特許第6185781号(P6185781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185781
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】軸流圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/56 20060101AFI20170814BHJP
   F02C 7/042 20060101ALI20170814BHJP
   F02C 7/143 20060101ALI20170814BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20170814BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170814BHJP
   F16J 15/06 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   F04D29/56 C
   F02C7/042
   F02C7/143
   F02C7/28 Z
   F01D25/00 M
   !F16J15/06 H
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-152807(P2013-152807)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-21477(P2015-21477A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康雄
(72)【発明者】
【氏名】明連 千尋
(72)【発明者】
【氏名】川村 康太
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0111677(US,A1)
【文献】 特開2006−037877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/56
F02C 7/042
F02C 7/143
F02C 7/28
F01D 25/00
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮前または圧縮中の作動流体に対して液滴を供給する液滴供給装置と、
ケーシングに設けた孔に挿入された回動軸を有し、当該回動軸が回動されることで前記ケーシングと相対摺動して迎え角が変更される可変静翼と、
前記回動軸の回動時に前記ケーシングに対して相対摺動される部材と前記ケーシングとの摺動部に設けられたシール構造と
前記ケーシングの外周面上における前記回動軸の周囲に設けた座ぐり溝と、
当該座ぐり溝に収納されたフランジ部とを備え、
前記シール構造の1つである第1シール構造が、前記フランジ部が前記回動軸と相対摺動する摺動部に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の軸流圧縮機において、
前記回動軸と翼部の間に位置するように前記可変静翼に設けられ、前記ケーシングの内周面に対向配置される静翼台座をさらに備え、
前記シール構造の1つである第2シール構造が、前記静翼台座と前記ケーシングとの摺動部に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の軸流圧縮機において、
前記回動軸と翼部の間に位置するように前記可変静翼に設けられ、前記ケーシングの内周面側に配置される静翼台座と、
当該静翼台座と前記ケーシングの内周面の間に位置するように前記回動軸に挿入されたワッシャとをさらに備え、
前記シール構造の1つである第3シール構造が、前記ケーシングにおいて、前記ワッシャにおけるロータ径方向外側の面が対向する場所に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の軸流圧縮機において、
前記回動軸と翼部の間に位置するように前記可変静翼に設けられ、前記ケーシングの内周面側に配置される静翼台座と、
当該静翼台座と前記ケーシングの内周面の間に位置するように前記回動軸に挿入されたワッシャとをさらに備え、
前記シール構造の1つである第4シール構造が、前記静翼台座において、前記ワッシャにおけるロータ径方向内側の面が対向する場所に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の軸流圧縮機において、
前記シール構造は、前記相対摺動される部材と前記ケーシングの下半側との摺動部に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の軸流圧縮機において、
前記シール構造は、作動媒体の圧力が前記ケーシングの近傍で大気圧力より高圧になる部分に設けられていることを特徴とする軸流圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン用または産業用の軸流圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
