特許第6185761号(P6185761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185761
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】アイドルストップ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20170814BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20170814BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H59/66
   G06T1/00 330A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-121968(P2013-121968)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-238156(P2014-238156A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長屋 浩之
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047099(JP,A)
【文献】 特開2013−036384(JP,A)
【文献】 特開2012−197843(JP,A)
【文献】 特開2002−372139(JP,A)
【文献】 特開2007−085777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 59/66
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の外部環境を認識する車外環境認識ユニットと、
予め設定されたエンジン自動停止条件が成立するとエンジンの停止を許可するアイドルストップ制御部と、
電動モータを駆動源とし、前記エンジンに接続された自動変速機に対するオイルの油圧不足を補う電動式オイルポンプと、
前記電動式オイルポンプを駆動制御する電動式オイルポンプ制御部と、
を備え、
前記車外環境認識ユニットは、自車両の前方に位置する信号機において発光している信号色を特定する信号色特定部を備え、
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に前記信号機において赤色信号色が発光している場合、信号色が青色信号色に切り替わった後、前記電動式オイルポンプの油圧を予め定められた駆動油圧に設定することを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項2】
記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に前記信号機において赤色信号色が発光している場合、赤色信号色が発光していない場合より、前記駆動油圧設定タイミングを遅らせることを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項3】
前記車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、該先行車両が存在しない場合より、前記駆動油圧設定タイミングを遅らせることを特徴とする請求項1または2に記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項4】
前記車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しなくなった後、前記電動式オイルポンプの油圧を前記駆動油圧に設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項5】
自車両の外部環境を認識する車外環境認識ユニットと、
予め設定されたエンジン自動停止条件が成立するとエンジンの停止を許可するアイドルストップ制御部と、
電動モータを駆動源とし、前記エンジンに接続された自動変速機に対するオイルの油圧不足を補う電動式オイルポンプと、
前記電動式オイルポンプを駆動制御する電動式オイルポンプ制御部と、
を備え、
前記車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しなくなった後、前記電動式オイルポンプの油圧を予め定められた駆動油圧に設定することを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項6】
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、該先行車両が存在しない場合より、前記駆動油圧の設定タイミングを遅らせることを特徴とする請求項5に記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項7】
前記電動式オイルポンプ制御部は、前記エンジン自動停止条件成立後、前記電動式オイルポンプの油圧を前記駆動油圧より低い準備油圧に設定した後、前記自車両の外部環境に応じて、前記電動式オイルポンプの油圧を前記駆動油圧に設定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定されたエンジン自動停止条件の成立に応じて、エンジンを停止するアイドルストップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、燃費や排気ガスの低減や騒音の抑制を目的として、信号待ちや渋滞などで車両が停止すると自動的にエンジンを停止し、また、エンジンの作動が必要になるとエンジンを再始動する所謂アイドルストップ機能についての様々な技術が提案されている。
