特許第6185743号(P6185743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6185743-毛成長抑制剤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185743
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】毛成長抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20170814BHJP
   A61K 36/70 20060101ALI20170814BHJP
   A61Q 7/02 20060101ALI20170814BHJP
   A61Q 9/04 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61K36/70
   A61Q7/02
   A61Q9/04
   A61P17/00
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-90997(P2013-90997)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-214100(P2014-214100A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】長澤 安曇
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 学
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−303909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/9789
A61K 36/70
A61P 17/00
A61Q 7/02
A61Q 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする毛成長抑制剤。
【請求項2】
ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする除毛または脱毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛成長抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪や体毛は、生物学的には頭部、胸部、手足等の重要な器官を防護するものである。しかしながら、近年、特に手足等における体毛は、美的外観上無い方が好ましいとする傾向が高まっている。
【0003】
体毛を除去する方法としては、毛抜き、シェーバー、脱毛器等を用いる機械的除去方法、脱毛剤や除毛剤を用いた化学的作用による除去方法が知られている。しかしながら、これらの公知の体毛除去方法では、皮膚に対して物理的または化学的刺激を伴う場合がある。また上記公知の体毛除去方法では、除去後に再生してくる体毛の毛成長を持続的に抑制することはできないため、一定期間経過後には再び体毛除去処理を行わなければならない。よって、体毛の成長を持続的、且つ効果的に抑制することにより、体毛処理回数を減らし、手間を軽減することのできる毛成長抑制剤が望まれている。
【0004】
従来、毛成長を抑制する作用を有する植物由来成分の探索が行われている。タデ科植物についても、ダイオウ(Rheum palmatum L.、Rheum tanguticum Maximowicz、Rheum officinale Baillon、Rheum coreanum Nakaiもしくはそれらの雑種)またはその抽出物からなる発毛抑制剤(特許文献1)、およびダッタンソバ(Fagopyrum tataricum L. Gaertn)の抽出物を有効成分とする発毛抑制剤(特許文献2)が知られている。
【0005】
ムカゴトラノオはタデ科イブキトラノオ属の植物である。ムカゴトラノオについては、最近、抗炎症作用があることが報告されたが(非特許文献1)、それ以外の薬効は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−089626号公報
【特許文献2】特開2011−190214号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J Sci Food Agric, 2012, Nov 5., doi:10.1002/jsfa.5795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、体毛の成長を効果的、且つ持続的に抑制する毛成長抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、毛成長を抑制する物質を探索した結果、従来何らかの薬効があることがほとんど知られていなかったタデ科植物ムカゴトラノオまたはその抽出物が、毛成長を抑制する効果を有し、脱毛または除毛のために有効であることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする毛成長抑制剤を提供する。
また本発明は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする除毛または脱毛剤を提供する。
