(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように媒体にフォログラムを印刷しておくと、偽造防止の面で一定の効果が得られるが、フォログラムを用いる場合、一般的には、人間が目で見て真贋判定を行うため、作業効率が悪く、判定精度にバラつきがあるという問題がある。また、このような問題は、真贋判定に限らず、媒体の判別を人間の感覚で行おうとする様々なケースで生じ得る。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、印刷媒体の判定がより自動的に且つより正確に行われやすい判定システム
及び判定装
置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
印刷媒体と、前記印刷媒体を判定する判定装置と、を備え、
前記印刷媒体の特定領域は、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも二層以上重ねられた構成となっており、
前記判定装置は、
特定波長の照明光を照射する照明部と、
前記照明部から前記印刷媒体に対して前記照明光が照射された場合に当該印刷媒体からの光を受光する受光部と、
前記照明光が前記印刷媒体に照射されて生じる当該印刷媒体からの光を前記受光部が受光した受光結果に基づき、前記特定領域での反射率又は前記特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記検出値に基づいて前記印刷媒体の種別を判定する判定部と、
を有
し、
前記印刷媒体には、前記特定領域が存在する範囲を示す位置マークが形成されて、
前記印刷媒体は、基材層を備えており、
前記特定波長の前記照明光が照射された場合の、前記特定領域外の前記基材層の配置領域での光の反射率と前記位置マークが付された領域での光の反射率との差が、前記特定領域での光の反射率と前記特定領域外の前記基材層の配置領域での光の反射率との差よりも大きい所定差以上となるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、
情報コードが印刷された印刷媒体と、
前記印刷媒体を判定する判定装置と、
を備え、
前記情報コード内の特定領域には、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも設けられ、
前記判定装置は、
特定波長の照明光を照射する照明部と、
前記照明部から前記印刷媒体に対して前記照明光が照射された場合に、少なくとも前記情報コードからの光を受光して前記情報コードの撮像画像を生成する受光部と、
前記受光部での反射光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読部と、
前記照明光が前記印刷媒体に照射されて生じる当該印刷媒体からの光を前記受光部が受光した受光結果に基づき、前記特定領域での反射率又は前記特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記検出値に基づいて前記印刷媒体の種別を判定する判定部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
第
3の発明は、
情報コードが印刷され、前記情報コード内の特定領域に、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも設けられてなる印刷媒体を判定対象とし、
特定波長の照明光を照射する照明部と、
前記照明部から前記印刷媒体に対して前記照明光が照射された場合に、少なくとも前記情報コードからの光を受光して前記情報コードの撮像画像を生成する受光部と、
前記受光部での反射光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読部と、
前記照明光が前記印刷媒体に照射されて生じる当該印刷媒体からの光を前記受光部が受光した受光結果に基づき、前記特定領域での反射率又は前記特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記検出値に基づいて前記印刷媒体の種別を判定する判定部と、
を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0011】
例えば、特許文献1の技術では、基材上に単層の偽造防止インキを設けた偽造防止ステッカーを用いている。そして、偽造判定の際には、撮像された偽造防止ステッカーの撮像画像内に偽造防止インキによる形状が見えるか否かによって判定を行っている。しかしながら、このような単層構成では、偽造防止インキの特性と同等の特性を有するインキが製造されやすいという問題がある。また、このように偽造防止インキの形状を目視で確認する方法では、判定作業を行う作業者の負担が大きく、判定にばらつきが生じやすいという問題もある。
一方、請求項1の発明では、印刷媒体の特定領域は、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも二層以上重ねられた構成となっている。このように、印刷媒体の特定領域に、特殊な層(照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層)が少なくとも二層以上重ねられた構成となっているため、判定対象となる特定領域の特性を複雑化することができる。従って、特定領域の内容を知らない第三者が特定領域を再現することが難しくなり、印刷媒体の偽造をより困難にすることができる。
更に、判定装置では、特定波長の照明光が印刷媒体に照射されて生じる光を受光部が受光した受光結果に基づき、特定領域での反射率又は特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出し、その検出値に基づいて印刷媒体の種別を判定する構成となっている。つまり、特殊な層が重ねられた特定領域からの光の状態をセンサによって検出し、その検出で得られた具体的な数値に基づいて印刷媒体の判定を自動的に行うことができるため、判定に伴う作業負荷をより抑えることができ、且つより正確な判定が可能となる。
【0013】
特に、印刷媒体に、特定領域が存在する範囲を示す位置マークが形成されている。この構成によれば、位置マークを利用して特定領域をより正確に把握しやすくなり、ひいては判定の精度も高まる。
【0014】
さらに、印刷媒体が基材層を備えており、特定波長の照明光が照射された場合の、特定領域外の基材層の配置領域での光の反射率と位置マークが付された領域での光の反射率との差が、特定領域での光の反射率と特定領域外の基材層の配置領域での光の反射率との差よりも大きい所定差以上となるように構成されている。
このように、特定波長の照明光が照射されたときの特定領域外の基材層配置領域での反射率と位置マークが付された領域での反射率との差が、特定領域での差よりもある程度大きくなるように印刷媒体を構成しておけば、基材層配置領域での反射状態と位置マークでの反射状態との差を利用して位置マークが付された領域をより正確に認識しやすくなる。
なお、「特定領域外の基材層の配置領域」は、特定領域外において基材層が露出する領域であってもよく、特定領域外において基材層と他の一層(照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層)が重なった領域であってもよい。
【0015】
請求項
2の発明では、印刷媒体が基材層を備えており、検出部は、照明光が印刷媒体で反射して生じる光を受光部が受光した受光結果に基づき、特定領域外において基材層が配置される所定領域での反射率又は所定領域からの光の光量の少なくともいずれかを比較値として検出し、判定部は、検出値と比較値とに基づいて印刷媒体の種別を判定する。
このように、特定領域外の所定領域から得られた比較値と特定領域から得られた検出値との相対的な関係に基づいて印刷媒体の種別を判定すれば、照明の照度のばらつき或いは検出部のばらつきを抑えた判定が可能となる。なお、「特定領域外において基材層が配置される所定領域」は、特定領域外において基材層が露出する領域であってもよく、特定領域外において基材層と他の一層(照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層)が重なった領域であってもよい。
【0016】
請求項
3の発明では、印刷媒体に情報コードが形成され、情報コードの少なくとも一部が特定領域として構成されており、受光部は、照明部から印刷媒体に対して照明光が照射された場合に、少なくとも情報コードからの光を受光して情報コードの撮像画像を生成し、判定装置は、受光部での受光結果に基づいて情報コードを解読する解読部を備えている。このようにすることで、情報コードの基本的機能は確保しつつ、情報コードを形成する層を印刷媒体の判定に利用することができる。
【0017】
請求項
4の発明は、情報コード内の特定領域に、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも設けられている。そして、判定装置は、照明光が印刷媒体に照射されて生じる当該印刷媒体からの光を受光部が受光した受光結果に基づき、特定領域での反射率又は特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出し、その検出された検出値に基づいて印刷媒体の種別を判定する構成となっている。
この構成によれば、情報コードの基本的機能は確保しつつ、情報コードを形成する層を印刷媒体の判定に利用することができる。更に、情報コードの特定領域からの光の状態をセンサによって検出し、その検出で得られた具体的な数値に基づいて印刷媒体の判定を自動的に行うことができるため、判定に伴う作業負荷をより抑えることができ、且つより正確な判定が可能となる。
【0018】
請求項
5の発明は、情報コードが予め定められた形状の特定パターンを備えており、特定パターンの少なくとも一部が特定領域として構成されている。この構成によれば、一定形状の特定パターンを検出することで特定領域の位置を特定又は絞り込むことができるため、判定に利用する特定領域の位置をより把握しやすくなる。
【0019】
請求項
6の発明は、検出部が、受光部によって生成された情報コードの撮像画像において特定パターンの位置を検出する第1位置検出部と、第1位置検出部によって検出された特定パターンの位置に基づき、撮像画像における特定パターンの領域内での特定領域の位置を検出する第2位置検出部とを有している。この構成によれば、第1位置検出部によって特定パターンの位置を検出した上で、更に第2位置検出部により特定パターン領域内における特定領域の相対位置を検出することができるため、特定領域をより一層正確に且つ迅速に特定しやすくなる。
【0020】
請求項
7の発明では、情報コードは、複数種類のセルが配列されてなるものであり、少なくともいずれかの種類のセルの少なくとも一部が特定領域として構成されている。この構成では、いずれかの種類のセルを、データ記録以外の用途で利用することができる。また、情報コード解読時に行われるセル位置の検出処理の少なくとも一部処理を、特定領域の検出に利用することができるため、処理効率を高めやすく、処理の遅延を抑制しやすくなる。
【0021】
請求項
8の発明では、情報コードには、判定装置で利用可能な情報として、検出値の基準となる基準値又は基準範囲を特定する基準情報が記録されており、判定装置において、解読部は、情報コードから基準情報を解読し、判定部は、解読部によって解読された基準情報と、検出部によって検出された検出値とに基づいて印刷媒体の種別を判定する。
