(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185738
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】血液凝固基質および医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 15/24 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
A61L15/24 100
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-79240(P2013-79240)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-226413(P2013-226413A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】13/441,539
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509263146
【氏名又は名称】アドバンスト・テクノロジーズ・アンド・リジェネレイティブ・メディスン・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Advanced Technologies and Regenerative Medicine, LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】504354117
【氏名又は名称】エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】エマ・キム・ルオン‐ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ホン・イー・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】オードリー・ヨーク・イー・ホー
(72)【発明者】
【氏名】スリラム・ナタラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ノハ・エルムエリ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・クーパー
(72)【発明者】
【氏名】ムルティ・ヴヤカルナム
(72)【発明者】
【氏名】チー・チョン・リム
【審査官】
伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/030570(WO,A1)
【文献】
米国特許第07195872(US,B1)
【文献】
特開2005−006852(JP,A)
【文献】
GOMATHI, N. and NEOGI, S.,J Adhes Sci Technol,2009年,Vol.23,p.1811-26
【文献】
TYAN, Y.C. et al.,Chinese Journal of Medical and Biological Engineering,2000年,Vol.20, No.1,p.25-30
【文献】
LIAO, J.D. et al.,Biomacromolecules,2005年,Vol.6,p.392-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを含む血液凝固基質。
【請求項2】
前記ピラーが直径約0.8μm〜約3μmであり、約0.5〜約40のアスペクト比を有する請求項1に記載の血液凝固基質。
【請求項3】
静止時の水接触角が約15°未満である請求項1に記載の血液凝固基質。
【請求項4】
前記ポリプロピレンフィルムおよび前記ピラーの表面の酸素含量が、酸素プラズマ処理していないポリプロピレンフィルムおよびピラーよりも高い、請求項1に記載の血液凝固基質。
【請求項5】
前記ポリプロピレンフィルムおよび前記ピラーが約21%の酸素含量を有する請求項1に記載の血液凝固基質。
【請求項6】
前記酸素プラズマ処理したポリプロピレンフィルムおよびピラーが、未処理フィルムの0.9の標準化凝固時間と比較して0.2の標準化凝固時間を示す、請求項1に記載の血液凝固基質。
【請求項7】
前記ピラーが約1μmの直径および約20μmの高さを有する請求項2に記載の血液凝固基質。
【請求項8】
ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを有するポリプロピレンフィルムを含む血液凝固医療デバイス。
【請求項9】
前記ポリプロピレンフィルムが酸素プラズマ処理を有する請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項10】
