(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、センターリリースタイプのバックルにおいて、キーロック構造を備えたものが知られている。このようなバックルでは、ソケットにはプラグとの係合状態を解除するための押圧解除片が設けられ、この押圧解除片には偏心カムとして機能するロータが回動自在に取り付けられている。また、ソケットには押圧解除片とロータとを覆うように施錠カバーがスライド自在に取り付けられている。従って、このバックルは、プラグ、ソケット、ロータ、施錠カバー、およびロータを回動させるためのキーからなる5部品で構成される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のバックルでは、施錠カバーは、ロータの回動量に応じてスライドし、押圧解除片と共に押圧可能な位置または押圧不可能な位置に位置決めされる。そして、このバックルによれば、プラグとソケットとを係合させた状態において、施錠カバーの鍵穴を通してキーをロータに差し込み、キー操作にてロータを回動させると、ロータが偏心カムとして機能することで、施錠カバーが押圧解除片を覆ったまま押圧不可能な位置までスライドする。このため、押圧解除片もまた、施錠カバーで覆われることにより押圧できないことから、ソケットとプラグとの係合を解除できず、バックルがキーロック状態となる。
【0004】
逆に、ロータに差し込んだキーをさらに回動させるか、または前述とは逆方向に回動して戻すと、施錠カバーが押圧可能な位置までスライドし、バックルのキーロックが解除される。この後、施錠カバーを押圧解除片ごと押圧することにより、プラグとソケットとの係合が解除され、プラグをソケットから抜くことが可能である。
【0005】
また、ロック付きのバックルとして、前述のロータおよび施錠カバーの両方の機能をロッキングタンブラで代用したものも知られている。従って、このバックルは、プラグ、ソケット、タンブラ、およびタンブラを回動させるためのキーからなる4部品で構成される(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2のバックルでは、プラグに設けられたソケットとの係合部を押圧することで、ソケットとの係合を解除する。そして、プラグとソケットとが係合した状態において、キーを用いてタンブラを回動させ、タンブラに設けられたロックアームをプラグの係合部とソケットの内壁面との間に位置させると、プラグの係合部がロックアームに邪魔されて押圧不可能となり、プラグとソケットとの係合を解除できず、バックルがキーロック状態となる。
【0007】
一方、キーをさらに回動させるか、逆方向に戻すことにより、ロックアームがプラグの係合部からずれた位置に移動し、係合部が押圧操作可能な状態となってキーロックが解除され、プラグの係合部を押圧することで、プラグとソケットとの係合が解除されてソケットを抜くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1,2に記載のバックルでは、構成部品が多いため、バックル全体を薄型化するには限界がある。また、特許文献2のタンブラは、キーシリンダとしてユニット化された部品であるから、部品の大きさとしても大きく、特許文献1のバックルに比べると分品点数は少ないが、バックル全体としては大型化するという問題がある。
【0010】
加えて、特許文献1,2に記載のバックルによれば、バックルをキーロックするためには、プラグをソケットに差し込んで係合させた後、キーを用いてキー操作を行う必要がある。反対にプラグをソケットから抜き取る場合には、キー操作にて一旦キーロックを解除した後、プラグとソケットとの係合を解除する操作を行わなければならない。このように、キーロック時やその解除時のキー操作を含めると、プラグとソケットとの挿抜に手間がかかるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、薄型化を実現でき、かつ操作性を良好にできるキーロック付きバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のキーロック付きバックルは、挿抜自在に設けられたプラグおよびソケットと、前記プラグおよび前記ソケットとは別体のキーとで構成され、前記ソケットは、その表裏方向に間隔を空けて設けられた表壁および裏壁を備え、前記ソケットにおいて、前記表壁および前記裏壁間に前記プラグが挿抜される側には、開口が設けられ、前記ソケットには、前記表壁を貫通したキー孔が形成され、前記プラグおよび前記ソケットのいずれか一方には、弾性変形可能な弾性係合片が設けられ、前記プラグおよび前記ソケットのいずれか他方には、前記弾性係合片と係合する係合部が設けられ、前記キーは、回動式であり、