この構成では、印刷媒体の種別の判定に用いる基準情報が前もって情報コードに記録されるため、このような基準情報が予め用意されていない判定装置でも基準情報に基づく判定が可能となる。
【0022】
請求項
9の発明では、情報コードには、判定装置で利用可能な情報として、特定波長を特定する情報が記録されており、判定装置において、解読部は、情報コードから特定波長を特定する情報を解読し、照明部は、複数の波長の光を照射可能に構成され、解読部によって解読された情報に基づいて特定波長を選択し、当該特定波長の照明光を照射する。
この構成では、判定に際して必要となる「特定波長」を判定装置が予め把握していなくても、情報コードの解読によって把握することが可能となる。
【0023】
請求項
10の発明では、情報コードには、判定装置で利用可能な情報として、特定領域の位置を示す情報が記録されている。そして、判定装置において、検出部は、解読部によって解読された情報に基づき、受光部で生成された情報コードの撮像画像内での特定領域の位置を検出し、その検出された特定領域での反射率又は特定領域からの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出する。
この構成では、情報コードで定められた特定領域の位置を判定装置が予め把握していなくても、情報コードの読み取りによって特定領域の位置をより正確に特定することができる。また、運用において特定領域の位置を変更したければ、情報コードの内容を変更すれば良く、特定領域の位置を適宜変更するセキュリティ性の高い運用を容易に行いやすくなる。
【0024】
請求項
11の発明では、情報コードには、判定装置で利用可能な情報が暗号化されて暗号データとして記録されており、判定装置の解読部は、暗号データの暗号を解読する暗号解読部を有する。この構成では、印刷媒体の判定に利用する情報を秘匿化して格納しておくことができるため、判定に用いる重要な情報を扱う上で、セキュリティ面が強化される。
【0025】
請求項
12の発明では、情報コードは、少なくとも判定装置で利用可能な情報が所定の暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録される非開示データ領域と、暗号化キーによる暗号化がなされていない所定情報が記録された開示データ領域と、を有する。
このようにすることで、判定に用いる重要な情報のセキュリティ性を高めると共に、相対的にセキュリティ性が低い情報をも使い分けることができ、データを利用する上での自由度が一層高まる。
【0026】
請求項
13の発明では、検出部は、特定領域の複数位置での検出値を検出し、且つそれら複数位置での検出値のメディアン値を求め、判定部は、メディアン値に基づいて、印刷媒体の種別を判定する。
このように複数位置から得られた検出値のメディアン値を判定に用いることで、汚れの影響を抑えた判定が可能となる。
【0027】
請求項
14の発明は、印刷媒体は、特定領域が所定形状で構成されており、判定装置は、受光部で生成された画像から特定領域の形状を認識する形状認識部を備え、判定部は、形状認識部によって認識された形状と、検出部によって検出された検出値とに基づいて印刷媒体の種別を判定する。
このように、特定領域での反射率又は特定領域からの光の光量だけでなく、特定領域の形状をも加味して判定を行えば、より多くの要素を考慮したより正確性の高い判定が可能となる。
【0028】
請求項16の発明では、判定部は、検出部によって検出された検出値が所定範囲内であるか否かに基づいて印刷媒体の真贋を判定する。このように、特定領域での検出で得られた具体的な数値を明確な数値範囲と比較して真贋を判定することで、ばらつきの少ないより正確な真贋判定が可能となる。
請求項
17の発明では、照明部は、照明光として所定の複数波長の光をそれぞれ照射可能とされており、受光部は、照明部から印刷媒体に対して複数波長の照明光がそれぞれ照射された場合に、それら各波長の照明光が印刷媒体に照射されて生じる光をそれぞれ受光し、検出部は、各波長の照明光が印刷媒体に照射されたときの特定領域での検出値をそれぞれ検出し、判定部は、各波長の照明光が印刷媒体に照射されたときに検出部でそれぞれ得られる検出値に基づいて印刷媒体の種別を判定する。
この構成では、複数波長の光による複数の結果によって特定領域を評価することができるため、より正確性の高い判定が可能となる。また、このような判定に適応し得る媒体を第三者が偽造することは非常に困難になる。
【0029】
請求項
15の発明では、照明部が、照明光として、所定の第1波長の光、第1波長よりも小さい1又は複数の第2波長の光、第1波長よりも大きい1又は複数の第3波長の光をそれぞれ照射可能とされている。そして、印刷媒体は、第1波長の光、1又は複数の第2波長の光、1又は複数の第3波長の光がそれぞれ照射された場合の特定領域での各反射率のうち、第1波長の光が照射されたときの反射率が最も大きく又は最も小さくなるように構成されている。そして、検出部は、印刷媒体に対し第1波長の光、1又は複数の第2波長の光、1又は複数の第3波長の光がそれぞれ照射された場合に、それぞれの光での検出値を検出し、判定部は、検出部で検出される複数の検出値において、第1波長の光での検出値が最大値又は最小値であるか否かに基づいて印刷媒体の種別を判定する。
特定領域での反射率と波長との関係をグラフ化した反射率特性曲線は、特定領域の層の厚さによって全体的に低い反射率或いは高い反射率にシフトする懸念があり、特定領域を印刷する際の印刷工程で厚さがばらつくと、反射率特性曲線がシフトしてばらついてしまう懸念がある。
これに対し、請求項
15の発明では、印刷媒体に対し第1波長の光、第2波長の光、第3波長の光がそれぞれ照射された場合に、それぞれの光での検出値を検出し、それら検出される複数の検出値において、第1波長の光での検出値が最大値又は最小値であるか否かに基づいて印刷媒体の種別を判定している。印刷媒体の特定領域は、第1波長の光が照射されたときの反射率が最も大きく又は最も小さくなるように構成されているため、仮に印刷工程で特定領域の層の厚さがばらついても、第1波長の光が照射されたときの反射率が最も大きく又は最も小さくなるという関係は維持されやすい。従って、第1波長の光での検出値が最大値又は最小値であるか否かに基づいて印刷媒体の種別を判定すれば、厚さがばらついた場合でも特定領域に正規の層が配置されているかをより正確に判定しやすく、一層正確な媒体判定が可能となる。
【0030】
請求項
18の発明によれば、請求項
4と同様の効果を奏する判定装置を実現できる
。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す判定システム1(以下、単にシステム1ともいう)は、印刷媒体100と、判定装置3とを備えており、印刷媒体100からの光を判定装置3で受光して判定するシステムとして構成されている。
【0034】
(印刷媒体)
まず、印刷媒体100について説明する。
図2(A)、
図2(B)に示すように、印刷媒体100は、所定の厚さのシート状或いは板状の基材層104に識別マーク110が印刷された構成となっている。そして、この識別マーク110内の一部が、判定装置3によって反射状態が検出されるべき特定領域ARとして構成されている。なお、
図2に示す基材層104はあくまで一例であり、基材層104の平面形状や厚さ、材質、表面色などは様々に選択できる。また、
図2に示す第1インク層114、第2インク層116、第3インク層112は、あくまで概念的に示すものであり、層の厚さや形状は様々に選択できる。例えば、紙、樹脂シート、金属シートなどとして構成された基材層104の厚さよりも大幅に厚さが小さくなるように第1インク層114、第2インク層116、第3インク層112を形成してもよい。
【0035】
ここで、識別マークを構成するインク等について説明する。本構成では、識別マーク110を形成するために、異なる三種類のインク(第1のインク、第2のインク、第3のインク)が用いられており、これら三種類のインクは、顔料の構成及び配合比率の少なくともいずれかが互いに異なっている。第1のインクによる第1インク層114は、特定領域ARにおいて基材層104上の第1層101を構成しており、この第1層101によって表示される図形は円形図形となっている。第2のインクによる第2インク層116は、第1インクによる層114を覆う層、又は第3インクによる層112を覆う層、若しくは、これらの層114、112を覆わずに基材層104上に配置される層として構成されている。この第2のインクによる第2インク層116において、第1層101上を覆う領域は、特定領域ARにおいて第1層114上に重なる第2層102として機能する。
【0036】
そして、これら第1のインク、第2のインク、第3のインクは、各波長の光を照射したときの透過率の特性(各波長の光を当てたときの波長と透過率との関係)がいずれも異なっており、これに関係して、各波長の光を照射したときの反射率の特性(各波長の光を当てたときの波長と反射率との関係)がいずれも異なっている。各インクの反射率の特性は例えば
図3のようになっている。
【0037】
例えば、第1のインクは、各波長の光を当てたときの波長と反射率との関係が
図3の二点鎖線X1のようになっており、第2のインクは、各波長の光を当てたときの波長と反射率との関係が
図3の実線X2のようになっており、第3のインクは、各波長の光を当てたときの波長と反射率との関係が
図3の実線X3のようになっている。第1のインク、第2のインク、第3のインクをX1、X2、X3のような特性にするには、顔料の選定や顔料の配合比率の調整によって行えばよい。なお、
図3での曲線X1、X2、X3は、インク層の厚さを同一の所定厚さとした場合において同一の所定基材を用いた場合のインク層からの反射率の一例である。また、曲線X4は、X1の特性の第1インクの層とX2の特性の第2インクの層を重ねた積層領域において、各波長の光を当てたときの波長と反射率との関係が示すグラフである。この曲線X4は、曲線X1、X2、X3の場合と同一の所定基材を用いた場合のインク層からの反射率の一例である。
【0038】
例えば、
図3のX1の特性となるように公知の1又は複数の特定顔料を選定し顔料の配合比率を調整することで第1のインクを得ることができる。第1のインクは、波長が380〜810nmの可視光が照射されたときの反射率が50%以下と小さく、波長が850nm以上の赤外光が照射されたときの反射率が80%以上と大きくなっている。
【0039】
同様に、
図3のX2の特性となるように公知の1又は複数の特定顔料を選定し顔料の配合比率を調整することで第2のインクを得ることができる。第2のインクは、例えば波長が550nm〜810nmの可視光が照射されたときの反射率が40%以下と大きく、例えば波長が850nm以上1000nm以下の赤外光が照射されたときの反射率が40%以下と小さくなっている。
【0040】
同様に、
図3のX3の特性となるように公知の1又は複数の特定顔料を選定し顔料の配合比率を調整することで第3のインクを得ることができる。第3のインクは、例えば波長が300nm〜1250nmの光が照射されたときの反射率が10%以下と小さくなっている。
【0041】
そして、
図2に示す特定領域ARは、第1のインクによるインク層(第1層101)と第2のインクによるインク層(第2層102)とが基材層104上に重ねられた構成となっている。第1のインクと第2のインクとが重ねられた層の特性は、