【0003】
このようなアイドルストップ機能を搭載した車両では、エンジンの停止に伴い、エンジンを駆動源とする機械式オイルポンプも停止するため、例えば、CVT(Continuously Variable Transmission)やAT(Automatic Transmission)における変速機の前進クラッチに供給されているオイルが油路からリークしてしまい油圧が低下することとなる。すると、前進走行時に係合されるべき前進クラッチが、その係合状態が解かれた状態となってしまう。そして、エンジンを再始動する際、この前進クラッチが速やかに係合されないと、所謂ニュートラルの状態のままアクセルペダルが踏み込まれることとなり、エンジンが吹き上がった状態で前進クラッチが係合し、係合ショックが発生して、快適な走行性に影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、上述した機械式オイルポンプに加え、電動モータ(電動ポンプモータ)を駆動源とする電動式オイルポンプを併用し、アイドルストップ機能によって機械式オイルポンプが停止している間、電動式オイルポンプを駆動しオイルの油圧不足を補ってクラッチの係合状態を維持することでエンジンの再始動時の係合ショックを抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−84742号公報
【特許文献2】特開2011−196500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両においては、アイドルストップ機能の実行に伴うエンジンの停止時や再始動時に必要な電力を確保しなければならず、確保されている電力が必要な電力を下回る場合にはアイドルストップ機能の実行状態に拘わらずエンジンを再始動して電力を確保しなくてはならない。そのため、アイドルストップ機能を実行中に電動式オイルポンプを常に駆動させた場合、電動式オイルポンプの電力の消費によりバッテリの電圧が低下し、それに伴ってエンジンを再始動させなければならなくなる。この場合、アイドルストップ機能による燃費や排気ガスの低減や騒音の抑制といった効果を十分に得ることができない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、自車両の外部環境を考慮して電動式オイルポンプを駆動制御し電力消費を抑制することで、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保することが可能なアイドルストップ制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のアイドルストップ制御装置は、自車両の外部環境を認識する車外環境認識ユニットと、予め設定されたエンジン自動停止条件が成立するとエンジンの停止を許可するアイドルストップ制御部と、電動モータを駆動源とし、エンジンに接続された自動変速機に対するオイルの油圧不足を補う電動式オイルポンプと、電動式オイルポンプを駆動制御する電動式オイルポンプ制御部と、を備え、車外環境認識ユニットは、自車両の前方に位置する信号機において発光している信号色を特定する信号色特定部を備え、電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に信号機において赤色信号色が発光している場合、信号色が青色信号色に切り替わった後、電動式オイルポンプの油圧を予め定められた駆動油圧に設定することを特徴とする。
【0009】
動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に信号機において赤色信号色が発光している場合、赤色信号色が発光していない場合より、駆動油圧設定タイミングを遅らせてもよい。
【0011】
車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しない場合より、駆動油圧設定タイミングを遅らせてもよい。
【0012】
車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しなくなった後、電動式オイルポンプの油圧を駆動油圧に設定してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の他のアイドルストップ制御装置は、自車両の外部環境を認識する車外環境認識ユニットと、予め設定されたエンジン自動停止条件が成立するとエンジンの停止を許可するアイドルストップ制御部と、電動モータを駆動源とし、エンジンに接続された自動変速機に対するオイルの油圧不足を補う電動式オイルポンプと、電動式オイルポンプを駆動制御する電動式オイルポンプ制御部と、を備え、車外環境認識ユニットは、先行車両の有無、および、その走行状態を特定する先行車両特定部を備え、電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しなくなった後、電動式オイルポンプの油圧を予め定められた駆動油圧に設定することを特徴とする。
電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後に先行車両が存在する場合、先行車両が存在しない場合より、駆動油圧設定のタイミングを遅らせてもよい。
【0013】
電動式オイルポンプ制御部は、エンジン自動停止条件成立後、電動式オイルポンプの油圧を駆動油圧より低い準備油圧に設定した後、自車両の外部環境に応じて、電動式オイルポンプの油圧を駆動油圧に設定してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自車両の外部環境を考慮して電動式オイルポンプを駆動制御し電力消費を抑制することで、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】アイドルストップ制御装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図2】輝度画像と距離画像を説明するための説明図である。
