(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリカフィラー(C)が、炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物により表面処理され、平均一次粒子径が5nm〜30μmのシリカフィラーである請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
シリカフィラー(C)の含有量が、脂環式エポキシ化合物(A)及びゴム粒子(B)の全量100重量部に対して、4重量部以上7重量部未満である請求項1又は2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、ゴム粒子(B)と、シリカフィラー(C)とを必須成分として含有する樹脂組成物である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、脂環式エポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(特に、核水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなど)、硬化剤(D)、硬化促進剤(E)、硬化触媒(F)、蛍光体等を任意成分として含有していてもよい。
【0022】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の必須成分である脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(一分子中)に、脂環(脂肪族炭化水素環)を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する)を1個以上有する化合物である。
【0023】
脂環式エポキシ化合物(A)としては、脂環エポキシ基を有する公知乃至慣用の化合物から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基(シクロヘキサン環を構成する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基)が好ましい。即ち、脂環式エポキシ化合物(A)としては、分子内に1個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましい。具体的には、下記式(1)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が挙げられる。
【化4】
【0024】
上記式(1)中、Xは1価の有機基を示す。上記1価の有機基としては、例えば、炭化水素基(1価の炭化水素基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、グリシジル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基、これらの基と後述の連結基(1以上の原子を有する2価の基)が結合した基などが挙げられる。
【0025】
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0026】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基などのC
1-20アルキル基などが挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC
2-20アルケニル基などが挙げられる。上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などのC
2-20アルキニル基などが挙げられる。
【0027】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基などのC
3-12シクロアルキル基;シクロヘキセニル基などのC
3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基などのC
4-15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0028】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC
6-14アリール基(特に、C
6-10アリール基)などが挙げられる。
【0029】
また、上記脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC
7-18アラルキル基、シンナミル基等のC
6-10アリール−C
2-6アルケニル基、トリル基等のC
1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC
2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0030】
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。上記炭化水素基における置換基の炭素数は、特に限定されないが、0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(特に、C
1-6アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(特に、C
2-6アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールオキシ基(特に、C
6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(特に、C
7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(特に、C
1-12アシルオキシ基);メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(特に、C
1-6アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(特に、C
2-6アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールチオ基(特に、C
6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(特に、C
7-18アラルキルチオ基);カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(特に、C
1-6アルコキシ−カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(特に、C
6-14アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(特に、C
7-18アラルキルオキシ−カルボニル基);アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(特に、モノ又はジ−C
1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(特に、C
1-11アシルアミノ基);エポキシ基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、シクロヘキセンオキシド基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC
1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0031】
上記式(1)で表される化合物の中でも、特に、硬化物の耐熱性、耐光性の観点で、下記式(2)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化5】
【0032】
上記式(2)中、Yは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0033】
式(2)中のYが単結合である脂環式エポキシ化合物としては、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0034】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0035】
上記連結基Yとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、例えば、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0036】
上記式(2)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(2−1)〜(2−10)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記式(2−5)中のl、(2−7)中のmは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(2−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(2−9)、(2−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【化6】
