(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を基板と接続する手段として、導電性粒子が分散された熱硬化性樹脂を剥離フィルムに塗布したテープ状の接続材料(例えば、異方性導電フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film))が用いられている。
【0003】
この異方性導電フィルムは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やIC(Integrated Circuit)チップの端子と、LCD(Liquid Crystal Display)パネルのガラス基板上に形成された電極とを接続する場合を始めとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0004】
異方性導電フィルムは、通常、熱硬化性樹脂を用いているため、前記異方性導電フィルムを硬化させる際には、高温(例えば、180℃)での加熱が行われる。しかし、接続対象の基板の種類によってはその加熱により不具合が生じる。例えば、接続対象に液晶ディスプレイのガラス基板を用いた場合には、高温での加熱により前記ガラス基板に反り及び歪みが生じ、それが原因となり、液晶ディスプレイに表示ムラが生じるという問題がある。
したがって、低温での加熱により、又は加熱を必要とせずに用いることができる異方性導電フィルムが望まれている。
【0005】
そこで、光照射によって硬化する光硬化型の異方性導電フィルムが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
前記光照射に用いる光源としては、例えば、水銀灯、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)などが挙げられる。これらの中でも、前記LEDは、省電力、長寿命、小型などの利点を有することから幅広く利用されている。
前記LEDとしては、発光波長が365nmであるLEDが主流となっている。
したがって、発光波長が365nmであるLEDを用いた光照射に対して利用できる異方性導電フィルムが望まれている。
【0007】
また、異方性導電フィルムは、フォトレジストのように紫外光をカットしたイエロールームで用いられることは少なく、電子部品を基板と接続する際には、蛍光灯下で行われることが多い。そのため、蛍光灯などの室内照明に含まれる紫外光によって光硬化型の異方性導電フィルムの硬化反応が進行してしまい、接続時に十分な接続性が得られないという問題がある。
したがって、室内照明に曝露されても、十分な接続性が得られる異方性導電フィルムが望まれている。
【0008】
しかし、前述の提案の技術を含む従来の技術では、発光波長が365nmであるLEDを用いた光照射に対して利用でき、かつ室内照明に曝露されても十分な接続性が得られる異方性導電フィルムが得られていない。
【0009】
したがって、発光波長が365nmであるLEDを用いた光照射に対して利用でき、かつ室内照明に曝露されても十分な接続性が得られる異方性導電フィルム、並びに前記異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び前記異方性導電フィルムを用いた接合体の提供が求められているのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、オキシムエステル型光重合開始剤と、波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物とを少なくとも含有し、好ましくは導電性粒子を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記異方性導電フィルムは、第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを異方性導電接続させる異方性導電フィルムである。
【0016】
<膜形成樹脂>
前記膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。前記膜形成樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の点からフェノキシ樹脂が好ましい。
前記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂などが挙げられる。
前記フェノキシ樹脂は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0017】
前記膜形成樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%〜70質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。
【0018】
<ラジカル重合性化合物>
前記ラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ラジカル重合性化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%〜70質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。
【0020】
<オキシムエステル型光重合開始剤>
前記オキシムエステル型光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化2】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
3は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数3〜20の複素環基、炭素数2〜20のアシル基、及び結合手(前記結合手は、隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合し、−X−と一緒になって環構造を形成する結合手である。)のいずれかを表す。R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数3〜20の複素環基、及び炭素数2〜20のアシル基のいずれかを表す。aは、0〜4の整数を表す。bは、0〜5の整数を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、及びNR
5(R
5は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。)のいずれかを表す。Yは、単結合、及びカルボニル基のいずれかを表す。
【0021】
前記R
1、前記R
2、前記R
3、前記R
4及び前記R
5における炭素数1〜20のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0022】
前記R
1、前記R
2、前記R
3、前記R
4及び前記R
5における炭素数6〜30のアリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスレニル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜12のアリール基が好ましい。
【0023】
前記R
1、前記R
2、前記R
3、前記R
4及び前記R
5における炭素数7〜30のアリールアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数7〜13のアリールアルキル基が好ましい。
【0024】
前記R
1、前記R
2、前記R
3、前記R
4及び前記R
5における炭素数3〜20の複素環基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキソラニル基などが挙げられる。これらの中でも、5〜7員複素環基が好ましい。
【0025】
前記R
3、及び前記R
4における炭素数2〜20のアシル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基などが挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物などが挙げられる。
