(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹凸形成部材載置工程では、前記凹凸形成部材の折り返し部分に前記トレッドゴムに対して非接着性を有する非接着層を設けてから、前記凹凸形成部材を前記トレッド成型用型の底面に載置する、請求項3に記載のプレキュアトレッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドでは、裏面にバフ処理を施して、接着剤を付きやすくしていることがある。
しかし、プレキュアトレッドの裏面にバフ処理を施す場合には、ゴム粉が発生するため、このゴム粉の回収作業(清掃作業)が増える。また、プレキュアトレッドのバフ処理には、専用の装置を用いる必要があるため、専用装置へのプレキュアトレッドのセッティングや、装置自体のメンテナンスなどが増えるため、タイヤ製造に係る作業が煩雑化する虞がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、プレキュアトレッドの裏面に簡単に凹凸部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のプレキュアトレッドは、
無端状とされ、表面にトレッドパターンが形成された加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴムと、
前記トレッドゴムの長手方向に沿って配置され、少なくとも一方の面が凹凸面とされ、前記一方の面側が前記トレッドゴムの裏面に埋設され、
長手方向の端部が前記トレッドゴムの裏面側に対して反対側に折り返されたシート状の凹凸形成部材と、を有している。
【0008】
請求項1に記載のプレキュアトレッドでは、加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴムの裏面に凹凸形成部材の一方の面(凹凸面)が埋設されていることから、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥がすことで、凹凸形成部材の一方の面の凹凸と対になる凹凸部がトレッドゴムの裏面に形成される(現れる)。すなわち、上記プレキュアトレッドでは、トレッドゴムから凹凸形成部材を剥がすという簡単な作業でプレキュアトレッドの裏面に凹凸部を形成することができる。
また、上記プレキュアトレッドでは、凹凸形成部材の折り返した部分(折り返し部)がトレッドゴムの裏面に他の部位と比べて埋設さていない(言い換えると、トレッドゴムの裏面に他の部位と比べて貼り付いていない)ため、折り返し部をつかんで凹凸形成部材をトレッドゴムの裏面から剥がすことができる。これにより、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥離しやすくなる。
【0009】
なお、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度には至っていない状態をいう。
【0010】
プレキュアトレッドは、表面にトレッドパターンが形成された加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴムと、少なくとも一方の面が凹凸面とされ、前記一方の面側が前記トレッドゴムの裏面に埋設されたシート状の凹凸形成部材と、前記トレッドゴムの前記凹凸形成部材よりも内部に埋設され、トレッド幅方向に延びて両端部が前記凹凸形成部材よりもトレッド幅方向外側の位置で前記トレッドゴムから露出する繊維状の剥離部材と、を有している。
【0011】
上記プレキュアトレッドでは、加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴムの裏面に凹凸形成部材の一方の面(凹凸面)が埋設されていることから、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥がすことで、凹凸形成部材の一方の面の凹凸と対になる凹凸部がトレッドゴムの裏面に形成される(現れる)。すなわち、上記プレキュアトレッドでは、トレッドゴムから凹凸形成部材を剥がすという簡単な作業でプレキュアトレッドの裏面に凹凸部を形成することができる。
また、上記プレキュアトレッドでは、繊維状の剥離部材の両端部を凹凸形成部材よりもトレッド幅方向外側の位置でトレッドゴムから露出させていることから、この剥離部材の両端部を見つけやすい。また、剥離部材の両端部をつかみ、該剥離部材をトレッドゴムの裏面から引っ張り出すことで、凹凸形成部材も剥離部材に引っ張られてトレッドゴムの裏面から剥がされる。これにより、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥離しやすくなる。
【0012】
請求項
2に記載のプレキュアトレッドは、請求項
1に記載のプレキュアトレッドにおいて、前記凹凸形成部材は、金属繊維または有機繊維で形成される布である。
【0013】
請求項
2に記載のプレキュアトレッドでは、凹凸形成部材を金属繊維または有機繊維で形成される布(織物)としていることから、この布をトレッドゴムから剥がす際に、布が途中で切れにくく、連続して剥がすことができる。
【0014】
請求項
3に記載のプレキュアトレッドの製造方法は、
請求項1又は請求項2に記載のプレキュアトレッドの製造方法であって、少なくとも一方の面が凹凸面とされたシート状の凹凸形成部材の
長手方向の端部を他方の面同士が重なるように折り返してから、前記凹凸形成部材を前記一方の面を上にしてトレッド成型用型の底面に載置する凹凸形成部材載置工程と、前記トレッド成型用型内の前記凹凸形成部材上に未加硫のトレッドゴムを配設し、該トレッドゴムを加圧すると共に加硫して該トレッドゴムに前記凹凸形成部材の一方の面側を埋め込みつつトレッドパターンを形成するトレッドゴム成型工程と、を有している。
【0015】
請求項
3に記載のプレキュアトレッドの製造方法では、凹凸形成部材載置工程で凹凸形成部材の一部が他方の面同士が重なるように折り返され、その後、凹凸形成部材が一方の面を上にしてトレッド成型用型の底面に載置される。次に、トレッドゴム成型工程でトレッド成型用型内の凹凸形成部材上に未加硫のトレッドゴムが配設される。そして、未加硫のトレッドゴムが加圧されると共に加硫されて、該トレッドゴムの裏面となる部分に凹凸形成部材の一方の面側が埋め込まれると共に該トレッドゴムの表面(踏面)となる部分にトレッドパターンが形成される。このようにしてプレキュアトレッドが製造される。
ここで、上記のようにして製造されたプレキュアトレッドでは、トレッドゴムの裏面に凹凸形成部材の一方の面(凹凸面)が埋設されていることから、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥がすことで、凹凸形成部材の一方の面の凹凸と対になる凹凸部がトレッドゴムの裏面に形成される(現れる)。すなわち、トレッドゴムから凹凸形成部材を剥がすという簡単な作業でプレキュアトレッドの裏面に凹凸部を形成することができる。