図3】対象物特定部の動作を説明するための説明図である。
図4】電動式オイルポンプ制御部の動作を説明するためのブロック図である。
図5】アイドルストップ制御方法の全体的な処理の流れを示したフローチャートである。
図6】アイドルストップ制御方法の各処理による自車両の状態推移を示したタイミングチャートである。
図7】アイドルストップ制御方法の各処理による自車両の状態推移の他の例を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(車両システム)
自動車等の車両では、エンジン等の駆動機構により動力が得られ、ステアリングホイールやブレーキペダルを通じた運転者の操作により車両の操舵や制動が実行される。また、近年では、車両に搭載した車載カメラを含む車外環境認識ユニットによって自車両の前方の道路環境を撮像し、画像内における色情報や位置情報に基づいて先行車両等の対象物を特定し、特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ(ACC:Adaptive Cruise Control)、所謂衝突防止機能を搭載した車両が普及しつつある。また、燃費や排気ガスの低減や騒音の抑制を目的として、信号待ちや渋滞等で車両が停止すると自動的にエンジンを停止し、また、エンジンの作動が必要になるとエンジンを再始動する所謂アイドルストップ機能を搭載している車両も増加傾向にある。なお、駆動機構、操舵、制動等の車両自体の機能は、様々な既存の文献、例えば、同出願人の特開2012−116299号公報等により開示されている。
【0018】
ただし、車両においては、アイドルストップ機能の実行に伴うエンジンの停止時や再始動時に必要な電力を確保しなければならない。しかし、アイドルストップ機能実行中のクラッチ係合状態を維持するために電動式オイルポンプを併用している従来の車両では、アイドルストップ機能を実行している間、電動式オイルポンプを常に駆動させており、かかる電動式オイルポンプの電力の消費によりバッテリの電圧が低下する場合がある。こうして、十分な電力を確保できなくなると、アイドルストップ機能の実行状態に拘わらずエンジンを再始動して電力を確保しなくてはならなくなり、アイドルストップ機能の実行時間が短くなってしまう。アイドルストップ時間が短いと燃費の低減効果が小さくなり、却って燃費が悪化するおそれもある。
【0019】
そこで、本実施形態では、上述した衝突防止機能を遂行する車外環境認識ユニットを利用し、例えば、信号機において発光している信号色や先行車両の有無等、自車両の前方の外部環境(道路環境)に応じて、電動式オイルポンプを駆動制御し、電動式オイルポンプの駆動時間の短縮化を図って電力消費を抑制することで、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保する。以下、このようなアイドルストップ機能を実現するアイドルストップ制御装置100を詳述する。
【0020】
(アイドルストップ制御装置100)
図1は、アイドルストップ制御装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。アイドルストップ制御装置100は、自車両1内の他の装置との一方向または双方向の情報交換を行うI/F部と、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、各機能部の処理に必要な様々な情報を保持するデータ保持部と、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、アイドルストップ制御装置100全体を制御する中央制御部とを含んで構成される。また、かかる中央制御部は、I/F部やデータ保持部と協働して、車外環境認識ユニット102と、入力ユニット104と、制御ユニット106として機能する。以下、車外環境認識ユニット102、入力ユニット104、制御ユニット106をそれぞれ説明する。
【0021】
(車外環境認識ユニット102)
車外環境認識ユニット102は、画像処理部120と、対象物特定部122とを含んで構成され、自車両1の前方の道路環境を撮像した画像データを取得し、当該画像データに基づく画像内における色情報や位置情報に基づいて自車両1の外部環境を認識する。ここで、認識する対象物は、車両、信号機、道路(走行帯)、交通標識、ガードレール、建物といった独立して存在する立体物のみならず、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の部分として特定できる物も含む。また、車外環境認識ユニット102は、本来、上記衝突防止機能を遂行するために車両に搭載されている。
【0022】
画像処理部120は、自車両1の前方の検出領域における道路環境を撮像した画像データを、例えば1/60秒のフレーム毎(60fps)に撮像装置10から連続して取得し、画像データの更新を契機として画像処理を遂行する。ここで、撮像装置10は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を2つ含み、自車両1の進行方向側において2つの撮像素子それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。また、撮像装置10は、カラー画像、すなわち、画素単位で3つの色相(赤:R、緑:G、青:B)の輝度を取得することができる。ここでは、撮像装置10で撮像されたカラー画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。
