(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1及び
図2は、本実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイドを示す図であり、特に、
図1はリニアガイドの分解斜視図を示し、
図2はリニアガイドの循環構造における要部の概略構造を示している。
【0013】
本実施形態に係るリニアガイドは、軌道部材として直線状に延びる軌道レール1と、この軌道レール1に複数の転動体としてのローラ3を介して往復移動自在に設けられた移動部材としての移動ブロック2とを備えており、例えば、テーブル等の移動物体が直線運動するのを案内する。本実施形態では、高剛性を実現するため、転動体に弾性変形の少ないローラ3を使用するが、勿論、本発明の転動体にはボールやコロ等の他の転動体を使用してもよい。また、レール下面は基台に接し、レール上面から下面に向かってボルトなどで固定される。
【0014】
軌道レール1は、断面略四角形状で細長く直線状に延ばされた部材である。軌道レール1の左右側面には、長手方向に沿ってローラ3が転走するローラ転走面1bと括れ面1cが形成される。軌道レール1の左右側面には、上下に二条ずつ合計四条の転動体転走面としてのローラ転走面1bが設けられる。
【0015】
移動ブロック2は、軌道レール1の上面に対向する中央部2aと、中央部2aの左右両側から下方に延びて軌道レール1の左右側面に対向する側壁部2bとを備える。移動ブロック2の側壁部2bには、軌道レール1の側面形状と形状を合わせた突出部2cが形成される。この突出部2cには、ローラ転走面1bに対応する負荷転動体転走面としての負荷ローラ転走面2dが形成される。負荷ローラ転走面2dは、移動ブロック2の左右側壁部2bの上下に二条ずつ合計四条設けられる。
【0016】
軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dとの間には鋼製の複数のローラ3が配列される。複数のローラ3は、ローラ保持器10によって一連に回転・摺動自在に保持されている。なお、本実施形態で用いられるローラ保持器10は、複数のローラ3間に介在される複数の間座部と、複数の間座部を連結する可撓性を有する連結帯としてのバンド案内部とを有しており、かかる構成によって、複数のローラ3を整列状態で回転自在に保持することが可能となっている。
【0017】
移動ブロック2の側壁部2bには、上下二条の負荷ローラ転走面2dから所定間隔を隔てて平行に伸びる貫通孔14が形成される。この貫通孔14にローラ戻し通路8を構成するローラ戻し通路構成部材15が挿入される。ローラ戻し通路構成部材15は、細長のパイプ形状の部材を軸線方向に沿って二分割した一対のパイプ半体からなる。ローラ戻し通路構成部材15の内周には、ローラ戻し通路8が形成される。ローラ戻し通路構成部材15は、貫通孔14に挿入された後、その両端部が蓋部材としてのエンドプレート5に支持されて、移動ブロック2に固定される。
【0018】
移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dの左右両側縁には、梁部材と外郭部材とがインサート成型されることで形成された長尺の転動体案内部材12が取り付けられている。転動体案内部材12には、軌道レール1から移動ブロック2を外した際に負荷ローラ転走面2dからローラ3が脱落するのを防止できるように、ローラ保持器10のバンド案内部を案内する案内溝が形成されている。転動体案内部材12は、下側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の上側(すなわち、ローラ3の非負荷面側)を案内するとともに、上側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の下側(すなわち、ローラ3の非負荷面側)を案内する。
【0019】
なお、本実施形態では、下側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の下側と、上側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の上側については、移動ブロック2に形成された負荷ローラ転走面2dに続く壁面形状2d
1によって案内がされている。ただし、金属材料からなる壁面形状2d
1に替えて、長尺樹脂製の保持部材を用意し、この保持部材によってローラ3の非負荷面側、すなわち、下側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の下側と、上側の負荷ローラ転走面2dを移動するローラ保持器10の上側とを、案内するようにしてもよい。