【0038】
上記式(2−1)〜(2−10)で表される脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)などの市販品を使用することもできる。
【0039】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において、脂環式エポキシ化合物(A)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(2−1)で表される化合物[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)など]が特に好ましい。
【0040】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物)100重量%に対して、30〜100重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が30重量%未満では、硬化物の耐熱性、耐光性が低下する場合がある。なお、脂環式エポキシ化合物(A)として2種以上を使用する場合には、これらの脂環式エポキシ化合物(A)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0041】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)中の脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が10重量%未満では、硬化物の耐熱性、耐光性が低下する場合がある。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が90重量%を超えると、硬化物の機械強度が低下する場合がある。なお、脂環式エポキシ化合物(A)として2種以上を使用する場合には、これらの脂環式エポキシ化合物(A)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0042】
[ゴム粒子(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の必須成分であるゴム粒子(B)は、(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分とするポリマー(重合体)により構成され、表面にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基(ヒドロキシル基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方)を有するゴム粒子である。ゴム粒子(B)の表面に存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基は、硬化性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基を有する化合物(脂環式エポキシ化合物(A)等)のエポキシ基と反応し得る。表面にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有しないゴム粒子を使用した場合、冷熱サイクル等の熱衝撃により硬化物が白濁して透明性が低下するため好ましくない。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0043】
ゴム粒子(B)の形態は、特に限定されないが、例えば、非コアシェル構造(単層構造)、コアシェル構造(多層構造)などが挙げられる。中でも、ゴム粒子(B)としては、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とからなる多層構造(コアシェル構造)を有するゴム粒子が好ましい。
【0044】
ゴム粒子(B)(コアシェル構造を有するゴム粒子(B))におけるゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分とすることが好ましい。上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、その他、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどをモノマー成分として含むものであってもよい。
【0045】
中でも、上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、芳香族ビニル、ニトリル、及び共役ジエンからなる群より選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記コア部分を構成するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル/共役ジエン等の二元共重合体;(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/共役ジエン等の三元共重合体などが挙げられる。なお、上記コア部分を構成するポリマーには、ポリジメチルシロキサンやポリフェニルメチルシロキサンなどのシリコーンやポリウレタン等が含まれていてもよい。
【0046】
上記コア部分を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0047】
ゴム粒子(B)のコア部分は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族ビニル(特に、アクリル酸ブチル及びスチレン)をモノマー成分として含む共重合体より構成されたコア部分であることが、ゴム粒子の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
【0048】
ゴム粒子(B)のコア部分を構成するポリマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、60℃未満(例えば、−150℃以上、60℃未満)が好ましく、より好ましくは−150〜15℃、さらに好ましくは−100〜0℃である。上記ポリマーのガラス転移温度が60℃以上であると、硬化物の耐クラック性(各種応力に対してクラックを生じにくい特性)が低下する場合がある。なお、上記コア部分を構成するポリマーのガラス転移温度とは、下記Foxの式により算出される計算値を意味する(Bull.Am.Phys.Soc.,1(3)123(1956)参照)。下記Foxの式中、Tgはアクリルポリマーのガラス転移温度(単位:K)を示し、W
iはポリマーを構成するモノマー(単量体)全量に対するモノマーiの重量分率を示す。また、Tg
iはモノマーiの単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を示す。下記Foxの式は、ポリマーがモノマー1、モノマー2、・・・・、及びモノマーnの共重合体である場合の式を示す。
1/Tg=W
1/Tg
1+W
2/Tg
2+・・・+W
i/Tg
i+・・・+W
n/Tg
n
上記単独重合体のガラス転移温度は、各種文献に記載の値を採用することができ、例えば、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons,Inc.発行)に記載の値を採用できる。なお、文献に記載のないものについては、モノマー(単量体)を常法により重合して得られる単独重合体の、DSC法により測定されるガラス転移温度の値を採用することができる。
【0049】
ゴム粒子(B)のコア部分は、通常用いられる方法で製造することができ、例えば、上記モノマーを乳化重合法により重合する方法などにより製造することができる。乳化重合法においては、上記モノマーの全量を一括して仕込んで重合してもよく、上記モノマーの一部を重合した後、残りを連続的に又は断続的に添加して重合してもよく、さらに、シード粒子を使用する重合方法を使用してもよい。
【0050】
ゴム粒子(B)のシェル層を構成するポリマーは、上記コア部分を構成するポリマーとは異種のポリマー(異なる組成のポリマー)であることが好ましい。また、上述のように、上記シェル層は、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基として、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましい。これにより、特に、脂環式エポキシ化合物(A)との界面で接着性を向上させることができ、該シェル層を有するゴム粒子(B)を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物に対して、優れた耐クラック性を発揮させることができる。また、硬化物のガラス転移温度の低下を防止することもできる。
【0051】