また、上記プレキュアトレッドでは、凹凸形成部材の折り返した部分(折り返し部)がトレッドゴムの裏面に他の部位と比べて埋設されていない(言い換えると、トレッドゴムの裏面に他の部位と比べて貼り付いていない)ため、折り返し部をつかんで凹凸形成部材をトレッドゴムの裏面から剥がすことができる。これにより、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥離しやすくなる。
【0016】
なお、トレッドゴム成型工程では、トレッドゴムの加硫(加熱)を半加硫状態で終了してもよく、加硫済みとなるまで実施してもよい。
【0017】
請求項
4に記載のプレキュアトレッドは、請求項
3に記載のプレキュアトレッドの製造方法において、前記凹凸形成部材載置工程では、前記凹凸形成部材の折り返し部分に前記トレッドゴムに対して非接着性を有する非接着層を設けてから、前記凹凸形成部材を前記トレッド成型用型の底面に載置する。
【0018】
請求項
4に記載のプレキュアトレッドの製造方法では、凹凸形成部材の折り返し部分にトレッドゴムに対して非接着性を有する非接着層を設けることから、未加硫のトレッドゴムを加硫(加熱)する際に、凹凸形成部材の折り返し部分の互いに重なり合う他方の面同士にゴム材が介在しても、折り返し部分がトレッドゴム側に貼り付くのが抑制される。
【0019】
プレキュアトレッドの製造方法は、少なくとも一方の面が凹凸面とされたシート状の凹凸形成部材を、前記一方の面を上にしてトレッド成型用型の底面に載置する凹凸形成部材載置工程と、前記凹凸形成部材の一方の面上にトレッド幅方向に延びるように繊維状の剥離部材を載置すると共に該剥離部材の両端部を前記凹凸形成部材よりもトレッド幅方向外側の位置までそれぞれ延ばしてから、前記トレッド成型用型内の前記凹凸形成部材上に未加硫のトレッドゴムを配設し、該トレッドゴムを加圧すると共に加硫して該トレッドゴムに前記凹凸形成部材の一方の面側を埋め込みつつトレッドパターンを形成するトレッドゴム成型工程と、を有している。
【0020】
上記プレキュアトレッドの製造方法では、凹凸形成部材載置工程で凹凸形成部材が一方の面を上にしてトレッド成型用型の底面に載置される。次に、トレッドゴム成型工程で凹凸形成部材の一方の面上にトレッド幅方向に延びるように繊維状の剥離部材を載置すると共に該剥離部材の両端部を凹凸形成部材よりもトレッド幅方向外側の位置までそれぞれ延ばしてから、トレッド成型用型内の凹凸形成部材上に未加硫のトレッドゴムが配設される。そして、未加硫のトレッドゴムが加圧されると共に加硫されて、該トレッドゴムの裏面となる部分に凹凸形成部材の一方の面側が埋め込まれると共に該トレッドゴムの表面(踏面)となる部分にトレッドパターンが形成される。このようにしてプレキュアトレッドが製造される。
ここで、上記のようにして製造されたプレキュアトレッドでは、トレッドゴムの裏面に凹凸形成部材の一方の面(凹凸面)が埋設されていることから、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥がすことで、凹凸形成部材の一方の面の凹凸と対になる凹凸部がトレッドゴムの裏面に形成される(現れる)。すなわち、トレッドゴムから凹凸形成部材を剥がすという簡単な作業でプレキュアトレッドの裏面に凹凸部を形成することができる。
また、上記プレキュアトレッドでは、繊維状の剥離部材の両端部を凹凸形成部材よりもトレッド幅方向外側の位置でトレッドゴムから露出させていることから、この剥離部材の両端部を見つけやすい。また、剥離部材の両端部をつかみ、該剥離部材をトレッドゴムの裏面から引っ張り出すことで、凹凸形成部材も剥離部材に引っ張られてトレッドゴムの裏面から剥がされる。これにより、トレッドゴムの裏面から凹凸形成部材を剥離しやすくなる。
【0021】
請求項
5に記載のプレキュアトレッドの製造方法は、請求項3
又は請求項4に記載のプレキュアトレッドの製造方法において、前記凹凸形成部材は、金属繊維または有機繊維で構成される布である。
【0022】
請求項
5に記載のプレキュアトレッドの製造方法では、凹凸形成部材を金属繊維または有機繊維で形成される布としていることから、この製造方法で製造されたプレキュアトレッドは、上記布をトレッドゴムから剥がす際に、布が途中で切れにくく、連続して剥がすことができる。
【0023】
請求項
6に記載のタイヤの製造方法は、請求項1
又は請求項2に記載のプレキュアトレッドの前記トレッドゴムから前記凹凸形成部材を剥がして該トレッドゴムに凹凸部を形成し、該凹凸部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、ゴムまたは樹脂材料を環状に形成したタイヤ骨格部材の外周に未加硫ゴムを配設すると共に該未加硫ゴムの外周に前記凹凸部が接触するように前記トレッドゴムを配設し、前記未加硫ゴムを加硫して前記タイヤ骨格部材と前記トレッドゴムを接合するトレッドゴム接合工程と、を有している。
【0024】
請求項
6に記載のタイヤの製造方法では、接着剤塗布工程で請求項1
又は請求項2に記載のプレキュアトレッドのトレッドゴムから凹凸形成部材が剥がされる。これにより、トレッドゴムの裏面に凹凸部が形成される(現れる)。すなわち、トレッドゴムから凹凸形成部材を剥がすという簡単な作業でプレキュアトレッド(トレッドゴム)の裏面に凹凸部が形成される。そして、トレッドゴムの凹凸部が形成された裏面に接着剤が塗布される。ここで、トレッドゴムの裏面に凹凸部が形成されていることから、例えば、トレッドゴムの裏面に凹凸部が形成されていないもの(すなわち、裏面が平坦状のもの)と比べて、トレッドゴムの裏面に接着剤が付きやすい。
【0025】
次に、トレッドゴム配設工程でゴム材または樹脂材料を環状に形成したタイヤ骨格部材の外周に未加硫ゴムが配設され、該未加硫ゴムの外周に凹凸部が接触するようにトレッドゴムが配設される。ここで、上記のようにトレッドゴムの裏面には凹凸部により接着剤が十分に付着していることから、トレッドゴムが未加硫ゴムに対して強固に接着される。
そして、未加硫ゴムを加硫することで、タイヤ骨格部材とトレッドゴムが強固に接合(加硫接着)される。このようにして、タイヤが製造される。
【0026】
請求項
7に記載のタイヤの製造方法は、請求項
6に記載のタイヤの製造方法において、前記タイヤ骨格部材は、熱可塑性材料で構成されている。
【0027】
請求項
7に記載のタイヤの製造方法では、タイヤ骨格部材を樹脂材料の中の熱可塑性材料で構成していることから、タイヤ骨格部材の成刑が容易、かつ、製造に必要なエネルギーを少なくすることが可能であり、さらには、再利用(リサイクル)が容易になる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係るプレキュアトレッド、プレキュアトレッドの製造方法、及びタイヤの製造方法によれば、プレキュアトレッドの裏面に簡単に凹凸部を形成することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の第1実施形態に係るプレキュアトレッド、プレキュアトレッドの製造方法、及びタイヤの製造方法について説明する。