前記キー孔に差し込まれる差込部を備え、前記
差込部は、
回動中心が設けられた軸部と、前記軸部の外周から径方向の両側に向けて突出したキー側押圧部
とで構成され、前記弾性係合片には、前記キーの回動に伴って前記キー側押圧部
が乗り上げる押圧面を有した係合片側押圧部が設けられ、
前記キー側押圧部の前記押圧面への乗り上げによって前記係合片側押圧部が押圧されることでの前記弾性係合片の弾性変形により、前記弾性係合片と前記係合部との係合が解除されることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、バックルの構成部品としては、プラグ、ソケット、およびキーの3部品であるため、従来のようなロータや施錠カバー、あるいはタンブラといった部品を不要にでき、薄型化を促進できる。
また、プラグおよびソケットは、押圧係合片と係合部との係合により係合状態となるが、このような係合状態を解除するためには、キーを用いる他に方法がなく、キー以外の外部操作等によって解除することができない。すなわち、プラグをソケットに挿入することで行われる係合操作が、そのままキーロック操作になるのであり、キーロック時のキー操作を不要にできる。また、キーによるロック解除がそのまま係合解除の操作になるので、ロック解除後に改めて係合を解除するための操作を行う必要がない。このことにより、バックルの操作性を格段に向上させることができる。
【0014】
本発明によれば、キーをキー孔に差し込むだけでなく、回動させて初めてロックおよび係合が解除されるので、キー以外のものをキー孔に差し込んで解除しようとしても、解除し難くでき、セキュリティ性を良好にできる。
さらに、キー操作による解除の際には、キーを回動させてキー側押圧部を係合片側押圧部の押圧面に乗り上げるのであるが、キー側押圧部には傾斜面が設けられ、この傾斜面が係合片側押圧部の端縁に接触するため、キーの回動に伴う押圧面へのキー側押圧部の乗り上げをスムーズにでき、キーの操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明のキーロック付きバックルでは、前記押圧面は、前記キーの回動に伴って前記キー側押圧部と接触するように前記弾性係合片の先端側から基端側に向けて傾斜していることを特徴とする。
本発明によれば、弾性係合片をプラグ側に設ける場合において、係合片側押圧部の押圧面が傾斜していることにより、キーの回動に伴ってキー側押圧部は、弾性係合片を変形させるように押圧面を単に押圧するだけではなく、プラグの抜き取り方向にも押圧するようになり、プラグのロック解除および係合解除に加えて、プラグをソケットに対して所定量押し出すことができ、その後のプラグの抜き取り操作を容易にできる。
【0016】
本発明のキーロック付きバックルでは、前記キーの前記回動中心は、前記プラグおよび前記ソケットの幅方向の中心から該幅方向の一方側へずれており、前記キー側押圧部の前記傾斜面は、前記キーの回動中心から前記幅方向の他方側へずれた位置で前記係合片側押圧部と接触することを特徴とする。
キー側押圧部は、回動中心となる軸部に対して径方向に突出しており、回転中心からずれて設けられている。このため、キーの回動中心とプラグおよびソケットの幅方向の中心とが一致していると、キー側押圧部と弾性係合片との接触位置が幅方向の中心からずれてしまい、弾性係合片を均一に弾性変形させることができない可能性がある。
そこで本発明では、キーの回動中心を幅方向の中心からずらし、キー側押圧部を弾性係合片に対して幅方向の中心寄りの位置で接触させることとし、こうすることにより、弾性係合片の偏った変形を防止でき、弾性係合片と係合部との係合をより確実に解除できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2において、バックル1は、ロック機構を有したセンターリリースタイプであって、互いに係脱自在なプラグ2およびソケット3と、ソケット3に差し込まれるキー4とからなり、それぞれが合成樹脂製とされた3部品で構成される。つまり、バックル1としては、キー4を備えているものの、従来のようなロータや施錠カバー、あるいはタンブラといった部品は用いられておらず、部品点数を削減することで、一層の薄型化が図られている。