図3のX4のようになっている。この特定領域AR1の積層領域では、例えば波長が800nm以下の可視光が照射されたときの反射率が30%以下と小さく、波長が810nm程度の光が照射されたときの反射率が33%程度となっている。また、波長が850nm以上1000nm以下の赤外光が照射されたときの反射率が30%未満と小さくなっており、この波長領域では、波長930nm程度のときに反射率が22%程度と最少となっている。このように、第1のインクと第2のインクとが重ねられた層は、波長が850nm以上1000nm以下の赤外光が照射されたときの反射率よりも、それより小さい810nm程度の波長の可視光が照射されたときの反射率のほうが大きく、更に、波長が810nm程度の可視光が照射されたときの反射率よりも、それより小さい波長が800nm以下の可視光が照射されたときの反射率のほうが小さくなっており、より複雑な反射率特性となっている。
【0042】
一般的に、物体に光を当てると、一部は物体で反射する反射光となり、一部は物体を透過する透過光となり、一部は物体に吸収され熱等に変換される。
図4のように、インクA(第2のインク)と、インクB(第1のインク)を2重に重ねて印刷した特定領域ARに波長λの照明光を照射したときの特定領域AR全体での反射率r(λ)は、照射光がインクAの上面(第2層102の上面)で反射したときの反射率r1、インクBの上面(第1層101の上面)で反射したときの反射率r2、基材層104の上面で反射したときの反射率r3を加算した値になる。インクAでの反射率をra(λ)、透過率をta(λ)とし、インクBでの反射率をrb(λ)、透過率tb(λ)とし、基材層104の上面での反射率をRとした場合、インクA、Bを2重に重ねた反射率は以下の数1のように求めることができる。
【0044】
このように識別マーク110内の特定領域ARでの反射率は、照射される波長により透過率が変化する第1インクの層(第1層101)の反射率及び透過率と、照射される波長により透過率が変化する第2インクの層(第2層102)での反射率及び透過率と、基材層104での反射率とが影響する。そして、各波長における特定領域ARでの反射率は、各波長での第1層101、第2層102の特性(特に各波長に応じた透過率特性或いは各波長に応じた吸収率特性)を反映した値になる。従って、特定領域ARに対し「特定波長」の光が照射された場合には、この特定領域ARでは、予め定められた反射率(特定波長での第1層101、第2層102の透過率特性を反映した反射率)で反射光が生じることになる。なお、「特定波長」は、後述する判定装置3での判定の際に、照明光として用いられる波長である。
【0045】
図2の例では、印刷媒体100の基材層104上に、上述の第1インクによる第1インク層114(第1層101)が円形図形として印刷されており、この円形図形が表示された領域が特定領域ARとなっている。そして、基材層104の上面の方向において円形図形として形成された第1インク層114を囲む構成で、上述の第3インクによる第3インク層112が印刷されている。この第3インク層112は、特定領域ARが存在する範囲を示す円環状の位置マークとして表示されている。
図2(A)の例では、第3インク層112による位置マークは、例えば、第1インク層114の周囲を囲むように周方向全体にわたって切れ目なく連続した環状図形となっている。但し、位置マークの図形はこの例に限られるものではなく、特定領域ARの範囲を示す図形であればよい。例えば、第1インク層114の周囲を囲むように周方向全体にわたって断続的に続く環状図形であってもよい。また、形状も、円環状に限られず、四角枠状、三角枠状等の多角形枠状であってもよい。
【0046】
また、本構成では、「特定波長」の照明光が照射された場合の、特定領域AR外の基材層104の配置領域(具体的には、第1インク層114、第2インク層116、第3インク層112がいずれも設けられていない領域)での光の反射率と位置マーク(第3インク層112)が付された領域での光の反射率との差が所定差以上となるように構成されている。例えば、基材層104の基材色が白色、黄色等の白系統であり、基材層104での「特定波長」の照明光の反射率が100%に近い場合、位置マーク(第3インク層112)が付された領域での反射率は0%に近くするとよい。この場合、第3インク層112のインクは、
図3のX3のように広い波長範囲で反射率が非常に小さくなるインクを用いるとよい。なお、
図2の例では、第3インク層112による位置マークが第2インク層116によって覆われる例を示しているが、第3インク層112による位置マークは、第2インク層116によって覆われていなくてもよい。逆に、基材層104の基材色が黒色、濃いグレー等の黒系統であり、基材層104での「特定波長」の照明光の反射率が0%に近い場合、位置マーク(第3インク層112)が付された領域での反射率は100%に近くするとよい。
【0047】
(判定装置)
次に、判定装置3のハードウェア構成について、
図1等を参照して説明する。
図1に示すように、判定装置3は、主に、カメラ部10と、照明部20と、認識部30とによって構成されており、照明部20により印刷媒体100(判定対象ラベル)に照明光を照射しつつ、カメラ部10によってその印刷媒体100を撮像しうる構成となっている。そして、カメラ部10によって生成された撮像画像の電気信号は、認識部30によって処理され、所定の判定処理が行われるようになっている。なお、これらの部品は、例えば図略のプリント配線板に実装あるいは図略のハウジング内に内装されている。判定装置3は、携帯型の端末として構成されていてもよく、据置型の装置として構成されていてもよい。或いは、携帯方式と据置方式を併用できる構成であってもよい。
【0048】
カメラ部10は、主に、レンズ11、受光センサ12(光学的センサ)、増幅器13、センサ駆動回路14を備えている。レンズ11は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ12の受光面aに像を結像可能な結像光学系として機能するもので、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとにより構成されている。受光センサ12は、印刷媒体100に照射されて反射した反射光を受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を2次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。受光センサ12は、レンズ11を介して入射する入射光をこの受光面で受光可能となるように、例えば図略のプリント配線板に実装されている。この受光センサ12では、各受光素子(各画素)での受光量を示す電気信号がそれぞれ出力されるようになっている。増幅器13は、受光センサ12で生成された受光信号を増幅する機能を有する。また、センサ駆動回路14は、受光センサ12を公知の駆動方式で駆動し、受光センサ12を構成する各画素からの信号を順次出力させる回路である。
【0049】
照明部20は、照明光を発光可能な照明光源として機能するものである。
図1の例では、4種類の光源(LED21a,21b,21c,21d)によって照明部20が構成されており、各光源からは異なる波長の照明光が個別に照射可能な構成となっている。なお、
図1の例では、4種類の光源を例示しているが、光源の種類(照射可能な波長の数)は4以上であってもよく、4以下であってもよい。また、各種類の光源は、単一のLEDで構成されていてもよく、同種の複数のLEDによって構成されていてもよい。
【0050】
認識部30は、A/D変換器31、画像取り込み部32、メモリ33、制御回路(マイコン)34、照明駆動回路35、電源部36、電源回路37、インタフェイス部38、スイッチ39、表示部40などによって構成されている。この認識部30は、マイコンとして機能し得る制御回路34およびメモリ33を中心として構成される。
【0051】
この構成では、光学系の受光センサ12で得られた画像信号は、垂直同期信号と水平同期信号に同期して出力され、増幅器13に入力されることにより所定ゲインで増幅された後、A/D変換器31に入力されることで、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データは、画像取り込み部32によって順次メモリ33に入力され、メモリ33内の画像データ蓄積領域に蓄積される。
【0052】
メモリ33は、公知の記憶装置によって構成されており、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM、その他の不揮発性メモリ等の半導体メモリ装置がこれに相当する。このメモリ33のうちのRAMには、画像データ蓄積領域のほかに、制御回路34が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域等も確保可能に構成されている。またROMには、後述する判定処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明部20、受光センサ12等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0053】
制御回路34は、判定装置3全体を制御可能なマイコンによって構成され、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなり、メモリ33とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有する。この制御回路34は、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置と接続可能に構成されている。
【0054】
照明駆動回路35は、制御回路34からの指示に従い、照明部20の照明のオンオフを制御する。具体的には、4種類の光源(LED21a,21b,21c,21d)のオンオフを個別に制御できるようになっており、例えば、制御回路34からいずれかの光源を駆動する指示を受けた場合に、その光源を選択的に駆動させるようにオンオフを切り替える。
【0055】
電源系は、電源部36や公知の電源回路37等により構成されており、判定装置3を構成する各装置や各回路に駆動電力を供給し得るように構成されている。電源部36は、外部の商用電源から電力供給を受ける構成であってもよく、所定の直流電圧を発生可能な電池(二次電池等)として構成されていてもよい。
【0056】
インタフェイス部38は、判定装置3の外部に存在する外部装置と公知の通信方式で通信を行いうる通信部として機能しており、例えば、外部装置との間で、無線LAN通信、赤外線通信などの公知の無線通信方式或いは有線通信方式で通信を行う構成となっている。また、スイッチ39は、ユーザによる操作が可能なキーやボタンなどの複数の操作部よって構成されており、ユーザによる操作に応じた情報を装置内に入力するように構成されている。表示部40は、液晶表示器などの公知の表示装置やランプなどによって構成されており、制御回路34からの指示に応じた表示を行うようになっている。
【0057】
(判定処理)
ここで、判定装置3による判定の一例として、
図2に示す印刷媒体100の真贋判定を例に挙げて説明する。まず、照明部20によって1種類の特定波長の照明光を照射し、真贋判定を行う例を述べる。
【0058】
判定装置3は、ユーザによるスイッチ39の所定操作に応じて、照明部20から「特定波長」の照明光を照射する。例えばLED21aが「特定波長」の照明光を照射する光源である場合、このLED21aを点灯させて照明光を照射する。そして、照明部20から印刷媒体100に対して特定波長の照明光が照射された場合において、印刷媒体100が受光センサ12による撮像範囲に位置する場合、特定波長の照明光が印刷媒体100に照射されて生じる反射光を受光センサ12によって受光する。つまり、特定波長の照明光が照射された状態の印刷媒体100を受光センサ12によって撮像する。
