(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の部材に前記第1の部材を嵌合させた状態で、前記第1の部材の脱落を防止する脱落防止部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のくさびクランプ。
前記第2の部材の、前記鋼線のアイ側となる端部開口部において、前記鋼線の横滑りを防止するための切り欠き溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のくさびクランプ。
鋼線と2面で当接する鋼線拘束用の第1の部材側接触面およびくさび形状を有する第1の部材と、前記鋼線と2面で当接する鋼線拘束用の第2の部材側接触面を有する第2の部材とを嵌合することで、前記第1の部材のくさび形状に基づいて発生する嵌合圧力により、前記第1の部材と前記第2の部材との間に挟み込まれた前記鋼線およびアイ加工のために折り返して束ねられた前記鋼線とを拘束する鋼線拘束方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に挟み込む前記鋼線およびアイ加工のために折り返して束ねられた前記鋼線を、相対角度が42°以下に形成された前記第1の部材側接触面と、相対角度が42°以下に形成された前記第2の部材側接触面と、の間に挟込み接触させながら複数方向から生じる拘束圧力により拘束することを特徴とする鋼線拘束方法。
鋼線と2面で当接する鋼線拘束用の第1の部材側接触面およびくさび形状を有する第1の部材と、前記鋼線と2面で接する鋼線拘束用の第2の部材側接触面を有する第2の部材とを嵌合することで、前記第1の部材と第2の部材の嵌合時に、前記第1の部材のくさび形状に基づいて発生する嵌合圧力により、前記第1の部材と前記第2の部材との間に挟み込まれた形で保持された前記鋼線およびアイ加工のために折り返して束ねられた前記鋼線とを拘束する鋼線拘束方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に挟み込まれた前記鋼線およびアイ加工のために折り返して束ねられた前記鋼線は、相対角度が42°以下に形成された前記第1の部材側接触面および相対角度が42°以下に形成された前記第2の部材側接触面の各々の2面で接触しながら複数方向から生じる拘束圧力により拘束されることを特徴とする鋼線拘束方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0020】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1のくさびクランプの使用状態を示す図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A線における断面図である。
実施形態1のくさびクランプ1は、ワイヤロープ等の鋼線である索体2の端末を引留めるために、索体2の端末部に締結されるものである。即ち、くさびクランプ1が備える係留部117によって、他の構造物等に索体2を係留可能とするものである。
実施形態1のくさびクランプ1は、
図1に示されるように、大別して、拘束部材11と、くさび部材12とを備える。くさび部材12が索体2と共に拘束部材11の内部へ打ち込まれることにより発生する圧力により、拘束部材11、くさび部材12及び索体2のそれぞれの相互間において摩擦力が生じ、これによってくさびクランプ1が索体2に締結されるものである。なお、くさびクランプ1における索体2の保持機能、即ち、索体2が滑り抜けてしまうことが抑止される理由については、後に詳説する。
【0021】
図2は、本実施形態のくさび部材12を示す斜視図であり、
図3(a)は上面図、
図3(b)は側面図、
図3(c)は正面図、
図3(d)は別の側面図、
図3(e)は底面図である。
各図に示されるように、本実施形態のくさび部材12は、正面視においてくさび形状を有し、その上面側において、索体2がはまり込むV字溝121を有する。V字溝121は、索体2と、面1211と面1212の2面で接するように構成され、当該2面の相対角度が42°以下に形成される。本実施形態では36°である。
くさび部材12は、
