(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
観察物体の像を、虚像として拡大結像する接眼レンズ系は、従来から、ルーペや、顕微鏡等の種々の光学機器に広く用いられている。
また、内視鏡の「光ファイバ束による像伝送体」の対物側端面に結像させた観察対象部位の像を像伝送体の接眼側端面に伝送し、伝送された像を観察物体として、接眼レンズ系により虚像として拡大して観察することも行なわれている。
【0003】
液晶表示素子やEL表示素子等の「小型の画像表示素子」に2次元的に表示された画像を、接眼レンズ系により虚像として拡大して観察することも行なわれている。
【0004】
出願人は、先に、小型の画像表示素子に2次元的に表示された画像を、虚像として拡大して観察するのに適した接眼レンズ系を提案した(特許文献1)。
【0005】
虚像として拡大された像を以下において「拡大虚像」とも言う。
【0006】
接眼レンズ系を使用する場合、拡大虚像を、観察者が観察し易いことが重要である。
【0007】
小型の画像表示素子に2次元的に表示された画像を、虚像として拡大して観察する場合、虚像として拡大された画像を以下において「拡大画像」とも言う。
【0008】
拡大画像の拡大倍率は、一般に非常に大きい。
拡大画像が「動画」であるような場合、観察者の視線は、拡大画像の上を移動する。
【0009】
拡大画像の画角を大きくして結像倍率を大きくすると、拡大画像上で移動する視線の移動範囲も大きくなる。
【0010】
観察者の視線が拡大画像上を移動すると、観察者の眼球は「接眼レンズ系の光軸に対して偏心」する。
【0011】
接眼レンズ系の光軸に対する眼球の偏心の大きさを「偏心量」と言う。
【0012】
即ち、観察者の眼球の瞳の中心が接眼レンズ系の光軸上にあって、視線が光軸に合致している場合を「眼球の基準位置」とする。
【0013】
観察者が、この基準位置から眼球を動かして「視線を水平方向の左右」に向けた状態で、瞳の中心と接眼レンズ系の光軸との距離が「偏心量」である。
【0014】
偏心量が大きくなると、観察される拡大画像(以下「観察画像」とも言う。)の像質の劣化が生じる。
観察画像の像質が実用上劣化しないような偏心量の範囲を「許容偏心量」という。
【0015】
許容偏心量が狭いと、観察の容易さが損なわれる。
【0016】
従って、接眼レンズ系は「許容偏心量が大きい」ことが好ましい。
【0017】
特許文献1には、接眼レンズ系と画像表示素子との対を「左右の目に対してそれぞれ用いるヘッドマウント型の画像観察装置」が開示されている。
【0018】
このタイプのヘッドマウント型の画像観察装置を、以下「HMD(ヘッド・マウント・ディスプレィ)」と略記する。
【0019】
このようなHMDにおいては、観察者の瞳孔間距離(眼幅)と「左右の接眼レンズ系の間隔」のずれや、「瞳孔と接眼レンズ系の上下方向の位置のずれ」も偏心を発生させる。
【0020】
このような偏心によっても観察画像は劣化する。
HMDの装着時には、観察者の眼幅に応じて「左右の接眼レンズ系の間隔」を調整し、HMDの装着態位を調整する。
【0021】
このとき「左右の接眼レンズ系の間隔」や装着態位の調整が不十分な場合や、装着後に「ずれ」が生じたような場合にも観察画像の劣化が生じる。
【0022】
このため、偏心許容量が小さいと、HMDの装着の際の調整に高精度が要求され、装着時の調整が面倒であるし、装着後の「経時的なずれ」に対する調整も面倒である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態を説明する。
図1は、接眼レンズ系の実施の1形態を示す図である。
【0029】
図1に示す接眼レンズ系は、液晶表示素子や有機EL表示素子等の「画像表示素子」に表示される2次元画像を観察物体として観察するのに用いることを想定している。
【0030】
即ち、前記2次元画像を虚像として拡大結像させた「拡大画像」を観察する。
【0031】
図1において、図の左方を「画像表示素子側」即ち「物体側」とし、右方を「眼球側」即ち「観察側」とする。