【0059】
そして、照明光が印刷媒体100に照射されて生じる当該印刷媒体100からの光を受光センサ12が受光した受光結果に基づき、特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光の光量の少なくともいずれかを検出値として検出する。具体的には、特定波長の照明光が照射された状態の印刷媒体100を受光センサ12によって撮像して得られた撮像画像において、第3インク層112による位置マークを検出し、この位置マーク内の特定領域ARの位置を検出する。例えば、位置マークが
図2のように円環状であり、この位置マーク内の少なくとも中心位置に特定領域ARが存在する場合、位置マーク内の中心位置を特定領域ARの位置として当該位置での反射率又は当該位置からの反射光の光量を検出すればよい。なお、判定装置3による位置マークの検出は、例えば、判定装置3が位置マークの形状を予め把握しておき、撮像画像から位置マークの形状を抽出するようにしてもよい。或いは、位置マークでの反射率又は位置マークからの光の光量が所定の高値又は低値になる場合、位置マークでの反射率付近の範囲又は位置マークからの光の光量付近の範囲を抽出することで、位置マークを検出してもよい。
【0060】
また、例えば、「検出値」として「特定領域ARからの光の光量」を検出する場合、受光センサ12で生成された印刷媒体100の撮像画像における特定領域ARの位置(例えば上記位置マーク内の中心位置)の受光量を「特定領域ARからの光の光量」とすればよい。また、特定領域ARの位置の受光量として当該特定領域ARの位置の階調値(白黒の濃淡を示す階調値)を取得してもよい。
【0061】
また、「検出値」として特定領域ARでの反射率を検出する場合、上記「特定領域ARからの光の光量」を「特定領域ARでの反射率」として扱ってもよく、照明部20での出力値に対する「特定領域ARからの光の光量」の割合を「特定領域ARでの反射率」としてもよい。なお、本構成では、このような「検出値」を取得する制御回路34が「検出部」の一例に相当する。
【0062】
そして、このように検出された「検出値」に基づいて印刷媒体100の種別を判定する。具体的には、特定領域ARの検出値が所定範囲内であるか否かに基づいて印刷媒体100の真贋を判定する。例えば、
図3の例では、特定領域ARでの反射率が波長930nm付近で大きく落ち込み、その上下の波長範囲では、波長930nm付近よりも反射率が大きくなっている。このようなケースでは、例えば波長930nmを「特定波長」とし、この特定波長の照明光を印刷媒体100に照射したときの特定領域ARでの「検出値」が一定値未満の場合に「真」(特定領域ARに第1層101及び第2層102が積層された正規の媒体)と判定し、一定値以上の場合には「贋」(上記正規の媒体ではない媒体)と判定するように判定を行えばよい。この構成では、このような判定を行う制御回路34が「判定部」の一例に相当する。
【0063】
なお、上述した例では、特定領域ARにおいて、照射される波長により透過率が変化するインク層が二層重ねられた構成となっているが、いずれか一方の層又は両方の層に代えて、照射される波長により発光状態が変化するインク層、又は化学反応によって発色状態が変化する材料層を設けてもよい。照射される波長により発光状態が変化するインク層としては、公知の赤外線発光インクや紫外線発光インクによる層が挙げられる。化学反応によって発色状態が変化する材料層としては、例えば、公知のサーマル紙と同様の材料からなる層が挙げられる。例えば、熱により化学反応を起こして変色する物質(色素前駆体であるロイコ色素と、それと反応する顕色剤)からなる材料層を特定領域ARにおける基材層104上の層とし、この上層側を上述の第1インクや第2インク或いは照射される波長により発光状態が変化するインク層などによって覆うようにしてもよい。
【0064】
以上のように、本構成では、印刷媒体100の特定領域ARは、照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも二層以上重ねられた構成となっている。このように、印刷媒体100の特定領域ARに、特殊な層(照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層)が少なくとも二層以上重ねられた構成となっているため、判定対象となる特定領域ARの特性を複雑化することができる。従って、特定領域ARの内容を知らない第三者が特定領域ARを再現することが難しくなり、印刷媒体100の偽造をより困難にすることができる。
【0065】
更に、判定装置3では、特定波長の照明光が印刷媒体100に照射されて生じる光を受光センサ12が受光した受光結果に基づき、「特定領域ARでの反射率」又は「特定領域ARからの光の光量」の少なくともいずれかを検出値として検出し、その検出値に基づいて印刷媒体100の種別を判定する構成となっている。つまり、特殊な層が重ねられた特定領域ARからの光の状態をセンサによって検出し、その検出で得られた具体的な数値に基づいて印刷媒体100の判定を自動的に行うことができるため、判定に伴う作業負荷をより抑えることができ、且つより正確な判定が可能となる。
【0066】
また、判定部に相当する制御回路34は、特定領域ARで検出された上記「検出値」が所定範囲内であるか否かに基づいて印刷媒体100の真贋を判定している。このように、特定領域ARでの検出で得られた具体的な数値を明確な数値範囲と比較して真贋を判定することで、ばらつきの少ないより正確な真贋判定が可能となる。
【0067】
また、印刷媒体100には、特定領域ARが存在する範囲を示す位置マークが第3インク層112によって形成されている。そして、判定装置3は、この位置マークを検出可能とされている。この構成によれば、位置マークを利用して特定領域ARをより正確に把握しやすくなる。
【0068】
特に、特定領域ARを小さくすると、特定領域ARがデザイン性を阻害し難く、特定領域ARを目立ちにくくすることでセキュリティ性を高めることができるという効果も得られる。しかし、特定領域ARを小さくすると、印刷ずれやラベルの寸法精度などの影響により、特定領域ARが正確に形成されなかったり、特定領域ARの位置を正確に認識できなくなる可能性が高まる。特に、判定装置3が携帯型の場合には、ユーザの操作によって判定装置3の相対位置や撮像の向きが様々に変わりうるため、特定領域ARの位置を正確に認識できなくなる可能性が高くなる。これに対し、本構成のように安定的な位置マークを付して特定領域ARの位置を示すようにすることで、これらの問題を解消しやすくなる。
【0069】
また、本構成では、印刷媒体100が基材層104を備えており、判定装置3で用いる「特定波長」の照明光が照射された場合の特定領域AR外の基材層配置領域での光の反射率と位置マークが付された領域での光の反射率との差が所定差以上となるように構成されている。このように、特定波長の照明光が照射されたときの基材層配置領域での反射率と位置マークが付された領域での反射率との差がある程度大きくなるように印刷媒体100を構成しておけば、基材層配置領域での反射状態と位置マークでの反射状態の差を利用して位置マークが付された領域をより正確に認識しやすくなる。
【0070】
なお、上述した構成では、検出された「検出値」を予め定められた固定範囲と比較して真贋判定を行っていたが、このような判定方法に限られない。例えば、「検出値」の取得方法までは上述した例と同様とし、「検出値」を用いた判定方法のみを異ならせてもよい。例えば、検出部に相当する制御回路34により、特定領域ARでの「検出値」だけでなく、特定領域AR外の基材層配置領域での「比較値」をも検出し、これらの相対関係に基づいて真贋判定を行うようにしてもよい。
この場合、特定領域ARでの検出値として、「特定領域ARからの光の光量」を検出する場合、「比較値」としては、基材層配置領域(基材層104が配置され、第1インク層、第2インク層、第3インク層が配置されていない領域)からの光の光量(具体的には、受光センサ12で生成された印刷媒体100の撮像画像における基材層配置領域の位置の受光量)を検出すればよい。
また、特定領域ARでの検出値として、「特定領域ARでの反射率」を検出する場合、「比較値」としては、基材層配置領域(基材層104が配置され、第1インク層、第2インク層、第3インク層が配置されていない領域)での反射率を、特定領域ARでの反射率と同様に検出すればよい。
そして、いずれの場合でも、特定領域ARで検出された検出値Saと基材層配置領域で検出された比較値Sbとに基づいて印刷媒体100の種別を判定することができる。例えば、検出値Saと比較値Sbとの比率Sa/Sbが所定比率以上である場合に、印刷媒体100を「真」(本物)と判定し、検出値Saと比較値Sbとの比率Sa/Sbが所定比率未満である場合に、判定対象を「贋」(偽物)と判定すればよい。或いは、検出値Saと比較値Sbとの差|Sa−Sb|が所定値以上である場合に、印刷媒体100を「真」(本物)と判定し、検出値Saと比較値Sbとの差|Sa−Sb|が所定値未満である場合に、判定対象を「贋」(偽物)と判定してもよい。
このように、基材層配置領域から得られた比較値と特定領域ARから得られた検出値との相対的な関係に基づいて印刷媒体100の種別を判定すれば、照明の照度のばらつき或いは検出部のばらつきを抑えた判定が可能となる。
特に、照明光源や受光センサを用いた判定装置では、装置毎に照明の照度やセンサの感度にばらつきが発生する為に「検出値」を予め定められた固定範囲と比較する方法では、正確に判定するためにキャリブレーションが必要になる。また、装置を長時間使用すると照明の照度が低下する為に一定期間ごとにキャリブレーションが必要となり、装置のメンテナンス負担が大きくなる。これに対し本構成では、照明の照度低下やばらつきの影響、センサ感度のばらつきの影響を抑えることができるため、メンテナンス負担を大幅に低減することができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、
図5等を参照して説明する。なお、第2実施形態は、識別マークの構成及び特定領域ARの検出方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0072】
本構成で用いられる印刷媒体100は、第1実施形態と同様の基材層104上に識別マークとしての情報コード120が印刷された構成となっている。なお、以下の説明では、情報コードの例として、QRコード(登録商標)を挙げるが、情報コードはこれに限られることはなく、例えば、データマトリクス、マキシコード、CPコード、PDF417やRSSコンポジット等であってもQRコードと同様に本発明を適用することができる。
【0073】
図5に示すように、本構成では、印刷媒体100に情報コード120が形成され、情報コード120の少なくとも一部が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。なお、第2インク層116が配置された領域のうち、第1インク層114が配置されていない領域は、基材層104上に第2インク層116が配置された構成となっている。また、基材層104において第2インク層116が配置された領域外は、例えば基材層104のみの領域となっている。
図5の例では、明色セルCwと暗色セルCbとがマトリックス状に配置された情報コード120が印刷されており、暗色セルCbの領域が「特定領域」として構成され、明色セルCwの領域及びコード領域の周囲のマージン領域は、基材層104上に第2インク層が配置された構成となっている。
