請求項11】
請求項9において、前記エッチング液組成物に前記ウェーハを50乃至100℃の温度で、30秒乃至60分間浸漬させる、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性シリコンウェーハ表面の位置別テクスチャー品質偏差を最小限に抑え、エッチング中の温度勾配が発生しない結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物及びテクスチャーエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近になって急速に普及されている太陽電池は、次世代のエネルギー源として、クリーンエネルギーである太陽エネルギーを直接電気に変換する電子素子である。太陽電池は、シリコンにホウ素を添加したP型シリコン半導体を基にその表面に燐を拡散させ、N型シリコン半導体層を形成させたPN接合半導体基板として構成されている。
【0003】
PN接合により電界が形成された基板に太陽光のような光を照射させると、半導体内の電子(−)と正孔(+)が励起され、半導体内部を自由に移動する状態になり、このようなPN接合によって生じた電界に入ってくると電子(−)はN型半導体に、正孔(+)はP型半導体に至るようになる。P型半導体とN型半導体の表面に電極を形成し、電子を外部回路へ流すと、電流が発生することになる。このような原理で、太陽エネルギーが電気エネルギーに変換される。従って、太陽エネルギーの変換効率を高めさせるためには、PN接合半導体基板の単位面積当たりの電気出力を最大化させなければならない。そのために、反射率は低くし、光吸収量は最大化させなければならない。このような面を考慮し、PN接合半導体基板を構成する太陽電池用シリコンウェーハの表面を微細ピラミッド構造に形成させ、反射防止膜を処理している。微細ピラミッド構造にテクスチャーされたシリコンウェーハの表面は、広い波長帯を有する入射光の反射率を下げ、既に吸収された光の強度を増加させることで、太陽電池の性能、即ち、効率を向上させることができる。
【0004】
シリコンウェーハの表面を微細ピラミッド構造にテクスチャーする方法として、米国特許第4,137,123号には、0〜75体積%のエチレングリコール、0.05〜50重量%の水酸化カリウム及び残量の水を含んだ異方性エッチング液に、0.5〜10重量%のシリコンが溶解されたシリコンテクスチャーエッチング液が開示されている。しかし、このエッチング液はピラミッドの形成不良を起こし、光反射率を増加させ、効率の低下を招く可能性がある。
【0005】
また、韓国登録特許第0180621号には、水酸化カリウム溶液0.5〜5体積%、イソプロピルアルコール3〜20体積%、脱イオン水75〜96.5体積%の割合で混合されたテクスチャーエッチング溶液が開示され、米国特許第6,451,218号には、アルカリ化合物、イソプロピルアルコール、水溶性アルカリ性エチレングリコール及び水を含んだテクスチャーエッチング溶液が開示されている。しかし、これらのエッチング溶液は、沸点が低いイソプロピルアルコールを含んでいることから、テクスチャー工程中にこれを追加投入する必要があるため、生産性とコストの面で経済的では無い。また、追加投入されたイソプロピルアルコールからなるエッチング液の温度勾配が発生し、シリコンウェーハ表面の位置別テクスチャー品質偏差が大きくなり、均一性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,137,123号
【特許文献2】韓国登録特許第0180621号
【特許文献3】米国特許第6,451,218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、結晶性シリコンウェーハの表面に微細ピラミッド構造を形成する場合において、シリコン結晶方向に対するエッチング速度の差を制御し、アルカリ化合物による過エッチングを防止することで位置別テクスチャー品質偏差を最小化し、光効率を増加させる結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、前記結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物を用いた結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法を提供することを他の目的とする。
【0009】
更に、本発明は、エッチング工程中、別のエッチング液成分の投入とエアレーティング(Aerating)工程の適用を必要としない結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.アルカリ化合物及び下記化学式1の化合物を含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
【0011】
【化1】
(式中、Rは炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基であり、Xは互いに独立的に水素又はメチル基であり、yは1乃至3の整数であり、Mはアルカリ金属である。)
2.前記1において、前記Mは、ナトリウム又はカリウムである、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
3.前記1において、前記アルカリ化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム及びテトラヒドロキシエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つである、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
4.前記1において、前記エッチング液組成物は、多糖類を更に含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
5.前記4において、前記多糖類は、グルカン系化合物、フルクタン系化合物、マンナン系化合物、ガラクタン系化合物及びこれらの金属塩からなる群から選択される少なくとも一つである結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
6.前記4において、前記多糖類は、セルロース、ジメチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、4-アミノベンジルセルロース、トリエチルアミノエチルセルロース、シアノエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、澱粉、デキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸ナトリウム、サポニン、グリコーゲン、ザイモサン、レンチナン、シゾフィラン及びこれらの金属塩からなる群から選択された1種以上のグルカン系化合物である、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