また本発明は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物由来で生体に対して安全であり、且つ毛成長抑制効果の高い脱毛剤、除毛剤、皮膚外用剤等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ムカゴトラノオ抽出物が毛成長に与える影響。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「毛成長抑制」とは、毛または毛包の伸長を抑制する作用、あるいは毛径を減少させる作用を意味する。
【0014】
本明細書において、成長を抑制される「毛」としては、頭髪、ひげ、および手足や体幹部の毛などの頭髪以外の体毛が挙げられるが、好ましくは、ひげおよび頭髪以外の体毛である。
【0015】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち人間を手術、治治療または診断する方法を含まない、より具体的には医師、または医療従事者もしくは医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療または診断を実施する方法を含まない概念である。
【0016】
本明細書において、「ムカゴトラノオ」とは、タデ科イブキトラノオ属のPolygonum viviparum L.を指す。本発明において、ムカゴトラノオは、その任意の部位、例えば、全草、葉(葉身、葉柄等)、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、茎、地上部、根茎、根、塊根、またはそれらの組み合わせが使用され得る。このうち好ましい部位は根茎である。本発明において、当該植物は、そのまま用いても乾燥させて用いてもよく、またはさらにそれらを切断、破砕、粉砕、搾取して用いてもよい。
【0017】
上記植物の抽出物は、上述した当該植物の部位をそのままもしくは乾燥させ、またはさらに切断、破砕、粉砕した後に、抽出工程に付すことによって、得ることができる。上記植物の抽出物としては、市販されているものを利用してもよく、または常法により得られる各種溶媒抽出物、またはその希釈液、その濃縮液、その乾燥末、もしくはペースト状にしたものであってもよい。
【0018】
抽出のための溶媒には、極性溶媒、非極性溶媒のいずれをも使用することができる。溶媒の具体例としては、例えば、水;1価、2価または多価のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状または環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;飽和または不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル類;ならびにこれらの混合物が挙げられる。好適には、薬理活性および汎用性の点で、水、アルコール類およびその水溶液が挙げられる。
【0019】
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール類;グリセリン等の3価以上のアルコール類等が挙げられる。このうち、汎用性の点で、1価アルコール類および2価アルコール類が好ましい。また好ましくは、上記アルコール類は、炭素数1〜10のアルコール、より好ましくは炭素数1〜4のアルコールであり得る。
【0020】
上記アルコール類の好ましい例としては、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。
【0021】
上記アルコール類の水溶液におけるアルコールの濃度は、好ましくは20容量%以上、より好ましくは30容量%以上であり、そして、好ましくは99.9容量%以下、より好ましくは99.5容量%以下、さらに好ましくは95容量%以下である。または、上記アルコール類の水溶液におけるアルコールの濃度は、好ましくは20容量%以上99.9容量%以下、より好ましくは20容量%以上99.5容量%以下、さらに好ましくは30容量%以上95容量%以下である。
【0022】
上記アルコール類のうち、汎用性の観点から、エタノールがより好ましい。したがって、上記植物の抽出物を調製するためのより好適な溶媒としては、水、エタノールおよびエタノール水溶液が挙げられる。
【0023】
エタノール水溶液のエタノール濃度は、好ましくは20容量%以上、より好ましくは30容量%以上であり、そして、好ましくは99.9容量%以下、より好ましくは99.5容量%以下、さらに好ましくは95容量%以下である。または、エタノール水溶液のエタノール濃度は、好ましくは20容量%以上99.9容量%以下、より好ましくは20容量%以上99.5容量%以下、さらに好ましくは30容量%以上95容量%以下である。
【0024】
抽出における溶媒の使用量としては、植物(乾燥質量換算)1gに対して1〜100mLが好ましい。抽出条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されない。例えば、抽出時間は1分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、他方、2ヶ月以下が好ましく、5週間以下がより好ましい。抽出温度は0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、他方、溶媒沸点以下が好ましい。通常、低温なら長時間、高温なら短時間の抽出を行う。抽出条件の例としては、15〜40℃で3日〜5週間等が挙げられるが、これらに限定されず、当業者によって適宜選択され得る。
【0025】
