特許第6185684号(P6185684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185684編組ケーブル及び編組ケーブルにおける編組束の識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6185684
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】編組ケーブル及び編組ケーブルにおける編組束の識別方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/36 20060101AFI20170814BHJP
   H01B 11/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01B7/36 Z
   H01B11/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-42690(P2017-42690)
(22)【出願日】2017年3月7日
【審査請求日】2017年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515148011
【氏名又は名称】三陽電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤
(72)【発明者】
【氏名】定成 寛
(72)【発明者】
【氏名】牧野 修
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−123552(JP,A)
【文献】 特開2005−166660(JP,A)
【文献】 実開平06−005040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/36
H01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサに接続して当該センサの信号を受け取るためのケーブルであって、
前記センサに接続する素線を編組線として構成し、
前記素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、
当該絶縁層の色の組合せ及び前記編組線を構成する編組束の撚方向の2つの指標によって、前記多数の編組束の中から特定の編組束を特定することができる
ことを特徴とする編組ケーブル。
【請求項2】
請求項1において、
前記絶縁層の色の組合せは、前記編組束を構成する複数の素線の内少なくとも2本の素線における絶縁層の色を同色とし、
当該編組束のその他の素線における絶縁層の色が前記2本の素線における絶縁層に配色した色と異なる色で配色され、且つ、当該編組束におけるその他の素線が複数の場合はそれぞれが異なる色とされている
ことを特徴とする編組ケーブル。


【請求項3】
請求項2において、
前記編組束を構成する素線は4本であり、
その内2本の絶縁層の配色が同色とされている
ことを特徴とする編組ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記絶縁層の色の組合せは、撚方向毎に同一の組合せとされている
ことを特徴とする編組ケーブル。
【請求項5】
複数の素線で構成されたケーブルに多数のセンサを取り付ける際、特定の前記センサがいずれの前記素線に対応するかを識別するための識別方法であって、
前記センサに接続する素線を編組線として構成し、
前記素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、
当該絶縁層の色の組合せ及び前記編組線を構成する編組束の撚方向の2つの指標によって、前記多数の編組束の中から特定の編組束を特定する
ことを特徴とする編組ケーブルにおける編組束の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度を測定する技術分野に関し、特に、ケーブルに多数の温度センサを備えた温度センサ搭載ケーブルの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、一定の空間や領域における温度測定をより詳細に行いたいという要望がある。例えば、人体を手術等するに際して人体の特定の領域(例えば管状臓器内周面の温度)を細かく測定したいといった要望や、ビニールハウス内等の一定の空間内の温度を細かく測定したいといった要望である。そのような場合、温度センサをケーブル等の何らかのデバイス上に置いて測定することになるが、細かく測定しようと思えば思う程、不可避的に多数のセンサの搭載が必要となる。
【0003】
ケーブルをデバイスとして多数のセンサを設置するといったケースでは、センサの数に連動して当該センサから信号を受けるための芯線の数が多くなり、仕上がり径が太く且つ屈曲性が乏しくなってしまう。また、どの位置に設置されているセンサに繋がっている芯線であるかを明確に判別する必要がある。この点例えば、特許文献1に記載された発明のように、芯線の被覆の色の組合せ等によって、識別するといった発明は既に公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−5040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された手法で芯線を識別しようとすると、ケーブルが相当に太くなってしまい全く実用的なレベルで実現することができない。
【0006】
発明者は、従来の概念に囚われることなく発想を転換し、センサに繋がる素線を「編組線」として構成することで従来の問題点を解決できるとの着想に至った。即ち、通常電磁波等のシールド(遮蔽)を目的として配置される編組線は、各素線が導通しあうことによってシールド効果を発揮しているが、敢えて各素線同士を絶縁処理することによってこの導通を解き、多数のセンサに繋げるための素線として機能させるという発想である。