【0020】
軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dから構成される負荷ローラ転走路7−1,7−2(
図2参照)は、移動ブロック2の左右の側壁部2bそれぞれに二つずつ設けられる。ローラ戻し通路構成部材15から構成されるローラ戻し通路8−1,8−2(
図2参照)も、移動ブロック2の左右の側壁部2bの上下に二条ずつ設けられる。エンドプレート5には、この負荷ローラ転走路7−1,7−2とローラ戻し通路8−1,8−2とを立体交差させる方向転換路6−1,6−2が設けられる。
【0021】
蓋部材としてのエンドプレート5は、移動ブロック2の移動方向の前後両端面に取り付けられる。エンドプレート5は、移動ブロック2と略同一の断面形状であり、移動ブロック2の中央部2aと接する水平部5aと、移動ブロック2の側壁部2bと接する側壁部5bとを備える(
図1参照)。
図2に示されるように、側壁部5bの外側の方向転換路6−1は、下側の負荷ローラ転走路7−1と上側のローラ戻し通路8−1を接続する。側壁部5bの内側の方向転換路6−2は、上側の負荷ローラ転走路7−2と下側のローラ戻し通路8−2を接続する。すなわち、外側の方向転換路6−1及び内側の方向転換路6−2は、負荷ローラ転走路7とローラ戻し通路8とを立体交差するように接続される。
図1に示されるように、外側の方向転換路6−1及び内側の方向転換路6−2は、エンドプレート5、U字形部材24及び半割円柱部材26により構成される。なお、
図2の左側の図では、エンドプレート5からU字形部材24及び半割円柱部材26を取り外した状態が示されている。
【0022】
U字形部材24は、全体形状が略U字形状にて形成される。U字形部材24の外周側には外側の方向転換路6−1の内周側が形成され、U字形部材24の内周側には内側の方向転換路6−2の外周側が形成される。そして、U字形部材24をエンドプレート5に嵌め込むと、エンドプレート5に形成される外側の方向転換路6−1の外周側と、U字形部材24の外周側とで外側の方向転換路6−1が構成される。
【0023】
また、U字形部材24をエンドプレート5に嵌め込むことで、エンドプレート5に形成される内側の方向転換路6−2の外周側の一部分とU字形部材24の内周側がつながり、内側の方向転換路6−2の外周側が完成する。
【0024】
半割円柱部材26は、円柱を半分に割ったような形状をなし、その外周面に内側の方向転換路6−2の内周側が形成される。エンドプレート5にU字形部材24を嵌め込んだ後、この半割円柱部材26をエンドプレート5に嵌め込むと、エンドプレート5、U字形部材24及び半割円柱部材26により、内側の方向転換路6−2が構成される。
【0025】
U字形部材24と半割円柱部材26との間には、保持器案内部材25が組み込まれる。保持器案内部材25は、エンドプレート5とU字形部材24の継ぎ目で発生する段差を解消するために設けられる。
【0026】
完成したリニアガイドにおいて、移動ブロック2を軌道レール1に対して相対的に移動させると、複数のローラ3は、軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dとの間の負荷ローラ転走路内を、負荷を受けながら転がり運動する。移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dの一端まで転がったローラ3は、
図2に示されるように、エンドプレート5に設けられた掬上げ部5cで掬い上げられ、U字状の方向転換路6を経由した後、負荷ローラ転走路7と平行に伸びるローラ戻し通路8に入る。ローラ戻し通路8を通過したローラ3は、反対側の方向転換路を経由した後、再び負荷ローラ転走路7に入る。ローラ3は、これら負荷ローラ転走路7、方向転換路6及びローラ戻し通路8で構成されるサーキット状のローラ循環路を循環する。サーキット状の循環経路は内側と外側の二つがあるので、内側及び外側それぞれの循環経路をローラ3が無限に循環する。
【0027】
このような運動案内装置としてのリニアガイドを使用する際には、ローラ循環路を無限に循環するローラ3が、良好な転がり運動を行う必要がある。例えば、ローラ3にスキュー動作が発生してしまうと、高精度の案内運動が阻害されたり、早期寿命の原因となったりするからである。そこで、本実施形態に係る転動体案内部材12には、撓みの発生などがなく確実な固定設置及びローラ3の案内を可能とするための構成が採用されている。そこで、次に、本実施形態に係る転動体案内部材12の詳細構成について、