夏期等におけるガスタービンの運転では、大気温度が高い場合に吸気密度が下がることでガスタービンの出力が低下する。この出力低下に対して、例えば、圧縮機の吸込み空気に水等の液滴を噴霧ノズルで噴霧させることで吸気密度を上昇させ、吸気冷却の効果によりガスタービン出力を向上させる方法がある。さらに、その液滴の噴霧量を増加させて液滴を圧縮機内部へ導入させた場合には、中間冷却の効果により圧縮動力を低減させることでガスタービンの効率が向上する。この気流とともに圧縮機内部へ搬送された微細な液滴は動翼列間、静翼列間を通過しながら段の飽和温度まで蒸発し、その蒸発潜熱により作動流体の温度を低下させる。
【0003】
多段軸流圧縮機では圧縮機の上流側から液滴は気化され主流の温度が低下していくので、圧縮機の上流側では翼列負荷が低減し、その反対に下流側で翼列負荷が増加するといった流れ方向に対して通常のドライ運転の負荷分布とは異なる分布になる。そのため、圧縮機内部に多量の液滴を噴霧する場合、予め下流側の翼列負荷を下げて、上流側の翼列負荷を増加させるように設計する必要がある。このように設計されたガスタービンの起動時など低回転数の運転域では、液滴は噴霧されないので、通常のシンプルサイクルガスタービン起動に比べて、下流側の翼列で流れがチョークすることに起因して上流側の翼列の流れが失速する非定常な流体現象、いわゆる旋回失速による剥離領域が大きくなる懸念がある。
【0004】
そこで、ガスタービンでは、圧縮機を安定に運転するために、迎え角(作動流体の流れの方向と翼弦がなす角)の変更が可能な可変機構を備えた静翼(可変静翼)が圧縮機の上流側に配置されている。圧縮機の起動などの低回転数運転時には、吸込流量が低減するため可変静翼への流入角が大きくなり、それに伴い、流れを絞る方向に可変静翼を回転させ、流入角に合わせて可変静翼の迎え角を調整する必要がある。一方、高回転数運転時には、吸込流量が増加するため、流れを開く方向に可変静翼を回転する。
【0005】
このような可変機構を有する静翼を備えた軸流圧縮機としては、例えば、特開平2−294501号公報や特開2012−72763号公報に開示されるものがある。特開平2−294501号公報には、可変静翼の内周側先端部とロータディスクの外周部のテーパ面間のギャップを小さくした構造が開示されている。また、特開2012−72763号公報には、可変機構の摺動部の耐摩耗性を考慮した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−294501号公報
【特許文献2】特開2012−72763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、シンプルサイクルガスタービンに用いられる可変静翼は、ガスタービンの起動時や部分負荷運転時に回転され、その迎え角が変更される。また、可変静翼は、ケーシングの軸方向および周方向に複数配置されており、同一周方向に配置された複数の可変静翼の迎え角(回転角度)を流れに合わせて同時に変更する必要があるため、高精度な角度制御が重要となる。そのため、可変静翼の回転軸にメタルブッシュを採用したり、可変静翼のケーシング側の端面とケーシング内周面間にスラストワッシャーを採用したりして、可変静翼の摺動性の向上を図った技術はある。
【0008】
しかし、可変静翼とケーシングの摺動部におけるシール性の向上についてはあまり考慮されていないのが実情である。そのため、特に、可変静翼を備える圧縮機の内部に水などの液滴を噴霧する場合には、ケーシングの内外の圧力差に起因して可変静翼機構からケーシング外に液滴がリークすることに加えて、長期的には、可変静翼の回転軸とケーシング面間の摺動部で腐食による錆が発生するおそれがあり、可変静翼の機器信頼性が低下する懸念がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、可変静翼とケーシングの摺動部からの流体のリークが抑制可能な軸流圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、圧縮前または圧縮中の作動流体に対して液滴を供給する液滴供給装置と、ケーシングに設けた孔に挿入された回動軸を有し、当該回動軸が回動されることで前記ケーシングと相対摺動して迎え角が変更される可変静翼と、前記回動軸の回動時に前記ケーシングに対して相対摺動される部材と前記ケーシングとの摺動部に設けられたシール構造とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可変静翼とケーシングの摺動部からの流体のリークが抑制でき、軸流圧縮機の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の一つである吸気噴霧機構を有するガスタービンシステムの構成図。
図2】本発明の実施形態の一つである軸流圧縮機の子午面断面図。
図3】本発明の実施形態の一つである可変静翼構造の断面図。
図4】本発明の実施形態の一つである可変静翼構造の断面図。