図3(c)の正面図において、左側方向へ打ち込まれるものであり、くさび部材を打ち込む際の基準相対位置(拘束部材11との相対位置)を示す表示である管理ライン123を有する。本実施形態のくさび部材12では、管理ライン123においてくさびの後端部(
図3(c)の正面図において右側)となり、この後端部よりさらに突出させた打ち込み打撃部122が形成される。
【0022】
図4は、本実施形態の拘束部材11を示す斜視図であり、
図5(a)は上面図、
図5(b)は側面図、
図5(c)は正面図、
図5(d)は別の側面図、
図5(e)は底面図である。
拘束部材11は、くさび部材12及び索体2を拘束するものであり、先細りとなる内部空間にくさび部材と12と索体2が入っていくことにより、それぞれの部材相互に強い摩擦力が生じるものである。
拘束部材11は、索体本体側開口111と索体端部側開口112とを有する基本態様が筒状の部材であり、内部の断面形状が四角形状で、索体端部側開口112から索体本体側開口111へと向けて、先細りとなるように形成される。索体本体側開口111は、索体端部側開口112より肉厚に形成される。
また、上面の索体端部側開口112側となる位置には、係留部117が一体的に形成され、索体端部側開口112側の下側(
図5(c)の正面図における下側)において、くさび部材12の後端部を係止する係止ピン(図示せず)を挿通するための係止ピン挿通部113が形成される。係止ピン挿通部113及び係止ピン(係止部材)は、くさび部材12の脱落を防止する脱落防止部材である。
【0023】
本実施形態のくさびクランプ1は、
図1に示されるように、上記説明した拘束部材11とくさび部材12とによって、索体2の端末を引留めるものである。即ち、拘束部材11の内部に索体2を挿通した上で、くさび部材12を拘束部材11の索体端部側開口112側から打ち込むことで索体2の端末を引留めるものである。
【0024】
上記構成のくさびクランプ1において、索体2が滑り抜けてしまうことが抑止される理由について
図6を参照しつつ説明する。なお、くさびクランプ1と索体2は実質的に同じ材料で形成されているものとする。
図6(a)は、
図1(a)を概略化した説明図であり、
図6(b)は同様に
図1(b)を概略化して力のつり合いを示した説明図である。
【0025】
図6(a)に示されるように、索体2に引張荷重Fが作用すると、くさび形状に基づいて、鉛直方向にWの締付け力が発生する。
当該Wに基づく力のつり合いを、
図6(b)を参照しつつ説明する。
図6(b)に示されるように、索体2とくさび部材12との接点をa点、b点とする。即ち、面1212との接点をa点、面1211との接点をb点とする。また、索体2とくさび部材12を一体物とみなしたものと、拘束部材11との接点をc点、d点とする。即ち、拘束部材11の内面とくさび部材12との接点をc点、拘束部材11の内面と索体2との接点をd点とする。
索体2とくさび部材12との接点であるa点、b点に働く垂直効力をN、摩擦力をRとすると、WとNとRのつり合いは次式となる。
W=2(Nsinθ+Rcosθ)・・・・・式1
ここで、R=μNであるから、
W=2N(sinθ+μcosθ)・・・・・式2
となる。(ただし、μは摩擦係数)
従って、つり合い式は数2となる。
【0027】
ここで、索体2とくさび部材12と間の摩擦力(即ち、a点、b点に働く摩擦力)と、索体2とくさび部材12を一体物としてみて、これと拘束部材11との間の摩擦力(即ち、c点、d点に働く摩擦力)と、を比較し、索体2とくさび部材12と間の摩擦力(即ち、a点、b点に働く摩擦力)の方が大きければ、索体2に引張荷重が作用した場合、a点、b点よりもc点、d点が先に滑りだすことになる。
即ち、索体2とくさび部材12との間に滑りは生じず、索体2とくさび部材12を一体物としてみて、これと拘束部材11との間で滑りが生じることとなる。
引張力Fの増大に伴い、索体2の径が細くなると、くさび部材12が拘束部材11に対してより深く入り込むことになるが、この際、索体2とくさび部材12との間(即ち、a点、b点)に滑りは生じず、索体2とくさび部材12は一体的に、拘束部材11に入り込むことになる。
これを式で表わすと、a点、b点に働く摩擦力は2μN、c点、d点の摩擦力は2μWであり、且つ、2μN>2μWであるから、
N>W・・・・・式3
である。
これを数2に代入すると数3となる。
【0029】
ここで、μ=0.15(静止摩擦係数)として、この式を解くと、