【0023】
図2は、輝度画像210と距離画像212を説明するための説明図である。画像処理部120は、撮像装置10の2つの撮像素子それぞれから画像データを取得すると、所謂パターンマッチングを用いて視差(視差情報)を導き出す。具体的に、図2(a)に示した一方の画像データに基づく輝度画像210から任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを、他方の画像データに基づく輝度画像210から検索する。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示す。画像処理部120は、このようにして導出された視差情報(後述する相対距離に相当)を画像データに対応付け、図2(b)に示す距離画像212を生成する。このような距離画像212における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、距離画像212では視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0024】
図1に戻って説明すると、対象物特定部122は、画像処理部120から輝度画像210と距離画像212とを取得し、輝度画像210に基づく輝度および距離画像212に基づく三次元の位置情報を用いて検出領域214における対象部位(画素やブロック)がいずれの対象物に対応するかを特定する。このとき、対象物特定部122は、距離画像212における、検出領域214内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、水平距離、高さおよび相対距離を含む三次元の位置情報に変換する。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、対象物の視差からその対象物の撮像装置10に対する相対距離を導出する方法である。このとき、対象物特定部122は、対象部位の相対距離と、対象部位と同相対距離にある道路表面上の点と対象部位との距離画像212上の検出距離とに基づいて、対象部位の道路表面からの高さを導出する。
【0025】
また、本実施形態において、対象物特定部122は、特定すべき対象物に応じて、信号色特定部130、先行車両特定部132、走行帯特定部134等の各機能部として機能する。信号色特定部130は、自車両1の前方に位置する信号機において発光している信号色(赤色信号色、黄色信号色、青色信号色)を特定する。先行車両特定部132は、先行車両の有無、および、先行車両が存在する場合に先行車両の相対速度等の走行状態を特定する。走行帯特定部134は、自車両1の走行方向の白線や側壁等を境界とする走行帯を特定する。以下、対象物特定部122の上記各機能部について詳述する。
【0026】
図3は、対象物特定部122の動作を説明するための説明図である。ここでは、対象物特定部122の機能部のうち信号色特定部130による信号機の赤色信号色の特定処理を例に挙げて、その特定手順を説明する。まず、信号色特定部130は、輝度画像210における任意の対象部位の輝度が、対象物(赤色信号色)の輝度範囲(例えば、基準値を輝度(R)として、輝度(G)は基準値(R)の0.5倍以下、輝度(B)は基準値(R)の0.38倍以下)に含まれるか否か判定する。そして、対象となる輝度範囲に含まれれば、その対象部位に当該対象物を示す識別番号を付す。ここでは、図3の拡大図に示すように、対象物(赤色信号色)に対応する対象部位に識別番号「1」を付している。
【0027】
次に、信号色特定部130は、任意の対象部位を基点として、その対象部位と、水平距離の差分および高さの差分(さらに相対距離の差分を含めてもよい)が所定範囲内にある、同一の対象物に対応するとみなされた(同一の識別番号が付された)対象部位をグループ化し、その対象部位も一体的な対象部位群とする。ここで、所定範囲は実空間上の距離で表され、任意の値(例えば、1.0m等)に設定することができる。また、信号色特定部130は、グループ化により新たに追加された対象部位に関しても、その対象部位を基点として、水平距離の差分および高さの差分が所定範囲内にある、対象物(赤色信号色)が等しい対象部位をグループ化する。結果的に、同一の識別番号が付された対象部位同士の距離が所定範囲内であれば、それら全ての対象部位がグループ化されることとなる。ここでは、図3の拡大図に示すように、識別番号「1」が付された対象部位同士のグループ化された対象部位群220となる。
【0028】
続いて、信号色特定部130は、グループ化した対象部位群220が、その対象物に関連付けられた高さ範囲(例えば、4.5〜7.0m)、幅範囲(例えば、0.05〜0.2m)、形状(例えば、円形状)等、所定の条件が成立しているか否か判定する。ここで、形状に関しては、予め対象物に関連付けられたテンプレートを参照してその形が比較され(パターンマッチング)、所定値以上の相関があることで条件が成立していると判定される。そして、所定の条件が成立していれば、そのグループ化された対象部位群220を対象物(赤色信号色)として決定する。また、ここでは、対象物として赤色信号色を特定する例を挙げたが、信号色特定部130が黄色信号色や青色信号色等も特定できることは言うまでもない。
【0029】
また、対象部位群220が、その対象物特有の特徴を有する場合、その特徴を条件に対象物として決定されてもよい。例えば、信号機の発光体がLED(Light Emitting Diode)で構成されている場合、その発光体は、人の目では把握できない周期(例えば100Hz)で点滅している。したがって、信号色特定部130は、LEDの点滅タイミングと非同期に取得した輝度画像210の対象部位の輝度の時間方向の変化に基づいて対象物(赤色信号色)を決定することもできる。