【0019】
プラグ2は、平坦な表面21Aおよび裏面21Bを有した把持部21を備える。把持部21には、表面21Aおよび裏面21Bを貫通する開口部22Aが設けられ、開口部22A内には、プラグ2の幅方向に沿ってベルト巻付杆22Bが設けられている。これら開口部22Aおよびベルト巻付杆22Bにより、ベルト装着部22が構成される。把持部21の幅方向の両側には、挿抜されるソケット3側に向けて延出した一対のガイド片23,23が設けられている。また、把持部21からは、一対のガイド片23,23間に位置する弾性係合片24が延設されている。ガイド片23と弾性係合片24との間は、スリット25になっている。
【0020】
ガイド片23の裏面23Aには、ガイド片23の延出方向(ソケット3との挿抜方向に同じ)に沿って連続した溝部26が設けられている。溝部26は、ソケット3に設けられた突条部54(
図3参照)と係合するようになっており、プラグ2が表裏を違えてソケット3に挿入されるのを防止している。
【0021】
一方、弾性係合片24の表面24Aには、平面視で矩形状の係合凹部27が設けられている。係合凹部27は、挿入方向の先端側に向かうに従って凹状部分の深さが深くなるように傾斜した傾斜面27Aと、傾斜面27Aの端縁と表面24Aとを連続させる係合部27Bとを備える。
【0022】
また、弾性係合片24の先端側は、裏面24B側に向かってわずかに折曲した係合片側押圧部28になっている。係合片側押圧部28には、その先端縁から基端側にかけて扇状に窪んだ押圧面28Aが設けられている。従って、弾性係合片24の先端側の厚みは、押圧面28Aに対応した部分が薄く、後述するキー側押圧部45が乗り上げ易くなっている。押圧面28Aは、係合片側押圧部28の折曲した形状に倣って傾斜しているのであり、キー4の回動に伴ってキー側押圧部45との接触抵抗が大きくなるように弾性係合片24の先端側から基端側に向けて傾斜している。
【0023】
ソケット3は、表裏方向に間隔を空けて設けられた表壁31および裏壁32と、これらの外周を覆う側壁33とを備えた中空部品として構成される。ソケット3において、プラグ2が挿抜される側には、その挿抜のために用いられる開口34が設けられている。ソケット3の開口34とは反対側には、矩形状の切欠開口35Aが設けられ、切欠開口35A内には、ソケット3の幅方向に沿ってベルト巻付杆35Bが設けられている。これら、切欠開口35Aおよびベルト巻付杆35Bにより、ソケット3側のベルト装着部35が構成される。
【0024】
表壁31には、表面31Aおよび裏面31Bを貫通するキー孔36が設けられている。キー孔36の形状は、キー4の形状に応じて適宜決められてよいが、本実施形態では、丸孔部36Aと、その径方向の両側に設けられた角孔部36Bとで構成される。ここで、バックル1では、キー操作を行うこと以外には、プラグ2およびソケット3の係合を解除することはできない。このため、ソケット3の表壁31には、キー孔36以外には開口しておらず、係合状態にあるソケット3の弾性係合片24を外部から押圧可能な開口等は設けられていない。
【0025】
さらに、表壁31の裏面31Bには、下方に向かって突出した係合部としての係合凸部37が設けられている。係合凸部37は、プラグ2の係合凹部27内に収容可能な外形形状とされ、係合凹部27の傾斜面27Aと同じ方向で傾斜した傾斜面37Aと、傾斜面37Aの端縁と裏面31Bとを連続させるソケット3側の係合部37Bとを備える。
【0026】
キー4は、環状の摘み部41と、摘み部41に一体に設けられてソケット3のキー孔36に差し込まれる差込部42と、同じく摘み部41に一体に設けられ、かつ差込部42をキー孔36に差し込んだ際に表壁31に当接される当接部43とを備える。キー4の差込部42は、キー孔36の丸孔部36Aに差し込まれる円柱状の軸部44、および軸部44の外周から径方向の両側に向けて突出し、かつ角孔部36Bに差し込まれる一対のキー側押圧部45で構成される。キー孔36に差し込まれたキー4は、軸部44の軸中心を回動中心O1(