θ<21°・・・・・式4
を得る。このθは、
図6(b)にあるように、面1211と面1212の角度の半角にあたるので、面1211と面1212の角度を42°以下とすることで、索体2とくさび部材12との間(即ち、a点、b点)に滑りは生じず、索体2とくさび部材12が一体的に、拘束部材11に入り込むようにすることができる。
【0030】
以上のごとく、本実施形態のくさびクランプ1によれば、くさび部材12において、索体2と2面で接するように構成され、当該2面の相対角度を所定角度(42°)以下とすることによって、くさび部材と索体との間の滑りが抑止される。従って、特許文献1におけるカラー6及びねじ7(特許文献1:
図10参照)や、コイルばね8や仕切具9(特許文献1:
図11参照)等の部材を削減することができる。
【0031】
また、本実施形態のくさびクランプ1では、拘束部材11の内部に索体2を挿通した上で、くさび部材12を拘束部材11の索体端部側開口112側から、管理ライン123が拘束部材11の索体端部側開口112の位置にくるまで打ち込み、係止ピンを取り付けるだけの作業で良いため、作業性に優れる。且つ、管理ライン123まで打ち込むことによって、作業者の技量に依存せず均一な施工ができる点においても優れている。後に施工状況を確認する場合においても、管理ライン123が索体端部側開口112の位置にあるか否かを目視することによって容易に確認することができ、管理性に優れる。
加えて、本実施形態のくさびクランプ1では、くさび部材12の逆戻り・脱落防止のために、くさび部材12の後端部を係止する係止ピン(図示せず)と、これを挿通するための係止ピン挿通部113が形成されるため、索体2に張力がかかっていない状態で振動が加わるような場合においても、くさび部材12が逆戻り・脱落するようなことがなく、管理性に優れる。なお、上記説明から理解されるように、本実施形態のくさびクランプ1は、張力がかかっている状態では索体2を強力に保持するため、くさび部材12の逆戻りや脱落が生じることは無い。
また、本実施形態のくさびクランプ1は、くさび部材12の後端部において突出して形成される打ち込み打撃部122を備えるため、ハンマーを使用してくさび部材12を打ち込む際に、誤った打撃よる係止ピン挿通部113の破損等が抑止される。
また、本実施形態のくさびクランプ1では、索体本体側開口111が、索体端部側開口112より肉厚に形成されるため、必要な強度を得つつ、全体としての原材料の使用量の低減が図られ、低コスト及び軽量に形成される点でも優れている。索体本体側開口111の側は、くさび部材12の進入に伴って大きな力がかかるため、これを保持するために所定の肉厚が必要となる、一方、索体端部側開口112の側ではそこまでの強度は必要なく、索体端部側開口112の側を薄く形成することにより、低コスト及び軽量化を図っているものである。
また、本実施形態のくさびクランプ1は、索体2と材質を同一にしているので、接触する両者間において電位差が生じず、電食の発生が抑止される。
【0032】
なお、ここでは、μ=0.15(静止摩擦係数)として、面1211と面1212の角度を42°以下としたが、数3を変形することでθをμの関数として表現すると、数4となる。この数4に基づいて、面1211と面1212の角度を定めるようにしてもよい。
【0034】
なお、前述のごとく、θは面1211と面1212の角度の半分であるため、面1211と面1212の角度をαとして、摩擦係数に基づいてαを決定する式は数5となる。
【0036】
<実施形態2>
図7は、本発明に係る実施形態2のくさびクランプの使用状態を示す正面図である。なお、実施形態1と同様の構成となるものについては、同一の符号を使用し、ここでの説明を省略もしくは簡略化する。
実施形態2のくさびクランプ1´は、ワイヤロープ等の索体2の端末を引留めるために、索体2の端末部をアイ加工するためのものである。
実施形態2のくさびクランプ1は、
図7に示されるように、大別して、拘束部材11´と、くさび部材12´とを備える。
拘束部材11´が、内部にアイ加工のために索体2を折り返して束ねた部分(2本分)を挿入できるように構成されている点で実施形態1と相違するが、くさび部材12が索体2と共に拘束部材11の内部へ打ち込まれることにより発生する圧力により、拘束部材11、くさび部材12及び索体2のそれぞれの相互間において摩擦力が生じ、これによってくさびクランプ1が索体2に締結されるという基本原理は実施形態1と同様である。
