(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁材からなる第1絶縁層と、該第1絶縁層の前記絶縁材の硬度に比べて硬度が低い絶縁材、および少なくとも上記第1絶縁層に隣接する側の表面に粘着層を有する第2絶縁層とを積層してなる基板本体と、
上記第2絶縁層に形成された貫通導体と、
上記第1絶縁層において上記第2絶縁層に隣接する側の表面で且つ上記貫通導体の端面に接して形成された接続導体と、を備え、
上記第1絶縁層の絶縁材と上記第2絶縁層の絶縁材との硬度差は、少なくとも100Hv以上であり、
上記第2絶縁層は、少なくとも前記第1絶縁層に隣接する側の表面に熱可塑性樹脂からなり且つ厚みが3μm以下の上記粘着層を含み、
上記接続導体の厚みは、2μm以下であり、
上記粘着層の一部には、上記接続導体の上方に押し上げられ、且つ該接続導体に対向する上記第2絶縁層の絶縁材の表面を押し上げた凸部が形成されている、
ことを特徴とする多層配線基板。
前記基板本体は、第1絶縁層の絶縁材がセラミックからなり且つ前記第2絶縁層の絶縁材が樹脂からなるか、前記第1絶縁層および第2絶縁層の絶縁材の双方が互いに異なる硬度の樹脂からなるか、あるいは、前記第1絶縁層および第2絶縁層の絶縁材の双方が互いに異なる硬度のセラミックからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
前記第1絶縁層の表面に形成される接続導体は、Ti薄膜層とCu薄膜層、Cr薄膜層とCu薄膜層、Ti薄膜層とMo薄膜層、Cr薄膜層とMo薄膜層、Cr薄膜層とMo薄膜層とCu薄膜層、あるいは、Ti薄膜層とMo薄膜層とCu薄膜層の何れかを積層したものからなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層配線基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、互いに硬度が相違する2つ以上の絶縁層を積層してなり、該複数の絶縁層が対向して隣接する硬度が低い側の絶縁層の内部にクラックが生じにくい多層配線基板およびその製造方法を確実に提供する、ことを課題とする。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、高い硬度の絶縁層の表面に突設され、且つ硬度が低い絶縁層の裏面に露出する貫通導体の端面に接触する接続端子の厚みを2μm以下に設定する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の多層配線基板(請求項1)は、絶縁材からなる第1絶縁層と、該第1絶縁層の前記絶縁材の硬度に比べて硬度が低い絶縁材、および少なくとも上記第1絶縁層に隣接する側の表面に粘着層を有する第2絶縁層とを積層してなる基板本体と、上記第2絶縁層に形成さ
れた貫通導体と、上記第1絶縁層において上記第2絶縁層に隣接する側の表面で且つ上記貫通導体の端面に接して形成された接続導体と、を備え、上記第1絶縁層
の絶縁材と上記第2絶縁層
の絶縁材との硬度差は、少なくとも100Hv以上であり、上記第2絶縁層は、少なくとも前記第1絶縁層に隣接する側の表面に熱可塑性樹脂からなり且つ厚みが3μm以下の
上記粘着層を含み、上記接続導体の厚みは、2μm以下であり、上記粘着層の一部には、上記接続導体の上方に押し上げられ、且つ該接続導体に対向する上記第2絶縁層
の絶縁材の表面を押し上げた凸部が形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記硬度差を有する前記第1絶縁層と第2絶縁層とを積層し且つ更に加熱しつつ厚み方向に沿って圧着した際において、第1絶縁層側の前記接続導体の頂面側が、第2絶縁層の第1絶縁層に隣接する側の表面に押し込まれる量が少ない(浅い)ため、該第2絶縁層の変形量も小さくなるので、クラックや破断などの局部破壊を生じ難くされている。その結果、絶縁性能の劣化や不用意な導通経路の成立による短絡などの不具合を生じ難くなるので、検査性能や電気的特性が安定した多層配線基板とされている。