図5】本発明の実施形態の一つである可変静翼構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。まず、図1を用いて吸気噴霧機構を備えるガスタービンシステムの構成例について説明する。図1は吸気噴霧機構を備えるガスタービンシステムの概略全体構成図である。
【0014】
この図に示したガスタービンシステムは、空気を圧縮して高圧空気を生成する圧縮機1と、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させる燃焼器2と、高温の燃焼ガスにより回転駆動するタービン3を備えている。圧縮機1とタービン3は回転軸を介して発電機4と機械的に接続されている。
【0015】
次に、図1のガスタービンシステムにおける作動流体の流れについて説明する。作動流体である空気11は圧縮機1へ流入し、圧縮機1で圧縮されながら高圧空気12として燃焼器2に流入する。燃焼器2では、高圧空気12と燃料13が混合燃焼され、高温燃焼ガス14が生成される。燃焼ガス14はタービン3を回転させた後、排気ガス15として系外部へ放出される。発電機4は、圧縮機1とタービン3を連結する回転軸5を通じて伝えられるタービンの回転動力により駆動される。
【0016】
ところで、ガスタービンシステムにおいて一般的に用いられる体積流量一定の定回転数の圧縮機では、夏場など吸気温度が高くなった場合、空気密度が小さくなり吸入空気の質量流量が低減するため、これに合せて燃焼器での燃料流量も低減せざるを得ない。つまり、圧縮機の吸気温度が高くなるほどガスタービンの出力は低下する問題がある。
【0017】
そのため、圧縮機の吸気に水などの液滴を噴霧することで吸気冷却効果によりガスタービン出力を向上させる方法がある。吸気冷却の方法としては、吸気ダクトにメディア式の吸気冷却器を設置し、吸い込み空気が吸気冷却器を通過することで吸気温度を低下させる方法がある。
【0018】
また、他の吸気冷却の方法としては、図1に示すように吸気ダクト31内に液滴噴霧ノズル(液滴供給装置)32を配置して、吸気ダクト31内に取り込んだ圧縮前の空気に対して微細液滴を噴霧して気流中で蒸発させることで、液滴の蒸発潜熱を利用して吸気温度を低下させるものがある。このように液滴を噴霧する方法の場合、液滴量を増加すると吸気ダクト内で液滴が蒸発する吸気冷却効果に加えて、圧縮機内部にも液滴が供給され、圧縮機内部で液滴を気化させることで中間冷却効果が期待できる。これにより、ガスタービンの出力向上と圧縮動力低減によるガスタービンの高効率化に寄与できる。
【0019】
なお、図1に示した例では、液滴噴霧ノズル32を吸気ダクト31内の1箇所だけに配置しているが、吸気ダクト31以外の他の場所に配置しても良いし、その設置箇所は2箇所以上でも良い。例えば、吸気ダクト31内と、圧縮機入口の吸気プレナム33内の2箇所に液滴噴霧ノズル32を設置し、2段階に分けて吸気噴霧を実施しても良い。さらに、圧縮機1の内部に液滴噴霧ノズルを設置し、圧縮前の作動流体だけでなく、圧縮中の作動流体に対して液滴噴霧を行っても良い。
【0020】
次に、図2の圧縮機1の子午面断面の概略図を用いて、圧縮機1の詳細な構造について説明する。図2に示すように、軸流圧縮機1は、複数の動翼列51,57が取り付けられ、駆動源(タービン3)から与えられる軸駆動力によって回転されるロータ52と、複数の静翼列56,53が内周面に取り付けられたケーシング54を備えており、ロータ52の外周面とケーシング54の内周面により環状流路が形成されている。
【0021】
動翼列51,57と静翼列56,53はロータ軸方向に沿って交互に配列されており、1組の動翼列と静翼列とで段が構成されている。初段動翼51の上流側には、吸込み流量を制御してガスタービン負荷を調整するための入口案内翼(IGV)55が設けられている。入口案内翼55は、その迎え角を変更するための可変機構71が取り付けられている。可変機構71は薄板レバー85を介してコントロールリング91に連結されており、コントロールリング91を回転させることで入口案内翼55が回動して迎え角が変更される。
【0022】
初段動翼列51と2段動翼列51の間に配置された前段側静翼列(初段静翼列)56は、可変静翼列であり、ガスタービン起動時などに迎え角を変更するための可変機構70をそれぞれ備える。例えばガスタービン起動時に可変静翼56の迎え角を変更すると、旋回失速を抑制できる。詳細は後述するが、可変機構70は、可変機構71と同様に、薄板レバー85を介してコントロールリング91に連結されている。
【0023】
なお、図2に示した圧縮機1では、ロータ軸方向に間隔を介して配列された複数の静翼列56,53のうち、初段静翼列56にのみ可変機構70を備えたが、2段目以降の静翼列(例えば、2段静翼列53)にも可変機構70を備えても良い。特に、液滴噴霧ノズルを備える吸気噴霧の圧縮機では、前段側の翼負荷が増加されるので、安定起動を確保するために複数の段落にわたる静翼を可変静翼とするメリットがある。
【0024】