上記シェル層を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として含むことが好ましい。例えば、上記コア部分における(メタ)アクリル酸エステルとしてアクリル酸ブチルを用いた場合、シェル層を構成するポリマーのモノマー成分として、アクリル酸ブチル以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル以外に含んでいてもよいモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。ゴム粒子(B)においては、シェル層を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーを単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましく、特に、少なくとも芳香族ビニルを含むことが、ゴム粒子(B)の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
【0052】
さらに、上記シェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基をゴム粒子(B)の表面に形成するために、ヒドロキシル基含有モノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)や、カルボキシル基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸などのα,β−不飽和酸、マレイン酸無水物などのα,β−不飽和酸無水物など)を含有することが好ましい。
【0053】
ゴム粒子(B)におけるシェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーから選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記シェル層は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含む共重合体、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、及びα,β−不飽和酸をモノマー成分として含む共重合体などから構成されたシェル層であることが好ましい。
【0054】
また、上記シェル層を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、コア部分と同様に、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0055】
ゴム粒子(B)のシェル層を構成するポリマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、60〜120℃が好ましく、より好ましくは70〜115℃である。上記ポリマーのガラス転移温度が60℃未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、上記ポリマーのガラス転移温度が120℃を超えると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。なお、上記シェル層を構成するポリマーのガラス転移温度は、上記Foxの式により算出される計算値を意味し、例えば、上記と同様に測定できる。
【0056】
ゴム粒子(B)(コアシェル構造を有するゴム粒子(B))は、上記コア部分をシェル層により被覆することで得られる。上記コア部分をシェル層で被覆する方法としては、例えば、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分の表面に、シェル層を構成する重合体(特に、共重合体)を塗布することにより被覆する方法、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分を幹成分とし、シェル層を構成する各成分を枝成分としてグラフト重合する方法などが挙げられる。
【0057】
ゴム粒子(B)の平均粒子径は、10〜500nmであり、好ましくは20〜400nmである。また、ゴム粒子(B)の最大粒子径は、50〜1000nmであり、好ましくは100〜800nmである。平均粒子径が500nmを超えると、又は、最大粒子径が1000nmを超えると、硬化物におけるゴム粒子の分散性が低下し、耐クラック性が低下する。一方、平均粒子径が10nm未満であると、又は、最大粒子径が50nm未満であると、硬化物の耐クラック性向上の効果が得られにくくなる。
【0058】
ゴム粒子(B)の屈折率は、特に限定されないが、1.40〜1.60が好ましく、より好ましくは1.42〜1.58である。また、ゴム粒子(B)の屈折率と、該ゴム粒子(B)を含む硬化性エポキシ樹脂組成物(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物)を硬化して得られる硬化物の屈折率との差は±0.03以内(好ましくは±0.02以内)である。上記屈折率の差が±0.03を上回ると、硬化物の透明性が低下し、時には白濁して、光半導体装置の光度が低下する傾向があり、光半導体装置の機能を消失させてしまう場合がある。
【0059】
ゴム粒子(B)の屈折率は、例えば、ゴム粒子1gを型に注型して210℃、4MPaで圧縮成形し、厚さ1mmの平板を得、得られた平板から、縦20mm×横6mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
【0060】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の屈折率は、例えば、下記硬化物の項に記載の加熱硬化方法により得られた硬化物から、縦20mm×横6mm×厚さ1mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
【0061】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるゴム粒子(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。ゴム粒子(B)の含有量が0.5重量部を下回ると、硬化物の耐クラック性が低下する傾向がある。一方、ゴム粒子(B)の含有量が30重量部を上回ると、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。なお、ゴム粒子(B)として2種以上を使用する場合には、これらのゴム粒子(B)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0062】
[シリカフィラー(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の必須成分であるシリカフィラー(C)は、炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物、及び直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物からなる群より選択された少なくとも1種の表面処理剤により表面処理されたシリカ(表面処理シリカ)である。即ち、シリカフィラー(C)は、炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位(例えば、炭素数2以上のアルキルシリル基)、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位(例えば、トリメチルシリル基)、及び直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位(例えば、ジメチルポリシロキサン基)からなる群より選択された少なくとも1種の構成単位を、その表面に有する。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてシリカフィラー(C)は、主に、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる際の加熱による粘度低下に伴う蛍光体の沈降を抑制し、蛍光体の沈降に伴う光半導体装置の発光色のバラつきや全光束の低下を抑制する役割を担う。さらに、シリカフィラー(C)は大量に配合することなく上述の蛍光体の沈降を抑制することができるため、室温における硬化性エポキシ樹脂組成物の良好な作業性を確保することも可能である。
【0063】
シリカフィラー(C)は、シリカを上述の特定の表面処理剤により表面処理することによって得られる。なお、本明細書においては、シリカフィラー(C)の前駆体である表面処理される前のシリカ(未表面処理シリカ)のことを「原料シリカ」と称する場合がある。上記原料シリカとしては、公知乃至慣用のシリカを使用することができ、特に限定されないが、溶融シリカ、結晶シリカ、破砕シリカ、微細シリカ、高純度合成シリカなどが挙げられる。上記原料シリカの形状、平均一次粒子径などは、シリカフィラー(C)の形状、平均一次粒子径などに応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
【0064】
上記原料シリカは、公知乃至慣用の方法(例えば、沈降法やゲル法などの湿式法;燃焼法やアーク法などの乾式法など)により製造することができる。上記原料シリカとしては、具体的には、四塩化ケイ素等のケイ素化合物を酸水素炎中で高温で加水分解させて得られる原料シリカ(ヒュームドシリカ)などが挙げられる。また、上記原料シリカとしては、市販品を使用することも可能である。
【0065】