【0074】
このような情報コード120に基づいて印刷媒体100を判定する場合、判定装置129では、まず、照明部20から印刷媒体100に対して特定波長の照明光を照射した状態で、印刷媒体100を受光センサ12によって撮像する。そして、印刷媒体100の撮像画像から情報コード120の画像を抽出し、この情報コード120を公知のデコード方法で解読する。なお、本構成では、制御回路34が解読部の一例に相当する。そして、得られた情報コード120の撮像画像から、暗色セルCbの領域を特定し、この暗色セルCbの領域の「検出値」を第1実施形態と同様の検出方法で検出し、これに基づいて印刷媒体100の真贋を第1実施形態と同様の判定方法で判定する。
【0075】
このような構成によれば、情報コードのデータ記録機能を生かしつつ情報コードを形成する層を印刷媒体100の判定に利用することができる。また、例えば、上層側の第2インク層を、可視光領域で透過率が低く、赤外領域で透過率が高いインクとし、可視光環境下で情報コード120が視認できないように構成した場合、可視光環境下で人の目には情報コード120を見えなくすることができ、偽造等の不正を効果的に抑制することができる。
【0076】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、
図6等を参照して説明する。なお、第3実施形態は、識別マークの構成及び特定領域ARの検出方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0077】
図6に示すように、本構成では、印刷媒体100に情報コード130が形成され、情報コード130の一部が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。なお、第2インク層116が配置された領域のうち、第1インク層114が配置されていない領域は、基材層104上に第2インク層116が配置された構成となっている。また、基材層104において第2インク層116が配置された領域外は、例えば基材層104のみの領域となっている。
図6の例では、明色セルCwと暗色セルCbとがマトリックス状に配置された情報コード130が印刷されている。
【0078】
この情報コード130は、予め定められた形状の特定パターンに相当する位置検出パターンFP1,FP2,FP3(切り出しシンボル)を備えており、位置検出パターンFP1,FP2,FP3の少なくとも一部が特定領域ARとして構成されている。位置検出パターンFP1,FP2,FP3(切り出しシンボル)はいずれも中央部に3行3列の暗色セルCbからなる矩形領域が配置され、その矩形領域の周囲には明色セルCwが環状に配置された環状領域が配置され、その明色セルCwの環状領域の周囲には、暗色セルCbが環状の配置された環状領域が配置されている。そして、1つの位置検出パターンFP2の中央部に配置される3行3列の暗色セルCbからなる矩形領域が、特定領域ARとして構成されている。
【0079】
このような情報コード130に基づいて印刷媒体100を判定する場合、判定装置129では、まず、照明部20から印刷媒体100に対して特定波長の照明光を照射した状態で、印刷媒体100を受光センサ12によって撮像する。そして、印刷媒体100の撮像画像から情報コード130の画像を抽出する。この際に、QRコード(登録商標)において位置検出パターンを検出する公知の方法で位置検出パターンFP1,FP2,FP3を検出することができる。そして、位置検出パターンFP1,FP2,FP3が検出されれば、そのうちの1つの位置検出パターンFP2の中央部の矩形領域が特定領域ARであるため、特定領域ARの位置も容易に特定することができる。
【0080】
なお、本構成では、制御回路34が「第1位置検出部」の一例に相当し、受光部によって生成された情報コード130の撮像画像において位置検出パターンFP1,FP2,FP3の位置を検出するように機能する。また、制御回路34は、「第2位置検出部」の一例に相当し、第1位置検出部によって検出された位置検出パターンFP1,FP2,FP3の位置に基づき、撮像画像における位置検出パターンFP1,FP2,FP3の領域内での特定領域ARの位置を検出するように機能する。この構成によれば、第1位置検出部によって位置検出パターンFP1,FP2,FP3の位置を検出した上で、更に第2位置検出部により位置検出パターンFP1,FP2,FP3領域内における特定領域ARの相対位置を検出することができるため、特定領域ARをより一層正確に且つ迅速に特定しやすくなる。特に、QRコードにおいて必須となる位置検出パターンFP1,FP2,FP3の検出を利用して、特定領域ARの位置を特定又は絞り込むことができるため、判定に利用する特定領域ARの位置をより効率的に把握しやすくなる。また、専用の位置マークが不要になるため、デザイン面での自由度も高くなる。
【0081】
位置検出パターンFP1,FP2,FP3が検出された後は、この情報コード120を公知のデコード方法で解読すればよい。また、印刷媒体100を判定する場合、得られた情報コード120の撮像画像から上述の特定領域ARの情報を抽出し、この特定領域ARの「検出値」を第1実施形態と同様の検出方法で検出し、これに基づいて印刷媒体100の真贋を第1実施形態と同様の判定方法で判定すればよい。
【0082】
なお、本構成では、特定領域AR以外の暗色セルの領域は、第1実施形態と同様の第3インクで構成し、第1実施形態と同様、基材層104との反射率の差が大きくなるように構成するとよい。このようにすることで、暗色セルをより正確に認識しやすくなり、読み取りの精度を効果的に高めることができる。また、万が一、機能セル(位置検出パターン)の一部に特定領域ARが構成することで、明暗判別の精度が低下したとしても、データの読み取りには影響を与えない部分であるため、デコードの精度低下を招きにくい。
【0083】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について、
図7等を参照して説明する。なお、第4実施形態は、識別マークの構成及び特定領域ARの検出方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。また、第3インク層112(
図2)による位置マーク142が設けられている点が第2実施形態と異なり、それ以外は第2実施形態と同一である。特に、情報コード144の部分の構成は、第2実施形態の情報コード120の部分の構成と同一である。
【0084】
この例では、この第3インク層112(
図2)により、特定領域ARが存在する範囲を示す矩形枠の位置マーク142として表示されている。この位置マークは、例えば、情報コード144及びその周囲のマージン領域を囲むように切れ目なく連続した環状枠となっている。但し、位置マークの図形はこの例に限られるものではなく、情報コード144の範囲を示す図形であればよい。例えば、情報コード144の周囲を囲むように断続的に続く環状枠であってもよい。また、形状も、四角枠状に限られず、三角枠状等の多角形枠状であってもよく、環状枠であってもよい。
【0085】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について、
図8等を参照して説明する。なお、第5実施形態は、識別マークの構成及び特定領域ARの検出方法のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。また、位置検出パターンではなく、データ領域の一部のセルが特定領域ARとして構成されている点が第3実施形態と異なり、それ以外は第3実施形態と同一である。特に、
図8の特定領域以外の部分は、第3実施形態の特定領域以外の部分と同様の構成である。
【0086】
本構成で用いられる印刷媒体100は、第1実施形態と同様の基材層104上に識別マークとしての情報コード150が印刷された構成となっている。
図8に示すように、本構成では、印刷媒体100に情報コード150が形成され、情報コード150の一部が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。なお、第2インク層116が配置された領域のうち、第1インク層114が配置されていない領域は、基材層104上に第2インク層116が配置された構成となっている。また、基材層104において第2インク層116が配置された領域外は、例えば基材層104のみの領域となっている。
【0087】
図8の例では、二種類のセル(明色セルCw及び暗色セルCb)がマトリックス状に配置されて情報コード150が構成されており、いずれかの種類のセル(
図8の例では暗色セルCb)の少なくとも一部が特定領域ARとして構成されている。この構成では、いずれかの種類のセルを、データ記録以外の用途で利用することができる。また、情報コード解読時に行われるセル位置の検出処理の少なくとも一部処理を、特定領域ARの検出に利用することができるため、処理効率を高めやすく、処理の遅延を抑制しやすくなる。
【0088】
このような情報コード150に基づいて印刷媒体100を判定する場合、判定装置129では、まず、照明部20から印刷媒体100に対して特定波長の照明光を照射した状態で、印刷媒体100を受光センサ12によって撮像する。そして、印刷媒体100の撮像画像から情報コード150の画像を抽出し、この情報コード150を公知のデコード方法で解読する。本構成では、例えば情報コード150の内部に特定領域ARのセル位置を特定する情報が記録されており、制御回路34は、このような情報コード150の解読により特定領域ARのセル位置を特定する。そして、その特定領域ARの「検出値」を第1実施形態と同様の検出方法で検出し、これに基づいて印刷媒体100の真贋を第1実施形態と同様の判定方法で判定する。
【0089】
なお、情報コード150を、後述する第6実施形態のような秘匿性の高い情報コードとして構成し、特定領域ARの位置を示す情報を暗号化した上で秘匿データコードとして記録しておいてもよい。この場合、判定装置3を第6実施形態と同様の構成とし、秘匿データコードを解読して得られた情報に基づき、受光センサ12で生成された情報コード150の撮像画像内での特定領域ARの位置を検出すればよい。この構成では、情報コード150で定められた特定領域ARの位置を判定装置3が予め把握していなくても、情報コード150の読み取りによって特定領域ARの位置をより正確に特定することができる。また、一部のセルを特殊インクで印刷し、特殊インクで印刷したセル位置を秘匿データ領域に格納することで自由に特殊インク位置を変えることができる。従って、より偽造されにくい印刷媒体を構成することでき、セキュリティ面で一層有利になる。
【0090】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について、
図9〜
図14等を参照して説明する。
なお、本実施形態では、例えば第3実施形態と同様の印刷媒体100が用いられる。この印刷媒体100は、
図6のように情報コード130が形成され、情報コード130の一部(位置検出パターンの一部)が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。なお、第2インク層116が配置された領域のうち、第1インク層114が配置されていない領域は、基材層104上に第2インク層116が配置された構成となっている。また、基材層104において第2インク層116が配置された領域外は、例えば基材層104のみの領域となっている。
図6の例では、明色セルCwと暗色セルCbとがマトリックス状に配置された情報コード130が印刷されている。
【0091】