吸気ダクト(図示しない)から流入した空気11は、圧縮機1の上流側に位置する吸気プレナム33で流通方向を90度転向して圧縮機1内部へ供給される。水などの液滴は、吸気ダクト内部に配設された噴霧ノズル32から噴射され、微細な液滴は気流中で蒸発し、その蒸発潜熱により圧縮機1へ流入する気体の温度を低下させると同時に吸気の密度を上昇させる。
【0025】
気流と伴に搬送される微細な液滴のうち、吸気プレナム33で飽和まで気化しきれなかった液滴は、液滴のまま圧縮機1内部へ流入する。圧縮機1の内部で液滴は動翼列間、静翼列間を通過しながら飽和温度まで蒸発し、圧縮途中の作動流体の温度を低下させる。この中間冷却効果によって圧縮特性が等温圧縮に近づくため、圧縮機1の動力は低減される。理想的には、圧縮機1内へ導入されたすべての液滴が、圧縮機1の吐出口までに完全に気流中で蒸発させることが望ましい。
【0026】
しかし、噴霧ノズル32から噴射された液滴の一部は、主流空気の冷却に寄与せずに、圧縮機1内の各部に液膜として堆積し、ドレインになるものが発生することがある。
【0027】
ここで、圧縮機1の主流空気の冷却に寄与しない液滴挙動について説明する。噴霧ノズル32で噴霧された液滴の一部は、吸気プレナム33の壁面に衝突して液膜として堆積する。また、噴霧後に液滴同士が干渉して粒径の大きな液滴が生成した場合、その液滴は気流と伴に搬送されずに壁面へ衝突し液膜として堆積する。さらに、圧縮機1の入口に位置するストラット58やIGV55に衝突して一部は翼面に付着して液膜となる。
【0028】
この翼面に付着した液膜の一部は、分裂して粒径の大きい二次液滴となり、圧縮機1の内部へ流入する。圧縮機1の内部では粒径の大きい液滴は、動翼51,57に衝突し、ロータ52の遠心力によりロータ径方向外側に吹き飛ばされ、ケーシング54の内周面で液膜となって堆積する。
【0029】
このケーシング54の内周面の液膜の一部は、ケーシング54の熱伝導により蒸発するほか、再度、分裂して二次液滴となり下流段へ飛翔する。二次液滴は粒径が大きくなるため、下流の動静翼に衝突して液膜となる可能性が高くなる。
【0030】
なお、上記のような液膜が存在する範囲は、軸流圧縮機1の最前段から圧縮機の内部で液滴が完全に蒸発する段(以降、蒸発完了段)までであり、発明者らは、特に、上流側から中間段で液膜が発生していることを確認した。また、蒸発完了段付近の主流温度は300℃以上であり、仮に液滴がケーシング54の内周面に衝突したとしても瞬時に蒸発すると考えられる。
【0031】
次に図2を用いて可変静翼56の概略構造について説明する。可変静翼56は、圧縮機1内の特定の段(図2の例では初段静翼)においてケーシング54の周方向に所定の間隔で複数配置されている。
【0032】
可変静翼56は、翼部72と、可変静翼56の回動軸である略円柱状のステム部94と、ステム部94と翼部72の間に位置するように可変静翼56に設けられた略円盤状の静翼台座81を備えている。静翼台座81は、ケーシング54の内周面に対向配置されている。94には、薄板レバー85の一端が連結されており、薄板レバー85の他端は、コントロールリング91と回動可能に連結されている。なお、図2中に表れているのは、コントロールリング91の断面の一部である。
【0033】
コントロールリング91は、環状に形成されており、その中心軸がロータ52の中心軸に一致するように支持されている。コントロールリング91の支持態様の一例としては、コントロールリング91をケーシング54と複数箇所(図示せず)で接触させるものがある。コントロールリング91には、ロータ52の中心軸を中心にしてコントロールリング91を回転するためのアクチュエータ(図示せず)が取り付けられており、当該アクチュエータを駆動すると、コントロールリング91がロータ52の周方向に沿って時計回りまたは反時計回りに回転される。このようにコントロールリング91をロータ周方向に回転させると、コントロールリング91とともに薄板レバー85のコントロールリング91側の端部もロータ周方向に移動し、薄板レバー85の他端がステム部94を回転させるので、可変静翼56の迎え角が変更される。
【0034】
次に、図3を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る圧縮機における可変静翼56の詳細構造について説明する。図3において、可変静翼56は、翼部72と、静翼台座81と、ステム部94と、ボルト付ステム部89を備えている。翼部72、静翼台座81、ステム部94およびボルト付ステム部89は鋳造などを利用して一体成型することが好ましい。
【0035】
ステム部94は、円柱形状を有しており、ケーシング54に対してロータ径方向に設けた円柱状の貫通孔73の内部に挿入されている。ステム部94は可変静翼56の回動軸であり、ステム部94をその軸心を中心に回動させると翼部72の迎え角が変更される。
【0036】
図3に示した例では、ステム部94は、スラストワッシャー82を挿入した後にケーシング54内の貫通孔73に挿入されており、静翼台座81とケーシング54の内周面の間にはスラストワッシャー82が位置している。スラストワッシャー82は、低摩擦係数と耐摩耗性を備えており、可変静翼56およびケーシング54と無潤滑で摺動できる。
【0037】