シリカフィラー(C)における表面処理剤としての炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルシランなどの炭素数2〜20(好ましくは3〜20)の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルシランなどが挙げられる。また、シリカフィラー(C)における表面処理剤としてのトリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなどのトリメチルシリル化剤などが挙げられる。さらに、シリカフィラー(C)における表面処理剤としての直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基(ポリジメチルシロキサン構造)を有するシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0066】
なお、表面処理剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、シリカフィラー(C)を製造するための表面処理剤としては、上述の表面処理剤を必須の表面処理剤として使用するものであればよく、上述の表面処理剤以外の表面処理剤を併用することも可能である。
【0067】
上記原料シリカの表面処理は、公知乃至慣用の方法により実施することができる。表面処理の方法としては、具体的には、ミキサー(ヘンシェルミキサー、V型ミキサーなど)中に原料シリカを入れ、攪拌しながら上述の表面処理剤を添加する乾式法;原料シリカのスラリー中に上述の表面処理剤を添加するスラリー法;原料シリカの乾燥後に上述の表面処理剤をスプレー付与するスプレー法などが挙げられる。上記表面処理にあたり、上述の表面処理剤はそのまま使用することもできるし、溶液又は分散液の状態で使用することもできる。
【0068】
シリカフィラー(C)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、破砕状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などが挙げられる。中でも、分散性の観点で、球状が好ましい。また、シリカフィラー(C)は中空粒子、中実粒子、多孔粒子などのいずれであってもよい。
【0069】
シリカフィラー(C)の平均一次粒子径は、5nm〜30μmであり、好ましくは6nm〜20μm、より好ましくは7nm〜10μmである。シリカフィラー(C)の平均一次粒子径が5nm未満であると、作業性・安全性から取り扱いが困難となる。一方、シリカフィラー(C)の平均一次粒子径が30μmを超えると、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物(封止材)の透明性が不十分となる。なお、シリカフィラー(C)の平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの電子顕微鏡を用いて、例えば、100個のシリカフィラー(C)の一次粒子径の算術平均を算出することにより測定することができる。
【0070】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においては、シリカフィラー(C)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、シリカフィラー(C)としては市販品を使用することもでき、例えば、商品名「アエロジルR805」(日本アエロジル(株)製)、商品名「アエロジルRX200」(日本アエロジル(株)製)、商品名「アエロジルRY200」(日本アエロジル(株)製)などを使用することができる。
【0071】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるシリカフィラー(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)及びゴム粒子(B)の全量100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜12重量部、特に好ましくは4〜7重量部である。シリカフィラー(C)の含有量が1重量部未満であると、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる際の加熱によって蛍光体が沈降しやすく、得られる光半導体装置に発光色のバラつきが生じたり、全光束が低下しやすくなる場合がある。一方、シリカフィラー(C)の含有量が20重量部を超えると、硬化性エポキシ樹脂組成物の室温における粘度が高くなり過ぎ、作業性が低下する場合がある。また、硬化物の透明性が低下し、光半導体装置の全光束が低下する場合がある。特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特定の表面処理がされたシリカフィラー(C)を特定量(例えば、1〜20重量部)含有した場合に、硬化時の蛍光体の沈降の抑制と、室温での作業性確保の両方の効果を特にバランスよく発現することができる。なお、シリカフィラー(C)として2種以上を使用する場合には、これらのシリカフィラー(C)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0072】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、硬化剤(D)及び硬化促進剤(E)、又は、硬化触媒(F)を含んでいてもよい。
【0073】
[硬化剤(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(D)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。硬化剤(D)としては、中でも、25℃で液状の酸無水物が好ましく、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの常温(25℃)で固体状の酸無水物についても、常温(25℃)で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明における硬化剤(D)として好ましく使用することができる。なお、硬化剤(D)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上述のように、硬化剤(D)としては、硬化物の耐熱性、耐光性、耐クラック性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
【0074】
また、本発明においては、硬化剤(D)として、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、商品名「リカシッド MH−700F」(新日本理化(株)製)、商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0075】
硬化剤(D)の含有量(配合量)としては、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは100〜145重量部である。より具体的には、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(D)の含有量が50重量部未満であると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(D)の含有量が200重量部を超えると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。なお、硬化剤(D)として2種以上を使用する場合には、これらの硬化剤(D)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0076】
[硬化促進剤(E)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化促進剤(E)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤(D)により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤(E)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。硬化促進剤(E)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
また、本発明においては、硬化促進剤(E)として、商品名「U−CAT SA 506」、商品名「U−CAT SA 102」、商品名「U−CAT 5003」、商品名「U−CAT 18X」、「12XD」(開発品)(いずれもサンアプロ(株)製)、商品名「TPP−K」、商品名「TPP−MK」(いずれも北興化学工業(株)製)、商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0078】