また、本構成では、例えば特開2009−9547号公報で開示される技術を用いた秘匿性の高い情報コード(以下、SQRCとも略称する)が用いられる。以下では、この情報コードを本構成に適用した場合のコード構成を概説する。
【0092】
本構成で用いられる情報コードでは、開示データや秘匿データ等の各データがJISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に従って符号化されており、
図9(A)のように、開示するデータを表すコード語としてコード化された開示データコードと、秘匿するデータを表すコード語としてコード化された秘匿データコードとが記録されている。そして、開示データコードの後に終端識別コードが付加されている。この終端識別コードは、例えば、4ビットパターンで「0000」であり、
図9(A) に示すように、開示データコードの直後に位置する。なお、
図9(A) では、便宜上、開示データコードを「開示コード」、終端識別コードを「終端子」、とそれぞれ表現している。
【0093】
更に、秘匿識別コード(秘匿識別子)が終端識別コード(終端子)の直後に配置されている。これにより、この終端識別コードの後に配置されているデータコードが「秘匿するデータを表すコード語としてコード化されたものであること」を明示的に表している。これにより、この情報コードを、判定装置3がデコードする際に、当該情報コードに秘匿データコード(終端識別コードの後に配置されるデータコード)が含まれていることを認識可能にする。また、秘匿データコードのデータ長が計算して求められた上で、このデータ長をコード化したものが秘匿識別コードの直後に付加されている。これにより、秘匿データコードが配置される領域や範囲を特定できるようになっている。なお、
図9(A) では、便宜上、秘匿データコードを「秘匿コード」、秘匿識別コードを「秘匿識別子」、とそれぞれ表現している。また、秘匿データコードは、例えば、所定の暗号キー(暗号化キー)を用い、公知の視覚復号型暗号技術(視覚復号型秘密分散法)などを用いて暗号化された上で記録されている。また、
図9(B)の例では、秘匿データコードを構成する「暗号化データ」の部分が暗号化され、「開始桁」、「文字数」および「復号キー検査データ」も併せて生成された上で付されている。最初に位置する「開始桁」は、当該暗号化された秘匿データの位置情報として、印刷データの先頭をゼロ番地とした場合に表現可能なアドレス値がこれに相当する。また次の「文字数」は、暗号化されている秘匿データの文字数である。最後に付加されている「復号キー検査データ」は、当該暗号を解読するのに用いる復号キーを特定可能な鍵特定情報で、暗号方式が暗号キーと復号キーとが同じ共通鍵暗号方式(「秘密鍵暗号方式」ともいう)の場合には、当該復号キー検査データは暗号キーも特定できる。
【0094】
なお、本構成では、例えばJISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に記載されている処理アルゴリズムに準拠して、秘匿データコードの後に埋め草コード(パッドデータ)が付加されている。また、解読対象となるデータ(開示データコードや秘匿データコードなど)により、公知の方法(例えばJISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に記載されている誤り訂正コードの生成アルゴリズム)を用いて誤り訂正符号を生成しそれをコード化してなる誤り訂正コードも付加されている。このような各データコード(コードワード)は、例えば
図10のように予め定められた各領域に順番に配置されている。
【0095】
このように構成される情報コード130(
図6も参照)には、検出値の基準となる基準値又は基準範囲を特定する「基準情報」と、「特定波長を特定する情報」とが暗号化された上で秘匿データコードとして記録されている。そして、後述の判定処理で用いられるようになっている。
【0096】
次に、判定装置3で行われる判定処理について説明する。なお、判定装置3のハードウェア構成は第1実施形態と同一である。また、本実施形態で用いられる特定領域の積層構造は第1実施形態と同様であり、基材層104上に第1層101と第2層102とが積層された構成であるが、特定領域ARでの特性が
図11のようになっている。
【0097】
図12に示す判定処理は、例えば電源投入などの開始条件の成立により制御回路34によって実行される。この判定処理では、まず、初期設定(S1)とタイマークリア(S2)を実施する。そして、秘匿データの暗号を解読する暗号キーの受信待ちとなる(S3)。S3の処理では、S2でタイマーがクリアされてから所定時間が経過したか否かを判断し、経過した場合には、S3にてYesに進み、経過していない場合にはS3にてNoに進む。そして、S4では、外部から暗号キーを受信したか否かを判断する。そして、暗号キーを受信していなければS4にてYesに進み、受信していればS4にてNoに進む。つまり、S2にてタイマーがクリアされてから所定時間内に暗号キーを受信した場合にはS4にてYesに進み、この場合には、「Key」=1とする。また、S2にてタイマーがクリアされてから所定時間内に暗号キーを受信できなければS3にてYesに進み、この場合には、この場合には、「Key」=0とする。
【0098】
そして、S5又はS6の後には、画像取込み回数Nを「0」にクリアする(S7)。そして、複数用意された光源の中から情報コードの読み取りが可能となる光源を点灯する(S8)その点灯による照明光の照射時に受光センサ12で撮像された撮像画像を取得する(S9)。例えば、
図3に示す第1インク層(X1)及び第2インク層(X2)の例では、赤外光の照明なら読取りが可能であり、800nm付近の照明がもっとも読み取りが行いやすいため、S8では、このような波長の照明光を照射すればよい。
【0099】
そして、S9での画像取得が完了したら画像取込み回数Nをカウントアップし(S10)、情報コードの読み取りを実施する(S11)。S11の読み取り処理は、例えば
図13のような流れで行われる。上述したように、本構成で用いられる情報コードは、
図6のような情報コード130であり、データフォーマットが
図9のようになっている。
図13の処理では、QRコード(登録商標)の読み取りで用いられる公知の方法で位置検出パターンFP1,FP2,FP3を検出し(S31)、情報コード130(
図6)のコード外形を検出する(S32)。そして、公知の方法で、情報コード130を構成する各セルの中心座標を検出する(S33)。更に、各セルの明暗(白黒)を判別する(S34)。そして、誤り訂正コードに基づいて誤り訂正が可能か否かを判断し(S35)、誤り訂正が可能であればS35にてYesに進み、公開データ部(開示データコード)の復号を行う(S36)。一方、誤り訂正ができずに読み取りができない場合には、S35にてNoに進み、変数ReadFlagに0をセットし(S45)、WaveRefDataに0をセットする(S46)。そして、
図13の処理を終了する。
【0100】
S35にてYesに進み、S36で公開データ部(開示データコード)の復号を行う場合には、変数ReadFlagに1をセットする(S37)。そして、「Key」=1であるか否か、即ち、暗号キーを取得済みであるか否かを判断する(S38)。「Key」=0であり、暗号キーを取得していない場合には、S38にてNoに進み、WaveRefDataに0をセットする(S46)。そして、
図13の処理を終了する。「Key」=1であり、暗号キーが取得済みである場合には、S38にてYesに進み、秘匿データがあるか否か、即ち、秘匿データコードが存在するか否かを判断する(S39)。秘匿データコードが存在しない場合には、S39にてNoに進み、WaveRefDataに0をセットする(S46)。そして、
図13の処理を終了する。秘匿データコードが存在する場合には、S39にてYesに進み、秘匿データコードとしてコード化された秘匿データを、既に受信している暗号キー(復号キー)を用いて解読する(S40)。
【0101】
S40で秘匿データを解読した後には、その秘匿データに「波長を特定するデータ」及び「基準情報」が含まれているか否かを判断する(S41)。そして、S40で解読したデータに「波長を特定するデータ」及び「基準情報」が含まれている場合にはS41にてYesに進み、「波長を特定するデータ」又は「基準情報」が含まれていない場合にはS41にてNoに進む。S41にてNoに進む場合には、WaveRefDataに0をセットする(S46)。そして、
図13の処理を終了する。
【0102】
ここで、「波長を特定するデータ」及び「基準情報」について説明する。判定対象の印刷媒体100に形成された情報コード130(
図6)は、特定領域ARの反射率の特性が
図11のようになっている。この特定領域ARの反射率特性曲線では、波長ra(900nm)、rb(950nm)、rc(1100nm)、rd(1200nm)が変曲点となっている。例えば、波長900nmでは、反射率が63%程度であり、波長950nmでは、反射率が48%程度であり、波長1100nmでは、反射率が80%程度であり、波長1200nmでは、反射率が74%程度である。そこで、本構成では、「波長を特定するデータ」として、これら波長ra(900nm)、rb(950nm)、rc(1100nm)、rd(1200nm)のデータを用い、このデータを情報コード130の秘匿データとして記録している。また、各波長のときに想定される各反射率に基づき、波長ごとに想定される反射率を含む基準範囲を設定している。例えば、第1の波長ra(900nm)の波長と対応付けて60%〜65%という第1基準範囲を定めている。第2の波長rb(950nm)の波長と対応付けて45%〜51%という第2基準範囲を定めている。また、第3の波長rc(1100nm)の波長と対応付けて75%〜85%という第3基準範囲を定めている。更に、第4の波長rd(950nm)の波長と対応付けて70%〜78%という第4基準範囲を定めている。このように波長に対応付けられた第1〜第4基準範囲のデータは、「基準情報」として情報コード130の秘匿データとして記録されている。
【0103】
このように、「波長を特定するデータ」と「基準情報」とが秘匿データコードとして記録されているため、S40でこのような秘匿データコードが解読された場合、S41にてYesに進み、これら「波長を特定するデータ」及び「基準情報」をメモリ33に格納することになる(S42)。そして、「波長を特定するデータ」及び「基準情報」が解読されたことを示す変数WaveRefDataに1をセットする(S43)。S43の後には、特定領域ARとして構成される位置検出パターンFP2(切出しシンボル)の中心の正方形の位置情報をメモリ33に格納する。
【0104】
以上のようにS11(
図12)の読み取り処理を
図13のように行った後には、変数ReadFlagが1であるか否かを判断する(S12)。S12において、変数ReadFlagが0と判断される場合、S12にてNoに進み、Nが3に達したか否かを判断する。Nが3未満であればS18にてNoに進み、S8に戻ってS8以降の処理を繰り返す。一方、S12にてNoに進んだ場合にS18にてNが3に達したと判断された場合には、S18にてYesに進む。つまり、予め決められた回数(本例では3回)読取りができなければ情報コードが無いものとして、真贋判定もNGと判断する。即ち、S19では、判定対象の印刷媒体が「贋」と判断される。S19では、例えば表示部40などに、真贋判定がNGである旨の表示を行う。
【0105】