ケーシング54の貫通孔73に挿入されたステム部94の外周には、ケーシング54の貫通孔73との間に間隙が形成されるが、当該間隙におけるロータ径方向の両端には、ステム部94の外周に位置するように、無潤滑での摺動性に優れたメタルブッシュ83が配置されている。ステム部94には当該2つのメタルブッシュ83間に位置するようにチューブ84が挿入されており、チューブ84は2つのメタルブッシュ83を支持している。なお、図3の例ではステム部94の周囲の間隙に2つのメタルブッシュ83を配置したが、ステム部94の周囲に1つのメタルブッシュ83を配置することも可能である。
【0038】
ステム部94におけるロータ径方向における外側の端部にはボルト付きステム部89が設けられている。ボルト付きステム部89は、ステム部94をケーシング54の貫通孔73に挿入した際にケーシング54の外部に突出し、薄板レバー85に設けられた貫通孔(図示せず)に挿入される部分であり、当該部分の外周面上にはボルト90を取り付けるためのネジ溝が切られている。図3に示したボルト付きステム部89は、ステム部94における他の部分よりも径が小さくなっている。
【0039】
図3に示した例では、皿バネ86、下ワッシャ88、薄板レバー85および上ワッシャ87をこの順番でボルト付きステム部89に挿入し、最後にボルト付きステム部89にナット90を締結することでステム部94(ボルト付きステム部89)と薄板レバー85を連結している。これにより、上ワッシャ87と下ワッシャ88で薄板レバー85を挟み込みこんで、ステム部94と薄板レバー85を連結する構造になっている。
【0040】
また、図3では、ロータ径方向における下ワッシャ88とケーシング54の間には皿バネ86が位置している。皿バネ86は、コントロールリング91の回転時に薄板レバー85の剛性によって可変静翼56がロータ径方向内側に向かって押し下げられたときに、バネ反力によって可変静翼56をロータ径方向外側に押し上げることで、ロータ52の外周面と可変静翼56の先端(チップ)が干渉することを防止している。
【0041】
静翼台座81は、翼部72とステム部94を接続する略円盤状の部分であり、ケーシング54の内周面上に設けられた略円盤状の凹部(座ぐり穴)であるケーシング溝98内に収納されている。ケーシング溝98の径は、ステム部94が挿入される貫通孔73の径よりも大きい。静翼台座81のロータ径方向内側の面からはロータ径方向内側に向かって翼部72が突き出ており、静翼台座81のロータ径方向外側の面からはロータ径方向外側に向かってステム部94が突き出ている。
【0042】
ステム部94の回動に伴ってケーシング54に対して相対摺動される部材(可変静翼56の一部またはその関連部品で、例えば、静翼台座81、ステム部94、ワッシャ81等)と、ケーシング54が相対摺動する部分(摺動部)には、シール構造(シール装置)が設けられている。本実施の形態では、ケーシング54に対してスラストワッシャー82が相対摺動する部分にシール構造が設けられている。当該シール構造は、ケーシング54において、スラストワッシャー82におけるロータ径方向外側の面が対向する場所に設けられており、ケーシング54のケーシング溝98の底部に設けたリング状のシール溝93と、シール溝93に収納されたリング状のシール部材92(例えば、Oリング)によって構成されている。なお、図3に示したシール溝93は、ステム部94およびケーシング溝98の中心軸と同心のリング状に形成されており、その外径はケーシング溝98の径よりも小さい。
【0043】
また、可変静翼56はケーシング外周面に設けた皿バネ86によって外周側に押付けられるので、本実施の形態のようにスラストワッシャー82のロータ径方向外側にシール構造を設けることでシール性能を向上させることが可能になる。
【0044】
ここで、上記のシール構造(シール溝93およびシール部材92)が無い場合に、液滴噴霧ノズル32によって圧縮機1の内部へ液滴が供給されたときに発生し得る課題について説明する。この場合、圧縮機1の内部では粒径の大きい液滴は、動翼51に衝突し、動翼51の回転によって生じる遠心力によりロータ径方向外側へ吹き飛ばされて、ケーシング54の内壁面で液膜となる。そのケーシング54の内壁面に堆積した液滴は、ケーシング溝98とスラストワッシャー82の間隙に流入し、さらに、ケーシング54の貫通孔73とステム部94の隙間を伝わり、メタルブッシュ83等を通過してケーシング54の外部へドレインとなって排出されるおそれがある。
【0045】
このケーシング溝98とスラストワッシャー82の間隙に流入する液滴は、作動流体の流れを基準として上流側と下流側の双方から当該間隙に入り込むと考えられるが、上流側からに比して下流側からの方が液滴(ドレイン)の流入が顕著になると考えられる。これは、可変静翼56を含めて静翼では流れが減速されることで静圧が上昇するため、静翼の下流側の圧力とケーシング54外部の圧力(大気圧)の差が大きくなる傾向があるためである。
【0046】