上記植物の抽出物を得るための抽出手段は、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、ソックスレー抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の通常の手段を用いることができる。これらの抽出手段は組み合わせてもよい。例えば、浸漬や固液抽出と液液抽出を組み合わせてもよく、または抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出をおこなってもよい。さらに、抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。
【0026】
上述のようにして得られた抽出物は、そのまま用いることもできるが、さらに希釈、濃縮または凍結乾燥等し、および/または液状、粉末状もしくはペースト状に調製して用いることもできる。あるいは、一般的に植物抽出物の製造に用いられる、活性炭、吸着樹脂、イオン交換樹脂、活性白土、シリカゲル等を用いた処理を行うこともできる。
【0027】
本発明において、ムカゴトラノオおよびその抽出物は、いずれかが単独で使用されてもよく、または上述したムカゴトラノオおよびその抽出物からなる群より選択される2以上の組み合わせで使用されてもよい。抽出物は、上述した各種溶媒抽出物のいずれか1つまたは2種類以上の上記溶媒抽出物の組み合わせであり得るが、好ましくはエタノール水溶液抽出物を含み、より好ましくはエタノール水溶液抽出物である。当該エタノール水溶液抽出物は、エタノール濃度が好ましくは20容量%以上、より好ましくは30容量%以上、そして、好ましくは99.9容量%以下、より好ましくは99.5容量%以下、さらに好ましくは95容量%以下のエタノール水溶液の抽出物であり得る。あるいは、当該エタノール水溶液抽出物は、エタノール濃度が好ましくは20容量%以上99.9容量%以下、より好ましくは20容量%以上99.5容量%以下、さらに好ましくは30容量%以上95容量%以下のエタノール水溶液の抽出物であり得る。
【0028】
上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、ヒトもしくは非ヒト動物、またはそれらに由来する組織、器官、細胞において、毛成長を抑制することができ、且つそれによって、除毛、脱毛等に効果を発揮することができる。例えば、上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、その毛成長抑制作用によって皮膚から毛を除去することができる。あるいは、上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、その毛成長抑制作用により、毛の本数や太さを減らして除毛や脱毛の処理を容易にしたり、または処理後の毛の成長を遅らせて除毛や脱毛の処理の持続性を高め、必要な除毛や脱毛処理の頻度を減少させたりすることができる。
【0029】
したがって、一態様において、本発明は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする毛成長抑制剤を提供する。また本発明は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする除毛剤もしくは脱毛剤を提供する。
別の態様において、本発明は、毛成長抑制剤、または除毛剤もしくは脱毛剤の製造のためのムカゴトラノオまたはその抽出物の使用を提供する。
一実施形態において、上記の剤は、ムカゴトラノオまたはその抽出物から本質的に構成され得る。
【0030】
また別の態様において、本発明は、毛成長抑制のため、または除毛もしくは脱毛のためのムカゴトラノオまたはその抽出物の使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、毛成長抑制、または除毛もしくは脱毛に使用するためのムカゴトラノオまたはその抽出物を提供する。
上記使用は治療的使用であってもよいが、非治療的使用であってもよい。非治療的使用としては、美容的または審美的な目的での脱毛、除毛もしくは毛成長抑制のためのムカゴトラノオまたはその抽出物の適用、およびエステティシャン、美容師、理容師、トリマー等による使用などが挙げられる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、ムカゴトラノオまたはその抽出物は、皮膚に外用される。したがって本発明はまた、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする皮膚外用剤を提供する。また本発明は、皮膚外用剤の製造のためのムカゴトラノオまたはその抽出物の使用を提供する。また本発明は、皮膚外用により毛成長抑制、または除毛もしくは脱毛するためのムカゴトラノオまたはその抽出物の使用を提供する。また本発明は、皮膚外用による毛成長抑制、または除毛もしくは脱毛に使用するためのムカゴトラノオまたはその抽出物を提供する。
【0032】
ムカゴトラノオまたはその抽出物はまた、毛成長抑制のため、または除毛もしくは脱毛のための医薬品、医薬部外品、化粧料、または他の組成物の製造のために使用することができる。当該医薬品、医薬部外品、化粧料および組成物は、ムカゴトラノオまたはその抽出物を毛成長抑制のため、または除毛もしくは脱毛のための有効成分として含有する。さらに、当該医薬品、医薬部外品、化粧料および組成物は、ムカゴトラノオまたはその抽出物の毛成長抑制作用が失われない限り、必要に応じて薬学的にもしくは化粧料として許容される担体や添加剤、または他の有効成分、薬理成分、化粧成分等を含有していてもよい。