【0030】
同様に、対象物特定部122の他の機能部も、輝度画像210に基づく輝度および距離画像212に基づく三次元の位置情報を用い、同様の手順で特定することができる。例えば、先行車両特定部132は、自車両1の前方の所定相対距離内に位置する対象物の形状、高さおよび大きさ、ならびに、対象物におけるテールランプやウィンカーの相対位置等に基づいて、先行車両の有無を特定する。走行帯特定部134は、その形状、大きさ、および、色に基づいて、自車両1の走行方向の白線や側壁等を境界とする走行帯およびその数を特定する。
【0031】
また、先行車両特定部132は、さらに、自車両1の前方の道路環境にある車両のうち、自車両1と同方向に進行している車両それぞれに異なるIDを付す。そして、そのIDを通じてそれぞれの車両を追尾する。次に、先行車両特定部132は、走行帯特定部134が特定した走行帯を参照し、例えば、自車両1と同一の走行帯に相対速度が所定範囲(例えば、−10〜10km/h)の車両が有る場合、その車両を先行車両とし、先行車両の相対距離、相対速度、絶対速度、絶対加速度を導出する。ここで、相対速度は、先行車両との相対距離を単位時間で除算して求め、絶対速度は、相対速度に自車両1の速度を加算して求め、絶対加速度は、当該絶対速度を単位時間で除算して求めることができる。また、絶対速度が所定値(例えば、4km/h)以下であり、かつ、絶対加速度がほぼ0である先行車両は、停止状態にある先行車両として認識される。
【0032】
なお、先行車両の絶対的な加減速(絶対加速度)を導出する手段としては、様々な既存の技術、例えば、同出願人の特開2012−206700号公報等の技術を利用することができる。
【0033】
また、上記では、先行車両特定部132は、走行帯特定部134が特定した走行帯に従って先行車両等を追尾しているが、自車両1に所謂ナビゲーションユニットが搭載されている場合、かかるナビゲーションユニットにおける走行帯に従って、各処理を行うとしてもよい。ナビゲーションユニットは、I/F部を介して、GPS受信部(図示せず)から緯度、経度等からなる自車両1の絶対位置を求め、また、速度センサ12、およびジャイロセンサ(図示せず)等により基準位置からの相対位置を求め、その組み合わせにより自車両1の地図上の位置を導出する。また、ナビゲーションユニットには、地図データが保持されており、かかる地図データと、自車両1の地図上の位置とに基づいて、自車両1の走行している道路、その走行帯(複数あれば、その複数の走行帯のうちいずれであるか)を判定することができる。
【0034】
(入力ユニット104)
図1に戻って説明すると、入力ユニット104は、速度導出部150と、ブレーキ導出部152と、アクセル導出部154と、バッテリ取得部156と、水温導出部158と、シフトレバー取得部160とを含んで構成される。
【0035】
速度導出部150は、速度センサ12の検出信号を取得し、自車両1の速度を導出する。ブレーキ導出部152は、自車両1のブレーキペダル14への踏み込み量を取得し、運転者のブレーキペダル14への操作量を導出する。アクセル導出部154は、自車両1のアクセルペダル16への踏み込み量を取得し、運転者のアクセルペダル16への操作量を導出する。
【0036】
バッテリ取得部156は、バッテリ18の電圧値を取得する。水温導出部158は、エンジン24の水温センサ20の検出信号を取得し、エンジン24の冷却水の水温を導出する。シフトレバー取得部160は、自車両1のシフトレバー22の位置を取得する。
【0037】
(制御ユニット106)
制御ユニット106は、アイドルストップ制御部170と、電動式オイルポンプ制御部172と、エンジン制御部174とを含んで構成される。
【0038】
アイドルストップ制御部170は、自車両1の走行状態に応じ、エンジン制御部174に対してエンジン24の停止を許可または禁止する。具体的に、アイドルストップ制御部170は、予め設定されたエンジン自動停止条件が成立するとエンジン24の停止を許可し、エンジン再始動条件が成立するとエンジン24の再始動を促進する。
【0039】
エンジン自動停止条件は、例えば、以下の通りであり、全ての条件を満たすことで、アイドルストップ制御部170は、エンジン24の停止を許可する。
(1)速度導出部150が導出した自車両1の速度が所定値以下となる(停止する)。
(2)ブレーキ導出部152が導出したブレーキペダル14の操作量が所定値以上となる(踏み込まれる)。
(3)アクセル導出部154が導出したアクセルペダル16の操作量が有意な値から所定値以下となる。すなわち、アクセルペダル16の踏み込みが解除(離す)されている。
(4)バッテリ取得部156が取得したバッテリ18の電圧が第1閾値以上である。
(5)水温導出部158が導出したエンジン24の水温が所定の閾値以上である。
(6)シフトレバー取得部160が取得したシフトレバー22の位置が「P(パーキング)」「D(ドライブ)」「3速」「2速」「1速」「N(ニュートラル)」の何れかに設定されている。
【0040】
また、エンジン再始動条件は、例えば、以下の通りであり、いずれか1または複数の条件を満たすことで、アイドルストップ制御部170は、エンジン24の再始動を促進する。
(1)ブレーキ導出部152が導出したブレーキペダル14の操作量が有意な値から所定値以下となる。すなわち、ブレーキペダル14の踏み込みが解除(離す)されている。
(2)アクセル導出部154が導出したアクセルペダル16の操作量が所定値以上となる。
(3)バッテリ取得部156が取得したバッテリ18の電圧が第1閾値より小さい第2閾値以下である。
【0041】
なお、アイドルストップ制御部170の具体的な動作は、様々な既存の文献、例えば、同出願人の特開2012−116299号公報や特開2009−221980号公報等にも開示されている。
【0042】