一方、S12において、変数ReadFlagが1と判断される場合、S12にてYesに進み、変数WaveRefDataが1であるか否かを判断する(S13)。変数WaveRefDataが0の場合には、S13にてNoに進み、不正情報コード(暗号化方式は適正であるがデータ内容が不正な情報コード)と判断し、真贋判定もNGと判断する(S20)。S20では、例えば表示部40などに、真贋判定がNGである旨の表示も行う。また、この場合、真贋判定がNGである旨の情報と、開示データコードを解読して得られたデータを図示しないホスト装置などに送信する(S21)。
【0106】
また、S12において、変数ReadFlagが1と判断され、S13において変数WaveRefDataが1であると判断された場合、S14の真贋判定処理を行う。S14の真贋判定処理は、例えば
図14のような流れで行われる。この処理では、まず初期設定として、情報コード130の秘匿データコードとして格納されていた波長の数を変数mに設定する(S51)。例えば、
図11を参照して上述した例では4つの波長及びこれに対応する4つの基準情報が秘匿データコードとして記録されるため、m=4と設定する。そして、反射率検出回数を示す変数nに0をセットする。
【0107】
S51の後には、上述の処理でメモリ33に格納された「波長を特定するデータ」及び「基準情報」の中から、n番目の「波長を特定するデータ」およびこの波長に対応する「基準情報」を読み出す(S52)。そして、S52で読み出した波長の照明が搭載されているか(即ち、当該判定装置3がS52で読み出した波長の照明光を照射可能であるか否か)を判断する(S53)。なお、S52で読み出した波長の照明光が照射可能でなければ、S53にてNoに進み、変数AuthFlagに0をセットする(S62)。そして、
図14の処理を終了する。
【0108】
S52で読み出した波長の照明光を照射可能であれば、S53にてYesに進み、S52で読み出した波長の照明を点灯する(S54)。そして、S54で点灯された照明光が照射された印刷媒体100の画像を取得する(S55)。例えば、S52で読み出す波長が1番目の波長であり、
図11を参照して上述した例のように4つの波長及びこれに対応する4つの基準情報が記録されている場合、S54では、1番目の波長である900nmの波長の照明光を照射する。そして、S55では、900nmの波長の照明光を照射した状態での印刷媒体100の画像を取得する。
【0109】
S55の後には、S55で取得した撮像画像から、S44で格納された情報で示される位置(位置検出パターンFP2の中心部の四角形領域の位置)の階調値を取得する(S56)。そして、S56で取得した階調値に基づいて反射率を算出する。反射率の算出は公知の様々な方法を用いることができる。例えば、S54で照射された照明光の光量(既知の値)と、その照明光のときにS56で得られた特定領域AR(位置検出パターンFP2の中心部の四角形領域の位置)の階調値で特定される受光量との比率を「反射率」として算出すればよい。なお、それ以外の公知の方法で「反射率」を算出してもよい。
【0110】
そして、S57で求めた反射率が、S52で読み出した波長に対応して定められた反射率範囲内か否かを判断する。例えば、
図11を参照して上述した例のように4つの波長及びこれに対応する4つの基準情報が記録されている場合、S52で読み出す波長が1番目の波長のときには、S57では、この1番目の波長を照射したときの特定領域ARでの反射率を算出する。この場合、その算出された反射率が、その1番目の波長に対応付けられた第1基準範囲(60%〜65%)の範囲内であるかを判断する。そして、範囲外であれば、S58にてNoに進み、変数AuthFlagに0をセットする(S62)。そして、
図14の処理を終了する。逆に、その算出された反射率が、その1番目の波長に対応付けられた第1基準範囲(60%〜65%)の範囲内である場合には、S58にてYesに進む。
【0111】
S58でYesに進む場合には、nをカウントアップする(S59)。そして、S56でカウントアップされたnがmに達したか否かを判断する(S60)。S60において、nがmに達していないと判断される場合には、S60にてNoに進み、新たなnに基づいてS52以降の処理を行う。S60において、nがmに達したと判断される場合には、S60にてYesに進み、変数AuthFlagに1をセットする(S61)。そして、
図14の処理を終了する。このように、情報コード130に格納された全ての波長で照明光の照射を行い、全ての波長において、各波長のときの反射率が、各波長に対応付けられた反射率範囲内である場合には、S60にてYesに進み、変数AuthFlagに1をセットすることになる(S61)。
【0112】
なお、本構成では、受光センサ12が受光部の一例に相当し、照明部20から印刷媒体100に対して各波長の照明光がそれぞれ照射された場合に、各波長のときの情報コードからの反射光を受光して、各波長のときの情報コードの撮像画像をそれぞれ生成するように機能する。そして、S11の処理(即ち、
図13の処理)を実行し得る制御回路34が解読部の一例に相当し、受光センサ12での反射光の受光結果に基づいて情報コードを解読するように機能する。また、
図14の処理を実行し得る制御回路34が検出部の一例に相当し、各波長のときの照明光が印刷媒体100に照射されて生じる各反射光を受光センサ12が受光したそれぞれの受光結果に基づき、各波長のときの特定領域ARでの検出値(特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光の光量)をそれぞれ検出するように機能する。また、
図14等の処理を行い得る制御回路34が判定部の一例に相当し、検出部によって検出された各波長のときの検出値に基づいて印刷媒体100の種別を判定するように機能する。
【0113】
本構成では、複数波長の光による複数の結果によって特定領域ARを評価することができるため、より正確性の高い判定が可能となる。また、このような判定に適応し得る媒体を第三者が偽造することは非常に困難になる。
【0114】
また、本構成では、印刷媒体100の種別の判定に用いる基準情報が前もって情報コードに記録されるため、このような基準情報が予め用意されていない判定装置3でも基準情報に基づく判定が可能となる。なお、基準情報として、各波長に対応する基準範囲(各波長のときの反射率が満たすべき範囲)が記録されているが、基準情報として基準値が記録されていてもよい。例えば、各波長のときに得られるべき反射率を基準値としてそれぞれ定めておき、いずれかの波長を照射したときの特定領域ARでの反射率と、その波長に対応付けられた基準値との差が一定値以上の場合にS58にてNoに進むようにしてもよい。この場合、照射される全ての波長の照明光において、照明光を照射したときの特定領域ARでの反射率と、その照明光の波長と対応付けられた基準値との差が一定値未満である場合に、S58でYesに進むようにすればよい。
【0115】
また、情報コード130には、判定装置3で利用可能な情報として、「特定波長を特定する情報」が記録されており、照明部20は、解読部によって解読された情報に基づいて「特定波長」を選択し、当該特定波長の照明光を照射するようになっている。この構成では、判定に際して必要となる「特定波長」を判定装置3が予め把握していなくても、情報コード130の解読によって把握することが可能となる。
【0116】
また、特定領域ARのインク等を変更したい場合、情報コード130内に記録された「特定波長を特定する情報」と「基準情報」を変更するように情報コード130を生成し直すことで容易に対応することができ、例えば定期的にインク内容を変更するといった対応が非常に行いやすくなる。
【0117】
また、情報コード130には、判定装置3で利用可能な情報(「特定波長を特定する情報」や「基準情報」)が暗号化されて暗号データとして記録されている。そして、
図12の処理を実行する制御回路34は、暗号解読部に相当し、情報コード130に記録された暗号データの暗号を解読する機能を有する。この構成では、印刷媒体100の判定に利用する重要な情報を秘匿化して格納しておくことができるため、判定に用いる重要な情報を扱う上で、セキュリティ面が強化される。
【0118】
また、情報コード130は、判定装置3で利用可能な情報が所定の暗号化キーに基づいて暗号化された暗号データが記録される非開示データ領域と、暗号化キーによる暗号化がなされていない所定情報が記録された開示データ領域とを有している。このようにすることで、判定に用いる重要な情報のセキュリティ性を高めると共に、相対的にセキュリティ性が低い情報をも使い分けることができ、データを利用する上での自由度が一層高まる。なお、開示データ領域に記録する開示データとしては、例えば、印刷媒体100の有効期間を特定する情報や、印刷媒体100を用いたサービスに関する内容などが挙げられる。
【0119】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について、
図15、
図16等を参照して説明する。第7実施形態は、「検出値」の取得方法のみが第3実施形態と異なり、それ以外は第3実施形態と同一である。
【0120】
本構成では、第3実施形態と同一の印刷媒体100が用いられる。この印刷媒体100は、
図6のように情報コード130が形成され、情報コード130の一部(予め定められた形状の特定パターンに相当する位置検出パターンFP1,FP2,FP3の一部)が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。
【0121】
第3実施形態では、特定波長を印刷媒体100に照射した場合の特定領域ARのいずれかの位置での反射率又はいずれかの位置からの光量を求めていたが、第7実施形態では、特定波長を印刷媒体100に照射した場合の特定領域ARの複数位置での反射率又は複数位置からの光量を検出している。そして、それら複数位置での反射率又は光量のメディアン値を、当該特定波長のときの「検出値」としている。
【0122】
本構成の判定装置3では、例えば、予め決められた特定波長を印刷媒体100に照射した場合の特定領域ARの複数位置(例えば10点)での反射率をそれぞれ検出する。そして、それら複数位置での反射率のメディアン値を求め、当該特定波長のときの「検出値」としている。このように得られたメディアン値を「検出値」として扱い、この「検出値」に基づいて印刷媒体100の真贋を第1実施形態と同様の判定方法で判定すればよい。
【0123】
このように複数位置から得られた反射率又は光量のメディアン値を判定に用いることで、汚れの影響を抑えた判定が可能となる。例えば、特定領域ARの複数位置の反射率から検出値を決定する場合、
図15のように特に汚れが無い場合には、平均値を用いる場合でも、メディアン値を用いる場合でも、特定領域ARの実際の反射率を反映した精度の高い値が得られやすい。しかしながら、
図16のように、特定領域ARが汚れている場合、平均値による方法では汚れの影響を受けやすく、正確な反射率を求めにくいという問題がある。特に、反射率を大きく低下させる汚れが存在する場合にはこの問題が顕著になる。これに対し、メディアン値による方法では、この問題を抑え、実際の反射率を反映した精度の高い値が得られやすくなる。
【0124】
ここでは、第3実施形態の印刷媒体100を判定対象とする場合を例示したが、上記又は下記のいずれの実施形態の例でも、特定波長を照射したときの特定領域の複数位置での反射率を検出し、そのメディアン値を当該特定波長での「検出値」とすることができる。或いは、特定波長を照射したときの特定領域の複数位置からの光量を検出し、そのメディアン値を「検出値」としてもよい。
【0125】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態について、