【0031】
まず、第1実施形態に係るプレキュアトレッド10について
図1〜3を用いて説明する。なお、プレキュアトレッド10は、後述するタイヤの製造方法でタイヤ骨格部材62に接合されてタイヤ60のトレッドとなるものである。
【0032】
図1に示すように、プレキュアトレッド(Pre−Cured Tread)10は、有端状とされている。このプレキュアトレッド10は、有端状に成型され、表面(踏面)12Aにトレッドパターンが形成された加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴム12を有している。本実施形態のトレッドゴム12の表面12Aには、トレッドパターンとして一対の主溝14が形成されている。
【0033】
図2に示すようにトレッドゴム12の裏面12B(表面12Aに対して反対側の面)には、凹凸形成部材16が配置されている。この凹凸形成部材16は、シート状とされ、少なくとも一方の面16Aが凹凸面とされており、該一方の面16A側がトレッドゴム12の裏面12Bに埋設されている(
図3参照)。
【0034】
また、凹凸形成部材16は、本実施形態では、金属繊維または有機繊維で形成された布(織物)とされており、一方の面16A及び他方の面16Bの両面ともが凹凸面(微細な凹凸面)とされている。具体的には、隣り合う繊維間の空隙が凹部とされ、繊維部分が凸部とされている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹凸形成部材16は、トレッドゴム12の裏面12Bから剥がすと、裏面12Bに凹凸部を形成することができれば、どのようなものであってもよい。例えば、本発明に係る凹凸形成部材をシート状の可撓板とし、該可撓板の一方の面または両方の面に凹凸(微細な凹凸)を形成して凹凸面としてもよいし、上記可撓板に貫通孔を複数形成して両方の面で見て凹凸を形成してもよい。
【0035】
凹凸形成部材16は、トレッドゴム12のトレッド長手方向(
図2の矢印S方向)の一方の端部12Xから他方の端部12Xまでトレッド長手方向に沿って配置されている。なお、トレッドゴム12の裏面12Bには、両端部12X間の長さの1枚の凹凸形成部材16が配置されてもよく、両端部12X間の長さよりも短い凹凸形成部材16をトレッド長手方向に複数枚並べて配置されてもよい。なお、本実施形態では、
図2に示すように、トレッドゴム12の裏面12Bに2枚の凹凸形成部材16を配置している。
【0036】
図2に示すように、凹凸形成部材16は、トレッドゴム12のトレッド幅方向(
図2の矢印W方向)の両端部12Y近傍まで延びている。なお、本実施形態では、凹凸形成部材16をトレッドゴム12の両端部12Y近傍まで延ばしているが、本発明はこの構成に限定されず、凹凸形成部材16をトレッドゴム12の両端部12Yまで(両端部12Yに一致するまで)延ばしてもよい。
【0037】
図2に示すように、凹凸形成部材16は、一部がトレッドゴム12の裏面12B側に対して反対側に折り返されている。なお、本実施形態では、凹凸形成部材16のトレッド長手方向の端部が折り返されている。さらに具体的に説明すると、2枚の凹凸形成部材16の対向するトレッド長手方向の端部同士が折り返されている。
【0038】
図3に示すように、凹凸形成部材16の折り返した部分(以下、折り返し部18と記載する。)には、未加硫のトレッドゴム12との加硫接着を回避するための非接着層19が設けられている。具体的には、折り返し部18の折り返し内側面である、対向する他方の面16B同士に設けられている。
【0039】
また、非接着層19は、例えば、ゴムと接着しにくい樹脂材料(PPなど)を折り返し部18に塗布や含浸させて形成しても、ゴムと接着しにくい樹脂製のテープを折り返し部18に貼り付けて形成してもよい。なお、本実施形態の非接着層19は、トレッドゴム12の加硫時の加熱温度に耐えられる耐熱性の樹脂テープを折り返し部18に貼り付けて形成されている。
【0040】
なお、
図1及び
図2中の符号CLは、プレキュアトレッド10のトレッド幅方向の中央線を示している。プレキュアトレッド10は、中央線CLがタイヤ骨格部材62のタイヤ幅方向の中央線と一致するように接合される。なお、接合後は、プレキュアトレッド10の中央線CL及びタイヤ骨格部材62の中央線がタイヤ赤道面CLとなる。
【0041】
次に、第1実施形態に係るプレキュアトレッドの製造方法について
図4及び
図5を用いて説明する。
まず、プレキュアトレッド10の成型に用いるトレッド成型用型50について説明する。
図4に示すように、トレッド成型用型50は、上下半割りの上型52と下型54とで形成されている。上型52には、プレキュアトレッド10の表面12A側を形成するための凹部52Aが形成されている。この凹部52Aの底面52Bには、プレキュアトレッド10の表面12Aにトレッドパターンとしての主溝14を形成するためのリブ(図示省略)などが形成されている。
一方、下型54には、プレキュアトレッド10の裏面12B側を形成するための凹部54Aが形成されている。
ここで、上型52及び下型54を合わせると、凹部52A及び凹部54Aによって有端状のプレキュアトレッド10と断面形状が同一のキャビティが形成される。
なお、本実施形態のトレッド成型用型50は、タイヤ60を構成するのに必要とされる長さよりも長い有端状のプレキュアトレッド100を成型することができる。
【0042】
また、トレッド成型用型50は、内部(キャビティ)に配設された未加硫ゴムを加圧すると共に加硫できるようになっている。
【0043】
次に、プレキュアトレッド10の製造方法について説明する。
(凹凸形成部材載置工程)
図4に示すように、まず、下型54の凹部54Aの底面54Bに凹凸形成部材16を、一方の面16Aを上にして載置する。このとき、凹凸形成部材16の一部を他方の面16B同士が重なるように折り返しつつ、折り返し部18にゴムとの接着を回避するためのゴムに対して非接着性を有する非接着層19を設けてから、凹凸形成部材16を下型54の底面54Bに載置する。
【0044】
具体的には、本実施形態では、底面54Bに複数枚(本実施形態では2枚)の凹凸形成部材16をトレッド長手方向(矢印S方向)に並べて載置している。このとき、
図4に示すように、2枚の凹凸形成部材16の対向するトレッド長手方向の端部同士を折り返している。また、非接着層19は、例えば、ゴムと接着しにくい樹脂材料(PPなど)を折り返し部18に塗布や含浸させて形成しても、ゴムと接着しにくい樹脂製のテープを折り返し部18に貼り付けて形成してもよい。なお、本実施形態の非接着層19は、トレッドゴム12の加硫時の加熱温度に耐えられる耐熱性の樹脂テープを折り返し部18に貼り付けて形成されている。また、