続いて、図4のブロック図を用いて電動式オイルポンプ制御部172の動作を説明する。エンジン24の駆動力は、トルクコンバータ26を介して自動変速機28に入力され、最終的に車両の出力軸30に出力される。また、車両には、エンジン24を駆動源とするギヤポンプ等の機械式オイルポンプ32と、バッテリ18から電力の供給を受けて回動する電動モータ34を駆動源とする電動式オイルポンプ36とが併設されている。そして、機械式オイルポンプ32の油圧は、油圧回路38を通じて自動変速機28に供給される。電動式オイルポンプ36は、逆止弁40を通じて油圧回路38に接続され、その油圧は、機械式オイルポンプ32同様、油圧回路38を通じて自動変速機28に供給される。
【0043】
ここで、電動式オイルポンプ36の電動モータ34は、例えば、ブラシレスモータで構成されており、バッテリ18からの電力をリレー接点42を通じて供給したり切断したりできる。また、電動式オイルポンプ36の電動モータ34は、駆動回路44を通じて回転数が制御され、電動式オイルポンプ36の油圧が調整可能に構成されている。そして、電動式オイルポンプ制御部172は、リレー接点42や駆動回路44に制御信号を送信することで、電動式オイルポンプ36の油圧を制御する(駆動制御)。
【0044】
電動式オイルポンプ制御部172は、アイドルストップ制御部170から、エンジン自動停止条件やエンジン再始動条件の成立を示すフラグ、および、エンジン制御部174からエンジン24の回転数を受信する。また、電動式オイルポンプ制御部172は、後述するように、車外環境認識ユニット102から、信号機の発光色や、先行車両の有無、先行車両の走行状態も受信している。そして、電動式オイルポンプ制御部172は、エンジン自動停止条件が成立し、電動式オイルポンプ36の駆動準備が整うと、リレー接点42をONし、電動式オイルポンプ36の電動モータ34に対する給電を開始する。また、エンジン再始動条件が成立すると、再始動後のエンジン24の回転数を読み込み、エンジン24の回転数が閾値以上となれば、リレー接点42をOFFして、電動式オイルポンプ36の電動モータ34に対する給電を停止する。こうして、アイドルストップ機能の実行によるエンジン24の停止に伴い、自動変速機28への油圧の供給元が機械式オイルポンプ32から電動式オイルポンプ36に切り替わり、また、エンジン24の再始動に伴い、自動変速機28への油圧の供給元が電動式オイルポンプ36から機械式オイルポンプ32に切り替わる。
【0045】
なお、電動式オイルポンプ制御部172の具体的な動作は、様々な既存の文献、例えば、同出願人の特開2009−221980号公報にも開示されている。
【0046】
エンジン制御部174は、アイドルストップ制御部170から、エンジン自動停止条件の成立を示すフラグやエンジン再始動条件の成立を示すフラグを受信し、そのフラグに応じてエンジン24の動作状態を遷移させる。例えば、エンジン制御部174は、エンジン24の動作状態が運転状態であるとき、エンジン自動停止条件が成立すると、動作状態を運転状態から停止状態へ遷移させる。また、エンジン制御部174は、動作状態が停止状態であるとき、エンジン再始動条件が成立すると、動作状態を停止状態から運転状態へ遷移させる。ここで運転状態は、エンジン24を動作させている状態であり、停止状態とは、エンジン24の点火回路の通電を遮断してエンジン24を自動停止させる状態である。エンジン24の動作状態が停止状態から運転状態に遷移する場合、エンジン24の始動時同様、スタータおよびエンジン点火回路を通電してエンジン24を再始動する。また、エンジン制御部174は、エンジン24の回転数を電動式オイルポンプ制御部172に送信する。
【0047】
上述したように、本実施形態では、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保すべく、車外環境認識ユニット102を利用し、例えば、信号機において発光している信号色や先行車両の有無等、自車両1の前方の外部環境(道路環境)に応じて、電動式オイルポンプ36を駆動制御し、駆動時間の短縮化を図る。
【0048】
本来、機械式オイルポンプ32の油圧が低下すると、その代わりに電動式オイルポンプ36を駆動してそのオイルの油圧不足を補っている。しかし、信号機が赤色信号色である間や、先行車両が存在している間は、急な発進要請がない可能性が高く、アクセルペダル16が踏み込まれることも想定し難い。
【0049】
そこで、エンジン自動停止条件が成立し、機械式オイルポンプ32の油圧が低下していたとしても、信号機が赤色信号色である間や、先行車両が存在している間は、直ちに電動式オイルポンプ36を駆動せず、または、駆動したとしても電動モータ34の回転数を低く維持して、その間の電力消費を抑制する。そして、信号機が青色信号色に切り替わったり、先行車両が存在しなくなると、電動式オイルポンプ36を駆動し、その油圧を予め定められた駆動油圧に設定して、オイルの油圧不足を補う。
【0050】
ただし、先行車両が存在していても、その先行車両との相対距離が十分に大きかったり、先行車両が加速していたりした場合、アクセルペダル16が踏み込まれる可能性がある。したがって、本実施形態の目的に照らし合わせると、先行車両が存在し、その先行車両との相対距離が所定値未満であり、かつ、先行車両が停止もしくは減速していれば、電動式オイルポンプ36を駆動しない、または、駆動したとしても電動モータ34の回転数を低く維持するとする。そして、先行車両が存在しなくなる、その先行車両との相対距離が所定値以上となる、または、先行車両が加速していれば、電動式オイルポンプ36を駆動し、その油圧を駆動油圧に設定して、オイルの油圧不足を補うこととする。
【0051】