しかも、熱硬化性樹脂の樹脂からなる前記第2絶縁層には、熱可塑性樹脂からなり且つ厚みが3μm以下の粘着層が含まれているので、該粘着層を活用して第1絶縁層との積層および接着(圧着)が成されてい
る。更に、厚みが2μm以下の前記接続導体の頂面が第2絶縁層の樹脂層に押し込まれる押し込み量が少な
く、且つ前記粘着層の一部に前記凸部を形成するに留まるため、前記クラックの発生が未然に防止され易くなっている。
前記接続導体の厚みが2μmを超えると、接続導体の頂面側が第2絶縁層に押し込まれる押し込み量が多くなり、該第2絶縁層の変形量も大きくなるので、かかる範囲を除いたものである。望ましい接続導体の前記厚みは、0.7〜1.0μmの範囲である。
【0008】
尚、前記絶縁材ごとの硬度は、例えば、絶縁材の素材がセラミックグリーンシートである場合には、該グリーンシートを焼成したセラミックの硬度であり、絶縁材の素材が合成樹脂である場合には、これを硬化処理した後の硬度である。前記2種類の絶縁材間における硬度の差は、少なくとも100Hv以上である。
また、前記第1絶縁層および第2絶縁層は、単層の絶縁層からなる形態のほか、同種である複数の絶縁層を予め積層した多層構造の形態も含む。後者の形態では、単位絶縁層相互の間に内部配線層が形成され、且つ該内部配線層を前記表面あるいは表面と対向するもう1つの表面に導出するための貫通導体が内部に形成されている。
更に、前記第1絶縁層と第2絶縁層は、相対的に硬度が相違することによる呼称であり、2種類に限らず、硬度が段階的に異なる3種類の絶縁層をも包含する。
また、前記貫通導体の直径は、前記接続導体の直径よりも比較的小径である。
更に、前記貫通導体には、ビア導体およびスルーホール導体が含まれる。
加えて、前記多層配線基板は、例えば、電子部品検査用配線基板として使用されるが、これ以外の用途にも適用可能である。
【0009】
また、本発明には、前記基板本体は、第1絶縁層の絶縁材がセラミックからなり且つ前記第2絶縁層の絶縁材が樹脂からなるか、前記第1絶縁層および第2絶縁層の絶縁材の双方が互いに異なる硬度の樹脂からなるか、あるいは、前記第1絶縁層および第2絶縁層の絶縁材の双方が互いに異なる硬度のセラミックからなる、多層配線基板(請求項2)も含まれる。
これによれば、例えば、セラミックからなる第1絶縁層と樹脂からなる第2絶縁層とを積層し更に加熱しつつ圧着した際に、第1絶縁層の表面に形成された接続導体が第2絶縁層において隣接する側の表面を変形させにくくなる。あるいは、異なる硬度の樹脂同士または異なる硬度のセラミック同士からなる第1絶縁層と第2絶縁層とを積層した際にも、前記同様に接続導体が第2絶縁層側の表面を変形させにくくなる。従って、前述した信頼性に優れた多層配線基板とされている。
尚、硬度の異なる樹脂同士には、例えば、ポリイミドとポリエチレンナフタレートとが例示され、硬度の異なるセラミック同士には、例えば、アルミナとガラス−セラミックとが例示される。例えば、エポキシ系の樹脂のように、同種の樹脂同士であっても、互いの硬度が相違している場合には適用可能である。
また、樹脂同士の硬度(Hv)を測定する場合には、JIS R 1610に従って行うことが望ましい。
【0010】
加えて、本発明には、前記第1絶縁層の表面に形成される接続導体は、Ti薄膜層とCu薄膜層、Cr薄膜層とCu薄膜層、Ti薄膜層とMo薄膜層、Cr薄膜層とMo薄膜層、Ti薄膜層とMo薄膜層とCu薄膜層、あるいは
、Cr薄膜層