前記ピラーが直径約0.8μm〜約3μmであり、約0.5〜約40のアスペクト比を有する請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項11】
静止時の水接触角が約15°未満である請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項12】
前記ポリプロピレンフィルムおよび前記ピラーの表面の酸素含量が、酸素プラズマ処理していないポリプロピレンフィルムおよびピラーよりも高い、請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項13】
前記ポリプロピレンフィルムおよび前記ピラーが約21%の酸素含量を有する請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項14】
前記酸素プラズマ処理したポリプロピレンフィルムおよびピラーが、未処理フィルムの0.9の標準化凝固時間と比較して0.2の標準化凝固時間を示す、請求項8に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項15】
前記ピラーが約1μmの直径および約20μmの高さを有する請求項10に記載の血液凝固医療デバイス。
【請求項16】
血液凝固基質を形成する方法であって、
a)窪み部を備えた溶媒に可溶なモールドを準備するステップと、
b)ポリプロピレンフィルムをモールドに供給し、前記モールドの前記窪み部にポリプロピレンを充填するステップと、
c)ステップb)の前記ポリプロピレンおよび前記モールドを処理し、前記ポリプロピレンを実質的に凝固させるステップと、
d)前記溶媒(ポリプロピレンは溶解せず、モールドを溶解するように選択される)に前記モールドおよび前記ポリプロピレンを暴露し、前記モールドを溶解させ、ピラー化した基質を得るステップと、および
e)前記ピラー化した基質を酸素プラズマ処理するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子血液凝固基質に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固基質における血液凝固活性の改善は、現在も継続して必要とされている。そのような構造体は、内科的応用、外科的応用等のような様々なアプリケーション(応用、適用)において、または血液凝固時間の短縮が望まれるいついかなる場合にも、使用に適合することができる。
【0003】
現在、多くの血液凝固基質が市販されている。どちらも天然産物であるフィブリノゲンおよび/またはトロンビンを組み込んだ止血包帯が入手可能である。しかし、これらの天然由来の産物は、その原資料からの単離、適切な基質形態への形成、およびその後の滅菌を必要とするので、止血基質として使用するために入手し調製するには高価となり得る。同様に、ゼオライト結晶またはキトサンなどの様々な添加物を止血促進剤として組み込んだ止血包帯が存在する。この場合もやはり、これらの基質の調製には、これらの固体粉末材料を基質に安定して組み込むには複雑なプロセスが必要であるため、費用がかかり得る。
【0004】
米国特許第8,133,484号明細書では、ゼラチンおよびトランスグルタミナーゼなどの非毒性の架橋剤を含む接着材料を開示している。この接着材料は止血製品として医療目的において有用である。また、止血製品は創傷組織の治療のために有用である。この特許の背景の章では、止血デバイスの詳細な歴史を開示する。
【0005】
比較的安価な合成材料から作製することができ、異物を組み込まずに血液凝固を促進するのに適切な表面特性を備えた、比較的簡単なデザインを有する血液凝固基質を開発することは望ましい。
【0006】
米国特許第7,745,223号明細書では、イオン化された原子または分子に暴露して表面を処理することにより、フィブリン/フィブリノゲンおよび血小板のような血液固有の成分の表面相互作用を増大させることによって、凝固した血液の表面への付着強度を高める方法を開示している。この発明による表面処理は、血液診断(例えば、止血分析)において使用されるプラスチックの使い捨て製品、ならびに動脈シーリングのような医療用インプラントに適用される。血液凝固の付着の改善は、測定不良を減少させ診断のより高い安全性(例えば、増加した血小板含有量を有する患者に対して)および特別な試験(例えば、線溶亢進診断)により良好な有意性をもたらす。
【0007】