このように、電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定する駆動油圧設定タイミングを遅らせ、電力消費を抑制することで、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保することが可能となる。
【0052】
(アイドルストップ制御方法)
図5は、本実施形態によるアイドルストップ制御方法の全体的な処理の流れを示したフローチャートである。まず、アイドルストップ制御部170は、エンジン24の運転状態において、エンジン自動停止条件が成立しているか否か判定する(S300)。その結果、エンジン自動停止条件が成立していれば(S300におけるYES)、電動式オイルポンプ制御部172は、リレー接点42をONにし、電動式オイルポンプ36を駆動する(S302)。ただし、この時点では、電動モータ34の回転数(電動式オイルポンプ36の油圧)は0または極めて低い値に設定している。また、エンジン自動停止条件が成立していなければ(S300におけるNO)、エンジン自動停止条件判定ステップ(S300)を繰り返す。そして、エンジン制御部174は、エンジン自動停止条件に応じて、エンジン24の動作状態を運転状態から停止状態に遷移する(S304)。
【0053】
続いて、電動式オイルポンプ制御部172は、電動式オイルポンプ36の駆動条件が成立しているか否か判定する。具体的に、まず、自車両1の先行車両が存在し、その先行車両との相対距離が所定値未満であり、かつ、先行車両が停止もしくは減速しているか否か判定する(S306)。その結果、自車両1の先行車両が存在し、その先行車両との相対距離が所定値未満であり、かつ、先行車両が停止もしくは減速していれば(S306におけるYES)、電動式オイルポンプ制御部172は、先行車両が存在しなくなる、その先行車両との相対距離が所定値以上となる、または、先行車両が加速している、のいずれかの条件を満たすか否か判定する(S308)。その結果、先行車両が存在しなくなる、その先行車両との相対距離が所定値以上となる、または、先行車両が加速していれば(S308におけるYES)、ステップS314に処理を移行し、いずれの条件も満たしていなければ(S308におけるNO)、先行車両不在判定ステップ(S308)を繰り返す。こうして、電動式オイルポンプ36の駆動油圧設定タイミングを遅延させる。
【0054】
また、自車両1の先行車両が存在し、その先行車両との相対距離が所定値未満であり、かつ、先行車両が停止もしくは減速している、のいずれかの条件を満たしていなければ(S306におけるNO)、電動式オイルポンプ制御部172は、自車両1に対する信号機の信号色が赤色信号色であるか否か判定する(S310)。その結果、赤色信号色であれば(S310におけるYES)、電動式オイルポンプ制御部172は、引き続き、信号機の信号色が青色信号色になったか否か判定する(S312)。その結果、青色信号色になれば(S312におけるYES)、ステップS314に処理を移行し、青色信号色になっていなければ(S312におけるNO)、青色信号色判定ステップ(S312)を繰り返す。こうして、電動式オイルポンプ36の駆動油圧設定タイミングを遅延させる。また、赤色信号色判定ステップ(S310)において、赤色信号色ではないと判定されると(S310におけるNO)、ステップS314に処理を移行する。
【0055】
このように、電動式オイルポンプ制御部172は、電動モータ34の回転数を所定値(例えば、最高回転数の70%)に設定することで、電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定する(S314)。
【0056】
続いて、アイドルストップ制御部170は、エンジン24の停止状態において、エンジン再始動条件が成立しているか否か判定する(S316)。その結果、エンジン再始動条件が成立していれば(S316におけるYES)、エンジン制御部174は、エンジン再始動条件に応じて、エンジン24の動作状態を停止状態から運転状態に遷移する(S318)。また、エンジン再始動条件が成立していなければ(S316におけるNO)、エンジン再始動条件判定ステップ(S316)を繰り返す。
【0057】
次に、電動式オイルポンプ制御部172は、エンジン24の回転数が所定値以上であるか否か判定する(S320)。その結果、エンジン24の回転数が所定値以上であれば(S320におけるYES)、電動式オイルポンプ制御部172は、リレー接点42をOFFにし、電動式オイルポンプ36の駆動を停止して(S322)、当該アイドルストップ制御方法を終了する。また、エンジン24の回転数が所定値未満であれば(S320におけるNO)、回転数が所定値以上になるまで、回転数判定ステップ(S320)を繰り返す。こうして、機械式オイルポンプ32の油圧が十分に高くなるのを待つ。
【0058】
なお、かかるアイドルストップ制御方法において、エンジン24を停止させる前にリレー接点42をONし、また、エンジン24の再始動後にリレー接点42をOFFしているのは、運転者に、リレー接点42の切替音を把握させないようにして、快適な走行性を阻害しないようにするためである。
【0059】
図6は、アイドルストップ制御方法の各処理による自車両1の状態推移を示したタイミングチャートであり、図6(a)では先行車両が存在していない場合を示し、図6(b)では先行車両が存在している場合を示す。かかるタイミングチャートでは、エンジン24の回転数と、機械式オイルポンプ32の油圧と、電動式オイルポンプ36の油圧の推移が示されている。
【0060】