【化3】
ただし、前記一般式(2)中、R
11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
12は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。
【0027】
前記R
11、及び前記R
12における炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基としては、それぞれ対応する前記R
1、及び前記R
2において説明した炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基などが挙げられる。
【化4】
ただし、前記一般式(3)中、R
21は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
22は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
23は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基のいずれかを表す。R
24は、炭素数1〜19のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基のいずれかを表す。
【0028】
前記R
21、前記R
22、及び前記R
23における炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基としては、それぞれ対応する前記R
1、前記R
2、及び前記R
5において説明した炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数3〜20の複素環基などが挙げられる。
【0029】
前記R
24における炭素数1〜19のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基などが挙げられる。
【0030】
前記R
24における炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基などが挙げられる。
【0031】
前記オキシムエステル型光重合開始剤としては、具体的には、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
【化5】
【0032】
これらの中でも、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](例えば、BASF社製のイルガキュア OXE 01、前記構造式(1))、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(例えば、BASF社製のイルガキュア OXE 02、前記構造式(3))が好ましい。
【0033】
前記オキシムエステル型光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜8質量%が好ましく、2質量%〜5質量%がより好ましい。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、室内照明に曝露される場合であっても、導通抵抗が低く、接続性が非常に優れる点で、有利である。
【0034】
<波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物>
前記波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物としては、波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド53:1(例えば、BASF社製のIRGALITE RED CBNLなど)、C.I.ピグメントオレンジ73(例えば、BASF社製のIRGAZIN DPP Orange RAなど)、及び前述の光透過特性を有するキナクリドン顔料(例えば、BASF社製のCINQUASIA Magenta RT−355−Dなど)などが挙げられる。
【0035】
ここで、前記波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物であるかどうかは、化合物のUV−Visスペクトルを測定することにより確認できる。具体的には、測定試料について、トルエンを用いて0.5質量%に希釈した溶液を用いてUV−Vis測定を行うことで確認できる。
【0036】
前記波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物を前記異方性導電フィルムに含有させることで、波長365nmを発光するLED光照射装置を用いて前記異方性導電フィルムを硬化させる際に、その硬化を阻害することなく、かつ蛍光灯などの室内照明下での前記異方性導電フィルムの保存安定性を維持でき、室内照明に曝露されても十分な接続性が得られる。
【0037】
前記波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜1.5質量%が好ましく、0.3質量%〜0.6質量%がより好ましい。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、室内照明に曝露されない場合に、導通抵抗が低く、接続性が非常に優れる点で、有利である。
【0038】
前記オキシムエステル型光重合開始剤の含有量が、2質量%〜5質量%であり、前記波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物の含有量が、0.3質量%〜0.6質量%であることで、室内照明に曝露された場合、及び曝露されない場合のいずれであっても、導通抵抗が低く、接続性が非常に優れる点で、有利である。
【0039】
<導電性粒子>
前記導電性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。
【0040】
前記金属粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム、半田などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ニッケル、銀、銅が好ましい。これらの金属粒子は、表面酸化を防ぐ目的で、その表面に金、パラジウムを施していてもよい。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。
【0041】
前記金属被覆樹脂粒子としては、樹脂粒子の表面を金属で被覆した粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子の表面をニッケル、銀、半田、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの金属で被覆した粒子などが挙げられる。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。低抵抗を考慮した接続の場合、樹脂粒子の表面を銀で被覆した粒子が好ましい。
前記樹脂粒子への金属の被覆方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無電解めっき法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記樹脂粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−シリカ複合樹脂などが挙げられる。
【0042】
前記導電性粒子は、異方性導電接続の際に、導電性を有していればよい。例えば、金属粒子の表面に絶縁皮膜を施した粒子であっても、異方性導電接続の際に前記粒子が変形し、前記金属粒子が露出するものであれば、前記導電性粒子である。
【0043】
前記導電性粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましく、2μm〜10μmが特に好ましい。