米国特許第5,344,611号明細書および米国特許第5,455,009号明細書では、高分子血液採取チューブの内壁表面をプラズマ処理することによって、またはプラズマ処理したプラスチック挿入物をそのような採取チューブに挿入することによって、血液採取装置の止血時間を短縮させるプロセスを述べている。しかし、米国特許第5,344,611号明細書は、プラズマ処理したプラスチック製品のすべてが凝固時間の短縮を示すわけではないことを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、異種粉末または泡を組み込まずに、血液凝固を促進するように働く、簡単な合成ポリマーから作製された一体形成の基質を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを含む血液凝固基質に関する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを含む血液凝固基質と血液を接触させることを含む、血液凝固の方法に関する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを有するポリプロピレンフィルムおよび基質を含む血液凝固医療デバイスと血液を接触させることを含む、血液凝固を促進する方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、血液凝固基質を形成する方法であって、a)窪み部(indentation)を備える溶媒に可溶なモールド(鋳型)を準備するステップと、b)モールドにポリプロピレンフィルムを供給し、モールドの窪み部にポリプロピレンを充填するステップと、c)ステップb)のポリプロピレンおよびモールドを処理しポリプロピレンを実質的に凝固させるステップと、d)溶媒(ポリプロピレンは溶解せず、モールドを溶解するように選択される)にモールドおよびポリプロピレンを暴露し、モールドを溶解させ、ピラー化した基質を得るステップと、およびe)ピラー化した基質を酸素プラズマ処理するステップを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は高表面積ピラーを有するポリプロピレン基質の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図2】
図2は酸素プラズマ処理したポリプロピレン表面および未処理のポリプロピレン表面の標準化(normalized;基準化、正常化)血液凝固時間を比較するグラフである。
【
図3】
図3は高表面積ピラーを有するポリジオキサノン基質の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図4】
図4は酸素プラズマ処理したポリジオキサノン表面および未処理のポリジオキサノン表面の標準化した血液凝固時間を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、湿潤性を高めるためにさらに酸素プラズマ処理した場合に、血液凝固を促進させる、一体型で、長さ対直径が高アスペクト比(HAR)の、フィルム上にポリプロピレン(PP)のサブミクロンからミクロンサイズのピラーが密に充填した表面の特徴を有するポリプロピレンフィルムに関する。
【0015】
1つの実施形態では、ピラーは0.2〜5ミクロン、好ましくは約0.8μm〜約3μmの範囲の平均直径、および約0.5〜約40、好ましくは約2〜約25のアスペクト比(長さ/直径)を有する。特に好ましい実施形態では、ピラーは約1μmの直径および約20μmの高さを有する。
【0016】
ポリプロピレンフィルム/ピラーの表面は、マイクロ波プラズマ処理装置を用いて酸素プラズマ処理(100W、30秒)される。酸素プラズマ処理は、酸素プラズマ処理していないポリプロピレンフィルムおよびピラーと比較して、その表面により高い酸素含量を有するポリプロピレンフィルムおよびピラーを生じさせる。処理の程度に依存して、ポリプロピレンフィルムおよびピラーは約21%の酸素含量を有し得る。
【0017】
酸素プラズマ処理したフィルムおよびピラーは、静止時の水接触角が約15°未満の基質となるため、ポリプロピレンが高度の疎水性であることは周知であるにもかかわらず、基質は超親水性を示す。
【0018】
図2のグラフに示すように、突出した表面ピラーを有する酸素プラズマ処理したポリプロピレンフィルムは、有利に、フィルムなし対照の1.0の凝固時間を標準として、0.2の凝固時間を示す。
【0019】
さらに別の実施形態では、血液凝固基質の表面は実質的に平面であり、ピラーはその平面に対して約±45°以内の垂直、より好ましくは平面に対して約±30°以内の垂直である。
【0020】
別の実施形態では、血液凝固基質は1×10
5〜6×10
8ピラー/cm
2のピラー密度を有する。本発明の目的において、「ピラー密度」は付着構造体表面の平方センチメートル当たりに存在するピラーの数と表すことができる。
【0021】
さらに別の実施形態では、血液凝固基質はその表面に約1×10
7〜約5×10
7ピラー/cm
2の範囲のピラー密度を有する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、フィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを有するポリプロピレンフィルムおよび基質を含む、血液凝固医療デバイスに関する。