【0032】
図1において、符号ISは「画像表示素子の画像表示面」を表す。画像は画像表示面ISに2次元画像として表示される。符号CGは「画像表示素子のカバーガラス」を示す。
【0033】
符号G1により「第1群」、符号G2により「第2群」を表す。
接眼レンズ系の設計上、「観察者の眼球が位置すべき光軸上の位置」と接眼レンズ系の最も観察者側のレンズ面との光軸上の距離を「アイレリーフ」と呼ぶが、前記接眼レンズ系の最も観察者側のレンズ面からアイレリーフの距離で光軸に直交する面の位置を「アイレリーフ位置」と呼ぶ。符号Eは、光軸上のアイレリーフ位置に位置する観察者の瞳を示し、この瞳における瞳径は、設計条件として定まる。符号Imは「結像面
(以下、単に「像面」ともいう。)」を示す。
接眼レンズ系を構成するレンズには、画像表示面IS側から観察側へ向かって「通し番号」を付し、レンズL1〜L6とする。
【0034】
図1に実施の形態を示す接眼レンズ系は、図示の如く、6枚のレンズL1〜L6で構成されている。
画像表示面IS側の2枚のレンズL2、L3は、負の屈折力の第1群G1を構成する。
【0035】
レンズL2は「画像表示面IS側の曲率の大きい両凹レンズ」、レンズL3は「両凸レンズ」で、これらレンズL2、L3は接合されて「接合レンズ」となっている。
【0036】
レンズL4〜L6は、正の屈折力の第2群G2を構成する。
レンズL4〜L6は共に正レンズである。
【0037】
即ち、レンズL4は「凸面を観察側に向けた正メニスカスレンズ」であり、レンズL5は「両凸レンズ」である。
【0038】
レンズL6は「凸面を観察側に向けた正メニスカスレンズ」である。
【0039】
なお、
図1においてレンズL6は、外観上「両凸レンズ」の如き形状であるが、近軸形状は「凸面を観察側に向けた正メニスカスレンズ」である。
【0040】
第1群G1の
画像表示面IS側に配置されたレンズL1は「凹面を物体側に向け、両面が非球面である正メニスカスレンズ」であり「像面湾曲補正用レンズ」である。
【0041】
像面湾曲補正用レンズL1は、第1群G1と第2群G2とによる像面湾曲を軽減し、結像面を平坦化する所謂「フィールドフラットナーレンズ」である。
【0042】
従って、像面湾曲補正用レンズL1自体のパワーは弱い。
【0043】
図1に示す如く、画像表示面ISに表示された2次元画像は、接眼レンズ系により像面Imの位置に結像する。
瞳Eの位置は像面Imよりも物体側にあり、従って、観察者が観察する拡大画像は「拡大された虚像」である。
【0044】
後述する像面湾曲は「像面Imの湾曲」である。
【0045】
この発明の接眼レンズ系は、前述の如く、水平画角が40度以上である。
【0046】
接眼レンズ系のアイレリーフ位置において、光軸(図1に符号AXで示す。)から、観察状態における左右方向において光軸直交方向に離れた「視点」を考える。
この視点と光軸との距離を偏心距離:±S(mm)と呼ぶ。偏心距離の「±」は、視点の位置が左右何れの方向にあるかを意味している。
偏心距離:±S=0mm、即ち、観察者の瞳が光軸上にあるときの「タンジェンシアル方向の像面湾曲を基準像面湾曲」として、偏心距離:±Smmに対する「タンジェンシアル方向の像面湾曲」の変化量をΔ
(mm)とする。
【0047】
以下に実施の形態を説明する接眼レンズ系では、タンジェンシアル方向の像面湾曲は、S=0に対して全像高領域において「0以上」である。
また、偏心
距離:±S(mm)に対する前記変化量:Δが「±Sと同符号」の全像面領域において、条件:
(1) −0.25< Δ/S <0
を満足し、且つ、「変化した像面湾曲が正となる連続した像高領域」が前記距離:±Sと同符号の全像面領域内に存在するときの|S|の最大値が3以上である。
【0048】
拡大画像を観察する場合、「観察者が見たいと思う拡大画像位置」に視線を向けたとき、この画像位置でピントが合わないと、観察画像が劣化し、良好な画像を見られない。
【0049】
拡大画像の周辺部に視線を向けるとき、
偏心距離:±Sの絶対値は大きくなる。
