(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185797
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】気泡シート巻物
(51)【国際特許分類】
B65D 85/671 20060101AFI20170814BHJP
B65D 81/03 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B65D85/671
B65D81/03
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-186454(P2013-186454)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-51804(P2015-51804A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(72)【発明者】
【氏名】川上 肇
(72)【発明者】
【氏名】川上 由美子
(72)【発明者】
【氏名】木野 義晴
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−093217(JP,A)
【文献】
実開昭51−129551(JP,U)
【文献】
実開昭60−167796(JP,U)
【文献】
特開平11−216770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D85/671
B65D81/03
B65D81/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さで巻き取られた気泡シート部と、巻き取られた前記気泡シート部の最外周面に巻き取られるように前記気泡シート部の一端側に連接して形成された外装シート部と、巻き取られた前記気泡シート部の側面に取り付けられた側面保護シートとを備え、
前記気泡シート部よりも前記外装シート部の方が幅広となるようにして前記外装シート部の幅方向両端に形成された幅広部に、長手方向に沿って所定の間隔で切り込みを入れて複数の切り込み片を形成し、
前記気泡シート部の側面に沿うように前記切り込み片を折り曲げて、前記切り込み片を介して前記側面保護シートを取り付けたことを特徴とする気泡シート巻物。
【請求項2】
前記外装シート部に幅方向に延在する把持部形成領域を形成し、前記把持部形成領域を折り曲げることによって、前記外装シート部の幅方向に沿って突出する把持部を形成した請求項1に記載の気泡シート巻物。
【請求項3】
少なくとも前記把持部の基部において前記外装シート部を折り曲げて重ね合わされた部分を接着した請求項2に記載の気泡シート巻物。
【請求項4】
前記気泡シート部と前記外装シート部との間にミシン目を形成した請求項1〜3のいずれか一項に記載の気泡シート巻物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した多数の気泡を有する気泡シートがロール状に巻き取られた気泡シート巻物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の突起が形成されたキャップフィルムに、突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートは、例えば、多数の吸引キャビティが設けられた成形ロールの外周面に、溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて中空状に膨出する突起を真空成形してキャップフィルムとした後に、成形された突起の開口側にバックフィルムを積層するなどして製造することができる(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−216770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようにして製造される気泡シートの多くは、ロール状に巻き取られて市場に供給される。この際、異物の混入や、汚損、破損などを防ぐために、専用の収容袋を用意して、かかる収容袋に収納された状態で出荷されている。
しかしながら、専用の収容袋を用意するのは気泡シートの製造コストを下げる妨げになるため好ましくなく、また、気泡シートには幅寸法が約2.4mの長尺のものもあり、これを収納袋に収納する作業には煩雑な手間を要するというような問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ロール状に巻き取られた気泡シートを出荷するに際して、専用の収容袋に収容しなくても、異物の混入や、汚損、破損などから気泡シートを保護することができる気泡シート巻物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る気泡シート巻物は、所定の長さで巻き取られた気泡シート部と、巻き取られた前記気泡シート部の最外周面に巻き取られるように前記気泡シート部の一端側に連接して形成された外装シート部と、巻き取られた前記気泡シート部の側面に取り付けられた側面保護シートとを備え、前記気泡シート部よりも前記外装シート部の方が幅広となるようにして前記外装シート部の幅方