【0023】
デバイスのポリプロピレンフィルム/ピラーの表面は、マイクロ波プラズマ処理装置を用いて酸素プラズマ処理(100W、30秒)される。酸素プラズマ処理は、酸素プラズマ処理していないポリプロピレンフィルムおよびピラーと比較して、その表面により高い酸素含量を有するポリプロピレンフィルムおよびピラーを生じさせる。処理の程度に依存して、ポリプロピレンフィルムおよびピラーは約21%の酸素含量を有し得る。
【0024】
好ましい実施形態では、血液凝固医療デバイスのポリプロピレンフィルムは酸素プラズマ処理され、約0.8μm〜約3μmの直径、約0.5〜約40、好ましくは約2〜約25のアスペクト比のピラーを有する。好ましい実施形態では、ピラーは約1μmの直径および約20μmの高さを有する。
【0025】
酸素プラズマ処理したフィルムおよびピラーは、静止時の水接触角が約15°未満となる血液凝固医療デバイスをもたらすため、ポリプロピレンが高度の疎水性であることは周知であるにもかかわらず、デバイスは測定において超親水性を示す。血液凝固医療デバイスは、未処理フィルムの0.9の標準化凝固時間に対して、0.2の標準化凝固時間を示す。
【0026】
本発明の別の実施形態は、ポリプロピレンフィルムの表面から伸びる複数のポリプロピレンピラーを含む血液凝固基質であって、そのポリプロピレンフィルムおよびピラーが酸素プラズマ処理された血液凝固基質と血液を接触させることを含む、血液凝固を促進する方法に関する。
【0027】
あるいは、本発明は、フィルムの表面から伸びる酸素プラズマ処理した複数のポリプロピレンピラーを有するポリプロピレンフィルムを含む血液凝固医療デバイスと血液を接触させることを含む、血液凝固を促進する方法に関する。
【0028】
別の実施形態では、血液凝固基質は、鋳型、高分子自己組織化、リソグラフィおよびエッチングを用いたナノまたはマイクロ成形加工から選択されるプロセスによって少なくとも部分的に形成される。例えば、血液凝固基質を形成する方法は、a)窪み部を備えた溶媒に可溶なモールド(鋳型)を準備するステップと、b)モールドにポリプロピレンフィルムを供給し、モールドの窪み部にポリプロピレンを充填するステップと、c)ステップb)のポリプロピレンおよびモールドを処理し、ポリプロピレンを実質的に凝固させるステップと、d)溶媒(ポリプロピレンは溶解せず、モールドを溶解するように選択される)にモールドおよびポリプロピレンを暴露し、モールドを溶解させ、ピラー化した基質を得るステップと、およびe)ピラー化した基質を酸素プラズマ処理するステップを含む。
【0029】
本発明を、非限定的な例として、本発明の様々な実施形態を例証する図面を参照として付け加え、以下の記述においてさらに説明する。
【実施例】
【0030】
(例1)
この実施例は、高アスペクト比を有するポリプロピレンの密に充填された表面構造体を酸素プラズマ処理して、表面により高い表面積とより高い酸素含量を生じさせることができ、このようにしてより速い全血凝固時間をもたらすことができることを示す。ポリカーボネート膜をモールドとして使用し、以下のようなインプリンティングプロセスを用いて、直径1ミクロンおよび高さ20ミクロンのポリプロピレンピラーを製造した。
・直径1ミクロンの細孔および2.5cmの円直径を有する厚さ20ミクロンの市販のトラックエッチポリカーボネート膜をMillipore Corporation of Billerica,MA,USAから入手した。
・該膜を鋳型として使用し、Ethicon,Inc.of Somerville,NJ,USAから入手した厚さ300ミクロンの耐溶媒性のポリプロピレン高分子フィルムをインプリントした。ポリプロピレンフィルムを高温および高圧下(180℃、600kPa(6バール))で20分間、ポリカーボネート膜鋳型にプレスして、ポリプロピレンを融解した。
・ポリプロピレン高分子と膜を175℃に冷却した後、圧を解除し、その後、膜をジクロロメタンに溶解することによって高分子構造体を型から取り離して解放した。
・マイクロ波プラズマ処理装置を100Wで30秒間用いて、一部のフィルムを酸素プラズマ処理した。
【0031】
生成物を柱状のようなピラーとするために鋳型として働く、溶媒に可溶な多孔性のポリカーボネート材料は、別の溶媒に可溶な多孔性の高分子材料に置き換えることができる。あるいは、化学溶媒に暴露することを必要とせずに最終生成物の柱状のような円筒状ピラーを提供するために、陽極酸化処理された酸化アルミニウムなどの可剥性のモールドに置き換えることができる。ポリイミドフィルム(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEによりKAPTON(商標)の商品名で販売されている)は、高分子の表面を金属などの表面と直接接触することから保護するためのキャッピング手段またはシールドとして使用した。この目的のために、フィルムまたは他の層として提供され得る他の適切な実質上化学的に不活性な材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEによりTEFLON(登録商標)の商品名で販売されている)が含まれる。これらの材料は、有利には、ポリカーボネート製の溶媒に可溶なモールドまたは鋳型材料と反応せず、圧縮が完了すれば容易に取り出すまたは剥離することができる。
