特許第6185736号(P6185736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185736
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】サーモバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20170814BHJP
   F16K 31/524 20060101ALI20170814BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F16K31/68 A
   F16K31/524 B
   F16K37/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-71143(P2013-71143)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194257(P2014-194257A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】伴 敏明
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−173968(JP,U)
【文献】 実開平05−027458(JP,U)
【文献】 特開2008−039156(JP,A)
【文献】 実開平03−110285(JP,U)
【文献】 実開昭63−048079(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第02765114(EP,A1)
【文献】 特開平11−114405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64−31/72
F16K 31/44−31/62
F16K 37/00
B01J 4/00− 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相の液化ガスを気化させる蒸発部の温度異常低下を検知したときに前記蒸発部への液化ガスの供給を遮断するサーモバルブであって、
液相の液化ガスの入口に連通された入口圧力室と、液相の液化ガスの出口に連通された出口圧力室と、前記入口圧力室と前記出口圧力室との連通路を開閉する主弁と、前記連通路を閉じる方向に前記主弁を付勢する第1の弾性部材と、前記連通路を開く方向に前記主弁を付勢する駆動部と、前記主弁をバイパスして前記入口圧力室と前記出口圧力室を連通するバイパス路と、該バイパス路を開閉するバイパス弁と、前記蒸発部の温度が設定温度以下に低下したときに前記駆動部の付勢力を下げて前記主弁を閉じる制御部を備え、
前記バイパス弁は、前記バイパス路を開閉する弁体と、該弁体を開閉方向に移動可能に支持する弁棒と、該弁棒を摺動自在に気密に支持するとともに本体部の外面に開口された貫通孔と、前記弁棒を前記弁体の閉方向に付勢する第2の弾性部材と、前記貫通孔の開口から突出された前記弁棒の端部にピンを介して回動可能に取り付けられたレバーとを備えてなり、
前記レバーは、当該レバーが所定の方向に回動されたとき、当該レバーの先端が回動して前記本体部の外面に押接され、該押接により前記弁棒が前記貫通孔から引き出されて前記弁体が前記バイパス路を開き、該レバーに加える力が解除されたとき、前記第2の弾性部材の弾発力により前記弁棒が前記貫通孔内に押し込れて前記弁体が前記バイパス路を閉じるように形成されてなるサーモバルブ。
【請求項2】
前記レバーは、前記弁棒が前記貫通孔に押し込まれて前記弁体が前記バイパス路を閉じている位置で、前記ピン近傍のレバー側面が前記本体部の外面に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーモバルブ。
【請求項3】
前記弁棒は、前記貫通孔の開口近傍の前記本体部に形成された溝内に摺動自在に係合された係合部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のサーモバルブ。
【請求項4】