【0037】
図8は、本実施形態のくさび部材12´を示す図であり、
図8(a)は上面図、
図8(b)は側面図、
図8(c)は正面図、
図8(d)は別の側面図、
図8(e)は底面図である。
各図に示されるように、本実施形態のくさび部材12´は、実施形態1のくさび部材12と基本的に同様の構成であるが、操作用孔124が形成されている点で異なる。操作用孔124は、後に説明する拘束部材11´に形成される操作用孔116に対向する位置に形成される。
【0038】
図9は、本実施形態の拘束部材11´を示す斜視図であり、
図10(a)は上面図、
図10(b)は側面図、
図10(c)は正面図、
図10(d)は別の側面図、
図10(e)は底面図である。
拘束部材11´は、基本態様が筒状の部材であり、内部の断面形状が基本的に四角形状で、先細りとなるように形成される点、くさび部材12´の後端部を係止する係止ピン(図示せず)を挿通するための係止ピン挿通部113が形成される点で、実施形態1と同様である。
拘束部材11の両端部において開口部を有する点でも実施形態1と同様であるが、本実施形態においては、先細りとなった側が索体のアイ側となって、アイ側端部開口111を構成し、他端が索体本体側開口112を構成する。
また、アイ加工のために索体2を折り返して束ねた部分(2本分)を挿通するために、筒状体である拘束部材11´の内面に、索体2と2面で接するように拘束部材側接触面115が形成され、当該拘束部材側接触面115を形成するための膨出部114を有し、これによって、断面形状が漢字の「凸」の形状をしている点で、実施形態1と異なる。拘束部材側接触面115は面1151と面1152によって構成され、本実施形態では、両者の間の角度は36°である。
また、本実施形態の拘束部材11´では、底面側(くさび部材12´が内部に当接する側)に、くさび部材12´を梃子(しの等の工具)によってこじって移動可能とさせるための操作用孔116が形成されている。本実施形態では、拘束部材11´に打ち込んだくさび部材12´を外すためのものとして操作用孔116(及びくさび部材12´の操作用孔124)を設けているが、逆に、拘束部材11´にくさび部材12´を梃子によってこじって押し込むために設けるものであってもよい。
さらに、本実施形態の拘束部材11´では、アイ側端部開口111において、その下面内部側に、索体2の横滑りを防止するための切り欠き溝117が形成される。
【0039】
上記説明した拘束部材11´とくさび部材12´とを有する実施形態2のくさびクランプ1´の施工について、
図11を参照して説明する。
先ず、アイ加工のために索体2を折り返し、これを拘束部材11´に挿入する。この際、折り返した索体の端部側となる方を、
図11における下側、即ち、くさび部材12´と接する側に配し、索体本体側を上側、即ち、拘束部材11´の拘束部材側接触面115に接する側に配する。
当該作業において、
図11のA−A線断面図から理解されるように、同図の上側の索体2は、拘束部材側接触面115に当接することで安定し、且つ、切り欠き溝117が形成されていることにより、同図の下側の索体2が安定する。
この状態において、くさび部材12´を、そのV字溝121に下側の索体2がはまるようにして打ち込んでいく。管理ライン123まで打ち込む点、及び、打ち込み後に係止ピンを取り付ける点は、実施形態1と同様である。
上記によって打ち込まれたくさび部材12´によって生じる圧力(締付け力)によって、索体2の一方(
図11における下側の索体)は、くさび部材12´に形成された2面(V字溝121)に押付つけられ、他方(
図11における上側の索体)は、拘束部材11´の拘束部材側接触面115に押し付けられる。
【0040】
図12は、
図6(b)と同様に力のつり合いを示した説明図である。
図から理解されるように、下側の索体2とくさび部材12´の間の摩擦力としては実施形態1と同様であり、また、下側の索体2とくさび部材12´の間に滑りが生じず、これらを一体のものとして考えた際に、この一体物と他の部材との接点はc点、d点である。従って、これらの間の力のつり合いとしては実施形態1と同様である。