また、ケーシング54の周方向では、可変静翼56は全周に渡って配置されている。そして、圧縮機1に内に導入された液滴は、重力の影響でケーシング54の下半側に堆積し易い。すなわち、ケーシング54の下半側の可変静翼機構56からのドレインの発生が顕著になり、ガスタービン運転時にガスタービンのベースにドレインが蓄積して機器信頼性を低下させるおそれがある。なお、ケーシング54の下半側とは、ロータ52の中心軸を通る水平面でケーシング54を2分割した場合の下半分の部分であり、ケーシング54の上半側とはその上半分の部分である。
【0047】
このように液滴噴霧ノズルから噴霧される液滴に起因するドレインは、ガスタービンの機器信頼性を低下させるだけではない。短期的には、ダストが混入したドレインが可変静翼の摺動部へ流入することで、当該ダストの影響により可変静翼の制御精度が低下するおそれもある。例えば、ロータ周方向に配列された複数の可変静翼の各開度の間に大きな偏差が発生して、同一周上に配置された静翼列の一部に剥離が生じた場合には、多段軸流圧縮機では上流段の翼列の剥離は下流段の翼列に大きな影響を及ぼすため効率が低下する。また、上流段での部分的な剥離は、旋回失速やサージングといった流れの非定常現象により圧縮機翼の信頼性を低下させる。また、長期的には、可変静翼の摺動部に腐食による錆が発生することで、可変静翼の開度の精度が低下する可能性がある。例えば、可変静翼といった遷音速の翼型では、翼入口メタル角度と流入角とのズレであるインシデンス角に設計値に対して±5°程度の偏差が生じると、翼型損失は約2倍にもなり、翼面での剥離が顕著になる可能性が高い。そのためインシデンス角は、設計値から偏差がないようにすることが性能と信頼性の両面で重要になる。
【0048】
上記のように、圧縮機内部へ液滴が供給される場合には、可変静翼の摺動部から侵入した液滴がケーシング外部にドレインとなって排出され、圧縮機およびガスタービンの性能と信頼性に影響を及ぼすが、液滴を噴霧しない場合にも作動媒体がケーシング外部へある程度は流出すると考えられる。可変静翼は圧縮機の上流段に位置するため作動媒体の温度は低温であり、流出する空気量も微量であるので、ガスタービン運転の機器信頼性に対する影響はドレイン排出に比べて小さい。また、可変静翼の摺動部の腐食の懸念もないので、機器信頼性を低下させることはない。
【0049】
このような課題に対して、本実施の形態では、シール溝93およびシール部材92から成るシール構造を備えた。このように設けたシール構造によれば、可変静翼56のケーシング54の内壁面に液滴噴霧によるドレインが堆積しても、シール部材92の効果によりステム部94と貫通孔73の隙間への液滴の侵入を抑制でき、ケーシング54の外部へのドレインのリークが抑制できるので、機器信頼性を向上することができる。
【0050】
また、スラストワッシャー82におけるロータ径方向の内側の面、つまり静翼台座81側の面には、摺動性と耐磨耗性を考慮したコーティングが施工されており、反対のロータ径方向の外側の面にはコーティングが施工されていない。そのため、スラストワッシャー82の接触面積はコーティング面(内側の面)の方が大きい。そこで、スラストワッシャー82においてロータ径方向の外側の面と内側の面とでドレインのリーク量(ステム部94と貫通孔73の間隙への浸水量)を比較すると、当該ドレインのリーク量はスラストワッシャー82の外側の面に比べて内側の面の方が少ないと考えられる。そのため、スラストワッシャー82の外側の面にシール構造を設けた本実施の形態によれば、特に顕著なドレイン漏洩抑制効果が得られる。
【0051】
なお、ガスタービン起動時および部分負荷運転時などをはじめてとして、可変静翼56の迎え角はステム部94を回転させることでしばしば変更されるため、スラストワッシャー82とシール部材92の摺動によってスラストワッシャー82の端面が磨耗して摺動性が損なわれることが懸念される。しかし、スラストワッシャー82の静翼台座81側の面は摺動性と耐磨耗性を考慮したコーティングが施されており、反対にケーシング内周面側の面はコーティングが施されていない。そのため、スラストワッシャー82のケーシング54の内周面側にシール部材92を配置しても、スラストワッシャー82のコーティング面には影響しないので、スラストワッシャー82の信頼性を維持することができると同時に、ドレイン発生を抑制することが可能になる。
【0052】
なお、シール部材92の材質としては、メタルシールのほか、摺動性を考慮した樹脂性のシール部材を用いても同様の効果が得られるが、その場合には、シール部材の長期信頼性を考慮して、定期的にシール部材を交換する必要がある。なお、可変静翼56は圧縮機1の上流段に位置するため、液滴を噴霧しないときの作動流体の温度も低温であるので樹脂性のシール部材でも適用可能である。
【0053】