前記レバーは、前記本体部の外面に摺動されて回動する前記先端の角部が前記ピンを中心として半径が徐々に大きくなる曲面に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のサーモバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモバルブに係り、具体的には、LPG等の液化ガスの蒸発器の温度異常低下を検知したときに蒸発器へ液化ガスの供給を遮断するサーモバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
LPG等の液化ガスは、ボンベなどの容器に収容された液相の液化ガスを蒸発器に導き、蒸発器で気化及び昇温してガス消費機器に連続的に供給されるようになっている。例えば、特許文献1に記載された蒸発器は、電気ヒータ等の熱源で加熱される金属部材などの熱媒体で形成した熱交換流路を備えた蒸発部を備え、液相の液化ガスを蒸発部に導入して気化させるとともに加熱して、ガス消費機器に供給するようになっている。また、ガス消費機器のガス消費量の変動などに合わせて、蒸発部へ流入する液相の液化ガス量を制御する気化圧力調整弁が設けられている。この気化圧力調整弁は、液相の液化ガスの入口圧力室と蒸発部の入口圧力室の連通路を開閉する調整弁を設け、蒸発部の入口圧力室の圧力を所定値に保持するように調整弁の開度を制御するように構成されている。
【0003】
このような蒸発器において、熱源の停止等の異常が発生すると、蒸発部の蒸発能力が急激に低下して液相の液化ガスがそのままガス消費機器に供給されるおそれがある。そこで、特許文献1では、蒸発部の温度低下を検出したとき、速やかにサーモバルブを全閉にして、蒸発部への液相の液化ガスの流入を遮断する保安機構を設けている。気化圧力調整弁は、蒸発部の入口圧力室の圧力と第1のスプリングの弾性力の合力で調整弁を閉じる方向に付勢し、液相の液化ガスの入口圧力と第2のスプリングの弾性力の合力で調整弁を開く方向に付勢して形成されている。そして、ガス消費量が増加して蒸発部の入口圧力が低下すると、調整弁が開いて液相の液化ガスの流入量が増大され、ガス消費量が減少して蒸発部の入口圧力が上昇すると、調整弁が閉じて液相の液化ガスの流入量を減少するように形成されている。そこで、保安機構は、第2のスプリングの弾性力を減少させて調整弁を閉じるようにするため、第2のスプリングに位置を規定するスプリング押えを、第2のスプリングの付勢方向に摺動自在に設けるとともに、蒸発部の温度が定常状態のときはスプリング押えを所定の位置で拘束しておき、蒸発部の温度が設定温度以下に低下したときにその拘束を解除する係合機構が設けられている。
【0004】
この係合機構は、スプリング押えの摺動面に係合溝を形成し、係合溝に対向させて弁本体部の外壁に形成した貫通孔に係合ピンを挿入し、蒸発部の温度に応じて回動されるリンク機構により係合ピンを係合溝の方向に押圧して形成されている。これにより、蒸発部の温度が設定温度以上の定常時には係合ピンが係合溝に係合してスプリング押えが定常位置に保持される。また、蒸発部の温度が異常に低下したときは係合ピンと係合溝の係合が解除されて気化圧力調整弁が閉じ、蒸発部への液相の液化ガスの流入を遮断して、液相の液化ガスがガス消費機器に供給される異常を防止することができる。
【0005】
また、特許文献1には、保安機構が作動して気化圧力調整弁が全閉された後、熱源の停止等の異常が解消され、蒸発部の蒸発能力が回復した場合は、種々の安全を確認したうえで、マニュアル操作により、保安機構をリセットするリセット機構が備えられている。リセット機構は、スプリング押えを所定の位置に戻して、係合ピンと係合溝を係合させるように構成されている。つまり、リセット機構は、気化圧力調整弁の本体部の外壁面からスプリング押えを押し戻す方向に動かすリセットピンを挿入し、本体部の外壁面に設けた支持部材に回動可能に支持させたリセット棒の先端部をリセットピンの一端に当接させて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−114405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の保安機構によれば、蒸発部の熱源の温度異常によって、液相の液化ガスがガス消費機器に供給されるのを防止することができる。また、保安機構がリセットされたことを、外部から一目で認識できれば安全運転を一層確実にすることができる。