図4参照)として時計回りに回動可能である。ただし、キー4の形状はこれに限定されず、キー4を回動することでプラグ2の押圧面28Aを押圧可能であれば、任意な形状を採用できる。
【0027】
それぞれのキー側押圧部45には、周方向において同じ向きに傾斜した傾斜面45A(
図4をも参照)が設けられている。具体的に傾斜面45Aは、差込方向の先端に向かうに従ってキー側押圧部45が先細りとなる向きで傾斜しており、キー側押圧部45全体としては、平面視において回動中心O1(
図5、
図6参照)を対象の中心とした点対称な形状になっている。そのような傾斜により傾斜面45Aは、係合片側押圧部28の端縁に対し、押圧面28A側で鋭角を成して接触することとなる。
【0028】
図3、
図4に基づき、ソケット3にプラグ2が挿入された状態について詳説する。
ソケット3において、表壁31および裏壁32との間には、プラグ2の挿抜方向と平行な2条のガイドリブ51が設けられている。ガイドリブ51は、プラグ2の挿入時にスリット25内に入り込む。ガイドリブ51とこれに対して幅方向に対向する側壁33との間の空間は、プラグ2のガイド片23が入り込むガイド片収容部52になっている。そして、一対のガイドリブ51間の空間は、弾性係合片24が入り込む係合片収容部53になっている。
【0029】
ガイド片収容部52内において、裏壁32の内面32Aには、挿抜方向に沿って連続した突条部54が設けられ、前述したように、突条部54とプラグ2のガイド片23に設けられた溝部26とが係合する。また、係合片収容部53では、プラグ2の係合凹部27がソケット3の係合凸部37に収容され、互いの係合部27B,37B同士が係合する。
【0030】
ここで、プラグ2とソケット3とが係合状態にある時、両者の間には挿抜方向にわずかな隙間(ガタ)が生じている。プラグ2が最も入り込むことでガタが詰まっている場合では、プラグ2の弾性係合片24の先端が、対向する係合片収容部53内の当接部53Aに当接する(
図3の状態)。これに対し、プラグ2が最も引抜側に位置することでガタが詰まっている場合では、係合部27B,37B同士が係合して、プラグ2がソケット3から抜けないように維持される(
図4の状態)。
【0031】
ソケット3の内部において、キー孔36の周囲には、キー孔36のそれぞれの角孔部36Bに対応した位置に当接部55が設けられている。当接部55は、差し込まれるキー4の傾斜面45Aとは反対側に位置しており、キー4を誤って反時計方向に回そうとした場合に、キー側押圧部45と当接してキー4が回動しないようになっている。
【0032】
この際、プラグ2の弾性係合片24に近い側の当接部55の裏側(弾性係合片24側)は、弾性係合片24が当接する当接部53Aの一部になっている。このため、当接部53A,55には、プラグ2やキー4が当接するのであり、より大きな強度が要求される。従って、本実施形態では、弾性係合片24先端の外形形状を傾斜辺縁24Cが設けられた左右非対称な異形形状とし、当接部53A,55間の厚みをその異形形状に対応した十分な大きさに設けることで、当接部53A,55間の強度を確保している。
【0033】
キー孔36の角孔部36Bは、キー4の時計方向への回動に伴ってキー側押圧部45が通過する回動軌跡上の通過空間と連通している。そのうちの一方の通過空間内には、プラグ2の係合片側押圧部28に設けられた押圧面28Aが位置し、キー4を回動し始めた直後から、一方のキー側押圧部45の傾斜面45Aが係合片側押圧部28の先端縁に接触し、この後に押圧面28A上に乗り上げて弾性係合片24を押圧変形させる。他方の空間の内壁の一部は、キー4の他方のキー側押圧部45が当接する当接部56になっており、キー4の回動角度が90°に規定される。
【0034】
キー孔36では、キー孔36の中心位置O2がキー4の回動中心O1に対応した同軸となり、中心位置O2は、プラグ2およびソケット3に共通な幅方向の中心C1を基準として、
図3中の右側にずれて位置している。このような構成により、係合側押圧部28に接触するキー側押圧部45が各中心O1,O2に対して
図3中の左側に設けられている本実施形態においては、キー4を回動させた際に、中心C1に近い位置でキー側押圧部45と係合片側押圧部28との接触を開始させることができる。このため、キー側押圧部45による弾性係合片24の押圧時には、キー側押圧部45から伝達される押圧力が弾性係合片24の幅方向の中心C1寄りに作用することになり、弾性係合片24が中心C1から大きくずれて押圧されるのを防止でき、係合状態の解除およびプラグの押出動作が確実に行われる。