即ち、下側の索体2とくさび部材12´の間に滑りが生じず、これらが一体のものとして滑る=くさびが更に打ち込まれるという機能については、実施形態1で説明したものと同様であるため、ここでの説明を省略する。
なお、上側の索体2と、拘束部材11´(拘束部材側接触面115)との間に滑りが生じず、上側索体2と下側索体2との間(d点)とc点において先に滑りが発生することについても、実施形態1で説明した、「索体2とくさび部材12との間(
図6(b)のa点、b点)に滑りが生じない」として説明したものと同様の原理である。
【0041】
(引張試験)
ここで、実施形態2のくさびクランプ1´について行った引張試験結果を示す。
この試験は、各線径のワイヤについて、一端に本実施形態のくさびクランプ1´によってアイ加工し、他端においてSUSロック加工によってアイを形成したものについて引張試験を行ったものである。試験を行ったワイヤ径と、各破断荷重の規格を表1に示す。
【0043】
試験は、各ワイヤ径ごとに3回ずつ行った。試験結果として、それぞれの破断荷重と効率、及び破断箇所を表にしたものを、表2に示した。
【0045】
何れの試験においても、くさびクランプ1´側においてワイヤが滑るということは発生せず、SUSロック加工部部分の破断か、くさびクランプ1´の索体本体側開口112付近におけるワイヤの破断という結果となった。
表2に示されるように、くさびクランプ1´の索体本体側開口112付近におけるワイヤの破断よりも、SUSロック加工部部分の破断の方が多く発生しており、少なくともSUSロック加工部と同等以上の性能を有していることがわかる。
効率としても、表2から、本実施形態のくさびクランプ1´は90%以上の効率を有していると言え、通常80%程度であるワイヤグリップの効率よりも非常に優れていることがわかる。
【0046】
以上のごとく、本実施形態のくさびクランプ1´によれば、実施形態1と同様に、くさび部材12において、索体2と2面で接するように構成され、当該2面の相対角度を所定角度(42°)以下とすることによって、くさび部材と索体との間の滑りが抑止される。
張力Fの増大に伴い索体2の径が細くなる際においても、これに沿う形でくさび部材12が拘束部材11に対してより深く入り込むため、荷重の集中等が抑止され、非常に高い性能を有する点は、上記の試験結果においても表れている。即ち、SUSロック加工と同等以上の結果が得られている点から明らかである。現場において、工場加工であるSUSロック加工と同等以上の加工を可能としている点で、本実施形態のくさびクランプ1´は極めて有用なものである。
【0047】
また、本実施形態のくさびクランプ1´によれば、操作用孔116(及び操作用孔124)により、くさび部材12´を梃子(しの等)によってこじって移動させることが可能であるため、施工のやり直し等が可能であり、施工性がよい。
加えて、切り欠き溝117が形成されていることにより、施工中に索体2が安定し、施工性が良い。
【0048】
以降、実施形態1のくさびクランプ1の変形例について、実施形態3〜実施形態7として説明する。
各変形例は、実施形態1のくさびクランプ1における係留部117の形態を変形する事等により、索体2を、各種の部材に係留できるようにしたものである。
何れの実施形態においても、くさび部材が索体と共に拘束部材の内部へ打ち込まれることにより発生する圧力により、拘束部材、くさび部材及び索体のそれぞれの相互間において摩擦力が生じ、これによってくさびクランプが索体に締結されるという基本概念は実施形態1と同様であるため、これ以降での説明を省略する。
【0049】
<実施形態3>
図13は、実施形態3のくさびクランプの使用状態を示す図であり、
図13(a)は上面図、
図13(b)は正面図である。
本実施形態のくさびクランプ1Aは、アンカーボルト3に対して係留できるように、係留部117Aを備える。係留部117Aは、同図に示されるように、拘束部材11Aの索体端部側開口側において、拘束部材11Aと一体的に形成される。より具体的には、図に示されるように、拘束部材11Aの両側面を延長し、アンカーボルト3を挿通可能な孔が形成されることによって、係留部117Aが形成される。
【0050】
<実施形態4>
図14は、実施形態4のくさびクランプの使用状態を示す図であり、
図14(a)は上面図、
図14(b)は正面図である。