発明者は、
偏心距離と「観察画像の劣化」について研究を重ねた。
【0050】
その結果、観察画像の劣化が「
偏心距離により接眼レンズ系の像面湾曲が減少する」ことに起因するとの知見を得た。
【0051】
条件(1)におけるパラメータ:Δ/Sは、前記「像面湾曲の減少量」を
偏心距離:Sにより規格化したものである。
【0052】
「
偏心距離:Sによる像面湾曲の減少」で、問題となるのは「タンジェンシアル方向の像面湾曲」である。
【0053】
「サジタル方向の像面湾曲」は、一般に、タンジェンシアル方向の像面湾曲よりも小さく、
偏心距離:Sの増大に伴う減少量も小さいため、実際上度外視することができる。
【0054】
タンジェンシアル方向の像面湾曲の「正(+)領域」は、観察者にとって虚像であってピントを合わせることができ、良好な観察画像を観察できる。
【0055】
タンジェンシアル方向の像面湾曲が減少して「負(−)領域」になると、この領域は実像領域となり、観察者はピントを合わせることができない。
これが観察画像劣化の原因である。
【0056】
条件(1)は、
偏心距離:±Sに対する「タンジェンシアル方向の像面湾曲の変化:Δ」の比:Δ/Sの範囲を示している。
【0057】
条件(1)の上限は「0」である。上限の「0」を超えても、拡大像は虚像領域にあり、従って、観察者が目のピントを合わせることは可能である。
【0058】
しかし、像面湾曲が「+側に増大」すると、観察画像の像面が変化し、画像に歪みが生じて観察しにくくなる。従って、条件(1)の上限は「0」が良い。
【0059】
「拡大虚像を観測し易い水平画角」は40度以上であり、例えば、水平画角:40度〜45度の範囲が良い。
【0060】
一般に、水平画角が大きくなるに従い、条件(1)のパラメータ:Δ/Sは増大する。
【0061】
水平画角:40度以上の接眼レンズ系で、条件(1)の下限値の「−0.25」を超えると「
偏心距離の単位変化あたりの像面湾曲の減少量」が過大になる。
【0062】
このため、ピントの合った状態で観察画像を観察できる「許容偏心量」が小さくなり、観察の容易さが損なわれる。
【0063】
実施の形態の接眼レンズ系では、条件(1)を満足する
偏心距離:±Sの絶対値|S|の最大値が3mm以上で、偏心許容量が±3mmあるので、
偏心距離の絶対値が3mm以上でも観察の容易さが損なわれない。
【0064】
「Smmの偏心に対し、タンジェンシアル方向の像面が虚像領域に残っているか」どうかは、虚像を観測する接眼レンズ系における物体位置にもよる。
【0065】
実施の形態の接眼レンズ系は、このような「物体位置による条件」も含め、水平画角:40度以上の
条件で、タンジェンシアル方向の像面湾曲の変化量:Δmmが、
偏心距離が±3mm以上となる場合にも、
偏心距離と同符号の全ての像高領域において条件(1)を満足する。
【0066】
接眼レンズ系は、勿論、光学性能も良好であることが好ましい。
【0067】
この発明の接眼レンズ系は、光学性能を良好にし、かつ、軽量・コンパクト性も鑑み
て、
図1に示すようなレンズ構成で、以下の条件(2)、(3)を
満足する。
【0068】
(2) −5 <F1/F<
−3.3
(3) 0.5<F2/F< 3 。
【0069】
条件(2)、(3)で、Fは全系の焦点距離(>0)、F1は第1群の焦点距離(<0)、F2は第2群の焦点距離(>0)である。
【0070】
また、接眼レンズ系は、物体側がテレセントリックで
ある。また、アイレリーフは20mm以上確保されていることが好ましい。
【0071】
前述の如く、「アイレリーフ」は、観察者の瞳Eと、これに最も近いレンズ面(レンズL6の観察側面)との距離である。
【0072】
図1の実施の形態に示すように、「負の屈折力を有する第1群G1」は、観察物体からの光を「眼球側に向けて発散」させる作用を持つ。
【0073】
このような発散作用を第1群G1に持たせることにより、「小さい観察物体」を観察する場合でも画角を広げることができる。
【0074】
従って、観察物体を「広い画角の拡大虚像」として結像させることができ、拡大虚像を観察し易くなる。