とMo薄膜層Cu薄膜層の何れかを積層したものからなる、多層配線基板(請求項
3)も含まれる。
これによれば、厚みが2μm以下と比較的均一であり且つ第2絶縁層側において隣接する表面に露出する前記貫通導体の端面との電気的接続も確実な接続端子となっている。そのため、前述した積層した後の加熱および圧着(接着)時におけるクラックなどが発生するおそれを著しく低減することができる。
尚、Ti、Cr、Mo、およびCuの薄膜層は、後述するようにスパッタリングやPVDなどの物理的蒸着法によって形成することが望ましい。
【0011】
一方、本発明による多層配線基板の製造方法(請求項4)は、絶縁材および第1貫通導体を有する第1絶縁層を形成する工程と、該第1絶縁層の表面に、上記第1貫通導体と接続し且つ厚みが2μm以下の接続導体を形成する工程と、第2貫通導体を備え、第1絶縁層の上記絶縁材の硬度に比べて硬度が少なくとも100Hv以上低い絶縁材、および第1絶縁層に隣接する積層側の表面に熱可塑性樹脂からなる厚みが3μm以下の粘着層を有する第2絶縁層を形成する工程と、上記接続導体に、上記第2絶縁層の積層側の表面に露出した第2貫通導体の端面が接触するように、第1絶縁層と第2絶縁層とを積層し、更に加熱および圧着して、上記粘着層の一部に、上記接続導体の上方に押し上げられ、且つ該接続導体に対向する第2絶縁層
の絶縁材の表面を押し上げた凸部を有している基板本体を形成する工程と、を備える、ことを特徴とする。
これによれば、前記硬度差を有する第1絶縁層と第2絶縁層とを積層し且つ加熱ししつ圧着して基板本体を形成する工程において、第1絶縁層側の前記接続導体の頂面における周辺部(エッジ)が第2絶縁層の第1絶縁層に隣接する側の表面に食い込みにくく、且つ粘着層の一部が前記凸部となるに留まるので、クラックや破断などの局部破壊が生じ難い。その結果、絶縁性能の劣化や不用意な導通経路による短絡などの不具合を生じなくなるので、検査性能や電気的特性が安定した多層配線基板を提供することが可能となる。
しかも、前記第1絶縁層と第2絶縁層とを積層し且つ圧着した際に、両絶縁層の間に3μm以下の比較的均一な厚みで前記粘着層が残留するので、前記接続端子の頂面における周辺部(エッジ)が接触する第2絶縁層側の絶縁材に進入せず、該絶縁材が変形しにくくなる。
【0012】
尚、前記接続導体を形成する工程は、Ti、Cr、Mo、およびCuのスパッタリングを適宜組み合わせることによって行われる。
また、第1絶縁層や第2絶縁層の絶縁層の出発素材がセラミックグリーンシートである場合には、前記積層および圧着工程までの間において、該グリーンシートを焼成してセラミックとされており、出発素材が例えば、塗布したエポキシ樹脂などである場合には、上記工程の前までに硬化(キュア)処理が施されている。
更に、前記接続導体の頂面と第2貫通導体の端面との接触は、前記基板本体の形成工程において、積層後の圧着によって可能となる。
【0013】
また、本発明には、前記第1絶縁層の絶縁材がセラミックからなり、且つ前記第2絶縁層の絶縁材が樹脂からな
る、多層配線基板の製造方法(請求項5)も含まれる。
これによれば
、前述したクラックなどの発生を一層確実に抑制できると共に、生産性の向上にも寄与し得る
。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による一形態の多層配線基板1の概略を示す断面図である。
多層配線基板1は、電子部品検査用の配線基板であり、
図1に示すように、セラミック層(絶縁材)31,32からなる下層側の第1絶縁層3と、該第1絶縁層3の上記セラミック層31,32の硬度に比べて硬度が低いポリイミドなどの熱硬化性樹脂の樹脂層(絶縁材)41,42からなる上層側の第2絶縁層4と、を積層してなり、表面5および裏面8を有する基板本体2を備えている。