【0032】
これらの構造体の表面積の割合は、ポリプロピレンの高表面積ピラーのSEM画像である
図1で表すように、平坦なフィルムの表面積の6.5倍である。
【0033】
本明細書で接触角測定と称する静止時の水接触角測定は、液滴法を用いて実施した。Rame−Hart接触角ゴニオメータをDrop Imageソフトウェアと共に使用した。接触角測定の直前にプラズマ処理を行った。測定のために脱イオン水の2マイクロリットルの液滴を表面に置き、各表面について5回の測定を行った。平均接触角を以下の表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
未処理のピラー化した構造体の接触角は、対応する平坦なフィルムより高く(148°対101°)、それらのより高い疎水性または非湿潤性が示唆される。酸素プラズマ処理は、表1に示すように、これらの表面の水に対する接触角を大きく低減し、湿潤性の表面(およびより高い親水性)を生じさせる。
【0036】
表面の元素分析を平坦なフィルムで実施し、結果を以下の表2に示す。酸素プラズマ処理は、フィルム上により高い酸素含量を生じさせる(20.9%対4.3%)。
【0037】
【表2】
【0038】
酸素プラズマ処理および未処理の両方の、平坦なフィルムおよび高アスペクト比構造のフィルムをインビトロで全血凝固時間について評価した。ウサギの血液をニュージーランドの白色ウサギからEDTA管(BD Biosciences)に採取した。血液を4℃で保存し、採取から2日以内に使用した。フィルムを室温のEDTAの抗凝固処理されたウサギの全血300μlと共に24ウェルプレート(Nunc)でインキュベートした。50μlの0.1M塩化カルシウム(GCE Laboratory Chemicals)を添加して凝固を開始させ、試料を緩やかに振動させた。凝固までの時間を観察し、記録した。ウェルの1つでフィルムなしの対照試験(フィルムなし対照)を同時に実施した。フィルムなし対照の凝固時間は約20分間であった。試験試料の凝固時間をフィルムなし対照の凝固時間で標準化した(
図2)。酸素プラズマ処理した直径1μmの高アスペクト比のピラーを有したフィルムは、未処理フィルムの0.9の標準化凝固時間に対し、0.2の標準化凝固時間であり、最も迅速な凝固時間を示す。プラズマ処理のみまたは高アスペクト比のピラーのみでは、そのような迅速な凝固時間をもたらさない。
【0039】
(例2(比較))
ポリジオキサノン(PDO)フィルムを使用して、実施例1で述べたのと同様の方法で、高アスペクト比のピラーを製造した。高さ20μmで直径1μmのピラー(アスペクト比20)のSEM画像を
図3に示す。実施例1で概説したように静止時の水接触角測定を実施した。平均接触角を以下の表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
ピラー化した構造体の接触角は、酸素プラズマ処理を行わない場合でも、対応する平坦なフィルムより低かった(<10°対80°)。
【0042】
表面の元素分析を、実施例1で概説したように、平坦なPDOフィルムについて実施した。
図4に示すように、酸素プラズマ処理および未処理の両方ともに、類似の酸素含量を有する。
【0043】
【表4】
【0044】
酸素プラズマ処理および未処理の両方の、平坦なPDOフィルムおよび高アスペクト比構造のPDOフィルムについてインビトロで全血凝固時間を評価した。すべての凝固時間をフィルムなし対照で標準化し、
図4に示す。ポリプロピレン試料と異なり、酸素プラズマ処理したポリジオキサノン構造体および/または未処理のポリジオキサノン構造体に関しては凝固時間の短縮は認められなかった。すべての試料が類似の凝固時間を示した。
【0045】
優先権証明書を含む、本明細書で引用するすべての特許、試験手順および他の文書は、その開示が矛盾しない範囲でおよびそのような組み込みが許容されるすべての法域に対して、本明細書の一部とみなすものとする。
【0046】
下限の数値および上限の数値が本明細書で列挙される場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図される。
【0047】
本発明を上記のように説明したが、本発明を多くの方法で変化させることができるのは明白である。そのような変化は本発明の精神および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者に自明なようにそのようなすべての変更は特許請求の範囲に含まれるべきものと考える。