次に、圧縮機1の内部の作動媒体の圧力による影響について説明する。通常、上記の迎え角の可変機構は、前段側の静翼(可変静翼56)だけでなく、IGV55にも適用されている。しかし、IGV55は、減速翼列である静翼と異なり、流れを加速して初段動翼に旋回を与える増速翼列であるため、IGV55の入出口では負圧になる。そして、動翼で流れに運動エネルギーを与えることで全圧が上昇し、その下流側の第1段静翼で流れを減速させて静圧が上昇する。このようにIGV55の近傍では負圧になるので、可変静翼56の場合とは反対に、ケーシング54の外部から貫通孔73を介して圧縮機1の内部に向かってリーク流れが発生する。なお、圧縮機1の内部に液滴を供給した場合、このリーク流れがドレイン流出に対するシール空気の役割を担うため、ドレインの発生を抑制することができる。すなわち、IGV55のスラストワッシャー(図示せず)に面するケーシング54の内周面には、ドレイン抑制のためのシール溝93およびシール部材92を設置する必要性はない。
【0054】
また、前段では段負荷が小さいため、圧縮機1の内部に液滴が供給される場合でも、液滴の噴霧量によっては第1段静翼の上下流でも負圧になることもある。その場合には、当該初段静翼のスラストワッシャー82に面するケーシング内周面にシール溝93およびシール部材92を適用する必要性は勿論ない。しかし、このような場合でも、当該第1段静翼より下流側に可変静翼列が存在する場合であって、当該可変静翼列によって作動流体が大気圧より高圧になるときには、当該可変静翼列に対して上記のシール溝93およびシール部材92を適用することが望ましい。このように、作動媒体の圧力がケーシング54の内周面の近傍で大気圧力より高圧になる部分にだけシール溝93およびシール部材92を適用すれば、部品点数を削減でき、コストを低減できる。さらに、シール部材は寿命によりガスタービンの保守期間に交換する必要があるため、部品点数の削減は保守費用の削減にも効果がある。
【0055】
また、先に述べたように、ドレインの発生は、重力の影響によりケーシング54の下半側の可変静翼56で顕著であるため、ケーシング54の下半側に位置する可変静翼56のみにシール溝93およびシール部材92を設置して、上半側にはこれらを設置しない構成を採用しても良い。
【0056】
さらに、シール部材92は、O型、C型、E型など様々な形状を適用することが可能である。作動媒体とケーシング54の外部との差圧を利用することでC型やE型を適用し、ドレインの流出に対するシール性能を向上することができる。
【0057】
また、IGV55では作動媒体が負圧になるため、ケーシング54の外部との差圧を利用してC型やE型のシール部材をIGV55に適用して、外部から圧縮機1の内部へ流入するリーク流れを抑制することも可能である。これによりリーク流れが圧縮機1の内部の流れに及ぼす影響を軽減でき、圧縮機1の性能を向上させることができる。
【0058】
次に、図4を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る圧縮機について説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係る圧縮機における可変静翼構造の断面図の概略図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略することがある(後の図も同様とする)。
【0059】
本実施の形態に係る圧縮機が図3の第1の実施の形態のものと異なる点は、スラストワッシャー82におけるロータ径方向の内側の面と、静翼台座81におけるロータ径方向の外側の面との間にシール構造を備える点である。本実施の形態では、静翼台座81におけるロータ径方向外側の面(スラストワッシャー82におけるロータ径方向の内側の面が対向する面)に対して、ステム部94の回転軸を中心軸とするリング状のシール溝93Aを設け、さらに、そのシール溝93A内に、静翼台座81とスラストワッシャー82の間隙からのドレインの流出を抑制できるシール部材92を配置している。
【0060】
シール溝93Aを、第1の実施の形態のようにケーシング54の内周面ではなく、静翼台座81に設けることは、シール溝93Aの加工性における利点がある。すなわち、ケーシング54の内周面にシール溝93を加工する場合には、鋳物でケーシング54を製造した後に、シール溝93を内周面に加工していくことになるが、各段の可変静翼56の枚数は数十枚以上(例えば、40から50枚程度)にも及ぶため、その全周に渡ってシール溝93を加工するには相当の加工期間を要する。一方、本実施の形態のように静翼台座81にシール溝93Aを加工する場合には、静翼一本ずつに加工できるため、静翼台座81にシール溝加工を追加することは容易である。したがって、加工コストを安価にすることができる。
【0061】
なお、本実施の形態の場合、スラストワッシャー82において静翼台座81側に位置する耐摩耗性のコーティング面がシール部材92と接触することになる。そのためシール部材92が磨耗により損傷するリスクが少なくなり、ドレインが発生するリスクも低減することができる。また、シール部材92とスラストワッシャー82の摺動部の摩擦も小さくすることができ、可変静翼の開度の精度を維持することが可能となる。
【0062】
また、図3および図4を用いて、第1および第2の実施の形態について説明したが、スラストワッシャー82におけるロータ径方向の内側の面と外側の面の両方にシール部材92を装着できるように、静翼台座81およびケーシング54の内周面の両方にシール溝93を設けることも可能である。
【0063】