【0035】
ただし実際には、キー側押圧部45と弾性係合片24との接触位置は、中心C1よりも
図3中の左側に多少ずれている。従って、キー4の回動直後からキー側押圧部45にて弾性係合片24が押圧される本実施形態では、弾性係合片24の変形状態に偏りが生じる可能性がある。つまり、中心C1を挟んで各中心O1,O2とは反対側での弾性変形が幾分大きくなることが考えられる。
【0036】
そこで本実施形態では、プラグ2の係合凹部27およびソケット3の係合凸部37は、その幅方向の中心C2が全体の中心C1に対して左側にずれて位置するように設けられており、弾性係合片24が偏って弾性変形した場合でも、係合凹部287および係合突部37の係合状態がより確実に解除されるようになっている。
【0037】
以下には、バックル1の動作について、
図4〜
図7に基づいて説明する。
先ず、
図4に示すように、ソケット3にプラグ2を挿入すると、挿入するに従ってソケット3の係合凸部37にプラグ2の弾性係合片24が接触し、弾性係合片24が図中の下方に押圧されながら係合凸部37を通過する。弾性係合片24に設けられた係合凹部27の係合部27Bが係合凸部37の係合部37Bを通過した時点で、弾性係合片24の弾性変形が復帰し、係合部27B,37Bが互いに係合する。この状態が、プラグ2とソケット3とが係合した状態である。
【0038】
この係合状態では、弾性係合片24を外部から手操作等により押圧することができないため、プラグ2とソケット3との係合を解除することができず、ソケット3からプラグ2を抜き取ることができない。つまり、プラグ2とソケット3とが係合状態になった時点で、プラグ2はソケット3に対してキーロックされることとなり、係合後にキー4を用いたキーロック操作は不要である。
【0039】
次いで、ロックを解除し、係合を解除してプラグ2をソケット3から抜き取る場合には、
図4に示すように、キー孔36にキー4を差し込み、
図5に示すように、キー4を時計回りに回動する。こうすると、回動直後にキー側押圧部45に設けられた傾斜面45Aは、係合片側押圧部28の先端縁と接触し、押圧面28A上に乗り上げて弾性係合片24を下方に押圧する。押圧された弾性係合片24は弾性変形し、キー4の回動操作の比較的初期の段階で係合凸部37から係合凹部27が外れ、互いの係合が解除される。
【0040】
さらに、
図6に示すように、キー4の回動操作を所定角度まで進めると、この所定角度に達するまでの間に、弾性係合片24はソケット3の裏壁32に当接してその弾性変形が止められる(
図7)。一方で、キー4の回動に伴ってキー側押圧部45とプラグ2の傾斜した押圧面28Aとが依然擦れ合うことから、押圧面28Aには、図中に白抜き矢印で示すように、プラグ2を押し出す方向への押圧力が作用する。
【0041】
この結果、プラグ2は、
図7に示すように、把持し易い所定の位置まで押し出される。この後にプラグ2が抜き取られることになる。このように、キー4を差し込んで回動させることにより、プラグ2とソケット3とのロック状態を解除するのみならず、互いの係合状態をも解除し、さらに、プラグ2を所定量だけ押し出す動作が行われる。
【0042】
以上の本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、バックル1としては、プラグ2、ソケット3、およびキー4の3部品で構成されているため、従来のようなロータや施錠カバー、あるいはタンブラといった部品を不要にでき、薄型化を促進できる。
【0043】
バックル1では、プラグ2をソケット3に挿入することで行われる係合操作がそのままロック操作になるため、ロック時のキー操作を不要にできる。また、キー4によるロック解除がそのまま係合解除の操作になるので、ロック解除後に改めて係合を解除するための操作を行う必要がない。このことにより、バックル1の操作性を格段に向上させることができる。
【0044】
バックル1では、キー4をキー孔36に差し込むだけでなく、回動させて初めてロックおよび係合が解除されるので、専用のキー以外のものをキー孔に差し込んで解除しようとしても、解除し難くでき、セキュリティ性を良好にできる。
【0045】