【0033】
あるいは、ムカゴトラノオまたはその抽出物は、毛成長抑制成分として、任意の医薬品、医薬部外品、化粧料、または他の組成物に添加され得る。例えば、ムカゴトラノオまたはその抽出物を毛成長抑制成分として含有する、保湿や美白用スキンケア製品、制汗剤、デオドラント剤、ボディソープ等を製造することができる。
【0034】
ムカゴトラノオまたはその抽出物を含む医薬品、医薬部外品、化粧料および組成物は、任意の形態に調製され得るが、好ましくは外用剤であり得る。当該外用剤は、好ましくは、毛成長抑制または除毛もしくは脱毛のための皮膚外用剤、例えば軟膏、クリーム、ローション、ゲル、フォーム、パッチ、テープ、シート、スプレー等の形態であり得る。あるいは、当該外用剤は、毛成長抑制機能を備えた、保湿や美白用スキンケア製品、制汗剤、デオドラント剤、ボディソープ等であり得る。
【0035】
上記医薬品、医薬部外品、化粧料および組成物におけるムカゴトラノオまたはその抽出物の含有量は、当該抽出物の乾燥質量換算で、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上であり、他方、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0036】
なお別の態様において、本発明は、対象の毛成長を抑制する方法を提供する。また本発明は、対象の除毛または脱毛方法を提供する。当該方法は、当該対象に、ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効量で投与することを含む。当該方法は、治療的方法であってもよいが非治療的方法であってもよい。また当該方法は、インビトロ方法であってもよい。
【0037】
上記方法における対象としては、毛成長抑制が所望される動物、除毛もしくは脱毛が所望される動物が挙げられる。動物としては、好ましくはヒト、またはイヌ、ネコを含む非ヒト哺乳動物が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。あるいは、上記対象としては、上記動物由来の毛成長能力を有する組織、器官、細胞を挙げることができる。
【0038】
一実施形態において、上記方法は、非治療的方法であり得る。非治療的方法としては、美容的または審美的な目的で脱毛、除毛もしくは毛成長抑制を所望するヒトにムカゴトラノオまたはその抽出物を適用する方法、美容的または審美的な目的での脱毛、除毛もしくは毛成長抑制が所望される非ヒト哺乳動物にムカゴトラノオまたはその抽出物を適用する方法、エステティシャン、美容師、理容師、トリマー等により、上記対象にムカゴトラノオまたはその抽出物を適用する方法などが挙げられる。
【0039】
上記方法における投与の有効量は、対象の毛成長の抑制を達成できる量であり得る。好ましくは、有効量とは、投与群の毛包伸長を、未投与群の95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下に低下させることができる量であり得る。また好ましくは、有効量とは、投与群の毛径を、未投与群の95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下に低下させることができる量であり得る。
【0040】
投与の有効量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態またはその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔は、当業者によって適宜決定され得る。好ましい投与経路は、皮膚への外用投与である。用量は、ムカゴトラノオ抽出物の乾燥物換算で、成人(60kg)1人1日当たり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.005mg以上であり、他方、好ましくは100mg以下、より好ましくは50mg以下である。例えば、ムカゴトラノオ抽出物を、乾燥物換算で0.001〜100mg/日、好ましくは0.005〜50mg/日の用量で、1日に1回、2回または3回以上、毛成長を抑制したい部位の皮膚に投与することが好ましい。
【0041】
本発明はまた、例示的実施形態として以下の組成物、製造方法、用途または方法を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0042】
<1>ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする毛成長抑制剤。
【0043】
<2>毛成長抑制剤としての、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0044】
<3>毛成長抑制剤の製造のための、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0045】
<4>ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする除毛剤または脱毛剤。
【0046】
<5>除毛剤または脱毛剤としての、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0047】