図17、
図18等を参照して説明する。第8実施形態は、「検出値」の取得方法のみが第3実施形態と異なり、それ以外は第3実施形態と同一である。また、本構成でも、第3実施形態と同一の印刷媒体100が用いられる。この印刷媒体100は、
図6のように情報コード130が形成され、情報コード130の一部(位置検出パターンの一部)が特定領域ARとして構成されている。この特定領域ARの積層構造は、第1実施形態と同一であり、基材層104上に第1インク層114(
図2)が配され第1インク層114上に第2インク層116(
図2)が配されている。
【0126】
第3実施形態では、1つの特定波長を印刷媒体100に照射した場合の特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光量を検出していたが、第8実施形態では、複数の波長の照明光を照射し、各波長のときの特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光量を検出している。具体的には、第6実施形態と同様、照明部20は、照明光として複数波長の光をそれぞれ照射可能とされており、受光センサ12は、照明部20から印刷媒体100に対して複数波長の照明光がそれぞれ照射された場合に、それら各波長の照明光が印刷媒体100に照射されて生じる光をそれぞれ受光するように構成されている。そして、検出部に相当する制御回路34は、各波長の照明光が印刷媒体100に照射されたときの特定領域ARでの検出値(反射率又は光量)をそれぞれ検出している。そして、判定部に相当する制御回路34は各波長の照明光が印刷媒体100に照射されたときに検出部でそれぞれ得られる検出値に基づいて印刷媒体100の種別を判定するようになっている。
【0127】
より具体的には、照明部20は、照明光として、所定の第1波長λ0の光、第1波長λ0よりも小さい複数の第2波長λ1,λ3の光、第1波長λ0よりも大きい複数の第3波長λ2,λ4の光をそれぞれ照射可能とされている。そして、印刷媒体100は、第1波長λ0の光、第2波長λ1,λ3の光、第3波長λ2,λ4の光がそれぞれ照射された場合の特定領域ARでの各反射率のうち、例えば
図17のように第1波長λ0の光が照射されたときの反射率が最も小さくなるように構成されている。
【0128】
このような印刷媒体100を判定対象とし、判定装置3において、検出部に相当する制御回路34は、印刷媒体100に対し、第1波長λ0の光、複数の第2波長λ1,λ3の光、複数の第3波長λ2,λ4の光がそれぞれ照射された場合に、それぞれの光での検出値(それぞれの光のときの特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光量)を検出する。そして、判定部に相当する制御回路34は、それら検出される複数の検出値において、第1波長λ0の光での検出値が最小値である場合に印刷媒体100を「真」と判定し、第1波長λ0の光での検出値が最小値でない場合に印刷媒体100を「贋」と判定する。
【0129】
この構成では、複数波長の光による複数の結果によって特定領域ARを評価することができるため、より正確性の高い判定が可能となる。また、このような判定に適応し得る媒体を第三者が偽造することは非常に困難になる。
【0130】
また、ある特定領域ARを作製したときの当該特定領域ARでの反射率と波長との関係を示す反射率特性曲線が、例えば
図17のような場合、特定領域ARの層の厚さが変わると、
図18のように反射率特性曲線が全体的に低い反射率或いは高い反射率にシフトする懸念がある。
図18の例では、
図17の反射率特性曲線が符号A1に示すものであり、この場合よりも特定領域ARの層が薄くなったときにA2のようにシフトし、特定領域ARの層が厚くなったときにA3のようにシフトした例である。例えば、特定領域ARを印刷する際の印刷工程で厚さがばらつくと、このように反射率特性曲線がシフトしてばらついてしまう懸念がある。
【0131】
本構成はこの問題を解消するべく、印刷媒体100に対し第1波長の光、第2波長の光、第3波長の光がそれぞれ照射された場合に、それぞれの光での検出値を検出し、それら検出される複数の検出値において、第1波長の光での検出値が最小値であるか否かに基づいて印刷媒体100の種別を判定している。
図17のように、印刷媒体100の特定領域ARは、第1波長λ0の光が照射されたときの反射率が最も小さくなるように構成されているため、仮に印刷工程で特定領域ARの層の厚さがばらついても、第1波長λ0の光が照射されたときの反射率が最も小さくなるという関係は維持されやすい。従って、第1波長λ0の光での検出値が最小値であるか否かに基づいて印刷媒体100の種別を判定すれば、厚さがばらついた場合でも特定領域ARに正規の層が配置されているかをより正確に判定しやすく、一層正確な媒体判定が可能となる。
【0132】
なお、この例では、第1波長λ0の光が照射されたときの反射率が最も小さくなるように構成されていたが、第1波長λ0の光、第2波長λ1,λ3の光、第3波長λ2,λ4の光がそれぞれ照射された場合の特定領域ARでの各反射率のうち、第1波長λ0の光が照射されたときの反射率が最も大きくなるように印刷媒体100が構成されていてもよい。この場合、印刷媒体100に対し第1波長の光、複数の第2波長の光、複数の第3波長の光がそれぞれ照射された場合に、それぞれの光での検出値(それぞれの光のときの特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光量)を検出し、それら検出される複数の検出値において、第1波長の光での検出値が最大値である場合に印刷媒体100を「真」と判定し、第1波長の光での検出値が最大値でない場合に印刷媒体100を「贋」と判定すればよい。
【0133】
また、第1波長λ0よりも小さい第2波長の光として2つの波長の光を用いたが、第1波長λ0よりも小さい3以上の波長の光であってもよく、第1波長λ0よりも小さい1つの波長の光であってもよい。また、第1波長λ0よりも大きい第3波長の光として2つの波長の光を用いたが、第1波長λ0よりも大きい3以上の波長の光であってもよく、第1波長λ0よりも大きい1つの波長の光であってもよい。
【0134】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0135】
上記実施形態では、判定装置3によって印刷媒体100の真贋判定を行う例を示したが、印刷媒体100の種別の判定はこの例に限られない。即ち、「真」と「贋」の判定ではなく、第1種別の印刷媒体100に、上記実施形態のような特定領域ARを構成し、第2種別の印刷媒体に上記実施形態のような特定領域ARを構成しないようにすれば、上述の判定装置3によって第1種別と第2種別の判定が可能となる。
【0136】
いずれの実施形態においても、第1インク層114からなる第1層101を所定形状で構成し、これを覆う第2インク層116からなる第2層102を、第1層101に少なくとも部分的に重なるように配置すればよい。例えば、第1層101の全体を覆うように第1層101よりも大きいサイズで第2層102を覆うように構成できる。この場合、可視光環境下(通常環境下)では、第2インク層116が光を透過しない又は光透過性が低い状態となって第1インク層114を隠すことで第2インク層116を介しての第1インク層114の視認が不能又は視認困難となる。このようにすることで、通常環境下での第1インク層114の肉眼での認識を困難にすることができ、セキュリティ性を一層高めることができる。
【0137】
上記実施形態では、「照射される波長により透過率が変化するインク層、又は照射される波長により発光状態が変化するインク層、若しくは化学反応によって発色状態が変化する材料層、が少なくとも二層以上重ねられた構成」として、基材層104上に二種類のインクが積層された構成を例示したが、この例に限られない。いずれの実施形態の例でも、第1インク層114に代えて、照射される波長により発光状態が変化するインク層、又は化学反応によって発色状態が変化する材料層を設けてもよい。或いは、第2インク層116に代えて、照射される波長により発光状態が変化するインク層(公知の赤外線発光インクや紫外線発光インクによる層など)、又は化学反応によって発色状態が変化する材料層(熱により化学反応を起こして変色する物質(色素前駆体であるロイコ色素と、それと反応する顕色剤)からなる材料層など)を設けてもよい。照射される波長により発光状態が変化するインク層を設ける場合、このインク層が発光する波長を「特定波長」とするとよい。なお、基材上に「照射される波長により透過率が変化するインク層」「照射される波長により発光状態が変化するインク層」「熱により化学反応を起こして変色する物質の層」の少なくともいずれかを形成する工程であれば、本発明でいう「印刷」の概念に全て含まれる。そして、これらのいずれかの層が少なくとも形成されば、「印刷媒体」の概念に含まれる。
【0138】
上記実施形態では、特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光量を検出値として検出し、この検出値に基づいて印刷媒体100の真贋を判定する例を示したが、真贋判定は他の要素を考慮して行ってもよい。例えば、
図2のように、印刷媒体100において特定領域ARが所定形状(例えば円形)で構成されている場合、判定装置3は、上記実施形態で行ったような判定(「検出値」が条件を満たすか否かの判定)に加え、特定領域ARの形状が予め定められた形状に合致するか否かの判定を加えてもよい。この場合、制御回路34を形状認識部とし、受光センサ12で生成された撮像画像の中から特定領域ARの領域を抽出し、特定領域ARの形状を認識するように機能させればよい。そして判定部に相当する制御回路34は、形状認識部によって認識された形状と、検出部によって検出された検出値とに基づいて印刷媒体100の真贋を判定すればよい。
このように、特定領域ARでの反射率又は特定領域ARからの光の光量だけでなく、特定領域ARの形状をも加味して判定を行えば、より多くの要素を考慮したより正確性の高い判定が可能となる。
また、いずれの実施形態の例でも、特定領域ARの形状は上述した例以外の形状であってもよく、例えば、
図19(A)〜(C)のような構成であってもよい。これらの例でも、上記実施形態で行ったような判定(「検出値」が条件を満たすか否かの判定)に加え、特定領域ARの形状が予め定められた形状に合致するか否かの判定を加えることができる。そして、「検出値」が決められた範囲を満たし、且つ撮像画像から検出される特定領域ARの形状が予め定められた形状に合致する場合に、印刷媒体を「真」と判定する方法を用いることができる。
【0139】
上記実施形態で説明した判定装置3の構成に加え、印刷媒体100から光学的センサ12までの受光経路に所定波長帯の光を透過する光学フィルタを設け、この光学フィルタを透過した光を光学的センサ12が受光するように構成してもよい。このような光学フィルタは、例えば、判定装置3に設けられた図示しない読取口とレンズ11の間に配置したり、或いはレンズにコーティングするような配置で設ければよい。外乱光が読取口を介して判定装置内に入り込みやすい環境下では、より正確な真贋判定を行う上で、このような光学フィルタが特に有効である。より具体的には、照明部20から上述の「特定波長」の光を印刷媒体100に照射したときに印刷媒体100で生じる光(「特定波長」の光に応じて印刷媒体100で反射した光、又は「特定波長」の光に応じて印刷媒体100で発光した光)の波長を含む所定波長帯の光を選択的に透過し、所定波長帯以外の光の透過を抑える光学フィルタを用いるとよい。