向両端に形成された幅広部に、長手方向に沿って所定の間隔で切り込みを入れて複数の切り込み片を形成し、前記気泡シート部の側面に沿うように前記切り込み片を折り曲げて、前記切り込み片を介して前記側面保護シートを取り付けた構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロール状に巻き取られた気泡シートを専用の収容袋に収容しなくても、異物の混入や、汚損、破損などから気泡シートを保護することができ、その結果、製造コストの低減を図れるだけでなく、ロール状に巻き取られた気泡シートを収容袋に収容する作業を省略して生産性の向上をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る気泡シート巻物の概略を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る気泡シート巻物において、気泡シート部の一端側に連接して形成された外装シート部の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る気泡シート巻物における気泡シート部及び外装シート部の製造工程の一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る気泡シート巻物における気泡シート部の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る気泡シート巻物における気泡シート部の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る気泡シート巻物の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示す気泡シート巻物1は、所定の長さで巻き取られた気泡シート部2と、巻き取られた気泡シート部2の最外周面に外装材として巻き取られる外装シート部3と、巻き取られた気泡シート部2の側面に取り付けられた側面保護シート4とを備えている。
なお、
図1(a)は、本実施形態に係る気泡シート巻物を示し、
図1(b)は、巻き取られた気泡シート部2の最外周面に外装シート部3を巻き取ったものに、側面保護シート4を取り付ける前の状態を示す。
【0012】
気泡シート部2は、中空状に膨出する多数の突起21aが成形されたキャップフィルム21と、突起21a内に空気を封入してキャップフィルム21との間に独立した多数の気泡を形成するバックフィルム22とを少なくとも含み、これらを熱融着によって積層することによって形成される。
【0013】
また、外装シート部3は、突起21aが成形されていない平坦部をキャップフィルム21に設け、この平坦部にバックフィルム22が熱融着によって積層されて、気泡シート部2の一端側に連接して形成される。
なお、
図2に、気泡シート部2の一端側に連接して形成された外装シート部3の一例を示す。
【0014】
このような気泡シート部2及び外装シート部3を形成するには、例えば、
図3に示すように、まず、多数の吸引キャビティ101aが設けられた成形ロール101の外周面に、フラットダイ104からフィルム状に連続して繰り出される溶融樹脂21bを接触させて、中空状に膨出する多数の突起21aが成形されたキャップフィルム21を形成する。特に図示しないが、吸引キャビティ101aのそれぞれは真空ポンプにつながれており、吸引キャビティ101a内を真空吸引することによって突起21aが成形されるようになっている。これとともに、フラットダイ105から溶融樹脂を押し出してバックフィルム22を成形しつつ、これをキャップフィルム21に成形された突起21aの開口側に熱融着して、突起21a内に空気を封入することによって気泡シート部2を形成する。
【0015】
このようにして形成された気泡シート部2は、剥離ロール103によって成形ロール101から剥離されて、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。そして、気泡シート部2が所定の長さに形成された後に、吸引キャビティ101a内を真空吸引するのを停止して突起21aの成形を中断することによって、キャップフィルム21に突起21aが成形されない平坦部を形成しつつ、この平坦部にも引き続きバックフィルム22を熱融着する。これによって、気泡シート部2の一端側に連接する外装シート部3が形成される。
【0016】
気泡シート部2は、気泡シートとしての用途に供される製品部分であり、従前より知られている気泡シートと同様の構成とすることができる。例えば、気泡シート部2は、
図4に示すように、キャップフィルム21とバックフィルム22とからなる二層構造としてもよいが、
図5に示すように、突起21aの頂面側にライナーフィルム23を積層した三層構造としてもよい。気泡シート部2をこのような三層構造とする場合には、特に図示しないが、フラットダイから溶融樹脂を押し出してライナーフィルム23を成形しながら、突起21aの頂面側に熱融着によって積層するなどすればよく、外装シート部3もライナーフィルム23が積層された三層構造となる。
【0017】