7.前記1において、前記アルカリ化合物0.5乃至5重量%、前記化学式1の化合物0.001乃至5重量%及び残量の水を含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
8.前記7において、前記エッチング液組成物は、多糖類0.0001乃至2重量%を更に含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物。
9.前記1乃至8のいずれか1つに記載のエッチング液組成物による結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
10.前記9において、前記エッチング液組成物を50乃至100 ℃の温度で、30秒乃至60分間噴霧させることを含んだ、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
11.前記9において、前記エッチング液組成物に前記ウェーハを50乃至100 ℃の温度で、30秒乃至60分間浸漬させる、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物及びテクスチャーエッチング方法によれば、シリコン結晶方向に対するエッチング速度の差を制御し、アルカリ化合物による過エッチングを防止することにより、結晶性シリコンウェーハ表面の位置別テクスチャーの品質偏差を最小化、つまりテクスチャーの均一性を向上させ、太陽光の吸収量を最大化させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1000倍)の写真である。
【
図2】
図2は、実施例1の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面のSEM写真である。
【
図3】
図3は、実施例2の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面のSEM写真である。
【
図4】
図4は、実施例2の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハの表面写真である。
【
図5】
図5は、実施例3の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面のSEM写真である。
【
図6】
図6は、実施例6の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1000倍)の写真である。
【
図7】
図7は、実施例4の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハの表面写真である。
【
図8】
図8は、比較例1の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面のSEM写真である。
【
図9】
図9は、比較例1の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハの表面写真である。
【
図10】
図10は、比較例3の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハ基板表面のSEM写真である。
【
図11】
図11は、比較例3の結晶性シリコンウェーハのテクスチャー用エッチング液組成物を用いてエッチングさせた単結晶シリコンウェーハの表面写真である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態によるシリコンウェーハの連続エッチング方法を示したフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施例20のエッチング液を使用し、連続エッチングを行った後の初期エッチング工程を経た基板と最終エッチング工程を経た基板の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図14】
図14は、実施例25のエッチング液を使用し、連続エッチングを行った後の最後エッチング工程を経た基板表面を撮影した写真である。
【
図15】
図15は、比較例4のエッチング液を使用し、連続エッチングを行った後の初期エッチング工程を経た基板と最終エッチング工程を経た基板の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図16】
図16は、比較例6のエッチング液を使用し、連続エッチングを行った後の最終エッチング工程を経た表面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルカリ化合物と特定構造のポリエチレングリコール系化合物を含むことにより、結晶性シリコンウェーハの表面に微細ピラミッド構造を形成するに当たり、シリコン結晶方向に対するエッチング速度の差を制御してアルカリ化合物による過エッチングを防止し、位置別テクスチャーの品質偏差を最小化させ、光効率を増加させる結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物及びテクスチャーエッチング方法に関するものである。
【0016】
結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物
本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物は、アルカリ化合物と特定構造のポリエチレングリコール系化合物を含む。
【0017】
本発明において、特定構造のポリエチレングリコール系化合物は、下記化学式1で表示される。
【0018】
【化2】
前記化学式1において、Rは炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基であり、Xは互いに独立的に水素又はメチル基であり、yは1乃至3の整数であり、Mはアルカリ金属である。好ましくは、Mはナトリウム又はカリウムである。
【0019】