図3〜
図5を用いて説明を行う。
【0028】
ここで、
図3は、本実施形態に係る転動体案内部材の全体構成を示す外観斜視図である。また、
図4は、本実施形態の移動ブロックに対して転動体案内部材が組み付けられた状態を示す概略断面図であり、さらに、
図5は、
図4中の符号V部を拡大した図である。
【0029】
本実施形態に係る転動体案内部材12は、軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面2dとの間の負荷ローラ転走路で負荷を受けながら転がり運動する複数のローラ3の非負荷面側を案内するように、負荷ローラ転走面2dの全長に沿って設けられる長尺の部材である。そして、本実施形態に係る転動体案内部材12は、構造主母材となる金属材料からなる梁部材12aと、ローラ3の非負荷面側を案内するローラ案内面12b
1を含む外郭形状を形成する樹脂材料からなる外郭部材12bとから構成されている。
【0030】
なお、本実施形態に係る転動体案内部材12には、転走する複数のローラ3によって外部荷重が加わることとなる。そして、転動体案内部材12に荷重が加わると、その内部には、圧縮・引張・曲げ・剪断応力等が働くこととなる。転動体案内部材12を構成する部材のうち、本実施形態の梁部材12aは、上述した内部への応力等を受容する部材であり、転動体案内部材12を構造部材として機能させる役目を担っている。一方、本実施形態の外郭部材12bは、転動体案内部材12の外郭形状を形成するとともに、一部の外部応力を引き受けることで、梁部材12aを補助する機能も発揮している。
【0031】
梁部材12aには、安価に入手可能な丸棒が採用されている。したがって、製造コストの削減効果を得ることが出来ている。ただし、本発明に係る梁部材に採用可能な金属材料の形状については、図示のものには限られない。例えば、長尺の棒材、管材、板材、線材、条材、平角材、もしくは型材など、構造材料としての強度を発揮でき、かつ、その周囲に樹脂材料からなる外郭部材12bをインサート成型可能なものであれば、どの様なものを採用してもよい。
【0032】
また、梁部材12aには、本発明に係る結合手段としてのネジ穴12a
1が形成されている。このネジ穴12a
1を用いることで、移動ブロック2と転動体案内部材12との結合が可能となっており、具体的には、移動ブロック2の側壁部2bに形成された貫通孔2b
1にネジ30を通し、そのネジ30を梁部材12aのネジ穴12a
1に螺入させることで、転動体案内部材12の移動ブロック2に対する強固な結合状態が実現できるように構成されている。
【0033】
一方、外郭部材12bは、その長手方向に対して、ローラ3の非負荷面側を案内するローラ案内面12b
1を有するとともに、ローラ保持器10のバンド案内部を案内する案内溝12b
2を有している。特に、ローラ案内面12b
1は、ローラ3の非負荷面側の全てを収める面積をもって構成されている。これら案内面12b
1と案内溝12b
2との作用によって、本実施形態に係る転動体案内部材12は、ローラ3を安定して案内することが可能となっている。
【0034】
また、外郭部材12bには、長手方向の両端部に対して本発明に係る別の結合手段としての支持形状12c,12cが形成されている。この支持形状12c,12cは凸形状で形成されており、エンドプレート5に形成された不図示の凹形状に嵌め込み自在に構成されている。したがって、転動体案内部材12を移動ブロック2に組み付けた状態で、移動ブロック2を挟み込むように一対のエンドプレート5,5を設置すると、凸形状からなる支持形状12c,12cと、一対のエンドプレート5,5が有する不図示の凹形状が嵌合結合するので、移動ブロック2に対する転動体案内部材12の確実な固定状態が実現する。なお、本実施形態では、本発明に係る別の結合手段としての支持形状12c,12cが、蓋部材であるエンドプレート5に形成された不図示の凹形状に嵌め込まれることで結合される場合を例示しているが、転動体案内部材12の結合方法はこれに限られるものではない。転動体案内部材12の結合方法としては、移動ブロック2と関係する転動体案内部材12の両端部に設けられ、移動ブロック2の少なくとも一部分と接続するための接続手段であればよく、例えば、外郭部材12bと循環経路構成部材とを接続し結合させる構成を採用することも可能である。
【0035】
このように、本実施形態に係る転動体案内部材12は、ネジ穴12a