尚、上記セラミック層31,32と樹脂層41,42との硬度の差は、約500Hvである。
上層側の第2絶縁層4には、樹脂層41,42を個別に貫通する複数のビア導体(貫通導体)43が形成され、下層側の第1絶縁層3に隣接する側の表面7にはビア導体43の下端面が露出している。また、基板本体2の表面5には、ビア導体43の上端面が露出し、且つ該ビア導体43と表面5に形成された検査用端子9とが接続されている。該検査用端子9上には、追ってプローブ20が取り付けられる。
図1,
図2に示すように、上記樹脂層41,42間には、該樹脂層41に含まれ、熱可塑性樹脂からなり、且つ樹脂層41,42を接着する粘着層14が位置していると共に、該粘着層14と同じレベルには、上下のビア導体43と接続される図示しない配線層が形成されている。また、下層側の樹脂層41において、第1絶縁層3に隣接する表面6側に含まれる粘着層14は、第1絶縁層3と第2絶縁層4とを接着している。
尚、
図2は、
図1中における一点鎖線部分Xの部分拡大断面図である。
【0016】
一方、下層側の第1絶縁層3は、
図1に示すように、セラミック層31,32を同心状に貫通する複数のビア導体33が形成され、該ビア導体33の下端面は、基板本体2の裏面8に形成された外部端子13と接続されている。セラミック層31,32間には、例えば、上下のビア導体Vに挟まれて後述するビアカバーが形成されている。
更に、
図1,
図2に示すように、第1絶縁層3において、上層側の第2絶縁層4に隣接する側の表面7には、上記ビア導体33ごとの上端面に接続された複数の接続導体10が個別に形成されている。該接続導体10は、厚み10tが2μm以下であり、例えば、下層側のTi薄膜層11と上層側のCu薄膜層12との2層構造を有する扁平な円柱状体である。該接続導体10の直径は、上下の各ビア導体33,43の各直径よりも約1.2〜3倍程度大きい。
【0017】
尚、上記接続導体10は、Cr薄膜層とCu薄膜層12との2層、Ti薄膜層11とMo薄膜層との2層、Cr薄膜層とMo薄膜層との2層、Ti薄膜層11とMo薄膜層とCu薄膜層12との3層、あるいは、Cr薄膜層とMo薄膜層とCu薄膜層12との3層からなるものとしても良い。また、接続端子10の厚み10tは、Ti薄膜層11やCu薄膜層12などを後述するスパッタリングで形成する際に2μm以下となるように制御されている。
更に、
図2に示すように、第1、第2絶縁層3,4間の前記粘着層14の一部は、接続導体10の頂面の周辺部の上方に僅かに押し上げられ、該接続導体10に対向する樹脂層41の表面をリング状に押し上げた凸部45を形成している。
【0018】
以上のような多層配線基板1によれば、前記第1絶縁層3と第2絶縁層4とを積層し且つ更に加熱しつつ厚み方向に沿って圧着した際において、第1絶縁層3側の前記接続導体10の頂面における周辺部が第2絶縁層4の第1絶縁層3に隣接する側の表面6に押し込まれる量が少ないため、第2絶縁層4の変形が小さくなっているので、第2絶縁層4の前記樹脂層41,42にクラックや破断などの局部破壊が生じ難くされている。その結果、第2絶縁層4を構成する前記樹脂層j1などの絶縁性能の劣化や第2絶縁層4内における不用意な導通経路による短絡などの不具合を生じ難くなっている。従って、検査性能や電気的特性が安定した多層配線基板1となっている。
尚、第1絶縁層3および第2絶縁層4は、前記のように、双方の絶縁材が互いに異なる硬度の樹脂同士からなる組み合わせか、あるいは、双方の絶縁材が互いに異なる硬度のセラミック同士からなる組み合わせであっても良い。
また、多層配線基板1は、前記第1絶縁層3、第2絶縁層4、ビア導体33,43、および接続導体10を含むものであれば、前記の用途以外にも適用可能である。
【0019】
以下において、前記多層配線基板1の製造方法について説明する。