前記平均粒子径は、任意に10個の導電性粒子について測定した粒子径の平均値である。
前記粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察により測定できる。
【0044】
前記導電性粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜10質量%が好ましく、3質量%〜8質量%がより好ましい。
【0045】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0046】
−シランカップリング剤−
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
前記シランカップリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
前記異方性導電フィルムの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm〜60μmが好ましく、5μm〜30μmがより好ましく、10μm〜20μmが特に好ましい。
【0048】
<第1の回路部材、第2の回路部材>
前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材としては、端子を有し、前記異方性導電フィルムを用いた異方性導電接続の対象となる回路部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、端子を有するガラス基板、端子を有するプラスチック基板、IC(Integrated Circuit)、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、Flex−on−Glass(フレックスオンガラス、FOG)、Chip−on−Glass(チップオンガラス、COG)、Chip−on−Flex(チップオンフレックス、COF)、Flex−on−Board(フレックスオンボード、FOB)、Flex−on−Flex(フレックスオンフレックス、FOF)、液晶パネルなどが挙げられる。
【0049】
前記端子を有するガラス基板としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)ガラス基板、IZO(Indium Zinc Oxide)ガラス基板、その他のガラスパターン基板などが挙げられる。これらの中でも、ITOガラス基板、IZOガラス基板が好ましい。
前記端子を有するプラスチック基板の材質、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、端子を有するリジット基板、端子を有するフレキシブル基板などが挙げられる。
前記ICとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)における液晶画面制御用ICチップなどが挙げられる。
【0050】
前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材は、同じ回路部材であってもよいし、異なる回路部材であってもよい。
【0051】
(接続方法)
本発明の接続方法は、第1の配置工程と、第2の配置工程と、光照射工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記接続方法は、第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを異方性導電接続させる方法である。
【0052】
前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記異方性導電フィルムの説明で例示した前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材がそれぞれ挙げられるが、本発明の前記異方性導電フィルムを硬化させる365nmの光を透過する回路部材であることが好ましい。そのような回路部材としては、例えば、ITOガラス基板などが挙げられる。
【0053】
<第1の配置工程>
前記第1の配置工程としては、前記第1の回路部材の端子上に本発明の前記異方性導電フィルムを配置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
<第2の配置工程>
前記第2の配置工程としては、前記異方性導電フィルム上に前記第2の回路部材を、前記第2の回路部材の端子が前記異方性導電フィルムと接するように配置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0055】
<光照射工程>
前記光照射工程としては、前記異方性導電フィルムに365nmの光を照射する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光の照射は、前記異方性導電フィルムに対して、前記第1の回路部材の側から行ってもよいし、前記第2の回路部材の側から行ってもよい。即ち、前記異方性導電フィルムへの前記光の照射は、前記第1の回路部材越しに行ってもよいし、前記第2の回路部材越しに行ってもよい。
【0056】
前記光の照射源(光照射源)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LEDランプなどが挙げられる。
【0057】
前記光照射工程の際には、前記異方性導電フィルムを加熱及び押圧する処理を併用することが好ましい。
前記加熱及び押圧する処理は、前記光照射を行う前に開始し、前記光照射が終了するまで行うことが好ましい。
【0058】
前記加熱及び押圧する処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱押圧部材を用いて行うことができる。
前記加熱押圧部材としては、例えば、加熱機構を有する押圧部材などが挙げられる。前記加熱機構を有する押圧部材としては、例えば、ヒートツールなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃〜140℃が好ましい。
前記押圧の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1MPa〜100MPaが好ましい。
前記加熱及び押圧の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5秒間〜120秒間が挙げられる。
【0059】
(接合体)
本発明の接合体は、第1の回路部材と、第2の回路部材と、異方性導電フィルムの硬化物とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0060】
前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記異方性導電フィルムの説明で例示した前記第1の回路部材、及び前記第2の回路部材がそれぞれ挙げられる。
【0061】
前記異方性導電フィルムは、本発明の前記異方性導電フィルムである。
前記異方性導電フィルムの硬化物は、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に介在して前記第1の回路部材の端子と前記第2の回路部材の端子とを電気的に接続している。
【0062】
前記接合体は、例えば、本発明の前記接続方法により製造できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
<異方性導電フィルムの作製>
フェノキシ樹脂(品名:PKFE、巴工業株式会社製)47質量部、ウレタンアクリレート(品名:EBECRYL600、ダイセル・サイテック株式会社製)35質量部、アクリルモノマー(品名:A−DCP、新中村化学工業株式会社製)5質量部、シランカップリング剤(品名:KBM−503、信越化学工業株式会社製)2質量部、オキシムエステル型光重合開始剤(品名:イルガキュア OXE 01、BASF社製)3質量部、IRGALITE RED CBNL(BASF社製、0.5質量%トルエン溶液の波長365nmの光の透過率が63%かつ波長400nmの光の透過率が20%)0.5質量部、及び導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業株式会社製、平均粒子径4μm)6質量部を均一に混合した。混合後の配合物をシリコーン処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)上に乾燥後の平均厚みが14μmとなるようにバーコーターで塗布し、70℃で5分間乾燥し、導電性導電フィルムを作製した。