硬化促進剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.25〜2.5重量部である。硬化促進剤(E)の含有量が0.05重量部未満であると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(E)の含有量が5重量部を超えると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。なお、硬化促進剤(E)として2種以上を使用する場合には、これらの硬化促進剤(E)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0079】
[硬化触媒(F)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においては、上述の硬化剤(D)及び硬化促進剤(E)の代わりに、硬化触媒(F)を用いることもできる。硬化剤(D)及び硬化促進剤(E)を用いた場合と同様に、硬化触媒(F)を用いることによって、エポキシ基を有する化合物の硬化反応を進行させ、硬化物を得ることができる。硬化触媒(F)としては、特に限定されないが、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して重合を開始させるカチオン触媒(カチオン重合開始剤)を用いることができる。なお、硬化触媒(F)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などが挙げられる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、商品名「CD−1010」、商品名「CD−1011」、商品名「CD−1012」(以上、米国サートマー製)、商品名「イルガキュア264」(BASF社製)、商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。
【0081】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などが挙げられ、商品名「PP−33」、商品名「CP−66」、商品名「CP−77」((株)ADEKA製)、商品名「FC−509」(スリーエム製)、商品名「UVE1014」(G.E.製)、商品名「サンエイド SI−60L」、商品名「サンエイド SI−80L」、商品名「サンエイド SI−100L」、商品名「サンエイド SI−110L」、商品名「サンエイド SI−150L」(三新化学工業(株)製)、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
【0082】
硬化触媒(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。硬化触媒(F)を上記範囲内で使用することにより、耐熱性、耐光性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。なお、硬化触媒(F)として2種以上を使用する場合には、これらの硬化触媒(F)の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0083】
[その他のエポキシ化合物]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(「その他のエポキシ化合物」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物[例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物など]、脂肪族グリシジルエーテル系エポキシ化合物[例えば、脂肪族ポリグリシジルエーテルなど]、グリシジルエステル系エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物(A)以外の脂環式エポキシ化合物[例えば、脂環にエポキシ基が直接単結合で結合した化合物、水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物など]、エポキシ基を有するイソシアヌレート化合物[例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート化合物など]などが挙げられる。
【0084】
上述の脂環にエポキシ基が直接単結合で結合した化合物としては、具体的には、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0085】
式(3)中、R′はp価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nは自然数を表す。p価のアルコール[R′−(OH)
p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(丸括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE3150」、(株)ダイセル製)などが挙げられる。
【0086】
上記水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、下記式(4)で表される化合物などのビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタンなどのビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(核水添ビスフェノールF型エポキシ化合物);水添ビフェノール型エポキシ化合物;水添フェノールノボラック型エポキシ化合物;水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ化合物の水添エポキシ化合物;水添ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水添エポキシ化合物などが挙げられる。
【化9】
[式(4)中、qは0〜2の整数を示す。]
【0087】
上記エポキシ基を有するイソシアヌレート化合物の中でも、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物は下記式(I)で表される化合物である。特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物を含む場合、硬化物の靭性が向上し、耐クラック性、特に、リフロー工程における高温での加熱や冷熱サイクル等の熱衝撃が加えられた場合の耐クラック性が向上する傾向がある。
【化10】
【0088】
上記式(I)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(I)中のR
1及びR
2は、水素原子であることが特に好ましい。
【0089】
上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0090】
なお、上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物は、アルコールや酸無水物など、エポキシ基と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いることもできる。
【0091】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において上記その他のエポキシ化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、上記その他のエポキシ化合物としては、硬化物の透明性、機械物性(例えば、強靭性)の観点で、核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(核水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物が好ましい。
【0092】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における上記その他のエポキシ化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、より好ましくは10〜100重量部である。
【0093】
中でも、核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、より好ましくは8〜45重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物の含有量が50重量部を超えると、硬化物の耐熱性、耐光性が不十分となる場合がある。一方、核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物の含有量を5重量部以上とすることにより、硬化物の耐クラック性が向上する場合がある。なお、核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物として2種以上を使用する場合には、これらの核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0094】