<6>除毛剤または脱毛剤の製造のための、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0048】
<7>毛成長抑制に使用するためのムカゴトラノオまたはその抽出物。
【0049】
<8>除毛または脱毛に使用するための、ムカゴトラノオまたはその抽出物。
【0050】
<9>ムカゴトラノオまたはその抽出物を適用することを含む毛成長抑制方法。
【0051】
<10>ムカゴトラノオまたはその抽出物を適用することを含む除毛または脱毛方法。
【0052】
<11>ムカゴトラノオまたはその抽出物を有効成分とする皮膚外用剤。
【0053】
<12>皮膚外用剤としての、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0054】
<13>皮膚外用剤の製造のための、ムカゴトラノオまたはその抽出物の使用。
【0055】
<14>皮膚外用剤として使用するためのムカゴトラノオまたはその抽出物。
【0056】
<15>上記<1>〜<3>において、上記毛成長抑制剤は、好ましくは皮膚外用剤である。
【0057】
<16>上記<4>〜<6>において、上記除毛剤または脱毛剤は、好ましくは皮膚外用剤である。
【0058】
<17>上記<7>〜<10>において、上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、好ましくは皮膚に外用される。
【0059】
<18>上記<9>または<10>において、上記方法は、好ましくは、美容的または審美的な目的での脱毛、除毛もしくは毛成長抑制のための非治療的な方法である。
【0060】
<19>上記<18>において、上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、好ましくはエステティシャン、美容師、理容師、トリマー等により対象動物の毛成長を抑制したい部位の皮膚に適用されて、当該部位の毛成長を抑制する。
【0061】
<20>上記<1>〜<19>において、上記ムカゴトラノオは、好ましくはムカゴトラノオの根茎である。
【0062】
<21>上記<1>〜<19>において、上記ムカゴトラノオまたはその抽出物は、好ましくはムカゴトラノオの抽出物である。
【0063】
<22>上記<21>において、上記ムカゴトラノオの抽出物は、好ましくはムカゴトラノオの根茎の抽出物である。
【0064】
<23>上記<1>〜<22>において、上記ムカゴトラノオ抽出物は、好ましくはムカゴトラノオのエタノール水溶液抽出物である。
【0065】
<24>上記<23>において、上記エタノール水溶液中のエタノール濃度は、好ましくは20容量%以上、より好ましくは30容量%以上であり、そして、好ましくは99.9容量%以下、より好ましくは99.5容量%以下、さらに好ましくは95容量%以下である。
【0066】
<25>上記<23>において、上記エタノール水溶液中のエタノール濃度は、好ましくは20容量%以上99.9容量%以下、より好ましくは20容量%以上99.5容量%以下、さらに好ましくは30容量%以上95容量%以下である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0068】
実施例1 ブタ単離毛包を用いた試験物質の抑毛作用評価
(1)ムカゴトラノオ抽出物の調製
ムカゴトラノオ根茎50gに50%(v/v)エタノール水溶液1000mLを加え室温で19日間浸漬した。これをろ過し、ムカゴトラノオ抽出液を得た。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は5.2gであった。この抽出物を50%(v/v)エタノールにて希釈し、1%(w/v)の溶液とした。
【0069】
(2)器官培養毛包への添加
食肉用豚の臀部皮膚を、適当な大きさに切り分け、余分な脂肪組織を除いた。ヒビテン液に20分浸漬したあと、D-PBS(CaおよびMg不含、GIBCO BRL 10%抗菌剤含む)で3回洗浄した。洗浄後10cm径シャーレに滅菌ガーゼ(白十字ステラーゼ)を敷き、皮膚の乾燥を防ぐためPBS(CaおよびMg不含、GIBCO BRL 1%抗菌剤含む)を適当量添加し、ガーゼ上に豚皮を置いた。次に実態顕微鏡下でピンセットとメス(FEATHER No.10)を用い、毛包を傷つけないように注意しながら1本ずつに単離し、培地中に回収した。培地にはWilliam’s Medium E(SIGMA)を用いた。添加剤としてL−グルタミン(GIBCO 2503)2mMと抗生物質(GIBKO 15240)1%ハイドロコルチゾン(SIGMA)10μg/mL、インスリン(SIGMA)0.01μg/mLを添加した。
単離された毛包は上記培地の入った24穴プレートに1ウェルに1本ずつ入れ、37℃、5%CO2条件下で培養した。培養開始時と培養2日後に写真撮影を行い、画像解析を行った。解析結果より、2日間で0.2mm以上伸長した毛包を、試験物質が添加された培地に移した。試験物質としては(1)で調製したムカゴトラノオ抽出物(最終濃度0.01%(w/v))を用い、対照として同量の50%(v/v)エタノール溶液を用いた(control)。
試験物質添加培地による培養開始後、0、4、6、8日目に写真撮影と培地交換を行った。写真より画像解析を行い、毛包の伸長量を計測した。
【0070】
結果を図1に示す。対照(control)群では、培養時間の経過とともに毛包の伸長(毛成長)が観察された一方、ムカゴトラノオ添加群では、毛包の伸長が有意に抑制された(non−paired student’s−t−test,vs control)。
図1