なお、一般に、保安機構を気化圧力調整弁と切り離して、液化ガスを気化する蒸発器の温度の異常低下時に、気化圧力調整弁への液化ガスの供給を遮断するサーモバルブを設けることが知られている。この場合も、サーモバルブがリセットされたことを、外部から一目で認識できれば安全運転の信頼性を一層向上できる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、液化ガスを気化する蒸発器の温度の異常低下時に蒸発器への液化ガスの供給を遮断するサーモバルブのリセット状態を外部から一目で認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、液相の液化ガスを気化させる蒸発部の温度異常低下を検知したときに前記蒸発部への液化ガスの供給を遮断するサーモバルブであって、液相の液化ガスの入口に連通された入口圧力室と、液相の液化ガスの出口に連通された出口圧力室と、前記入口圧力室と前記出口圧力室との連通路を開閉する主弁と、前記連通路を閉じる方向に前記主弁を付勢する第1の弾性部材と、前記連通路を開く方向に前記主弁を付勢する駆動部と、前記主弁をバイパスして前記入口圧力室と前記出口圧力室を連通するバイパス路と、該バイパス路を開閉するバイパス弁と、前記蒸発部の温度が設定温度以下に低下したときに前記駆動部の付勢力を下げて前記主弁を閉じる制御部を備え、前記バイパス弁は、前記バイパス路を開閉する弁体と、該弁体を開閉方向に移動可能に支持する弁棒と、該弁棒を摺動自在に気密に支持するとともに本体部の外面に開口された貫通孔と、前記弁棒を前記弁体の閉方向に付勢する第2の弾性部材と、前記貫通孔の開口から突出された前記弁棒の端部にピンを介して回動可能に取り付けられたレバーとを備えてなり、前記レバーは、当該レバーが所定の方向に回動されたとき、当該レバーの先端が回動して前記本体部の外面に押接され、該押接により前記弁棒が前記貫通孔から引き出されて前記弁体が前記バイパス路を開き、該レバーに加える力が解除されたとき、前記第2の弾性部材の弾発力により前記弁棒が前記貫通孔内に押し込れて前記弁体が前記バイパス路を閉じるように形成されてなるサーモバルブを提供する。
【0010】
本発明のサーモバルブは、液相の液化ガスを気化させる蒸発部の温度が設定温度以下に低下したときに、制御部によって主弁を開く方向に付勢する駆動部の付勢力が下げられ、第1の弾性部材の付勢力によって主弁が速やかに閉じられるので、蒸発部の熱源の温度異常(低下)によって液相の液化ガスがガス消費機器に供給されるのを防止する保安機構として動作する。なお、主弁が一旦閉じられると、蒸発部の熱源の温度異常(低下)が継続しているかぎり、出口圧力室よりも入口圧力室の圧力が高いので、主弁の全閉状態が保持されて保安機構の作動状態が維持される。この状態で、蒸発部の熱源の温度異常が解消されても、出口圧力室の圧力が入口圧力室よりも低いので、保安機構の作動状態が維持される。
【0011】
蒸発部の熱源の温度異常が解消されたこと、及びガス消費機器等の安全を確認した後、蒸発器の定常運転を再開する際に、保安機構の作動状態をリセットしてサーモバルブを正常に動作させる必要がある。本発明によれば、レバーを回動させてバイパス弁の弁棒を引くことにより、バイパス路が開いて入口圧力室と出口圧力室の圧力差がなくなるから、制御部により駆動部の付勢力が増加されて主弁が開き、サーモバルブが正常に動作可能な状態にリセットされる。このようなリセットが行われた後は、レバーが戻ってバイパス路を閉じてもサーモバルブの機能は保持される。そこで、本発明では、レバーに加える力が解除されてレバーが初期位置に回動されたとき、第2の弾性部材によりバイパス弁の弁体が押し込まれてバイパス路を閉じて、サーモバルブが正常に動作可能な状態にリセットされる。このように、レバーを一旦引いた後、手を離せば自動的にリセットされる。また、第2の弾性部材により、レバーは所定の初期位置に戻されるから、リセット機構の作動状態を外部から一目で認識できる。なお、リセット時にバイパス弁が開き放しになっていると、次の温度異常時の保護動作に支障がある。この点、本発明によれば、リセットを行った後、バイパス弁が自動で閉じられるので、誤動作を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記レバーは、前記弁棒が前記貫通孔に押し込まれて前記弁体が前記バイパス路を閉じている位置で、前記ピン近傍のレバー側面が前記本体部の外面に当接するように形成されていることが望ましい。これによれば、バイパス路が閉じている正常状態を外部から確実に認識できる。