また、特に、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、より好ましくは8〜45重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の含有量が50重量部を超えると、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。一方、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の含有量を5重量部以上とすることにより、硬化物の耐クラック性が向上する場合がある。なお、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物として2種以上を使用する場合には、これらのモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0095】
[蛍光体]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、蛍光体を含んでいてもよい。上記蛍光体としては、特定の波長領域の光により励起され、異なる波長領域の光を発光する公知乃至慣用の蛍光体を使用することができる。例えば、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を白色光半導体装置における青色光の変換機能を有する封止剤として使用する場合には、一般式A
3B
5O
12:M[式中、Aは、Y、Gd、Tb、La、Lu、Se、及びSmからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Bは、Al、Ga、及びInからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Mは、Ce、Pr、Eu、Cr、Nd、及びErからなる群より選択された1種以上の元素を示す]で表されるYAG系の蛍光体微粒子(例えば、Y
3Al
5O
12:Ce蛍光体微粒子、(Y,Gd,Tb)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce蛍光体微粒子など)を好ましく使用できる。また、上記無機蛍光体微粒子としては、シリケート系蛍光体微粒子(例えば、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Euなど)を使用することもできる。なお、蛍光体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0096】
上記蛍光体の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)とゴム粒子(B)の合計量100重量部に対して、0.5〜50重量部であり、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは2〜10重量部である。蛍光体の含有量が0.5重量部未満であると、蛍光体による波長変換機能を十分に発揮させることができない場合がある。一方、蛍光体の含有量が50重量部を超えると、硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、作業性が著しく低下する場合がある。また、光半導体装置における発光色の制御が困難となる場合がある。なお、蛍光体として2種以上を使用する場合には、これらの蛍光体の総量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0097】
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を含有していてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水酸基を有する化合物を使用すると、反応を緩やかに進行させることができる。その他にも、粘度や透明性を損なわない範囲内で、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、アルミナなどの無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、離型剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0098】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を、必要に応じて加熱した状態で攪拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。上記攪拌・混合の方法は、特に限定されず、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザーなどの各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置などの公知乃至慣用の攪拌・混合手段を使用できる。また、攪拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0099】
特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるゴム粒子(B)は、あらかじめ脂環式エポキシ化合物(A)中に分散させた組成物(当該組成物を「ゴム粒子分散エポキシ化合物」と称する場合がある)の状態で配合することが好ましい。即ち、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物と、シリカフィラー(C)と、必要に応じてその他の成分を混合することにより調製することが好ましい。このような調製方法により、特に、硬化性エポキシ樹脂組成物におけるゴム粒子(B)の分散性を向上させることができる。但し、ゴム粒子(B)の配合方法は、上記方法に限定されず、それ単独で配合する方法であってもよい。
【0100】
(ゴム粒子分散エポキシ化合物)
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物は、上記ゴム粒子を脂環式エポキシ化合物(A)に分散させることによって得られる。なお、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物における脂環式エポキシ化合物(A)は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。同様に、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物におけるゴム粒子(B)は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するゴム粒子(B)の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。
【0101】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度は、特に限定されないが、25℃における粘度(粘度(25℃))として400〜50000mPa・sが好ましく、中でも、500〜10000mPa・sがより好ましい。上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度(25℃)が50000mPa・sを上回ると、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造、硬化性エポキシ樹脂組成物の製造共に生産性が低下する傾向がある。なお、ゴム粒子分散エポキシ化合物の25℃における粘度は、例えば、デジタル粘度計(型番「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を用いて、ローター:標準1°34′×R24、温度:25℃、回転数:0.5〜10rpmの条件で測定することができる。
【0102】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度は、例えば、反応性希釈剤を併用することにより調整することができる(即ち、ゴム粒子分散エポキシ化合物は、さらに反応性希釈剤を含んでいてもよい)。上記反応性希釈剤としては、例えば、常温(25℃)における粘度が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルを好ましく使用することができる。粘度(25℃)が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0103】
上記反応性希釈剤の使用量は、適宜調整することができ、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)とゴム粒子(B)の合計量100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、より好ましくは25重量部以下(例えば、5〜25重量部)である。使用量が30重量部を超えると、耐クラック性等の所望の性能を得ることが困難となる傾向がある。
【0104】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造方法は、特に限定されず、周知慣用の方法を使用することができる。例えば、ゴム粒子(B)を脱水乾燥して粉体とした後に、脂環式エポキシ化合物(A)に混合し、分散させる方法や、ゴム粒子(B)のエマルジョンと脂環式エポキシ化合物(A)とを直接混合し、続いて脱水する方法などが挙げられる。