【0007】
しかしそうすると、編組された多数の素線の中から特定のセンサに繋がる素線がいずれであるのかを識別するのが極めて困難となってしまうという問題が浮上する。
【0008】
編組線は、図4に示しているように、例えば、複数の素線がボビン2から繰り出され、この繰り出された複数の素線が編組束3となって編組機1によって編み上げられ、完成品(編組ケーブル)4が製造される。ボビン2から繰り出される複数の素線の配列までを制御するのは技術面及びコスト面から現時点では現実的でないものの、ボビン2毎の素線の配色を工夫することによって、多数の編組束の中から特定の編組束を識別することは十分に可能であることに気付いたのである。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するべくなされたものであって、多数のセンサを搭載しても十分に細く且つ屈曲性に優れたケーブルを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく、本願発明は、センサに接続して当該センサの信号を受け取るためのケーブルであって、前記センサに接続する素線を編組線として構成し、前記素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、当該絶縁層の色の組合せ及び前記編組線を構成する編組束の撚方向の2つの指標によって、前記多数の編組束の中から特定の編組束を特定することができることを特徴とする。
【0011】
このように構成したことによって、多数のセンサに十分に対応できるだけの素線の数を確保すると共に、編組線特有の柔軟な屈曲性を供えたケーブルとなる。更に、編組線には「撚方向」が存在するため、この「撚方向」をも編組束識別のための指標として利用することによって、絶縁層の色の種類を少なくすることができ、識別を容易とし且つ低コスト化も実現できる。
【0012】
また、前記絶縁層の色の組合せは、前記編組束を構成する複数の素線の内少なくとも2本の素線における絶縁層の色を同色とし、当該編組束のその他の素線における絶縁層の色がそれぞれ異なり、且つ、前記2本の素線における絶縁層に配色した色と異なる色で配色されていることを特徴とする。
【0013】
このように編組束を構成する素線の内の少なくとも2本の絶縁層の色を同色とすることによって、編組束の識別が容易となる。即ち、撚方向と併せて「編組束の中に何色が2本以上入っているか」を見ることによって、多数の編組束の中からかなり絞り込むことが可能となるのである。素線自体は極めて細い線であり、その細い線が多数編み込まれて編組線を構成しているため、単純な色の組合せのみでは編組束を識別するだけでも容易ではない。しかしながら、編組束の中に少なくとも2本同じ色を配色しておくことによって、編組束全体としてその色が目立つようになり識別し易くなるのである。
【0014】
また、前記編組束を構成する素線は4本であり、その内2本の絶縁層の配色が同色とされていることを特徴とする。
【0015】
このように構成すれば、絶縁層の配色が僅か4色であっても、相当数の編組束、更にはそれらを構成する素線の識別が可能となる。
【0016】
また、前記絶縁層の色の組合せは、撚方向毎に同一の組合せとされていることを特徴とする。
【0017】
このように構成すれば、絶縁層の配色の色数を少なくでき、識別が容易となり、結果として識別間違いを防止することができる。
【0018】
また、本発明は見方を変えると、複数の素線で構成されたケーブルに多数のセンサを取り付ける際、特定の前記センサがいずれの前記素線に対応するかを識別するための識別方法であって、前記センサに接続する素線を編組線として構成し、前記素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、当該絶縁層の色の組合せ及び前記編組線を構成する編組束の撚方向の2つの指標によって、前記多数の編組束の中から特定の編組束を特定することを特徴とする編組ケーブルにおける編組束の識別方法として捉えることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明を適用することで、多数のセンサを搭載しても十分に細く且つ屈曲性に優れたケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の一例を示した編組ケーブルであって、編組束の一部拡大図である。
図2】本発明の実施形態の一例を示した編組ケーブルであって、概略断面構成図である。
図3】編組束識別のための配色の一例を示した配色表である。
図4】編組機の一例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である編組ケーブル100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0022】
〈編組ケーブルの構成〉
編組ケーブル100は、温度センサ等のセンサ(図示していない。)を搭載するデバイスとして機能するためのケーブルである。
【0023】
図1及び図2に示しているように、本実施形態においては、コア130の周りにそれぞれ絶縁処理(例えばエナメル処理)された4本の素線が一つの束となって編組束110、120が編組されて編組ケーブル100を構成している。コア130は十分な強度及び屈曲性を有する限りにおいて特に材質は選ばないし、場合によってはコア130がなくてもよい。また、図示していないが、編組束110、120全体を被覆するように外周には必要に応じて保護層が設けられてもよい。
【0024】