【0013】
また、前記弁棒は、前記貫通孔の開口近傍の前記本体部に形成された溝内に摺動自在に係合された係合部を備えていることが好ましい。これによれば、レバーに加わる外力で弁棒が貫通孔の軸周りに回転するのを防止できる。
【0014】
また、前記レバーは、前記本体部の外面に押接されて回動する前記先端の角部が前記ピンを中心として半径が徐々に大きくなる曲面に形成されてなることが好ましい。これによれば、レバーの回動が円滑になるとともに、そのレバーの回動により弁棒を円滑に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液化ガスを気化する蒸発器の温度の異常低下時に蒸発器への液化ガスの供給を遮断するサーモバルブのリセット状態を外部から一目で認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のサーモバルブの一実施例の構成図を示す。
図2図1の実施例のサーモバルブが適用される蒸発器の構成を示す図である。
図3図2の蒸発器の気化圧力調整弁の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜3を参照して、本発明のサーモバルブの一実施例を説明する。本実施例の蒸発器100は、図2に示すように、蒸発部110と、蒸発部110の上部に設けられた気化圧力調節弁130と、気化圧力調節弁130に供給される液相の液化ガスの入口側に設けられたサーモバルブ1と、蒸発器100に設けられる電気機器を制御する制御器150を備えて形成される。蒸発部110は、アルミニウムなどの金属部材により形成されたブロック状の熱媒体111を有し形成されている。熱媒体111には、図において上面から底部にわたって穿設された熱交換流路112と、熱交換流路112の下端に連通して熱媒体111内に形成された底部空間113が形成されている。熱交換流路112の上端は熱媒体111の頂面に形成された蒸発面114に開口されている。
【0018】
また、熱媒体111の上部に、熱源としての電気ヒータ115が横方向に挿入して設けられている。さらに、電気ヒータ115の上側の熱媒体111に、熱媒体111の温度を検出する感温筒116が挿入されている。また、底部空間113には、気化された液化ガスを図示していないガス消費機器に供給する液化ガスの出口ノズル117が連通して設けられている。出口ノズル117には、仕切弁118を介して安全弁119が接続されている。また、底部空間113の底部は、仕切弁120を有するドレン管121が接続されている。
【0019】
気化圧力調整弁130は、図3に示すように、蒸発面114に開口された出口圧力室131に吹き出す液相の液化ガスを制御する調整弁132が設けられている。調整弁132の入口133は、後述するサーモバルブ1の出口に連結され、液相の液化ガスが供給されるようになっている。調整弁132は、弁体134をスプリング135により弁座136に押接して形成されている。また、弁体134が弁棒137により弁座136から離す方向に押されたとき、噴出穴138から液相の液化ガスが出口圧力室131に引き出されるようになっている。一方、出口圧力室131に連通された圧力室139に臨ませてダイアフラム140が設けられ、ダイヤフラム140はスプリング141により図において下方に付勢されている。ダイアフラム140の中心部にステム147が固定され、ステム147は出口圧力室131の隔壁142に穿設された貫通孔143に挿通して設けられている。また、出口圧力室131内には、三角形の可動片144が隔壁142から垂下された支持部材145に回動可能に支持されている。そして、可動片144の1辺にステム147の先端が当接され、他の1辺に弁棒137の先端が当接されている。このように構成されることから、気化圧力調整弁130は、出口圧力室131の圧力が調節ねじ146により設定されたスプリング141とバランスするように、可動片144を回動させて弁棒137を介して弁体134を開閉し、出口圧力室131に供給される液相の液化ガスの量を調整するようになっている。
【0020】