【0075】
条件(2)のパラメータ:F1/Fの絶対値が小さいほど、第1群G1の負の屈折力は強く、物体光を眼球側に向けて発散させる効果は大きい。
【0076】
しかし、条件(2)の下限を超えると、上記発散効果が過剰となり、観察物体からの光束を眼球に向けて集光する第2群G2の「レンズ径」を大きくする必要が生じる。
【0077】
このため、接眼レンズ系が「全体として大型化」し易く、コストも高くなり易い。
【0078】
また、物体側のテレセントリック性確保が困難になる。
【0079】
条件(2)の上限を超えると、前記発散効果が不十分となる。
このため、観察し易い範囲として、例えば、水平画角:40度〜45度の範囲を実現しようとすると、第2群G2に大きな正の屈折力が必要となる。
【0080】
このため、第2群G2の正の屈折力の増大に伴い、種々の収差が発生し易く、その補正が困難となり易い。
【0081】
第2群G2は「正の屈折力」を有するから、第1群G1により発散傾向を与えられた光束を、眼球に向かって収束させる。
収差補正の観点から、第2群G2を「1枚の正レンズ」で構成することは困難であり、第2群に「2〜3枚の正レンズ」を用い、これらに収差補正機能を分散するのが良い。
【0082】
条件(3)のパラメータ:F2/Fが小さいほど、第2群G2の持つ「正の屈折力」は大きくなる。
【0083】
条件(3)の下限を超えると、正の屈折力が過剰となって大きな収差が発生し易く、収差補正が困難になり易い。
【0084】
条件(3)の上限を超えると、第2群G2の持つ「正の屈折力」が不足気味となり、接眼レンズ系と瞳Eとの間隔(前記「アイレリーフ」)が小さくなり易い。
【0085】
アイレリーフが小さい場合、水平画角が大きくなると、瞳の左右方向への「振れ角」が大きくなり、拡大画像を観察しづらくなる。
【0086】
このため、水平画角:40度〜45度を実現するのが困難になる。
【0087】
物体側がテレセントリックであることは、実施の形態に示した「画像表示素子に2次元的に表示された画像を観察物体」とする場合に好ましい。
【0088】
液晶表示素子や有機EL表示素子等の「画像表示素子」からの光は指向性を持つ。
【0089】
従って、接眼レンズ系の物体側をテレセントリックとすることにより画像表示素子からの光を、均一且つ十分に取り込むことができる。
【0090】
従って「画角によって観察画像の明るさや色が異なる問題」を有効に回避できる。
【0091】
また、接眼レンズ系を、後述する「ヘッドマウント型の画像観察装置」に用いるような場合、アイレリーフが小さいと、観察者の眼球と接眼レンズ系が近接する。
【0092】
従って、アイレリーフが小さ過ぎると、観察者に圧迫感を与え、観察者が疲れ易くなり、例えば「長時間の観察」が困難になりやすい。
【0093】
快適な画像観察を実現できるためには、アイレリーフは20mm以上確保されていることが好ましい。
【0094】
図6に、接眼レンズ系の使用の1態様として「接眼レンズ系を用いたヘッドマウント型の画像観察装置」の1形態を示す。
図6において、符号10は画像観察装置、符号20は観察者の頭部を示している。
【0095】
画像観察装置10は、その要部である1対の接眼レンズ系11L、11Rと画像表示素子12L、12Rがケーシング13内に所定の位置関係に収納されている。
そして、ケーシング13が観察者の頭部20に、バンドやフレーム等の適宜の装着手段により装着されるようになっている。
接眼レンズ系11L、画像表示素子12Lは「左眼用」であり、接眼レンズ11R、画像表示素子12Rは「右眼用」である。
接眼レンズ系11L、11Rとしては請求項1〜4の何れかに記載にもの、具体的には後述の実施例1に記載のものが用いられる。
【0096】
画像表示素子12L、12Rとしては、液晶表示素子やEL表示素子等が用いられる。
【0097】
画像表示素子12L、12Rに2次元画像として表示される画像が、接眼レンズ系11L、11Rに対する「観察物体」となる。
【0098】