始めに、
図3,
図4に沿って、前記第2絶縁層4の製造工程を説明する。
先ず、
図3(a)に示すように、予め表面に厚さ5μmの銅箔15を個別に貼り付けた厚さ30μmのポリイミドからなる樹脂層41,42を用意し、これらにおける所定の位置にレーザー光を照射して、内径が約50μmである複数の貫通孔44を形成した。尚、該貫通孔44の形成は、上記レーザー加工に替えてパンチングにより行っても良い。また、上記樹脂層41,42の裏面側には、予め、平均厚さが3μmで且つ熱可塑性樹脂の粘着層14がそれぞれ含まれていた。
次に、
図3(b)に示すように、上記貫通孔hごとの内側に、Ag粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷により充填して、ビア導体(第2貫通導体)43を個別に形成した。尚、上記導電性ペーストは、Ag粉末に替え、Cu粉末を含むものにしても良い。
【0020】
次いで、樹脂層41,42の銅箔15ごとの全面に感光性樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)からなるドライフィルム(図示せず)を貼り付けた後、該フィルムに対して所定のパターンに倣った露光および現像を施した。
その結果、
図4(a)に示すように、樹脂層41,42の銅箔15ごとの上に、ビア導体vの上端面と接続した所定パターンのレジストパターン16,17が形成された。更に、該パターン16,16間と、該パターン17,17間の底面に露出した銅箔15をエッチングにより除去した。その結果、
図4(b)に示すように、樹脂層41,42の表面には、前記銅箔15の一部が上記パターンに倣って残留し、且つ各ビア導体43と個別に接続した検査端子9、あるいは配線層18が形成された。尚、上記パターン16,17もエッチング後において剥離した。
【0021】
次に、
図5,
図6に沿って、前記第1絶縁層3の製造工程を説明する。
予め、アルミナ粉末、バインダ樹脂、溶剤、および可塑剤などをそれぞれ所定の割合で混合してセラミックスラリーを作製し、該スラリーをドクターブレード法によりシート形状に成形して、平均厚さが300μmのセラミックグリーンシート(以下、単にグリーンシートと称する)31,32を製作した。
次に、
図5(a)に示すように、グリーンシート31,32における所定の位置ごとにレーザーを照射して、内径が約180μmである複数の貫通孔34を形成した。尚、該貫通孔34の形成も、レーザー加工に替え、パンチングにしても良い。
【0022】
次いで、
図5(b)に示すように、上記貫通孔34ごとの内側に、W粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷により充填して、未焼成のビア導体(第1貫通導体)33を個別に形成した。尚、上記導電性ペーストは、W粉末に替え、Mo粉末を含むものでも良い。また、前記グリーンシート31,32が低温焼成用のガラス−セラミックである場合には、上記導電性ペーストには、Ag粉末あるいはCu粉末を含むものが用いられる。
更に、
図6(a)に示すように、下層側のグリーンシート31の表面と裏面とにおける所定の位置に前記同様の導電性ペーストをスクリーン印刷して、未焼成のビアカバー19と接続導体13とをビア導体33と個別に接続させて形成した。
次に、ビア導体33が形成された上記グリーンシート32と、ビア導体33、接続導体13、およびビアカバー19が形成された上記グリーンシート31とを積層し且つ圧着した後、得られた積層体を所定の温度で焼成した。
その結果、グリーンシート31,32は、焼成されたセラミック層31,32として一体化し、且つビア導体33などの導体も同時に焼成されて、
図6(b)に示すように、前記第1絶縁層3と同様なセラミックの積層体が得られた。