さらに、キー操作による解除の際には、キー4のキー側押圧部45を係合片側押圧部28に乗り上げる必要があるが、キー側押圧部45には傾斜面45Aが設けられ、この傾斜面45Aが係合片側押圧部28の端縁と接触するので、キー4の回動に伴う押圧面28Aへのキー側押圧部45の乗り上げをスムーズにでき、キー4の操作性を向上させることができる。
【0046】
バックル1では、係合片側押圧部28の押圧面28Aが傾斜していることにより、キー4の回動に伴ってキー側押圧部45は、弾性係合片24を変形させるように押圧面28Aを単に押圧するだけではなく、プラグ2の抜き取り方向にも押圧するようになるから、プラグ2のロック解除および係合解除に加えて、プラグ2をソケット3に対して所定量押し出すことができ、その後のプラグ2の抜き取り操作を容易にできる。
【0047】
バックル1では、キー4の回動中心O1がプラグ2およびソケット3の幅方向の中心C1からずれており、キー側押圧部45が弾性係合片24に対して中心C1寄りの位置で接触するので、弾性係合片24の偏った変形を防止でき、プラグ2側の係合凹部27とソケット3側の係合凸部37との係合をより確実に解除できる。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、キー4が回動式であったが、
図8に示すように、一対のキー側押圧部45を備えた差込式であってもよい。この場合、キー側押圧部45には、差し込まれた状態でプラグ2側に向くように傾斜面45Aが設けられている。ソケット3側の構造としては、一対の角孔部36Bにてキー孔36を構成し、これらの角孔部36Bにキー側押圧部45が差し込まれる。プラグ2側では、弾性係合片24が、左右の第1、第2係合片241,242に分割され、係合凹部27および押圧面28Aもそれぞれ、左右の第1、第2凹部271,272および第1、第2押圧面281A,282Aに分割されている。ただし、ソケット3の係合凸部37やプラグ2の押圧面28Aとしては、弾性係合片24の幅方向全体に対応して設けられる。他の構成は、前記実施形態と略同じである。
【0049】
このような変形例では、キー4を差し込むことで、その傾斜面45Aにて第1、第2係合片241,242が押圧され、第1、第2凹部271,272と係合凸部37との係合状態が解除されるとともに、傾斜した傾斜面45Aおよび第1、第2押圧面281A,282Aの作用により、プラグ2が所定量だけ抜き取り側に移動する。そして、本変形例では、第1、第2係合片241,242を有することにより、これらの2枚を同時に押圧しない限り係合状態が解除されず、筆記具等の先端を差し入れて一方のみを押圧しても解除できないから、セキュリティ性が高い。また、角孔部36Bの開口面積は、キー側押圧部45を挿入可能な程度まで小さくできるため、そのような筆記具の挿入自身を困難にできる。なお、弾性係合片24を3分割以上にし、全てを同時に押圧しないと解除できないようにして、よりセキュリティ性を向上させてもよい。
【0050】
前記実施形態では、弾性係合片24がプラグ側に設けられていたが、
図9に示すように、そのような弾性係合片137をソケット3側に設け、プラグ2側には、弾性係合片137と係合する係合部127を設けてもよい。このような構成では、係合部127を有するプラグ2側の係合片124が一対並設され(
図9では一つのみを図示)、それらの間にキーが差し込まれる。
【0051】
前記実施形態では、キー4を回動することでプラグ2およびソケット3のキーロックや係合を解除できる他、プラグ2を所定量お押し出す構成になっていたが、プラグ2の押圧面28Aの傾斜角度の設定によっては、ロックおよび係合状態を解除するだけの構成としてもよい。例えば、前記実施形態では、押圧面28Aが傾斜していたが、このような傾斜をなくしたり、傾斜方向を変更したりし、また、
図8に示す変形例のような構成では、キー側押圧部45の傾斜面45Aおよびプラグ2の押圧面28Aの傾斜をなくすることで、プラグ2が押し出されない構成となる。このような構成では、キーロックおよび係合が解除されたプラグ2を、初めから手操作によって抜き取ることになる。
【0052】
前記実施形態では、キー4の回動角度が90°に規定されていたが、キー4を例えば360°回転可能に構成した場合でも、本発明に含まれる。回動角度を何度に規定するかは、その実施にあたって任意に決められてよい。