図4では、非接着層19を図示省略している。
【0045】
(トレッドゴム成型工程)
次に、
図4に示すように、下型54の凹部54A内の凹凸形成部材16上に未加硫のトレッドゴム12Gを配設し、上型52と下型54を合わせて(閉じて)キャビティ内のトレッドゴム12Gを所定時間加圧すると共に加硫する。このとき、トレッドゴム12Gの裏面12Bとなる部分に凹凸形成部材16の一方の面16A側が埋め込まれると共に、トレッドゴム12Gの表面12Aとなる部分に底面52Bのリブ(図示省略)によってトレッドパターンが形成される。
【0046】
加硫が終了した後は、上型52と下型54を開いて加硫された長尺な有端状のプレキュアトレッド100を取り出す。
なお、トレッドゴム成型工程においては、トレッドゴム12を、最終製品として必要とされる加硫度に至るまで加硫しても、最終製品として必要とされる加硫度には至らない程度に加硫してもよい。
【0047】
(裁断工程)
次に、トレッドゴム成型工程において加硫されたプレキュアトレッド100を所定の長さに裁断する。なお、ここでいう所定の長さとは、各タイヤの仕様に応じたトレッドの長さを指すものであり、本実施形態では、タイヤ60を構成するのに必要とされる長さを指している。
【0048】
図5に示すように、有端状のプレキュアトレッド100を裁断装置(図示省略)の台座に載置し、上記所定の長さに合わせた切断ラインLに沿ってプレキュアトレッド100を裁断する。これにより、所定長さ(サイズ)のプレキュアトレッド10が製造される。
【0049】
なお、トレッド成型用型50のキャビティの長さを所定の長さとしておくことで、トレッドゴム裁断工程を省略してもよいが、長尺な有端状のプレキュアトレッド100を成型し、切り分ける(裁断する)ことで生産性を向上させることができる。
【0050】
また、凹凸形成部材16の配置ピッチは、切断ラインL間のピッチPよりも短くすることが好ましい。具体的には、凹凸形成部材16のトレッド長手方向の長さを上記ピッチPよりも短くすることが好ましい。上記構成によれば、裁断されたプレキュアトレッド10に凹凸形成部材16の折り返し部18が確実に配置されるため、折り返し部18による凹凸形成部材16をプレキュアトレッド10から剥がしやすくする効果が確実に得られる。
【0051】
次に、プレキュアトレッド10及びプレキュアトレッド10の製造方法の作用効果について説明する。
上述の第1実施形態に係るプレキュアトレッドの製造方法により製造されたプレキュアトレッド10は、
図3に示すように、加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴム12の裏面12Bに凹凸形成部材16の一方の面16A(凹凸面)が埋設されていることから、トレッドゴム12の裏面12Bから凹凸形成部材16を剥がすことで、凹凸形成部材16の一方の面16Aの凹凸と対になる凹凸部(微細な凹凸部)がトレッドゴム12の裏面12Bに形成される(現れる)。すなわち、トレッドゴム12から凹凸形成部材16を剥がすという簡単な作業でトレッドゴム12の裏面12Bに凹凸部を形成することができる。これにより、プレキュアトレッド10の裏面12Bに接着剤が付き易くなる。
【0052】
また、プレキュアトレッド10では、凹凸形成部材16を金属繊維または有機繊維を編んで形成された布としていることから、この布をトレッドゴム12から剥がす際に、布が途中で切れにくく、連続して剥がすことができる。
【0053】
さらに、プレキュアトレッド10では、凹凸形成部材16の折り返し部18がトレッドゴム12の裏面12Bに埋設されない(言い換えると、トレッドゴム12の裏面12Bに貼り付いていない)ため、この折り返し部18をつかんで凹凸形成部材16をトレッドゴム12の裏面12Bから剥がすことができる。これにより、トレッドゴム12の裏面12Bから凹凸形成部材16を剥離しやすくなる。
【0054】
プレキュアトレッド10の製造方法では、凹凸形成部材16の折り返し部18にトレッドゴム12に対して非接着性を有する非接着層19を設けることから、未加硫のトレッドゴム12Gを加硫する際に、凹凸形成部材16の折り返し部18の互いに重なり合う他方の面16B同士にゴム材が介在しても、折り返し部18がトレッドゴム12側に貼り付くのが抑制される。なお、本実施形態では、折り返し部18に非接着層19を設けているが、本発明はこの構成に限定されず、未加硫のトレッドゴム12が凹凸形成部材16を通り抜けて折り返し部18に達することがなければ、非接着層19を省略してもよい。
以上、プレキュアトレッド10では、裏面12Bに簡単に凹凸部を形成することができる。そして、プレキュアトレッド10の製造方法では、上記のようなプレキュアトレッド10を簡単に製造することができる。
【0055】
第1実施形態では、プレキュアトレッド10を有端状としているが、本発明はこの構成に限定されず、有端状のプレキュアトレッド10の両端部12X同士を接合して無端状のプレキュアトレッド10としてもよい。なお、無端状のプレキュアトレッド10の形成手順については、後述する。
【0056】
また、第1実施形態では、
図2及び
図3に示すように、凹凸形成部材16のトレッド長手方向の端部を折り返して折り返し部18を形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、凹凸形成部材16の一部であればどの部分を折り返してもよい。例えば、
図6及び
図7に示す折り返し部18の第1変形例(折り返し部30)や、
図8に示す第2変形例(折り返し部32)のように折り返してもよい。まず、
図6及び
図7に示す第1変形例の折り返し部30について説明すると、折り返し部30は、凹凸形成部材16のトレッド長手方向の中間部を折り返し、一方の面16A同士を重ねることで形成されている。また、折り返し部30は、切断ラインLのピッチPよりも短い間隔で形成されている。凹凸形成部材16に折り返し部30を形成して凹凸形成部材16を一枚ものとした場合には、折り返し部30をつかんで凹凸形成部材16を一枚剥がせば、プレキュアトレッド10の裏面12Bに凹凸を形成することができる。なお、上記折り返し部30の構成は、トレッドゴム12の裏面12Bに凹凸形成部材16を複数枚並べる場合にも適用することができる。
【0057】
次に、
図8に示す第2変形例の折り返し部32について説明する。折り返し部32は、凹凸形成部材16のトレッド幅方向の中間部を折り返し、一方の面16A同士を重ねることで形成されている。凹凸形成部材16に折り返し部32を形成する場合には、プレキュアトレッド100をどの場所で裁断してもプレキュアトレッド10には折り返し部32があるため、複数個所を折り返す必要がなく、折り返し作業の煩雑さが解消される。また、凹凸形成部材16を一枚ものとした場合には、折り返し部32をつかんで凹凸形成部材16を一枚剥がせば、プレキュアトレッド10の裏面12Bに凹凸を形成することができる。なお、上記折り返し部32の構成は、トレッドゴム12の裏面12Bに凹凸形成部材16を複数枚並べる場合にも適用することができる。また、凹凸形成部材16のトレッド幅方向の両端部のうちの少なくとも一方の端部を折り返してもよい。