画像表示素子12Lに表示される左眼用2次元画像と、画像表示素子12Rに表示される右眼用2次元画像とを所定の周期で切り替えることにより3次元画像を観察できる。
【実施例】
【0099】
以下、
図1に実施の形態を示した接眼レンズ系の具体的な実施例を挙げる。
【0100】
以下に挙げる実施例1において、「面番号」は、物体側から数えたレンズ面の番号であり、「R」は各レンズ面の曲率半径、「D」は「隣接レンズ面のレンズ面間距離」を表す。
【0101】
「N」はレンズ材質のd線の屈折率、「v」はアッベ数を示す。
【0102】
「非球面」は、以下の周知の式で表わされる。
【0103】
X=(H
2/R)/[1+{1−k(H/r)
2}
1/2]
+A・H
4+B・H
6+C・H
8+D・H
10+E・H
12+・・・
この式において、「X」は、面の頂点を基準としたときの光軸からの高さ:Hの位置での光軸方向の変位である。
【0104】
また、「k」は円錐係数、A〜E・・・は高次の非球面係数、「R」は近軸曲率半径である。なお、長さの元を持つ量の単位は「mm」である。
【0105】
「実施例1」
実施例1のレンズデータを表1に、非球面データを表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示すデータにおいて、例えば「-3.7E-06」は「-3.7×10
-6」を意味する。
【0109】
実施例1の接眼レンズ系において、
全系の焦点距離:F=18.9mm
第1群G1の焦点距離:F1=−63.2mm
第2群G2の焦点距離:F2=27.4mm
である。
従って、条件(2)のパラメータ:F1/F=−3.3、条件(3)のパラメータ:F2/F=1.4である。
【0110】
瞳Eの径(瞳径):4mm、アイレリーフ:25mm、観察画像の観察距離:20m、水平画角:45度である。
図2、
図3に、実施例1の接眼レンズ系に関する収差図を示す。
図2は縦収差、
図3は横収差を示す。
【0111】
これら収差図から明らかなように、実施例1の接眼レンズ系は、諸収差が良好に補正され、性能良好である。
【0112】
実施例1の接眼レンズ系は、
図6の画像観察装置に接眼レンズ系11L、11Rとして用いることができる。
【0113】
この場合、これら接眼レンズ径11L、11Rの光軸の成す「輻輳角」は、観察距離:20mの位置で観察画像が重なり合うように設定される。
【0114】
実施例1の接眼レンズ系は、瞳径を4mm(通常の瞳径の平均値)に等しくとり、軸上の解像度よりも、瞳のシフト・チルトによる観察画像の劣化の低減を重視している。
【0115】
図4は、実施例1における、
偏心距離によるタンジェンシアル方向の像面湾曲の変化を説明する図である。
【0116】
図4において、横軸は像高で、最大像高を1に規格化している。
縦軸は「デフォーカス」、即ち、像面湾曲量を「mm単位」で示している。
曲線4−1は、
図3の縦収差図の「像面湾曲・非点収差の図」における、タンジェンシアル方向の像面湾曲のうちで「538nmの波長の光に対する像面湾曲」を示す。
【0117】
曲線4−1は、538nmの光に対する「タンジェンシアル方向の像面湾曲」を、縦軸に対して対称的に示している。
【0118】
曲線4−2、4−3、4−4、4−5は、パラメータである偏心量:Sが+方向に、1mm、2mm、3mm、4mmずれた場合のタンジェンシアル方向の像面湾曲を示す。
【0119】
偏心距離:
+Sの増加に伴い、曲線4−2〜4−5で示す「タンジェンシアル方向の像面湾曲」が順次、縦軸の「マイナス側(実像領域側)」へ減少するのが分かる。
【0120】
S=0の場合の曲線4−1、S=1mmのときの曲線4−2では、殆ど全ての像高で像面湾曲は「+」で拡大画像は虚像領域にあり、良好にピントを合わせて観察できる。
【0121】
S=2mmのときの曲線4−3でも、+側の像高領域の0.15以上の像高で拡大画像は虚像領域にあり、良好にピントを合わせて観察できる。
【0122】
S=3mmのときの曲線4−4でも、+側の像高領域の
像高:0.4〜0.6の連続した領域で「拡大画像は虚像領域」にあり、良好にピントを合わせて観察できる。