先行車両が不在の図6(a)の例において、時点tにおいてエンジン自動停止条件が成立すると、エンジン24が停止され、エンジン24の回転数が低下するとともに、機械式オイルポンプ32の油圧が低下する。ここで、先行車両が存在しないと、エンジン24の再始動に必要な油圧を維持するためのオイルの油圧不足を補うべく、機械式オイルポンプ32の油圧の低下に応じ、時点tにおいて電動式オイルポンプ36の油圧が駆動油圧に設定される。そして、起動時間経過後の時点tにおいて再始動に必要な油圧が確保(維持)される。また、時点tにおいて、エンジン24の再始動が指示されると、機械式オイルポンプ32の油圧は低いが、電動式オイルポンプ36の油圧が十分に高いため(駆動油圧)、係合ショックが発生することなく自車両1をスムーズに発進できる。その後、時点tにおいて、機械式オイルポンプ32の起動時間が経過し、エンジン24の回転数が所定値に達すると、電動式オイルポンプ36の駆動が停止される(油圧としては0が設定される)。
【0061】
また、先行車両が存在する図6(b)において、時点tにおいてエンジン自動停止条件が成立すると、エンジン24が停止され、エンジン24の回転数が低下するとともに、機械式オイルポンプ32の油圧も低下する。ここで、先行車両が存在すると(正確には、先行車両が存在し、その先行車両との相対距離が所定値未満であり、かつ、先行車両が停止もしくは減速していれば)、機械式オイルポンプ32の油圧が低下したとしても、直ちに電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定しない。そして、先行車両が存在しなくなると(正確には、先行車両が存在しなくなる、その先行車両との相対距離が所定値以上となる、または、先行車両が加速していると)、時点tにおいて電動式オイルポンプ36の油圧が駆動油圧に設定され、起動時間経過後、時点tにおいて再始動に必要な油圧が確保される。そして時点tにおいて、エンジン24の再始動が指示された場合、図6(a)同様、機械式オイルポンプ32の油圧は低いが、電動式オイルポンプ36の油圧が十分に高いため、係合ショックが発生することなく自車両1をスムーズに発進できる。図6(a)と図6(b)を比較して理解できるように、先行車両が存在している間は、電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定する駆動油圧設定タイミングを遅らせることができるので、その分、電力消費が抑制され、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保することが可能となる。
【0062】
図6(b)では、先行車両が存在する場合を例に挙げて説明したが、自車両1の前方に位置する信号機において発光している信号色が赤色信号色であった場合も同様の状態推移となることは言うまでもない。つまり、電動式オイルポンプ制御部172は、エンジン自動停止条件成立後に信号機において赤色信号色が発光している場合、直ちに、電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定せず、信号色が青色信号色に切り替わった後、電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定する。
【0063】
(変形例)
図7は、アイドルストップ制御方法の各処理による自車両1の状態推移の他の例を示したタイミングチャートである。図6(b)の例では、時点tに電動式オイルポンプ36の油圧が駆動油圧に設定され、起動時間経過後の時点tにおいて再始動に必要な油圧が確保されている。したがって、時点t以降に、エンジン24の再始動が指示された場合には、電動式オイルポンプ36の油圧が十分に高いため、係合ショックが発生することなく自車両1をスムーズに発進できる。しかし、電動式オイルポンプ36の起動時間が長い、機械式オイルポンプ32の油圧リーク量が大きい等の状況下では、エンジン24の再始動が指示された時点で、電動式オイルポンプ36の油圧が十分に高い値に達していない状況が生じうる。
【0064】
そこで、図7の例では、時点tにおいて、電動式オイルポンプ制御部172は、駆動油圧より低い所定の油圧である準備油圧に設定し、電動式オイルポンプ36の油圧を予め準備油圧まで高めておき、先行車両が存在しなくなると、時点tにおいて電動式オイルポンプ36の油圧を駆動油圧に設定し、再始動に必要な油圧を得る。こうして、電動式オイルポンプ36の見かけ上の起動時間が短縮され、先行車両が存在しなくなった後、短時間でエンジン24の再始動が指示されたとしても、電動式オイルポンプ36の油圧が十分に高くなっているため、係合ショックが発生することなく自車両1をスムーズに発進できる。
【0065】
ここで、準備油圧は、電動式オイルポンプ36の能力(起動時間)、機械式オイルポンプ32の油圧リーク量、および、許容される起動時間に基づいて決定される。
【0066】
以上、説明したように、本実施形態では、車外環境認識ユニット102を通じて自車両1の周囲の環境も考慮して電動式オイルポンプ36を駆動制御し、電力消費を抑制することで、アイドルストップ機能の実行時間を十分確保することが可能となる。
【0067】
また、コンピュータを、アイドルストップ制御装置100として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
なお、本明細書のアイドルストップ制御方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、予め設定されたエンジン自動停止条件の成立に応じて、エンジンを停止するアイドルストップ制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 自車両
32 機械式オイルポンプ
36 電動式オイルポンプ
100 アイドルストップ制御装置
102 車外環境認識ユニット
130 信号色特定部
132 先行車両特定部
170 アイドルストップ制御部
172 電動式オイルポンプ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7