【0105】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、100〜10000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜9000mPa・s、さらに好ましくは300〜8000mPa・sである。25℃における粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。一方、25℃における粘度が10000mPa・sを超えると、注型時の作業性が低下したり、硬化物に注型不良に由来する不具合が生じやすくなる傾向がある。なお、硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、上述のゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度と同様の方法により測定できる。
【0106】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の75℃における粘度は、特に限定されないが、100〜4000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜3500mPa・s、さらに好ましくは250〜3000mPa・sである。75℃における粘度が100mPa・s未満であると、硬化時に蛍光体が沈降しやすく、光半導体装置の発光色のバラつきや全光束の低下が生じやすくなる傾向がある。なお、硬化性エポキシ樹脂組成物の75℃における粘度は、測定温度を75℃とすること以外は25℃における粘度と同様に測定することができる。
【0107】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、発光色のバラつきや全光束の低下が生じにくい封止材(硬化物)を高い生産性で得ることができる。特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が上述のモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物及び/又は核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物を含む場合、上記硬化物はいっそう優れた耐熱性及び強靭性を発揮する。硬化の際の加熱温度(硬化温度)は、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは100〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度と硬化時間が上記範囲の下限値より低い場合は、硬化が不十分となり、逆に上記範囲の上限値より高い場合は、樹脂成分の分解が起きる場合があるので、いずれも好ましくない。硬化条件は種々の条件に依存するが、例えば、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くすること等により、適宜調整することができる。
【0108】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体装置における光半導体素子の封止材を形成するための樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)として好ましく使用できる。上記光半導体封止用樹脂組成物として用いることにより、蛍光体の分散性に優れ、発光色のバラツキや全光束の低下等の問題を生じさせない硬化物(封止剤)により光半導体素子が封止された光半導体装置を、高い生産性で得ることができる。上記光半導体装置は、高出力、高輝度の光半導体素子を備える場合であっても、経時で光度が低下しにくい。
【0109】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置である。光半導体素子の封止は、上述の方法で調製した硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行う。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。硬化温度と硬化時間は、硬化物の調製時と同様の範囲で設定することができる。本発明の光半導体装置は、発光色のバラつきや全光束の低下が抑制されており、なおかつ生産性が高い。
【0110】
特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、一定の空間に流し込んだ後に硬化させる態様で用いられる封止剤として好ましく使用できる。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、蛍光体の良好な分散状態が維持され、さらに、硬化時の加熱によっても粘度が低下し過ぎず、蛍光体の良好な分散性が維持されるという優れた効果を発揮できるためである。従って、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に、LEDのPLCC封止材、砲弾型のLEDのインナー封止材、フリップチップ封止材などを形成するための封止剤として好ましく使用することができる。
【0111】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の光半導体素子の封止用途に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの各種用途にも使用することができる。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0113】
製造例1
(ゴム粒子の製造)
還流冷却器付きの1L重合容器に、イオン交換水500g、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.68gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら、80℃に昇温した。ここに、ゴム粒子のコア部分を形成するために必要とする量の約5重量%分に該当するアクリル酸ブチル9.5g、スチレン2.57g、及びジビニルベンゼン0.39gからなる単量体混合物を一括添加し、20分間撹拌して乳化させた後、ペルオキソ二硫酸カリウム9.5mgを添加し、1時間撹拌して最初のシード重合を行った。続いて、ペルオキソ二硫酸カリウム180.5mgを添加し、5分間撹拌した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の残り(約95重量%分)のアクリル酸ブチル180.5g、スチレン48.89g、ジビニルベンゼン7.33gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.95gを溶解させてなる単量体混合物を2時間かけて連続的に添加し、2度目のシード重合を行い、その後、1時間熟成してコア部分を得た。
次いで、ペルオキソ二硫酸カリウム60mgを添加して5分間撹拌し、ここに、メタクリル酸メチル60g、アクリル酸1.5g、及びアリルメタクリレート0.3gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3gを溶解させてなる単量体混合物を30分かけて連続的に添加し、シード重合を行った。その後、1時間熟成し、コア部分を被覆するシェル層を形成した。
次いで、室温(25℃)まで冷却し、目開き120μmのプラスチック製網で濾過することにより、コアシェル構造を有するゴム粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスをマイナス30℃で凍結し、吸引濾過器で脱水洗浄した後、60℃で一昼夜送風乾燥してゴム粒子(表面にカルボキシル基を有するゴム粒子)を得た。得られたゴム粒子の平均粒子径は254nm、最大粒子径は486nmであった。なお、ゴム粒子の屈折率を上述の方法で測定したところ、1.500であった。
【0114】
なお、ゴム粒子の平均粒子径、最大粒子径は、動的光散乱法を測定原理とした「Nanotrac
TM」形式のナノトラック粒度分布測定装置(商品名「UPA−EX150」、日機装(株)製)を使用して試料を測定し、得られた粒度分布曲線において、累積カーブが50%となる時点の粒子径である累積平均径を平均粒子径、粒度分布測定結果の頻度(%)が0.00%を超えた時点の最大の粒子径を最大粒子径とした。なお、上記試料としては、下記製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物1重量部をテトラヒドロフラン20重量部に分散させたものを用いた。
【0115】
製造例2
(ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造)
製造例1で得られたゴム粒子5重量部を、窒素気流下、60℃に加温した状態でディゾルバー(1000rpm、60分間)を使用して、商品名「セロキサイド2021P」(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製)100重量部に分散させ、真空脱泡して、ゴム粒子分散エポキシ化合物(脂環式エポキシ化合物とゴム粒子の混合物、25℃での粘度:559mPa・s)を得た。