本明細書においては、編組束の2つの撚方向を「S撚り」及び「Z撚り」と表現している。本実施形態においては、S撚りの編組束110が12束(S−1〜S−12)、及び、Z撚りの編組束120が12束(Z−1〜Z−12)の合計24束の編組束が編組されて構成される。よって、素線数は24×4=96本となり、一つのセンサに対して2本の素線が接続されると仮定すると、最大48個の温度センサの搭載が可能となる。もちろん、編組束を構成する素線の数や、編組束の数は一例であって、図示した構成に限定されるものではないことを念のため付記しておく。
【0025】
各編組束110、120を構成する4本の素線は全て絶縁処理されており、更に、目視で識別できるように着色される。本実施形態においては、図3に示した配色表に従った配色とされる。表中の「ア」「イ」「ウ」「エ」はそれぞれ何らかの色を表している。例えば、「ア→青色」「イ→無色」「ウ→緑」「エ→赤」といった具合である。ここでは4色としているがこれに限定されるものではない。ただし、現実的な識別を考えると、無闇に多数の色を使うとかえって識別が困難となり、且つ、それに連動してコストも高くなるため、なるべく少ない色数で識別できることが望ましい。
【0026】
図3に示した表の通り、全ての編組束110、120(S−1〜S−12、及び、Z−1〜Z−12)において、2本は同色となるように構成される。例えばS−1では「ア」の色が2本となっており、Z−2では「エ」の色が2本となっている。同色の2本以外の素線においては、それぞれが異なる色とされると同時に各編組束における2本同色の色とは別の色となるように構成される。
【0027】
また、S撚りの編組束(S−1〜S−12)とZ撚りの編組束(Z−1〜Z−12)の配色は同様の組合せとされている
【0028】
〈編組ケーブルにおける編組束の識別方法〉
編組ケーブル100に、温度センサ(図示していない。)を設置するに際しては、いずれの素線に接続するかを正確に識別した上で設置する必要がある。
【0029】
そこで、上記構成で示した素線の絶縁層の色の組合せ及び撚方向を2つの指標として最初に特定の編組束110、120を選び出し、更に、その中の素線を選択するのである。
【0030】
例えば、撚方向を見ることによって、24の編組束から12に絞ることができる。
【0031】
次に、その12の編組束の中で、「何色が2本含まれているか(識別線の色)」を見ることによって、3つの編組束に絞り込むことができる。
【0032】
3つまで絞り込むことができれば、あとは、それ以外の配色(図4の表における配線用の素線の色)の組合せにより、特定の編組束を識別できる。
【0033】
最後に、特定の編組束を識別することができれば、その中の特定の2本を選択することは極めて容易である。
【0034】
このように、本願発明は、センサに接続する素線を編組線として構成し、素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、当該絶縁層の色の組合せ及び編組線を構成する編組束110、120の撚方向の2つの指標によって、多数の編組束110、120の中から特定の編組束110、120を特定することが可能となっている。
【0035】
このように構成したことによって、多数のセンサに十分に対応できるだけの素線の数を確保すると共に、編組線特有の柔軟な屈曲性を供えたケーブル100となる。更に、編組線には「撚方向」が存在するため、この「撚方向」をも編組束識別のための指標として利用することによって、絶縁層の色の種類を少なく(例えば上記構成で説明した通り、4色且つ24の編組束とすることで最大48個のセンサの搭載が可能となる。)することができ、識別を容易とし且つ低コスト化も実現できる。
【0036】
また、絶縁層の色の組合せは、編組束110、120を構成する複数の素線の内少なくとも2本の素線における絶縁層の色を同色とし、当該編組束110、120のその他の素線における絶縁層の色がそれぞれ異なり、且つ、前記2本の素線における絶縁層に配色した色と異なる色で配色されていた。
【0037】
このように編組束110、120を構成する素線の内の少なくとも2本の絶縁層の色を同色とすることによって、編組束の識別が容易となる。即ち、撚方向と併せて「編組束110、120の中に何色が2本以上入っているか」を見ることによって、多数の編組束110、120の中からかなり絞り込むことが可能となるのである。素線自体は極めて細い線であり、その細い線が多数編み込まれて編組線を構成しているため、単純な色の組合せのみでは特定の編組束110、120を識別するだけでも容易ではない。しかしながら、編組束110、120の中に少なくとも2本同じ色を配色しておくことによって、編組束110、120全体としてその色が目立つようになり識別し易くなるのである。
【0038】
また、編組束110、120を構成する素線は4本であり、その内2本の絶縁層の配色が同色とされていた。
【0039】
このように構成したことによって、絶縁層の配色が僅か4色であっても、相当数の編組束、更にはそれらを構成する素線の識別が可能となっているのである。
【0040】
また、絶縁層の色の組合せは、撚方向毎に同一の組合せとされていることを特徴とする。
【0041】
このように構成すれば、絶縁層の配色の色数を少なくでき、識別が容易となり、結果として識別間違いを防止することを可能としている。
【符号の説明】
【0042】
1・・・編組機
2・・・ボビン
3・・・編組束
4・・・完成品(編組ケーブル)
100・・・編組ケーブル
110・・・編組束(S撚方向)
120・・・編組束(Z撚方向)
130・・・コア
【要約】
【課題】
多数のセンサを搭載しても十分に細く且つ屈曲性に優れたケーブルを提供する。
【解決手段】
センサに接続する素線を編組線として構成し、前記素線同士の通電を防止するために各素線の表面に絶縁層を設け、当該絶縁層の色の組合せ及び前記編組線を構成する編組束の撚方向の2つの指標によって、多数の編組束110、120の中から特定の編組束を特定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4