【0023】
上記焼成後におけるセラミック層32の表面7を研磨により平坦面にした後、該表面7に上端面が露出するビア導体33の上方の位置に対し、2段階のスパッタリングを施した。即ち、
図6(b)中の左側に示すように、最初のスパッタリングによって、厚みが1μm未満のTi薄膜層11を形成した後、
図6(b)中の右側に示すように、2回目のスパッタリングによって、上記Ti薄膜層11の上方に同様な厚みのCu薄膜層12を形成した。その結果、セラミック層32の表面7に厚みが2μm以下である複数の接続導体10が形成されると共に、第1絶縁層3が得られた。
引き続いて、
図7の上方に示すように、前記樹脂層41,42を両者間に位置する前記粘着層14を介して積層および圧着して、第2絶縁層4を形成した。この際、粘着層14の一部は、内部配線層18の上方に押し上げられた。
更に、
図7中の矢印で示すように、第1絶縁層3の表面7上に、第2絶縁層4を積層し、接続導体10ごとの頂面に第2絶縁層4側のビア導体43の下端面が接するように、該第2絶縁層4における第1絶縁層3に隣接する側の表面6側に配置された粘着層14を介して接着した後、加熱しつつ圧着(接着)した
。
【0024】
その結果、
図8(a)に示すように、第1絶縁層3と第2絶縁層4とからなり、表面5および裏面8を有する基板本体2を備えた多層配線基板1が形成された。しかも、前記積層に続く加熱および圧着(接着)工程では、
図8(a)中の一点鎖線部分Yを拡大した
図8(b)で示すように、厚み10tが2μm以下である接続導体10の頂面の上方には、第2絶縁層4の第1絶縁層3側に位置していた粘着層14の一部が、上記接続導体10によって少ない量で押し上げられ、第2絶縁層4の樹脂層41に小さく進入する変形を生じるに留まっていた。そのため、
図8(b)中の一点鎖線の矢印で示すように、接続導体10の頂面における周辺部(エッジ)が第2絶縁層4の表面6を形成している樹脂層41内に大きく食い込むことによるクラックなどを生じなかった。
最後に、基板本体2の表面5に位置する検査端子9および裏面8に位置する外部端子13の表面に、電解または無電解Niメッキおよび電解または無電解Auメッキを順次施して、Niメッキ膜およびAuメッキ膜(何れも図示せず)を被覆して、電子部品検査用の多層配線基板1を得ることができた。
【0025】
前記のような多層配線基板1の製造方法によれば、前記第1絶縁層3と第2絶縁層4とを積層し且つ加熱ししつ圧着(接着)して基板本体2を形成する工程において、第1絶縁層3側の前記接続導体10の頂面における周辺部が第2絶縁層4の樹脂層41を大きく変形させないので、クラックや破断などの局部破壊が生じなかった。その結果、樹脂層41の絶縁性能の劣化や不用意な導通経路による短絡などの不具合が低減したので、検査性能や電気的特性が安定した多層配線基板1を提供することができた。
尚、基板本体2の表面5に設ける前記検査端子9は、前記接続端子10と同様に、スパッタリングにより、例えば、Ti薄膜、Mo薄膜、およびCu薄膜を順次積層し、更にこれらの表面に電解または無電解金属メッキなどにて、Cuメッキ膜、Niメッキ膜、およびAuメッキ膜を被覆した形態として形成しても良い。
また、前記各検査端子9上には、追って前記プローブ20が取り付けられる。
【実施例】
【0026】
以下において、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明する。
先ず、前記と同じく表面に銅箔15を有し且つ裏面に粘着層14を有する樹脂層41,42を複数組用意し、こらの同じ位置に同じ内径の貫通孔44を形成した後、該貫通孔hに前記と同じ導電性ペーストを印刷により充填してビア導体43を形成した。かかる樹脂層41,42を裏面ごとに含まれる平均厚さ3μmの粘着層14により積層および圧着して、複数組の第2絶縁層4を形成した。