【0058】
第1実施形態では、
図2及び
図3に示すように、凹凸形成部材16のトレッド長手方向の端部を折り返して折り返し部18を形成し、この折り返し部18をつかんで凹凸形成部材16を剥がす構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、
図9及び
図10に示すように、複数舞の凹凸形成部材16の端部をトレッド長手方向の一方から他方へ順に重ねるように配置し、そして、トレッドゴム12の裏面12Bと非接触の凹凸形成部材16の端部16Eをつかんで、裏面12Bから凹凸形成部材16を剥がす構成としてもよい。
また、凹凸形成部材16の重なり部分に非接着層19を設けてもよい。
【0059】
次に、第1実施形態に係るタイヤの製造方法について説明する。
なお、本実施形態のタイヤの製造方法で製造されるタイヤ60には、プレキュアトレッド10が用いられる。
【0060】
まず、タイヤ60について
図11を用いて説明する。
図11に示すように、タイヤ60は、円環状のタイヤ骨格部材62と、このタイヤ骨格部材62のタイヤ径方向外側に配設されたトレッド80と、を有している。なお、トレッド80は、プレキュアトレッド10をタイヤ骨格部材62に接合したものであり、加硫済みのものである。また、
図11及び
図12では、タイヤ幅方向を矢印Wで示し、タイヤ径方向を矢印Kで示している。なお、「タイヤ幅方向外側」とは、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから離れる側を指し、「タイヤ幅方向内側」とは、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近づく側を指している。また、タイヤ60においては、タイヤ幅方向と前述のトレッド幅方向は同一の方向を指し、タイヤ周方向と前述のトレッド長手方向は同一の方向を指している。
【0061】
タイヤ骨格部材62は、樹脂材料を円環状に形成したものであり、タイヤ60の骨格部分を構成している。このタイヤ骨格部材62は、タイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対のビード部64、これら一対のビード部64からタイヤ径方向外側へそれぞれ延出する一対のサイド部66と、一対のサイド部66を連結するクラウン部68と、で構成されている。
【0062】
本実施形態では、タイヤ骨格部材62を単一の樹脂材料で形成している。なお、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ骨格部材62を複数の樹脂材料で形成してもよい。例えば、タイヤ骨格部材62を各部位ごとに異なる特徴を有する樹脂材料で形成してもよい。また、タイヤ骨格部材62に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤ骨格部材62を補強してもよい。
【0063】
樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。なお、樹脂材料には、加硫ゴムは含まれない。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
【0064】
これらの樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上のものを用いることができる。
【0065】
本実施形態では、タイヤ骨格部材62を形成する樹脂材料を、熱可塑性を有する熱可塑性材料(例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなど)としている。
【0066】
図11に示すように、ビード部64には、タイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア70が埋設されている。本実施形態のビードコア70は、金属コード(例えば、スチールコード)で構成されている。なお、本実施形態では、タイヤ60のビードコア70をスチールコードで構成しているが、ビードコアは、例えば、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成されていてもよく、また、ビードコア自体を省略してもよい。
【0067】
ビード部64の外周面には、リム(図視省略)との接触部分に該リムとの間のシール性(気密性)を高めるためのシール層72が形成されている。なお、ビード部64の外周面とリム(図示省略)との接触で十分にシール性が確保できるのであれば、シール層72は省略してもよい。なお、本実施形態では、シール層72をゴム材で形成している。
【0068】
タイヤ骨格部材62の外周部(クラウン部68の外周部分)には、補強コード74が埋設されている。この補強コード74は、周方向に巻回されて補強層75を形成している。この補強層75により、クラウン部68の径成長(タイヤ径方向外側への拡張)が抑制されている。
【0069】
補強コード74としては、タイヤ骨格部材62を形成する樹脂材料よりも剛性が高い、例えば、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。また、補強コード74を樹脂被覆(熱可塑性材料)したものを用いてもよい。
【0070】
クラウン部68の外周側には、クッションゴム76、トレッド80の順でゴム層が配設されている。このクッションゴム76は、タイヤ60の走行時にトレッド80が受ける路面からの入力を緩衝して乗り心地性を向上させるものであり、弾性率がトレッドゴム12よりも低く設定されている。なお、タイヤ60は、クッションゴム76を省略してトレッド80を直接クラウン部68の外周側に配設する構成としてもよい。
【0071】
また、クッションゴム76とトレッド80は、接着剤(後述のゴムセメント組成物84)を用いて接合されている。このため、本実施形態のクッションゴム76とトレッド80との間には、接着層(図示省略)が形成されている。
【0072】
次に、タイヤ60の製造方法について説明する。
(タイヤ骨格部材形成工程)
まず、
図12に示すように、熱可塑性材料を用いて円環状のタイヤ骨格部材62を形成する。
【0073】
次に、タイヤ骨格部材62のクラウン部68に補強層75を形成する。ここで、補強層75を構成する補強コード74を金属繊維の単線または撚り線とした場合には、加熱した補強コード74をクラウン部68に接触させてこの接触部分を溶かしつつ、埋め込みながらクラウン部68にタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて補強層75を形成してもよい。なお、補強コード74とクラウン部68の双方を加熱しながらクラウン部68に補強コード74を螺旋状に巻き付けてもよい。