キャップフィルム21、バックフィルム22、ライナーフィルム23に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体及びプロピレン−無水マレイン酸共重合体などのポリオレフィン系樹脂が挙げられ、好ましくは分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂である。これらのポリオレフィン系樹脂は、一種単独又は二種以上を混合して使用することができる。
【0018】
上記のようにして気泡シート部2と外装シート部3とを形成するに際し、製品としての気泡シート部2と、外装材としての外装シート部3との区別が容易となるように、両者の間には、幅方向に沿ってミシン目5を形成しておくのが好ましい(
図2参照)。このようにすることで、使用時に外装シート部3を気泡シート部2から分離して、気泡シート部2を気泡シートとしての用途に供することができる。
【0019】
また、気泡シート部2は、その幅方向両端の余剰部を切り取って製品として仕上げられるが、外装シート部3にあっては、その両端に余剰部を残しておくことで、気泡シート部2よりも外装シート部3の方が幅広となるようにする。外装シート部3の幅方向両端に残された余剰部からなる幅広部6には、長手方向に沿って所定の間隔で切り込み7を入れて、複数の切り込み片8を形成する。そして、巻き取られた気泡シート部2の表面に外装シート部3が巻き取られると、
図1(b)に示すように、巻き取られた気泡シート部2の側面に沿うように切り込み片8を折り曲げて、これを側面保護シート4の接着代として、巻き取られた気泡シート部2の両側面に当該切り込み片8を介して側面保護シート4を取り付けることができる(
図1(a)参照)。
【0020】
外装シート部3の幅方向両端に残された幅広部6に切り込み7を入れる間隔は特に限定されないが、形成された切り込み片8を巻き取られた気泡シート部2の側面に沿うように折り曲げたときに、切り込み片8にしわが生じない程度の間隔とするのが好ましい。すなわち、幅広部6をそのまま気泡シート部2の側面に沿うように折り曲げると、幅広部6にしわが生じて側面保護シート4の接着に支障を来してしまうが、幅広部6に切り込み7を入れて複数に分けられた切り込み片8を気泡シート部2の側面に沿うように折り曲げるようにすることで、そのような不具合を防止することができる。
【0021】
また、側面保護シート4は、巻き取られた気泡シート部2の側面を保護する保護部材として取り付けられるものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂シートを巻き取られた気泡シート部2の側面の大きさに合せて裁断したものを用いることができる。
【0022】
このようにすることで、本実施形態の気泡シート巻物1は、巻き取られた気泡シート部2が、外装シート部3と側面保護シート4とによって覆われて、異物の混入や、汚損、破損などから保護されている。このため、出荷に際して専用の収納袋を用意する必要もなく、製造コストの低減を図ることができるとともに、ロール状に巻き取られた気泡シートを収容袋に収容する作業を省略して生産性の向上をも図ることができる。
【0023】
また、外装シート部3の長さは、巻き取られた気泡シート部2の周長以上の長さとして、巻き取られた気泡シート部2の全周を覆うようにするが、幅方向に延在する山折り部9aと、その両側に平行に延在する二つの谷折り部9bとからなる把持部形成領域9を一つ以上(図示する例では二つ)形成するのが好ましい。
【0024】
このような把持部形成領域9を形成することで、外装シート部3を巻き取られた気泡シート部2の表面に巻き取る際に、外装シート部3を山折り部9aで山折りにするとともに、谷折り部9bで谷折りにすることによって、外装シート部3の幅方向に沿って突出する把持部10を形成することができる。かかる把持部10を形成することで、気泡シート巻物1を持ち運び易くすることができるが、少なくとも把持部10の基部において外装シート部3を折り曲げて重ね合わされた部分をヒートシールするなどして接着し、把持部10を形成する外装シート部3の重ね合わされた部分が離れてしまわないようにするのが好ましい。
【0025】
なお、
図1に示す例では、二つの把持部10対称に設けているが、外装シート部3に形成する把持部10の数は一つでもよく、三つ以上でもよい。気泡シート巻物1の大きさに応じて、持ち運びやすさを考慮して適宜変更することができる。
【0026】
また、このような把持部10を形成するにあたり、把持部形成領域9の幅方向両端に形成された切り込み片8も一緒に山折りされてしまうと、巻き取られた気泡シート部2の側面に沿うように折り曲げ難くなるだけでなく、当該側面から突出して側面保護シート4を取り付ける妨げにもなってしまう。このため、把持部形成領域9の幅方向両端側には、図示するようなスリット9cを長手方向に沿って形成して、把持部形成領域9の幅方向両端に形成された切り込み片8も一緒に山折りされないようにするのが好ましい。
【0027】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、気泡シートがロール状に巻き取られた気泡シート巻物を、異物の混入や、汚損、破損などから保護する技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 気泡シート巻物
2 気泡シート部
3 外装シート部
4 側面保護シート
5 ミシン目
6 幅広部
7 切り込み
8 切り込み片
9 把持部形成領域
10 把持部