1を用いる結合手段と支持形状12c,12cを用いる結合手段とが任意に選択可能となっている。したがって、本実施形態に係る転動体案内部材12は、運動案内装置の用途や使用環境に応じてその結合手段を選択可能である。例えば、転動体案内部材12に加わる外力が比較的小さい場合には、構造材料としての梁部材12aが発揮する強度のみで十分安定した固定状態が維持できるので、その様な場合には支持形状12c,12cを用いる結合手段のみを採用すればよい。一方、転動体案内部材12に加わる外力が大きい場合には、支持形状12c,12cを用いる結合手段に加えて、ネジ穴12a
1を用いる結合手段を組み合わせて用いればよい。二つの結合手段を組み合わせて用いることで、たとえ転動体案内部材12に加わる外力が大きい場合であっても、撓みの発生などの不都合のない転動体案内部材12の安定した取付状態が維持可能となる。
【0036】
なお、本実施形態では、外郭部材12bの両端部に対して凸形状からなる支持形状12c,12cを形成し、一対のエンドプレート5,5の側に凹形状を形成した場合を例示して説明したが、本発明に係る転動体案内部材と移動部材との結合部位については、いずれか一方が凸形状にて形成されるとともに、いずれか他方が凹形状にて形成されていればよい。
【0037】
さらに、本実施形態に係る転動体案内部材12を構成する梁部材12aと外郭部材12bは、インサート成型されることで分離不能な一体成型部材として構成されている。つまり、本実施形態に係る転動体案内部材12は、金属材料からなる梁部材12aによって構造材料としての強度を得ながらも、インサート成型によって外郭部材12bが梁部材12aを取り囲むように設置されることで、安価かつ複雑な外郭形状が実現されている。したがって、本実施形態では、複雑形状を安価に製作できる樹脂材料からなる外郭部材12bと、撓みの発生を抑制可能な構造材料としての梁部材12aとが、インサート成型技術によって一体成型部材として実現されているので、移動ブロック2に対する確実な固定設置と、ローラ3の安定した案内が可能な従来にはない転動体案内部材12が実現できている。
【0038】
またさらに、本実施形態に係る転動体案内部材12は、
図5に示すように転動体案内部材12を断面で見たときに、梁部材12aの外周縁が外郭部材12bの外周縁の内側に収まるように構成されている。なお、「転動体案内部材12を断面で見たときに、梁部材12aの外周縁が外郭部材12bの外周縁の内側に収まる」とは、梁部材12aの外周面のすべてが外郭部材12bに覆われる状態を指すものではなく、あくまで一断面で見たときの外郭部材12bの外周縁のつながりの内部に、梁部材12aの外周縁が収まっていることを指している。したがって、本発明では、
図3に示すように、梁部材12aの外周面の一部が剥き出しになっていることを許容しており、その様な箇所に前述したネジ穴12a
1を形成することが好適である。このように、断面視において梁部材12aの外周縁を取り囲むように外郭部材12bが配置されることで、転動体案内部材12の形状の安定性が増し、移動ブロック2に対する確実な固定設置と、ローラ3の安定した案内が可能となる。また、梁部材12aの外周縁を取り囲む外郭部材12bの厚みを一定寸法以上確保することで、インサート成型時における樹脂材料の湯流れが良好となるので、良質な転動体案内部材12を安定して生産することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、外郭部材12bにおける移動ブロック側の部位が凸形状12b
3で形成されており、一方、移動ブロック2における外郭部材12b設置箇所の部位には、凹形状2eが形成されている。移動ブロック2に対して外郭部材12bを設置するときに、移動ブロック2の凹形状2eと外郭部材12bの凸形状12b
3とを利用して外郭部材12bを移動ブロック2に組み付けることで、転動体案内部材12を移動ブロック2の所定の位置に対して確実に固定設置することが可能となる。
【0040】
ただし、本発明の転動体案内部材については、少なくとも転動体案内部材12を断面で見たときにおける梁部材12aの軌道レール1側の外周縁が、外郭部材12bにおける軌道レール側の外周縁からはみ出さないように形成されていればよく、移動ブロック2と接触する側については、梁部材12aの外周縁が外郭部材12bの外周縁からはみ出し、移動ブロック2と梁部材12aとが直接接触するように構成されていてもよい。すなわち、転動体案内部材の軌道レール側は、僅かの隙間を介して軌道レール1と対向しているため、柔軟性や摺動性の高い外郭部材12bがその外周縁を外側に位置させていることが好ましい。一方、転動体案内部材の移動ブロック側については、移動ブロックに対する転動体案内部材の固定状態が実現すればよいので、その外周縁は梁部材12aと外郭部材12bのいずれが配置されていてもよい。かかる構成条件を最低限備えることで、移動ブロック2に対する確実な固定設置と、ローラ3の安定した案内が可能な従来にはない転動体案内部材12が実現できる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態で用いられたローラ保持器10は、転動体間に介在される複数の間座部と、複数の間座部を連結する可撓性を有する連結帯としてのバンド案内部とを有することで、複数の転動体を整列状態で回転自在に保持するものであった。したがって、本実施形態に係る外郭部材12bには、ローラ3の非負荷面側を案内するローラ案内面12b