一方、補強層75を構成する補強コード74を熱可塑性材料で被覆している場合には、補強コード74の表面を加熱して溶かしながらクラウン部68タイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて補強層75を形成してもよい。なお、補強コード74の表面とクラウン部68の双方を加熱しながらクラウン部68に補強コード74を螺旋状に巻き付けてもよい。
【0074】
(クッションゴム配置工程)
次に、
図12に示されるように、タイヤ骨格部材62の外周面62Aに未加硫のクッションゴム76を配置する。このとき、外周面62Aをバフ処理(例えば、サンドペーパーやグラインダ等でバフ処理)して微細な凹凸を形成してから例えば1層又は2層の接着剤77を塗布することが好ましい。なお、バフ処理後に外周面62Aをアルコール等で洗浄して脱脂したり、コロナ処理や紫外線照射処理したりすることが好ましい。接着剤77の塗布は、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。接着剤77は、特定の種類に限定されるものではないが、例えばトリアジンチオール系のものを用いることができ、他には塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤等も用いてもよい。
【0075】
(プレキュアトレッド製造工程)
次に、前述したプレキュアトレッドの製造方法を用いて有端状のプレキュアトレッド10(
図1参照)を製造する。
そして、
図13に示すように、プレキュアトレッド10の両端部12X同士を突き合わせると共に、突合せ部分に未加硫ゴム(図示省略)を配置する。その後、未加硫ゴムを加硫装置48で加硫することで、両端部12X同士が接合(加硫接着)されてプレキュアトレッド10が無端状となる。なお、
図13では、凹凸形成部材16を破線で示している。
【0076】
(接着剤塗布工程)
次に、
図14に示すように、凹凸形成部材16の折り返し部18をつかんでプレキュアトレッド10から凹凸形成部材16を剥がす。ここで、プレキュアトレッド10の両端部12X同士を接合した際に、凹凸形成部材16の端部が両端部12X同士を接合するための未加硫ゴムに埋まり、つかみにくい、または、つかめないことがあり、剥離作業が難しくなることがあるが、本実施形態では、凹凸形成部材16に剥離起点として折り返し部18を形成しているため、この折り返し部18をつかむことで、凹凸形成部材16を剥がす剥離作業を容易にすることができる。なお、
図14では、凹凸形成部材16を破線で示している。
【0077】
プレキュアトレッド10から凹凸形成部材16を剥離した後は、裏面12Bに形成された微細な凹凸部を含めて裏面12B全体に接着剤を塗布する。この接着剤としては、ゴムセメント組成物84(
図12参照)を用いることが好ましい。ここで、プレキュアトレッド10の裏面12Bには、微細な凹凸部が形成されているため接着剤が付き易くなっている。なお、プレキュアトレッド10とは、タイヤ骨格部材62や後述の台タイヤ112に接合していない状態で且つ、加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴム12の表面12Aにトレッドパターンを形成したトレッドを指している。このため、ここでは、凹凸形成部材16が配設されたものも、凹凸形成部材16が剥離されたものもプレキュアトレッド10として記載している。
【0078】
また、トレッドゴム12としてSBR(スチレン−ブタジエンゴム)を用いる場合には、ゴムセメント組成物84として、例えばSBR系のスプライスセメントを用いることが好ましい。また、トレッドゴム12として、NR(天然ゴム)の配合比の高いSBR系ゴムを用いる場合には、SBR系のスプライスセメントにBR(ブタジエンゴム)を配合したものを用いることが好ましい。この他、ゴムセメント組成物84として、液状BR等の液状エラストマーを配合した無溶剤セメントや、IR(イソプレンゴム)−SBRのブレンドを主成分とするセメントを用いることが可能である。
【0079】
(トレッドゴム接合工程)
次に、
図12に示すように、クッションゴム76の外周にプレキュアトレッド10を配設し、クッションゴム76を介してタイヤ骨格部材62とプレキュアトレッド10を加硫接合(加硫接着)する。この方法について簡単に説明する。
【0080】
まず、
図15に示すように、無端状のプレキュアトレッド10を冶具55によって拡径し、拡径したプレキュアトレッド10の内周側に、タイヤ骨格部材62を配置する。図示は省略するが、タイヤ骨格部材62の外周面62Aには、クッションゴム76(
図12参照)が配置されている。
【0081】
冶具55は円盤状の台座57の上面に、円形に配置された複数(本実施形態では合計で8つ)の移動ブロック56を備えている。これらの移動ブロック56は、シリンダやねじ等の送り手段(図示省略)により台座57の直径方向内側(矢印E方向)と直径方向外側(矢印F方向)に同期して移動可能に構成されている。また、各移動ブロック56には、それぞれ複数(本実施形態では合計で2つ)のピン58が立設されている。台座57におけるピン58の内周側には、複数のピン59が円形に沿って配置されている。なお、すべてのピン58は、円形に沿った位置に配置されており、各移動ブロック56の移動によって、台座57の直径方向内側(矢印E方向)と直径方向外側(矢印F方向)へ移動させるようになっている。
【0082】
従って、無端状のプレキュアトレッド10を各ピン58の外周側に配置し、各移動ブロック56を台座57の直径方向外側(矢印F方向)へ移動させることでプレキュアトレッド10が拡径される。その後、
図16に示されるように、プレキュアトレッド10の内周側に、タイヤ骨格部材62を配置する。このとき、タイヤ骨格部材62は、ピン58と、ピン59との間に配置された状態となる。
【0083】
その後、すべてのピン58、60を、プレキュアトレッド10とタイヤ骨格部材62との間から引き抜くことで、
図17に示されるように、プレキュアトレッド10がクッションゴム76(図示省略)のタイヤ直径方向外側に配置された状態となる。このとき、拡径された無端状のプレキュアトレッド10の張力により、タイヤ骨格部材62の外周面62Aとプレキュアトレッド10との間にクッションゴム76が挟み込まれた状態となる。
【0084】
次に、
図18及び