なお、製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物(5重量部のゴム粒子を100重量部のセロキサイド2021Pに分散させたもの)の粘度(25℃での粘度)は、デジタル粘度計(商品名「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を使用して測定した。
【0116】
製造例3
(硬化剤組成物(1)の製造)
硬化剤(酸無水物)(商品名「リカシッド MH−700」、新日本理化(株)製)100重量部、硬化促進剤(商品名「U−CAT 18X」、サンアプロ(株)製)0.5重量部、及びエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)1重量部を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して硬化剤組成物(1)を得た。
【0117】
製造例4
(硬化剤組成物(2)の製造)
硬化剤(酸無水物)(商品名「リカシッド MH−700」、新日本理化(株)製)100重量部、硬化促進剤(商品名「U−CAT 18X」、サンアプロ(株)製)0.5重量部、エチレングリコール(和光純薬工業(株)製)1重量部、及びポリエステル樹脂20重量部を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して硬化剤組成物(2)を得た。
なお、上記ポリエステル樹脂は、以下の手順で調製した。
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応容器に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(東京化成工業(株)製)172重量部、ネオペンチルグリコール(東京化成工業(株)製)208重量部、テトラブチルチタネート(和光純薬工業(株)製)0.1重量部を仕込んで、160℃になるまで加熱し、さらに160℃から250℃まで4時間かけて昇温した。次いで、1時間かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下まで減圧してから250℃で1時間反応させ、ポリエステル樹脂(脂環式ポリエステル樹脂)を得た。
【0118】
実施例1
表1に示すように、製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物100重量部、及び、ナノフィラー(オクチルシランにより表面処理されたシリカ;商品名「アエロジルR805」、日本アエロジル(株)製)5重量部を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、主剤を得た。
次に、上記で得た主剤(105重量部)、製造例3で得られた硬化剤組成物(1)120重量部、及び、上記主剤と硬化剤組成物(1)の合計量100重量部に対して5重量部の蛍光体(YAG系蛍光体)[Y
3Al
5O
12:Ce、平均粒径5μm、比重5g/cm
3]を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
さらに、上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を
図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、120℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で5時間加熱することで、上記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。なお、
図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
【0119】
実施例2〜7、比較例1〜6
配合組成(単位:重量部)を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1における蛍光体(YAG系蛍光体)の配合量は、主剤と硬化剤組成物の合計量100重量部(又は主剤と硬化触媒の合計量100重量部)に対する量(単位:重量部)で表している。
また、実施例1と同様に光半導体装置を作製した。
【0120】
<評価>
実施例及び比較例で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物及び光半導体装置について、下記の評価試験を実施した。
【0121】
[主剤の粘度(25℃)]
実施例及び比較例で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物における主剤の25℃における粘度を、デジタル粘度計(型番「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を用いて、ローター:標準1°34′×R24、温度:25℃、回転数:0.5〜10rpmの条件で測定した。結果を表1の「主剤粘度(mPa・s/25℃)」の欄に示す。
なお、25℃における主剤の粘度が10000mPa・s以下であれば、室温における作業性が良好であると判断できる。
【0122】
[初期光度]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置について、20mAの電流を流した際の全光束を全光束測定機を用いて測定し、これを初期光度(単位:lm)とした。結果を表1の「初期光度(lm)」の欄に示す。
なお、初期光度が3.2lm以上であれば、硬化物(封止材)における蛍光体の分散状態が良好であると判断できる。
【0123】
[総合判定]
実施例及び比較例で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物及び光半導体装置について、主剤の25℃における粘度が10000mPa・s以下であり、なおかつ光半導体装置の初期光度が3.2lm以上であった場合を○(優れている)と評価し、これ以外の場合を×(劣っている)と評価した。
結果を表1の「総合判定」の欄に示す。
【0124】
[ゴム粒子と硬化物の屈折率差]
製造例1で得られたゴム粒子の屈折率と実施例及び比較例で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の屈折率との差(屈折率差)を、上述の方法で測定した。なお、硬化物(屈折率の測定用サンプル)は、上述のように、硬化性エポキシ樹脂組成物を、120℃、5時間の条件で硬化させて得られた硬化物から、縦20mm×横6mm×厚さ1mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めた。結果を表1の「ゴム粒子と硬化物の屈折率差」の欄に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
なお、実施例、比較例で使用した成分は、以下の通りである。
セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製
MA−DGIC:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、四国化成工業(株)製
YX8034:核水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、新日鐵化学(株)製
アエロジルR805:炭素数2以上のアルキルシリル基を有するアルキルシラン(オクチルシラン)により表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジルRX200:ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジルRY200:ジメチルポリシロキサン基を有するシリコーンオイルにより表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジルR711:メタクリロキシシランにより表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジル200:表面処理されていない(未表面処理)シリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジルR974:ジメチルジクロロシランにより表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
アエロジルR104:オクタメチルシクロテトラシロキサンにより表面処理されたシリカ(平均一次粒子径:12nm)、日本アエロジル(株)製
リカシッド MH−700:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化(株)製
U−CAT 18X:硬化促進剤、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
サンエイド SI−100L:アリールスルホニウム塩、三新化学工業(株)製
YAG:蛍光体(Y
3Al
5O
12:Ce)、平均粒径5μm、比重5g/cm
3
【0127】
試験機器
・全光束測定機
オプトロニックラボラトリーズ社製 マルチ分光放射測定システム OL771
・デジタル粘度計
(株)トキメック製 DVU−EII型