さらに、第1および第2の実施の形態では静翼台座81とケーシング54の内周面の間にスラストワッシャー82を配置したが、スラストワッシャー82を介さずに、静翼台座81とケーシング54の内周面を直接的に摺動させ、当該摺動部にシール溝93とシール部材92を装着することでシール構造を構成することも可能である。
【0064】
また、第1の実施の形態に係るシール構造は、上半側のケーシング54のシール構造として利用することが好ましく、第2の実施の形態に係るシール構造は、下半側のケーシング54のシール構造として利用することが好ましい。これは、重力の影響により、上半側のケーシング54では、ケーシング54とスラストワッシャー82の間に隙間が形成され易く、反対に、下半側のケーシング54では、スラストワッシャー82と静翼台座81の間に隙間が形成され易いためである。
【0065】
次に、図5を用いて、本発明の第3の実施の形態に係る圧縮機について説明する。図5は本発明の第3の実施の形態に係る圧縮機における可変静翼構造の断面図の概略図である。本実施の形態に係る圧縮機が図3の第1の実施の形態のものと異なる点は、リング状のチューブ84を挟むように配置した2つのメタルブッシュ83のうちロータ径方向外側に位置するものの更に外側に位置するように、シール溝93Bとシール部材92Bを設置した点である。
【0066】
この図に示す圧縮機は、ステム部94の中心軸と同心の円盤をケーシング54の外周面上にくり抜いて形成した座ぐり溝(凹部)101と、ステム部94が挿入される孔を中心に有し、座ぐり溝101に嵌め込まれるリング状のフランジ部96と、フランジ部96における孔の周囲に設けられたリング状の座ぐり溝であるシール溝93Bと、シール溝93Bに収納され、ステム部94と接触するリング状のシール部材92Bを備えている。フランジ部96は、複数のボルト102によってケーシング54に締結されている。座ぐり溝101は、ケーシング54の外周面上に、ステム部94の周囲に位置するように設けられている。シール溝93Bは、フランジ部96がステム部94と相対摺動する部分に設けられている。
【0067】
図3図4に示した圧縮機においてシール部材92を交換する場合には、ケーシング54の内周側から可変静翼56,56Aを取り外さなければシール部材92にアクセスできないので、ケーシング54を分解・開放する必要がある。そのため、シール部材92の交換は、ガスタービンの定期検査時に制限されていた。しかし、本実施の形態のように構成することで、ケーシング54の外部からシール部材92Bを着脱することが可能になるので、シール部材92Bが磨耗により損傷した場合でも、ケーシング54を開放せずにシール部材92Bを交換することができ、保守性を向上することができる。
【0068】
上記で説明した各実施の形態によれば、吸気に液滴を噴霧する中間冷却効果を有する軸流圧縮機の可変静翼の摺動部から発生する液滴のリークを抑制でき、信頼性に優れた軸流圧縮機を提供することができる。
【0069】
なお、上記の実施の形態では、合計3つのシール構造のみを紹介したが、ステム部94(可変静翼56)の回動時にケーシング54に対して相対摺動される部材と、ケーシング54との摺動部であれば、上記3つの場合以外の場所にもシール構造を設けても良い。すなわち、例えば、ステム部94の外周にリング状のシール溝を設け、当該シール溝にシール部材を収納することでシール構造を構成しても良い。
【0070】
また、上記の各実施の形態では、吸気噴霧を利用するガスタービン用軸流圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明は産業用の軸流圧縮機にも広く適用可能である。
【0071】
ところで、吸気噴霧がなされない軸流圧縮機では、可変静翼は、通常、作動温度が低い圧縮機の上流段側に採用されているため、可変静翼機構からケーシング外にリークする作動流体は低温かつ微量と考えられ、機器信頼性への影響はないと考えられる。しかし、この種の圧縮機に対して本発明に係るシール構造を用いれば、圧縮機内部から外部への作動流体の漏れを抑制できるので、圧縮機の効率を向上できる可能性がある。
【0072】
また、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…圧縮機、2…燃焼器、3…タービン、4…発電機、5…回転軸、11…空気、12…高圧空気、13…燃料、14…高温燃焼ガス、15…排気ガス、31…吸気ダクト、32…噴霧ノズル、33…吸気プレナム、51…動翼列、52…ロータ、53…静翼列、54…ケーシング、55…入口案内翼、56…可変静翼、57…中間段動翼列、70…可変機構、71…可変機構、72…翼部、73…貫通孔、81…静翼台座、82…スラストワッシャー、83…メタルブッシュ、84…チューブ、85…薄板レバー、86…皿バネ、87…上ワッシャ、88…下ワッシャ、89…ボルト付ステム、90…ナット、91…コントロールリング、92…シール部材、93…シール溝、94…ステム部、96…フランジ部、98…ケーシング溝、101…座ぐり溝、102…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5