図19に示されるように、プレキュアトレッド10と、クッションゴム76と、少なくともタイヤ骨格部材62のプレキュアトレッド10側とをエンベロープ88で覆って仮組品90を構成する。エンベロープ88は、気密性及び伸縮性を有し、熱及び化学的に適度に安定で、適度な強度を有する例えばゴム製の被覆部材である。エンベロープ88には、エンベロープ88で覆われた領域内を真空引きすることで、プレキュアトレッド10をタイヤ骨格部材62側に押し付けるようにするためのバルブ92が設けられている。バルブ92は、真空引き後における外部からエンベロープ88内への空気の流入を防止するための弁機構(図示省略)を有していることが望ましい。
【0085】
そして、
図19に示すように、プレキュアトレッド10とエンベロープ88との間には、有機繊維あるいは金属繊維によって多孔質性のスポンジ状の部材として形成されたウィック94が挟み込まれる。このウィック94は、少なくとも、バルブ92の口金部92Mを覆うことが可能な形状(本実施形態では長方形の板状)に形成されると共に、口金部92Mを覆う位置に配置されているが、上記したように、スポンジ状とされている。吸引時に、エンベロープ88や口金部92Mを介して大気圧による圧力を受けた際にも、気体の吸引が可能な多孔質を形成することができるため、バルブ92からのエンベロープ88内の吸引には影響しないようになっている。
【0086】
ウィック94は、部分的に主溝14に入り込むことで、主溝14の底部(薄肉部)をタイヤ径方向外側から押圧するように支持して、エンベロープ88内が吸引されたときの、プレキュアトレッド10(特に主溝14の底部)の変形を抑制できるように、十分な肉厚を有している。
【0087】
図19に示すように、タイヤ骨格部材62は、リムに近い構造を有する一対の環状の支持部材96に組み付けられた状態でエンベロープ88に覆われている。
この状態でバルブ92から真空引きを行うことで、エンベロープ88をプレキュアトレッド10と、クッションゴム76と、少なくともタイヤ骨格部材62に密着させて、プレキュアトレッド10と、クッションゴム76と、少なくともタイヤ骨格部材62のプレキュアトレッド10をタイヤ骨格部材62側に押し付けることができる。一対の支持部材96の間には、所定の間隙98が設けられている。加硫時の圧力を、この間隙98を通じて(矢印C方向)、タイヤ骨格部材62の内面側に作用させることで、タイヤ骨格部材62の形状を保つことができる。
【0088】
そして、
図20及び
図21に示されるように、この仮組品90を容器102内に収容し、容器102内の加熱及び加圧を行って加硫を行う。この容器102は、所謂加硫缶であるが、仮組品90を収容する容量を有し、加硫時の加熱及び加圧に耐えうる容器であればよく、形式は問わない。加硫条件は、例えば温度が120℃、圧力が2026hPa(2気圧)、時間が1時間である。
【0089】
プレキュアトレッド10等の変形を防ぐ観点から、容器102内に仮組品90を収納する際には、仮組品90の外周部が容器102の内壁等に接触しないようにすることが望ましい。そのための手段としては、例えば、
図20に示されるように、単数又は複数の仮組品90を支持部材104により支持する方式や、
図21に示されるように、単数又は複数の仮組品90を、台車106上に設けられた支持部材108により支持し、仮組品90を台車106ごと容器102内に配置する方式が考えられる。
【0090】
ここで、加硫促進剤としては、硫黄若しくはパーオキサイドを用いることができる。またクッションゴム76の補強剤には、カーボンブラック又はシリカを用いることができ、シリカがより好ましい。更に、カップリング剤には、アミノシラン又はポリスルフィドを用いることができる。
【0091】
加硫温度は100℃以上160℃未満であることが好ましい。160℃以上であると、タイヤ骨格部材62に用いられる熱可塑性材料の熱収縮により、補強コード74により補強されたクラウン部68(
図11及び
図12参照)が座屈してしまう可能性があるからである。また100℃未満であると、クッションゴム76の加硫度が不十分となる場合があるからである。
【0092】
このように容器102内の温度を設定すると共に、容器102内の圧力を加硫に適した圧力に設定し、所定時間加硫を行うことで、クッションゴム76が加硫される。これにより、
図11に示されるように、プレキュアトレッド10とタイヤ骨格部材62の外周面62Aとが加硫接着されて、タイヤ60(空気入りタイヤ)となる。半加硫状態のプレキュアトレッド10を用いた場合には、プレキュアトレッド10も更に加硫されて最終製品の加硫度に至る。
なお、上述の製造の手順については、適宜入れ替えてもよい。
【0093】
本実施形態では、大型の加硫装置が必要となる加硫金型を用いずに、樹脂材料を用いたタイヤ骨格部材62にプレキュアトレッド10を接着してタイヤ60を製造することができる。このため、樹脂材料(熱可塑性材料)のタイヤ骨格部材62を有するタイヤ60の製造コストを低減することができる。
【0094】
また、プレキュアトレッド10の裏面12Bには、十分な量のゴムセメント組成物84が付着していることから、プレキュアトレッド10をクッションゴム76の外周に仮止めした状態でのプレキュアトレッド10とクッションゴム76との位置ずれが生じにくい、すなわち、真空引きや加硫時のプレキュアトレッド10とクッションゴム76との位置ずれが抑制されるため、タイヤ骨格部材62に対してプレキュアトレッド10が高い精度で配設される。また、加硫後のタイヤ骨格部材62とプレキュアトレッド10(トレッド80)との接合強度が向上する。
【0095】
第1実施形態のタイヤの製造方法では、無端状のプレキュアトレッド10を有端状にしてから凹凸形成部材16を剥がしているが、本発明はこの構成に限定されず、無端状のプレキュアトレッド10から凹凸形成部材16を剥がした後で、無端状のプレキュアトレッド10の両端部12X同士を接合して有端状にしてもよい。
【0096】
また、第1実施形態のタイヤの製造方法では、無端状のプレキュアトレッド10を冶具55で拡径してその内側にタイヤ骨格部材62を配設する構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、有端状のプレキュアトレッド10から凹凸形成部材16を剥がし、裏面12B全体に接着剤を塗布した後で、
図22に示すように、有端状のプレキュアトレッド10をクッションゴム76の外周に巻き付けて無端状のプレキュアトレッド10の内側にタイヤ骨格部材62を配設してもよい。ここで、有端状のプレキュアトレッド10をクッションゴム76の外周に巻き付ける方法について簡単に説明する。この方法では、
図12に示すように、外周面62Aにクッションゴム76が配置されたタイヤ骨格部材62を、例えば円盤状の支持体110で支持し、支持体110の中心に設けられた支持軸111を中心としてタイヤ骨格部材62を矢印A方向に回転させてタイヤ軸方向と直交する方向から供給させる。そして、プレキュアトレッド10のトレッド長手方向の端部同士を突き合わせて無端状にする。このようにして、無端状のプレキュアトレッド10の内側にタイヤ骨格部材62を配設してもよい。また、プレキュアトレッド10の突き合せ部分には、例えば未加硫ゴムを配置しておき、未加硫のクッションゴム76の加硫時に一緒に加硫することで、プレキュアトレッド10のトレッド長手方向の両端部を強固に接合(加硫接着)することができる。