このように構成されることから、蒸発器100は、気化圧力調整弁130から蒸発面114に向けて噴出される液相の液化ガスを電気ヒータ115で加熱された熱媒体111と接触する過程、及び熱交換流路112を流通する過程で気化するとともに昇温して、出口ノズル117を介してガス消費機器に供給する。電気ヒータ115は感温筒116により検出される熱媒体111の温度に基づいて、制御器150により制御される。また、気化圧力調整弁130は、ガス消費機器のガス消費量に追従して出口圧力室131の圧力を設定圧に制御することにより、蒸発部110に供給する液相の液化ガスの供給量を制御する。
【0021】
次に、本発明の特徴であるサーモバルブ1について、図1を参照して説明する。図1(A)はサーモバルブ1の上面図であり、(B)は同図(A)の線B−Bにおける断面図である。図に示すように、サーモバルブ1は直方体状に形成された本体部であるバルブブロック2を用いて形成されている。バルブブロック2には、液相の液化ガスの入口3に連通された入口圧力室4と、液相の液化ガスの出口5に連通された出口圧力室6とが形成されている。入口圧力室4と出口圧力室6とは円筒状に形成され、互いに開口を介して連通されている。本実施例では、出口圧力室6の内径が入口圧力室4の内径よりも小さいことから、入口圧力室4と出口圧力室6との連通部の出口圧力室6側に段部7が形成される。この連通路の段部7を弁座として、連通路を開閉する弁体8からなる主弁が形成されている。弁体8は第1の弾性部材であるスプリング16により連通路を閉じる方向に付勢されている。また、弁体8は弁棒9を介して連通路を開く方向に弁体8を付勢する駆動部である温度制御部10に支持されている。円筒状のケース11内に筒状に形成されたベローズ12が収容され、ベローズ12の軸心に位置させて弁棒9がベローズ受け12aを介してベローズ12の上端に支持されている。弁棒9は、バルブブロック2に穿設された貫通孔13にブッシング13aを介して摺動可能に挿入され、先端に弁体8が固定されている。弁棒9と貫通孔13の摺動面にOリング14が介装され、これによりシールされている。また、ケース11に連通して設けられたノズル11aは、蒸発器100の蒸発部110の熱媒体111の温度を計測する図示していない感温筒の熱媒管路が連結されるようになっている。したがって、ケース11内部のベローズ12とベローズ受け12aの外周側に感温筒の熱媒(封入液)と同じ熱媒が流入するようになっている。
【0022】
次に、サーモバルブ1のリセット機構について説明する。本実施例では、主弁を構成する弁体8をバイパスして入口圧力室4と出口圧力室6を連通するバイパス路15が設けられている。バイパス路15は鉤型に曲げて形成され、その曲げ部にバイパス路15を開閉するバイパス弁が設けられている。バイパス弁は、バイパス路を開閉する弁体17と、弁体17を開閉方向に移動可能に支持する弁棒18と、弁棒18を摺動自在に気密にバルブブロック2に支持する貫通孔19から形成されている。貫通孔19は本体部であるバルブブロック2の外面に開口されている。弁棒18は、弁体17に固定された小径部18aと、小径部18aに続く中径部18bと、中径部18bに続く大径部18cと、大径部18cに続く中径部18dを有して形成されている。小径部18aの外周にOリングが装着されている。また、大径部18cに対応する部分の貫通孔19は、大径部18cが軸方向に摺動可能に形成されている。貫通孔19の開口端には、フランジ20がボルト21によりバルブブロック2に取り付けられている。フランジ20は、貫通孔19に挿入される筒状部20aを有し、筒状部20aの内周面に第2の弾性部材であるスプリング25を収容するように形成されている。スプリング25の一端は、弁棒18の大径部18cに当接し、
他端は筒状部20aの内周面に形成された段部20bに当接して装着される。これにより、弁体17がバイパス路15を閉じる方向に弁棒18を付勢する。
【0023】
一方、貫通孔19の開口端、本実施例ではフランジ20に延設して設けられた貫通孔20cから突出された弁棒18の端部にピン22を介してレバー23が回動可能に取り付けられている。弁棒18の端部18eは、間隔を明けて形成された一対の平板24a,bを有して形成され、一対の平板24a,bの間にレバー23を挿入してピン22により連結されている。したがって、レバー23が所定の方向である図示Aの方向に回動されたとき、レバー23の先端23aが回動して本体部であるバルブブロック2に固定されたフランジ20の外表面に押接される。これにより、弁棒18が貫通孔19及び貫通孔20cから引き出される方向に摺動し、弁体17がバイパス路15を開く。そして、レバー23に加える力を解除すると、第2の弾性部材であるスプリング25により弁棒18が貫通孔19に押し込まれる。これにより、弁体17がバイパス路15を閉じる。