本発明による前記化学式1の化合物は、シリコン結晶方向(100)、(111)面に対して、より優れたエッチング速度の制御能力を示す。特に、アルカリ化合物による単結晶シリコンエッチング時に単結晶シリコン表面に吸着され、水酸化基による(100)方向のエッチング速度を抑制し、アルカリ化合物による過エッチングを防止することにより、テクスチャーの品質偏差を最小化する。また、結晶性シリコンウェーハ表面の濡れ性を改善させ、エッチングによって生成された水素バブルをシリコン表面から迅速に取り落とすことにより、バブルスティック現象が発生することを防止し、テクスチャーの品質を向上させることができる。
【0020】
本発明による前記化学式1の化合物の製造方法の一例としては、下記反応式1を挙げることができる。
【0022】
つまり、ポリエチレングリコールとRのエーテル化合物にアルカリ金属やこれらの塩、又は水酸化物を反応させて得ることができる。これらの中で、アルカリ金属やアルカリ金属塩(例えば、アルカリ金属の水素(hydride)化合物)を使用することが、アルカリ金属の水酸化物を使用するよりも未反応物の生成が少ない面でより好ましいと言える。
【0023】
本発明において、化学式1の化合物の含量は、特に制限されないが、例えば、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物の総重量対比0.001乃至5重量%で含まれることができ、好ましくは0.01乃至2重量%で含まれることができる。含量が前記範囲に該当する場合、過エッチングとエッチング加速化を効果的に防止することができる。含量が0.001重量%未満であった場合、アルカリ化合物によるエッチング速度の制御が難しくなり、均一なテクスチャー形状を得ることが難しくなる。一方、5重量%を超えた場合、アルカリ化合物によるエッチング速度を急激に低下させ、望んだ微細ピラミッドを形成することが難しくなる。
【0024】
本発明でのアルカリ化合物は、結晶性シリコンウェーハの表面をエッチングする成分として通常的に使用するアルカリ化合物であれば制限なく使用することができる。具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム、テトラヒドロキシエチルアンモニウム等を例に挙げることができる。これらの中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上混合して使用されることができる。
【0025】
前記アルカリ化合物の含量は、特に制限されないが、例えば、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物の総重量対比0.5乃至5重量%で含められ、好ましくは1乃至3重量%である。含量が前記範囲に該当した場合、シリコンウェーハの表面をエッチングすることができる。
【0026】
本発明において、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物は、前記成分を具体的に必要に応じて適切に採用した後、水を添加することで全体組成を調整することができるので、全体組成物の残量は水が占めている。好ましくは、前記成分が前述した含量範囲になるように調節する。
【0027】
前記水の種類は特に限定されないが、脱イオン蒸留水であるのが好ましく、より好ましくは半導体プロセス用脱イオン蒸留水として比抵抗値が18 MΩ・cm以上であれば良い。
【0028】
必要に応じて、本発明のエッチング液組成物は、多糖類を追加的に含むこともできる。
【0029】
本発明での多糖類(polysaccharide)は、単糖類2つ以上がグリコシド結合して大きな分子を作っている糖類であり、アルカリ化合物による過エッチングとエッチング加速化を妨げ、均一な微細ピラミッドを形成すると共に、エッチングによって生成された水素バブルをシリコンウェーハ表面から早く取り落とし、バブルスティック現象を防止する成分である。
【0030】
本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物は、化学式1の化合物の他に多糖類を更に含むことで、シリコン結晶方向に対するエッチング速度の差を制御し、アルカリ化合物による過エッチングを防止することにより、結晶性シリコンウェーハの表面の位置別テクスチャーの品質偏差を更に最小化し、即ち、テクスチャーの均一性を向上させ、太陽光の吸収量を最大化させることができる。また、反復的なエッチング工程が行われてもエッチングされるウェーハの品質低下を防止することができる。
【0031】
前記多糖類の種類は、特に制限されないが、具体的には、グルカン系(glucan)化合物、フルクタン系(fructan)化合物、マンナン系(mannan)化合物、ガラクタン系(galactan)化合物又はこれらの金属塩等が挙げられる。この中でもグルカン系化合物とその金属塩(例えば、アルカリ金属塩)が好ましい。これらはそれぞれ単独又は2種以上混合して使用されることができる。
【0032】
前記グルカン系化合物の種類は、特に制限されないが、具体的には、セルロース、ジメチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、4-アミノベンジルセルロース、トリエチルアミノエチルセルロース、シアノエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、澱粉、デキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸ナトリウム、サポニン、グリコーゲン、ザイモサン、レンチナン、シゾフィラン及びこれらの金属塩等を例に挙げることができる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロースが好ましい。これらは、それぞれ単独又は2種以上混合して使用されることができる。
【0033】
前記の多糖類は、平均分子量が5,000乃至1,000,000であり、好ましくは50,000乃至200,000であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
前記多糖類の含量は、特に制限されず、例えば、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物の総重量対比0.0001乃至2重量%で含まれることができ、好ましくは0.001乃至0.1重量%であるのがよい。含量が前記範囲に該当する場合、過エッチングとエッチング加速化を効果的に防止することができる。含量が2重量%を超えた場合、アルカリ化合物によるエッチング速度を急激に低下させ、望んだ微細ピラミッドを形成するのが難しい。
【0035】
場合によっては本発明の目的、効果を損なわない範囲で、当分野にて公知にされた付加的な添加剤を更に含むこともできる。これらの成分としては、粘度調整剤、pH調整剤等がある。
【0036】