【0097】
またさらに、第1実施形態のタイヤの製造方法では、本発明のタイヤ骨格部材を一例として樹脂材料で形成されたタイヤ骨格部材62としているが、本発明はこの構成に限定されず、本発明のタイヤ骨格部材を一例として加硫済みのゴムで形成された台タイヤ112としてもよい。台タイヤ112は、
図24に示すように使用済みのゴムタイヤからトレッドを除去した状態のものである。この台タイヤ112は、必要に応じて、ビードコア114の間に配置されるカーカスプライ116や、このカーカスプライ116の径方向外側に配置されるベルトコード118等を有している。そして、この台タイヤ112にプレキュアトレッド10を接合する場合には、まず、台タイヤの外周面(クラウン部)にクッションゴム76を配設し、その上に凹凸形成部材16を剥がし、裏面12Bにゴムセメント組成物84を塗布したプレキュアトレッド10を配設する。次に、台タイヤ112とプレキュアトレッド10をエンベロープ88で覆って真空引きした後、容器102内で加硫することで、
図23に示す更生タイヤ120が得られる。もちろん、更生タイヤに限らず、タイヤ骨格部材が加硫済みのゴムで形成された未使用のタイヤ(新品タイヤ)を製造する場合にも、本発明を適用することができる。
【0098】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るプレキュアトレッド、プレキュアトレッドの製造方法、及びタイヤの製造方法について説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0099】
まず、第2実施形態に係るプレキュアトレッド40について
図25〜27を用いて説明する。なお、
図25〜
図27に示すように、本実施形態のプレキュアトレッド40は、トレッドゴム12の凹凸形成部材16よりも内部に剥離部材42が埋設される構成以外は、第1実施形態のプレキュアトレッド40と同一の構成である。このため、以下では、剥離部材42の構成について説明する。また、プレキュアトレッド40は、第1実施形態と同様にタイヤ骨格部材62にクッションゴム76を介して接合され、トレッド80となる。
【0100】
図22に示すように、プレキュアトレッド40は、有端状とされている。このプレキュアトレッド40は、第1実施形態と同じ構造のトレッドゴム12を有している。
また、
図25及び
図26に示すように、プレキュアトレッド40は、トレッドゴム12の裏面12Bに配置された凹凸形成部材16を有している。この凹凸形成部材16は、第1実施形態と同じ構造のものである。なお、本実施形態では、凹凸形成部材16は、1枚で裏面12Bを覆っており、折り返し部を形成していない。
【0101】
図25及び
図26に示すように、トレッドゴム12の凹凸形成部材16よりも内部には、トレッド幅方向(矢印W方向)に延びる繊維状の剥離部材42が埋設されている。この剥離部材42の両端部42Aは、凹凸形成部材16よりもトレッド幅方向外側の位置でトレッドゴム12から露出している。
【0102】
また、剥離部材42は、金属繊維または有機繊などの単線または撚り線により形成されている。なお、本実施形態では、剥離部材42の一例として金属ワイヤーを用いている。
【0103】
次に、第2実施形態に係るプレキュアトレッドの製造方法について
図24を用いて説明する。
(凹凸形成部材載置工程)
図28に示すように、まず、下型54の凹部54Aの底面54Bに凹凸形成部材16を、一方の面16Aを上にして載置する。
【0104】
(トレッドゴム成型工程)
次に、
図28に示すように、凹凸形成部材16の一方の面16A上にトレッド幅方向に延びるように繊維状の剥離部材42を載置すると共に該剥離部材42の両端部42Aを凹凸形成部材16よりもトレッド幅方向外側の位置までそれぞれ延ばしてから、トレッド成型用型50内に未加硫のトレッドゴム12を配設する。
【0105】
次に、下型54の凹部54A内の凹凸形成部材16上に未加硫のトレッドゴム12Gを配設し、上型52と下型54を合わせて(閉じて)キャビティ内のトレッドゴム12Gを所定時間加圧すると共に加硫する。このとき、トレッドゴム12Gの裏面12Bとなる部分に凹凸形成部材16の一方の面16A側が埋め込まれると共に、トレッドゴム12Gの表面12Aとなる部分に底面52Bのリブ(図示省略)によってトレッドパターンが形成される。加硫が終了した後は、上型52と下型54を開いて加硫された長尺な有端状のプレキュアトレッド100を取り出す。そして、第1実施形態と同様に裁断工程にてプレキュアトレッド100を所定の長さに裁断してプレキュアトレッド40を形成する。なお、プレキュアトレッド40の長さは、第1実施形態のプレキュアトレッド10と同じ長さである。
【0106】
次に、タイヤの製造方法について説明する。
まず、本実施形態のプレキュアトレッドの製造方法で製造されたプレキュアトレッド40を、両端部12X同士を接合(加硫接着)して無端状とする。
そして、凹凸形成部材16を裏面12Bから剥離する。このとき、剥離部材42の両端部を凹凸形成部材16よりもトレッド幅方向外側の位置でトレッドゴム12の裏面12Bから露出させていることから、この剥離部材42の両端部を見つけやすい。また、
図29に示すように、剥離部材42の両端部をつかみ、該剥離部材42をトレッドゴム12の裏面12Bから引っぱり出すことで、凹凸形成部材16も剥離部材42に引っ張られてトレッドゴム12の裏面12Bから剥がされる。これにより、トレッドゴム12の裏面12Bから凹凸形成部材16を剥離しやすくなる。
【0107】
上記のようにして凹凸形成部材16が剥がされたプレキュアトレッド40を第1実施形態と同様の手順でタイヤ骨格部材62に接合することでタイヤ60が製造される。なお、プレキュアトレッド40は、前述のように無端状とする前に凹凸形成部材16を剥がしてもよく、また、無端状とする前に
図22に示すようにタイヤ骨格部材62の外周にクッションゴム76を介して巻きつけてもよい。さらに、プレキュアトレッド40は、台タイヤ112の外周にクッションゴム76を介して巻き付けて更生タイヤ120を形成してもよい。
【0108】
また、第2実施形態の凹凸形成部材16の一部を第1実施形態と同様に折り返してもよい。
【0109】
第1及び第2実施形態では、トレッド80(プレキュアトレッド10、40)を単一のゴムからなる単層構造としているが、本発明はこの構成に限定されず、トレッド80を複数種類のゴムからなる複層構造としてもよく、トレッド80をタイヤ幅方向の中央領域、端部領域でゴム種を異ならせる構造としてもよく、これらの組合せでもよい。
【0110】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。