【0065】
<接合体の製造>
以下の方法により接合体を製造した。
第2の回路部材として、評価用COF(チップオンフレックス)(デクセリアルズ株式会社評価用基材、50μmP(ピッチ)、Cu8μmt(厚み)−Snめっき、PI(ポリイミド)38μmt(厚み)−S’perflex基材)を用いた。
第1の回路部材として、ITOコーティングガラス(デクセリアルズ株式会社評価用基材、全表面ITOコート、ガラス厚み0.7mm)を用いた。
前記第1の回路部材上に、幅1.5mmにスリットした前記異方性導電フィルムを配置した。配置する際、80℃、1MPa、1秒間で貼り付けた。続いて、その異方性導電フィルム上に、前記第2の回路部材を前記異方性導電フィルムからはみ出さないように配置した。続いて、緩衝材(テフロン(登録商標)、厚み0.15mm)を介して、加熱ツール(幅1.5mm)により100℃、4MPa、3秒間にて圧着後、圧力を加えた状態で前記第1の回路部材側からLED−UV装置(ZUV−30H、オムロン株式会社製)にて、波長365nmの光を2秒間照射(照度600W/cm)し、接合体を得た。
【0066】
<評価>
作製した接合体について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
蛍光灯曝露では、蛍光灯(FPL27EX−N、TWINBIRD社製、27W)の直下2mに異方性導電フィルムを置き、3時間放置した。
【0067】
<<導通抵抗>>
接合体の初期の導通抵抗値(Ω)を以下の方法で測定した。
具体的には、上記接合体の製造と同様の方法で、
図1に示すような試験体を作製して、デジタルマルチメーター(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機株式会社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの抵抗値を測定した。30チャンネルについて抵抗値を測定し、最大の抵抗値を測定値とした。
【0068】
<<反応率>>
赤外分光装置(フーリエ変換型赤外分光(FT−IR))を用いて、接続前後のビニル基(重合性基)を測定し、その変化から反応率を測定した。
具体的には、異方性導電フィルム作製直後にIR分析を行い、1,640cm
−1の吸収を基準として、蛍光灯曝露をしない条件における接続後の反応率、蛍光灯曝露後の接続前の反応率、蛍光灯曝露をした条件での接続後の反応率を測定した。
【0069】
(実施例2)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、オキシムエステル型光重合開始剤3質量部を6質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、オキシムエステル型光重合開始剤3質量部を1質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNL 0.5質量部を1.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNL 0.5質量部を0.2質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、オキシムエステル型光重合開始剤をオキシムエステル型光重合開始剤(品名:イルガキュア OXE 02、BASF社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例7)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNLをCINQUASIA Magenta RT−355−D(BASF社製、0.5質量%トルエン溶液の波長365nmの光の透過率が52%かつ波長400nmの光の透過率が26%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例8)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNLをIRGAZIN DPP Orange RA(BASF社製、0.5質量%トルエン溶液の波長365nmの光の透過率が55%かつ波長400nmの光の透過率が30%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例9)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、ウレタンアクリレートをウレタンアクリレート(品名:EBECRYL204、ダイセル・サイテック株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例10)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、導電性粒子を導電性粒子(品名:AUL705、積水化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、オキシムエステル型光重合開始剤をアルキルフェノン型光重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製)に代え、かつIRGALITE RED CBNLを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
<異方性導電フィルムの作製>
比較例1において、アルキルフェノン型光重合開始剤3質量部を8質量部に変えた以外は、比較例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例3)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNLを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例4)
<異方性導電フィルムの作製>
比較例3において、オキシムエステル型光重合開始剤3質量部を1質量部に変えた以外は、比較例3と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例5)
<異方性導電フィルムの作製>
実施例1において、IRGALITE RED CBNLをイルガキュア400(BASF社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルムを得た。
実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、イルガキュア400は、波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が90%以上であった。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1〜10では、蛍光灯曝露がある場合、及びない場合のいずれにおいても、導通抵抗に優れる結果が得られた。また、接続後の反応率も高かった。
その中でも、オキシムエステル型光重合開始剤の含有量が、2質量%〜5質量%であり、かつ波長365nmの光の透過率が40%以上かつ波長400nmの光の透過率が30%以下の化合物がC.I.ピグメントレッド53:1(BASF社製のIRGALITE RED CBNL)であり、その含有量が、0.3質量%〜0.6質量%である実施例1、6、9、及び10は、蛍光灯曝露時の反応が少なく、かつ蛍光灯曝露がある場合、及びない場合のいずれにおいても、導通抵抗が非常に優れていた。
【0085】
比較例1及び2では、硬化がほとんど起こらず、導通抵抗が不十分であった。
比較例3〜5では、蛍光灯曝露において硬化が起こり、導通抵抗が不十分であった。