1を有する他に、ローラ保持器10のバンド案内部を案内する案内溝12b
2が形成されていた。しかしながら、本発明に係る転動体案内部材を有する運動案内装置は、ローラ保持器10を用いない、いわゆる総ローラ形式の転動体列に対しても適用可能であり、この場合の転動体案内部材は、ローラ保持器10のバンド案内部を案内する案内溝12b
2を備えていなくともよい。
【0043】
なお、本実施形態のように、外郭部材12bに案内溝12b
2を設ける形態の場合には、転動体案内部材12を断面で見たときに、梁部材12aと案内溝12b
2とが非常に近接した位置に配置されることとなる。これら梁部材12aと案内溝12b
2との位置関係については、インサート成型時における樹脂材料の湯流れの状況に応じて設定すればよく、成型可能な条件内において極力樹脂材料の体積を減少させることで、本発明に係る転動体案内部材の強度向上と製造コストの削減が実現できる。
【0044】
また、上述した本実施形態に係る転動体案内部材12では、
図5に示したように、転動体案内部材12を断面で見たときに、梁部材12aの外周縁が外郭部材12bの外周縁の内側に収まるように構成されていた。しかしながら、本発明に係る外郭部材については、転動体案内部材12を断面で見たときに、少なくとも転動体案内面であるローラ案内面12b
1を形成可能な範囲で、梁部材12aの外周側にインサート成型されていればよい。すなわち、本発明に係る外郭部材は、上述した本実施形態に係る転動体案内部材12と同様の作用効果を発揮できる範囲において、梁部材12aに対するインサート成型範囲を上述した実施形態に比べて省略することができる。このように、外郭部材の成型範囲を制御することで、本発明で必要となる転動体案内部材の強度を維持しながらも、製造コストの削減を実現することが可能となる。
【0045】
また、上述した実施形態では、梁部材12aに対して二つのネジ穴12a
1が形成されている場合が例示されていたが、ネジ穴12a
1の個数については任意に変更が可能である。
【0046】
また、梁部材12aに対して形成されるネジ穴12a
1については、貫通孔であっても貫通していない穴であってもよい。
【0047】
また、本発明に係る転動体案内部材は、移動ブロック2(移動部材)に対して結合自在とされるための結合手段を複数備えることが可能である。そして、上述した実施形態では、ネジ穴12a
1を用いる結合手段と、外郭部材12bの長手方向の両端部に対して形成される支持形状12c,12cを用いる結合手段とを例示して説明した。しかしながら、本発明における結合手段は前述のものには限られない。例えば、ネジ穴12a
1以外の結合手段として、転動体案内部材を枠状の部材として形成し、移動ブロック2(移動部材)に対してこの枠状部材を嵌め込むことで組み付ける結合手段を採用することができる。このような本実施形態で例示した以外の結合手段を採用した場合においても、本発明における運動案内装置では、ネジ穴を用いる結合手段とネジ穴以外の結合手段とが、任意に選択可能、もしくは両結合手段を同時に実施可能であればよい。
【0048】
また、上述した本実施形態に係る転動体案内部材12では、梁部材12aに対して安価に入手可能な丸棒が採用され、この丸棒に対して樹脂材料からなる外郭部材12bがインサート成型される構成が採用されていた。このような形態の場合、梁部材12aと外郭部材12bとの接触面間には、摩擦力が作用することになるので、例えば、運送時や保管時に転動体案内部材12に対して何らかの外力が働くことで梁部材12aに対して外郭部材12bが捻じれてしまうと、前記摩擦力の作用でその捻じれ状態が維持されてしまうこととなる。この捻じれ状態は、転動体案内部材12の取り付け時に作業者によって容易に解消可能なものであるが、取り付け作業の邪魔になるため、梁部材12aに対する外郭部材12bの捻じれが発生しない構成が求められる。
【0049】