本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物は、通常のエッチング工程、例えばディップ方式、スプレー方式、および枚葉方式のエッチング工程に全て適用可能である。
【0037】
結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法
本発明は、前記結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物を用いた結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法を提供する。
【0038】
結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法は、本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物に結晶性シリコンウェーハを浸漬させる段階、本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物を結晶性シリコンウェーハに噴霧する段階又は前記2段階全てを含む。
【0039】
浸漬及び噴霧回数は特に限定されず、浸漬と噴霧、両方を遂行する場合はその順序も限定されない。
【0040】
浸漬、噴霧又は浸漬及び噴霧する段階は、50乃至100℃の温度で、30秒乃至60分間遂行することができる。
【0041】
前記のような本発明の結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング方法は、酸素を供給させる別途のエアレーティング装置を導入する必要がないため、初期生産及び工程コストの面で経済的でありながらも、簡単な工程でも均一な微細ピラミッド構造の形成も可能である。
【0042】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付された特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で実施例に関した様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【実施例】
【0043】
実施例及び比較例
下記の表1及び表2に記載された成分と含量に残量の水(H
2O)を添加し、結晶性シリコンウェーハのテクスチャーエッチング液組成物を製造した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
実験例
単結晶シリコンウェーハ(156mm×156mm)を実施例及び比較例の結晶性シリコンウェーハのアルカリエッチング液組成物に浸漬させた。
【0048】
この時、実施例1乃至19及び比較例1乃至3のテクスチャー条件は、下記表4と同じであって、実施例20乃至30及び比較例4乃至6のテクスチャー条件は、温度80℃、時間20分であった。
【0049】
実施例20乃至30、及び比較例4乃至6の場合には、18L容量のバスにおいて、各エッチング工程毎に20枚のウェーハを使用し、外観、エッチング量、反射率の特性変化が発生する時点まで連続エッチングを行った。
【0050】
前記実施例及び比較例で製造された結晶性シリコンウェーハのエッチング液組成物のテクスチャー効果を下記の方法で評価し、その結果を下記表4及び5に示した。
【0051】
1.エッチング量
エッチング前後のウェーハの重量変化を測定した。
2.テクスチャーの反射率評価
エッチングされた単結晶シリコンウェーハの表面にUV分光光度計を用いて600nmの波長帯を持つ光を照射した時の反射率を測定した。
3.テクスチャーの均一性(外観)評価
エッチングされた単結晶シリコンウェーハの表面のテクスチャーの均一性は光学顕微鏡及びSEMを利用し、ピラミッドのサイズはSEMを用いて評価した。
<評価基準>
◎ : ウェーハの全面にピラミッド形成
○ : ウェーハの一部にピラミッド未形成(ピラミッド構造の未形成程度が5%未満)
△ : ウェーハの一部にピラミッド未形成(ピラミッド構造の未形成程度が5乃至50%)
× : ウェーハにピラミッド未形成(ピラミッド未形成程度が90%以上)
4.連続エッチング工程数
初期エッチング工程のエッチング量、反射率、外観を基準に、連続エッチング工程進行時のエッチング量の変化幅が±0.2g以内、反射率の変化幅が±1%以内、外観に白い斑点、ムラの発生、ギラツキ等の無い範囲までのエッチング工程数を測定した。
【0052】
【表4】
【0053】
表4及び
図1乃至11を参考すると、実施例のシリコンウェーハのエッチング液組成物は、比較例に比べ、単結晶シリコンウェーハの全面におけるピラミッド形成の程度が優れており、低い反射率の値を示したことが分かる。そして、光学顕微鏡やSEM分析によって高倍率に拡大してピラミッド形成の程度を確認した結果、高密度のピラミッドが形成されていたことを確認することができた。
【0054】
但し、化学式1の化合物が多少過量に添加された実施例4のシリコンウェーハのエッチング液組成物は、テクスチャーの均一性がやや低下し、ウェーハ表面にいくつかのムラを発生させた(
図7参照)。
【0055】
又、実施例1と比較例1の比較によると、化学式1の化合物を含んだ場合、過エッチングを妨げることにより、テクスチャーの品質偏差を最小限に抑えたことを確認できた。又、実施例6と比較例3の比較では、化学式1の化合物を含んでいれば、アルカリ化合物が低濃度で含まれていてもより優れた均一性のあるテクスチャーを形成することが確認された。
【0056】
【表5】
【0057】
表5及び
図13乃至16を参考にすると、実施例のシリコンウェーハのエッチング液組成物は、比較例の組成物に比べ、連続エッチング進行の時、エッチング工程数を増加させることができ、エッチング量と反射率の変化幅が小さかったことを確認した。更に、単結晶シリコンウェーハの全面において、非常に小さく均一なピラミッドの形成の程度が優れていることを確認した。
【0058】
そして、光学顕微鏡やSEM分析を用いて高倍率に拡大し、開始エッチング工程と最後のエッチング工程のピラミッド形成程度を観察した結果、本発明の範囲に属する実施例は、連続エッチング工程が進行されている条件でも、均一で、テクスチャー構造の偏差が少ないピラミッドが形成されることを確認した。
【0059】
比較例4及び5は、各々の実施例20及び25と同じ評価条件においての結果としては均一なテクスチャー構造を形成するが、連続エッチング工程が進行するにつれてピラミッドのサイズが増加し、連続エッチング工程の数が実施例の場合と比べ低いことを確認した。
【0060】
比較例6は、化学式1の化合物を含んでいない場合であって、連続エッチング工程数、エッチング量、反射率及び外観の項目が全て実施例に比べ著しく低下したことを確認した。