本実施形態のくさびクランプ1Bは、横方向に張られた索体4に対して係留できるように、係留部117Bを備える。係留部117Bは、同図に示されるように、拘束部材11Bの索体端部側開口側において、拘束部材11Bと一体的に形成される。より具体的には、図に示されるように、拘束部材11Bの底面部分を延長し、U字ボルトを締結可能に形成されることによって、係留部117Bが形成される。
【0051】
<実施形態5>
図15は、実施形態5のくさびクランプの使用状態を示す図であり、
図15(a)は正面図、
図15(b)は、
図15(a)のA−A線における断面図である。
本実施形態のくさびクランプ1Cは、横方向に張られた索体4に対して、上下方向に索体2を係留できるように、係留部117Cを備える。係留部117Cは、同図に示されるように、拘束部材11Cの索体本体側開口側から切り欠いて形成され、横方向の索体4に引っかけることができるように構成される。
また、くさびクランプ1Cでは、スペーサー14を有する。このスペーサー14は、横方向の索体4を収納する収納部を備え、当該収納部と、係留部117Cとによって、横方向の索体4に締結されるものである。
本実施形態のくさびクランプ1Cでは、くさび部材12Cが索体2と共に拘束部材の内部へ打ち込まれることにより発生する圧力により、拘束部材11C、くさび部材12C、索体2、及びスペーサー14のそれぞれの相互間において摩擦力が生じるものであるが、くさびクランプ1Cが索体2に締結されるという基本概念(基本原理)は実施形態1と同様である。
【0052】
<実施形態6>
図16は、実施形態6のくさびクランプの使用状態を示す正面図である。
図17(a)は
図16のB−B線における断面図、
図17(b)は、
図16のC−C線における断面図である。
本実施形態のくさびクランプ1Dは、横方向に張られた索体4に対して、上下方向に索体2を係留できるように、係留部117Dを備える。係留部117Dは、
図16に示されるように、拘束部材11Dの底面側(
図16においては右側面側)から切り欠いて形成され、横方向の索体4に引っかけることができるように構成される。
また、くさびクランプ1Dでは、スペーサー15を有する。
本実施形態のくさびクランプ1Dでは、くさび部材12DのV字溝121が形成される部分がくさび部材12Dの前側(
図16においては下側)のみで、くさび部材12Dの後ろ側(
図16においては上側)においては、V字溝121が無く、平坦部が形成される。当該平坦部と、索体2の端部と、スペーサー15と、係留部117Dとによって、横方向の索体4に締結されるものである。
本実施形態のくさびクランプ1Dでは、
図17(b)に示されるように、拘束部材11D、くさび部材12D、索体2、及びスペーサー15のそれぞれの相互間において摩擦力が生じるものであるが、くさびクランプ1Dが索体2に締結されるという基本概念(基本原理)は実施形態1と同様である。
【0053】
<実施形態7>
図18は、実施形態7のくさびクランプの使用状態を示す図であり、
図18(a)は上面図、
図18(b)は正面図である。
本実施形態のくさびクランプ1Eは、ネジ棒5に対して係留できるように、係留部117Eを備える。係留部117Eは、同図に示されるように、拘束部材11Eの索体端部側開口側において、拘束部材11Eと一体的に形成される。より具体的には、図に示されるように、拘束部材11Eの索体端部側開口側において、上面視コ字状に形成され、ネジ棒5を挿通可能な孔が形成されることによって、係留部117Eが構成される。
なお、このように、上面視コ字状の拘束部材11Eがあることによって、くさび部材12Eの後端側(
図18における左側)からハンマーなどで打ち込む事が難しくなるが、実施形態2で説明した操作用孔116(及び操作用孔124)により、梃子7(しの等の棒状の工具)を用いて、くさび部材12Eを押し込むことができる。
【課題】ワイヤロープ等の鋼線の端末を引留めるためのくさびクランプであって、部品点数を削減しながらも、くさびと鋼線との間に滑りが生じることを抑止したくさびクランプの提供。
【解決手段】索体(鋼線)2を保持するためのくさびクランプ1であって、くさび部材12と、くさび部材12によって発生する圧力により、くさび部材12及び索体2を拘束する拘束部材11と、を備え、くさび部材12は、索体2と2面で接するように構成され、当該2面の相対角度が42°以下であることにより、くさび部材12と索体2との間に滑りが生じることを抑止する。