上述した要求を満足させるために、発明者らは、梁部材12aに対して外郭部材12bが捻じれることのない構成を創案した。かかる構成を示すものとして、
図6及び
図7を示す。ここで、
図6は、本発明の変形例に係る梁部材61を示す図であり、図中の分図(a)が正面視を、分図(b)が側面視を示している。また、
図7は、
図6で示した変形例に係る梁部材61が組み込まれた状態の転動体案内部材60を示す図であり、図中の分図(a)が側面視を、分図(b)が分図(a)中のVII−VII断面を示している。
【0050】
図6及び
図7で示す変形例において、梁部材61は丸棒として形成されるとともに、この丸棒の両端部には、切削や研削等の除去加工によって、除去加工部61aが形成されている。この変形例の場合、除去加工部61aは、円柱状をした丸棒端部の略半分が除去されており、正面視において略D字状をした領域が除去されている。このような状態の梁部材61に対して、外郭部材62がインサート成型されるのであるが、インサート成型時に、除去加工の形成箇所である除去加工部61aには、外郭部材62を構成する樹脂が入り込むこととなる(
図7中の分図(b)参照)。かかる構成によって、梁部材61と外郭部材62とは、回り止めされた状態で一体化するので、梁部材61に対して外郭部材62が捻じれることが確実に防止されることとなる。よって、転動体案内部材60の形状状態が一定化するので、例えば、取り付け作業の際に捻じれ状態を解消する等といった不要な作業が発生することがなくなる。
【0051】
なお、本発明に適用可能な除去加工部の形状については、
図6及び
図7で示したような正面視略D字状をしたものには限られない。梁部材と外郭部材とを回り止めして一体化できるものであれば、どのような形態を採用しても良い。例えば、
図8で例示するように、梁部材81の両端部に傾斜面としての除去加工部81aを形成することでも、梁部材81と外郭部材とを回り止めして一体化することができる。
【0052】
また、例えば、
図9で例示するように、梁部材91の表面に対して長手方向に伸びる複数の溝としての除去加工部91aを形成することでも、梁部材91と外郭部材とを回り止めして一体化することができる。なお、
図9で例示する梁部材91では、除去加工部91aとしての溝が6条形成されるとともに長手方向の全長に亘って形成されているが、溝としての除去加工部の形成条数やその形成範囲は、上述した変形例と同様の作用効果を発揮できることを条件として、任意に変更が可能である。
【0053】
また、例えば、
図10で例示するように、梁部材101の表面に対してローレット加工を施すことでも、梁部材101と外郭部材とを回り止めして一体化することができる。なお、
図10で例示する梁部材101では、除去加工部101aとしてのローレット加工部が長手方向の全長に亘って形成されているが、ローレット加工されて形成された除去加工部101aの形成範囲は、上述した変形例と同様の作用効果を発揮できることを条件として、任意に変更が可能である。
【0054】
また、例えば、
図11で例示するように、梁部材111の任意の箇所に対して軸方向と直行する方向に貫通穴を設けることで除去加工部111aを形成してもよい。ここで、
図11は、本発明に係るさらに別の転動体案内部材110を示す図であり、図中の分図(a)が側面視を、分図(b)が分図(a)中のXI−XI断面を示している。
図11中の分図(b)で示すように、梁部材111に対して貫通穴としての除去加工部111aを形成しておくことで、インサート成型時に除去加工部111aである貫通穴内に樹脂が入り込むので、梁部材111と外郭部材112とを回り止めして一体化することができる。これにより、梁部材111に対して外郭部材112が捻じれることが確実に防止されることとなる。よって、転動体案内部材110の形状状態が一定化するので、例えば、取り付け作業の際に捻じれ状態を解消する等といった不要な作業が発生することがなくなる。
【0055】
なお、
図6〜
図11で示した変形例については、インサート成型時における梁部材61,81,91,101,111の金型内での配置方向がどのような方向を向いていたとしても、除去加工部61a,81a,91a,101a,111aの内部に外郭部材の一部となる樹脂が入り込むことになるので、インサート成型作業を複雑化するものではない。したがって、上述した各変形例によれば、インサート成型作業に影響を及ぼすことなく、梁部材61,81,91,101,111に対する外郭部材62,112の捻じれの発生を確実に防止することができるという優位な効果が得られることとなる。
【0056】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。