一方、アルミナを主成分とし且つ厚みが300μmのグリーンシート31,32を複数組用意し、各組ごとに積層し且つ焼成して複数組の第1絶縁層3を形成した。各組の第1絶縁層3の表面7を、同じ条件で研磨した後、該表面7における所定の位置ごとに前記同様の2段階のスパッタリングを施して、Ti薄膜11およびCu薄膜12の2層からなり、全体の厚みを表1に示すように、1.0μmから5.0μmまでの間で7段階に変化させた接続導体10を形成した。
【0027】
次に、前記第1絶縁層3の表面7の接続導体10上に、第1絶縁層3側の接続導体10の頂面が第2絶縁層4側の表面6に露出する前記ビア導体43の端面に接するように、第1絶縁層3と第2絶縁層4とを積層した後、同じ温度で加熱しつつ同じ圧力により加圧して、複数組の多層配線基板(1)を得た。尚、前記接続導体10の厚みごとに10個ずつの多層配線基板(1)を合計70個製作した。
各多層配線基板(1)の基板本体2を接続導体10の位置で切断し、接続導体10の頂面における周辺部(エッジ)から隣接する第2絶縁層4の樹脂層41内に向かって、クラックや破断の有無を目視と拡大鏡(10倍)との双方により観察した。この観察において、クラックなどの有無(1箇所であれば「有り」と判定)およびその発生状況について、表1中に表した。尚、接続導体10の厚みが1.0〜2.0μmであった多層配線基板1を実施例とし、接続導体10の厚みが2.5μm以上であった多層配線基板を比較例とした。
【0028】
【表1】
【0029】
表1によれば、実施例の各多層配線基板1は、接続導体10の厚みが1.0〜2.0μmであったため、何れもクラックや破断が発生していなかった。これは、接続導体10の厚みが2μm以下のため、第1・第2絶縁層3,4を積層した後、加熱しつつ圧着した際に、各接続導体10の頂面における周辺部(エッジ)が隣接する樹脂層41を大きく変形させなかったことによるものと推定される。
一方、比較例の多層配線基板のうち、前記接続導体10の厚みが2.5μmと3.0μmのものでは、目視はできないが拡大鏡で判別できる程度の微小なクラックが発見され、前記接続導体10の厚みが4.0μmと5.0μmのものでは、目視が可能なクラックが発見された。これらは、何れも接続導体10の厚みが2μmを超えていたので、その厚みの程度によって、前記加熱および圧着時に各接続導体10の頂面における周辺部が隣接する樹脂層41に深く食い込んで大きく変形させたことによるものと推定される。
以上のような実施例の多層配線基板1によって、本発明の効果が確認された。
【0030】
本発明は、以上において説明した形態に限定されるものではない。
例えば、第1絶縁層および第2絶縁層は、それぞれ少なくとも1層でも良く、あるいは両者が2層以上である場合、互いの層数が相違していても良い。
また、第1絶縁層および第2絶縁層は、これらの絶縁材が互いに異なる硬度の樹脂同士からなる組み合わせか、あるいは、かかる絶縁材が互いに異なる硬度のセラミック同士からなる組み合わせでも良い。
更に、第1絶縁層と第2絶縁層は、硬度が3段階に異なる3つの絶縁層としても良く、例えば、セラミック層からなる第1絶縁層と、硬度が相違する2種類の樹脂からなる第2絶縁層および第3絶縁層(2つの第2絶縁層)との組み合わせにしても良い。
また、前記第1絶縁層3のセラミック層31,32間には、上下の各ビア導体33と接続する配線層を形成しても良い。
更に、前記第2絶縁層4のビア導体(貫通導体)43は、中心部に軸方向に沿った空間を内包する円筒形状のスルーホール導体としても良い。
加えて、前記多層配線基板1は、多数個取りの形態であっても良く、且つ前記製造方法も多数個取りの工程からなるプロセスとしても良い。