【0123】
S=4mmのときの曲線4−5では、+側の像高の殆どの領域で拡大画像は「正の実像領域」にあり、良好なピント合わせはできない。
【0124】
従って、実施例1の接眼レンズ系は「±3mmの許容偏心量」をもつ。
【0125】
なお、偏心量:Sが+側のとき、観察者の視線は「拡大画像の右側」に向かうので、−側の像高の像面湾曲は問題とならない。
【0126】
偏心距離が−側のときには、
図4の各曲線4−1〜4−5を、縦軸を軸として反転した曲線になる。
【0127】
以下、比較例を挙げる。
【0128】
「比較例」
比較例の接眼レンズ系は、特許文献1に「実施例3」として記載されたものであり、構成レンズ枚数が5枚である点で、
図1の実施の形態のものとレンズ構成が異なる。
【0129】
比較例のレンズデータを表3に、非球面データを表4に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
比較例の接眼レンズ系において、
全系の焦点距離:F=18.9mm
第1群G1の焦点距離:F1=−55.0mm
第2群の焦点距離:F2=26.9mm
である。
従って、条件(2)のパラメータ:F1/F=−2.9、条件(3)のパラメータ:F2/F=1.4である。
【0133】
瞳Eの径:4mm、アイレリーフ:25mm、虚像の観察距離:20m、水平画角:45度である。
比較例の接眼レンズ系も、瞳径を「通常の瞳径の平均値」である4mmに等しくとり、軸上の解像度よりも、瞳のシフト・チルトによる観察画像の劣化の低減を重視している。
【0134】
また、比較例の接眼レンズ系の収差曲線は、特許文献1の
図7に示された如くであり、性能良好である。
【0135】
図5は、比較例における、偏心量:Sによるタンジェンシアル方向の像面湾曲の変化を説明する図で、
図4に倣って描いてある。
【0136】
曲線5−1は、波長:538nmの光に対するタンジェンシアル方向の像面湾曲を、縦軸に対して対称的に示している。
【0137】
曲線5−2、5−3、5−4、5−5は、パラメータである
偏心距離が+方向に、1mm、2mm、3mm、4mmずれた場合のタンジェンシアル方向の像面湾曲を示す。
【0138】
偏心距離の増加に伴い、曲線4−2〜4−5で示すタンジェンシアル方向の像面湾曲が、順次縦軸の「マイナス側(実像領域側)」へ減少するのが分かる。
【0139】
S=0の場合の曲線5−1、S=1mmのときの曲線5−2では、殆ど全ての像高で像面湾曲は「+」で拡大画像は虚像領域にあり、良好にピントを合わせて観察できる。
【0140】
S=2mmのときの曲線5−3でも、+側の像高領域の0.3以上の像高で拡大画像は虚像領域にあり、良好にピントを合わせて観察できる。
【0141】
S=3mmのときの曲線5−4、S=4mmのときの曲線5−5では、+側の
像高領域で拡大画像は「正の実像領域」にあり、良好なピント合わせはできない。
【0142】
従って、比較例の接眼レンズ系の「許容偏心量」は±2mmである。
【0143】
即ち、実施例1と比較例の接眼レンズ系は、共に性能良好であり、物体側にテレセントリックで、20mm以上のアイレリーフが確保されている。
【0144】
しかし、実施例1の接眼レンズ系は、比較例の接眼レンズよりも許容偏心量を±1mm拡大しており、実施例1の接眼レンズ系は、拡大画像を「より観察」し易い。
【0145】
実施例1および比較例の各接眼レンズ系における、
偏心距離:+S=1、2、3、4mmのときの像面位置、像面湾曲の変化:Δ、パラメータ:Δ/Sを
図7および
図8に示す。
【0146】
図7は、実施例1に関するもの、
図8は比較例に関するものである。最大像高を1に規格化された各像高は、0.0から1.0で、0.1刻みで示している。
【0147】
実施例1では、パラメータ:Δ/Sが、
偏心距離:
+S=0〜3まで、全ての像高で、条件(1)の範囲である。
【0148】
これに対し、比較例では、パラメータ:Δ/Sが、全ての像高で、条件(1)の範囲にあるのは、偏心
距離の絶対値:|S|=0〜2までである。