【0024】
ここで、レバー23は、弁棒18が貫通孔19に押し込まれ、弁体17がバイパス路15を閉じている位置で、ピン22の近傍のレバー側面が本体部の外面に相当するフランジ20の外表面に当接するように形成されている。これにより、バイパス路15が閉じている正常状態を外部から確実に認識できる。レバー23は、フランジ20の外表面に押接されて回動する先端23aの角部の形状が、ピン22を中心として半径が徐々に大きくなる曲面に形成されている。これにより、レバー23の回動が円滑になるとともに、レバー23の回動により弁棒18を円滑に引き出すことができる。また、図示していないが、弁棒18は、貫通孔19及びフランジ20の貫通孔20cの開口近傍に溝を形成し、その溝内に摺動自在に係合された係合部を備えていることが好ましい。これによれば、レバー23に加わる外力で弁棒18が貫通孔19の軸周りに回転するのを防止できる。
【0025】
このように形成されることから、本実施例のサーモバルブ1によれば、液相の液化ガスを気化させる蒸発部110の温度が設定温度(例えば、38℃)以下に低下したときに、温度制御部10のケースに連結された感温筒内の封入液が収縮する。これにより、ベローズ12が伸びて、弁体8を開く方向に付勢する駆動部である温度制御部10の付勢力が低下する。その結果、第1の弾性部材であるスプリング16の付勢力によって弁体8が速やかに入口圧力室4と出口圧力室6の連通部を閉じる。したがって、蒸発部110の熱源の温度異常低下に起因して、液相の液化ガスがガス消費機器に供給されるのを防止する保安機構として動作する。
【0026】
ここで、主弁の弁体8が一旦閉じられると、蒸発部110の熱源の温度異常低下が継続しているかぎり、出口圧力室6よりも入口圧力室4の圧力が高いので、弁体8の全閉状態が保持されて保安機構の作動状態が維持される。この状態で、蒸発部110の熱源の温度異常が解消されても、出口圧力室6の圧力が入口圧力室4よりも低いので、弁体8の全閉状態が保持されて保安機構の作動状態が維持される。
【0027】
そして、蒸発部110の熱源の温度異常が解消されたこと、及びガス消費機器等の安全を確認した後、蒸発器100の定常運転を再開する際、保安機構であるサーモバルブ1の作動状態をリセットして、サーモバルブ1を正常に動作させる必要がある。本実施例によれば、レバー23を回動してバイパス弁の弁棒18を引き出すことにより、バイパス路15が開いて入口圧力室4と出口圧力室6の圧力差がなくなる。これにより、温度制御部10により弁棒9の付勢力が増加されて弁体8が開き、サーモバルブ1が正常に動作可能な状態にリセットされる。このようなリセットが行われた後は、レバー23が戻ってバイパス路15を閉じてもサーモバルブ1の機能は保持される。また、本実施例では、レバー23に加える力が解除されてレバー23が初期位置に回動されたとき、スプリング25により弁体17が押し込まれてバイパス路15を閉じて、サーモバルブ1が正常に動作可能な状態にリセットされる。つまり、レバー23を一旦引いた後、手を離せば自動的にリセットされる。また、スプリング25により、レバー23は所定の初期位置に戻されるから、リセット機構の作動状態を外部から一目で認識できる。なお、リセット時にバイパス路15が開き放しになっていると、次の温度異常時の保護動作に支障がある。この点、本実施例によれば、リセットを行った後、バイパス路15が自動で閉じられるので、誤動作を防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 サーモバルブ
2 バルブブロック
3 入口
4 入口圧力室
5 出口
6 出口圧力室
7 連通路
8 弁体
9 弁棒
10 温度制御部
11 ケース
12 ベローズ
12a ベローズ受け
13 貫通孔
13a ブッシング
15 バイパス路
17 弁体
18 弁棒
19 貫通孔
20 フランジ
22 ピン
23 レバー
23a 先端
24a,b 平板
25 スプリング
図1
図2
図3